説明

レーザー書き込み可能なプラスチック物質のための顔料及びその用途

【課題】レーザー光の影響下にその色を変化させる、及び/又は、プラスチック物質の色の変化を誘導する微粒子状の光感受性の化合物の形態のレーザー書き込み可能なプラスチック物質のための顔料は、少なくとも二つの異なる陽イオンを含有している塩型の化合物の少なくとも一つ、又は、反応して少なくとも二つの異なる陽イオンを持っているそうした塩型の化合物の少なくとも一つを与える化合物の混合物(ここで該陽イオンの少なくとも一つは、元素Ti, Cr, Mn, Fe, Co, Ni, Cu, Zn, Y, Zr, Nb, Mo, Ag, Sn, Sb, La, Pr, Ta, W 及び Ceからなる群(A)から選択されたもので、そして、少なくとも一つの更なる陽イオンは、長周期の元素周期表のIIA及びIIIB族の第3〜6周期の元素、IVB族の第5〜6周期の元素、IIIA〜VIIA及びVIII族の第4〜5周期の元素、及びランタノイドの元素からなる群(B)から選択されたものである)を含有していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒子状で、光感受性の化合物(これはレーザー光の影響下に、その色を変化させる、又は、プラスチック物質の色の変化を誘導する)の形態にあるレーザー書き込み可能なプラスチック物質のための顔料に関する。
【0002】
レーザー光が非常にきれいなビームを形成することが注目されるに従い(これはプラスチック製品の上に文字やイメージを作り出すために使用することを願うといったものである)、レーザー書き込み可能なプラスチック物質の開発が長年研究調査されてきた。しかしながら、殆どのプラスチック物質はレーザー光を吸収しないので書き込み可能なものでない。したがって、レーザー光の影響下にその色を変えるといった、微粒子状で、光感受性の顔料を、プラスチック物質に添加する。レーザー光を吸収するにつれ、該顔料自体は化学反応又は別の状態への物理的な遷移によりその色を変えるか、あるいは、吸収されたレーザーのエネルギーを隣接するプラスチック物質に移転することにより後者のものを分解するか、あるいは逆にそれが色の変化に関与するようにしてその色を変えることができる。
【0003】
過去のそうした目的のため研究されてきた顔料というものは、大部分の場合、欧州特許出願公開第330 869号明細書(EP-A-330 869)〔特許文献1〕に従っての、例えば、二酸化チタンなどの金属酸化物、あるいは、欧州特許第105 451号明細書(EP 105 451)〔特許文献2〕に記載されているような金属酸化物の混合物であった。また、レーザー書き込み可能なプラスチック製品用顔料としてある種の金属化合物、例えば、銅塩〔欧州特許出願公開第706 897号明細書(EP-A-706 897): 特許文献3〕のようなものが、単独又はその他の金属化合物(これは顔料として添加されたその銅塩と干渉することなく且つレーザー光の影響下にその色を変えるなどといったことのないような低いレベルの濃度でのみ添加され得るものである)の存在下〔米国特許明細書第5 489 639号(US-A-5 489 639) : 特許文献4〕で言及されてきた。
【0004】
【特許文献1】欧州特許出願公開第330 869号明細書(EP-A-330 869)
【特許文献2】欧州特許第105 451号明細書(EP 105 451)
【特許文献3】欧州特許出願公開第706 897号明細書(EP-A-706 897)
【特許文献4】米国特許明細書第5 489 639号(US-A-5 489 639)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
レーザー書き込み可能性を誘導する顔料は、しばしば、プラスチック製マトリックスに関連して不十分な色の違いを与えるのみで、それゆえ貧弱なカラーコントラストや刻まれた情報の読み取り性能が悪いということがあった。その他の場合としては当初は許容できていたカラーコントラストが時間とともに変化してしまい、刻まれた情報が多少なりとも消失してしまうことである。加えて、添加する顔料の量を増加せしめると、プラスチック物質の特性に望ましくない変化をきたすという危険が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
