説明

レーザ加工方法及びレーザ加工装置

【課題】レーザパワーの波形制御におけるデータ効率、繰り返し速度および精度を改善してレーザ加工能力の向上をはかる。
【解決手段】このレーザ加工装置は、ファイバレーザ発振器10、レーザ電源12、レーザ入射部14、ファイバ伝送系15、レーザ出射部16、制御部18、タッチパネル20等を有している。制御部18は、ハードウェア的には、CPU(マイクロコンピュータ)、FPGA(フィールドプログラマブル・ゲートアレイ)、ディジタル−アナログ(D/A)変換器,アナログ−ディジタル(A/D)変換器等を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物にパルス発振または連続発振のレーザ光を照射して所望のレーザ加工を施すレーザ加工技術に係り、特にレーザ光の出力(パワー)を波形制御するレーザ加工方法およびレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、レーザ加工においてレーザ光の出力を波形制御する技術は、レーザ溶接で多く用いられている。たとえば、レーザスポット溶接では、被加工物の各溶接ポイントにパルス発振のレーザ光を単発または連発で照射する。また、レーザシーム溶接では、被加工物の溶接ラインに、パルス発振のレーザ光を一定の繰り返し周波数でオーバーラップ走査で照射するか、あるいは連続発振(CW)のレーザ光を連続走査で照射する。そのようなレーザ溶接加工においては、レーザパワーの波形を任意に可変することによって、溶け込み具合や仕上がり具合等を調整することができる。
【0003】
たとえば特許文献1には、コントロールボード(制御部)から基準波形が出力され、それに応じてレーザ電源部がレーザ励起部を駆動し、所望の波形形状を有するレーザ光が発振出力されるファイバレーザ加工機が開示されている。更に、このファイバレーザ加工機では、加工用レーザ光の出力をモニタしてレーザ電源部にフィードバックすることが開示されている。
【0004】
従来のレーザ溶接装置は、CPU(マイクロコンピュータ)のメモリ書き込み/読み出し機能を利用してレーザパワーの波形制御を行っている。すなわち、ユーザがタッチパネル等のマン・マシン・インタフェースを通じて所望の基準波形を設定入力すると、CPUがその設定入力された基準波形を所定のサンプリング周期で符号化し、その2進コードを基準波形データとしてメモリに書き込む。そして、レーザ溶接加工を実行する際に、CPUが、メモリから基準波形データをサンプリング周期の時間間隔で読み出して、ディジタルの基準波形信号を再生する。こうしてCPUのメモリ読み出し機能により再生されたディジタルの基準波形信号はD/A変換器によりアナログの基準波形信号に変換され、そのアナログ基準波形信号がレーザ電源部の制御信号に用いられる。典型的には、レーザ発振器より発振出力された加工用レーザ光の出力(パワー)、あるいは光共振器内の活性媒質を光学的に励起するための励起光源たとえばレーザダイオード(LD)に供給される駆動電流等が上記アナログの基準波形信号に倣うようにフィードバック制御がかけられる。
【0005】
もっとも、レーザパワーの波形制御において、フィードバック制御をかけても、モニタ対象(レーザ出力、LD駆動電流等)の実際の値が必ずしも正確に基準波形に倣うとは限らない。従来のレーザ溶接装置は、基準波形に対するモニタ対象の波形の誤差が所定の許容範囲内に収まっているか否かのチェック(良否判定)を行う場合は、所要の演算処理をすべてCPUで行っている。
【特許文献1】特開2007−190566
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したようなレーザパワーの波形制御に専らCPUのメモリ書き込み/読み出し機能や演算処理機能を利用する従来の技術は、信号処理に時間がかかり過ぎて、今日の精密溶接加工の要求仕様に十分に対応できていないことが課題となっている。
【0007】
具体的には、基準波形の再生時にCPUがメモリから基準波形データを読み出す際のバスサイクルに多くの時間を要し、最短でも50μsec以上のサンプリング周期で基準波形が再生されている。
【0008】
また、波形制御の良否を判定する機能を搭載する場合、良否判定のための波形積分演算処理を基準波形の再生処理と同時または並列的に行うと、CPUの負荷が更に増大して波形制御の速度が低下する。そこで、1パルスの波形制御を終えてから、CPUに基準波形およびモニタ波形のそれぞれに対する波形積分演算処理と判定演算処理とを行わせている。しかし、パルス発振のレーザ光を所定回数繰り返すリピートモードにおいては、1パルスの波形制御に要する時間だけでなくその後処理としての良否判定の演算処理に要する時間も1サイクルに含まれるため、上記のように後処理の中で波形積分の演算処理を行うのでは1サイクルの時間(周期)が不可避的に長くなってしまう。このため、リピートモードの繰り返し周波数は500Hz(周期2msec)が限界になっており、高速化が切に望まれていた。
【0009】
一方で、連続発振(CW)モードにおいて、たとえば数十秒以上の連続波形を設定する場合、上記のような従来技術によれば、1つの基準波形から生成される基準波形データ(2進コード)のデータ量が通常のメモリに格納しきれないほど膨大になる。そこで、CWモードのときは、サンプリング周期を極端に長い値(たとえば50msec)に設定し、データの圧縮を図っている。しかし、そのようにサンプリング周期が極端に長いと、CPUの設定する基準波形の時間分解能が低下し、ひいては波形制御の精度が低下する。
【0010】
本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、レーザパワーの波形制御におけるデータ効率、繰り返し速度および精度を改善してレーザ加工能力の向上をはかるレーザ加工方法およびレーザ加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明のレーザ加工方法は、複数本の線分波形要素を時間軸に沿って繋ぎ合わせて所望の基準波形を設定する第1のステップと、各々の前記線分波形要素について、少なくとも、始端の値を表す初期値のデータと、傾きを表す変化率のデータと、始端から次に続く線分波形要素の始端までの時間の長さを表す線分区間時間のデータとを1ステージのパラメータデータとして生成する第2のステップと、時間軸に沿って、各ステージ毎にパラメータデータを基に所定の演算処理を行って前記線分波形要素を再生し、全ステージにわたり前記線分波形要素を実質的に繋ぎ合わせて前記基準波形を復元する第3のステップと、所望のレーザ加工に用いるパルス発振または連続発振のレーザ光の出力を前記復元された基準波形にしたがって可変する第4のステップとを有する。
【0012】
本発明のレーザ加工方法においては、所望の基準波形をその設定段階で時間軸に沿ってサンプリング周期で分解するのではなく、基準波形を構成する複数本または複数ステージの線分波形要素の各々について所定の属性(初期値、傾き、線分区間時間等)を示す複数のパラメータデータを生成し、これらステージ毎のパラメータデータを情報管理する。そして、該基準波形をレーザ加工の波形制御に使用する時は、時間軸に沿って、ステージ順に、各ステージ毎にパラメータデータを基に所定の演算処理を行って線分波形要素を再生し、全ステージにわたり線分波形要素を実質的に繋ぎ合わせて基準波形を復元する。この復元された基準波形にしたがってパルス発振または連続発振のレーザ光の出力を可変することによって、所望のレーザ加工を行うことができる。
【0013】
本発明の好適な一態様によれば、第2のステップにおいて、一定周期をΔTとし、各々の線分波形要素について線分区間時間がN×ΔT(Nは正の整数)であるときは、線分区間時間を表すデータとして数値Nを表すデータを生成し、第3のステップにおいて、変化率から一定周期ΔT分の変化量を求め、初期値を始点として一定周期分の変化量を順次N回継ぎ足して、当該線分波形要素を再生する。
【0014】
