説明

レーザ加工装置およびレーザ加工装置における固定治具のバランス調整方法

【課題】 バランス調整時に加工ヘッド30に触れにくく、また、バランス調整にかかる時間を短縮する。
【解決手段】 レーザ加工に先だってバランス調整を行うとき、治具回転装置20を加工ヘッド30から離れた第2吸着固定台72にまで移動させ、エアー吸引により治具回転装置20を吸着固定する。加工対象物OBを固定治具10にセットした状態で、治具回転装置20により固定治具10を回転させて振動センサ93によりアンバランス量を測定する。続いて、固定治具10に試しおもりを取り付けて、同様にアンバランス量を測定する。そして、試しおもりを取り付ける前後のアンバランス量と、試しおもりの取付位置および質量とから、追加おもりの取付位置と質量を作業者に指示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドラム状の固定治具にシート状の加工対象物を固定し、固定治具を回転させながら加工用レーザ光を加工対象物に照射することで加工対象物の表面に微細なピットまたは溝または反応跡を形成するレーザ加工装置、および、そのレーザ加工装置における固定治具のバランス調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ドラム状の固定治具にシート状の加工対象物を固定し、固定治具を回転させながら、加工用レーザ光を照射する加工ヘッドを固定治具の中心軸方向に沿って移動させることにより、加工対象物表面全体にわたってレーザ加工(ピット、溝、反応跡等の形成)を施すレーザ加工装置が知られている。
【0003】
こうしたレーザ加工装置は、ドラム状の固定治具の重心位置が固定治具の中心軸上になるように調整されていても、加工対象物の厚さと密度が一様でなかったり、加工対象物を固定治具の円周方向全面にセットしなかったりすると、加工対象物をセットした後の重心位置が固定治具の中心軸からずれてしまう。この状態で固定治具を高速回転させると、固定治具が振動してレーザ加工の精度を劣化させてしまう。
【0004】
こうした問題に対して、特許文献1に提案された画像記録装置においては、ドラム状の固定治具にバランス補正ユニットを設け、記録対象物(加工対象物に相当する)の大きさや取付枚数に応じてバランス補正ユニットのバランス部材の配置角度を切り替えてバランス補正を行うようにしている。
【0005】
しかしながら、加工対象物の種類や取付状態が多岐にわたる場合には、それぞれの場合におけるバランス補正のやり方を記憶しておく必要があり、情報を記憶させるにも記憶した情報を呼び出すにも多くの時間が必要になる。このため、実質的には、加工対象物の種類や取付状態に応じてバランス補正を行うことは不可能である。
【0006】
これに対して、ドラム状の固定治具を回転させ、回転位置に対する振動量を実際に検出してバランス評価を行い、バランス評価の結果に基づいてバランス調整を行う技術が、例えば、特許文献2に提案されている。しかし、特許文献2に提案された装置は、回転体の一部をレーザ光照射により除去してバランス調整するものであり、そのまま加工装置に適用することはできない。なぜなら、加工対象物を取り替える度に、バランス調整のために固定治具の一部をレーザ光照射により削り取ることはできないからである。従って、レーザ加工装置においては、バランス調整をバランス評価結果に基づいて作業者がバランス調整器を使って行う必要がある。
【特許文献1】特開2003−186204号公報
【特許文献2】特開平8−206855号公報
【発明の開示】
【0007】
バランス評価は、固定治具を回転させながら、そのときの振動測定により行われる。また、バランス調整は、固定治具を停止させておいてバランス評価結果に基づいて作業者がバランス調整器を使って行う。こうしたバランス評価とバランス調整とは交互に複数回行われるが、固定治具が加工ヘッドに近い位置にあるため、作業者がバランス調整時に加工ヘッドにあやまって触れてしまい、加工ヘッドの取付位置がずれたり、加工ヘッドを破損したりするおそれがある。また、最適なバランス状態にたどりつきにくいため、バランス評価とバランス調整とを繰り返す回数が多くなり、結局、バランス調整が完了するまでに多くの時間がかかってしまう。
【0008】
本発明は、上記問題に対処するためになされたもので、バランス調整時に加工ヘッドに触れにくく、また、バランス調整にかかる時間を短縮したレーザ加工装置およびレーザ加工装置における固定治具のバランス調整方法を提供することを目的とする。
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、シート状の加工対象物を固定するドラム状の固定治具と、前記固定治具をその中心軸周りに回転させる治具回転装置と、前記固定治具に固定された加工対象物の表面に加工用レーザ光を照射する加工ヘッドと、前記加工ヘッドにより照射された加工用レーザ光の照射位置を前記固定治具の中心軸方向に沿って移動させる照射位置移動装置とを備えたレーザ加工装置において、前記固定治具の径方向における前記固定治具と前記加工ヘッドとの離隔が変化するように、前記治具回転装置と前記加工ヘッドとの相対位置を変更する離隔変更装置と、前記加工対象物を固定した固定治具を前記治具回転装置により回転させたときの振動を測定することにより前記固定治具のバランスを評価するバランス評価手段と、前記バランス評価手段により評価されたバランス評価結果に基づいて、前記固定治具のバランス調整を行うためのバランス調整情報を作業者に提供するバランス調整情報提供手段と、前記固定治具のバランスを調整するためのバランス調整器とを備えたことにある。
【0010】
本発明においては、ドラム状の固定治具にシート状の加工対象物が固定される。加工対象物は、予めシート状に形成されているものに限らず、フォトレジスタや熱レジスタといった液状物質を固定治具に塗布し固化させて薄いシート状にしたものでもよい。固定治具は、治具回転装置に固定される。レーザ加工時においては、治具回転装置が固定治具をその中心軸周りに回転させるとともに、加工ヘッドが固定治具に固定された加工対象物の表面に加工用レーザ光を照射する。このとき、照射位置移動装置が加工用レーザ光の照射位置を固定治具の中心軸方向に沿って移動させる。これにより、加工対象物の表面を全体にわたってレーザ加工することができる。照射位置移動装置は、加工ヘッドと治具回転装置との相対位置を変更するものであれば良く、加工ヘッドを移動させるもの、あるいは、治具回転装置を移動させるもの、あるいは、加工ヘッドと治具回転装置の両方を移動させるもの、いずれであってもよい。
【0011】
レーザ加工を精度良く行うためには、レーザ加工を行う前に、加工対象物を固定治具に固定した状態で固定治具のバランスを調整する必要がある。レーザ加工時においては、加工ヘッドは加工対象物の表面に接近してレーザ光を照射するが、バランス調整時においても加工ヘッドが加工対象物に接近していると、作業者があやまって加工ヘッドに触れやすい。そこで、本発明においては、離隔変更手段を備えている。離隔変更手段は、治具回転装置と加工ヘッドとの相対位置を変更することにより固定治具の径方向における固定治具と加工ヘッドとの離隔を変化させる。従って、加工ヘッドを固定治具から遠ざける、あるいは、固定治具を加工ヘッドから遠ざけることができる。
【0012】
こうした状態で、固定治具のバランス調整が行われる。バランス調整は、固定治具のバランス評価、バランス調整情報の提供、作業者によるバランス調整器を使ったバランス調整により行われる。バランス評価手段は、加工対象物を固定した固定治具を治具回転装置により回転させたときの振動を測定することにより固定治具のバランスを評価する。そして、バランス評価手段により評価されたバランス評価結果に基づいて、バランス調整情報提供手段がバランス調整情報を作業者に提供する。作業者は、提供されたバランス調整情報に基づいてバランス調整器を使って固定治具のバランスを調整する。
【0013】
この場合、固定治具と加工ヘッドとが離れているため、作業者があやまって加工ヘッドに触れて加工ヘッドの取付位置がずれたり、加工ヘッドを損傷してしまうといった不具合を防止することができる。また、加工ヘッドが邪魔にならないため、バランス調整作業を容易に行うことができる。
【0014】
また、本発明の他の特徴は、前記バランス調整器は、前記固定治具に設けられ、おもりの取付位置を選択できるおもり取付部であり、前記バランス調整情報提供手段は、前記おもり取付部に取り付けられたおもりの質量を表すおもり情報を取得するおもり情報取得手段と、前記おもりを取り付ける前と後とにおける前記バランス評価手段により評価されたバランス評価結果を取得するバランス評価結果取得手段と、前記おもり情報取得手段により取得したおもり情報と、前記バランス評価結果取得手段により取得したバランス評価結果とに基づいて、前記固定治具のバランスを向上させるための追加おもりの取付位置と質量とを算出する追加おもり算出手段とを備え、前記追加おもり算出手段により算出した追加おもりの取付位置と質量とを前記バランス調整情報として提供することにある。
【0015】
本発明においては、固定治具におもり取付部が設けられており、おもりの取付位置を選択することでバランス調整ができる。また、おもりの重さ(質量)を変えることで精度の良いバランス調整が可能となっている。バランス調整情報提供手段は、おもり情報取得手段と、バランス評価結果取得手段と、追加おもり算出手段とを備え、追加おもり算出手段により算出した追加おもりの取付位置と質量とをバランス調整情報として作業者に提供する。おもり情報取得手段は、おもり取付部に取り付けられたおもりの質量を表すおもり情報を取得する。このおもり情報は、作業者が入力した情報を取得しても良いし、おもりの質量をセンサにより検出して取得してもよい。バランス評価結果取得手段は、おもりを取り付ける前と後とにおけるバランス評価手段により評価されたバランス評価結果を取得する。従って、固定治具のバランスが最適となるおもりの取付位置と質量とを求めることができる。そして、追加おもり算出手段は、固定治具のバランスを向上させるための追加おもりの取付位置と質量とを算出する。
【0016】
作業者は、追加おもり算出手段により算出された追加おもりの取付位置と質量とに基づいてバランス調整をすることで、固定治具の重心を回転中心軸上あるいはその近傍に移動させることができる。従って、バランス調整を短時間で良好に完了させることができる。
【0017】
また、本発明の他の特徴は、前記バランス評価手段によるバランス評価と前記バランス調整情報提供手段によるバランス調整情報の提供とを交互に繰り返し行わせる交互作動指令手段と、前記バランス評価手段によるバランス評価の開始時においては前記固定治具の回転速度を予め設定した初期回転速度に設定し、前記バランス評価手段により評価された前記固定治具のバランスが許容範囲内に入るたびに、前記固定治具の回転速度を増大側に設定変更する回転速度制御手段とを備えたことにある。
【0018】