それ故に、本発明の目的は、許容されるようにしてプラスチック製物質の性状に悪い影響を与えないで、レーザー書き込み性能を改善した、特にはカラーコントラストを改善した、顔料(ピグメント)を見出すことにある。
【0007】
驚いたことにその目的は次により得られる。本明細書の書き出しの部分で規定されている特性を有しているレーザー書き込み可能又はレーザー加工可能なプラスチック物質のための顔料は、少なくとも二つの異なる陽イオンを含有している塩型の化合物の少なくとも一つ、又は、唯一という訳ではなく好ましくはであるが、反応して少なくとも二つの異なる陽イオンを持っているそうした塩型の化合物の少なくとも一つを与える化合物の混合物
(ここで該陽イオンの少なくとも一つは、元素Ti, Cr, Mn, Fe, Co, Ni, Cu, Zn, Y, Zr, Nb, Mo, Ag, Sn, Sb, La, Pr, Ta, W 及び Ceからなる群(A)から選択されたもので、そして、少なくとも一つの更なる陽イオンは、長周期の元素周期表のIIA及びIIIB族の第3〜6周期の元素、IVB族の第5〜6周期の元素、IIIA〜VIIA及びVIII族の第4〜5周期の元素、及びランタノイドの元素からなる群(B)から選択されたものである)
を含有していることを特徴とする。
【0008】
それ故、本発明の技術的な教示に従えば、塩型の化合物は、上記で規定された二つの群A及びBのそれぞれから選択され、該群で挙げられた陽イオンの少なくとも一つ(ここでその一つの群から選ばれた陽イオンの少なくとも一つは、別の群から選ばれた陽イオンの少なくとも一つとは異なっていなければならない)を持っている各塩型の化合物の少なくとも一つがあるように選択されたり、一緒になるよう配合されなければならない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本明細書で使用の用語「塩型の化合物」は、本発明に従って本明細書では、水中で少なくとも部分的に陽イオンや陰イオンに解離し、あるいは、酸の残基及び塩基の残基を含有している化合物を意味する。
【0010】
一方では、本明細書では、色が変わるとは、例えば、黄色から赤色への変化あるいは透明色から黒色への変化などの一つの色の濃淡(明暗)の度合いから別のそれに移ることであってよい。しかしながら、本発明に従えば、該用語は、例えば、薄い褐色から濃い褐色への変化、及び/又は、プラスチック製物質の色が変わることなどの色の明るさ(明度)の変化を意味するようにも使用される。
【0011】
用語「微粒子状」とは、該顔料が平均粒子サイズ(d50)とか第一次の粒子の粒子のサイズとして与えられた量的なパラメーターを持つ微細な固体粒子の形態であることを意味するように使用される。第一次の粒子のサイズはナノメーター(nm)からマイクロメーター(μm)の範囲にある。適している第一次の粒子は、10 μmより小さい平均粒子サイズ(d50)、好ましくは5 μmより小さい平均粒子サイズ(d50)を有するものである。
【0012】
粒子の直径は、本発明の目的のためには、光散乱法、顕微鏡法又は電子顕微鏡法、狭いスリットを使用するフロー計数測定法、沈降法、あるいは、さらには市販されている手法などの普通の方法により決定される。
【0013】
本発明に従って該顔料が塩型の化合物の陽イオンについての選択並びに配合に関しての上記した必要とされる要件を満足するかぎり、当該顔料は、本発明の概念から逸脱することなく、さらに、陽イオン、特には長周期の周期表のIA族の第2〜5周期の元素から選択されたものを含有していてよい。また、該顔料にさらに無機の酸化物、及び/又は、さらに、着色用添加物、及び/又は、ある種の性状を修飾するための通常の添加物、例えば、UV安定化剤、風解、熱による攻撃や熱酸化による攻撃に対する安定化剤、加水分解に対する抵抗性やアジド分解に対する抵抗性を改善するためのもの、潤滑剤、離型助剤、結晶化制御物質、核形成剤、充填剤、軟化剤及びその他の添加物などを添加することもできる。