波形生成周期ΔTは、全ての線分波形要素に亘って共通の値(固定値)に設定してもよいが、線分波形要素毎に変化率に応じて決定してもよい。その場合は、線分波形要素の変化率が大きいほどΔTを短くし、線分波形要素の変化率が小さいほどΔTを長くするのが好ましい。つまり、変化率が大きいときは演算処理時間を短くし、変化率が小さいときは演算処理時間を長くすることによって、波形再生の精度と演算処理効率を両立させることができる。
【0015】
また、好適な一態様によれば、基準波形のパラメータの1つとして少なくとも所望の波高基準値を設定する第5のステップを更に有し、第2のステップおよび3のステップにおいて、変化率を波高基準値に対する割合として用いる。このように、変化率を波高基準値に対する割合として用いることにより、基準波形を電流の波形制御にもレーザ出力の波形制御にも共通使用することができる。
【0016】
また、好適な一態様によれば、第2のステップにおいて、更に、変化率の分解能を表すフラグのデータをステージのパラメータデータの1つとして生成し、第3のステップにおいて、分解能フラグで指示された分解能で変化率を用いる。このように、線分波形要素の変化率について分解能を変えられる機能を有することによって、波形再生の精度を一層高くすることができる。
【0017】
本発明のレーザ加工装置は、複数本の線分波形要素を時間軸に沿って繋ぎ合わせて所望の基準波形を設定する基準波形設定部と、各々の前記線分波形要素について、少なくとも、始端の値を表す初期値のデータと、傾きを表す変化率のデータと、始端から次の線分波形要素の始端までの時間の長さを表す線分区間時間のデータとを1ステージのパラメータデータとして生成するステージ・パラメータデータ生成部と、時間軸に沿って、各ステージ毎にパラメータデータを基に所定の演算処理を行って前記線分波形要素を再生し、全ステージにわたり前記線分波形要素を実質的に繋ぎ合わせて前記基準波形を復元する基準波形復元部と、所望のレーザ加工に用いるパルス発振または連続発振のレーザ光の出力を前記復元された基準波形にしたがって可変するレーザ出力可変部とを有する。
【0018】
本発明のレーザ加工装置において、基準波形設定部は、複数本の線分波形要素を時間軸に沿って繋ぎ合わせて所望の基準波形を設定すればよい。該基準波形は設定段階で時間軸に沿ってサンプリング周期で分解されることはない。代わりに、ステージ・パラメータデータ生成部が、基準波形を構成する複数本または複数ステージの線分波形要素の各々について所定の属性(初期値、傾き、線分区間時間等)を示す複数のパラメータデータを生成する。そして、該基準波形をレーザ加工の波形制御に使用する時は、基準波形復元部が、時間軸に沿って、ステージ順に、各ステージ毎にパラメータデータを基に所定の演算処理を行って線分波形要素を再生し、全ステージにわたり線分波形要素を実質的に繋ぎ合わせて基準波形を復元する。レーザ出力可変部は、この復元された基準波形にしたがってパルス発振または連続発振のレーザ光の出力を可変し、波形制御でレーザ加工を行う。
【0019】
本発明の好適な一態様においては、基準波形設定部およびステージ・パラメータデータ生成部がCPU(マイクロコンピュータ)で構成され、基準波形復元部がFPGA(フィールドプログラマブル・ゲートアレイ)内に構築される。この場合、FPGA内には、基準波形に関するパラメータデータをCPUより受け取って保持するパラメータデータメモリも更に構築されるのが好ましく、各々の線分波形要素を再生する度毎に当該ステージのパラメータデータをパラメータデータメモリより移して保持するバッファメモリも更に構築されてよい。
【0020】
また、好適な一態様においては、レーザ出力可変部が、レーザ光を発振出力するための活性媒質を含む光共振器と、活性媒質を光学的に励起するための励起光源と、この励起光源に発光用の駆動電流を供給するレーザ電源と、駆動電流を測定する電流測定部と、駆動電流の測定値が基準波形に倣うように駆動回路を制御する制御部とを有する。
【0021】
この場合、FPGA内に、レーザ光が発振出力されている期間中に復元中の基準波形について積分演算を行う基準波形積分回路と、レーザ光が発振出力されている期間中に駆動電流の測定値を基に駆動電流の波形について積分演算を行うモニタ波形積分回路と、レーザ光の発振出力が終了し、または中断した直後に、基準波形の積分値と駆動電流波形の積分値とを比較し、その比較誤差に基づいてレーザ光の出力に関する良否の判定を行う良否判定回路とが構築されてよい。
【0022】
この場合、良否判定回路の良否判断基準は、ユーザ(作業者等)がディスプレイ上で許容範囲を設定してよい。たとえば、上下限値を基準波形の積分値に対してそれぞれ何パーセント許容するかを設定すればよい。
【0023】
あるいは、CPUが、基準波形を基にその波形の積分値を演算してもよい。そして、FPGA内に、レーザ光が発振出力されている期間中に駆動電流の測定値を基に駆動電流の波形について積分演算を行うモニタ波形積分回路と、レーザ光の発振出力が終了し、または中断した直後に、該基準波形の積分値と駆動電流波形の積分値とを比較し、その比較誤差に基づいてレーザ光の出力に関する良否の判定を行う良否判定回路とが構築されてもよい。
【0024】
この場合、良否判定回路の良否判断基準は、前述のようにユーザ(作業者等)が許容範囲をパーセンテージで設定してもよい。あるいは、CPUにより演算された積分値をディスプレイに表示し、これを基にユーザ(作業者等)が上下限値を直接入力してもよい。
【0025】
また、別の好適な一態様においては、レーザ出力可変部が、レーザ光を発振出力するための活性媒質を含む光共振器と、活性媒質を光学的に励起するための励起光源と、この励起光源に発光用の駆動電流を供給するレーザ電源と、光共振器より発振出力されたレーザ光の出力を測定するレーザ出力測定部と、レーザ出力の測定値が基準波形に倣うように駆動回路を制御する制御部とを有する。
【0026】
この場合、FPGA内に、レーザ光が発振出力されている期間中に復元中の基準波形について積分演算を行う基準波形積分回路と、レーザ光が発振出力されている期間中にレーザ出力の測定値を基にレーザ出力の波形について積分演算を行うモニタ波形積分回路と、レーザ光の発振出力が終了し、または中断した直後に、基準波形の積分値とレーザ出力波形の積分値とを比較し、その比較誤差に基づいてレーザ光の出力に関する良否の判定を行う良否判定回路とが構築されてよい。
【0027】
あるいは、CPUが、基準波形を基にその波形の積分値を演算してもよい。そして、FPGA内に、レーザ光が発振出力されている期間中にレーザ主力の測定値を基にレーザ出力の波形について積分演算を行うモニタ波形積分回路と、レーザ光の発振出力が終了し、または中断した直後に、基準波形の積分値と駆動電流波形の積分値とを比較し、その比較誤差に基づいてレーザ光の出力に関する良否の判定を行う良否判定回路とが構築されてもよい。
【発明の効果】
【0028】
本発明のレーザ加工方法またはレーザ加工装置によれば、上記のような構成および作用により、レーザパワーの波形制御におけるデータ効率、繰り返し速度および精度を改善して、レーザ加工能力を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、添付図を参照して本発明の好適な実施の形態を説明する。
【0030】
図1に、本発明の一実施形態におけるレーザ加工装置の構成を示す。このレーザ加工装置は、ファイバレーザ溶接機として構成されており、ファイバレーザ発振器10、レーザ電源12、レーザ入射部14、ファイバ伝送系15、レーザ出射部16、制御部18、タッチパネル20等を有している。
【0031】
ファイバレーザ発振器10は、発振用の光ファイバ(以下「発振ファイバ」と称する。)22と、この発振ファイバ22の一端面にポンピング用の励起光MBを照射する電気光学励起部24と、発振ファイバ22を介して光学的に相対向する一対の光共振器ミラー26,28とを有している。
【0032】