本発明においては、交互作動指令手段の指令により、バランス評価手段によるバランス評価とバランス調整情報提供手段によるバランス調整情報の提供とが交互に繰り返される。つまり、バランス評価を行うたびに、バランス調整情報を提供して作業者にバランス調整を指示する。回転速度制御手段は、バランス評価の開始時においては、固定治具の回転速度を低回転速度である初期回転速度に設定する。そして、バランス評価結果が許容範囲に入るたびに、次の、バランス評価における固定治具の回転速度を増大側に設定変更する。
【0019】
レーザ加工装置におけるバランス評価は、固定治具をレーザ加工と同じ条件(回転速度)で回転させて行うことが好ましいが、回転速度が大きいほど固定治具のアンバランス量が大きくなるため、いきなり、加工条件と同じ回転速度で固定治具を回転させてしまうと装置の損傷や劣化を招くおそれがある。そこで、本発明においては、固定治具の回転速度を低回転速度の初期回転速度に設定してバランス評価を開始し、バランス評価結果が許容範囲に入るたびに、固定治具の回転速度を増加側に設定変更する。この結果、レーザ加工装置の損傷や劣化を防止することができる。
【0020】
また、本発明の他の特徴は、前記照射位置移動装置は、前記加工ヘッドを前記固定治具の中心軸方向に沿って移動させ、前記離隔変更装置は、前記治具回転装置を前記固定治具の中心軸に直交する方向に移動させることにある。
【0021】
本発明においては、照射位置移動装置がレーザ加工中に加工ヘッドを固定治具の中心軸方向に移動させることによりレーザ光の照射位置を移動させる。従って、ドラム状の固定治具を中心軸方向に移動させる場合に比べて移動スペースが少なくてすむ。また、加工ヘッドと固定治具との離隔を変更する場合には、離隔変更装置が、治具移動装置を固定治具の中心軸に直交する方向に移動させる。従って、移動距離に対して固定治具と加工対象物との離隔を最大にすることができる。また、離隔変更装置は、固定治具の中心軸方向には移動しない治具回転装置を固定治具の中心軸に直交する方向に移動させるため、その移動機構の構成が複雑にならない。
【0022】
また、本発明の他の特徴は、前記治具回転装置は、前記固定治具の中心軸方向の一方端のみを固定し、前記バランス調整器は、前記固定治具の中心軸方向の他方端に設けられることにある。
【0023】
本発明においては、固定治具の一方端が治具回転装置により固定され、固定治具の他方端が開放されている。そして、他方端には、バランス調整器が設けられる。従って、作業者のバランス調整が容易となる。また、治具回転装置を固定治具の中心軸に直交する方向に移動させる機構の構成が複雑にならない。
【0024】
更に、本発明の実施にあたっては、レーザ加工装置の発明に限定されることなく、レーザ加工装置における固定治具のバランス調整方法の発明としても実施し得るものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態について図面を用いて説明する。図1は、実施形態に係るレーザ加工装置1の概略外観斜視図であり、図2は、レーザ加工装置1の概略システム構成図である。このレーザ加工装置1は、ドラム状の固定治具10と、固定治具10の一端を着脱可能に装着固定して固定治具10をその中心軸周りに回転させる治具回転装置20と、加工用レーザ光を照射する加工ヘッド30と、加工ヘッド30を固定治具10の中心軸方向に沿って移動させるヘッド移動装置40と、治具回転装置20を固定治具10の中心軸に直交する方向に移動させる離隔変更装置50と、治具回転装置20を昇降移動させる昇降装置60と、治具回転装置20を吸着固定する吸着固定装置70と、各種センサ類(後述する)、各種制御回路(後述する)、レーザ加工装置1の全体制御を司るコントローラ100等を備えている。
【0026】
固定治具10は、ドラム状(円筒状)であって、その円筒側面10aがシート状の加工対象物OBを固定する部分となる。加工対象物OBは、予めシート状に形成されたものに限らず、フォトレジスタや熱レジスタといった液状物質を固定治具10の円筒側面10aに塗布し固化させて薄いシート状にしたものでもよい。予めシート状に形成した加工対象物OBの場合は、固定治具10の円筒側面10aに巻かれて固定される。固定治具10は、その一方端が治具回転装置20に装着固定される部分となり、他方端がバランス調整器としてのおもり取付部15となっている。おもり取付部15は、固定治具10の端面に雌ネジ15aを同一円周上に等間隔(固定治具10の円筒中心から等角度)に設けたものである。バランス調整用のおもり(図示略)は、この雌ネジ15aに螺合可能な雄ネジが形成されており、任意の位置の雌ネジ15aにねじ込んで取り付けられる。
【0027】
治具回転装置20は、固定治具10の一方端を固定するためのエアチャック21を備えている。エアチャック21は、図7に示すように、スピンドルモータ22(本実施形態においてはエアスピンドルを使用)に連結されるチャック本体21aと、加圧エアーの供給によりチャック本体21aに対して半径方向外側(図面の矢印方向)にスライドする3本のスライド体21bと、各スライド体21bに連結され固定治具10を固定するための固定用片21cとを備える。各固定用片21cは、同心状に配置され、半径方向外側外周面に、固定治具10の円筒内周面を押圧するための押圧面21dが形成されている。エアチャック21は、作業者の操作により加圧エアーが供給されると、スライド体21bが半径方向外側にスライドし、これに伴って固定用片21cが半径方向外側に移動する。この固定用片21cの移動により、固定用片21cの押圧面21dが固定治具10の円筒内周面を外側に向けて押圧することで固定治具10を治具回転装置20に装着固定する。スピンドルモータ22は、基台23に固定されている。このように、治具回転装置20は、エアチャック21、スピンドルモータ22、基台23を主要部として構成されている。
【0028】
基台23は、枠体24に固定されている。枠体24の背部には移動板51が向かい合って設けられる。移動板51には、枠体24と向かい合う面に上下方向に延びて形成されたレール(図示略)が設けられる。一方、枠体24の背部には、このレールと係合する係合片(図示略)が設けられる。これにより、枠体24は、移動板51に対して、レールに沿って昇降可能となっている。
【0029】
移動板51は、その上部において移動体52と連結される。移動体52には、その前面にシリンダ61(以下、昇降用シリンダ61と呼ぶ)が固定されている。昇降用シリンダ61は、配管を介しコンプレッサ200(図2参照)と接続されており、コンプレッサ200によりエアーが供給されて内部が加圧されたときにシャフト62を上方へ引き上げ、加圧が解かれ内部が常圧に戻されたときにシャフト62を下方に降ろす。このシャフト62は、枠体24の上部に連結されている。従って、コンプレッサ200の加圧制御により枠体24を昇降させることで枠体24に固定した治具回転装置20を昇降できるように構成されている。従って、昇降装置60は、枠体24、昇降用シリンダ61、コンプレッサ200等の加圧エアー供給装置を主要部として構成されている。
【0030】
移動板51の背部には、固定板53が設けられる。この固定板53は、ドラム状の固定治具10の中心軸に対して直交する方向に向けて本体架台80に立設固定して設けられる。固定板53には、その前面に2本のレール54a,54bが上下に間隔をあけて水平方向に設けられる。一方、移動板51の背面には、このレール54a,54bと係合する係合片55a,55bが設けられる。これにより、移動板51は、固定板53に対して、レール54a,54bに沿って水平移動可能となっている。
【0031】
固定板53の上方には、シリンダ56(以下、移動用シリンダ56と呼ぶ)がレール54a,54bと同じ方向に向けられて設けられている。上述した移動体52は、中央に円筒穴が形成されており、円筒穴に移動用シリンダ56が挿通するように設けられる。移動体52は、移動用シリンダ56の外周面を摺動可能に設けられるとともに、その円筒穴の内周側に永久磁石(図示略)が設けられている。一方、移動用シリンダ56は、図示しないピストンを内部に備え、ピストンにより内部のエアー室が左右に区画形成される。左右のエアー室は、それぞれ配管を介してコンプレッサ200(図2参照)と接続されており、コンプレッサ200により一方のエアー室が選択的に加圧されることで、ピストンが移動用シリンダ56内を左右方向に移動するように構成されている。ピストンの外径側には、永久磁石が設けられている。従って、ピストンの永久磁石と移動体52の永久磁石とが互いに引きつけ合い、ピストンの移動にともなって移動体52が一緒に移動するようになっている。
【0032】
上述したように移動体52は、昇降装置60を連結している。また、昇降装置60は、治具回転装置20を連結している。従って、コンプレッサ200の加圧制御により移動用シリンダ56内のピストンを移動させることにより、移動体52が移動用シリンダ56の外周を左右に移動し、この移動により昇降装置60、治具回転装置20、固定治具10も左右に移動する。この移動方向は、固定治具10の中心軸に直交する方向で、かつ、水平方向となる。
【0033】
このように治具回転装置20を水平方向に移動させる構成が離隔変更装置50となる。従って、離隔変更装置50は、移動板51、移動体52、固定板53、レール54a,54b、係合片55a,55b、移動用シリンダ56、コンプレッサ200等の加圧エアー供給装置を主要部として構成されている。
【0034】
以下、治具回転装置20に固定された固定治具10の中心軸方向をX方向と呼び、X方向に対して直交し治具回転装置20の水平移動方向となる方向をY方向と呼び、X方向とY方向とに直交し治具回転装置20の昇降方向となる方向をZ方向と呼ぶ。
【0035】
本体架台80には、治具回転装置20を吸着固定するための第1吸着固定台71、第2吸着固定台72が設けられている。第1吸着固定台71、第2吸着固定台72は、互いにY方向において間隔をあけて設けられている。各吸着固定台71,72は、治具回転装置20の基台23の底面と面接触する載置面を備え、この載置面が多孔質板73にて形成されている。各吸着固定台71,72は、多孔質板73の裏面側に負圧室(図示略)が形成されている。この負圧室は、配管を介して吸引ポンプを使ったバキューム装置210(図2参照)に接続されている。従って、第1吸着固定台71あるいは第2吸着固定台72に治具回転装置20を載置した状態で、バキューム装置210を作動させて負圧室のエアーを吸引することにより基台23が多孔質板73に吸着され、これにより治具回転装置20が安定した状態で固定される。吸着固定装置70は、第1吸着固定台71、第2吸着固定台72、および、バキューム装置210等の負圧発生装置から構成される。
【0036】
第1吸着固定台71は、加工対象物OBのレーザ加工を行うときに治具回転装置20を吸着固定するために使用され、第2吸着固定台72は、レーザ加工を行う前に固定治具10のバランス評価、バランス調整を行うときに治具回転装置20を吸着固定するために使用される。第1吸着固定台71および第2吸着固定台72には、それぞれ治具回転装置20の基台23の側面に当接して治具回転装置20の左右(Y方向)の移動限界を設定する第1ストッパ81および第2ストッパ82が設けられている。従って、治具回転装置20は、第1吸着固定台71と第2吸着固定台72との間の範囲においてY方向に移動可能となっている。
