説明

レーザー光吸収添加剤

少なくとも、第1の官能基を有する第1のポリマーと0〜95重量%の吸収剤とを含有する粒子を含むレーザー光吸収添加剤であって、前記重量百分率が前記第1のポリマーと前記吸収剤の合計に対するものであり、前記第1のポリマーが、前記粒子の表面の少なくとも一部において、前記第1の官能基で第2の官能基と結合しており、前記第2の官能基が第2のポリマーに結合している、レーザー光吸収添加剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー光吸収添加剤に関する。
【背景技術】
【0002】
こうした添加剤は国際公開第01/0719号パンフレットで公知である。この国際公開では、吸収剤として粒径が少なくとも0.5μmの三酸化アンチモンが用いられている。この添加剤は、高分子組成物において明るい背景に対して暗いマーキングを施すことができるように、高分子組成物が少なくとも0.1重量%の添加剤を含むような含有量で、この高分子組成物に用いられる。さらに真珠光沢顔料を添加してコントラストを改良することが好ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この公知の添加剤は、多くの場合、特にそれ自体弱炭化性のポリマーを用いた組成物の場合、レーザー照射によってわずかなコントラストしか得ることができないという欠点を有する。
【0004】
本発明の目的は、それ自体が弱炭化性のポリマーに混ぜた場合にも、優れたコントラストでレーザー光での書込みができる組成物を生成する添加剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は本発明によって達成される。本発明では、添加剤は、少なくとも、第1の官能基を有する第1のポリマーと0〜95重量%の吸収剤とを含有する粒子を含む。重量百分率は第1のポリマーと吸収剤の合計に対するものである。第1のポリマーは、粒子の表面の少なくとも一部において、第1の官能基で第2の官能基と結合しており、この第2の官能基は第2のポリマーに結合している。
【0006】
レーザー光で照射すると、本発明の添加剤を含有する高分子組成物は、照射部分と非照射部分の間に予想外に高いコントラストを生じることが見出されている。また、このコントラストは、吸収剤と第1のポリマーもしくは第2のポリマーのみを含有する組成物を用いた場合より著しく高い。
【0007】
本発明の添加剤は、0〜95重量%の吸収剤を含有する。驚くべきことに、別個の吸収剤を含有せず、したがって第1のポリマー粒子(これに結合した第2のポリマーの層で取り囲まれている)のみからなる添加剤が、レーザー光を受けて第1のポリマーそれ自体より著しく高い黒変をもたらすことが見出された。
【0008】
しかし、添加剤が、少なくとも1重量%以上、好ましくは少なくとも2、3、4、5または10重量%の吸収剤を含有することが好ましい。これによりレーザー光で照射した場合の添加剤の黒変が早くなるからである。
【0009】
添加剤は、多くても95重量%の吸収剤を含有する。これより高い含有量では、おそらく添加剤中に存在する第2のポリマーおよび特に第1のポリマーの量が相対的に少なくなる結果、黒変能力は低下する傾向がある。以下に説明するようにこれらの成分が炭化を促進すると思われるので、これらの成分が添加剤中に存在することが、本発明の組成物においては非常に重要であることが見出されている。添加剤が5重量%〜80重量%の吸収剤を含有することが好ましい。この範囲において、この組成物は最適の黒変能力を示す。
【0010】
吸収剤としては、一定の波長のレーザー光を吸収することができる物質を使用することができる。実際は、この波長は、レーザーの通常の波長範囲である157nm〜10.6μmにある。より長波長または短波長のレーザーが使用できる場合は、本発明の添加剤に他の吸収剤を使用することを考慮してもよい。前記領域でのこうしたレーザー加工の例としては、COレーザー(10.6μm)、Nd:YAGレーザー(1064、532、355、266nm)、および以下の波長のエキシマーレーザー:F(157nm)、ArF(193nm)、KrCl(222nm)、KrF(248nm)、XeCl(308nm)およびXeF(351nm)が挙げられる。マーキングの目的で用いられる熱プロセスの誘導に非常に適した波長範囲で作用するので、Nd:YAGレーザーおよびCOレーザーを使用することが好ましい。こうした吸収剤はそれ自体公知であり、これらがレーザー照射を吸収できる波長範囲もまた公知である。以下に、吸収剤としての使用を考慮できる様々な物質を具体的に挙げる。
【0011】
ポリマーに混ぜられた、好ましくは粒径が200nm〜50μmの粒子状の添加剤の活性は、レーザー光からポリマーに吸収されたエネルギーの伝達がベースになると思われる。このポリマーは、この放熱によって炭素を残して分解することができる。このプロセスは炭化として知られている。後に残る炭素の量はポリマーに左右される。従来技術の添加剤においては、多くの場合、特に、分解した後に残る炭素が少ない弱炭化性ポリマーの場合、周囲への放熱が許容しうるコントラストを生じるには不十分であると思われる。
【0012】
適切な吸収剤の例としては、銅、ビスマス、スズ、アルミニウム、亜鉛、銀、チタン、アンチモン、マンガン、鉄、ニッケルおよびクロムなどの金属の酸化物、水酸化物、硫化物、硫酸塩およびリン酸塩、ならびにレーザー光吸収性の有機(無機)染料が挙げられる。特に適しているのは、三酸化アンチモン、二酸化スズ、チタン酸バリウム、二酸化チタン、酸化アルミニウム、リン酸銅、ならびにアンスラキノン染料およびアゾ染料である。
【0013】