電気光学励起部24は、励起光源としてのレーザダイオード(LD)30および集光用の光学レンズ32を有している。LD30は、レーザ電源12よりLD駆動電流(またはLD励起電流)IDを供給または注入されて発光駆動され、所定波長のLD光つまり励起光MBを発振出力する。光学レンズ32は、LD30からの励起光MBを発振ファイバ22の一端面に集光入射させる。LD30と光学レンズ32との間に配置される光共振器ミラー26は、LD30側から入射した励起光MBを透過させ、発振ファイバ22側から入射した発振光線を共振器の光軸上で全反射するように構成されている。
【0033】
レーザ電源12よりLD34に供給されるLD駆動電流IDを測定するために、電流センサ25およびLD電流測定回路27が設けられている。電流センサ25は、たとえばホール素子からなり、無接触でLD駆動電流IDを検出する。LD電流測定回路27は、電流センサ25の出力信号を入力してLD駆動電流IDの電流測定値(たとえば電流実効値)MIDを演算する。LD電流測定回路27で得られた電流測定値MIDは、フィードバック信号としてレーザ電源12に与えられるとともに、モニタ信号として制御部18に与えられる。
【0034】
発振ファイバ22は、図示省略するが、発光元素としてたとえば希土類元素のイオンをドープしたコアと、このコアを同軸に取り囲むクラッドとを有しており、コアを活性媒体とし、クラッドを励起光の伝播光路としている。上記のようにして発振ファイバ22の一端面に入射した励起レーザ光MBは、クラッド外周界面の全反射によって閉じ込められながら発振ファイバ22の中を軸方向に伝搬し、その伝搬中にコアを何度も横切ることでコア中の希土類元素イオンを光励起する。こうして、コアの両端面から軸方向に所定波長の発振光線が放出され、この発振光線が光共振器ミラー26,28の間を何度も行き来して共振増幅され、部分反射ミラーからなる片側の光共振器ミラー28より該所定波長を有するファイバレーザ光FBが取り出される。
【0035】
なお、光共振器において、光学レンズ32,34は、発振ファイバ22の端面から放出されてきた発振光線を平行光にコリメートして光共振器ミラー26,28へ通し、光共振器ミラー26,28で反射して戻ってきた発振光線を発振ファイバ22の端面に集光させる。また、発振ファイバ22を通り抜けた励起用レーザ光MBは、光学レンズ34および光共振器ミラー28を透過したのち折り返しミラー36にて側方のレーザ吸収体38に向けて折り返される。光共振器ミラー28より出力されたファイバレーザ光FBは、この折り返しミラー36をまっすぐ透過し、次いでビームスプリッタ40を通ってからレーザ入射部14に入る。
【0036】
ビームスプリッタ40は、入射したファイバレーザ光FBのごく一部(例えば1%)を所定方向つまりパワーモニタ用のフォトセンサ(PD)42側へ反射し、残りの大部分(99%)をまっすぐ透過させる。フォトセンサ(PD)42の正面には、ビームスプリッタ40からの反射光またはモニタ光RFBを集光させる集光レンズ44が配置されている。
【0037】
フォトセンサ(PD)42は、ビームスプリッタ40からのモニタ光RFBを光電変換して、ファイバレーザ光FBのレーザ出力(パワー)を表す電気信号(レーザ出力測定信号)を出力する。レーザ出力測定回路45は、フォトセンサ42の出力信号を基に、アナログ信号処理によってファイバレーザ光FBのレーザ出力測定値MFBを求める。レーザ出力測定回路45で得られたレーザ出力測定値MFBは、フィードバック信号としてレーザ電源12に与えられるとともに、モニタ信号として制御部18に与えられる。
【0038】
ビームスプリッタ40をまっすぐ透過してレーザ入射部14に入ったファイバレーザ光FBは、最初にベントミラー46で所定方向に折り返され、次いで入射ユニット48内で集光レンズ50により集光されてファイバ伝送系15の伝送用光ファイバ(以下「伝送ファイバ」と称する。)52の一端面に入射する。伝送用光ファイバ52は、たとえばSI(ステップインデックス)形ファイバからなり、入射ユニット48内で入射したファイバレーザ光FBをレーザ出射部16の出射ユニット54まで伝送する。出射ユニット54は、伝送ファイバ52の終端面より出たファイバレーザ光FBを平行光にコリメートするコリメートレンズ56と、平行光のファイバレーザ光FBを所定の焦点位置に集光させる集光レンズ58とを有している。
【0039】
レーザ溶接加工が行われる時は、レーザ電源12より波形制御された駆動電流IDがLD30に供給(注入)され、ファイバレーザ発振器10内でLD30より駆動電流IDの波形に対応したLD出力波形の励起光MBが発振ファイバ22に供給(注入)され、ファイバレーザ発振器10よりLD出力波形に対応したレーザ出力波形を有するファイバレーザ光FBが発振出力される。この波形制御されたファイバレーザ光FBが、レーザ入射部14、ファイバ伝送系15およびレーザ出射部16を介して被加工物Wの溶接ポイントまたは溶接ラインに集光照射される。該溶接ポイントまたは溶接ラインにおいては、ファイバレーザ光FBのエネルギーにより被加工材質が溶融し、パルス照射終了後に凝固してナゲットが形成される。
【0040】
このファイバレーザ溶接装置において、ファイバレーザ発振器10は、発振ファイバ22が口径10μm程度、長さ数メートル程度の細長いコアを活性媒体とするため、ビーム径が細くてビーム広がり角の小さなファイバレーザ光FBを発振出力することができる。しかも、発振ファイバ22の一端面に入射した励起レーザ光MBが発振ファイバ22の中で数メートルの長い光路を伝搬する間に何度もコアを横切って励起エネルギーを使い果たすので、非常に高い発振効率でファイバレーザ光FBを生成することができる。また、ファイバレーザ発振器10は、発振ファイバ22のコアが熱レンズ効果を起こさないため、ビームモードが非常に安定している。このように、ビームモードおよびレーザ出力のいずれも安定しているので、CWモードのレーザ発振を最大100秒程度まで持続できるようになっている。
【0041】
このファイバレーザ溶接装置は、後述するように、ファイバレーザ光FBの出力(パワー)について任意かつ多様な波形制御を可能とし、しかもリピートモードでは繰り返し速度の大幅な高速化を実現し、CWモードでは波形制御の精度(時間分解能)を大きく改善しており、任意の溶接加工において溶接の溶け込み具合や仕上がり具合等を一層自由に調整することが可能であり、精密溶接加工の厳しい要求仕様にも十分余裕を持って対応できる。
【0042】
ここで、図2、図3および図4に、このファイバレーザ溶接装置において設定入力可能な基準波形の基本形態(モード)を示す。いずれのモードでも、複数本の線分波形要素を時間軸に沿って実質的に繋ぎ合わせて所望の基準波形を設定するようになっている。
【0043】
図2に、単発発振モードにおける基準波形の一例を示す。たとえば、0.1〜500msecの持続時間TAで任意のパルス波形を設定できるようになっている。図示の基準波形Aは、3本の線分波形要素a1,a2,a3を繋ぎ合わせて構成されている。
【0044】
図3に、リピートモードにおける繰り返し基準波形の一例を示す。たとえば、0.1〜500msecの持続時間TAを有する基準波形Aの繰り返しを最長99secの期間TCにわたって(後述する良否判定作業を含め、最速の繰り返し周波数:5kHz)設定できるようになっている。
【0045】
図4に、CWモードにおける基準波形の一例を示す。たとえば、0.5〜99secの持続時間TBで任意の連続波形を設定できるようになっている。図示の基準波形Bは、7本の線分波形要素b1,b2,b3,b4,b5,b6,b7を繋ぎ合わせて構成されている。
【0046】
図5に、この実施形態における制御部18の具体的な構成例を示す。図示のように、制御部18は、ハードウェア的には、CPU(マイクロコンピュータ)64、FPGA(フィールドプログラマブル・ゲートアレイ)66、ディジタル−アナログ(D/A)変換器68,アナログ−ディジタル(A/D)変換器70,72および接続装置74を有している。
【0047】
CPU64は、中央演算処理装置、プログラムメモリ、データメモリおよびインタフェース回路等を含んでおり、プログラムメモリに格納されている各種プログラム(ソフトウェア)にしたがって装置全体ないし各部の動作を制御する。特に、レーザパワーの波形制御に関して、CPU64は、タッチパネル20の表示部20aおよび入力部20bを介してユーザ(作業員、保守員等)の希望する基準波形を入力する。
