説明

レーザーマーキング積層体、レーザーマーキング積層体の製造方法、およびレーザーマーキング表示体

【課題】レーザーマーキングする際に、開口部の形成精度に優れるとともに、光透過性にも優れたレーザーマーキング積層体、レーザーマーキング積層体の製造方法、およびそれを用いたレーザーマーキング表示体を提供する。
【構成】レーザー加工されて開口部を有する遮光層と、当該開口部に対応して設けられた着色層とを順次に含むレーザーマーキング積層体、レーザーマーキング積層体の製造方法、およびレーザーマーキング表示体において、有彩色の混色による減法調色により暗色化された着色層を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザーマーキング積層体、レーザーマーキング積層体の製造方法、およびレーザーマーキング表示体に関する。特に、形成精度等に優れたレーザーマーキング積層体、そのようなレーザーマーキング積層体の製造方法、およびレーザーマーキング表示体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザーマーキング方法やそれを用いて作成された表示体が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
より具体的には、熱可塑性樹脂より成形された成形品の表面にレーザー光を照射してマーキングする方法において、レーザー光を吸収し加熱されることにより変色又は脱色する添加物と、レーザー光の悪影響を受けにくい有機顔料・染料とを併せて含有してなる熱可塑性樹脂組成物より成形された成形品の表面に、レーザー光を照射してマーキングするレーザーマーキング方法である。
【0003】
また、図8に示すように、無色透明または有色透明な合成樹脂で成形された母材101と、この母材101上に、順次に、有色塗料102と、遮光塗料103と、白色塗料104と、非黒色の外装塗料105とを積層するとともに、外装塗料105、白色塗料104および遮光塗料102の一部を除去して、母材101および有色塗料102を露出させて、裏面側に設けた光源107によって照射される表示体100が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
さらに、意匠性に富んだ、深みのある漆黒性(高級感)を呈するマーク部が形成され、機械的特性にも優れた樹脂成形品であって、マーキング時の黒色発色のためのレーザー光線照射条件幅を著しく広くとることができる樹脂成形品が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
より具体的には、レーザー光線照射によるマーク部が成形品の体裁面に対する裏面側に所定形状の鏡像の形状で形成され、所定形状が体裁面側から視覚的に認知されるレーザーマーキング樹脂成形品である。
そのため、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体からの重合単位の含有量が50〜95重量%、ゴム質重合体の含有量が5〜30重量%である熱可塑性樹脂からなり、かつ、全光線透過率が30%以上であるとともに、カーボンブラック及び四酸化三鉄から選ばれる少なくとも1種類の黒色着色剤を0.01〜0.0001重量部の割合で含有する裏面レーザーマーキング用樹脂組成物が開示されている。
【特許文献1】特開平6 −297828号(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2005−17356号(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開2001−277725号(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1や特許文献2に記載されたレーザーマーキング方法を実施するにあたり、カーボンブラックや四酸化三鉄等を添加することから、種々の問題が見られた。
すなわち、着色層に含まれるカーボンブラック等に起因して、レーザー加工する際に、精度に優れた開口部(形成端部)を形成することができないという問題が見られた。
また、着色層に含まれるカーボンブラック等によって光透過率が著しく低下し、背面側に光源を設けたとしても、その光源からの透過光を、黒色光(黒色着色層)として認識することができないという問題も見られた。
【0006】
一方、特許文献3に記載された裏面レーザーマーキング用樹脂組成物は、成形品の体裁面に対する裏面側に積層した後、所定形状の鏡像として形成しなければならず、レーザー加工に対する制約が極めて大きいという問題が見られた。すなわち、裏面レーザーマーキング用樹脂組成物からなるレーザーマーキング積層体においては、十分に黒色を認識できないとともに、透明層の裏側に透過色層を設けることから、デザイン上の制約が大きかった。
また、裏面レーザーマーキング用樹脂組成物においても、所定量のカーボンブラック等を含有しなければならず、全光線透過率の調整が困難なばかりか、開口部の形成精度がいまだ良好でないという問題が見られた。
【0007】
そこで、本発明者らは、従来の問題を鋭意検討した結果、カーボンブラック等を使用することなく、有彩色の混色による減法調色(以下、減法混色と称する場合もある。)により暗色化させることにより、レーザーマーキングに適した光透過率の高い黒色系着色層が形成できることを見出し、本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明の目的は、レーザーマーキングによる開口部の形成精度に優れるとともに、光透過性に優れたレーザーマーキング積層体、レーザーマーキング積層体の製造方法、およびレーザーマーキング表示体をそれぞれ提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のレーザーマーキング積層体によれば、レーザー加工されて開口部を有する遮光層と、当該開口部に対応して設けられた着色層と、を順次に含むレーザーマーキング積層体であって、着色層として、有彩色の混色による減法調色により暗色化された着色層を設けたレーザーマーキング積層体が提供され、上述した問題点を解決することができる。