【0037】
移動用シリンダ56の左右の端部には、移動体52の位置を検出する第1位置センサ91、第2位置センサ92(図2参照)が設けられている。第1位置センサ91は、治具回転装置20の基台23が第1ストッパ81に当接する左移動限界位置付近で移動体52の位置に応じた検出信号を出力する。また、第2位置センサ92は、治具回転装置20の基台23が第2ストッパ82に当接する右移動限界位置付近で移動体52の位置に応じた検出信号を出力する。治具回転装置20が左右方向に移動し第1ストッパ81あるいは第2ストッパ82に当たって移動限界位置に達すると、第1位置センサ91あるいは第2位置センサ92の出力する検出信号が変化しなくなる。従って、検出信号が変化しなくなったことを検出して治具回転装置20が移動限界位置に達したことを検出できる。
【0038】
治具回転装置20が第1吸着固定台71に吸着されている状態において、固定治具10の横には、加工ヘッド30、および、加工ヘッド30をX方向に移動させるヘッド移動装置40が設けられる。ヘッド移動装置40は、ヘッド移動用の電動モータであるフィードモータ41と、フィードモータ41の出力軸に連結されるスクリューシャフト42と、スクリューシャフト42と螺合する雌ネジ部(図示略)を備えたヘッド移動台43と、スクリューシャフト42と平行に設けられるガイドレール44と、ガイドレール44およびフィードモータ41を固定する固定台45とを備えている。
【0039】
スクリューシャフト42は、一端がフィードモータ41の出力軸に連結され、他端が図示しない軸受けにより回転可能に軸支されてX方向に延設される。ヘッド移動台43は、内部に形成した雌ネジがスクリューシャフト42の雄ネジと螺合するとともに、ガイドレール44によりX方向にのみ移動可能に支持される。従って、ヘッド移動台43は、フィードモータ41を駆動してスクリューシャフト42を回転させることでX方向に移動可能となっている。
【0040】
ヘッド移動台43の上面に加工ヘッド30が固定される。加工ヘッド30は、図示しないが、加工用強度のレーザ光を出射するレーザ光源、レーザ光源から出射されたレーザ光を加工対象物OBの表面に集光させるための各種光学レンズ、加工対象物OBに照射されたレーザ光の反射光を受光して受光信号を加工ヘッド制御回路110(図2参照)に出力する4分割フォトディテクタ、加工ヘッド制御回路110からの制御信号により対物レンズの位置を調整してレーザ光の焦点位置を加工対象物OBの表面と一致させるフォーカスアクチュエータ等を備えている。加工ヘッド30は、レーザ光の出射方向延長ラインが固定治具10の中心軸と直角に交わるような位置にヘッド移動台43に固定されている。
【0041】
ヘッド移動装置40は、加工ヘッド30をX方向に移動させることにより、加工対象物OBの表面に照射されるレーザ光の照射位置をX方向に移動させるもので、本発明の照射位置移動装置に相当する。
【0042】
治具回転装置20のスピンドルモータ22には、振動センサ93が取り付けられている。この振動センサ93は、バランス評価(重心のずれ量とずれ方向測定)を行うために振動状態を検出するもので、振動量に相当する信号を図2に示すバランス評価装置113に出力する。振動センサ93としては、例えば、加速度センサを使用することができる。尚、スピンドルモータ22には、この振動センサ93とは別に、許容量以上の振動を検出したときにスピンドルモータ22の回転を非常停止させるための図示しない振動センサが取り付けられている。
【0043】
本体架台80の右端には、レーザ変位計120が設けられる。レーザ変位計120は、距離測定用のレーザ光を固定治具10に向けて照射してその反射光を受光することによりレーザ光の照射位置までの距離を検出し、距離に相当する信号を出力する。この検出信号は、図2に示す偏心量検出回路114に入力され、偏心量測定(回転中心と固定治具10の中心軸のずれ量測定)に使用される。レーザ変位計120は、レーザ光の出射方向延長ラインが固定治具10の回転軸に直角に交わるような位置に本体架台80に取り付けられる。また、レーザ変位計120は、本体架台80に対して着脱可能に設けられ、本体架台80の右端をX方向に移動させることにより固定治具10の基端側と先端側との2個所における偏心量を測定する。そのため、図示しないが、レーザ変位計120の固定位置を決める位置決め部材が本体架台80に2個所設けられている。尚、2個所の位置決め部材のあいだの位置においてもレーザ変位計120を固定することができるため、偏心量の測定位置は任意の位置に調整可能となっている。
【0044】
このように構成されたレーザ加工装置1においては、治具回転装置20を第1吸着固定台71に吸着固定し、固定治具10の円筒側面10aにシート状の加工対象物OBを固定した状態で固定治具10を治具回転装置20により回転させるとともにヘッド移動装置40により加工ヘッド30をX方向に移動させながら、加工ヘッド30から加工対象物OBの表面にレーザ光を照射する。これにより、円筒状の加工対象物OBの表面をレーザ光の照射スポットが螺旋状に移動して、加工対象物OBが表面全体にわたってレーザ加工される。レーザ加工は、加工対象物OBの表面にピットを形成するもの、連続した溝を形成するもの、現像液により反応する反応跡を形成するものなど、いずれであってもよい。
【0045】
次に、レーザ加工装置1の制御システムについて図2を用いて説明する。加工ヘッド30は、加工ヘッド制御回路110により制御される。加工ヘッド制御回路110は、加工ヘッド30に設けられたレーザ光源に駆動信号を出力してレーザ光源からレーザ光を出射させるレーザ駆動回路(図示略)と、レーザ加工模様に応じたパルス列信号あるいは連続信号をレーザ駆動回路に供給して、レーザ駆動回路からレーザ光源へ供給する駆動信号をオンオフして加工対象物OBの表面に模様を形成する発光信号供給回路(図示略)を備える。レーザ駆動回路は、コントローラ100から出力された作動指令にしたがって作動開始し、発光信号供給回路は、コントローラ100から出力された模様指定指令にしたがってレーザ駆動回路に発光信号を出力する。
【0046】
また、加工ヘッド制御回路110は、加工ヘッド30に設けられた4分割フォトディテクタから出力される受光信号を入力してフォーカスエラー信号を生成するフォーカスエラー信号生成回路(図示略)と、フォーカスエラー信号に基づいてフォーカスサーボ信号を生成して加工ヘッド30に設けられたフォーカスアクチュエータ(図示略)を駆動制御してレーザ光を加工対象物OBの表面に合焦させるドライブ回路(図示略)等を有するフォーカスサーボ回路を備える。フォーカスエラー信号生成回路およびドライブ回路は、コントローラ100から出力された作動指令にしたがって作動開始する。
【0047】
フィードモータ41は、フィードモータ制御回路111により駆動制御される。フィードモータ41内には、同モータ41の回転を検出して回転検出信号を出力するエンコーダ41aが組み込まれている。エンコーダ41aの出力する回転検出信号は、フィードモータ41の回転子が所定の微少な角度だけ回転するたびにハイレベルとローレベルとを交互に繰り返すパルス列信号であって、回転方向を判別するために互いにπ/2だけ位相のずれたA相信号およびB相信号からなる。フィードモータ制御回路111は、フィードモータ41への通電を制御してフィードモータ41を駆動する駆動回路だけでなく、エンコーダ41aから出力されるパルス列信号のパルス数をフィードモータ41の回転方向に応じてカウントアップ又はカウントダウンし、そのカウント値から加工ヘッド30のX方向の位置(送り位置)を検出し、送り位置を表すデジタル信号をコントローラ100に出力する送り位置検出回路も備えている。
【0048】
コントローラ100は、電源投入時に、フィードモータ制御回路111に加工ヘッド30の初期位置への移動を指示する。この指示により、フィードモータ制御回路111は、フィードモータ41を回転させて加工ヘッド30を初期位置に移動させる。この初期位置は、フィードモータ41によって駆動されるヘッド移動台43の駆動限界位置である。ヘッド移動台43が初期位置に到達してフィードモータ41の回転が停止すると、送り位置検出回路はエンコーダ41aからのパルス列信号の入力停止を検出して、カウント値を「0」にリセットするとともに駆動回路に出力停止信号を出力する。これにより、フィードモータ41への駆動信号の出力が停止される。送り位置検出回路は、その後フィードモータ41が駆動された際に、パルス列信号のパルス数をフィードモータの回転方向に応じてカウントアップまたはカウントダウンし、そのカウント値に基づいて加工ヘッド30の送り位置を算出し、送り位置を表す信号を駆動回路およびコントローラ100に出力し続ける。
【0049】
フィードモータ制御回路111は、コントローラ100によって指定される送り位置への移動が指令されたときには、送り位置検出回路によって検出される送り位置を用いてフィードモータ41の回転を制御し、検出される送り位置がコントローラ100から指定された送り位置に等しくなるまでフィードモータ41を回転させる。また、フィードモータ制御回路111は、コントローラ100によって指定される移動速度で加工ヘッド30を移動させることが指示されたときには、エンコーダ41aからの回転検出信号から加工ヘッド30の移動速度を計算し、計算した移動速度がコントローラ100によって指定された移動速度と等しくなるようにフィードモータ41の回転速度を制御する。
【0050】
治具回転装置20に設けられるスピンドルモータ22は、スピンドルモータ制御回路112により駆動制御される。スピンドルモータ22内には、同モータ22の回転すなわち固定治具10の回転を検出して、回転検出信号を出力するエンコーダ22aが組み込まれている。エンコーダ22aの出力する回転検出信号は、固定治具10の回転位置が一つの基準回転位置に来るごとに発生されるインデックス信号と、所定の微少な角度だけ回転するたびにハイレベルとローレベルを繰り返すパルス列信号であって、回転方向を判別するために互いにπ/2だけ位相のずれたA相信号およびB相信号とからなる。回転検出信号のうちパルス列信号は、スピンドルモータ制御回路112に供給され、インデックス信号はバランス評価装置113および偏心量検出回路114に供給される。
【0051】
スピンドルモータ制御回路112は、コントローラ100から出力された回転速度指示により作動開始し、エンコーダ22aから出力されるパルス列信号(A相信号およびB相信号)の単位時間あたりのパルス数によりスピンドルモータ22の回転速度を計算し、計算した回転速度がコントローラ100によって指示された回転速度に等しくなるようにスピンドルモータ22の回転を制御する。
【0052】