本発明の添加剤は、実質的に、第1の官能基を有する第1のポリマーと、これに混ぜられた、0〜95重量%、好ましくは1〜95重量%、より好ましくは5〜80重量%の吸収剤とを含む粒子からなる。この重量百分率は、第1のポリマーおよび吸収剤の合計に対するものである。この第1のポリマーは、一般に無機の吸収剤に一定の力で付着することができる極性を有することが好ましい。吸収剤も一般に極性を有する。これにより、吸収剤が、添加剤の加工中に、レーザー光吸収成分として添加剤を使用する以下に説明する組成物の他の成分に移動することはない。
【0014】
実際は、添加剤の粒径は0.2〜50μmの間にある。レーザー光を効果的に吸収させるためには、これらの粒径は、後で使用するレーザー光の波長の少なくとも約2倍に等しいことが好ましい。この場合、単一または複数の吸収剤粒子からなる吸収剤の粒径に応じた吸収剤の量と、これに付着した第1のポリマーの量とを合わせて添加剤の粒子と見なされ、第2のポリマーによって他の添加剤粒子から分離されている。粒径とは、任意の方向の最大寸法、したがって、例えば球状粒子では直径、楕円形粒子では最大長さを意味する。レーザー光波長の2倍を超える粒径では、明らかにレーザー光の吸収効果が低下するが、添加剤粒子の存在による透明性低下への影響も少なくなる。この粒径は、500nm〜2.5μmの間であることが好ましい。
【0015】
吸収剤は、添加剤の粒径より小さい粒子の形で添加剤中に存在する。吸収剤の粒径の下限は、第1のポリマー中に吸収剤を混ぜることができなければならないという必要条件によって決まる。この混和性が一定重量の吸収剤粒子の総表面によって決まることは当分野の技術者に知られており、当分野の技術者は、添加剤の所望の粒径および混ぜるべき吸収剤の所望量が分かれば、混ぜるべき吸収剤の粒径の下限を容易に決めることができるであろう。一般に、吸収剤粒子のD50は、100nmを下回ることはなく、好ましくは500nmを下回ることはない。本発明の添加剤では、第1のポリマーは、粒子の表面の少なくとも一部において、第1の官能基で第2の官能基と結合しており、この第2の官能基は第2のポリマーに結合している。
【0016】
第1のポリマーおよび第2のポリマーはどちらも熱可塑性ポリマーであることが好ましい。これにより、第1のポリマーへ吸収剤を混合することが容易になり、さらに、マトリックスポリマーへ添加剤を混合してこれをレーザー書込みに適したものにすることも容易になる。
【0017】
第1のポリマーは第1の官能基を含み、この官能基で第2の官能基に結合している。この第2の官能基は第2のポリマーに結合している。したがって、添加剤粒子の表面付近には、それぞれの官能基で第1のポリマーに結合した第2のポリマーの層が存在する。この第2のポリマーは、添加剤粒子周囲の環境から粒子内の第1のポリマーを少なくとも部分的に遮っている。第2のポリマーの層の厚みは重要ではなく、一般に粒径に対して無視でき、例えばその1〜10%である。例えばMAを1重量%グラフトした第2のポリマーでは、第1のポリマーに対する第2のポリマーの量は、2〜50重量%であり好ましくは30重量%より少ない。他の官能基および/または第2の官能基の別の百分率では、第2のポリマーの量は、示した実施例に相当する第2の官能基の量が存在するように選択することが望ましい。第2の官能基の数が増大するにつれて、添加剤の粒径は小さくなることが分かる。
【0018】
第1のポリマーに結合した第2のポリマー以外に、官能基を持たない一定量の第3のポリマー、例えばポリオレフィンが存在することも好ましい。第3のポリマーとして、マトリックスポリマーを選択することも可能であり、マトリックスポリマーには後でマスターバッチが混ぜられる。所望により、このマトリックスポリマーを第4のポリマーとして加えて、より多量のマトリックスポリマーへのより優れた混合が後で得られるようにすることもできる。これは、例えば、マトリックスポリマーとしてシリコーンゴムを使用する場合である。この官能化されていない第3のポリマーは、結合した第2のポリマーと同じであってもよいが、少なくともこれとの相溶性、特に混和性がなければならない。このようにして、粒子中の第1のポリマーの、環境からの前記遮断が改良され、本発明の添加剤(これは、この場合、添加剤を官能化されていない第3のポリマーに混ぜたマスターバッチであると見なすことができる)をマトリックスポリマーに混合してこれをレーザー書込み可能にすることも改良することができる。こうしたマスターバッチにおいて、官能化された第2のポリマーと官能化されていない第3のポリマーを加えた比率は、第1、第2および第3のポリマー、ならびに吸収剤の合計の20〜60重量%であることが好ましい。より好ましくは、この比率は25〜50重量%である。前記限界内で、溶融加工で好適に混ぜることができるマスターバッチが得られる。前記60%より高い比率も可能であるが、この場合はマスターバッチにおける適正な添加剤粒子の量が相対的に少なくなる。
【0019】
第1および第2の官能基としては、互いに反応することができる任意の2官能性の基を考慮に入れることができる。適切な官能性基の例としては、カルボン酸基ならびにそのエステル基と無水および塩の形、エポキシ環、アミン基、アルコキシシラン基、またはアルコール基が挙げられる。こうした官能基が互いに反応することができることは、当分野の技術者に公知である。官能基は、ポリアミドの末端カルボン酸基のように第1および第2のポリマー自体に存在してもよいが、例えばポリオレフィンに官能基を付与して、例えばそれ自体公知のマレイン酸グラフトポリエチレンとするために通常用いられるように、例えばグラフトによってこれらポリマーに官能基を付けてもよい。
【0020】
適切な第1のポリマーは、溶融物中で第2のポリマーの第2の官能基と反応することができる第1の官能基を含む半結晶性または非晶質ポリマーである。
【0021】
