説明

レーザー加工装置及びIDカード

【課題】IDカードのような多面からなる加工対象物に対し、2面または3面に連続して繋がるパターンを、正確に加工することを可能にするレーザー加工装置及びIDカードを提供する。
【解決手段】レーザービーム発生手段と、前記レーザービームを走査するレーザービーム走査手段と、前記走査されたレーザービームを平行にするレンズと、第一の平面鏡と、第二の平面鏡と、上記レンズを通過したレーザービームの照射方向と垂直にIDカードを位置決めする手段と、IDカードに形成するパターンをレーザー加工に合うように画像処理する画像処理装置と、を備えたことを特徴とするレーザー加工装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は偽造防止を目的としたパターンをIDカード上に加工するレーザー加工装置及びIDカードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からIDカードに施された個人情報を偽造、改ざん防止のために様々な手段が提案されている。例えば、レーザーを用いてカード表面や内層を熱モードで炭化させて黒く発色させて、顔写真など個人情報を形成する手段は広く採用されている。
【0003】
また、カードの真贋判定は、判定に器具などを使うものより、肉眼で見て容易に判るものが特に待望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−153445号公報
【特許文献2】特開2008−062417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記レーザーを用いてカード表面や内層を熱モードで炭化させる手段は、カード基材自体の加工となるので変造が基本的には困難であるが、他方、印画は黒単色であるため熱転写方式やインクジェット方式などの家庭用プリンタで類似品を作るなどして、高レベルに類似した偽造品が作られてしまうといった弱点がある。
【0006】
このため、多面からなる加工対象物の2面に連続的に繋がる1つのパターンをレーザー加工によって施して偽造防止するといった方法が考えられる。この場合には、1面毎に加工面の向きをレーザービームが射出される方向に変えて加工することになるため、この場合には、加工対象物の各面の加工毎に位置決めと角度決めが必要である。この位置決めと角度決めを手動で行うことは困難であり、また自動で行う場合には、加工対象物の上下移動や回転といった動作機構が必要になり、その機構の構造は複雑で高価なものになる。
【0007】
図1は例えばレーザー加工する対象としてカード基材を示す図で、図1(a)は斜視図、図1(b)は展開図を示し、図1(a)と図1(b)に示す矢印2はカード基材1の同じ方向を示す。例えば図1(a)に示すような加工対象の第一の面Aと第二のBの2面に連続に繋がるような画像を施す場合、加工対象物の位置決め精度不良があった場合には、図1(b)に示すようにパターンのズレが生じるため、2面にまたがるパターンは正確には繋がらなく、偽造防止対策とはならなくなってしまう。第二の加工面Bと第三の加工面Cの2面に連続に繋がるような画像を施す場合も同様に、位置決め精度不良によってパターンは正確には繋がらなくなってしまう。
【0008】
図2(a)はカード表面にパターン加工する場合に限らず、一般的に用いられているレーザー加工装置の概略構成図である。レーザー発振器3からレーザービーム3aが射出され、ガルバノミラーやポリゴン鏡に代表される走査鏡4によってレーザービーム3aは走査される。レンズ5を通過したレーザービームは、反射鏡6によって第一加工面Aが加工される。更に、反射鏡6で反射されないレーザービームはレンズ5を通過した後、直接、第二加工面Bに当てられ、第二加工面Bが加工される。図2(b)は走査鏡4とレーザービームの、例えば反射鏡6上の走査方向を示す図で、走査鏡4が矢印101の方向に回転することによってX方向に走査され、矢印102の方向に回転することによってY方向に走査される。この場合、一般的にはレンズ5にはfθレンズが用いられ、レーザー焦点位置は走査鏡の角速度に比例した動きになる。その結果、第一加工面Aと第二加工面Bのパターンは繋がらないパターンとなってしまう。
【0009】
そこで本発明は、IDカードのような多面からなる加工対象物に対し、2面または3面に連続して繋がるパターンを、正確に加工(形成)することを可能にするレーザー加工装置及びIDカードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、IDカードにパターンを形成するレーザー加工装置であって、
レーザービーム発生手段と、
前記レーザービームを走査するレーザービーム走査手段と、
前記走査されたレーザービームを平行にするレンズと、
前記IDカードの第一の面に対して45度の角度で配置され、前記レンズを通過したレーザービームを90度に反射する第一の平面鏡と、