レーザ加工装置1には、固定治具10のバランス評価を行うためのバランス評価装置113が設けられている。バランス評価装置113は、スピンドルモータ22に設けられたエンコーダ22aの出力するインデックス信号と、振動センサ93の出力する振動量に相当する信号とを入力する。バランス評価装置113は、加工対象物OBをセットした固定治具10を治具回転装置20により一定速度で回転させているときに、振動センサ93から振動量に相当する信号を入力し、その信号の波高値を所定のサンプリング周期でデジタル信号にて記憶する。インデックス信号は、固定治具10が1回転するたびに1回出力され、回転速度が一定であるので、その出力周期は一定である。従って、インデックス信号を入力したタイミングに基づいて、所定のサンプリング周期で記憶した振動量の波高値を表すデジタル信号と、その振動を検出したときの固定治具10の回転角度との対応を取ることができる。
【0053】
バランス評価装置113は、本発明のバランス評価手段に相当するもので、固定治具10の各回転角度ごとの振動量の平均値からバランス評価値(以下、アンバランス量と呼ぶ)を計算し、その計算結果をデジタルデータでコントローラ100に出力する。
【0054】
固定治具10は、その片側端が治具回転装置20に固定されるが、その形状や取り付け方によっては固定治具10の中心軸が治具回転装置20の回転中心からずれる(偏心する)ことがある。例えば、ドラム状の固定治具10の内径と外径との同心度が悪いと偏心する。そうした偏心を検出するために、レーザ加工装置1には、レーザ変位計120と偏心量検出回路114が設けられている。レーザ変位計120は、レーザ変位計120が定義する原点から固定治具10にセットされた加工対象物OBまでの距離に相当するデジタル信号を出力する。偏心量検出回路114は、スピンドルモータ22に設けられたエンコーダ22aの出力するインデックス信号と、レーザ変位計120が出力するデジタル信号とを入力する。偏心量検出回路114は、加工対象物OBをセットした固定治具10を治具回転装置20により一定の低速度で回転させているときに、レーザ変位計120から上記距離に相当するデジタル信号を入力し、そのデジタル信号を所定のサンプリング周期で記憶する。そして、インデックス信号を入力したタイミングに基づいて、所定のサンプリング周期で記憶した距離を表す各デジタル信号に対応する回転角度を計算し、各回転角度ごとの距離の平均値のうち最大値と最小値の差を偏心量として計算して、計算結果を表すデジタルデータをコントローラ100に出力する。尚、偏心量は、正確には最大値と最小値の差の1/2として計算されるものであるが、偏心量を許容限界以下にすることが目的であるため、ここでは、そうした除算処理を省略する。
【0055】
レーザ加工装置1には、治具回転装置20のY方向への移動を制御する移動制御回路115が設けられている。移動制御回路115は、移動用シリンダ56の左右端に設けられた第1位置センサ91と第2位置センサ92の出力する検出信号(移動体52の位置に応じた検出信号)を入力するとともに、コントローラ100からの移動指令にしたがって移動体52の位置検出に基づいて移動用シリンダ56の左右のエアー室への加圧エアー供給を制御する。コンプレッサ200から左のエアー室に加圧エアーを供給する配管には第1加圧用バルブ121と第1開放用バルブ122が設けられ、コンプレッサ200から右のエアー室に加圧エアーを供給する配管には第2加圧用バルブ123と第2開放用バルブ124が設けられている。
【0056】
移動制御回路115は、コントローラ100から右方向移動指令を入力した場合、第1加圧用バルブ121を開状態、第1開放用バルブ122を閉状態、第2加圧用バルブ123を閉状態、第2開放用バルブ124を開状態にする。これにより、移動用シリンダ56内のピストンの右方向への移動とともに移動体52が右方向に移動する。従って、治具回転装置20が右方向に移動し第2ストッパ82に当接する。このとき、移動用シリンダ56の右端に設けられた第2位置センサ92の検出信号が変化しなくなるため、移動制御回路115は、移動体52が右移動限界位置に到達したと判定し、第1加圧用バルブ121を閉弁するとともに第1開放用バルブ122を開弁し、コントローラ100に右方向への移動終了を表す信号を出力する。
【0057】
また、移動制御回路115は、コントローラ100から左方向移動指令を入力した場合、第1加圧用バルブ121を閉状態、第1開放用バルブ122を開状態、第2加圧用バルブ123を開状態、第2開放用バルブ124を閉状態にする。これにより、移動用シリンダ56内のピストンの左方向への移動とともに移動体52が左方向に移動する。従って、治具回転装置20が左方向に移動し第1ストッパ81に当接する。このとき、移動用シリンダ56の左端に設けられた第1位置センサ91の検出信号が変化しなくなるため、移動制御回路115は、移動体52が左移動限界位置に到達したと判定し、第2加圧用バルブ123を閉弁するとともに第2開放用バルブ124を開弁し、コントローラ100に左方向への移動終了を表す信号を出力する。
【0058】
レーザ加工装置1には、コントローラ100からの固定指令にしたがって治具回転装置20を第1吸着固定台71あるいは第2吸着固定台72に吸着固定する固定制御回路116が設けられている。バキューム装置210と第1吸着固定台71とを接続する配管には第1吸引用バルブ131と第1開放用バルブ132が設けられ、バキューム装置210と第2吸着固定台72とを接続する配管には第2吸引用バルブ133と第2開放用バルブ134が設けられている。固定制御回路116は、コントローラ100から第1固定指令を入力した場合、第1吸引用バルブ131を開状態、第1開放用バルブ132を閉状態にする。これにより、治具回転装置20が第1吸着固定台71に吸着固定される。また、コントローラ100から第1固定解除指令を入力した場合、第1吸引用バルブ131を閉弁し第1開放用バルブ132を開弁する。これにより、治具回転装置20の第1吸着固定台71での吸着固定が解除される。
【0059】
また、固定制御回路116は、コントローラ100から第2固定指令を入力した場合、第2吸引用バルブ133を開状態、第2開放用バルブ134を閉状態にする。これにより、治具回転装置20が第2吸着固定台72に吸着固定される。また、コントローラ100から第2固定解除指令を入力した場合、第2吸引用バルブ133を閉弁し第2開放用バルブ134を開弁する。これにより、治具回転装置20の第2吸着固定台72での吸着固定が解除される。
【0060】
レーザ加工装置1には、コントローラ100からの昇降指令(上昇指令あるいは下降指令)にしたがって治具回転装置20の昇降動作を制御する昇降制御回路117が設けられている。コンプレッサ200から昇降用シリンダ61に加圧エアーを供給する配管には加圧用バルブ141と開放用バルブ142が設けられている。昇降制御回路117は、コントローラ100から上昇指令を入力した場合、加圧用バルブ141を開状態、開放用バルブ142を閉状態にする。これにより昇降装置60のシャフト62が上方に引き上げられ治具回転装置20が上昇する。また、昇降制御回路117は、コントローラ100から下降指令を入力した場合、加圧用バルブ141を閉状態、開放用バルブ142を開状態にする。これにより昇降装置60のシャフト62が下方に降ろされ治具回転装置20が下降する。
【0061】
コントローラ100は、CPU、ROM、RAMを備えたマイクロコンピュータと、ハードディスクや不揮発性メモリなどの記憶装置と、入出力インタフェース等から構成される電子制御装置である。コントローラ100には、作業者が各種パラメータや処理等を指示するための入力装置101と、作業者に対してバランス調整情報などの各種情報や作動状況等を視覚的に知らせるための表示装置102とが接続されている。
【0062】
次に、レーザ加工装置1の動作を説明する。レーザ加工を精度良く行うためには、レーザ加工を行う前に、加工対象物OBを固定した固定治具10の重心が治具回転装置20の回転中心軸上にくるようにバランス調整する必要がある。本実施形態のレーザ加工装置1は、こうしたバランス調整に特徴を有するもので、レーザ加工自体は周知の方法で行われる。従って、以下、バランス調整方法について説明する。
【0063】
作業者は、レーザ加工を行う前に入力装置101を操作して、コントローラ100に対してバランス調整ルーチンの開始指令を入力する。図3は、バランス調整ルーチンを表すフローチャートである。このバランス調整ルーチンは、コントローラ100のROM内に制御プログラムとして記憶されており、ステップS10にて開始される。コントローラ100は、まず、ステップS12において、固定制御回路116に対して第1固定解除指令を出力する。これにより、固定制御回路116は、第1吸引用バルブ131を閉弁し第1開放用バルブ132を開弁して、第1吸着固定台71に吸着固定されていた治具回転装置20の吸着を解除する。
【0064】
続いて、ステップS14において、昇降制御回路117に対して上昇指令を出力する。これにより昇降制御回路117は、加圧用バルブ141を開状態、開放用バルブ142を閉状態にする。こうして治具回転装置20の上昇が開始されると、コントローラ100は、ステップS16においてタイマによる計時を開始し、ステップS18において予め設定した所定時間が経過するまで待機する。所定時間が経過すると、治具回転装置20は、第1吸着固定台71から所定距離だけ浮いた状態となる。このタイミングでコントローラ100は、ステップS20において、移動制御回路115に対して右方向移動指令を出力する。これにより、移動制御回路115は、第1加圧用バルブ121を開状態、第1開放用バルブ122を閉状態、第2加圧用バルブ123を閉状態、第2開放用バルブ124を開状態にする。こうして、治具回転装置20の右方向への移動が開始される。
【0065】
コントローラ100は、ステップS22において移動制御回路115から右方向への移動終了を表す信号を入力するまで待機する。移動制御回路115は、第2位置センサ92の検出信号に基づいて治具回転装置20が右移動限界位置まで移動したことを検出すると移動終了を表す信号をコントローラ100に出力する。コントローラ100は、移動終了を表す信号を入力すると、ステップS24において、昇降制御回路117に対して下降指令を出力する。これにより昇降制御回路117は、加圧用バルブ141を閉状態、開放用バルブ142を開状態にする。こうして治具回転装置20の下降が開始されると、コントローラ100は、ステップS26においてタイマをリセットして計時を開始し、ステップS28において予め設定した所定時間が経過するまで待機する。所定時間が経過すると、治具回転装置20が第2吸着固定台72に載置された状態となり、コントローラ100は、ステップS30において、固定制御回路116に対して第2固定指令を出力する。これにより固定制御回路116は、第2吸引用バルブ133を開状態、第2開放用バルブ134を閉状態にして、治具回転装置20を第2吸着固定台72に吸着させる。こうして、治具回転装置20が第1吸着固定台71から第2吸着固定台72にまで移動する。
【0066】
