説明

レーザーマーキングを施される射出成形品用難燃性ポリアミド樹脂組成物

【課題】 難燃性、耐衝撃特性、表面外観特性、耐熱変色特性、耐光変色特性、生産性に優れ、且つレーザーマーキング特性に優れたポリアミド樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 (A)結晶化温度が140〜180℃のポリアミド樹脂99〜60重量%、及び
(B)少なくとも共役ジエン系化合物重合体ブロックを有するブロック共重合体に、不飽和酸および/またはその誘導体をグラフト変性した、変性率が0.1〜5%の耐衝撃改良剤1〜40重量%からなる樹脂成分100重量部に対して
(C)構造中にハロゲン原子を有し、主鎖に芳香環を有さない、分子量200〜500000のハロゲン系難燃剤1〜30重量部
(D)難燃助剤1〜15重量部
を配合した、ポリアミド樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性、耐衝撃特性、表面外観特性、耐熱変色特性、耐光変色特性、生産性に優れ、且つレーザーマーキング特性に優れたポリアミド樹脂組成物であり、更に電気配線に組み込まれる安全ブレーカーや漏電遮断機用途に適したポリアミド樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
安全ブレーカーや漏電遮断器(以下、合わせて「ブレーカー」ということがある。)は、指定以上の電流が流れた時、又は揺れや発熱などの異常を感知した際に通電を遮断する機器である。これらは電気配線に組み込まれる電気電子部品であり、電気配線の安全保証の上で不可欠のものである。
【0003】
従来、ブレーカー用の材料はフェノール樹脂などの熱硬化性樹脂であった。しかし生産性が悪いなどで、高コストであるため、熱可塑性樹脂への切替が検討されている。
【0004】
ブレーカーなどの筐体に使用される材料は、機械的特性として剛性と同時に耐衝撃性が求められる。また製品の識別等のため、特に良好なレーザーマーキング特性が求められる。優れたレーザーマーキング特性のためには、良外観表面を有する成形品である必要があり、またUL94試験における難燃規格V−2以上の難燃性が求められる。また、併せて耐熱変色特性、耐光変色特性が優れていることも求められるが、難燃性やレーザーマーキング特性を付与させると著しく熱変色や光変色しやすく両立が困難であった。
【0005】
剛性、耐衝撃性および難燃性の改良を目的としたポリアミド樹脂組成物が、提案されている(例えば特許文献1、2参照)。特許文献1には、「ポリアミド樹脂(A)40〜87重量部、臭素系難燃剤(B)10〜50重量部、難燃助剤(C)1〜20重量部、酸変性エラストマー(D)1〜10重量部及び流動性改良剤(E)0.5 〜5重量部からなり、樹脂組成物全体を 100重量部としたことを特徴とする難燃性ポリアミド樹脂組成物。」との記述がある。
【0006】
また(0005)段落には、「しかし、酸変性されたエラストマーをポリアミド樹脂に配合すると、強靱性は向上するものの流動性が著しく低下するという問題があり、強靱性と流動性を同時に満足するものが得られていないのが現状である。」との認識のため、酸変性エラストマー(D)の配合量が比較的低い配合量に限定され、酸変性エラストマー無配合の比較例1と酸変性エラストマー配合の実施例2との比較においても、アイゾット衝撃強さが、90から131に向上しているものの、筐体等の用途の耐衝撃性には不十分であるという問題があった。
【0007】
また酸変性エラストマーによる流動性の悪化を解消するため、流動性改良剤のビスアミドやステアリン酸亜鉛を実施例においては1〜2重量部とかなりの高配合量添加することが行われている。しかし、このような化合物を1重量部以上の配合は、成形品の表面外観を悪化させると言う問題があった。
【0008】
更に実施例においてナイロン66が主に使用されているが、これは融点が高いので、流動改良剤からの成形時の発生ガスが多く、表面外観を更に悪化させるという問題があった。またナイロン66は結晶化速度がポリアミド樹脂の中では速い樹脂なので表面外観が低下しやすいことから、表面外観やレーザーマーキング性については、記載も示唆も見受けられない。
【0009】
特許文献2には、「(a)ポリアミド30〜90重量%、(b)臭素系難燃剤15〜40重量%、(c)難燃助剤1〜20重量%及び(d)変性水素化ブロック共重合体0.5〜5重量%からなるポリアミド樹脂組成物100重量部と(e)無機質強化材10〜100重量部からなる難燃性強化ポリアミド組成物。」との記載がある。そして特許文献2の酸変性エラストマーは、変性水素化ブロック共重合体に限定したものである。
【0010】
更に特許文献1と同様にエラストマーの配合量が少量に限定され、またポリアミド66を使用しており、表面外観についても、エラストマーの剥離のみを観察しており、ガラス繊維の浮きなどのレーザーマーキング性に特に影響するような観察は行われていない。
【0011】