【0048】
この実施形態におけるCPU64は、タッチパネル20を通じて設定入力された基準波形を従来のようにそのままサンプリングして符号化するのではなく、時間軸上でその基準波形をその構成要素である複数本の線分波形要素に分解し、各線分波形要素毎にその特性を示すパラメータのデータを生成する。この実施形態では、各々の線分波形要素毎に、つまり各ステージについて、(1)始端の値を表す「初期値」のデータ、(2)傾きを表す「変化率」のデータ、(3)始端から次の線分波形要素の始端までの時間の長さを表す「線分区間時間」のデータ、および(4)変調機能および分解能についてユーザオプションおよびCPU設定スケールをそれぞれ示す「変調フラグ/分解能フラグ」のデータ、の4種類のパラメータデータを生成する。
【0049】
たとえば、図2の基準波形Aの第1線分波形要素a1を例にとると、図6に示すように、「初期値」は始端q1の値(通常0)であり、「変化率」はΔA(%)/ΔT(μsec)であり、「線分区間時間」はN(個)×ΔT(μsec)である。ここで、ΔTは、サンプリング周期ではなく、後述するようにFPGA66内で各線分波形要素を再生する際の1回分の演算出力ないし信号処理サイクルの周期である。各ステージ内でΔTは一定であるから、「線分区間時間」のデータとして数値Nを表すデータを用いてよい。
【0050】
また、「変調フラグ」は、FPGA66側で当該分波形要素a1を再生する際に、たとえば図7に示すような一定周波数の変調波形Hを重畳すべきか否かを指示する。変調フラグ“0”のときは変調がかけられず、変調フラグ“1”のときに変調がかけられる。
【0051】
「分解能フラグ」は、FPGA66側が当該分波形要素a1を再生する際に上記「変化率」について用いるスケールを指示する。たとえば、分解能フラグ“0”は、[0.01%−1]のスケールを指示する。ここで、[0.01%−1]は、[0.01%]を「1」とするスケールであることを意味する。すなわち、波高基準値に対する単位変化量ΔAの比Jが百分率表示で0.01%のときは、「変化率」ΔS(ΔS=ΔA/ΔT)は1になる。したがって、J=0.10%のときはΔS=10であり、J=1.0%のときは、ΔS=100である。これに対して、分解能フラグ“1”は、[0.00001%−1]のスケールを指示する。すなわち、波高基準値に対する単位変化量ΔAの比Jが百分率表示で0.00001%のときは、「変化率」ΔSは1になる。したがって、J=0.0001%のときはΔS=10であり、J=0.001%のときは、ΔS=100である。
【0052】
たとえば、図8に示すように、線分波形要素a1の傾き(変化率)が普通以上であるときは[0.01%−1]のスケールが用いられ、傾き(変化率)が相当小さいときは[0.00001%−1]のスケールが用いられる。
【0053】
CPU64は、各線分波形要素毎に生成した1ステージ分の上記4種類のパラメータデータを、たとえば図9に示すようなフォーマットで1セットにまとめて管理する。
【0054】
さらに、CPU64は、たとえば図10に示すようなフォーマットで基準波形全体の基本パラメータデータも生成する。ここで、「波高基準値」は、上記ステージ・パラメータの1つである「変化率」の分母に相当するもので、ユーザが自由に設定できる。たとえば、LD駆動電流についてユーザが「波高基準値」を200Aに設定したとすると、図6の例で一周期ΔT当たりの変化量ΔAが10Aであるときは、J=5%である。この場合、CPU64は、[0.01%−1]のスケールを採用し、S=500の「変化率」データを生成することになる。
【0055】
図10において、「繰り返し周波数」および「繰り返し回数」は、リピートモード(図3)における基準波形の繰り返し周波数(m/TC)および繰り返し回数(m)であり、ユーザの設定入力した値をそのまま用いてよい。また、「モニタ期間指定」は、CWモード(図4)においてモニタリングをかける様式(波形全体または一定周期毎)を指定するパラメータであり、周期を可変設定することもできるようになっている。「変調種別フラグ」は、上記ステージ・パラメータの「変調フラグ」の機能を拡張するものであり、矩形波、正弦波、鋸波など複数種類の変調波形が用意されている場合に、ユーザが選択したものを識別するためのコードを与える。
【0056】
CPU64は、1つの基準波形について、たとえば図11に示すようなフォーマットで、基準波形全体のパラメータデータ(図10)と各線分波形要素(ステージ)毎のパラメータデータ(図9)とを結び付けて管理し、CPU内部または外部のデータメモリに保存する。なお、図示省略するが、第nステージが最終ステージであることを示す終端指示データを付けるのが好ましい。この実施形態では、仮の第(n+1)ステージを定義し、その中の「線分区間時間」のデータNを0にセットしておくことで、1つ前の第nステージが最終ステージであることを示すようにしている。
【0057】
図12に、この実施形態においてFPGA66内に構築される各種回路の一構成例を示す。図示のように、FPGA66には、データメモリ80、制御回路82、基本パラメータデータ・バッファメモリ84、ステージ・パラメータデータ・バッファメモリ86、基準波形復元演算回路88、基準波形出力回路90、変調データメモリ92、変調データバッファ93、アドレスカウンタ94、サイクルカウンタ95、カウント比較回路96、基準波形積分回路98、電流モニタ波形バッファメモリ100,レーザ出力モニタ波形バッファメモリ102、電流モニタ波形積分回路104、レーザ出力モニタ波形積分回路106、比較判定回路108等が作り込まれる。これらの回路80〜108の動作に必要なクロックは外部のクロック回路110から供給される。
【0058】
データメモリ80には、レーザ溶接加工の開始に先立って、CPU64よりそのレーザ溶接加工で使用される基準波形に係る全パラメータデータ(図11)が書き込まれる。制御回路82は、CPU64から所要の制御信号および制御に関連した各種データを受け取り、FPGA66内の各部を制御する。
【0059】
基本パラメータデータ・バッファメモリ84は、当該基準波形の復元処理を実行する際に、データメモリ80より基準波形全体の基本パラメータデータ(図10)を取り込んで保持する。ステージ・パラメータデータ・バッファメモリ86は、各線分波形要素の再生処理を実行する際に、データメモリ80より当該ステージのパラメータデータ(図9)を取り込んで保持する。
【0060】
基準波形復元演算回路88は、制御回路82の制御の下で、時間軸に沿って、各ステージ毎にパラメータデータを基に所定の演算処理を行って各線分波形要素を再生し、全ステージにわたり線分波形要素を実質的に繋ぎ合わせて基準波形を復元する処理を一定周期(ΔT)の演算によって実行する。この演算処理のために、基本パラメータデータ・バッファメモリ84より基準波形全体のパラメータデータ(図10)を受け取り、ステージ・パラメータデータ・バッファメモリ86より各ステージのパラメータデータ(図9)をステージ順に上書きで取り込み、変調データメモリ92より変調バッファ93を介して変調波形h(図7)のデータを受け取る。
【0061】
変調データメモリ92には、1サイクル分の変調波形を時間軸上で等間隔にサンプリングして得られる所定数たとえば100個の変調データが格納されている。アドレスカウンタ94は、変調データメモリ92より変調波形データを一定周期(ΔT)で1個ずつ読み出すためのDMAコントローラを構成する。
【0062】
なお、ステージ・パラメータデータの中の「線分区間時間」のデータは、演算回路88にではなく、後述するようにカウント比較回路96に与えられる。
【0063】
基準波形出力回路90は、基準波形復元演算回路88より一定周期(ΔT)毎に生成される線分波形要素の再生データCSを取り込み、その線分波形要素の再生データCSをレーザ電源12に対する制御信号として所定のタイミングで出力する。
【0064】