半結晶性および非晶質ポリマーそれぞれの融点およびガラス転移点は、好ましくはそれぞれ120℃および100℃より高く、より好ましくはそれぞれ150℃および120℃より高い。適切な第2の官能基は、例えば、ヒドロキシ、フェノール、(カルボン)酸(無水物)、アミン、エポキシおよびイソシアネートの各基である。適切な第2のポリマーの例としては、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、半結晶性ポリアミド、例えばポリアミド−6、ポリアミド−66、ポリアミド−46、および非晶質ポリアミド、例えばポリアミド−6Iまたはポリアミド−6Tを含めたアミン官能化ポリマー、ポリスルホン、ポリカーボネート、エポキシ官能化ポリメチル(メタ)アクリレート、エポキシまたは上記の他の官能基で官能化されたスチレンアクリロニトリルが挙げられる。適切な第1のポリマーは、通常の極限粘度と分子量を有するものである。ポリエステルについては、極限粘度は、m−クレゾール中25℃で測定して、例えば1.8〜2.5dl/gである。ポリアミドについては、分子量は、例えば5,000〜50,000である。
【0022】
適切な第1のポリマーを選択するには、主として、第1のポリマーに期待される吸収剤に対する接着性、および必要なその炭化度が、当分野の技術者の指針となるであろう。この吸着剤に対する第1のポリマーの接着性は、吸着剤に対する(以下に定義する)第2および第3のポリマーの接着性より優れていることが特に好ましい。これにより、吸収添加剤は、加工中にその完全性が保持される。さらに、吸収剤と第1のポリマーが互いに化学的に反応することは望ましくない。こうした化学反応は、吸収剤および/または第1のポリマーの劣化を引き起こし、望ましくない副生成物、変色、ならびに機械特性およびマーキング性の低下をもたらす。
【0023】
第1のポリマーは、窒素雰囲気でポリマーを熱分解した後に残る炭素の相対量として定義した炭化度が、少なくとも5%であることが好ましい。炭化度が低いと、レーザー照射で得られるコントラストが低下し、炭化度が高いと、コントラストは飽和が起こるまで上昇する。本発明の添加剤に適合するポリマーとして、それ自体ではほとんど見えないコントラストしか生じない、こうした低い炭化度のポリマーがレーザー照射中に存在するだけで、高いコントラストを得ることができることは驚くべきことである。ポリアミドとポリエステルは、広い融点範囲でこれらを利用できるために非常に適しており、それぞれ約6%および12%の炭化度を有する。ポリカーボネートは、その炭化度が25%とさらに高いこともあって、非常に適している。さらに、ポリアミドとポリエステルは、大部分の無機吸収剤に、特に酸化アルミニウムおよび二酸化チタンにも、優れた接着力を示すようである。ポリアミドは三酸化アンチモンにも優れた接着性を示す。さらに、その第1の反応性基の、例えばグラフトポリマーとして有利に使用できるMAグラフトポリマー(後述)との反応は、添加剤が通常使用される環境で不可逆である。
【0024】
第2のポリマーとして好適なのは、使用される第1のポリマーの第1の官能性基と反応できる官能基を有する熱可塑性ポリマーである。第2のポリマーとして特に好適なのは、官能化エチレン性不飽和化合物をグラフトしたポリオレフィンポリマーである。ポリオレフィンポリマーにグラフトされた官能化エチレン性不飽和化合物は、第1のポリマーの第1の官能基、例えばポリアミドの末端基と反応することができる。本発明の組成物での使用を考慮できるポリオレフィンポリマーは、官能化エチレン性不飽和化合物をグラフトすることができる、または重合プロセス中に官能基を有する化合物をポリマー鎖に組み込むことができる、1種または複数種のオレフィンモノマーのホモポリマーおよびコポリマーである。適切なポリオレフィンポリマーの例は、エチレンポリマーとプロピレンポリマーである。適切なエチレンポリマーの例としては、例えばチーグラー・ナッタ触媒、フィリップス触媒およびメタロセン触媒などの公知の触媒を用いて製造することができる、エチレンのすべての熱可塑性ホモポリマーおよびコポリマーが挙げられる。コモノマーとしては、3〜10個の炭素原子を有する1種または複数種のα−オレフィン、特にプロピレン、イソブテン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンおよび1−オクテンが挙げられる。一般に、コモノマーの量は、0〜50重量%であり、好ましくは5〜35重量%である。こうしたポリエチレンは、特に高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、直鎖状超低密度ポリエチレン(VL(L)DPE)などの名前で知られている。密度が860〜970kg/mのポリエチレンが適している。適切なプロピレンポリマーは、プロピレンのホモポリマーおよびプロピレンとエチレンとのコポリマーである。コポリマー中のエチレンの比率は、30重量%以下、好ましくは25重量%以下である。これらのメルトフローインデックス(230℃、2.16kg)は、0.5〜25g/10分、より好ましくは1.0〜10g/10分である。適切な官能化エチレン性不飽和化合物は、上記の適切なポリオレフィンポリマーの少なくとも1種にグラフトできるものである。これらの化合物は、炭素−炭素二重結合を有し、ポリオレフィンポリマーにグラフトされてそこに側鎖を形成することができる。公知の方法で、これらの化合物に上記の適切な官能基の1つを形成することができる。
【0025】
適切な官能化エチレン性不飽和化合物の例としては、不飽和カルボン酸と、そのエステル、無水物、金属または非金属塩が挙げられる。化合物のエチレン性不飽和はカルボニル基と共役していることが好ましい。例としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、メチルクロトン酸およびケイ皮酸と、そのエステル、無水物、可能な塩が挙げられる。少なくとも1個のカルボニル基を有する化合物の中では、無水マレイン酸が好ましい。