すなわち、有彩色の混色による減法調色により暗色化された着色層を設けることにより、レーザー加工の際に、カーボンブラック等の悪影響を受けずに、開口部の形成精度に優れるとともに、光透過性にも優れたレーザーマーキング積層体を得ることができる。
【0009】
また、本発明のレーザーマーキング積層体を構成するにあたり、着色層が、黒色またはグレー色であることが好ましい。
このように構成することにより、黒色またはグレー色を含む装飾性に優れたレーザーマーキング積層体を提供することができる。
【0010】
また、本発明のレーザーマーキング積層体を構成するにあたり、着色層の光透過率を10〜99%の範囲内の値とすることが好ましい。
このように構成することにより、背面側に光源を設けた場合に、装飾性に優れた暗色着色層を認識することができる。
【0011】
また、本発明のレーザーマーキング積層体を構成するにあたり、着色層の厚さを1〜100μmの範囲内の値とすることが好ましい。
このように構成することにより、所定の機械的強度や耐久性が得られる一方、背面側に光源を設けた場合に、装飾性に優れた暗色着色層を認識することができる。
【0012】
また、本発明のレーザーマーキング積層体を構成するにあたり、着色層に、ポリエチレンパウダーを含有するとともに、当該ポリエチレンパウダーの含有量を、着色層の全体量に対して、0.01〜10重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
このように構成することにより、遮光層をレーザーマーキングする際の、着色層における損傷をさらに少なくすることができる。
【0013】
また、本発明のレーザーマーキング積層体を構成するにあたり、着色層を第1の着色層と称した場合に、当該第1の着色層とは異なる色の第2の着色層を有することが好ましい。
このように構成することにより、赤色、青色、無色透明層等の第2の着色層を備えることから、装飾性や情報性に優れたレーザーマーキング積層体を提供することができる。
【0014】
また、本発明の別の態様は、レーザー加工されて開口部を有する遮光層と、当該開口部に対応して設けられた着色層とを順次に含むレーザーマーキング積層体の製造方法であって、下記工程(a)〜(c)を含むことを特徴とするレーザーマーキング積層体の製造方法である。
(a)着色層を、有彩色の混色による減法調色により暗色化して形成する工程
(b)着色層の上に、遮光層を形成する工程
(c)遮光層に対して、レーザーを照射し、開口部を形成する工程
すなわち、有彩色の混色による減法調色により暗色化された着色層を設けることにより、レーザーマーキングする際に、カーボンブラック等の悪影響を受けずに、開口部の形成精度に優れるとともに、光透過性に優れたレーザーマーキング積層体を効率的に得ることができる。
【0015】
また、本発明のさらに別の態様は、レーザー加工されて開口部を有する遮光層と、当該開口部に対応して設けられた着色層と、を順次に含むレーザーマーキング積層体を用いたレーザーマーキング表示体において、着色層が、有彩色の混色による減法調色により暗色化されているとともに、レーザーマーキング積層体の背面に、光源を有することを特徴とするレーザーマーキング表示体である。
すなわち、開口部の形成精度に優れるとともに、光透過性にも優れたレーザーマーキング積層体を用いたレーザーマーキング表示体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態は、図1(a)等に例示されるように、レーザー加工されて開口部16aを有する遮光層(黒色遮光層)16と、当該開口部16aに対応して設けられた着色層14aとを順次に含むレーザーマーキング積層体10である。
以下、図1(a)〜(c)等を適宜参照して、第1の実施形態であるレーザーマーキング積層体について、具体的に説明する。
【0017】
1.基本的構成
図1(a)に例示するように、基材12上に、着色層14と、遮光層16と、を順次に含むレーザーマーキング積層体10であって、レーザー加工された遮光層16の開口部16aにおいて、下地の着色層14aが露出して視覚されるという基本的構成である。
そして、着色層として、有彩色の混色による減法調色により暗色化された着色層14が設けてあることから、レーザーマーキングする際に、カーボンブラック等の悪影響を受けることなく、開口部16aの形成精度に優れるとともに、光透過性にも優れた暗色化された着色層14aが視認できるものである。
したがって、昼間は、外光によって、露出した下地の着色層14aが装飾性を発揮し、夜間には、背面側から透過してくる光によって、所定の装飾性や情報性を発揮できるものである。
また、図1(c)に示すように、露出した下地の着色層14aが、文字や記号、あるいは数字等を示す形状であれば、さらに、所定の装飾性や情報性を発揮することができる。
なお、基材12については、レーザーマーキング積層体10における必須構成要件ではないものの、着色層14や遮光層16を、その上に安定的かつ簡易に形成できるという点では、好適な部材である。そして、このような基材12の種類は特に制限されるものではないが、例えば、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、ゴム系樹脂等が挙げられる。また、このような基材12の形態としては、成形品、フィルム状、棒状、板状、複合形態等、各種態様とすることができる。
【0018】
2.遮光層
(1)構成
また、図1(a)〜(c)に例示される遮光層16は、樹脂と、所定量のレーザー吸収剤と、から基本的に構成することができる。
また、かかる遮光層16は、図1(a)に示すように、多層構造であっても良く、あるいは図1(b)に示すように、単層構造であっても良い。
図1(a)に示す多層構造の場合、三層のそれぞれにおいてレーザー吸収剤の添加量を変えることにより、遮光層16におけるレーザーの吸収性も対応して変えて、開口部の形成精度を高めることができる。より具体的には、着色層に近い層ほど、レーザー吸収剤の添加量を多くすることにより、開口部の形成精度を高めることができる。