サイクルカウンタ95およびカウント比較回路96は、基準波形復元処理における各ステージの持続時間(線分区間時間)を計時するためのタイマ回路を構成している。サイクルカウンタ95は、各ステージの開始でリセットされ、復元処理の1周期(ΔT)毎に、たとえば基準波形復元演算回路88より線分波形要素の再生データCSが出力される度毎に1つカウントアップし、カウント値iを出力する。
【0065】
カウント比較回路96は、サイクルカウンタ95からのカウント値iをステージ・パラメータデータ・バッファメモリ86に保持されている「線分区間時間」のデータNと比較し、iがNに達した時に、当該ステージが終了したことを知らせるステージ終了通知信号Kを発生する。カウント比較回路96よりステージ終了通知信号Kが発せられると、これに応答して制御回路82がデータメモリ80より次のステージのパラメータデータをステージ・パラメータデータ・バッファメモリ86に上書きでロードするようになっている。
【0066】
基準波形積分回路98は、基準波形出力回路90より一定周期(ΔT)毎に出力される線分波形要素の再生データCSを取り込んで累積加算し、再生中の基準波形の積分値を求める。
【0067】
電流モニタ波形バッファメモリ100は、LD電流測定回路27より接続回路74およびA/D変換器70(図5)を介して送られてくるLD駆動電流測定値MIDをラッチする。電流モニタ波形積分回路104は、電流モニタ波形バッファメモリ100より一定周期(ΔT)毎にLD駆動電流測定値MIDを取り込んで累積加算し、LD駆動電流モニタ波形の積分値を求める。
【0068】
レーザ出力モニタ波形バッファメモリ102は、レーザ出力測定回路45より接続回路74およびA/D変換器72(図5)を介して送られてくるレーザ出力測定値MFBをラッチする。レーザ出力モニタ波形積分回路106は、レーザ出力モニタ波形バッファメモリ102より一定周期(ΔT)毎にレーザ出力測定値MFBを取り込んで累積加算し、レーザ出力モニタ波形の積分値を求める。
【0069】
比較判定回路108は、1回のモニタ期間が終了する度毎に、基準波形積分回路98で得られている基準波形の積分値と電流モニタ波形積分回路104で得られているLD駆動電流モニタ波形の積分値あるいはレーザ出力モニタ波形積分回路106で得られているレーザ出力モニタ波形の積分値とを比較して、その差分(誤差)を求め、その誤差が所定の許容範囲内に入っているか否かの判定(良否判定)を行う。そして、不良の判定結果が出たときは、これをCPU64に伝えるようになっている。
【0070】
なお、不良の判定結果をCPU64に送るときは、バッファメモリ100,102に蓄積されているモニタ波形のデータもCPU64に送れるようになっている。
【0071】
レーザ電源12は、図示省略するが、直流電源、LD駆動回路、コンパレータ、フィードバック信号選択回路等を有している。直流電源は、たとえばインバータ回路あるいはスイッチングレギュレータ回路からなり、一定のLD駆動電圧を出力する。LD駆動回路は、LD駆動電圧からLD駆動電流IDを生成するV−I変換回路からなり、FPGA66の基準波形出力回路90よりD/A変換器68および接続回路74を介して送られてくるアナログの基準波形信号ACSに倣うようにLD駆動電流IDを可変する。コンパレータは、FPGA66からのアナログ基準波形信号ACSを指令信号として入力するとともに、フィードバック信号選択回路よりLD駆動電流測定値MIDもしくはレーザ出力測定値MFBをフィードバック信号として入力し、両入力信号の差分を表す誤差信号を出力する。LD駆動回路は、誤差信号を零にする方向にLD駆動電流IDを可変する。フィードバック信号選択回路は、CPU64の制御の下で、LD駆動電流IDに対してフィードバック制御をかけるときはLD駆動電流測定値MIDを選択し、ファイバレーザ光FBの出力に対してフィードバック制御をかけるときはレーザ出力測定値MFBを選択するようになっている。
【0072】
図13に、単発モードまたはリピートモードにおけるFPGA66内の全体的な処理手順をフローチャートで示す。このフローは、所望のレーザ溶接加工を実行する時に開始され、制御回路82によって全体のシーケンスが制御される。なお、このフローに先立って、上述したように、このレーザ溶接加工で使用される基準波形に係る全パラメータデータ(図11)がCPU64よりFPGA66のデータメモリ80に書き込まれる。
【0073】
先ず、制御回路82が、データメモリ80から基準波形全体の基本パラメータデータ(図10)を読み出して、基本パラメータデータ・バッファメモリ84にロードまたはセットする(ステップS1)。
【0074】
次に、制御回路82は、データメモリ80にアクセスし、次に読み出すべきステージ・パラメータデータの中の「線分区間時間」データNを読み取り(ステップS2)、N>0、N=0のいずれであるか検査する(ステップS3)。最初のステージは常に存在するので、N>0であり、有効であるから、そのステージのパラメータデータ(図9)をデータメモリ80から読み出し、ステージ・パラメータデータ・バッファメモリ86にセットする(ステップS4)。
【0075】
次に、制御回路82は、当該線分波形要素を再生するための演算処理(ステップS5)を基準波形復元演算回路88に一定周期(ΔT)で繰り返し行わせる(ステップS5→S8→S9→S10→S5・・)。基準波形復元演算回路88は、加減乗除等の演算により、「変化率」データと「分解能」フラグと変調フラグおよび変調データとから一定周期ΔT当たりの単位変化量ΔAを求め、「初期値」(q)を始点として一定周期ΔT毎に、加算演算単位変化量ΔAを再生途上の線分波形要素の終端に継ぎ足し、更新された波形終端の値を示す線分波形要素の再生データCSを生成する。
【0076】
また、制御回路82は、基準波形復元演算回路88で生成された線分波形要素の再生データCSをレーザ電源12に向けて出力するデータ出力処理(ステップS6)を基準波形出力回路90に一定周期(ΔT)で繰り返し行わせる(ステップS5→S6→S9→S10→S6・・)。さらに、これと並行して、電流モニタ波形バッファメモリ100およびレーザ出力モニタ波形バッファメモリ102には、LD電流測定回路27およびレーザ出力測定回路45からのLD駆動電流測定値MIDおよびレーザ出力測定値MFBをそれぞれラッチするモニタ波形データ入力処理(ステップS6)を一定周期(ΔT)で繰り返し行わせる(ステップS5→S6→S9→S10→S6・・)。
【0077】
また、制御回路82は、基準波形出力回路90より出力された線分波形要素の再生データCSを積分する積分演算処理(ステップS7)を基準波形積分回路98に一定周期(ΔT)で繰り返し行わせる(ステップS5→S7→S9→S10→S7・・)。さらに、これと並行して、電流モニタ波形積分回路104およびレーザ出力モニタ波形積分回路106には、モニタ中のLD駆動電流測定値MIDおよびレーザ出力測定値MFBをそれぞれ積分するモニタ波形積分演算処理(ステップS7)を一定周期(ΔT)で繰り返し行わせる(ステップS5→S7→S9→S10→S7・・)。
【0078】
このように、メモリから基準波形そのもののデータをサンプリングの周期で読み出して基準波形を復元するのではなく、FPGA66内で基準波形ないし各線分波形要素の特徴または属性を示す複数のパラメータデータを基に一定周期(ΔT)毎の演算出力を繰り返して基準波形を復元する方式であるから、基準波形の復元処理に要するデータ量を従来のCPU方式に比して大幅(1/10以下)に削減することができる。
【0079】
また、上記のような基準波形復元演算回路88による一定周期(ΔT)毎の波形再生演算処理(ステップS5)、基準波形出力回路90による一定周期(ΔT)毎の再生データ出力処理ならびに電流モニタ波形バッファメモリ100およびレーザ出力モニタ波形バッファメモリ102によるモニタ波形データ入力処理(ステップS6)、基準波形積分回路98による一定周期(ΔT)毎の基準波形積分演算処理ならびに電流モニタ波形積分回路104およびレーザ出力モニタ波形積分回路106による一定周期(ΔT)毎のモニタ波形積分演算処理(ステップS7)は、CPU動作とは異なり1回の処理にバスサイクルや多数のマシンサイクルを必要とせず、しかもパイプライン方式で行われるため、FPGA全体としても実質的には一定周期(ΔT)の速度で動作することになる。