【0026】
少なくとも1個のエポキシ環を有する適切な官能化エチレン性不飽和化合物の例としては、例えば、不飽和カルボン酸のグリシジルエステル、不飽和アルコールおよびアルキルフェノールのグリシジルエステル、ならびにエポキシカルボン酸のビニルおよびアリルエステルが挙げられる。グリシジルメタクリレートが特に適している。
【0027】
少なくとも1個のアミン官能基を有する適切な官能化エチレン性不飽和化合物の例としては、少なくとも1個のエチレン性不飽和基を有するアミン化合物、例えばアリルアミン、プロペニル、ブテニル、ペンテニルおよびヘキセニルアミン、アミンエーテル、例えばイソプロペニルフェニルエチルアミンエーテルが挙げられる。アミン基と不飽和は、これらがグラフト反応に望ましくない影響を及ぼさないような相互位置関係にあることが望ましい。アミンは、置換されていなくても、例えばアルキルおよびアリール基、ハロゲン基、エーテル基、ならびにチオエーテル基などで置換されていてもよい。
【0028】
少なくとも1個のアルコール官能基を有する適切な官能化エチレン性不飽和化合物の例としては、エーテル化もしくはエステル化することができる、またはできない水酸基とエチレン性不飽和とを有するすべての化合物、例えば、エチルアルコールや分岐もしくは非分岐の高級アルキルアルコールなどのアルコールのアリルおよびビニルエーテル、ならびにアルコール置換の酸、好ましくはカルボン酸とC〜Cアルケニルアルコールのアリルおよびビニルエステルが挙げられる。さらに、これらのアルコールは、グラフト反応に何らの望ましくない影響も及ぼさない基、例えばアルキルおよびアリール基、ハロゲン基、エーテル基ならびにチオエーテル基で置換することができる。
【0029】
本発明の枠組み内の官能化エチレン性不飽和化合物として適切なオキサゾリン化合物の例としては、例えば、以下の一般式
【化1】



(式中、Rは、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、C〜C10のアルキル基またはC〜C14のアリール基である)を有するものが挙げられる。
【0030】
グラフトによって官能化されたポリオレフィンポリマーにおける官能化エチレン性不飽和化合物の量は、ポリオレフィンポリマー1グラム当り0.05〜1mg当量である。
【0031】
第3のポリマーとしては、その官能化されていない形ではあるが、第2のポリマーについて上に述べたものと同じポリマーを考えることができる。
【0032】
第2のポリマー、および特に第3のポリマーは、顔料、着色剤および染料を含有することができる。これには、着色組成物が好ましいような場合にこのレーザー書込み可能添加剤をマトリックスポリマーと混ぜるとき、別の着色マスターバッチを添加しなくても良いというメリットがある。
【0033】
本発明は、吸収剤と第1の官能基を有する第1のポリマーとを含有する組成物を、第1の官能基と反応する第2の官能基を有する第2のポリマーと混合するステップを含む、本発明の添加剤の製造方法にも関する。
【0034】
この方法で、添加剤は第1のポリマーと吸収剤の混合物からなりその表面に第2のポリマーの層が形成されている粒子に分割され、その結果この添加剤をマトリックスポリマーに混ぜた後レーザーで書込みすると、そこに最適なコントラストが得られることが見出された。
【0035】
吸収剤と第1のポリマーを含有する組成物は、吸収剤と第1のポリマーの溶融物とを混ぜることによって製造することができる。第1のポリマーの量と吸収剤の量の比は、90容量%:10容量%から60容量%:40容量%の間にある。より好ましくは、この比は、80容量%:20容量%から50容量%:50容量%の間にある。
【0036】
前記組成物は、第1の官能基と反応する第2の官能基を有する第2のポリマーと混ぜられる。この混合は、第1のポリマーおよび第2のポリマー両方の融点より高い温度で、好ましくは一定量の官能化されていない第3のポリマーの存在下で行われる。考えられる第3のポリマーとしては、特に、第2のポリマーとして上に述べたもの、ただしその非官能化形が挙げられる。この第3のポリマーは、官能化された第2のポリマーと同一である必要はない。官能化されていない第3のポリマーの存在により、混合物全体の溶融加工性が十分確保されるので、添加剤は得られるマスターバッチで所望の均質な分布になっている。
【0037】
溶融物中で官能基は互いに反応し、添加剤粒子の表面の少なくとも一部に第2のポリマーの遮蔽層が形成される。ある点で第2のポリマーの遮蔽作用が支配的になり、添加剤粒子に存在する未反応の第1のポリマーはもはや周囲の溶融物を通ることができない。この遮蔽作用は、第1のポリマーと第2のポリマーの極性の差が大きくなるに連れてより効果的になる。第1のポリマーが極性を持つことが好ましいことは既に上記した。さらに、第2および第3のポリマーが第1のポリマーより低い極性を持つことが好ましく、第2および第3のポリマーが完全またはほぼ完全に無極性であることがより好ましい。
【0038】
得られるマスターバッチ中の添加剤の粒径は、第2の官能基の量に左右される。添加剤の適切な粒径が得られる下限および上限は、第1のポリマーに左右されるようである。第2の官能基の量が増大するにつれて粒径が小さくなる。その逆も起こる。第2の官能基の量が多すぎると、粒子は小さくなり過ぎ、さらに第2のポリマーの第1のポリマーに対する結合度が、第1のポリマー粒子と吸収剤粒子の偏析を起こすほどになる。このために、この添加剤をマスターバッチの形で混ぜた対象物を照射すると、コントラストが低下することになる。第2の官能基の量が少なすぎると、添加剤の粒子が大きくなり、この添加剤をマスターバッチの形で混ぜた対象物を照射すると、望ましくない粗いスペックルを有する不均質なパターンが形成される。さらに、第3のポリマーの溶融粘度が、形成されたマスターバッチ中の添加剤の粒径に影響を及ぼす。溶融粘度が高くなるほど、粒径は小さくなる。上記の洞察を用いれば、当分野の技術者は、単純な実験で、既に上記した限界内の第2の官能基の適切な量を決めることができるであろう。