前記IDカードの第一の面に対向する第三の面に対して45度の角度で配置され、前記レンズを通過したレーザービームを90度に反射する第二の平面鏡と、
前記IDカードの第一の面及び第三の面に垂直な第二の面を、上記レンズを通過したレーザービームの照射方向と垂直にIDカードを位置決めする手段と、
IDカードに形成するパターンをレーザー加工に合うように画像処理する画像処理装置と、を備えたことを特徴とするレーザー加工装置である。
【0011】
請求項2に記載の発明は、前記レンズはテレセントリックfθレンズであることを特徴とする請求項1に記載のレーザー加工装置である。
【0012】
請求項3に記載の発明は、前記レーザービーム走査手段はレーザービームを等角速度で走査することを特徴とする請求項1に記載のレーザー加工装置である。
【0013】
請求項4に記載の発明は、前記レンズはレーザービームを等速平行にすることを特徴とする請求項1に記載のレーザー加工装置である。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4に記載のレーザー加工装置を用いて偽造防止パターンが形成されたことを特徴とするIDカードである。
【発明の効果】
【0015】
本発明のレーザー加工装置によれば、2面または3面に連続して繋がる偽造が困難なパターンを、IDカード上に正確に形成することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】レーザー加工する対象例としてカード基材を示す図。
【図2】一般的なレーザー加工装置を説明するための図。(a)は一般的に用いられているレーザー加工装置の概略構成図。(b)は走査鏡と反射鏡上で見た場合のレーザービーム走査方向を示す図。
【図3】本発明に係るレーザー加工装置の概略構成図。
【図4】本発明に係るIDカードに加工するパターンを、レーザー加工に合うように画像処理する場合の説明図。(a)は第一の面Aと第二の面Bの2面に連続して加工するSAMPLEという文字を示す図。(b)は加工されるパターンの展開図。(c)は2面の加工データを示す。(d)は第一の面A用データと第二の面B用の画像データを合成した画像データを示す。
【図5】スペースデータを設ける理由を説明するための図。
【図6】本発明に係るレーザー加工装置を用いてパターンを加工した一例を示す図。(a)は本発明に係るレーザー加工装置を用いて、IDカード上にパターンを加工した場合を示す図。(b)は加工されたパターンを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図面を用いて本発明を実施するための形態を説明する。
【0018】
図3は本発明に係るレーザー加工装置の概略構成図である。レーザービーム11aを発生するレーザービーム発生手段であるレーザー発信器11と、レーザービーム11aを走査するレーザービーム走査手段である走査鏡12と、走査されたレーザービームを平行にするレンズ13と、IDカード14の第一の面Aに対して45度の角度で配置され、レンズ13を通過したレーザービームを90度に反射する第一の平面鏡15と、IDカード14の第一の面Aに対向する第三の面Cに対して45度の角度で配置され、前記レンズ13を通過したレーザービームを90度に反射する第二の平面鏡16と、IDカード14の第一の面A及び第三の面Cに垂直な第二の面Bを上記レンズを通過したレーザービームと垂直にIDカード14を位置決めする手段である図示しないIDカード位置決め装置と、IDカード14に形成するパターンデータをレーザー加工に合うように画像処理する画像処理装置17と、を備えている。尚、走査鏡12の等角速度制御と、画像処理装置17からレーザー発信器11へ入力される画像信号の入力制御は、図示しない制御装置によって制御される。
【0019】
上記レーザービーム11aを走査する走査鏡12は、レーザービーム11aを等角速度で走査することが望ましく、更に、上記走査されたレーザービームを平行にするレンズ13は、レーザービームを等速平行にすることが望ましく、それによって濃淡のないパターンを加工することが出来る。
【0020】
レーザー発信器11は、例えば2W程度のYAGレーザーを用いることが出来る。走査鏡12は、例えばガルバノミラーやポリゴン鏡を用いることが出来る。レーザービーム11aは走査鏡12を矢印101の方向に回転することによって反射鏡15の面上でX方向に走査され、矢印102の方向に回転することによってY方向に走査される。レンズ13はテレセントリックfθレンズ13aを用いる。テレセントリックfθレンズ13aによって走査鏡12で走査されたレーザービームは平行光となるため、テレセントリックfθレンズ13aを通過後に第一の面Aと第三の面Cと第二の面Bのそれぞれの面上に連続したパターンを加工することができる。
【0021】