図4は、この治具回転装置20の昇降と移動を表す。本ルーチンが開始されるときには、図中(a)に示すように、治具回転装置20が第1吸着固定台71に吸着固定されている。そして、ステップS12〜S18の処理により図4(b)に示すように治具回転装置20が上昇し、ステップS20〜S22の処理により図4(c)に示すように治具回転装置20が右移動限界位置に到達し、ステップS24〜S30の処理により図4(d)に示すように治具回転装置20が下降して第2吸着固定台72に吸着固定される。尚、本ルーチンが開始されるときに、治具回転装置20が第2吸着固定台72に載置されていた場合には、ステップS22において移動終了がすぐに検出されるため、治具回転装置20が第2吸着固定台72の上を上昇・下降するだけとなる。
【0067】
続いて、コントローラ100は、ステップS32において、表示装置102を使って作業者に対してレーザ加工条件(固定治具10の回転速度、加工ピッチ、連続溝加工あるいはピット加工などの加工種類や加工模様等)を入力するように指示する。そして、ステップS34において、作業者によるレーザ加工条件の入力終了操作を検出すると、コントローラ100は、その処理をステップS36に進める。尚、入力されたレーザ加工条件は、コントローラ100のRAM等のメモリ内に記憶される。コントローラは、ステップS36において、表示装置102を使って作業者に対して加工対象物OBをレーザ加工装置1にセットするように指示する。この場合、作業者は、以下の何れかの方法により加工対象物OBをレーザ加工装置1にセットする。
【0068】
方法1.固定治具10の円筒側面10aにシート状の加工対象物OBを巻いて固定する。
方法2.固定治具10の円筒側面10aに液状のフォトレジストあるいは熱レジストを塗布し、所定時間そのままにして固化させる。
方法3.エアチャック21の固定を解除して固定治具10を治具回転装置20から取り外し、加工対象物OBがセットされている別の固定治具10を治具回転装置20に装着固定する。
【0069】
この加工対象物OBのセット時においては、治具回転装置20が加工ヘッド30から離れて位置に移動しているため、加工ヘッド30が邪魔にならず、セット作業を容易に行うことができる。また、治具回転装置20が第2吸着固定台72に吸着固定されているため、セット作業を安定して行うことができる。
【0070】
コントローラ100は、ステップS38において、作業者が入力装置101を使ってセット完了入力操作を行うまで待機し、セット完了操作を検出すると、ステップS40において、表示装置102に、「第1位置の偏心量測定」と表示する。偏心量測定は、固定治具10の先端側(おもり取付部15側)と基端側(エアチャック21により固定される側)との2個所において行われる。従って、この第1位置は、吸着固定台71,72の位置を特定するものではない。このステップS40の処理が行われるときにレーザ変位計120の本体架台80に固定されている位置が第1位置となる。例えば、レーザ変位計120が固定治具10の先端側測定用位置にセットされている場合には、第1位置が先端側測定用位置となり、後述する第2位置が基端側測定用位置となる。逆に、レーザ変位計120が固定治具10の基端側測定用位置にセットされている場合には、第1位置が基端側測定用位置となり、第2位置が先端側測定用位置となる。
【0071】
続いて、コントローラ100は、ステップS42において、スピンドルモータ制御回路112に偏心測定用の回転開始指令を出力する。スピンドルモータ制御回路112は、この回転開始指令にしたがってスピンドルモータ22を低速に設定された偏心測定用回転速度にて駆動する。次に、コントローラ100は、ステップS44において、レーザ変位計120と偏心量検出回路114とに対して作動開始指令を出力する。偏心量検出回路114は、レーザ変位計120から入力した距離に相当するデジタル信号と、スピンドルモータ22内に設けられたエンコーダ22aから入力したインデックス信号に基づいて、固定治具10の各回転角度ごとの距離の平均値のうち最大値と最小値の差を偏心量として計算し、計算結果を表すデジタルデータをコントローラ100に出力する。
【0072】
コントローラ100は、ステップS46において、偏心量検出回路114による偏心量測定が終了するまで待機し、偏心量検出回路114から偏心量測定結果を入力して偏心量測定の終了を検出すると、ステップS48において、レーザ変位計120と偏心量検出回路114とに対して作動停止指令を出力し、ステップS50において、スピンドルモータ制御回路112に対して回転停止指令を出力する。これにより、レーザ変位計120と偏心量検出回路114の作動が停止されるとともに、固定治具10の回転が停止される。尚、偏心量測定結果は、コントローラ100のRAM等のメモリに記憶される。
【0073】
続いて、コントローラ100は、ステップS52において、偏心量測定結果を表示装置102に表示し、ステップS54において、偏心量が許容限界値以下に収まっているか否かを判断する。加工対象物OBのセットを固定治具10ごと取り替える方法3にて行った場合には、固定治具10の中心軸が治具回転装置20の回転中心に対して偏心していることがある。そうした場合には、エアチャック21と固定治具10との相対取付角度をずらすことにより偏心量を少なくできることがある。そこで、コントローラ100は、偏心量が許容限界値以下に収まっていない場合は(S54:No)、ステップS56において、表示装置102を使って作業者に対して固定治具10を再セットするように指示する。作業者は、この指示にしたがって固定治具10を一旦エアチャック21から取り外し、取付角度を変えて再度装着し直す。これにより、偏心量が調整される。
【0074】
コントローラ100は、固定治具10の再セットを指示した場合(S56)には、その処理をステップS38に戻して上述した処理を繰り返す。一方、偏心量が許容限界値以下に収まっている場合は(S54:Yes)、ステップS58において、表示装置102を使って作業者に対してレーザ変位計120の位置を移動させるように指示する。作業者は、この指示にしたがってレーザ変位計120を第2位置に移動させる。コントローラ100は、ステップS60において、作業者が入力装置101を使ってレーザ変位計120の移動終了入力操作を行うまで待機し、移動終了入力操作を検出すると、ステップS62において、表示装置102に、「第2位置の偏心量測定」と表示する。
【0075】
続いて、コントローラ100は、ステップS64において、スピンドルモータ制御回路112に偏心測定用の回転開始指令を出力し、ステップS66において、レーザ変位計120と偏心量検出回路114とに対して作動開始指令を出力する。これにより、偏心量検出回路114は、固定治具10の各回転角度ごとの距離の平均値のうち最大値と最小値の差を偏心量として計算し、計算結果を表すデジタルデータをコントローラ100に出力する。コントローラ100は、ステップS68において、偏心量検出回路114による偏心量測定が終了するまで待機し、偏心量検出回路114から偏心量測定結果を入力して偏心量測定の終了を検出すると、ステップS70において、レーザ変位計120と偏心量検出回路114とに対して作動停止指令を出力して、レーザ変位計120と偏心量検出回路114との作動を停止させる。偏心量測定結果は、コントローラ100のRAM等のメモリに記憶される。
【0076】
続いて、コントローラ100は、ステップS72において、偏心量測定結果を表示装置102に表示し、ステップS74において、偏心量が許容限界値以下に収まっているか否かを判断する。偏心量が許容限界値以下に収まっていない場合は(S74:No)、ステップS76において、スピンドルモータ制御回路112に対して回転停止指令を出力して固定治具10の回転を停止させ、ステップS78において、表示装置102を使って作業者に対して固定治具10を再セットするように指示する。この場合、コントローラ100は、その処理をステップS38に戻して上述した処理を繰り返す。
【0077】
一方、第2位置においても、偏心量が許容限界値以下に収まっている場合には(S74:Yes)、以下、ステップS80からのバランス評価処理を開始する。コントローラ100は、まず、ステップS80において、変数nの値をゼロにセットする。続いて、ステップS82において、表示装置102に「回転速度(300+n×100)rpmのバランス評価」と表示する。尚、括弧内の表示は計算値となる。従って、n=0に設定されている場合には、「回転速度300rpmのバランス評価」と表示される。続いて、コントローラ100は、ステップS84において、表示装置102に「初期測定」と表示し、ステップS86において、スピンドルモータ制御回路112に対して、回転速度(300+n×100)rpmの回転開始を指示する。これにより、スピンドルモータ制御回路112がスピンドルモータを回転速度(300+n×100)rpmで駆動して固定治具10を回転させる。尚、このバランス評価開始時においては、固定治具10のおもり取付部15にはおもりが取り付けられていない。
【0078】
続いて、コントローラ100は、ステップS88において、振動センサ93およびバランス評価装置113に対して作動開始指令を出力する。これによりバランス評価装置113は、スピンドルモータ22に設けられたエンコーダ22aの出力するインデックス信号と、振動センサ93の出力する振動量に相当する信号との入力を開始し、インデックス信号を入力したタイミングに基づいて、固定治具10の各回転角度ごとの振動量の平均値からアンバランス量(振動量V,角度θ)を計算し、その計算結果をデジタルデータでコントローラ100に出力する。このアンバランス量(振動量V,角度θ)は、バランス評価値(重心のずれ量,ずれ方向)に相当するものである。固定治具10を回転させると、その回転に同期した周期で振動が検出される。アンバランス量(振動量V,角度θ)は、この振動のピークが検出されるときの振動量Vと固定治具10の回転角度θとを表したものである。
【0079】
続いて、コントローラ100は、ステップS90において、バランス評価装置113によるアンバランス量測定が終了するまで待機し、バランス評価装置113から測定結果を入力してアンバランス量測定の終了を検出すると、その処理をステップS92に進める。このとき、コントローラ100は、入力したアンバランス量測定結果をRAM等のメモリに記憶する。コントローラ100は、ステップS92において、振動センサ93およびバランス評価装置113に対して作動停止指令を出力し、ステップS94において、スピンドルモータ制御回路112に対して回転停止指令を出力する。これにより、振動センサ93とバランス評価装置113の作動が停止されるとともに、固定治具10の回転が停止される。
【0080】
続いて、コントローラ100は、ステップS96において、表示装置102にアンバランス量(振動量V,角度θ)を表示する。続いて、ステップS98において、表示装置102を使って作業者に対して、試しおもりの取り付け、および、試しおもりの質量の入力を指示する。作業者は、この表示装置102に表示された指示にしたがって、固定治具10の先端に設けられたおもり取付部15に適当なおもり(試しおもり)を取り付ける。おもりは、質量の異なるものが複数用意されている。作業者は、複数のおもりの中から、その1つを試しおもりとして選択しておもり取付部15に取り付ける。
【0081】