【0039】
レーザー書込みポリマー組成物を得るには、本発明の添加剤をマトリックスポリマーに混ぜる。マトリックスポリマーと本発明の添加剤との組成物は、特にマトリックスポリマー自体のレーザー書込み性が悪い場合、レーザー光を用いて公知の組成物より優れたコントラストで書込みできることが見出されている。また、このレーザー書込み性は、吸収剤それ自体をマトリックスポリマーに混ぜた場合、または吸収剤を第1もしくは第2のポリマーだけと混ぜた場合より優れている。
【0040】
したがって、本発明は、マトリックスポリマーとその中に分散した本発明の添加剤とを含む、レーザー書込み可能組成物にも関する。
【0041】
本発明のレーザー書込み可能組成物の利点は、すべてのマトリックスポリマーで十分に発揮されるが、特に、マトリックスポリマーが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリウレタン、ポリエステル、熱可塑性加硫ゴム(SARLINK(登録商標)がその一例)、熱可塑性エラストマー(Arnitel(登録商標)がその一例)、およびシリコーンゴムからなる群から選択された場合に十分に発揮される。
【0042】
本発明のレーザー書込み可能組成物は、マトリックスポリマーの特定の特性を向上させる、またはそれに特性を追加する他の添加剤も含有できる。
【0043】
適切な添加剤の例としては、補強材[ガラス繊維および炭素繊維、珪灰石を含めた粘土などのナノフィラー、ならびに雲母など]、顔料、染料および着色剤、充填剤[炭酸カルシウムおよび滑石など]、加工助剤、安定剤、酸化防止剤、可塑剤、耐衝撃性改良剤、難燃剤、離型剤、発泡剤が挙げられる。
【0044】
添加剤の量は、形成するコンパウンドの容積に対して、1もしくは2容量%などの極少量から70もしくは80容量%以上まで変えることができる。添加剤が通常使用される量は、この組成物を照射して得られるレーザーマーキングのコントラストに対して、いかなる否定的な影響も許容限定内になる程度の量である。非常に優れたレーザー書込み性を示す充填組成物は、ポリアミド、特にポリアミド−6、ポリアミド−46またはポリアミド−66と、充填剤として滑石とを含む組成物である。
【0045】
本発明のレーザー書込み可能組成物は、添加剤を溶融マトリックスポリマー中に混ぜることによって製造することができる。この混合を促進するためには、マスターバッチ中で坦体としての役割を果たす官能化されていないポリマーの融点は、マトリックスポリマーの融点以下であることが好ましい。第1のポリマーの融点は、少なくともマトリックスポリマーの融点以上であることが好ましい。官能化されていないポリマーは、マトリックスポリマーと同じものでも、またはこれと異なるものでもよい。後者は第1のポリマーにも適用される。したがって、第1のポリマーがポリアミド、第2のポリマーが無水マレイン酸グラフトポリエチレンであるポリマー組成物の層を設けた吸収剤は、ポリアミドマトリックスに混ぜた場合、およびポリエチレンマトリックスに混ぜた場合の何れでも、高いコントラストでレーザー書込み可能組成物を形成することが見出された。この好都合な効果は、第1のポリマーが例えばポリカーボネートの場合でも、ポリアミドおよびポリエチレンの両方で得られる。
【0046】
添加剤の量は、マトリックスポリマー中での吸収剤の望ましい密度に左右される。通常、添加剤の量は、添加剤とマトリックスポリマーの合計の0.1〜10重量%であり、好ましくは0.5〜5重量%、より好ましくは1〜3重量%である。これは、マトリックスポリマーの特性に実質的に影響を及ぼすことなく、大部分の用途に十分なコントラストを与える。添加剤として染料を使用する場合、一定の濃度から出発してマトリックスポリマーの着色を行うように考慮することが望ましい。
【0047】
添加剤をマトリックスポリマー中に混ぜる場合、添加剤粒子の形状は発生する剪断力によって変化する可能性がある。具体的には、添加剤粒子の形状は細長くなり、その結果粒径が増大する。この増大は一般に2倍以下であり、マトリックスポリマー中に混ぜるために粒径を選ぶ場合は、必要に応じてこれを考慮に入れることができる。
【0048】
添加剤含有マトリックスポリマーは、発泡を含めて、熱可塑性樹脂の加工として知られている技術を用いて加工および成形することができる。レーザー書込み可能添加剤の存在は、通常、マトリックスポリマーの加工特性に著しい影響を及ぼすことはない。このようにして、こうしたプラスチックから製造できるほとんどどんな物体も、レーザー書込み可能な形にすることができる。こうした物体には、例えば機能的データ、バーコード、ロゴおよび識別コードを設けることができ、医療分野(注射器、ポット、カバー)で、自動車業界(ケーブル、部品)で、電気通信および電気電子分野(GSM前面、キーボード)で、セキュリティおよび識別用途(クレジットカード、識別プレート、ラベル)で、広告用途(ロゴ、コルクの装飾、ゴルフボール、販促物)で、さらに実際のところ、実質的にマトリックスポリマーからなる物体にある種のパターンを形成することが有用であるか、さもなければ望ましい若しくは効果的なその他任意の用途で、これを使用することができる。
【0049】