さらに、中層のレーザー吸収剤の添加量を比較的多くするとともに、下層のレーザー吸収剤の添加量を比較的少なくすることにより、着色層におけるレーザー損傷をより少なくすることができる。
一方、遮光層16が、図1(b)に示すような単層構造の場合、開口部の形成精度は若干低下するものの、一回のスクリーン印刷等によって、形成できるという利点がある。
【0019】
ここで、遮光層を構成する樹脂の種類は特に制限されるものではないが、例えば、アクリル系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、シリコーン系樹脂、ゴム系樹脂の一種単独または二種以上の組み合わせが好ましい。
また、遮光層を構成する樹脂として、使い勝手に優れることから、これらの樹脂を主成分とした活性エネルギー線硬化性樹脂、例えば、紫外線硬化性樹脂であることも好ましい。
【0020】
また、遮光層に含まれるレーザー吸収剤としては、カーボンブラックや酸化鉄(四酸化三鉄)等が好ましい。特に、カーボンブラックの一種であるファーネスブラック、チャネルブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、オイルブラック、ガスブラック、ケッチェンブラック等の一種単独または二種以上の組み合わせであることがより好ましい。
そして、使用するレーザー吸収剤が粒子状の場合、例えば、平均粒子径を10〜10000nmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかるレーザー吸収剤の平均粒子径が10nm未満となると、均一に分散混合することが困難となったり、マーキング性や遮蔽性が不十分となったりする場合があるためである。一方、レーザー吸収剤の平均粒子径が10000nmを超えると、透明性が過度に低下したり、均一に混合分散したりすることが困難となる場合があるためである。
したがって、レーザー吸収剤の平均粒子径を30〜1000nmの範囲内の値とすることがより好ましく、50〜500nmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
また、遮光層におけるレーザー吸収剤の添加量を、遮光層の全体量に対して、0.001〜30重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかるレーザー吸収剤の添加量が0.001重量%未満となると、マーキング性や遮蔽性が不十分となる場合があるためである。一方、レーザー吸収剤の添加量が30重量%を超えると、均一に混合分散することが困難となる場合があるためである。
したがって、レーザー吸収剤の添加量を、遮光層の全体量に対して、0.1〜10重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、1〜5重量%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0021】
なお、図2に、レーザー吸収剤として、カーボンブラック(特性曲線A)、黒色焼成材料(特性曲線B)、黒色酸化鉄(特性曲線C)、黒色有機材料(特性曲線D)を用いた場合の、レーザーの反射率(%)を示す。
かかる特性曲線Aから明らかなように、カーボンブラックを用いると、幅広い波長のレーザーを吸収して、ほとんど反射率は5%以下の値となって、反射されないことが理解される。また、かかる特性曲線Bから明らかなように、黒色焼成材料を用いた場合にも、カーボンブラックほどではないものの、幅広い波長のレーザーを吸収して、ほとんど反射率は10%以下の値となって、反射が少ないことが理解される。
それに対して、かかる特性曲線Cから明らかなように、黒色酸化鉄を用いた場合には、波長によって、レーザーを吸収したり、比較的多く反射したり傾向があり、500nm付近から、2000nm付近に向かって、反射率が除々に上昇し、反射率が30%を越えることが理解される。
さらに、かかる特性曲線Dから明らかなように、黒色有機材料を用いた場合には、波長によって、レーザーを吸収したり、多く反射したりする傾向があり、500nm付近ではかなり低いが、それ以上の波長では急激に立ち上がり、50%以上の高い反射率の値が得られることが理解される。
したがって、遮光層におけるレーザー吸収剤として、カーボンブラックを用いた場合、レーザーの波長が多少変化したような場合であっても、特異的に優れたレーザー吸収効果を発揮できると言える。
【0022】
(2)光透過率
また、遮光層における光透過率を10%未満の値にすることが好ましい。
この理由は、かかる遮光層の光透過率が10%を超えると、遮光層としての効果を発揮することが困難となったり、マーキング性の精度が過度に低下したりする場合があるためである。
したがって、かかる遮光層の光透過率を1%未満の値とすることがより好ましく、0.1%未満の値とすることがさらに好ましい。
しかしながら、かかる遮光層の光透過率を過度に小さくすると、使用可能な材料の選択幅が狭まったり、添加するレーザー吸収剤(カーボンブラック等)の使用量が過度に多くなったりする場合がある。したがって、そのような場合には、遮光層の光透過率の下限を0.001%以上の値とすることが好ましい。
【0023】
(3)厚さ
また、遮光層の厚さについては特に制限されるものではないが、例えば、1〜1000μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる遮光層の厚さが1μm未満になると、遮光層としての効果を発揮することが困難となったり、機械的強度や耐久性が低下したりする場合があるためである。
一方、遮光層の厚さが1000μmを超えると、均一な厚さに形成することが困難になったり、マーキング性の精度が過度に低下したりする場合があるためである。
したがって、かかる遮光層の厚さを5〜500μmの範囲内の値とすることがより好ましく、10〜100μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0024】