作業者は、試しおもりをおもり取付部15に取り付けた後、入力装置101を使ってその試しおもりの質量を入力する。おもりの質量は、おもり情報となる。尚、試しおもりは、予め設定された質量のおもりを取り付けるようにしてもよい。この場合、おもり情報としては、コントローラ100内のROM等のメモリに予め記憶されている。従って、作業者は、おもりの質量を入力する必要はなく、単に、試しおもりの取付が完了したことを入力すればよい。
【0082】
コントローラ100は、ステップS100において、作業者の入力が終了するまで待機する。そして、おもり情報(おもりの質量)の入力を検出すると、あるいは、おもり情報の入力が不要の場合には取付完了情報の入力を検出すると、その処理をステップS102に進める。このときコントローラ100は、入力したおもり情報をRAM等のメモリに記憶する。コントローラ100は、ステップS102において、表示装置102に「付加測定」と表示し、ステップS104において、スピンドルモータ制御回路112に対して、回転速度(300+n×100)rpmの回転開始を指示する。これにより、スピンドルモータ制御回路112がスピンドルモータ22を回転速度(300+n×100)rpmで駆動して固定治具10を回転させる。
【0083】
続いて、コントローラ100は、ステップS106において、振動センサ93およびバランス評価装置113に対して作動開始指令を出力する。これにより、バランス評価装置113がアンバランス量の測定を開始する。コントローラ100は、ステップS108において、バランス評価装置113によるアンバランス量測定が終了するまで待機し、バランス評価装置113から測定結果を入力してアンバランス量測定の終了を検出すると、その処理をステップS110に進める。このとき、コントローラ100は、入力したアンバランス量測定結果をRAM等のメモリに記憶する。コントローラ100は、ステップS110において、振動センサ93およびバランス評価装置113に対して作動停止指令を出力し、ステップS112において、スピンドルモータ制御回路112に対して回転停止指令を出力する。これにより、振動センサ93とバランス評価装置113の作動が停止されるとともに、固定治具10の回転が停止される。
【0084】
続いて、コントローラ100は、ステップS113において、アンバランスを解消するための追加おもりの取付位置と質量を以下のようにして計算する。この場合、初期測定において測定されたアンバランス量と、試しおもりを取り付けた付加測定において測定されたアンバランス量と、試しおもりのおもり情報(質量)とをメモリから読み出して行う。尚、試しおもりの質量が予め設定されている場合には、その設定値がメモリから読み込まれる。
【0085】
初期測定において測定されたアンバランス量をA(VA,θA)とする。質量WBの試しおもりを取り付けたときのアンバランス量をB(VB,θB)とする。図5に示すように、極座標にアンバランス量を表すA点とB点とをプロットし、極座標の原点からA点に向かう矢(ベクトル)とB点に向かう矢(ベクトル)とを描く。矢の長さで振動量Vを表し、矢の向きで角度θを表す。次に、両方の矢の先端を結んだ線をB点からA点に向かう矢として表し、この矢を原点から始まるこれと平行な矢(ベクトル)に描き直した後、この矢の先端をN点とする。こうしたN点に向かうベクトルの大きさと方向は、コントローラ100の演算により求められる。そして、極座標の原点からN点に向かう矢の大きさをVN、角度をθNとすると、アンバランスを解消する追加おもりの質量Wxと取付角度θxは、下記式により計算できる。尚、この取付角度θxは、試しおもりを取り付けた角度を0度としたときの角度である。
Wx=VA×WB/VN
θx=θA−θN
【0086】
尚、ステップS90,S108において、アンバランス量の測定結果を記憶する処理、および、ステップS113において初期測定におけるアンバランス量と付加測定におけるアンバランス量とをメモリから読み出して取得する処理が本発明のバランス結果取得手段に相当する。また、ステップS100において試しおもり情報(質量)を記憶する処理、および、ステップS113において試しおもり情報をメモリから読み出して取得する処理が本発明のおもり情報取得手段に相当する。また、ステップS113において、追加おもりの取付位置と質量を計算する処理が追加おもり算出手段に相当する。
【0087】
続いて、コントローラ100は、ステップS114において、アンバランス量(振動量V,角度θ)、および、ステップS113にて算出した追加おもりの取付位置と質量を表示装置102に表示する。このステップS113,S114の処理が、本発明のバランス調整情報提供手段に相当する。作業者は、試しおもりを取り外した後、ステップS114により表示装置102に表示された追加おもりの取付位置と質量とに基づいて、その質量に最も近い質量のおもりを追加おもりとして選び出し、表示された取付位置(角度)に最も近い位置の雌ネジに追加おもりを取り付ける。また、上記計算式では、試しおもりを外して追加おもりを取り付ける場合の計算式であるが、試しおもりを取り付けたまま追加おもりを取り付けるときの取付位置と質量とを計算し、試しおもりを取り付けたまま追加おもりを取り付けるようにしてもよい。また、試しおもりを外して追加おもりを取り付けるモードと、試しおもりを取り付けたまま追加おもりを取り付けるモードとを選択できるようにしてもよい。
【0088】
試しおもりを取り付けたまま追加おもりを取り付ける場合の追加おもりの質量と取り付け位置は、おもりの質量を大きさとし極座標の中心から取付位置に向かう方向を方向としたベクトルを考え、試しおもりのベクトルをベクトル1とし、上記の計算式で算出される追加おもりのベクトルをベクトル2としたとき、ベクトル1−ベクトル2で定まるベクトル3を計算することにより求めればよい。
【0089】
続いて、コントローラ100は、ステップS116において、表示装置102を使って作業者に対して追加おもりの取り付けが完了したか入力するように指示する。作業者は、追加おもりを取り付けし、取り付けが完了したことを入力装置101から入力する。
【0090】
コントローラ100は、ステップS118において、追加おもり取付完了が入力されるまで待機する。そして、追加おもり取付完了の入力を検出すると、その処理をステップS120に進める。
【0091】
コントローラ100は、ステップS120において、表示装置102に「残留測定」と表示し、続くステップS122において、スピンドルモータ制御回路112に対して、回転速度(300+n×100)rpmの回転開始を指示する。これにより、スピンドルモータ制御回路112がスピンドルモータ22を回転速度(300+n×100)rpmで駆動して固定治具10を回転させる。
【0092】
続いて、コントローラ100は、ステップS124において、振動センサ93およびバランス評価装置113に対して作動開始指令を出力する。これにより、バランス評価装置113がアンバランス量の測定を開始する。コントローラ100は、ステップS126において、バランス評価装置113によるアンバランス量測定が終了するまで待機し、バランス評価装置113から測定結果を入力してアンバランス量測定の終了を検出すると、その処理をステップS128に進める。このとき、コントローラ100は、入力したアンバランス量測定結果をRAM等のメモリに記憶する。コントローラ100は、ステップS128において、振動センサ93およびバランス評価装置113に対して作動停止指令を出力し、ステップS130において、スピンドルモータ制御回路112に対して回転停止指令を出力する。これにより、振動センサ93とバランス評価装置113の作動が停止されるとともに、固定治具10の回転が停止される。
【0093】
続いて、コントローラ100は、ステップS132において、アンバランス量(振動量V,角度θ)を表示装置102に表示する。次に、コントローラ100は、ステップS134において、アンバランス量が許容限界以下になっているか否かを判断する。この場合、振動量Vが許容振動量以下になっているか否かについて判断される。アンバランス量の許容限界は、図6に示すように、偏心量が大きいほど、かつ、固定治具10の回転速度が高いほど小さくなるように設定されているため、先のステップS44,S66にて検出した2個所の偏心量(例えば平均値)と固定治具10の回転速度とから、図6に示すマップを参照して設定される。
【0094】
コントローラ100は、アンバランス量が許容限界以下になっていない場合には、ステップS135において、アンバランスを解消する追加おもりの取付位置と質量を計算する。例えば、追加おもり(質量Wx)を角度θxに取り付けた状態でアンバランス量(VC,θC)が検出されたとすると、アンバランスを解消するために更に追加する追加おもりの質量Wyと取付角度θyは、下記式により計算する。
Wy=VC×WB/VN
θy=θC−θN
尚、この取付角度θyも試しおもりを取り付けた角度を0度としたときの角度である。
コントローラ100は、ステップS136において、算出された追加おもりの質量Wyと取付角度θyを表示装置102に表示して、その処理をステップS116に戻して上述した処理を繰り返す。
【0095】
一方、アンバランス量が許容限界以下になっている場合(S134:Yes)には、ステップS138において、アンバランス量測定を行ったときのスピンドルモータ22の回転速度(300+n×100)rpmが、作業者の入力した加工条件の回転速度以上であるか否かを判断する。アンバランス量測定の開始時においては、ステップS80において変数nが「0」に設定されるため低回転速度での測定となる。コントローラ100は、回転速度(300+n×100)rpmが加工条件の回転速度未満である場合には、ステップS140において、変数nの値を「1」だけインクリメントし、その処理をステップS82に戻す。従って、スピンドルモータ22の回転速度、すなわち、固定治具10の回転速度を所定値(この例では100rpm)だけ増加させて、上述したアンバランス量の測定を再開する。このように変数nの値をインクリメントしてスピンドルモータ22の回転速度を段階的に増加していくコントローラ100の処理が本発明の回転速度制御手段に相当する。
【0096】
こうして、固定治具10の回転速度が加工条件として指定された回転速度以上になるまで、初期測定→試しおもりの取付指示→付加測定→追加おもりの取付位置と質量の計算→追加おもりの取付指示→残留測定といった処理が繰り返される。このようにバランス調整ルーチンにしたがって、これらの処理を繰り返すコントローラ100の機能部が本発明の交互作動指令手段に相当する。
尚、2回目以降の初期測定においては、直前回までに取り付けられた追加おもりを取り外さずに実施する。
【0097】
アンバランス量の測定は、加工条件と同じ速度で固定治具10を回転させる必要があるが、回転速度が大きいほど固定治具10のアンバランス量が大きくなるため、いきなり、加工条件と同じ回転速度で固定治具10を回転させてしまうと装置の損傷や劣化を招くおそれがある。そこで、本実施形態においては、固定治具10の回転速度を段階的に増加させながら、その都度、アンバランス量の測定およびバランス調整を行うようにしているためレーザ加工装置1の損傷や劣化を抑制することができる。
【0098】