【0014】
本発明の概念の上記の規定は、択一的に使用されるか、あるいは、互いに組み合わせて使用されることのできる二つの具体例を包含している。その一つの具体例では、本発明の顔料のための、少なくとも二つの異なった陽イオンを持っている塩型の化合物は、例えば、単純な塩の少なくとも二つ(それぞれは異なった陽イオンを有している)を反応させて製造したり、混合塩の形態で市販されているものとして提供されるものである。その別の具体例は、該第一の具体例と同じ陽イオン選択を行うが、単純な塩の市販品から得られる混合物で且つ互いがまだ反応せしめられていないものである。本具体例は、後処理工程の温度で、例えば、プラスチック物質を溶融したり、あるいは、別の強化処理に際して、当該混合物中に存在している単純な塩が反応して混合塩、所謂、新たな反応生成物を与えるなら特に適している。
【0015】
また、後者の具体例には二つの可能な態様がありうる。該混合物中に含まれている単純な塩型の化合物は、レーザー書き込み可能にせしめるべきプラスチック物質に添加する前に本発明の選択ルールに従って陽イオンを有している塩型の化合物を形成するために互いを反応させることができる。そして得られた反応生生物をプラスチック物質と混合するための顔料として使用することができる。別の具体例に従えば、単純な塩の混合物は、反応を起こす前にレーザー書き込み可能にせしめるべきプラスチック物質に混合せしめる。次にその基本の物質を加熱すると、その塩型の化合物は互いに反応し、本具体例の最初の部分と同じであるか、あるいは、少なくとも類似している同一の複塩又は類似した複塩を与える。
【0016】
本発明の顔料により得られる色の違いは、異なる光源下で局部的に異なる光強度として、局部的に異なる色値、例えば、CIE-LAB表色系でのそれとして、あるいは、RGB系の局部的に異なる色値として観察されることができる。これらの効果は、異なる光源とともに生じる。
元素の群A及びBからの成分の選択は、一般的には、利用可能なレーザー光の波長の範囲内で、できるだけ大きな吸収のレベルがあるようになされる。
【0017】
使用レーザー光の波長の範囲は、基本的には、いかなる制限もない。適しているレーザーとしては、一般的には、157 nm 〜 10.6 mmの範囲の波長、好ましくは532 nm 〜 10.6 mmの範囲の波長を有している。例えば、CO2レーザー(10.6 μm)及びNd:YAGレーザー(1064 nm)又はパルスUVレーザーが挙げられる。
【0018】
典型的なエキシマーレーザーは次のような波長を有している:F2エキシマーレーザー(157 nm)、ArFエキシマーレーザー(193 nm)、XeClエキシマーレーザー(308 nm)、XeFエキシマーレーザー(351 nm)、532 nm (2逓倍)の波長、355 nm (3逓倍)の波長又は265 nm (4逓倍)の波長を持つ周波数逓倍Nd:YAGレーザー。特に好ましくは、Nd:YAGレーザー(それぞれ1064又は532 nm)及びCO2レーザーを使用する。本発明に従い使用されるレーザーのエネルギー密度は、一般的には、0.3 mJ/cm2 〜 50 J/cm2の範囲、好ましくは0.3 mJ/cm2 〜 10 J/cm2の範囲である。パルスレーザーを使用する場合は、パルスの周波数は、一般的には、1 〜 30 kHzの範囲である。
【0019】
本明細書で意図する光感受性の化合物とは、異なった陽イオンの上記した組合せを有している有機又は無機の塩型の化合物又は異なった陽イオンの上記した組合せを有している塩型の化合物の混合物であって、それらは照射を受けた領域でレーザー光源の影響下にその色が変化するもの、及び/又は、プラスチック物質の色の変化を誘導するものである。
【0020】
これらの化合物は、一以上の陰イオンと複数の陽イオン、好ましくは少なくとも二つの陽イオン(それぞれは異なった元素から誘導されたものである)との一定の化学量論的な割合のものを有している古典的な塩であってよい。しかし、それらは異なった元素から誘導された少なくとも二つの陽イオンを与える非化学量論的な割合の化合物であってもよい。