3.着色層
(1)減法調色による着色層
また、図1(a)〜(c)に例示される有彩色の混色による減法調色による着色層14は、樹脂と、有彩色の混色による減法調色の関係にある少なくとも2種類の着色剤と、から構成される。すなわち、このように有彩色の混色による減法調色により暗色化された着色層を設けることにより、レーザーマーキングする際に、カーボンブラック等の悪影響を受けず、開口部の形成精度に優れるとともに、光透過性に優れた着色層を得ることができる。
また、有彩色の混色による減法調色による着色層が、黒色またはグレー色であることが好ましい。
この理由は、黒色またはグレー色であれば、従来得られなかった装飾性に優れたレーザーマーキング積層体を提供することができるためである。
【0025】
ここで、減法調色による着色層を構成する樹脂としては特に制限されるものではないが、例えば、アクリル系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、シリコーン系樹脂、ゴム系樹脂の一種単独または二種以上の組み合わせが好ましい。
特に、アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和カルボン酸;アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸ブチルなどの(メタ)アクリル酸エステル類;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミドなどを好適例として挙げることができる。
また、着色層を構成する別の樹脂の好適例として、ジエン系ゴム、アクリル系ゴム、エチレン系ゴムなどがあり、さらに具体例には、ポリブタジエン、ポリブタジエン−スチレン、ポリブタジエン−アクリロニトリル、ポリイソプレン、ポリブタジエン−アクリル酸ブチル、ポリブタジエン−アクリル酸メチル、ポリブタジエン−メタクリル酸メチル、ポリアクリル酸ブチル−メタクリル酸メチル、ポリブタジエン−アクリル酸エチル、エチレン−プロピレンラバー等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
【0026】
また、有彩色の混色による減法調色の関係にある着色剤としては、有彩色の顔料や染料を用いることができる。具体的には、アゾ系顔料、アントラキノン系顔料、イソインドリン系顔料、アゾメチン系顔料、キノフタロン系顔料、ニトロソ系顔料、ペリノン系顔料、アゾレーキ系顔料、キナクリドン系顔料、ピロロピロール系顔料、ジオキサジン系顔料、フタロシアニン系顔料、酸化物、硫化物、水酸化物、炭酸塩、硫酸塩、燐酸塩、珪酸塩、クロム酸塩、フェロシアン化合物等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
より具体的には、例えば、NOVEPERM RED F5RK(クラリアントジャパン社製)と、NOVEPERM YELLOW H10G01(クラリアントジャパン社製)と、NOVEPERM YELLOW HR−70(クラリアントジャパン社製)と、FASTGEN GREEN SF(大日本インキ社製)とを適宜組み合わせることによって、黒色度の高い黒色となる。
また、NOVEPERM YELLOW H10G01のかわりに、ファーストイエロM(大日精化工業(株)製)を用いたり、あるいは、FASTGEN GREEN SFのかわりに、シアニングリーン(大日精化工業(株)製)を用いたり、さらには適宜組み合わせたりすることによっても、黒色度の高い黒色となる。
【0027】
(2)光透過率
また、有彩色の混色による減法調色による着色層の光透過率を10〜99%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる着色層の光透過率が99%を超えると、使用可能な着色剤や樹脂の種類が過度に制限される場合があるためである。一方、かかる遮光層の光透過率が10%未満の値となると、背面側に光源を置いた場合に、透過してくる光量が少なくなって、視認性が過度に低下する場合があるためである。
したがって、有彩色の混色による減法調色による着色層の光透過率を30〜90%の範囲内の値とすることがより好ましく、50〜80%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0028】
(3)厚さ
また、有彩色の混色による減法調色による着色層の厚さを1〜1000μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる着色層の厚さが1μm未満になると、機械的強度が低下したり、安定的に形成したりすることが困難となる場合があるためである。一方、かかる着色層の厚さが1000μmを超えると、背面側に光源を置いた場合に、透過してくる光量が少なくなって、視認性が過度に低下する場合があるためである。
したがって、有彩色の混色による減法調色による着色層の厚さを5〜500μmの範囲内の値とすることがより好ましく、8〜20μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0029】
(4)ポリエチレンパウダー
また、有彩色の混色による減法調色による着色層に対して、ポリエチレンパウダーを含有するとともに、当該ポリエチレンパウダーの含有量を、着色層の全体量に対して、0.01〜10重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、所定量のポリエチレンパウダーを含有することにより、遮光層をレーザーマーキングする際の、着色層における損傷をさらに少なくすることができるためである。また、所定量のポリエチレンパウダーを含有することにより、基材に対する密着力の低下も抑制することができるためである。
