説明

レーザ加工ヘッド

【課題】レーザ光の光路を屈折偏心させるための傾斜ガラスを回転自在に備えたレーザ加工ヘッドであって、前記光路に対して前記傾斜ガラスを容易に出入することのできるレーザ加工ヘッドを提供する。
【解決手段】光ファイバーの出射端から出射されたレーザ光を集光してワークへ照射するための集光レンズを備えたレーザ加工ヘッドであって、前記光ファイバー9の出射端と前記集光レンズ15との間に、屈折ユニット格納部35を備え、当該屈折ユニット格納部35内に回動自在に備えた回動アーム53の先端側に、レーザ光LBを透過自在な傾斜ガラス19を備えたガラスホルダ21を回転自在に備えると共に、当該ガラスホルダ21を、前記レーザ光LBの光路LAに対して出入自在に備え、前記回動アーム53を支持した回動支持軸51の軸心と前記ガラスホルダ21を回転するための駆動回転体27の軸心とを同軸上に備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ切断加工及びレーザ溶接を行うことのできるレーザ加工ヘッドに係り、さらに詳細には、レーザ溶接を行うときのレーザビームのビーム幅を拡大するために、レーザ光の光軸を屈折偏心させるための傾斜ガラスを回転自在に備えたレーザ加工ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ切断加工を行うことのできるレーザ加工ヘッドを用いてレーザ溶接を行う場合、ワークへ照射するレーザ光のビーム幅を拡大するために、レーザ光の光軸を屈折偏心させるための傾斜ガラスを回転自在に備え、この傾斜ガラスを回転することが行われている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−137083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に記載のレーザ加工ヘッドは、図3に示す構成である。すなわち、レーザ加工ヘッド1は産業用ロボット(図示省略)におけるロボットアーム3の先端部に適宜構成のブラケット5を介して取付けてある。前記レーザ加工ヘッド1は、前記ブラケット5に取付けた筒状の加工ヘッド本体7を備えており、この加工ヘッド本体7の上部には、レーザ発振器(図示省略)に一端側を接続した光ファイバー9の他端側を保持した光ファイバーホルダ11が装着してある。
【0005】
そして、前記加工ヘッド本体7には、前記光ファイバー7の他端側(出射端)から出射されたレーザ光LBを平行光線化するためのコリメートレンズ13が備えられている。このコリメートレンズ13の下方位置には、レーザ光LBを集光してワークWへ照射する集光レンズ15が備えられていると共に、アシストガスをワークのレーザ加工位置へ噴出するレーザノズル17が備えられている。
【0006】
前記光ファイバー9の出射端と前記コリメートレンズ13との間には、レーザ光LBの光軸LAに対して傾斜した傾斜ガラス19を備えた筒状のガラスホルダ21がギアホルダケース23内に回転自在に、かつ前記ギアホルダケース23に形成した円弧状の長穴23H(図4参照)内に往復動自在に備えられている。前記傾斜ガラス19は、レーザ光LBの光軸LAを屈折し偏心させる作用をなすものである。したがって前記ガラスホルダ21を回転することにより、レーザ光LBの光軸(光路)LAを偏心回転することができ、レーザ溶接を行うときのビーム幅を拡大することができるものである。
【0007】
前記ガラスホルダ21を回転するために、ガラスホルダ21の外周面にはギア21Gが備えられており、このギア21Gには、前記ギアホルダケース23に装着したモータ25によって回転される駆動ギア27が噛合してある。すなわち、ガラスホルダ21とモータ25は常に連動連結してある。そして、前記ガラスホルダ21は、前記長穴23H(図4参照)内において往復動することにより、レーザ光LBの光路すなわち光軸LAに対して出入自在に備えられている。
【0008】
前記長穴23H内において前記ガラスホルダ21を往復動するために、前記ギアホルダケース23には、前記ギア21Gに噛合離脱自在な円弧状の揺動ギア29の中央部が、ヒンジピン31を介して揺動自在に支持されている。そして、前記揺動ギア29を揺動するために、前記ギアホルダケース23には流体圧シリンダなどのごとき往復動アクチュエータ33が装着してあり、この往復動アクチュエータ33に往復動自在に備えたピストンロッドのごとき往復作動杵33Rの先端部がピンを介して枢支連結してある。すなわち、前記ガラスホルダ21がレーザ光の光路中に位置する状態のとき(図4(A)に示すように、長穴23Hの一端側に位置決めされた状態のとき)、前記ギア21Gから前記揺動ギア29の自由端側を離脱可能に構成してある。
【0009】
前記構成において、前記揺動ギア29と前記ガラスホルダ21のギア21Gとが噛合した状態にあるときに、前記モータ25によって駆動ギア27を正回転、逆回転することにより、前記ガラスホルダ21は前記揺動ギア29に沿って前記長穴23H内を往復動することになる。したがって、前記ガラスホルダ21は、図4(A)に示すように、レーザビームLBの光路内に、又は図4(C)に示すように、レーザビームLBの光路外に移動し位置決めすることができる。
【0010】