特許文献3には、「(a)ポリアミド樹脂40〜90重量%,(b)ビニル芳香族化合物重合体ブロックAとオレフィン系化合物重合体ブロックBとから成る重合体であって、ブロックBの不飽和度が20%をこえない水素化ブロック共重合体2〜36重量%,(c)前記(b)のブロック共重合体に、カルボン酸基,またはその誘導体基を含有する分子単位が結合した変性ブロック共重合体2〜36重量%,(d)臭素含有率が50〜90重量%である臭素系難燃剤2〜40重量%,及び(e)酸化アンチモン,アンチモン酸ナトリウム,酸化スズ,酸化鉄,酸化亜鉛,ホウ酸亜鉛の中から選ばれた少なくとも1種の難燃助剤1〜20重量%とから成ることを特徴とする難燃性ポリアミド樹脂組成物。」との記載がある。
【0012】
そして変性水素化ブロック共重合体と無変性水素化ブロック共重合体を同時に配合することが特徴となっている。このような併用の目的は、(0006)段落に示されている様に、難燃性が極めて高く、機械的強度,柔軟性が良好でかつ優れた成形加工性を有する難燃性ポリアミド樹脂組成物及び該組成物を成形してなる自動車電気配線の保護及び結束用の難燃性チューブ及びプロテクターを提供することにある。
【0013】
また実施例1と比較例2の比較において、チューブ成形性が併用により改善されることのみが示されているが、射出成形品表面の外観やレーザーマーキングについては、記載も示唆もない。
【0014】
【特許文献1】特開平10−219103号公報
【特許文献2】特開平10−158506号公報
【特許文献3】特開平7−292242号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、難燃性、耐衝撃特性、表面外観特性、耐熱変色特性、耐光変色特性、生産性に優れ、且つレーザーマーキング特性に優れたポリアミド樹脂組成物で、電気配線に組み込まれる安全ブレーカーや漏電遮断機の筐体用途などに適したポリアミド樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
問題を解決するため、殊に、結晶化温度が特定の範囲内の、且つISO−307の粘度数が極めて低いポリアミドを使用することにより、高衝撃性を得るための耐衝撃改良剤の配合量を多くしても、流動性が低下することなく、レーザーマーキング性の優れた表面外観の成形品を得ることができ、またその耐衝撃改良剤を特定組成にすることにより流動性と同時に、樹脂組成物の製造における生産性を向上させることが出来ることを見出し、上記目標のポリアミド樹脂組成物を得ることができ、本発明に到達した。
【0017】
即ち、本発明の要旨は、
(1) (A)結晶化温度が140〜180℃のポリアミド樹脂99〜60重量%、及び
(B)少なくとも共役ジエン系化合物重合体ブロックを有するブロック共重合体に、不飽和酸および/またはその誘導体をグラフト変性した、変性率が0.1〜5%の耐衝撃改良剤1〜40重量%からなる樹脂成分100重量部に対して
(C)構造中にハロゲン原子を有し、主鎖に芳香環を有さない、分子量200〜500000のハロゲン系難燃剤1〜30重量部
(D)難燃助剤1〜15重量部を配合した、ポリアミド樹脂組成物。
【0018】
(2) (B)耐衝撃改良剤が、ビニル芳香族化合物重合体ブロックと、共役ジエン系化合物重合体ブロックからなるブロック共重合体の水素添加物の変性物と、未変性の該ブロック共重合体水素添加物とからなることを特徴とする、上記(1)に記載のポリアミド樹脂組成物。
【0019】
(3) (B)耐衝撃改良剤が、以下の(B1)及び(B2)からなり、その重量比が9/1〜1/9であることを特徴とする、上記(2)に記載のポリアミド樹脂組成物。
(B1):ビニル芳香族化合物重合体ブロックと、共役ジエン系化合物重合体ブロックからなるブロック共重合体の水素添加物。
(B2):ビニル芳香族化合物重合体ブロックと、共役ジエン系化合物重合体ブロックからなるブロック共重合体の水素添加物に対して、2.5〜5.0重量%無水マレイン酸をグラフトして変性した変性物。
【0020】
(4) (A)ポリアミド樹脂が、ISO−307に準拠して測定した粘度数において80〜120ml/gであることを特徴とする、上記(1)1乃至(3)のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
【0021】
(5) 上記(1)乃至(4)のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物を成形してなる樹脂成形体。
【0022】
(6) レーザーマーキング処理用樹脂成形体であることを特徴とする上記(5)に記載の樹脂成形体。
【0023】
(7) 電流ブレーカー用部品であることを特徴とする上記(5)乃至(6)のいずれかに記載の樹脂成形体、に存する。
【発明の効果】
【0024】
このように本発明のポリアミド樹脂組成物は、難燃性、耐衝撃特性、表面外観特性、耐熱変色特性、耐光変色特性、生産性に優れ、且つレーザーマーキング特性に優れたポリアミド樹脂組成物であり、特にブレーカーなどの筐体向け電気電子部品用材料として利用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0026】