【0021】
少なくとも二つの異なった元素からなる陽イオンを有している化合物を与えることのできるものである限り、いかなる陰イオンも使用できる。好ましくは、該陰イオンは、少なくとも二つの異なる元素を含有しているものを使用できる。
【0022】
特に好ましい成分は、陰イオンとして、元素周期表から選択されたオキソ陰イオン、及び/又は、有機カルボン酸類又は炭酸類の陰イオンを持っている(但し、複数の陽イオンを持っている混合化合物はそれと一緒になって形成されるものである)。特に好ましい成分は、陰イオンとしてリン原子を保有しているオキソ陰イオン類を持っている。
【0023】
好ましい組合せは、照射を受けていない化合物が使用光の波長の領域で吸収を起こすものである。
加えて、より好ましい組合せは、照射を受けていない化合物の固有色が陽イオンのモル比を変えることにより調節されているものである。
【0024】
本発明の一つの実施態様では、照射を受けてない成分はいかなる固有色を有していてもよく、そして照射を受けた成分はできるだけ異なった色の違いを有しているものである。CIE Lab表色系では、これはdE*が高い値をとることを意味している。ここで
【0025】
【数1】

式中、符号 1 は、照射を受けていない成形材を表し、そして符号 2 は照射を受けた成形材を表している。
【0026】
当該CIE L*a*b* (Lab)表色系は、国際照明委員会〔the International Illumination Commission (Commission Internationale d’Eclairage) 1976〕が提唱する色空間で、そこではL* = 色の明るさ(明度, lightness)、 a* = 赤-緑の色情報、そして b* = 黄-青の色情報である。
【0027】
本発明の好ましい具体例では、照射を受けていない化合物は最高の可能な明度(CIE Lab色空間でできるだけ高い明度値L*)を有しており、そして、できるだけ少ない固有色(基本色)(すなわち、黒-白軸からの偏位ができるだけ少ない: できるだけ小さいa*値で、できるだけ小さいb*値)を有する。この場合に照射を受けた化合物は、できるだけ低い明度(できるだけ低い明度値L*)を有し、一方、できるだけ少ない自己色(できるだけ小さなa*値で、できるだけ小さいb*値)を有している。
【0028】
本発明のさらなる好ましい具体例では、照射を受けていない成分はできるだけ高い明度(CIE Lab色空間でできるだけ高い明度値L*)を有しており、そして、できるだけ少ない自己色(黒-白軸からの偏位ができるだけ小さい: できるだけ小さいa*値で、できるだけ小さいb*値)を有する。この場合に照射を受けた化合物は、できるだけ目立つ固有色(できるだけ高いa*値で、できるだけ高いb*値)を有している。
【0029】
本発明の組成物の好ましい具体例では、上記成分の陰イオンは次の一般式:
AaOo(OH)yz-
(上式中、A = 3価又は5価のリン、4価のモリブデン、又は、6価のタングステン; a, o 及び z は、独立に、1〜20の値のいずれかを示し、y は0〜10の値のいずれかである)
を有するものである。
【0030】
本発明の組成物のさらなる好ましい具体例では、該顔料は、銅、錫、アンチモン、そして、鉄からなる群から選択された二つの異なった元素の少なくとも一つの組合せを有している。
【0031】
本発明の組成物の特に好ましい具体例では、該顔料は5価のリン(V)の酸及び/又は3価のリン(III)の酸の陰イオン、それらの縮合生成物、あるいは、任意にさらなるヒドロキシドイオンを有しているもの、及び、陽イオンとして、CuとFe又はCuとSn又はCuとSb又はSnとFeを含有している。
【0032】
本発明の顔料は、望ましくは、例えば、部分的に結晶性の熱可塑性の物質、特にはポリアセタール類、ポリエステル類、ポリアミド類、ポリアリーレンエーテル類、ポリアリーレンスルフィッド類、ポリエーテルサルホン類、ポリアリールエーテルケトン類、ポリオレフィン類、及びそれらの配合物などのポリマー類にレーザー書き込み性を生み出すために使用される。
【0033】