こうした処理が繰り返され、固定治具10の回転速度が加工条件として指定された回転速度以上になると(S138:Yes)、コントローラ100は、ステップS142において、表示装置102に「バランス調整終了」と表示する。続いて、ステップS144において、固定制御回路116に対して第2固定解除指令を出力する。これにより、固定制御回路116は、第2吸引用バルブ133を閉弁し第2開放用バルブ134を開弁して、第2吸着固定台72に吸着固定されていた治具回転装置20の吸着を解除する。
【0099】
続いて、ステップS146において、昇降制御回路に対して上昇指令を出力する。これにより昇降制御回路117は、加圧用バルブ141を開状態、開放用バルブ142を閉状態にする。こうして治具回転装置20の上昇が開始されると、コントローラ100は、ステップS148においてタイマによる計時を開始し、ステップS150において予め設定した所定時間が経過するまで待つ。所定時間が経過すると、治具回転装置20が第2吸着固定台72から所定距離だけ浮いた状態となる。このタイミングでコントローラ100は、ステップS152において、移動制御回路115に対して左方向移動指令を出力する。これにより、移動制御回路115は、第1加圧用バルブ121を閉状態、第1開放用バルブ122を開状態、第2加圧用バルブ123を開状態、第2開放用バルブ124を閉状態にする。こうして、治具回転装置20の左方向への移動が開始される。
【0100】
コントローラ100は、ステップS154において移動制御回路115から左方向への移動終了を表す信号を入力するまで待機する。移動制御回路115は、第1位置センサ91の検出信号に基づいて治具回転装置20が左移動限界位置まで移動したことを検出すると移動終了を表す信号をコントローラ100に出力する。コントローラ100は、移動終了を表す信号を入力すると、ステップS156において、昇降制御回路117に対して下降指令を出力する。これにより昇降制御回路117は、加圧用バルブ141を閉状態、開放用バルブ142を開状態にする。こうして治具回転装置20の下降が開始されると、コントローラ100は、ステップS158においてタイマをリセットして計時を開始し、ステップS160において予め設定した所定時間が経過するまで待機する。所定時間が経過すると、治具回転装置20が第1吸着固定台71に載置された状態となり、コントローラ100は、ステップS162において、固定制御回路116に対して第1固定指令を出力する。これにより固定制御回路116は、第1吸引用バルブ131を開状態、第1開放用バルブ132を閉状態にして、治具回転装置20を第1吸着固定台71に吸着させる。こうして、治具回転装置20が第2吸着固定台72から第1吸着固定台71にまで移動する。この場合は、図4の(d)→(c)→(b)→(a)の順番に移動することになる。そして、ステップS164において、タイマの計時を停止したのち、ステップS166において本バランス調整ルーチンを終了する。
【0101】
このようにバランス調整ルーチンが終了すると、自動的に、あるいは、作業者が入力装置101でレーザ加工開始指令を入力することによりレーザ加工制御ルーチンが開始される。この場合、治具回転装置20が第1吸着固定台71に戻されているため、加工ヘッド30に対して加工対象物OBが適正位置に配置されていることとなり、そのままレーザ加工を開始することができる。尚、レーザ加工については、周知の手法で行われるものであるため、その説明を省略する。
【0102】
加工対象物OBへのレーザ加工が終了すると、次にレーザ加工すべき加工対象物OBがある場合には、入力装置101を操作してバランス調整ルーチンをスタートさせる。これにより、新たな加工対象物OBがセットされたうえで上述したバランス調整処理が行われる。
【0103】
以上説明した本実施形態のレーザ加工装置1によれば以下の効果を奏する。
1.固定治具10を加工ヘッド30から遠ざけた状態で加工対象物OBのセット、固定治具10の偏心量測定、アンバランス量測定(バランス評価)、バランス調整を行うようにしたため作業者があやまって加工ヘッド30に触れて加工ヘッド30の取付位置がずれたり、加工ヘッド30を損傷してしまうといった不具合を防止することができる。また、加工ヘッド30が邪魔にならないため、加工対象物OBのセット作業およびバランス調整作業を容易に行うことができ作業時間を短縮することができる。
【0104】
2.治具回転装置20を第1吸着固定台71あるいは第2吸着固定台72に吸着固定するため、レーザ加工時あるいはアンバランス量の測定時に治具回転装置20の振動が抑制される。従って、レーザ加工精度やアンバランス量の測定精度を高精度に維持することができる。また、加工対象物OBのセット時においても、治具回転装置が第2吸着固定台72に吸着固定されるため、セット作業を安定して行うことができる。
【0105】
3.治具回転装置20の吸着固定台71,72への固定をエアー吸引により行うため、ネジ締め付けにより固定する場合に比べて固定にかかる時間を短縮できる。また、固定時に塵の発生を防止できるため、加工対象物OBの表面への異物付着を低減して加工精度を向上させることができる。
【0106】
4.吸着固定台71,72の表面に多孔質板73を設けたため、治具回転装置20の基台23の底面全体を均一に吸引することが可能となり、治具回転装置20を一層安定的に固定することができる。この結果、振動の発生をより確実に防止し、レーザ加工精度やアンバランス量の測定精度を更に向上させることができる。
【0107】
5.固定治具10をY方向に移動させる離隔変更装置50、および、固定治具10をZ方向に移動させる昇降装置60は、エアーの加圧方式を採用しているため治具回転装置20の総重量が大きくても、移動機構にかかる負荷を少なくすることができ、移動機構の劣化を抑制することができる。
【0108】
6.治具回転装置20は、固定治具10を着脱可能に固定するため、上記方法3による加工対象物OBのセットが可能となる。この場合、固定治具10を治具回転装置20から取り外して別の場所で加工対象物OBをセットした後、固定治具10を治具回転装置20に装着固定することができるため、加工対象物OBの固定治具10へのセットが容易となる。また、固定治具10を複数用意しておけば、レーザ加工の最中に加工対象物OBを固定治具10にセットすることができるため、生産効率を向上させることができる。また、固定治具10を治具回転装置20に装着固定する機構としてエアチャック21を用いているため、加圧エアーの供給/開放の切替により固定治具10の治具回転装置20への取り付け、取り外しが可能となり作業性が向上する。また、固定治具10の着脱時においては、ネジの締め付け等を行わないため、塵の発生を防止することができ高いレーザ加工精度を維持することができる。
【0109】
7.加工ヘッド30と固定治具10との相対位置をX方向に変化させるにあたっては、加工ヘッド30をX方向に移動させるようにしているため、固定治具10をX方向に移動させる場合に比べて移動スペースが少なくてすみ装置のコンパクト化を図ることができる。また、固定治具10と加工ヘッド30とのY方向の離隔を変更するにあたっては、治具回転装置20をY方向に移動させ、X方向に移動する加工ヘッド30をY方向には移動させないため、移動機構の構成が複雑にならず、しかも、加工ヘッド30の位置精度を低下させることがない。
【0110】
8.治具回転装置20は、固定治具10の一方端を固定して(片持ちにて)Y方向に移動させるため、移動機構である離隔変更装置50の構成が複雑にならない。また、固定治具10の他方端は開放されておもり取付部15となっているため、作業者のバランス調整作業が容易となる。
【0111】
9.試しおもりを取り付ける前後でのバランス評価結果(アンバランス量測定結果)と、おもり情報(おもりの質量)とからアンバランス量がゼロとなる追加おもりの取付位置と質量とを自動計算するため、アンバランス量測定とバランス調整とを繰り返す回数を少なくすることができる。この結果、バランス調整にかかる時間を短縮することができ生産性が向上する。
【0112】
10.アンバランス量の測定にあたっては、固定治具10の回転速度を低速の初期回転速度で開始し、アンバランス量が許容限界以下になるたびに回転速度を段階的に増大側に設定変更し、最終的には加工条件と同程度の回転速度まで増大させるため、レーザ加工装置1に大きな振動が加わりにくく、レーザ加工装置1の損傷や劣化を防止することができる。
【0113】
11.バランス調整ルーチンの開始時においては、治具回転装置20を自動的に第1吸着固定台71から第2吸着固定台72に移動させ、バランス調整が終了したときには、治具回転装置20を自動的に第2吸着固定台72から第1吸着固定台71に移動させるため、固定治具10の移動を精度良く簡単に短時間にて行うことができる。
【0114】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変形も可能である。
【0115】
例えば、本実施形態においては、エアー吸引により治具回転装置20を固定させる際、多孔質板73を介して治具回転装置20の基台を吸着固定したが、吸着固定台71,72の表面に複数の小孔を形成して小孔からのエアー吸引により治具回転装置20を吸着固定してもよい。これによっても上述した効果が得られる。
【0116】
また、治具回転装置20の固定は、エアー吸引に限るものではなく、通電により電磁力を発生させて吸着固定するようにしてもよい。例えば、第1、第2吸着固定台71,72の中に電磁ソレノイドを設けるとともに、各吸着固定台71,72の上面に電磁ソレノイドの鉄芯と磁気的に連結する磁性材からなる吸着板を設ける。また、治具回転装置20の基台23の底面に、上記吸着板と密着可能な磁性体の底板を設ける。そして、レーザ加工時においては、第1吸着固定台71に設けた電磁ソレノイドに通電して治具回転装置20の基台23を第1吸着固定台71に吸着固定し、アンバランス量測定時およびバランス調整作業時においては、第2吸着固定台72に設けた電磁ソレノイドに通電して治具回転装置20の基台23を第2吸着固定台に吸着固定するようにコントローラ100にて通電制御すればよい。これによっても上述した効果が得られる。
【0117】
また、本実施形態においては、バランス調整ルーチンの実行により、治具回転装置20の移動を自動で行うようにしているが、入力装置101を使って作業者のマニュアル操作で治具回転装置20を移動させるようにしてもよい。これによっても上述した効果が得られる。この場合、第1ストッパ81あるいは第2ストッパ82により治具回転装置20の移動が停止したことを作業者が目視で確認して移動停止を指示するようにすればよいため、移動用シリンダ56の左右に設けた第1位置センサ91および第2位置センサ92は不要となり、低コストにて実施することができる。
【0118】
また、本実施形態においては、バランス調整ルーチンの実行により、偏心量測定、アンバランス量測定、バランス調整が、予め決められた一連の流れに沿って順番に行われるが、作業者が手順を熟知していればマニュアル操作で行うようにすることもできる。これによっても上述した効果が得られる。
【0119】