(A)ポリアミド樹脂
本発明における(A)ポリアミド樹脂としては、3員環以上のラクタム、重合可能なω−アミノ酸、又は、二塩基酸とジアミン等の重縮合によって得られるポリアミドを用いることができる。具体的には、ε−カプロラクタム、アミノカプロン酸、エナントラクタム、7−アミノヘプタン酸、11−アミノウンデカン酸、9−アミノノナン酸、α−ピロリドン、α−ピペリドン等の重合体、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン等のジアミンと、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二塩基酸、グルタール酸等のジカルボン酸と重縮合せしめて得られる重合体又はこれらの共重合体、例えば、ポリアミド4、6、7、8、11、12、6.6、6.9、6.10、6.11、6.12、6T、6/6.6、6/12、6/6T、6T/6I、MXD6等が挙げられ、複数種のポリアミド樹脂を使用することもできる。
【0027】
本発明において使用されるポリアミド樹脂の結晶化温度が140〜180℃の範囲、より好ましくは150〜175℃の範囲にあることが望ましい。本発明の結晶化温度とは、ポリアミド樹脂組成物を製造する一つの、又は混合する複数のポリアミド樹脂だけを、樹脂組成物を製造するのと類似の条件で溶融コンパウンドを行い、冷却固化させたストランドを切断して得られるペレットを、示差熱温度計にて、窒素ガス流通下、毎分20℃の速度で、常温から270℃まで昇温し、270℃に到達後10分間270℃を保持し、その後毎分20℃の速度で降温を行う。
【0028】
その降温時の発熱ピークの温度を結晶化温度という。ポリアミド6の結晶化温度は、約170℃であり、共重合ポリアミド6/66(共重合重量比率85/15)の結晶化温度は約150℃であり、さらにポリアミド66の結晶化温度は、約213℃である。したがって、本発明において、好ましいポリアミド樹脂は、ポリアミド6、共重合ポリアミド6/66樹脂ないしはこれらの混合物が挙げられる。本発明におけるポリアミド樹脂の末端は、分子量調節も兼ねてカルボン酸又はアミン化合物で封止されていてもよい。
【0029】
また、本発明に好適なポリアミド樹脂はある範囲内の重合度、すなわち特定の範囲の粘度数を有するものが好ましい。好ましい粘度数は、96%硫酸中濃度1%、温度23℃で結晶化温度を測定したポリアミド樹脂ペレットに対して測定した値で70〜120であり、より好ましくは72〜115である。一般に市販されているポリアミド樹脂の粘度数が80〜350ほどであるから、極めて低分子量のポリアミド樹脂であるかわかるであろう。粘度数が70より低いと溶融粘度が小さいため、機械的強度が低下する。また粘度数が120より高いと流動性が低下し、成形品表面外観も悪化し、レーザーマーキング性が不良になり、ブレーカーなどの筐体のように製品識別のためのレーザーマーキングを施す用途向けには好ましくない。
【0030】
(B)ブロック共重合体の水素添加物の変性物
本発明で用いられる成分(B)の未変性物であるブロック共重合体の水素添加物(以下に、成分(B−1)と表記することがある)とは、ビニル芳香族化合物重合体ブロックaと共役ジエン系化合物重合体ブロックbとのブロック共重合体の水素添加物である。水素添加物は、主にブロックb中の脂肪族不飽和結合数が水素化により減少したブロック共重合体である。
【0031】
ブロックa及びブロックbの配列は、線状構造のもの、又は分岐構造(ラジアルテレブロック)のものを含む。また、これらの構造のうちで一部にビニル芳香族化合物と共役ジエン系化合物とのランダム共重合部分に由来するランダム鎖を含んでいてもよい。これら構造のうちでも線状構造のものが好ましく、a−b−a型のトリブロック構造のものが、耐衝撃性の点で特に好ましく、a−b型のジブロック構造のものを含んでいてもよい。
【0032】
上述した成分(B−1)ブロック共重合体の水素添加物のビニル芳香族化合物重合体ブロックaを構成する単量体、ビニル芳香族化合物は、好ましくはスチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン等であり、更に好ましくは、スチレンである。
【0033】
また共役ジエン系化合物重合体ブロックbを構成する単量体、共役ジエン系化合物は、好ましくは1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエンである。これらブロック共重合体の水素添加物におけるビニル芳香族化合物に由来する繰り返し単位の占める割合は、10〜70重量%の範囲が好ましく、10〜40重量%の範囲がより好ましい。
【0034】
(B−1)ブロック共重合体の水素添加物の中でも、水素添加物が熱安定性の点から好ましく使用され、該ブロック共重合体の水素添加物が有する不飽和結合をみるに、共役ジエン系化合物に由来する脂肪族不飽和結合のうち、水素添加されずに残存している割合は、20%以下が好ましく、10%以下がより好ましい。
【0035】