本発明の添加剤は、上記のように、吸収剤と第1のポリマーを混ぜ、次いで得られた混合物に第2のポリマー、および任意選択で一定量の官能化されていない第3のポリマーを混ぜることによって得ることができる。得られた3成分混合物から、および第3のポリマーを混ぜた場合は得られたマスターバッチから、第2のポリマーおよび第3のポリマーの非結合部分があればこれを混合物から除去することにより、純粋な形で本発明の添加剤を得ることができる。このための適切な方法としては、例えば、第2のポリマーおよび存在する場合は第3のポリマーを溶媒で抽出して精密ろ過を行う。このように純粋な形で粒子を分離し、さらに微粒子として示すためには、混合物またはマスターバッチを使用することが好ましい。これらの中で、添加剤の粒径は、レーザー光の吸収を最適にし、非常に薄い層での使用を可能にするために、500nm〜20μm、より好ましくは500nm〜10μm、特に好ましくは500nm〜2μmになっている。微粒子は、添加剤粒子と、添加剤粒子の第1のポリマーに結合した第2のポリマーの外層とからなる。
【0050】
この純粋な微粒子形状の添加剤を物体の表面に塗布することが可能であることが見出された。したがって、この粉末は、微粒子がバインダー中に安定化されたコーティングまたはワニスの形で使用することができる。このためのそれ自体公知の適切な技術は、例えば、スクリーン印刷およびオフセット印刷である。次いで、得られた表面にレーザーで書込みを行うことができる。この方法の利点は、添加剤が物体全体に存在する必要が無く、また所望により、レーザー書込み性を所望する場所だけに塗布することもできることである。明るい色で塗装したプラスチック成形品、例えば識別およびセキュリティ用のカードに使用することができる。
【0051】
コーティングおよび後でそこに書込まれるパターンをさらに保護するために、所望により、好ましくは透明な層で塗布したコーティングを覆うことができる。
【0052】
したがって、本発明は、好ましくは微粒子の形状の本発明の添加剤の、物体の表面へその層を塗布するための使用にも関し、また、本発明の添加剤を含有する層が少なくとも局部的に存在する物体にも関する。
【0053】
特に第2のポリマーおよび所望により第3のポリマーも存在する形において、本発明の添加剤を適用できる別の適切な形は、この添加剤からなる粒子(例えば、微粒子、またはその周りに粒子合計の100重量%までの、少量の結合していない第2のポリマーが存在する微粒子)が、第2およびもしあれば第3のポリマーの溶媒ではない分散媒体中に細かく分散したペーストまたはラテックスである。こうしたペーストまたはラテックスは、本発明の添加剤からなる粒子、好ましくはこれらの粒子を第3のポリマーに入れたマスターバッチを、例えば粒子がペーストまたはラテックスから沈殿しないようにするという目的に対してそれ自体公知の安定剤の存在下、2軸押出機中で高剪断をかけて一定量の分散媒体と混ぜることによって得ることができる。分散媒体の量と粒子の量またはマスターバッチの量との比は、得られる混合物の粘度を決める。比較的少量の分散媒体および安定剤を用いるとペーストが得られ、比較的大量の分散媒体と安定剤ではラテックスが得られる。水は非常に好適な分散媒体であることが分かった。
【0054】
ペーストを作るには、添加剤の粒径は1〜200μmとすることが好ましい。コーティングに用いた場合レーザー光の効果的な吸収および透明性を得ることができるという利点があるので、粒径は1〜90μmであることが好ましい。ラテックスを作るには、薄層での使用に適するように、この粒径は好ましくは50nm〜2μm、より好ましくは100nm〜500nmである。ペーストおよびラテックスは、特に水性のコーティングをすべての表面に塗布するのに適している。これらは、目的とする用途に十分な力で表面に接着する。本発明のペーストおよびラテックスは、紙およびプラスチックに特によく接着することが分かっている。こうして、例えば適切な波長のレーザーを備え、トナーを使用しないプリンターで、レーザー光を用いて、コントラストの高い色褪せない画像、例えば文字もしくは写真を印刷できる表面を得ることができる。この色褪せしないことは、既存の紙と印刷手段の組み合わせに対して大きな利点を提供する。水性と説明した本発明のペーストまたはラテックスの層を設けた、特に紙の他の利点は、水性のシステムでこの紙をリサイクルできる可能性である。ラテックスは紙のコーティングに適用することが好ましい。プラスチック物体、例えばダッシュボードフォイルのコーティング層としては、ペーストを適用することが好ましい。
【0055】
本発明の添加剤を適用することができる他の適切な形は、本発明の添加剤を第3のポリマーに入れたマスターバッチを、例えば極低温で、粒径が100μm〜1mmの粒子、好ましくは150〜500μmの粒径に粉砕することによって得られる。この形で、本発明の添加剤を、架橋ポリマー、あるいは融点付近で分解するマトリックスポリマー、または非常に高い結晶化度を有するマトリックスポリマーなどの、溶融加工できないポリマーに混ぜることができる。こうしたマトリックスポリマーの例としては、超高分子量ポリエチレン(HMWPE)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、フルオロポリマー、例えばポリテトラフルオロエチレン(テフロン)、および熱硬化性プラスチックが挙げられる。
【実施例】
【0056】
以下の実施例に基づいて本発明を説明する。
【0057】
実施例および比較例では、以下の材料を使用した。
【0058】
第1のポリマーとして:
P1−1.ポリアミド K122(DSM)
P1−2.ポリカーボネート Xantar(登録商標)R19(DSM)
P1−3.ポリブチレンテレフタレート 1060(DSM)
【0059】
第2のポリマーとして:
P2−1.MA1.1重量%をグラフトしたExact(登録商標)ポリエチレン(DEXPlastomers)