【0080】
このように、この実施形態においては、波形再生周期(ΔT)を可及的に短縮することが可能であり、たとえばΔT=5μsecとすることも容易に実現できる。
【0081】
図13において、上記のような波形再生周期(ΔT)がN回繰り返されると、その時点でカウント比較回路96よりカウント終了通知信号Kが発生され、次のステージの線分波形要素再生処理に移行する(ステップS9→S11→S2)。
【0082】
なお、線分波形要素再生処理において、図14に示すように、1ステージの線分波形要素aiの終端が信号処理上の誤差によって次のステージの線分波形要素ai+1の始端(初期値)qi+1から若干ずれることもあるが、その場合でも、時間軸上で両者は重なっているので、両ステージ間で実質的に繋ぎ合わさっているとみなすことができる。本発明においては、各ステージ毎に線分波形要素の始端が初期化されるので、波形再生処理の誤差がステージの切り替わりでリセット(補正)されるという得な一面もある。
【0083】
また、最後の(第n)ステージの線分波形要素再生処理が終了すると(ステップS3)、その時点で当該基準波形の復元処理が完了し、比較判定回路108において波形制御の良否判定処理(ステップS12)が行われる。この実施形態においては、この時点で、基準波形積分回路98には当該基準波形全体の波形積分値が得られており、電流モニタ波形積分回路104およびレーザ出力モニタ波形積分回路106にはLD駆動電流モニタ波形全体およびレーザ出力モニタ波形全体の波形積分値がそれぞれ得られているので、比較判定回路108は基準波形全体の波形積分値とモニタ波形全体の波形積分値との差分(誤差)を求めて、その誤差が所定の許容値または許容範囲内に収まっているか否かを判定するだけの演算を行えばよく、非常に短い所要時間(0.1msec以内)で良否判定結果を出すことができる。
【0084】
この実施形態においては、リピートモードにおいて、基準波形の持続時間TAを最短の0.1msecに設定した場合、5kHzの繰り返し周波数を容易に実現することができる。
【0085】
なお、比較判定回路108で得られた良否判定結果は常に、あるいは不良の結果が出た場合のみCPU64に送られる。CPU64は、タッチパネル20を通じて良否判定結果(特に不良の判定結果)をユーザに報告し、必要に応じてモニタ波形を表示部20aのディスプレイ上に表示する。
【0086】
図13において、ステップS13,S14、S15はリピートモードにおいて基準波形の再生を設定回数(m回)繰り返すための処理である。
【0087】
CWモードのフローも、図示省略するが、基本的には、上述した単発モードまたはリピートモードのフローと大体同じである。ただし、CWモードは、基準波形の持続時間が相当長いため、波形全部を連続してモニタすると、モニタ波形バッファメモリ100,102でデータがオーバーフローしてしまう。
【0088】
この実施形態では、波形制御のモニタ期間に関する態様(波形全体または一定周期の繰り返し)をユーザが自由に選べるようになっている。単発モードやリピートモードでは、通常、1波形の持続時間が1回の連続したモニタ期間となる。一方、CWモードでは、1波形の持続時間の中でモニタリングを一定周期で繰り返し行うことも可能となっており、周期の長さもユーザが任意に選べるようになっている。モニタ期間に関してユーザの選択ないし設定した内容は、基準波形全体のパラメータデータ(図10)の中の「モニタ期間指定」データを通じてCPU64からFPGA66に伝えられる。
【0089】
たとえば、ユーザが一定周期の繰り返しを選択し、モニタ周期を3秒に選んだ場合は、FPGA66側で制御回路82がデータメモリ80および基準波形パラメータデータ・バッファメモリ84を通じてそのモニタ周期の設定値(3秒)を読み取り、良否判定の各部(100〜108)にモニタ周期(3秒)毎に繰り返し上記と同様のモニタリング動作を行わせる。これにより、良否判定の各部(100〜108)は上記のように任意に設定した周期で動作し、比較判定回路108はモニタ周期(3秒)毎にモニタ波形(駆動電流波形、レーザ出力波形)についての良否判定の結果を出す。この場合は、モニタ波形バッファメモリ100,102でオーバーフローを起こすことはなく、しかも単発モードやリピートモードと同等の時間分解能で波形制御の良否判定を行うことができる。
【0090】
上記した実施形態では、FPGA66内で復元した基準波形から得られた基準波形積分値とモニタ波形積分値とを比較して、レーザ波形制御の良否判定を行った。別の実施形態として、CPU64側で設定基準波形を基に基準波形積分値を演算し、FPGA66側で該基準波形積分値とモニタ波形積分値とを比較して、レーザ波形制御の良否判定を行うことも可能である。
【0091】
この場合は、タッチパネル20を通じてCPU64に所望の基準波形が入力された時点で、CPU64がその基準波形の積分値を演算し、表示部20aのディスプレイ上に基準波形と一緒に基準波形積分値を表示する。ユーザ(作業者等)は、ディスプレイ上に表示された基準波形積分値を見ながら、入力部20bを通じて基準波形の波形形状や持続時間等を調整することができる。そして、ユーザの希望する基準波形が確定されたなら、CPU64は上述のようにパラメータデータ(図11)を生成して内部メモリ等に保存するとともに、当該基準波形の波形積分値も一緒に保存しておく。当該基準波形をレーザ溶接加工に用いるときは、レーザ溶接加工の開始に先立ってCPU64より全パラメータデータ(図11)と一緒に基準波形積分値もFPGA66に送る。
【0092】
FPGA66内では、比較判定回路108にCPU64からの基準波形積分値が直接ロードされる。比較判定回路108は、1波形分のレーザ溶接加工が終了した時点で、つまり当該基準波形の1回分の復元処理を終えた直後に、モニタ波形積分回路104,106からのモニタ波形積分値を該基準波形積分値と比較して、その比較誤差を基に良否判定を行う(ステップS12)。そして、上記と同様に良否判定の結果をCPU64に報告する。
【0093】
また、上記した実施形態では、FPGA66内における波形生成周期ΔTは、基準波形全体を通じて、つまり全ての線分波形要素(a1〜an)に亘って、共通の値に固定されていた。しかしながら、本発明においては、個々の線分波形要素a1,a2,・・an毎に独立して波形生成周期ΔTの値を設定する方式も可能である。この場合、CPU64は、ステージのパラメータデータの中の「線分区間時間」のデータとして、当該線分波形要素の持続時間つまりステージ時間を直接表す時間データTai(μsec)をセットしてよい。
【0094】
FPGA66内には、図15に示すように、ΔT決定回路112が設けられる。このΔT決定回路112は、ステージ・パラメータデータ・バッファメモリ86より「変化率」データΔSおよび「線分区間時間」データTaiを読み取り、たとえば図16に示すようなテーブル(メモリ)を参照して、ΔSの値に応じた波形生成周期ΔTの値(コード)を選定する。たとえば、ΔS>0.04のときは、波形生成周期ΔTの値として5μsecが選ばれ、このΔTの値(5μsec)を表すコード“0000”がΔT決定回路112より制御回路82および基準波形復元回路88に与えられる。また、1E−6≧ΔS>1E−7のときは、波形生成周期ΔTの値として10μsecが選ばれ、このΔTの値(10μsec)を表すコード“0001”がΔT決定回路112より制御回路82および基準波形復元回路88に与えられる。さらに、ΔT決定回路112は、選定した波形生成周期ΔTと「線分区間時間」Taiとから、当該ステージにおける設定サイクルカウント数N(N=Tai/ΔT)を演算して、この設定サイクルカウント数Nをカウント比較回路96に与える。
【0095】