20%より多いと、樹脂組成物の製造のための溶融混練時または射出成形時の熱・酸化劣化により分解等の反応によりブロック共重合体の水素添加物としての機能が低下する。ビニル芳香族化合物に由来する芳香族性不飽和結合の約25%以下が水素添加されていてもよい。このようなブロック共重合体の水素添加物としては、共役ジエン系化合物重合体ブロックbを構成する単量体、共役ジエン系化合物が、1,3−ブタジエンの場合は、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)と称され、また2−メチル−1,3−ブタジエンの場合は、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレン共重合体(SEPS)と称され、種々のa−b−a型のトリブロック構造のものが市販されていて、容易に入手可能である。
【0036】
これら成分(B−1)ブロック共重合体の水素添加物の数平均分子量は、180000以下のものが好ましく、120000のものがより好ましい。分子量が180000を超えると、成形加工性が劣り、外観も悪化するので好ましくない。
【0037】
本発明においては、上記(B−1)ブロック共重合体の水素添加物の一部または全部に、種々の不飽和カルボン酸および/またはその誘導体をグラフト反応または共重合(グラフト変性)して得られる変性物(以下に、特に(B−1)と区別するときに(B−2)と表記することがある)を、使用する。この場合、グラフト反応または共重合されている不飽和カルボン酸および/またはその誘導体の量は、ブロック共重合体の水素添加物に対して0.05〜5重量%、更に好ましくは0.1〜4重量%である。
【0038】
不飽和カルボン酸および/またはその誘導体の量が、2.5〜5重量%の範囲のブロック共重合体の水素添加物の変性物(B−2)に、未変性物(B−1)を(B−2)/(B−1)=9/1〜1/9、更に好ましくは6/4〜2/8の比率で混合することは、製造コストの削減ばかりでなく、流動性が改善され、衝撃強度が向上する点から好ましい。
【0039】
また変性物と未変性物を混合することにより、樹脂組成物の製造時に溶融混練後のストランドの揺れが防止でき、生産性の改善が可能になる点から好ましい。これは、不飽和酸および/またはその誘導体のグラフト率が高いとポリアミド樹脂との反応だけでなく、反応部位を有する無機充填剤とも反応してしまい、無機充填剤が(B)成分中に取り込まれ、補強効果を低下するためと推察される。
【0040】
グラフト反応あるいは共重合(グラフト変性)に用いる不飽和カルボン酸としてはアクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、ブテンジカルボン酸等が挙げられる。また、それらの誘導体としては、アルキルエステル、グリシジルエステル、ジ(またはトリ)−アルコキシシリル基を有するエステル、酸無水物またはイミド等が挙げられる。
【0041】
中で、酸無水物、不飽和カルボン酸エステル、グリシジルエステルがより好ましい。なお、これら不飽和カルボン酸またはその誘導体をグラフト反応させる方法については公知のラジカル開始剤による共重合化手法を用いることができる。
【0042】
(B)ブロック共重合体の水素化物の変性物の配合率は、成分(A)と(B)の合計量中、1〜40重量%であり、衝撃性と流動性の観点から、好ましくは10〜35重量%、更に好ましくは15〜30重量%である。1重量%より少ないと、耐衝撃性の改善が期待されないし、40重量%より多いと、難燃性の確保が困難になり、さらには流動性の低下、成形品表面外観、レーザーマーキング性の悪化をまねき好ましくない。
【0043】
(C)ハロゲン系難燃剤
本発明にて使用できる(C)ハロゲン系難燃剤の好ましい具体例としては、既知の樹脂用ハロゲン系難燃剤が使用でき、たとえば芳香族臭素化合物、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ樹脂、臭素化フェノキシ樹脂、臭素化ポリフェニレンエーテル樹脂、臭素化ポリスチレン樹脂、臭素化ビスフェノールA、グリシジル臭素化ビスフェノールA、ペンタブロモベンジルポリアクリレート、ブロム化イミド等が挙げられる。
【0044】
中でも、臭素化ポリカーボネート、グリシジル臭素化ビスフェノールA、またはペンタブロモベンジルポリアクリレート、臭素化ポリフェニレンエーテル樹脂、臭素化ポリスチレン樹脂が、耐衝撃性を低下させることが少ない点で好ましい。
【0045】
(C)ハロゲン系難燃剤の含有量は、成分(A)と(B)の合計量100重量部に対して通常1〜30重量部、好ましくは4〜20重量部である。(C)難燃剤が1.6重量%未満では、十分な難燃性が得られにくく、23重量%を越えると物性、特に機械強度が低下しやすい傾向がある。
【0046】
本発明の樹脂組成物においては、(D)難燃助剤としてのアンチモン化合物および硼酸亜鉛の少なくとも1種を含有させることが好ましい。アンチモン化合物としては、三酸化アンチモン(Sb)、五酸化アンチモン(Sb)、アンチモン酸ナトリウム等が挙げられる。臭素系難燃剤との相乗効果から、特に三酸化アンチモンが好ましい。