そして、ガラスホルダ21がレーザビームLBの光路内に位置決めされた状態にあるときに、前記往復動用アクチュエータ33を作動して、ガラスホルダ21のギア21Gから揺動ギア29の噛合を離脱し、その後に駆動ギア27を回転することにより、前記ガラスホルダ21を、レーザ光LBの光路内において回転することができるものである。したがって、レーザ光LBの光軸LAを屈折偏心した状態で回転することができ、レーザ光LBのビーム幅を拡大することができるものである。
【0011】
既に理解されるように、従来の構成においては、揺動ギア29を揺動してガラスホルダ21のギア21Gに対して噛合離脱を行うものであるから、構成が比較的複雑であると共に、前記ギア21Gに対して揺動ギア29を噛合するときに、ときとして、ギアの山と山とが当接して噛合の円滑性が欠けることがあるなど、さらなる改良が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、前述のごとき従来の問題に鑑みてなされたもので、光ファイバーの出射端から出射されたレーザ光を集光してワークへ照射するための集光レンズを備えたレーザ加工ヘッドであって、前記光ファイバーの出射端と前記集光レンズとの間に、屈折ユニット格納部を備え、当該屈折ユニット格納部内に回動自在に備えた回動アームの先端側に、レーザ光を透過自在な傾斜ガラスを備えたガラスホルダを回転自在に備えると共に、当該ガラスホルダを、前記レーザ光の光路に対して出入自在に備え、前記回動アームを支持した回動支持軸の軸心と前記ガラスホルダを回転するための駆動回転体の軸心とを同軸上に備えていることを特徴とするものである。
【0013】
また、前記レーザ加工ヘッドにおいて、レーザ光の光路に対して前記ガラスホルダが進入したときに前記回動アームを当接位置決めするための第1の当接位置決め部材と、前記光路から前記ガラスホルダが退出したときに前記回動アームを当接位置決めするための第2の当接位置決め部材とを前記屈折ユニット格納部内に備えていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、屈折ユニット格納部内に回動自在に備えた回動アームの先端側に、傾斜ガラスを備えたガラスホルダが回転自在に備えられており、前記回動アームを支持した回動支持軸の軸心と前記ガラスホルダを回転するための駆動回転体の軸心は同軸上に備えられているので、前記回動アームを往復回動することによって、レーザ光の光路に対して前記ガラスホルダを出入することができる。この際、前記駆動回転体とガラスホルダは常に連動して回転可能な状態にあるものである。
【0015】
すなわち、ガラスホルダは、レーザ光の光路中に位置決めすると同時的に回転することができるものである。したがって、ガラスホルダを回転するときに、例えばギア等の噛合、離脱等の操作が不要であり、作業能の向上を図ることができると共に、前述したごとき従来の問題を解消し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係るレーザ加工ヘッドの主要部の構成を示す断面説明図である。
【図2】同上のレーザ加工ヘッドの主要部の作用状態を示す平断面説明図である。
【図3】従来のレーザ加工ヘッドの構成を示す断面説明図である。
【図4】従来のレーザ加工ヘッドにおける主要部の作用状態を示す平断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明するに、前述した従来の構成と同一機能を奏する構成要素には同一符号を付することとして重複した説明は省略する。本発明の実施形態に係るレーザ加工ヘッド1Aは、前述したレーザ加工ヘッド1におけるギアホルダケース23に相当する部分の改良を行ったものである。
【0018】
図1を参照するに、前記ギアホルダケース23に相当する屈折ユニット格納部35は箱状の格納部本体37を備えている。この格納部本体37におけるベースプレート39の周縁付近には適宜形状の壁部材41A,41B(図2参照)が立設してあり、この壁部材41A,41Bには上部プレート43が着脱可能に取付けてある。この上部プレート43上には前記光ファイバーホルダ11が備えられており、前記ベースプレート39の下側であって前記光ファイバーホルダ11の軸心と同一軸心上には前記コリメートレンズ13が備えられている。したがって、前記ベースプレート39には、光ファイバー9(図1には図示省略)の出射端から出射されたレーザ光LBが透過自在な透過穴45(図2(B)参照)が備えられている。
【0019】
既に理解されるように、前記屈折ユニット格納部35は、前記格納部本体37のベースプレート39、壁部材41A,41B及び前記上部プレート43によって区画された格納室47を備えている。そして、この格納室47内に、前記傾斜ガラス19を光軸LAに対して傾斜した状態に備えたガラスホルダ21が回転自在かつレーザ光LBの光軸(光路)LAに対して出入自在に備えられている。
【0020】
より詳細には、前記ベースプレート39の下面にはモータ等のごときロータリーアクチュエータ49が装着してある。そして、このロータリーアクチュエータ49の回動支持軸51は前記レーザ光LBの光軸LAと平行に設けてあり、かつ前記格納室47内に突出してある。この回動支持軸51には回動アーム53の基端部側がボルトなどのごとき適宜の固定具によって一体的に取付けてある。したがって、前記ロータリーアクチュエータ49によって回動支持軸51を往復回動することにより、前記回動アーム53は、前記光軸LAに対して直交する平面内において往復回動(揺動)するものである。