このように各ステージ毎に「変化率」に応じて波形生成周期ΔTを決める方式によれば、たとえば図17に示すように、線分波形要素の変化率が大きいほど(変化速度が高いほど)波形生成周期ΔTが短く、線分波形要素の変化率が小さいほど(変化速度が低いほど)波形生成周期ΔTが長くなり、波形復元の精度と効率性を両立させることができる。
【0096】
また、基準波形復元回路88における波形再生演算の周期あるいは基準波形出力回路90における基準波形信号出力の周期を波形生成周期ΔTから独立した周期に設定することも可能である。特に、波形生成周期ΔTが長い場合には、波形再生演算の周期あるいは基準波形信号出力の周期を短い値にしておくのが好ましい。
【0097】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、上述した実施形態は本発明を限定するものではない。当業者にあっては、具体的な実施態様において本発明の技術思想および技術範囲から逸脱せずに種々の変形・変更を加えることが可能である。
【0098】
たとえば、波形制御機能において、変調のオプションを省くことや、分解能を1種類のスケールに固定することも可能であり、その場合はステージのパラメータデータにおいて「変調フラグ/分解能フラグ」のデータを省くことも可能である。
【0099】
また、ファイバレーザ溶接装置の各部においても種々の変形が可能であり、たとえばファイバレーザ発振器10をYAGレーザ発振器等に置き換えることも可能である。本発明レーザ加工方法およびレーザ加工装置は、レーザ溶接に限るものではなく、たとえば穴あけ、切断、マーキング等の他のレーザ加工にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明の一実施形態におけるレーザ加工装置(ファイバレーザ溶接装置)の構成を示すプロック図である。
【図2】単発発振モードにおける基準波形の一例を示す
【図3】リピートモードにおける繰り返し基準波形の一例を示す図である。
【図4】CWモードにおける基準波形の一例を示す図である。
【図5】実施形態のレーザ加工装置における制御部の構成を示すブロック図である。
【図6】実施形態におけるステージのパラメータに含まれる初期値、変化率および線分区間時間の意義を説明するための図である。
【図7】実施形態におけるステージのパラメータに含まれる変調フラグの意義を説明するための図である。
【図8】実施形態におけるステージのパラメータに含まれる分解能フラグの意義を説明するための図である。
【図9】実施形態における1ステージのパラメータデータのフォーマット例を示す図である。
【図10】実施形態における基本波形全体の基本パラメータデータのフォーマット例を示す図である。
【図11】実施形態において1つの基本波形に係る全パラメータデータを一括管理するためのデータフォーマット例を示す図である
【図12】実施形態におけるFPGA内の回路構成を示すブロック図である。
【図13】実施形態の単発モードまたはリピートモードにおけるFPGA内の回路の全体の処理手順を示すフローチャート図である。
【図14】実施形態において線分波形要素の終端がずれる場合の例を示す図である。
【図15】別の実施形態におけるFPGA内の回路構成を示すブロック図である。
【図16】実施形態において各線分波形要素の変化率に応じて演算出力周期を変える場合に用いるテーブルの一例を示す図である。
【図17】各線分波形要素の変化率に応じて演算出力周期を変える場合の波形再生の作用を示す図である。
【符号の説明】
【0101】
10 ファイバレーザ発振器
12 レーザ電源
16 レーザ出射部
18 制御部
20 タッチパネル
64 CPU(マイクロコンピュータ)
66 FPGA(フィールドプログラマブル・ゲートアレイ)
80 データメモリ
82 制御回路
84 基本パラメータデータ・バッファメモリ
86 ステージ・パラメータデータ・バッファメモリ
88 基準波形復元演算回路
90 基準波形出力回路
95 サイクルカウンタ
96 カウント比較回路
98 基準波形積分回路
100 電流モニタ波形バッファ・メモリ
102 レーザ出力モニタ波形バッファ・メモリ
104 電流モニタ波形積分回路
106 レーザ出力モニタ波形積分回路
108 比較判定回路
112 ΔT決定回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の線分波形要素を時間軸に沿って繋ぎ合わせて所望の基準波形を設定する第1のステップと、
各々の前記線分波形要素について、少なくとも、始端の値を表す初期値のデータと、傾きを表す変化率のデータと、始端から終端までの時間の長さを表す線分区間時間のデータとを1ステージのパラメータデータとして生成する第2のステップと、
時間軸に沿って、各ステージ毎にパラメータデータを基に所定の演算処理を行って前記線分波形要素を再生し、全ステージにわたり前記線分波形要素を実質的に繋ぎ合わせて前記基準波形を復元する第3のステップと、
所望のレーザ加工に用いるパルス発振または連続発振のレーザ光の出力を前記復元された基準波形にしたがって可変する第4のステップと
を有するレーザ加工方法。
【請求項2】
前記第2のステップにおいて、一定周期をΔTとし、各々の前記線分波形要素について前記線分区間時間がN×ΔT(Nは正の整数)であるときは、前記線分区間時間を表すデータとして数値Nを表すデータを生成し、
前記第3のステップにおいて、前記変化率から前記一定周期ΔT分の変化量を求め、前記初期値を始点として前記一定周期分の変化量を順次N回継ぎ足す、
請求項1に記載のレーザ加工方法。
【請求項3】
前記基準波形のパラメータの1つとして少なくとも所望の波高基準値を設定する第5のステップを更に有し、
前記第2のステップおよび前記3のステップにおいて、前記変化率を前記波高基準値に対する割合として用いる、
請求項1または請求項2に記載のレーザ加工方法。
【請求項4】
前記第2のステップにおいて、更に、前記変化率の分解能を表すフラグのデータをステージのパラメータデータの1つとして生成し、
前記第3のステップにおいて、前記分解能フラグで指示された分解能で前記変化率を用いる、
請求項1〜3のいずれか一項に記載のレーザ加工方法。
【請求項5】
前記第2のステップにおいて、更に、前記線分波形要素に予め設定された変調波形を重畳すべきか否かを指示する変調フラグのデータをステージのパラメータデータの1つとして生成し、
前記第3のステップにおいて、前記変調フラグの指示にしたがって条件的に前記再生した線分波形要素に前記変調波形を重畳する、
請求項1〜4のいずれか一項に記載のレーザ加工方法。
【請求項6】
前記第4のステップにおいて、
前記レーザ光を発振出力する光共振器内の活性媒質を光学的に励起するための励起光源に供給される発光用の駆動電流を測定し、
前記駆動電流の測定値が前記復元された基準波形に倣うように前記駆動電流を可変する、
請求項1〜5のいずれか一項に記載のレーザ加工方法。
【請求項7】
前記レーザ光を発振出力している期間中に復元中の前記基準波形について積分演算を行う第6のステップと、
前記レーザ光を発振出力している期間中に前記駆動電流の測定値を基に前記駆動電流の波形について積分演算を行う第7のステップと、
前記レーザ光の発振出力を終了し、または中断した直後に、前記基準波形の積分値と前記駆動電流波形の積分値とを比較し、その比較誤差に基づいて前記レーザ光の出力に関する良否の判定を行う第8のステップと
を更に有する請求項6に記載のレーザ加工方法。
【請求項8】
前記第4のステップにおいて、
前記レーザ光を発振出力する光共振器内の活性媒質を光学的に励起するための励起光源より生成された励起光の出力を測定し、
前記励起光の出力が前記基準波形に倣うように、前記励起光源に供給される発光用の駆動電流を可変する、
請求項1〜5のいずれか一項に記載のレーザ加工方法。
【請求項9】
前記レーザ光を発振出力している期間中に復元中の前記基準波形について積分演算を行う第6のステップと、
前記レーザ光を発振出力している期間中に前記励起出力の測定値を基に前記励起出力について積分演算を行う第7のステップと、