また、ポリエチレンパウダーの平均粒子径を0.1〜100μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかるポリエチレンパウダーの平均粒子径が0.1μm未満となると、均一に分散混合することが困難となったり、マーキング性が不十分となったりする場合があるためである。一方、かかるポリエチレンパウダーの平均粒子径が100μmを超えると、透明性が過度に低下したり、均一に混合分散したりすることが困難となる場合があるためである。
したがって、ポリエチレンパウダーの平均粒子径を1〜100μmの範囲内の値とすることがより好ましく、5〜50μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0030】
(5)添加剤
また、有彩色の混色による減法調色による着色層に対して、各種添加剤を含有することも好ましい。例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、界面活性剤、消泡剤、あるいは、硬化剤や硬化促進剤等を添加することも好ましい。
特に、界面活性剤や消泡剤を添加することにより、レーザーマーキングした後の樹脂が、着色層との間の界面に残留することを有効に防止することができる。
また、所定の硬化剤や硬化促進剤を添加することにより、紫外線硬化型の着色層とすることができる。
なお、有彩色の混色による減法調色による着色層において、所定量以下であれば、カーボンブラックを添加することもできる。したがって、カーボンブラックを添加する場合には、着色層の全体量に対して、0.001重量%未満の値とすることが好ましく、0.0001重量%以下の値とすることがより好ましい。
この理由は、所定量以下のカーボンブラックの添加であれば、レーザーマーキングする際の悪影響を最大限抑制しながら、帯電特性を向上させたり、着色層における色の深みや濃さを増したりすることができるためである。
【0031】
(6)第2の着色層
また、図1(b)に示すように、上述した減法調色による着色層を第1の着色層14aと称した場合に、当該第1の着色層14aとは異なる色に対応した開口部16b、16cが設けてあり、それぞれに第2の着色層14b、14cが露出していることが好ましい。
この理由は、第1の着色層14aのほかに、赤色、青色、無色透明層等の第2の着色層を備えることにより、さらに装飾性や情報性に優れたレーザーマーキング積層体を提供することができるためである。
なお、第2の着色層14b、14cについては、レーザー光の悪影響を受けにくいことから、種々の着色剤を使用することができる。このような着色剤として、例えば、アンストラキノン系、ペリレン系、イソインドリノン系、フタロシアニン系、ポリアゾ系顔料等が挙げられる。
【0032】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態は、図3(a)〜(e)に例示されるように、レーザー加工されて開口部16aを有する遮光層16と、当該開口部16aに対応して設けられた着色層14aと、を順次に含むレーザーマーキング積層体10の製造方法であって、下記工程(a)〜(c)を含むことを特徴とするレーザーマーキング積層体10の製造方法である。
(a)着色層を、有彩色の混色による減法調色により暗色化して形成する工程
(b)着色層の上に、遮光層を形成する工程
(c)遮光層に対して、レーザーを照射し、開口部を形成する工程
以下、図3(a)〜(e)あるいは図4(a)〜(e)を適宜参照して、本発明の実施形態であるレーザーマーキング積層体10の製造方法について、具体的に説明する。
【0033】
1.工程(a)
まず、図3(a)に示すように、所定形状の基材12を準備するとともに、樹脂と、有彩色の混色による減法調色の関係にある着色剤と、を含む着色層用塗料を作成する。その場合、粘度調整のために、所定量の有機溶媒や希釈剤を添加することがより好ましい。
なお、図4(a)に示すように、着色層用塗料を塗布する基材12の表面に、装飾性を向上させるための白色層や、密着性を高めるための接着層からなる表面処理層12´を予め形成しておくことも好ましい。
次いで、図3(b)や図4(b)に示すように、着色層用塗料を、スクリーン印刷法、タンポ印刷法、グラビア印刷法等を用いて、所定形状の基材12上に、塗布して、着色層14を形成する。
なお、着色層用塗料を乾燥させて、減法調色の関係にある着色層14とするためには、着色層用塗料を塗布した後、例えば、40〜80℃、1〜10分の条件で、加熱乾燥処理することが好ましい。
すなわち、こうして減法調色の関係にある暗色化された着色層14を、有彩色の混色による減法調色を利用して、所定形状の基材12上に形成することができる。
【0034】
2.工程(b)
次いで、樹脂と、レーザー吸収剤(カーボンブラック等)と、を含む遮光層用塗料を作成する。その場合、粘度調整のために、所定量の有機溶媒や希釈剤を添加することがより好ましい。
次いで、図3(c)や図4(c)に示すように、作成した遮光層用塗料を、スクリーン印刷法、タンポ印刷法、グラビア印刷法等を用いて、着色層14上に塗布して、遮光層16とする。
なお、塗布した遮光層用塗料を乾燥させるためには、例えば、40〜80℃、1〜10分の加熱条件で、乾燥処理することが好ましい。
すなわち、こうして遮光層16を、有彩色の混色による減法調色の関係にある着色層14上に形成することができる。
【0035】
3.工程(c)
次いで、図3(d)や図4(d)に示すように、遮光層16の所定箇所に対して、レーザー光17を照射し、開口部16aを形成する。すると、遮光層16に含まれるレーザー吸収剤の働きによって、レーザー光17が集中的に吸収されて、その箇所が発熱する。
すなわち、図3(d)や図4(d)に示すように、所定箇所の樹脂が除去されて、開口部16aが形成され、下地の着色層14aが露出する。
その際、下地の着色層14aは、有彩色の混色による減法調色の関係にある着色剤から構成されており、レーザー吸収剤が実質的に含まれていないことから、下地の着色層14aを損傷するおそれが少なくなる。また、かかる下地の着色層14aが損傷しないことから、開口部16aの形成精度についても、著しく向上させることができる。