また、本実施形態においては、固定治具10のリング状の端面をおもり取付部15として同一円周上におもりを取り付けるように構成されているが、固定治具10の先端を塞いで円盤状の平面となる端面を形成し、この端面をおもり取付部としてもよい。この場合には、おもり取付部の面積を広くすることができる。これによっても上述した効果が得られる。
【0120】
また、本実施形態においては、加工ヘッド30と固定治具10とのX方向の相対位置を変更するにあたって、加工ヘッド30を移動させる構成を採用しているが、治具回転装置20を移動させるようにしてもよい。また、本実施形態においては、加工ヘッド30と固定治具10との離隔を変更するにあたって、固定治具10をY方向に移動させる構成を採用しているが、加工ヘッド30をヘッド移動装置40ごとY方向に移動させるようにしてもよい。また、加工ヘッド30と固定治具10との離隔変更は、必ずしも一方をY方向に移動させる必要はなく、Z方向に移動させるようにしてもよい。また、斜め方向に移動させてY方向あるいはZ方向の移動成分が得られるようにしてもよい。これによっても上述した効果が得られる。
【0121】
また、本実施形態においては、作業者が入力装置101を使っておもり情報をコントローラ100に入力するようにしているが、おもりの質量を検出するセンサを設けて、おもり情報を自動で取得するようにしてもよい。この場合、おもりの質量を直接測定せずに、おもりの種類を判別できるようにして間接的に質量を検出するようにしてもよい。
【0122】
また、本実施形態においては、加工用レーザ光の照射により加工対象物OBの表面をレーザ加工するが、このレーザ加工は、加工対象物OBにピットや連続した溝を直接形成する加工だけでなく、後工程において現像液の作用によりピットや連続した溝が形成される反応跡を形成するものでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】実施形態に係るレーザ加工装置の概略外観斜視図である。
【図2】実施形態に係るレーザ加工装置の概略システム構成図である。
【図3A】実施形態に係るバランス調整ルーチンを表すフローチャートである。
【図3B】実施形態に係るバランス調整ルーチンを表すフローチャートである。
【図3C】実施形態に係るバランス調整ルーチンを表すフローチャートである。
【図3D】実施形態に係るバランス調整ルーチンを表すフローチャートである。
【図3E】実施形態に係るバランス調整ルーチンを表すフローチャートである。
【図3F】実施形態に係るバランス調整ルーチンを表すフローチャートである。
【図3G】実施形態に係るバランス調整ルーチンを表すフローチャートである。
【図4】実施形態に係るレーザ加工装置の治具回転装置が移動する推移を表す説明図である。
【図5】実施形態に係る追加おもりの取付位置と質量の計算方法を表す極座標グラフである。
【図6】実施形態に係る偏心量に応じたアンバランスの許容限界を表す特性図である。
【図7】実施形態に係るエアチャックの概略外観斜視図である。
【符号の説明】
【0124】
1…レーザ加工装置、10…固定治具、10a…円筒側面、15…おもり取付部、15a…雌ネジ、20…治具回転装置、21…エアチャック、22…スピンドルモータ、22a…エンコーダ、23…基台、24…枠体、30…加工ヘッド、40…ヘッド移動装置、41…フィードモータ、41a…エンコーダ、50…離隔変更装置、51…移動板、52…移動体、53…固定板、56…移動用シリンダ、60…昇降装置、61…昇降用シリンダ、70…吸着固定装置、71…第1吸着固定台、72…第2吸着固定台、73…多孔質板、93…振動センサ、100…コントローラ、101…入力装置、102…表示装置、110…加工ヘッド制御回路、111…フィードモータ制御回路、112…スピンドルモータ制御回路、113…バランス評価装置、114…偏心量検出回路、115…移動制御回路、116…固定制御回路、117…昇降制御回路、120…レーザ変位計、121,123,141…加圧用バルブ、122,124,142…開放用バルブ、131,133…吸引用バルブ、132,134…開放用バルブ、200…コンプレッサ、210…バキューム装置、OB…加工対象物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の加工対象物を固定するドラム状の固定治具と、
前記固定治具をその中心軸周りに回転させる治具回転装置と、
前記固定治具に固定された加工対象物の表面に加工用レーザ光を照射する加工ヘッドと、
前記加工ヘッドにより照射された加工用レーザ光の照射位置を前記固定治具の中心軸方向に沿って移動させる照射位置移動装置と
を備えたレーザ加工装置において、
前記固定治具の径方向における前記固定治具と前記加工ヘッドとの離隔が変化するように、前記治具回転装置と前記加工ヘッドとの相対位置を変更する離隔変更装置と、
前記加工対象物を固定した固定治具を前記治具回転装置により回転させたときの振動を測定することにより前記固定治具のバランスを評価するバランス評価手段と、
前記バランス評価手段により評価されたバランス評価結果に基づいて、前記固定治具のバランス調整を行うためのバランス調整情報を作業者に提供するバランス調整情報提供手段と、
前記固定治具のバランスを調整するためのバランス調整器と
を備えたことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
前記バランス調整器は、前記固定治具に設けられ、おもりの取付位置を選択できるおもり取付部であり、
前記バランス調整情報提供手段は、
前記おもり取付部に取り付けられたおもりの質量を表すおもり情報を取得するおもり情報取得手段と、
前記おもりを取り付ける前と後とにおける前記バランス評価手段により評価されたバランス評価結果を取得するバランス評価結果取得手段と、
前記おもり情報取得手段により取得したおもり情報と、前記バランス評価結果取得手段により取得したバランス評価結果とに基づいて、前記固定治具のバランスを向上させるための追加おもりの取付位置と質量とを算出する追加おもり算出手段と
を備え、
前記追加おもり算出手段により算出した追加おもりの取付位置と質量とを前記バランス調整情報として提供することを特徴とする請求項1記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記バランス評価手段によるバランス評価と前記バランス調整情報提供手段によるバランス調整情報の提供とを交互に繰り返し行わせる交互作動指令手段と、
前記バランス評価手段によるバランス評価の開始時においては前記固定治具の回転速度を予め設定した初期回転速度に設定し、前記バランス評価手段により評価された前記固定治具のバランスが許容範囲内に入るたびに、前記固定治具の回転速度を増大側に設定変更する回転速度制御手段と
を備えたことを特徴とする請求項1または2記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記照射位置移動装置は、前記加工ヘッドを前記固定治具の中心軸方向に沿って移動させ、
前記離隔変更装置は、前記治具回転装置を前記固定治具の中心軸に直交する方向に移動させることを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れか一項記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
前記治具回転装置は、前記固定治具の中心軸方向の一方端のみを固定し、
前記バランス調整器は、前記固定治具の中心軸方向の他方端に設けられることを特徴とする請求項4記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
シート状の加工対象物を固定するドラム状の固定治具と、
前記固定治具をその中心軸周りに回転させる治具回転装置と、
前記固定治具に固定された加工対象物の表面に加工用レーザ光を照射する加工ヘッドと、
前記加工ヘッドにより照射された加工用レーザ光の照射位置を前記固定治具の中心軸方向に沿って移動させる照射位置移動装置と
を備えたレーザ加工装置における固定治具のバランス調整方法において、
前記固定治具と前記加工ヘッドとの離隔を前記固定治具の径方向に拡げる移動ステップと、
前記移動ステップ終了後、前記加工対象物を固定した固定治具を前記治具回転装置により回転させたときの振動を測定することにより前記固定治具のバランスを評価するバランス評価ステップと、
前記バランス評価ステップにより評価されたバランス評価結果に基づいて、前記固定治具のバランス調整を行うためのバランス調整情報を作業者に提供するバランス調整情報提供ステップと、
前記バランス調整情報に基づいて、バランス調整器を使って前記固定治具のバランスを調整するバランス調整ステップと
を含むレーザ加工装置における固定治具のバランス調整方法。
【請求項7】
前記バランス調整器は、前記固定治具に設けられ、おもりの取付位置を選択できるおもり取付部であり、
前記バランス調整情報提供ステップは、
前記おもり取付部に取り付けられたおもりの質量を表すおもり情報を取得するおもり情報取得ステップと、
前記おもりを取り付ける前と後とにおける前記バランス評価ステップにより評価されたバランス評価結果を取得するバランス評価結果取得ステップと、
前記おもり情報取得ステップにより取得したおもり情報と、前記バランス評価結果取得ステップにより取得したバランス評価結果とに基づいて、前記固定治具のバランスを向上させるための追加おもりの取付位置と質量とを算出する追加おもり算出ステップと
を含み、
前記追加おもり算出ステップより算出した追加おもりの取付位置と質量とをバランス調整情報として提供することを特徴とする請求項6記載のレーザ加工装置における固定治具のバランス調整方法。
【請求項8】
前記固定治具の回転速度を予め設定した初期回転速度に設定して前記バランス評価ステップを開始し、前記バランス評価ステップを完了するたびに前記バランス調整情報提供ステップを行うように、前記バランス評価ステップと前記バランス調整情報提供ステップとを交互に繰り返すとともに、前記バランス評価ステップにより評価された前記固定治具のバランスが許容範囲内に入るたびに、前記固定治具の回転速度を増大側に設定変更するようにしたことを特徴とする請求項6または7記載のレーザ加工装置における固定治具のバランス調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図3F】
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【図3G】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−137271(P2010−137271A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−318187(P2008−318187)
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【出願人】(000112004)パルステック工業株式会社 (179)
【Fターム(参考)】