本発明の顔料は、非常に広範囲の様々な分野でプラスチック物質を書き込み可能にするために使用される。該顔料を含有している成形物質は、押し出し成形、射出成形、減圧成形、ブロー成形、又は、泡形成などの公知の方法で加工できる。そうした手法で得られた成形生成物は、しばしば、コンピューター分野、電気電子分野、民生用設備分野、及び、車輌工業分野で使用される。得られるレーザー書き込み可能な製品の例としては、例えば、キーボード類、ケーブル類、導体類、装飾用トリムストリップ類、加熱・換気・冷却セクタの機能性部品、スイッチ類、プラグ類、レバー類、及び、ハンドル類、そして、建築分野又は電子分野のその他の多くの部品が挙げられる。更なる適用分野としては、個々の動物、特には個々の家畜などを識別するためのプラスチック製タグ類、例えば、家禽用リング類、牛用のタグ類又は耳輪などが挙げられる。本発明の顔料を使用することによる刻印は、非常に長持ちである。
【実施例1】
【0034】
20%の水酸化銅リン酸塩及び80%のリン酸錫をTurbula 社製のミキサー中で20分間よく混合した。次に生成物を3%の混合物の形態で押し出し成形機で使用した。押し出し成形を行った後、該塩のRBA分析を行った。RBA分析により、出発塩の回折スペクトルと著しく異なった回折スペクトルを得た。
【実施例2】
【0035】
20%の水酸化銅リン酸塩及び80%のリン酸錫を混合し、水中の20%懸濁液として煮沸処理した。次に懸濁液を濾過し、乾燥した。5%より下回るWLにまで乾燥した後、最終生成物を粉砕した。こうして得られた目的物のD50は、3 μmを下回るものであった。X-線回折で解析すると、得られた生成物は出発物質のRBA分析の結果とは著しく違うものであった。該生成物のL, a, b値は、出発物質のそれとは著しく異なっている。該最終産物は、−2.1のa-値を示し、かくして−4 〜 −7のa-値を持っている水酸化銅リン酸塩よりも著しく薄い色であった(測定はMacbeth Color Eye 3000の装置でもって行った)。レーザー光による書き込み性は4を超えるK-値を示し、かくして緑色の着色という問題点を生ずることなくCHP領域であった。
【実施例3】
【0036】
50%の水酸化銅リン酸塩及び50%のリン酸錫を混合し、水中の20%懸濁液として煮沸処理した。次に懸濁液を濾過し、乾燥した。3%より下回るWLにまで乾燥した後、最終生成物を粉砕した。こうして得られた目的物のD50は、5 μmを下回るものであった。X-線回折で解析すると、得られた生成物は出発物質のRBA分析の結果とは著しく違うものであった。該生成物のL, a, b値は、出発物質のそれとは著しく異なっている。該最終産物は、2.5のa-値を示し、かくして5 〜 7のL-値を持っている水酸化銅リン酸塩よりも著しく薄い色であった。
【実施例4】
【0037】
50%の鉄ホスフィット(亜リン酸鉄)を50%のリン酸錫と混合し、水中の10%懸濁液として煮沸処理し、30分間煮沸を保った。次に懸濁物を冷却し、分離処理した。濾過ケーキは乾燥され、次に細かく粉砕された。最終的に得られた生成物は、RBA分析に付された。本生成物は、出発物質のそれに相当するようなものでない完全に元の性状を示す曲線を示した。該物質は、レーザーによる書き込み用顔料として良好な性状を示した。高い赤色成分(a-値で測定され、鉄ホスフィットの典型である)は、著しく減少せしめられていた。レーザー光(1064 nmの波長を有するNd: YAG-レーザー)での書き込みで作製されたテキストは、高い比率の黒色顔料を有していた。
【0038】
本発明の技術的な効果を確認するため、実施例4〜9の生成物並びに比較例2及び3の生成物をレーザーによる書き込み能を達成する顔料として使用した。次の表に本発明の実施例の組成物と比較例のものとの結果を示す。
【0039】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光の影響下にその色を変化させる、及び/又は、プラスチック物質の色の変化を誘導する微粒子状の光感受性の化合物の形態のレーザー書き込み可能なプラスチック物質のための顔料であって、該顔料は、少なくとも二つの異なる陽イオンを含有している塩型の化合物の少なくとも一つ、又は、反応して少なくとも二つの異なる陽イオンを持っているそうした塩型の化合物の少なくとも一つを与える化合物の混合物