【0047】
アンチモン化合物の含有量は成分(A)と(B)の合計100重量部に対し1〜20重量部、特に2〜15重量部であることが好ましい。1重量部未満では難燃性向上効果が低く、20重量部より多くても配合量に見合う向上効果が期待できないばかりか、機械的強度が低下することがある。また(C)ハロゲン系難燃剤に対する量(重量比)としては、(D)/(C)が0.3〜1、特に0.4〜0.8であることが好ましい。
【0048】
本発明においては、上述したアンチモン化合物と共に、又は硼酸亜鉛を含有させることができる。硼酸亜鉛は、アンチモン化合物と同様に難燃性を向上させる他、更に絶縁性を改善するという効果を有する。硼酸亜鉛を使用する場合の含有量は、(C)臭素系難燃剤に対する量(重量比)として、0.3〜1であるのが好ましく、0.4〜0.8が更に好ましい。
【0049】
(E)無機充填剤
本発明で使用される(E)無機充填剤には、ガラス繊維、粉砕ガラス繊維(ミルドファイバー)、ガラスフレーク、ガラスビーズ、マイカ、タルク、カオリン、ワラストナイト、チタン酸カリウムウィスカー、炭素繊維、玄武岩繊維などを挙げることができ、通常熱可塑性樹脂用充填時として使用されるものでよく、それらの二種以上を併用してもよいが、ガラス系充填剤(ガラス繊維、粉砕ガラス繊維(ミルドファイバー)、ガラスフレーク、ガラスビーズなど)が機械的特性、難燃性、成形品表面外観、価格など総合的バランスにおいて優れており好ましい。通常熱可塑性樹脂に使用されるものでよいが、アルカリ分が少なく、電気的特性が良好なEガラスから作られるガラス系充填剤が好ましい。
【0050】
無機充填剤のサイズは20〜600μm、好ましくは25〜400μmである。ここで、充填剤サイズとは、繊維状充填剤のガラス繊維、粉砕ガラス繊維、ワラストナイトの場合は繊維方向の最大長さを示し、板状充填剤であるガラスフレーク、マイカ、タルクの場合は板の最大直径、球状のガラスビーズの場合は球の最大径とする。
【0051】
形状の異なる充填剤が併用された場合は、形状毎に数平均サイズを測定し、形状毎の配合比率を掛け合わせて、平均化したものを充填剤の平均サイズとする。ガラス繊維などの繊維状無機充填剤の断面形状は、円形に限定されることはなく、長円形や、繭形などの扁平形状のものが成形品表面外観が良くなる傾向にあり好ましく使用される。
【0052】
無機充填剤は、表面処理剤や集束剤により処理されていることで、機械的強度や成形品表面外観が向上するので好ましい。しかし種類や量などにより流動性の低下や、成形時にガスの発生が多くなり、成形品表面が荒れることもあるので、機械的強度、成形表面の平滑性などとのバランスの上で表面処理剤および集束剤処理の選定をする必要がある。
【0053】
表面処理剤としては、例えば、ビニルトリクロロシラン、メチルビニルジクロロシラン等のクロロシラン系化合物、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのアルコキシシラン系化合物、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のエポキシシラン系化合物、アクリル系化合物、イソシアネート系化合物、チタネート系化合物、エポキシ系化合物などが挙げられる。
【0054】
また、ガラス繊維、炭素繊維。玄武岩繊維は、集束剤による処理がなされた繊維であることが好ましい。集束剤でガラス繊維などを処理することにより、ガラス繊維の取り扱い作業性を向上させ、ガラス繊維の損傷を防ぐことが出来る。使用する収束剤としては、例えば、酢酸ビニル樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂などの樹脂エマルジョン等が挙げられる。
【0055】
無機充填剤の配合量は、成分(A)と(B)の合計量100重量部に対して、30〜120重量部であり、35〜100重量部がより好ましい。配合量が30重量部より少ないと、ブレーカー用としての機械的特性が不十分となったり、逆に120重量部より多いと、大幅に流動性を悪化させ成形品外観が低下することがある。
【0056】
本発明のポリアミド樹脂組成物を製造する方法としては、最終成形品を成形する直前までの任意の段階で周知の種種の手段によって行うことができる。最も簡便な方法は、前記成分(A)、(B)、(C)、(D)並びに(E)を単にドライブレンドする方法であり、更に好ましくは得られるドライブレンド物を溶融混合押出にてペレットとすることである。成分(E)の無機充填剤は、溶融混練の押出機シリンダーの途中からフィードする方法が、無機充填剤の破砕が防げ、同時にシリンダーやスクリューの磨耗が防止できるので好ましい。
【0057】
また、本発明における樹脂組成物に顔料、染料、核剤、離型剤、安定剤、帯電防止剤その他の周知の添加剤を配合し、混練することができる。特に、カルボン酸アマイド系ワックスやエチレンビスステアリルアミドのビスアミド化合物などのアミド系離型剤を、難燃剤の分散を兼ねて、ポリアミド樹脂100重量部に対し例えば0.001〜0.8重量部、さらに好ましくは0.005〜0.5重量部配合することは、射出成形時にガスの発生を抑制した状態でが可能であり、成形品外観を悪化することもなく、安定した離型が確保でき生産性の向上が図れるので好ましい。