P2−2.MA0.9重量%をグラフトしたFusabond(登録商標)MO525Dポリエチレン(Dupont)
【0060】
第3のポリマーとして:
P3−1.Exact 0230(登録商標)ポリエチレン(DEXPlastomers)
P3−2:プロピレンエチレンランダムコポリマー RA112MN40(DSM)
【0061】
吸収剤として:
A−1.D50が1μmの三酸化アンチモン(Campine)
A−2.二酸化チタン
A−3.Macrolex(登録商標)ブルー/バイオレット
【0062】
マトリックスポリマーとして:
M−1.ポリアミド K122(DSM)
M−2.ポリプロピレンホモポリマー 112MN40(DSM)
M−3.Arnitel(登録商標)EM400(DSM)
M−4.Exact(登録商標)8201ポリエチレン(DSM)
M−5.Sarlink(登録商標)6135N(DSM)
M−6.ポリブチレンテレフタレート 1060(DSM)
M−7.KE 9611 Uシリコーンゴム(ShinEtsu)
M−8.UVTRONIC(登録商標)アクリル樹脂(SIPCA)
【0063】
(実施例I〜VIII)
2軸押出機(Werner&PfleidererのZSK 30)を使用して、本発明の添加剤を第3のポリマーに入れたいくつかのマスターバッチMB1〜MB15を作製した。添加剤に使用された吸収剤、第1のポリマー、第2のポリマー、および使用された第3のポリマー、ならびにこれらのそれぞれの比率(重量%)を表1に示した。さらにマスターバッチ中の吸収剤含有量および生成した添加剤の粒径も示した。
【0064】
Baburyニーディングアームを有するHaake 350ccニーダーを用いて、マトリックスポリマーM7を第4のポリマーとして、表1に示した量でMB2に混ぜることによって、MB16およびMB17を作製した。この表は、最終マスターバッチM16およびM17中の生成した添加剤の粒径も示している。
【0065】
マスターバッチMB1〜MB15は、押出速度350〜400rpmで押出量35kg/時間で作製された。押出機のフィードゾーン、バレル、ダイの温度、および材料の出口温度は、第1のポリマーとしてポリアミド(P1−1)を使用した場合は、それぞれ170、240、260、および287℃であり、第1のポリマーとしてポリカーボネート(P1−2)またはPBT(P1−3)を使用した場合は、それぞれ180、240、260、および260℃である。マスターバッチMB16およびMB17は、温度150℃およびニーダー速度30〜50rpmで作製した。
【0066】
【表1】



【0067】
(実施例IIおよび比較実験A)
上記実施例からのいくつかのマスターバッチを用いて、それぞれ上記の押出機およびニーダーで、異なる量のマスターバッチ/顔料材料を異なるマトリックスポリマー中に混ぜることによって、多数のレーザー書込み可能組成物LP1〜LP41を調製した。押出機のフィードゾーン、バレル、ダイ、および出口の温度を下記のようにしたZSK30を用いて、PA、PP、Arnitel、Exact、Sarlink、およびPBTを含有する組成物を作製した。ニーダーと出口の温度を下記のようにしたHaakeニーダーを用いて、シリコーンゴムを含有する組成物を作製した。アクリル樹脂を含有する組成物では、添加剤を微粒子の形で適用し、組成物は、混合および出口温度を下記のようにしたDispermatミキサーに入れた。
M−1(PA): 160、200、220、265
M−2:(PP): 160、200、210、225
M−3:(Arnitel): 160、200、220、237
M−4:(Exact): 100、120、150、158
M−5:(Sarlink): 160、180、220、225
M−6:(PBT): 180、230、240、265
M−7.(シリコーンゴム): 150、150
M−8.(アクリル樹脂): 20、60
【0068】
表2に、様々な成分の比率を重量%で示した。
【0069】
得られた組成物を射出成形して、厚み2mmのプレートを形成した。これらのプレートに、Lasertecのダイオード励起Nd:YAG紫外線レーザー、波長355nm、およびTrumpf、Vectomark Compact型のダイオード励起Nd:YAG赤外線レーザー、波長1064nmを用いて、パターンの書込みを行った。
【0070】
また、比較の目的で、同様のプレートを作製し書込みを行った。これらのプレートは、上記の条件で、第3のポリマーのみを含有する組成物から製造し(CP−A〜CP−G)、またいくつかは、吸収剤をポリアミドのみに入れたマスターバッチをマトリックスポリマーに混ぜることによって製造した(CP−H〜CP−M)。温度プロフィルはマスターバッチのものを用いたが、マトリックスポリマーの融点がマスターバッチ中のポリマーより高い場合は、マトリックスポリマーの温度プロフィルを用いた。
【0071】
定性的なコントラスト値で表した、様々な材料のレーザー書込み可能度を表2に示した。コントラストの測定は、Minolta 3700D分光光度計を用いて、以下の設定で行った:CIELAB、光源6500 Kelvin(D65)、正反射光込み(SCI)、測定角度10°。レーザーの設定は、用いた波長355nmおよび1064nmで実現可能な最大コントラストに連続的に最適化した。
【0072】
これらの結果から、本発明の添加剤を含有する材料から製造されたプレートは、吸収剤が存在しない組成物、または第1のポリマーおよび第3のポリマー(この場合第1のポリマーと同じ)のみに混ぜた吸収剤のマスターバッチを適用した組成物より著しく優れた結果で、レーザー書込みできることが明らかである。
【0073】
図1は、レーザー書込み可能組成物LP7のTEM写真を示す。
【0074】
【表2】












【0075】