【0021】
そして、前記回動アーム53の先端側で前記光軸LAを横切る位置には、前記ガラスホルダ21が軸受けを介して回転自在に支持されている。したがって、前記ロータリーアクチュエータ49を往復回動して前記回動アーム53を回動することにより、当該回動アーム53に回転自在に支持された前記傾斜ガラス19を、レーザ光LBの光軸(光路)LAに対応した位置及び光軸LAから離反した位置へ位置決めすることができるものである。
【0022】
前述のように、前記傾斜ガラス19をレーザ光LBの光軸LAに対応した位置、すなわち前記透過穴45に対応した位置に位置決めするために、一方の前記壁部材41Bには、前記回動アーム53と当接して位置決めを行うための当接位置決め部55Bが備えられており、他方の前記壁部材41Aには、前記光軸LAから離反した位置、すなわち前記透過穴45から離れた位置に位置決めを行うための当接位置決め部55Aが備えられている。したがって、回動アーム53を、前記当接位置決め部55B,55Aへ当接位置決めすることにより、前記傾斜ガラス19を、レーザ光LBの光軸LAに対応した位置、及び光軸LAから離反した位置へ容易に位置決めすることができるものである。
【0023】
なお、前記ガラスホルダ21を回転するための駆動回転体としての駆動ギア27は、前記回動支持軸51の軸心と同心に備えられており、この駆動ギア27を回転駆動するためのモータ25は前記上部プレート43上に装着してある。
【0024】
前記構成により、図2(B)に示すように、回動アーム53が当接位置決め部55Aに当接位置決めされ、傾斜ガラス19がレーザ光LBの光路から退避した状態にあるときに、ロータリーアクチュエータ49を作動する。そして、回動アーム53を、図2(B)において反時計回り方向に回動し、当接位置決め部55Bに当接すると、傾斜ガラス19は、図2(A)に示すように、レーザ光LBの光路に位置決めされることになる。
【0025】
この際、前記傾斜ガラス19を備えたガラスホルダ21と駆動ギア27は常に連動連結した状態にあるので、ガラスホルダ21をモータ25によって直ちに回転することができる。そして、前記回動アーム53を、図2(A)に示す状態から時計回り方向に回動することにより、直ちに図2(B)に示す元の位置へ復帰することができるものである。
【0026】
既に理解されるように、回動アーム53を時計回り方向及び反時計回り方向へ回動することによって、傾斜ガラス19を、レーザ光LBの光路に対して出入することができ、前記光路に対応した位置及び光路から離脱した位置への傾斜ガラス19の位置決めを容易に行い得るものである。そして、ガラスホルダ21を光軸LAに対応した位置に位置決めした後に、当該ガラスホルダ21を回転するための格別の操作が不用なものである。したがって構成の簡素化を図ることができるものである。
【0027】
また、前記構成においては、回動アーム53等は格納室47内に格納してあるので、格納室47を密封状態とすることも容易であって、格納室47の防塵効果を図ることも容易なものである。
【符号の説明】
【0028】
1A レーザ加工ヘッド
7 加工ヘッド本体
9 光ファイバー
11 光ファイバーホルダ
13 コリメートレンズ
15 集光レンズ
19 傾斜ガラス
21 ガラスホルダ
25 モータ
27 駆動ギア
35 屈折ユニット格納部
41A,41B 壁部材
43 上部プレート
45 透過穴
47 格納室
49 ロータリーアクチュエータ
51 回動支持軸
53 回動アーム
55A,55B 当接位置決め部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバーの出射端から出射されたレーザ光を集光してワークへ照射するための集光レンズを備えたレーザ加工ヘッドであって、前記光ファイバーの出射端と前記集光レンズとの間に、屈折ユニット格納部を備え、当該屈折ユニット格納部内に回動自在に備えた回動アームの先端側に、レーザ光を透過自在な傾斜ガラスを備えたガラスホルダを回転自在に備えると共に、当該ガラスホルダを、前記レーザ光の光路に対して出入自在に備え、前記回動アームを支持した回動支持軸の軸心と前記ガラスホルダを回転するための駆動回転体の軸心とを同軸上に備えていることを特徴とするレーザ加工ヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザ加工ヘッドにおいて、レーザ光の光路に対して前記ガラスホルダが進入したときに前記回動アームを当接位置決めするための第1の当接位置決め部材と、前記光路から前記ガラスホルダが退出したときに前記回動アームを当接位置決めするための第2の当接位置決め部材とを前記屈折ユニット格納部内に備えていることを特徴とするレーザ加工ヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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