なお、使用するレーザー光17の種類は特に制限されるものではないが、例えば、炭酸ガスレーザー、ルビーレーザー、半導体レーザー、アルゴンレーザー、エキシマレーザー、YAGレーザー、Nd:YAGレーザー等が挙げられる。
特に、Nd:YAGレーザーマーカー(レーザー光線波長1064nm)を用いた場合には、一例ではあるが、レーザー出力50〜100%(100%=17W)でマーキングを行うことが好ましい。
【0036】
また、レーザーマーキングするにあたり、一例ではあるが、図5に示すような構成のレーザーマーカー50を使用することが好ましい。
すなわち、基材である樹脂成形品40に対して、レーザーロッド33から発信されたレーザー光39を照射するにあたり、位置あわせを、ガルバノメータースキャナー(Y方向)31と、ガルバノメータースキャナー(X方向)32とで行っている。
そして、レーザーロッド33からレーザー光39を発信するにあたり、Qスイッチ素子34、シャッター35、リアミラー36、フロントミラー37、コントローラー41、およびコンピューター(PC)42によって制御されている。
なお、レーザーマーカー50を用いて照射されるレーザー光39は、例えば、400nm〜2000nm以下の、可視光域から近赤外光域の光を発振することのできる固体レーザーであることが好ましい。また、レーザーマーキングのためのレーザー出力としては、20Wあれば充分であり、5Wのレーザー出力でも対応可能である。
【0037】
4.光源の設置工程
次いで、図3(e)や図4(e)に示すように、基材12の背面側に、後述する光源18を備えることにより、レーザーマーキング表示体20を得ることができる。例えば、図3(e)や図4(e)においては、基材12の背面側に設けた窪み12aに、光源18をそれぞれ配置してある。
したがって、昼夜は、外光によって、露出した下地の着色層14aが、遮光層16とともに装飾性を発揮し、夜間には、背面側から透過してくる光によって、主として、露出した下地の着色層14aが、所定の装飾性や情報性を発揮することができる。よって、例えば、遮光層16の中に、黒色やグレー色の減法調色により暗色化した着色層14aが見えるということになる。
そして、遮光層16において、背面側に設けた光源18から透過してくる光が遮断されるため、特に、暗闇や暗所では、遮光層16の存在が単独では認識されないことになる。
【0038】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態は、図1(a)等に例示されるように、レーザー加工されて開口部16aを有する遮光層16と、当該開口部16aに対応して設けられた着色層14aと、を順次に含むレーザーマーキング積層体10を用いたレーザーマーキング表示体20であって、着色層14が、有彩色の混色による減法調色により暗色化されているとともに、レーザーマーキング積層体10の背面に、光源18を有することを特徴とするレーザーマーキング表示体20である。
以下、図1等を適宜参照して、本発明の実施形態であるレーザーマーキング表示体20について、具体的に説明する。
【0039】
1.基本的構成
図1(a)〜(b)に示すように、レーザーマーキング表示体20は、光源18と、基材12と、有彩色の混色による減法調色により暗色化された着色層14と、開口部16aを有する遮光層16と、から基本的に構成されている。
すなわち、レーザーマーキング表示体20は、レーザーマーキング積層体10における基材12の背面側である窪み12aに、光源18を備えることにより、レーザーマーキング表示体20を構成することができる。
【0040】
2.光源
また、図1(a)〜(b)に示すように、光源18の種類としては、LED(発光ダイオード)、EL素子(エレクトロルミネッセンス素子)、電球、蛍光灯等が挙げられる。
特に、光源としてLED(発光ダイオード)を用いた場合、消費電力が小さくなる一方、レーザーマーキング表示体において所定の発光輝度を得ることができる。
また、光源18の数としては、レーザーマーキング表示体の用途や機能に対応して、図1(a)〜(b)に示すように一つであっても良く、また、図6(a)に示すように、複数(三つ)であっても良い。
光源が一つの場合には、主として、有彩色の混色による減法調色により暗色化された着色層14によって、装飾効果が発揮され、光源が複数の場合には、光源効果と相俟って、減法調色により暗色化された着色層14によって、複雑な装飾効果が発揮されることになる。
【0041】
3.変形例
また、図6(a)に示すように、レーザーマーキング積層体10の背面側に、複数の光源18a、18b、18cを設けて、それらの光源を、レーザーマーキング積層体10における基材12の窪み12aに備えて、レーザーマーキング表示体20とすることも好ましい。
例えば、複数の光源として、RGBの発光ダイオードを備え、それぞれを適宜点灯させることにより、各種発光や組み合わせ発光をすることができる。したがって、さらに装飾性に優れたレーザーマーキング表示体20を提供することができる。
【0042】
また、図6(b)に示すように、文字やマーク16´等が印刷された遮光層16や、同様に、文字やマーク12´等が印刷された基材12を用いたレーザーマーキング積層体10とし、光源18を、レーザーマーキング積層体10における基材12の背面側に備えたレーザーマーキング表示体20とすることも好ましい。
このように構成することにより、着色層14aの着色性と、遮光層16における文字やマーク16´、あるいは基材12における文字やマーク12´等が相俟って、さらに装飾性に優れたレーザーマーキング表示体20を提供することができる。
【0043】
また、図6(c)に示すように、着色したり、文字等が印刷されたりしたカバー22を備えたレーザーマーキング表示体20とすることも好ましい。
すなわち、着色層14aの着色性と、カバー22の着色性とが相俟って、さらに装飾性に優れたレーザーマーキング表示体20を提供することができる。また、カバー22を透明にすることにより、レーザーマーキング表示体20の発光性や識別生を損なうことも少なくなる。さらに、カバー22が、所定の機械的強度や耐久性を備えていることから、レーザーマーキング表示体20の寿命を長くすることもできる。