第一の平面鏡15は、第一の面Aに対して45度に配置され、テレセントリックfθレンズ13aを出た光の方向を90度変向するため、第一の面A上にパターンを加工することができる。同様に、第二の平面鏡16は、第三の面Cに対して45度に配置され、テレセントリックfθレンズ13aを出た光の方向を90度変向するため、第三の面C上にパターンを加工することができる。更にテレセントリックfθレンズ13aを通過したレーザービームの向きとIDカード14が垂直になるようにIDカード位置決め装置によってIDカード14が位置決めされて配置されるため、第二の面B上にパターンを形成することができる。この結果連続して繋がったパターンが得られる。尚、IDカード位置決め装置は従来の位置決め機構を採用することによって達成できる。
【0022】
図4はIDカード14に加工するパターンをレーザー加工に合うように画像処理する場合の説明図である。例えば図4(a)に示すようなSAMPLEという文字を第一の面Aと第二の面Bの2面に連続して加工する場合、加工されるパターンは図4(b)のように展開される。この場合、2面にわたって加工される加工データは図4(c)のようなデータとなる。図4(d)に示すように、第二の面Bに関しては平面鏡で上下反転するので画像処理装置17上ではデータを反転し、一方、第一の面A用データは反転せずに、第一の面A用データと第二の面B用の画像データを合成する。
【0023】
この場合、図4(d)に示すように第一の面A用データと第二の面B用の間には、スペースデータがある。このスペースデータは、図5に示すように第一の平面鏡15と、IDカード14の第一の面Aとの間にギャップGがあるために設けるスペースデータであって、言い換えれば、ギャップGが存在しないように第一の平面鏡15と、IDカード14を配置した場合には、スペースデータを必要としない。
【0024】
図6(a)は上述したレーザー加工装置を用いて、IDカード14上にパターンを加工した場合を示す図である。用いたIDカードは、ポリカーボネート製のIDカードであり、YAGのレーザービームにより個人情報を記録した。図6(b)は加工されたパターンを示し、細紋21とID番号22を、第1の面A、第2の面B、及び第三の面Cの3面に渡って連続画像として描画したパターンである。
【0025】
本発明のレーザー加工装置は、IDカード上にパターンを加工することに限定されず、真偽判定に利用可能なタグや、表面加工の意匠性が重視されるアクセサリー加工等に広く適用することが出来る。
【0026】
以上のように、本発明のレーザー加工装置によれば、IDカードの2面または3面に連続して繋がる偽造が困難なパターンを、正確に形成することが出来るため、信頼性の高いIDカードを作製することが出来る。
【符号の説明】
【0027】
1・・・カード基材
2・・・カード基材を見る方向を示す矢印
3・・・レーザー発振器
3a・・・レーザービーム
4・・・走査鏡
5・・・レンズ
6・・・反射鏡
11・・・レーザー発信器
11a・・・レーザービーム
12・・・走査鏡
13・・・レンズ
13a・・・テレセントリックfθレンズ
14・・・IDカード
15・・・第一の平面鏡
16・・・第二の平面鏡
17・・・画像処理装置
21・・・細紋
22・・・ID番号
101、102・・・走査鏡の回転方向を示す矢印
A・・・カード基材の第一の面
B・・・カード基材の第二の面
C・・・カード基材の第三の面
G・・・ギャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
IDカードにパターンを形成するレーザー加工装置であって、
レーザービーム発生手段と、
前記レーザービームを走査するレーザービーム走査手段と、
前記走査されたレーザービームを平行にするレンズと、
前記IDカードの第一の面に対して45度の角度で配置され、前記レンズを通過したレーザービームを90度に反射する第一の平面鏡と、
前記IDカードの第一の面に対向する第三の面に対して45度の角度で配置され、前記レンズを通過したレーザービームを90度に反射する第二の平面鏡と、
前記IDカードの第一の面及び第三の面に垂直な第二の面を、上記レンズを通過したレーザービームの照射方向と垂直にIDカードを位置決めする手段と、
IDカードに形成するパターンをレーザー加工に合うように画像処理する画像処理装置と、を備えたことを特徴とするレーザー加工装置。
【請求項2】
前記レンズはテレセントリックfθレンズであることを特徴とする請求項1に記載のレーザー加工装置。
【請求項3】
前記レーザービーム走査手段はレーザービームを等角速度で走査することを特徴とする請求項1に記載のレーザー加工装置。
【請求項4】
前記レンズはレーザービームを等速平行にすることを特徴とする請求項1に記載のレーザー加工装置。
【請求項5】
請求項1から4に記載のレーザー加工装置を用いて偽造防止パターンが形成されたことを特徴とするIDカード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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