【0058】
カルボン酸アマイド系ワックスは、高級脂肪族モノカルボン酸と多塩基酸の混合物とジアミンとの脱水反応によって得られる。前記高級脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数16以上の飽和脂肪族モノカルボン酸及びヒドロキシカルボン酸が好ましく、例えば、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸、12−ヒドロキシステアリン酸などが挙げられる。
【0059】
前記多塩基酸としては、二塩基酸以上のカルボン酸で、例えば、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ピメリン酸、アゼライン酸等の脂肪族ジカルボン酸及び、フタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸及び、シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキシルコハク酸等の脂環式ジカルボン酸等が挙げられる。前記ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、ヘキサメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、トリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、フェニレンジアミン、イソホロンジアミン等が挙げられる。
【0060】
本発明におけるカルボン酸アマイド系ワックスは、その製造に当って使用する高級脂肪族モノカルボン酸に対して、多塩基酸の混合割合を変えて軟化点を変更できる。多塩基酸の混合割合は高級脂肪族モノカルボン酸2モルに対し0.18〜1.0モルが好ましく、またジアミンの使用量は高級脂肪族モノカルボン酸2モルに対し1.5〜2.0モルであることが好ましく、用いる多塩基酸の量により変更すればよい。
【0061】
ビスアミド化合物は、N,N′−メチレンビスステアリン酸アミド及びN,N′−エチレンビスステアリン酸アミドの様なジアミンと脂肪酸の化合物、或いはN,N′−ジオクタデシルテレフタル酸アミド等のジオクタデシル二塩基酸アミドが挙げられる。
【0062】
本発明のポリアミド樹脂組成物を用いて、ブレーカー等の成型品を製造するにあたっては、前記ドライブレンド物やペレットなどのポリアミド樹脂組成物を射出成型機などの各種成型機に供給して、金型に流し込み、冷却、取り出しをするという常法に従って実施することができる。
【0063】
本発明のポリアミド樹脂組成物からなる成形品には、任意の方法でレーザーマーキングを行なうことができる。例えば、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー、ルビーレーザー、半導体レーザー、アルゴンレーザー、エキシマレーザー等を使用することができるが、特にこれらに限定されるものではないが、例えば炭酸ガスレーザー、YAGレーザー等が好ましく。更には、固有波長が1064nmであることを特徴とするNd:YAGレーザーが好ましい。また、所望の形状のマーキングを行うにはマスキング方法とスキャン方法が挙げられるが、その製造工程や経済性等を考慮するとスキャン方式のものが好ましい。本発明の組成物には、レーザー光の照射により鮮明なマーキングを行なうことができる。
【実施例】
【0064】
以下に実施例、比較例を示し、本発明をより具体的に説明する。本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。尚、実施例、比較例には、以下の各成分を用い、また本発明のポリアミド樹脂組成物の評価試験方法は以下の通りである。
【0065】
(A)ポリアミド樹脂
(A−1)ポリアミド6 三菱エンジニアリングプラスチックス社製 ノバミッド1007J、ISO粘度数:106 融点:224℃ 結晶化温度:161℃
【0066】
(A−2)ポリアミド6 三菱エンジニアリングプラスチックス社製 ノバミッド1013J、ISO粘度数:138 融点:224℃ 結晶化温度:161℃
【0067】
(A−3)共重合ポリアミド6/66 三菱エンジニアリングプラスチックス社製 ノバミッド2010J、ISO粘度数:118 融点:198℃ 結晶化温度:145℃
【0068】
(A−4)ポリアミド66 デュポン社製 ザイテルFE3218、ISO粘度数:138 融点:264℃ 結晶化温度:210℃
【0069】
(B)対衝撃改良材
(B−1)スチレン−エチレン/ブチレン−スチレン−グラフト−無水マレイン酸共重合体(変性SEBS) 旭化成社製タフテックM1943、スチレン含量20重量%、無水マレイン酸変性率=2.7重量%
【0070】