【0044】
また、図7に示すように、360度移動可能な三次元移動カバー30を備えたレーザーマーキング表示体とすることも好ましい。
すなわち、三次元移動カバー30およびそのガイド32による360度方向の移動によって、三次元移動カバー30の開口部30a、30bと、光源18a、18bの位置関係を適宜変更して、切り替えスイッチとして動作させることができる。より具体的には、開口部30a、30bの形状に対応した所定マークを光らせたり、暗色化させたりして、視認者に、動作状況に応じた切り替えスイッチとしての情報を伝達することができる。
【0045】
4.用途
また、レーザーマーキング表示体の用途としては、カーナビゲーター、カーオーディオ、カーエアコン、パーソナルコンピューター、コピー機、ファクシミリ、プリンター、シュレッダー、電話、携帯電話、ワードプロセッサー、ゲーム機、玩具部品、音響機器、映像機器、電気掃除機、電気炊飯器、電気冷蔵庫、電気洗濯機、電子レンジ等の表示用部品、操作用部品、装飾用部品、照明部品等に使用可能である。
【実施例】
【0046】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、特に理由なく、本発明はこれらの記載に限定されるものではない。
【0047】
[実施例1]
1.レーザーマーキング表示体の作成
(1)基材の準備
まず、基材として、図1(a)に示すような円筒キャップ型(直径3cm、高さ3cm、肉厚1mm)であって、ポリアセタール樹脂製の成型品を準備した。
【0048】
(2)減法調色により暗色化された着色層の形成
次いで、下記配合組成の着色層用塗料(以下、減色調色1と称する。)を作成した後、基材であるポリアセタール樹脂製の成型品の表面に、全面的にスクリーン印刷を行った。なお、スクリーン印刷後、加熱乾燥機を用いて、60℃、10分の乾燥処理を行った。
酢酸ビニル樹脂/塩化ビニル共重合樹脂ワニス :100重量部
NOVEPERM RED F5RK :5.7重量部
NOVEPERM YELLOW H10G01:3.0重量部
SEIKAFAST YELLOW M :0.5重量部
Fastogen Green SF :3.8重量部
ポリエチレンパウダー :2.0重量部
分散剤 :1.0重量部
消泡剤 :1.0重量部
【0049】
(3)黒色遮蔽層の形成
次いで、下記配合組成の黒色遮蔽層用塗料を作成した後、有彩色の混色による減法調色により暗色化された着色層の表面に、全面的にスクリーン印刷を行った。なお、スクリーン印刷後、加熱乾燥機を用いて、60℃、10分の乾燥処理を行った。
酢酸ビニル/塩化ビニル共重合樹脂ワニス :100重量部
カーボンブラック(平均粒径10nm) :1.0重量部
分散剤 :1.0重量部
【0050】
(4)レーザーマーキングおよび光源配置
次いで、図5に示すレーザーマーカーを用いて、Nd:YAGレーザー(レーザー光線波長1064nm)を、レーザー出力50〜100%(100%=17W)で照射して、所定形状(幅1mm、長さ1cm)のライン(ライン数10本)をマーキングした。
その後、図1(a)に示すように、ポリアセタール樹脂製の成型品の内部に、白色LEDを装着して、実施例1のレーザーマーキング表示体とした。
【0051】
2.レーザーマーキング表示体の評価
(1)開口部の形成精度
レーザーマーキングした後の開口部の寸法を測定し、予想寸法との差を誤差として算出し、以下の基準で評価した。
◎:予定寸法の0.1%以内の誤差である。
○:予定寸法の1%以内の誤差である。
△:予定寸法の5%以内の誤差である。
×:予定寸法の5%を超える誤差である。
【0052】
(2)着色層の状態
レーザーマーキングした後の着色層の状態を目視で観察し、以下の基準で評価した。
◎:全く損傷や変色は観察されない。
○:ほとんど損傷や変色は観察されない。
△:少々の損傷や変色が観察される。
×:顕著な変化や変色が観察される。
【0053】
[実施例2〜5]
実施例2〜5においては、それぞれ着色層用塗料に添加するポリエチレンパウダーの添加量を、0重量部(実施例2では添加せず)、0.5重量部(実施例3)、1.0重量部(実施例4)、5.0重量部(実施例5)としたほかは、実施例1と同様に、レーザーマーキング積層体を用いたレーザーマーキング表示体を作成して、評価した。
【0054】
[実施例6]
実施例6においては、以下の着色層用塗料の配合組成(以下、減色調色2と称する。)とし、白色度の高いグレー色としたほかは、実施例1と同様に、レーザーマーキング積層体を用いたレーザーマーキング表示体を作成して、評価した。
アクリル樹脂ワニス :100 重量部
白顔料(酸化チタン) : 50 重量部
NOVEPERM RED F5RK :0.02 重量部
NOVEPERM YELLOW H10G01:0.015重量部
Fastogen Green SF :0.015重量部
分散剤 :1.0重量部
消泡剤 :1.0重量部
【0055】
[実施例7]
実施例7においては、以下の着色層用塗料の配合組成(以下、減色調色3と称する。)とし、実施例6よりも暗色化したグレー色としたほかは、実施例1と同様に、レーザーマーキング積層体を用いたレーザーマーキング表示体を作成して、評価した。
アクリル樹脂ワニス :100 重量部
白顔料(酸化チタン) : 50 重量部
NOVEPERM RED F5RK :0.04重量部
NOVEPERM YELLOW H10G01:0.03重量部
Fastogen Green SF :0.03重量部
分散剤 :1.0重量部
消泡剤 :3.0重量部
【0056】
[実施例8]
実施例8においては、以下の紫外線硬化型樹脂を含む着色層用塗料の配合組成(以下、減色調色4と称する。)とし、暗色化した黒色としたほかは、実施例1と同様に、レーザーマーキング積層体を用いたレーザーマーキング表示体を作成して、評価した。
エポキシアクリレート/ウレタンアクリレート/アクリレートモノマー混合物
:100重量部
光重合開始剤 :3.0重量部
NOVEPERM RED F5RK :1.0重量部
シアニングリーン5310 :1.0重量部