(ここで該陽イオンの少なくとも一つは、元素Ti, Cr, Mn, Fe, Co, Ni, Cu, Zn, Y, Zr, Nb, Mo, Ag, Sn, Sb, La, Pr, Ta, W 及び Ceからなる群(A)から選択されたもので、そして、少なくとも一つの更なる陽イオンは、長周期の元素周期表のIIA及びIIIB族の第3〜6周期の元素、IVB族の第5〜6周期の元素、IIIA〜VIIA及びVIII族の第4〜5周期の元素、及びランタノイドの元素からなる群(B)から選択されたものである)
を含有していることを特徴とする顔料。
【請求項2】
該化合物の混合物が熱を加えられると反応して、少なくとも二つの異なる陽イオンを持っている塩型の化合物を与えることができることを特徴とする請求項1に記載の顔料。
【請求項3】
その平均粒子サイズ(d50)が、10 μmより小さい、好ましくは5 μmより小さいものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の顔料。
【請求項4】
上記群A及びBから選択された二つの異なる陽イオンに加えて、長周期の元素周期表のIA族の第2〜5周期の元素から選択された陽イオンをさらに含有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一に記載の顔料。
【請求項5】
該塩型の化合物が、陰イオンとして、元素周期表から選択されたオキソ陰イオン、有機カルボン酸の陰イオン、又は、炭酸の陰イオンを有していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一に記載の顔料。
【請求項6】
該陰イオンが、リン原子含有オキソ陰イオンを有していることを特徴とする請求項5に記載の顔料。
【請求項7】
該陰イオンが、一般式:
AaOo(OH)yz-
(ここでAは、三価〜五価のリン原子、四価のモリブデン原子、又は、六価のタングステン原子で、a, o 及び z は、独立に、1 〜 20の範囲のいずれかの数で、y は、0 〜 10の範囲のいずれかの数を表す)
であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一に記載の顔料。
【請求項8】
該陽イオンが、銅、錫、アンチモン、及び/又は、鉄から成るものであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一に記載の顔料。
【請求項9】
該塩型の化合物の陰イオンが、五価のリン(V)の酸及び/又は三価のリン(III)の酸又はそれらの縮合生成物、又は、任意にさらなるヒドロキシルイオンを伴っているものから成っており、そして、該陽イオンが、CuとFe又はCuとSn又はCuとSb又はSnとFeから成るものであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一に記載の顔料。
【請求項10】
該群(A)及び(B)の化合物が一緒になることにより、その化合物の照射を受けていない配合物が使用光の波長領域で吸収を起こすことを特徴とする請求項1〜9のいずれか一に記載の顔料。
【請求項11】
プラスチック物質、特には熱可塑性物質(熱可塑性プラスチック)をレーザー書き込み可能とするために請求項1〜10のいずれか一に記載の顔料を使用すること。

【公表番号】特表2008−516876(P2008−516876A)
【公表日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−536188(P2007−536188)
【出願日】平成17年10月14日(2005.10.14)
【国際出願番号】PCT/EP2005/055281
【国際公開番号】WO2006/042829
【国際公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(596009652)
【Fターム(参考)】