(B−2)スチレン−エチレン/ブチレン−スチレン共重合体(SEBS) 旭化成社製 タフテックH1052、スチレン含量20重量%
【0071】
(B−3)変性エチレン−ブテン共重合体(m−EBR) 三井石油化学工業社製タフマーA−4085の無水マレイン酸変性物、無水マレイン酸変性率0.8重量%
【0072】
(C)ハロゲン系難燃剤
(C−1)ペンタブロモベンジルポリアクリレート(PBBPA) グレートレークケミカル社製FR1025
【0073】
(C−2)ポリジブロモポリスチレン(PDBPS) アルベマール社製HP3010G
【0074】
(C−3)エタン−1,2−ビス(ペンタブロモフェニル)(EBPBP) アルベマール社製Saytex8010
【0075】
(D)難燃助剤
(D−1)三酸化アンチモン 鈴祐化学社製 AT−3CN
【0076】
(E)無機充填剤
(E−1)ガラス繊維チョップドストランド 日本電気硝子製 T−296GH
【0077】
(F)離型剤
(F−1)カルボン酸アマイド系ワックス離型剤 共栄社化学製 WH255
【0078】
(結晶化温度)
表1に示すポリアミド樹脂を所定比率でブレンド後、日本製鋼所製TEX30C型2軸押出機を用い、270℃の設定温度で溶融混合してポリアミド樹脂のペレットを得た。そのペレット試料10mmgに対してセイコー電子工業社製、DSC20を用い、昇温速度20℃/分で270℃まで昇温し、10分間270℃で保持後、速度20℃/分で降温した。ポリアミド樹脂の結晶化を示す発熱ピークの頂点温度を測定した。
【0079】
(粘度数)
結晶化温度の項に示されている溶融混合後のポリアミド樹脂ペレットを用いて、JIS K6933−99に従って96%濃硫酸溶媒に1%溶解し、23℃にて測定した。
【0080】
(溶融混練時のストランドの安定性)
表―1に示す配合量(単位はアミド樹脂と変性ブロック共重合体の水素添加物に対しては樹脂成分中におけるその配合比率を示す重量%であり、他は樹脂成分100重量部に対しての重量部)でポリアミド樹脂と各種添加剤(ガラス繊維以外)をブレンド後、日本製鋼所製TEX30C型2軸押出機のホッパーより供給し、ガラス繊維は途中のサイドフィーダーより供給を行い、270℃の設定温度で溶融混合してポリアミド樹脂組成物のストランドを押出し、ペレットを得た。
【0081】
ストランドが安定して押し出される樹脂組成物では、ペレットサイズも揃ったものであった。このようなストランドが安定しているものは◎と表記した。しかしストランドがダイスの出口より押し出されるときに左右上下に振れたり、太くなったり、細くなったりするなど不安定なものは、ペレットサイズが揃わず、射出成形時に喰い込みのトラブルがあった。このようなストランドが不安定なものは×と表記した。その中間で、喰い込みトラブルは起こさなかったが、目視で明らかにペレットサイズが不揃いのものを○とした。
【0082】
(機械的特性)
後述のポリアミド樹脂組成物ペレットを用いて、射出成形機(日精樹脂工業株式会社製NEX80−9E型)にて、ISO試験片を成形した。ISO179−2に準拠してノッチ付シャルピー衝撃強さを測定した。
【0083】
(難燃性)
後述のポリアミド樹脂組成物ペレットを用いて、射出成形機(日精樹脂工業社製NEX80−9E型)にて、5×1/2×1/32(インチ)の大きさの試験片を成形した。その試験片に対して、試験法UL−94規格に準じて行った。
【0084】
(流動性)
後述のポリアミド樹脂組成物ペレットを用いて、射出成形機(日精樹脂工業株式会社製NEX80−9E型)にて、6mm径半円のスパイラル状の金型を用い、樹脂温度 270℃、金型温度80℃、射出圧力100MPaで射出成形し、流動長を測定した。
【0085】
(成形品表面外観)
後述のポリアミド樹脂組成物ペレットを用いて、射出成形機(日精樹脂工業株式会社製NEX80−9E型)にて、樹脂温度 270℃、金型温度80℃で、100mm径×2mm厚みの円盤状成形品を成形した。その円盤の表面外観を目視にて観察し、蛍光灯の像が極めてくっきりと写るものを◎、くっきりと写るものを○、少し揺らいで写るものを△、揺らいで写るものを×として評価した。○以上が実用上問題ないと判断される。
【0086】
(耐熱変色特性)
後述のポリアミド樹脂組成物ペレットを用いて、射出成形機(日精樹脂工業株式会社製NEX80−9E型)にて、樹脂温度 270℃、金型温度80℃で、100mm径×2mm厚みの円盤状成形品を成形した。その円盤を120℃オーブンにて150時間処理し、成形品の変色変化を色差計にて測定した。
【0087】
(耐光変色特性)
後述のポリアミド樹脂組成物ペレットを用いて、射出成形機(日精樹脂工業株式会社製NEX80−9E型)にて、樹脂温度 270℃、金型温度80℃で、100mm径×2mm厚みの円盤状成形品を成形した。その円盤をカーボンアーク(ブラックパネル温度 63℃、雨なし)にて120時間処理、成形品の変色変化を色差計にて測定した。
【0088】
(レーザーマーキング特性)