NOVEPERM YELLOW HR−70 :0.3重量部
分散剤 :1.0重量部
消泡剤 :3.0重量部
【0057】
[比較例1]
実施例1における着色層用塗料の配合組成を以下のように変更し、カーボンブラック(CB)を所定量添加したほかは、実施例1等と同様に、レーザーマーキング積層体を用いたレーザーマーキング表示体を作成して、評価した。
酢酸ビニル/塩化ビニル共重合樹脂ワニス :100重量部
カーボンブラック(平均粒径1μm) :0.1重量部
分散剤 :1.0重量部
【0058】
[比較例2]
実施例7における着色層用塗料の配合組成を以下のように変更し、カーボンブラック(CB)を所定量添加して、グレー色としたほかは、実施例1等と同様に、レーザーマーキング積層体を用いたレーザーマーキング表示体を作成して、評価した。
アクリル樹脂ワニス :100 重量部
白顔料(酸化チタン) : 50 重量部
NOVEPERM RED F5RK :0.04重量部
NOVEPERM YELLOW H10G01:0.03重量部
Fastogen Green SF :0.03重量部
カーボンブラック(平均粒径1μm) :0.1 重量部
分散剤 :1.0 重量部
消泡剤 :3.0 重量部
【0059】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明のレーザーマーキング積層体等によれば、有彩色の混色による減法調色により暗色化された着色層を設けることにより、表層の遮光層をレーザーマーキングする際であっても、スパーク等せず、開口部の形成精度に優れるとともに、高い光透過性も得ることができるようになった。
したがって、本発明のレーザーマーキング積層体等であれば、遮光層の中に、黒色やグレー色の着色層が視覚可能であって、車載電装部品の照光式キートップや照光パネル等のレーザーマーキング表示体として、好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】(a)〜(c)は、本発明のレーザーマーキング積層体の基本的構成を説明するために供する図である。
【図2】レーザー吸収剤の種類と、レーザーの反射率との関係を説明するために供する図である。
【図3】(a)〜(e)は、本発明のレーザーマーキング積層体の製造方法を説明するために供する図である(その1)。
【図4】(a)〜(e)は、本発明の別のレーザーマーキング積層体の製造方法を説明するために供する図である(その2)。
【図5】レーザーマーカーを説明するために供する図である。
【図6】(a)〜(c)は、本発明のレーザーマーキング表示体を説明するために供する図である。
【図7】三次元移動カバーを備えたレーザーマーキング表示体を説明するために供する図である。
【図8】従来のレーザーマーキング表示体を説明するために供する図である。
【符号の説明】
【0062】
10:レーザーマーキング積層体
12:基材
14:減法調色による着色層
14a:露出部
16:遮光層
16a:開口部
17:レーザー光
18:光源
20:レーザーマーキング表示体
30:三次元移動カバー
32:ガイド
50:レーザーマーカー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー加工されて開口部を有する遮光層と、当該開口部に対応して設けられた着色層とを順次に含むレーザーマーキング積層体において、
前記着色層として、有彩色の混色による減法調色により暗色化された着色層を設けることを特徴とするレーザーマーキング積層体。
【請求項2】
前記着色層が、黒色またはグレー色であることを特徴とする請求項1に記載のレーザーマーキング積層体。
【請求項3】
前記着色層の光透過率を10〜99%の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1または2に記載のレーザーマーキング積層体。
【請求項4】
前記着色層の厚さを1〜100μmの範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のレーザーマーキング積層体。
【請求項5】
前記着色層に、ポリエチレンパウダーを含有するとともに、当該ポリエチレンパウダーの含有量を、着色層の全体量に対して、0.01〜10重量%の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のレーザーマーキング積層体。
【請求項6】
前記着色層を第1の着色層と称した場合に、当該第1の着色層とは異なる色の第2の着色層を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のレーザーマーキング積層体。
【請求項7】
レーザー加工されて開口部を有する遮光層と、当該開口部に対応して設けられた着色層とを順次に含むレーザーマーキング積層体の製造方法であって、下記工程(a)〜(c)を含むことを特徴とするレーザーマーキング積層体の製造方法。
(a)前記着色層を、有彩色の混色による減法調色により暗色化して形成する工程
(b)前記着色層の上に、遮光層を形成する工程
(c)前記遮光層に対して、レーザーを照射し、前記開口部を形成する工程
【請求項8】
レーザー加工されて開口部を有する遮光層と、当該開口部に対応して設けられた着色層とを順次に含むレーザーマーキング積層体を用いたレーザーマーキング表示体であって、
前記着色層が、有彩色の混色による減法調色により暗色化されているとともに、前記レーザーマーキング積層体の背面に、光源を有することを特徴とするレーザーマーキング表示体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−320095(P2007−320095A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−150957(P2006−150957)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【出願人】(392008024)十条ケミカル株式会社 (10)
【Fターム(参考)】