コントラストの判定:
非常に低いコントラスト、目が粗い −
低いコントラスト ●
中程度のコントラスト ●●
高いコントラスト ●●●
非常に高いコントラスト ●●●●
優れたコントラスト ●●●●●
【0076】
(実施例III)
2つのマスターバッチMB2およびMB15について、第1のポリマーP1−1、ならびにそれぞれ吸収剤A−1およびA−2からなる添加剤粒子を第3のポリマーから分離した。この目的のために、マスターバッチMB15およびMB2を、140〜145℃のオートクレーブでデカリンに溶解し、この温度で遠心分離によって分離した。得られた添加剤粒子を、Disperbyk(登録商標)(BYK製)で安定化したアクリル樹脂(SICPA製のUVTRONIC(登録商標))に、20、10および5重量%の濃度で分散させた。得られた混合物は、ポリエステル支持体上にオフセット印刷によって塗布した。MB2から得られた添加剤粒子を含む組成物を、LP42〜LP44と呼び、MB15からのものをLP45〜LP47と呼ぶ。これらの組成物は順にそれぞれ20、10および5重量%の添加剤粒子を含有する。
【0077】
波長355nmおよび1064nmについて、実施例IIと同じようにして様々な材料のレーザー書込み可能度を求め、表3に定性的なコントラスト値を用いて示した。
【0078】
【表3】



【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】図1は、レーザー書込み可能組成物LP7のTEM写真を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、第1の官能基を有する第1のポリマーと0〜95重量%の吸収剤とを含有する粒子を含むレーザー光吸収添加剤であって、前記重量百分率が前記第1のポリマーと前記吸収剤の合計に対するものであり、前記第1のポリマーが、前記粒子の表面の少なくとも一部において、前記第1の官能基で第2の官能基と結合しており、前記第2の官能基が第2のポリマーに結合している、レーザー光吸収添加剤。
【請求項2】
第3のポリマーがさらに存在する、請求項1に記載の添加剤。
【請求項3】
前記第2の官能基がグラフトによって前記第2のポリマーに結合している、請求項1または2に記載の添加剤。
【請求項4】
前記第1の官能基が前記第1のポリマーの末端基である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の添加剤。
【請求項5】
前記第2のポリマーがポリオレフィンである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の添加剤。
【請求項6】
前記第1のポリマーの炭化度が少なくとも5%である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の添加剤。
【請求項7】
第3のポリマーがさらに存在する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の添加剤。
【請求項8】
少なくとも1重量%の吸収剤を含有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の添加剤。
【請求項9】
吸収剤と第1の官能基を有する第1のポリマーとを含有する組成物を、前記第1の官能基と反応する第2の官能基を有する第2のポリマーと混合するステップを含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の前記レーザー光吸収添加剤の製造方法。
【請求項10】
前記混合中に第3のポリマーが存在する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
マトリックスポリマーと、その中に分散した、請求項1〜8のいずれか一項に記載の添加剤、あるいは請求項9または10に記載の方法で製造された添加剤とを含む、レーザー書込み可能組成物。
【請求項12】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の添加剤、または請求項9〜11のいずれか一項に従って製造された添加剤が0.1〜10重量%存在する、請求項11に記載のレーザー書込み可能組成物。
【請求項13】
0.5〜5重量%の添加剤が存在する、請求項12に記載のレーザー書込み可能組成物。
【請求項14】
1〜3重量%の添加剤が存在する、請求項13に記載のレーザー書込み可能組成物。
【請求項15】
その表面に、請求項1に記載の添加剤を少なくとも含有するレーザー書込み可能層を設けた物体。
【請求項16】
前記物体の表面の少なくとも80%がポリマーからなる、請求項15に記載の物体。
【請求項17】
その表面が実質的に紙からなる、請求項15に記載の物体。
【請求項18】
請求項1に記載の添加剤を分散媒体中に含有するペーストまたはラテックス。
【請求項19】
前記分散媒体が水である、請求項18に記載のペーストまたはラテックス。

【図1】
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【公表番号】特表2006−509099(P2006−509099A)
【公表日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−570741(P2004−570741)
【出願日】平成15年11月6日(2003.11.6)
【国際出願番号】PCT/NL2003/000773
【国際公開番号】WO2004/050766
【国際公開日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
テフロン
【出願人】(505074311)
【Fターム(参考)】