上記100mm径×2mm厚みの円盤状成形品を用い、またマーキング条件及び評価方法は次のように行なった。レーザーマーキング条件は、日本電気社製レーザーマーカーSL475Hマーキングを用い、レーザー発振器はS141C、レーザーの種類は連続発振式Nd:YAGレーザー(最大出力が50W以上)である。
【0089】
レーザーマーキングに際し、そのスキャンスピードは200mm/sec、超音波Qスイッチは2kHzにて行った。マーキング状況(濃さ、コントラスト)を目視にて判断し、次のように表記し、また総合的な評価を次の通り5段階で示すが、4以上では実用にならない。
【0090】
1:くっきり鮮明で良好なマーキング
2:良好なマーキング
3:やや薄めだが、良好なマーキング
4:解読可能であるが、かなり不鮮明なマーキング
5:印字不可または解読不可能
【0091】
(実施例1〜3、比較例1〜5)
表―1に示す配合量でポリアミド樹脂と各種添加剤をブレンド後、日本製鋼所製TEX30C型2軸押出機を用い、270℃の設定温度で溶融混合してポリアミド樹脂組成物のペレットを得た。得られたペレットを上記の各々の試験片を射出成形し、評価を行った。評価結果を表―1に示す。
【0092】
【表1】

【0093】
(1)実施例1〜2と比較例1〜2に示されるように、ブロック共重合体の水素添加物の変性物を特定量ポリアミド樹脂に配合した組成物において、特定の結晶化温度および粘度数範囲のポリアミド樹脂を使用した場合に、ストランドの安定性、耐衝撃強度、難燃性、流動性、成形品表面外観およびレーザーマーキング性の目標を到達することができる。
【0094】
(2)実施例1および3と比較例3および4の比較において、ブロック共重合体の水素添加物の変性物を使用したときに、ストランドの安定性、耐衝撃強度、難燃性、流動性、成形品表面外観およびレーザーマーキング性が良好であった。 また、実施例1と実施例3の比較で、未変性物と変性物の混合物を使用した場合がストランドの安定性、成形品表面外観およびレーザーマーキング性が、変性物単独の場合より良好であった。
【0095】
(3)ブロック共重合体の水素添加物の変性物の配合量が多い場合、難燃性が低下し、本発明の目標から外れる。
【0096】
本発明は、以上詳細に説明したとおり、次のような有利な効果が期待でき、産業上の利用価値は極めて高い。即ち、本発明のポリアミド樹脂組成物は、難燃性、耐衝撃特性、表面外観特性、生産性に優れ、且つレーザーマーキング特性に優れたポリアミド樹脂組成物であり、特にブレーカーなどの筐体向け電気電子部品用材料として利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)結晶化温度が140〜180℃のポリアミド樹脂99〜60重量%、及び
(B)少なくとも共役ジエン系化合物重合体ブロックを有するブロック共重合体に、不飽和酸および/またはその誘導体をグラフト変性した、変性率が0.1〜5%の耐衝撃改良剤1〜40重量%からなる樹脂成分100重量部に対して
(C)構造中にハロゲン原子を有し、主鎖に芳香環を有さない、分子量200〜500000のハロゲン系難燃剤1〜30重量部
(D)難燃助剤1〜15重量部
を配合した、ポリアミド樹脂組成物。
【請求項2】
(B)耐衝撃改良剤が、ビニル芳香族化合物重合体ブロックと、共役ジエン系化合物重合体ブロックからなるブロック共重合体の水素添加物の変性物と、未変性の該ブロック共重合体水素添加物とからなることを特徴とする、請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項3】
(B)耐衝撃改良剤が、以下の(B1)及び(B2)からなり、その重量比が9/1〜1/9であることを特徴とする、請求項2に記載のポリアミド樹脂組成物。
(B1):ビニル芳香族化合物重合体ブロックと、共役ジエン系化合物重合体ブロックからなるブロック共重合体の水素添加物。
(B2):ビニル芳香族化合物重合体ブロックと、共役ジエン系化合物重合体ブロックからなるブロック共重合体の水素添加物に対して、2.5〜5.0重量%無水マレイン酸をグラフトして変性した変性物。
【請求項4】
(A)ポリアミド樹脂が、ISO−307に準拠して測定した粘度数において80〜120ml/gであることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物を成形してなる樹脂成形体。
【請求項6】
レーザーマーキング処理用樹脂成形体であることを特徴とする請求項5に記載の樹脂成形体。
【請求項7】
電流ブレーカー用部品であることを特徴とする請求項5乃至6のいずれかに記載の樹脂成形体。

【公開番号】特開2009−35656(P2009−35656A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−202376(P2007−202376)
【出願日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(594137579)三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社 (609)
【Fターム(参考)】