前記レーザ光の発振出力を終了し、または中断した直後に、前記基準波形の積分値と前記励起出力波形の積分値とを比較し、その比較誤差に基づいて前記レーザ光の出力に関する良否の判定を行う第8のステップと
を更に有する請求項8に記載のレーザ加工方法。
【請求項10】
前記第4のステップにおいて、
前記レーザ光のレーザ出力を測定し、
前記レーザ出力の測定値が前記基準波形に倣うように、前記レーザ光を発振出力する光共振器内の活性媒質を光学的に励起するための励起光源に供給される発光用の駆動電流を可変する、
請求項1〜5のいずれか一項に記載のレーザ加工方法。
【請求項11】
前記レーザ光を発振出力している期間中に復元中の前記基準波形について積分演算を行う第6のステップと、
前記レーザ光を発振出力している期間中に前記レーザ出力の測定値を基に前記レーザ出力について積分演算を行う第7のステップと、
前記レーザ光の発振出力を終了し、または中断した直後に、前記基準波形の積分値と前記レーザ出力波形の積分値とを比較し、その比較誤差に基づいて前記レーザ光の出力に関する良否の判定を行う第8のステップと
を更に有する請求項10に記載のレーザ加工方法。
【請求項12】
前記基準波形について全ステージ分のパラメータデータをメモリに記憶し、または通信手段を介して伝送する第9のステップと、
時間軸に沿ったステージ順で前記基準波形について各ステージのパラメータデータを前記メモリより読み出し、または前記通信手段を介して受信する第10のステップと
を更に有する請求項1〜11のいずれか一項に記載のレーザ加工方法。
【請求項13】
複数本の線分波形要素を時間軸に沿って繋ぎ合わせて所望の基準波形を設定する基準波形設定部と、
各々の前記線分波形要素について、少なくとも、始端の値を表す初期値のデータと、傾きを表す変化率のデータと、始端から終端までの時間の長さを表す線分区間時間のデータとを1ステージのパラメータデータとして生成するステージ・パラメータデータ生成部と、
時間軸に沿って、各ステージ毎にパラメータデータを基に所定の演算処理を行って前記線分波形要素を再生し、全ステージにわたり前記線分波形要素を実質的に繋ぎ合わせて前記基準波形を復元する基準波形復元部と、
所望のレーザ加工に用いるパルス発振または連続発振のレーザ光の出力を前記復元された基準波形にしたがって可変するレーザ出力可変部と
を有するレーザ加工装置。
【請求項14】
前記ステージ・パラメータデータ生成部が、一定周期をΔTとし、各々の前記線分波形要素について前記線分区間時間がN×ΔT(Nは正の整数)であるときは、前記線分区間時間を表すデータとして数値Nを表すデータを生成する請求項13に記載のレーザ加工装置。
【請求項15】
前記基準波形復元部が、前記変化率から前記一定周期ΔT当たりの単位変化量を求め、前記初期値を始点として前記一定周期ΔT毎に、前記単位変化量を再生途上の前記線分波形要素の終端に継ぎ足す請求項14に記載のレーザ加工装置。
【請求項16】
前記ステージ・パラメータデータ生成部が、更に、前記線分波形要素に予め設定された所定周波数の変調波形を重畳すべきか否かを指示する変調フラグのデータをステージのパラメータデータの1つとして生成し、
前記基準波形復元部が、前記変化率から前記一定周期ΔT当たりの単位変化量を求め、前記変調フラグの指示にしたがって条件的に、前記初期値を始点として前記一定周期ΔT毎に、前記単位変化量と前記変調波形とを再生途上の前記線分波形要素の終端に継ぎ足す、
請求項14に記載のレーザ加工装置。
【請求項17】
前記基準波形復元部が、前記変調波形の1サイクル分のデータを保持する変調波形記憶部を有する請求項16に記載のレーザ加工装置。
【請求項18】
前記基準波形設定部および前記ステージ・パラメータデータ生成部がCPU(マイクロコンピュータ)で構成され、
前記基準波形復元部がFPGA(フィールドプログラマブル・ゲートアレイ)内に構築されている、
請求項13〜17のいずれか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項19】
前記FPGA内に、前記基準波形に関する各ステージのパラメータデータを含む全てのパラメータデータを前記CPUより受け取って保持するステージ・パラメータデータ・メモリが更に構築されている請求項18に記載のレーザ加工装置。
【請求項20】
前記レーザ出力可変部が、
前記レーザ光を発振出力するための活性媒質を含む光共振器と、
前記活性媒質を光学的に励起するための励起光源と、
前記発光部に発光用の駆動電流を供給するレーザ電源と、
前記駆動電流を測定する電流測定部と、
前記駆動電流の測定値が前記基準波形に倣うように前記駆動回路を制御する制御部と
を有する請求項13〜19のいずれか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項21】
前記レーザ光が発振出力されている期間中に復元中の前記基準波形について積分演算を行う基準波形積分回路と、
前記レーザ光が発振出力されている期間中に前記駆動電流の測定値を基に前記駆動電流の波形について積分演算を行うモニタ波形積分回路と、
前記レーザ光の発振出力が終了し、または中断した直後に、前記基準波形の積分値と前記駆動電流波形の積分値とを比較し、その比較誤差に基づいて前記レーザ光の出力に関する良否の判定を行う良否判定回路と
がFPGA内に構築されている請求項20に記載のレーザ加工装置。
【請求項22】
前記レーザ出力可変部が、
前記レーザ光を発振出力するための活性媒質を含む光共振器と、
前記活性媒質を光学的に励起するための励起光源と、
前記励起光源に発光用の駆動電流を供給するレーザ電源と、
前記励起光源より生成された励起光の出力を測定する励起出力測定部と、
前記励起出力の測定値が前記基準波形に倣うように前記駆動回路を制御する制御部と
を有する請求項13〜19のいずれか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項23】
前記レーザ光が発振出力されている期間中に復元中の前記基準波形について積分演算を行う基準波形積分回路と、
前記レーザ光が発振出力されている期間中に前記励起出力の測定値を基に前記励起出力の波形について積分演算を行うモニタ波形積分回路と、
前記レーザ光の発振出力が終了し、または中断した直後に、前記基準波形の積分値と前記励起出力波形の積分値とを比較し、その比較誤差に基づいて前記レーザ光の出力に関する良否の判定を行う良否判定回路と
がFPGA内に構築されている請求項22に記載のレーザ加工装置。
【請求項24】
前記レーザ出力可変部が、
前記レーザ光を発振出力するための活性媒質を含む光共振器と、
前記活性媒質を光学的に励起するための励起光源と、
前記励起光源に発光用の駆動電流を供給するレーザ電源と、
前記光共振器より発振出力された前記レーザ光の出力を測定するレーザ出力測定部と、
前記レーザ出力の測定値が前記基準波形に倣うように前記駆動回路を制御する制御部と
を有する請求項13〜19のいずれか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項25】
前記レーザ光が発振出力されている期間中に復元中の前記基準波形について積分演算を行う基準波形積分回路と、
前記レーザ光が発振出力されている期間中に前記レーザ出力の測定値を基に前記レーザ出力の波形について積分演算を行うモニタ波形積分回路と、
前記レーザ光の発振出力が終了し、または中断した直後に、前記基準波形の積分値と前記レーザ出力波形の積分値とを比較し、その比較誤差に基づいて前記レーザ光の出力に関する良否の判定を行う良否判定回路と
がFPGA内に構築されている請求項24に記載のレーザ加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−248155(P2009−248155A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−100659(P2008−100659)
【出願日】平成20年4月8日(2008.4.8)
【出願人】(000161367)ミヤチテクノス株式会社 (103)
【Fターム(参考)】