説明

レーザ加工装置およびレーザ加工装置の異常監視方法

【課題】レーザ光の出力異常の原因を容易かつ迅速に特定する。
【解決手段】ステップS2において、レーザ加工装置のレーザ光の光路上の複数の部品の所定の位置であって、レーザ光が入射される位置、レーザ光が通過する位置、レーザ光が出射される位置、および、光路上の他の部品と接続される位置のうちの少なくとも1箇所の近傍の温度の監視を開始する。ステップS4において、レーザ光の出力の監視を開始する。ステップS6において、レーザ光の出力の異常が検出された場合、ステップS10において、各測定箇所の温度を記録部に記録するように制御する。本発明は、例えば、各種の加工を行うレーザ加工装置に適用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工装置およびレーザ加工装置の異常監視方法に関し、特に、レーザ光の出力異常の原因を容易かつ迅速に特定できるようにしたレーザ加工装置およびレーザ加工装置の異常監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザ加工装置のレーザ光の出射部にフォトダイオードを利用したセンサを設置して、センサの受光量を監視することにより、レーザ光の出力を監視していた。しかし、この方法では、レーザ光の出力が停止したり、強度が低下したりするといったレーザ光の出力異常を検出することはできても、その原因までは特定することができなかった。
【0003】
そこで、従来、レーザ光源から加工ヘッドにレーザ光を伝送する光ファイバの入射端および出射端のレンズ系の近傍に、各レンズ系内の迷光を検出するための受光器をそれぞれ設け、その受光器の出力を比較することにより、光ファイバの破断を検出することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、従来、光ファイバを介してレーザ加工ヘッドに入射するレーザ光の強度、および、加工対象となるワークで反射されてレーザ加工ヘッドに入射する反射光の強度を測定し、その測定結果に基づいて、光ファイバの異常と、ワークの加工部の異常またはレーザ加工ヘッド内の光学部品の異常とを切り分けることが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−38751号公報
【特許文献2】特開2007−38226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、レーザ加工装置の高出力化が進んでおり、高出力のレーザ光により装置内の部品が破損し、レーザ光の出力異常が発生するケースが増加している。
【0007】
一方で、レーザ加工装置が連続稼動する工場などにおいては、レーザ光の出力異常が発生した場合に、より迅速に原因を特定し、レーザ加工装置を復旧させることが望まれている。
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の発明では、光ファイバの破断以外の原因を特定することができなかった。
【0009】
また、特許文献2に記載の発明では、光ファイバの異常と、ワークの加工部の異常またはレーザ加工ヘッド内の光学部品の異常とを切り分けることは可能であるが、それ以上の原因を特定するには、さらに詳細な調査が必要である。
【0010】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、レーザ光の出力異常の原因を容易かつ迅速に特定できるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の側面のレーザ加工装置は、レーザ光を用いて加工対象物の加工を行うレーザ加工装置において、加工対象物に向けてレーザ光を出射する出射光学系からのレーザ光の出力を監視する出力監視手段と、レーザ光の光路上の複数の部品の所定の位置であって、レーザ光が入射される位置、レーザ光が通過する位置、レーザ光が出射される位置、および、光路上の他の部品と接続される位置のうちの少なくとも1箇所の近傍の温度を測定する温度測定手段とを備える。
【0012】
本発明の第1の側面のレーザ加工装置においては、加工対象物に向けてレーザ光を出射する出射光学系からのレーザ光の出力が監視され、レーザ光の光路上の複数の部品の所定の位置であって、レーザ光が入射される位置、レーザ光が通過する位置、レーザ光が出射される位置、および、光路上の他の部品と接続される位置のうちの少なくとも1箇所の近傍の温度が測定される。
【0013】
従って、レーザ光の出力異常の原因を容易かつ迅速に特定することができる。
【0014】
このレーザ加工装置は、例えば、液晶ディスプレイ、太陽電池パネル、各種の基板等の加工を行うレーザ加工装置、あるいは、レーザ溶接および切断を行うレーザ加工装置により構成される。この出力監視手段は、例えば、CPUなどのプロセッサにより構成される。この温度測定手段は、例えば、サーミスタにより構成される。
【0015】
また、温度を測定する対象となる複数の部品は、例えば、ガラスアパーチャ、各種ミラー、各種レンズ、光路切替器、光ファイバ、ノズル、レーザ光を発振する発振器の共振器および集光器などにより構成される。さらに、各部品における温度の測定箇所は、例えば、当該部品にレーザ光が入射される位置、当該部品においてレーザ光が通過する位置、当該部品からレーザ光が出射される位置、および、当該部品と他の部品とが接続される位置のうちの少なくとも1箇所の近傍とされる。
【0016】
このレーザ加工装置においては、レーザ光の出力の異常が検出された場合、測定手段により測定された各測定箇所の温度を記録部に記録するように制御する記録制御手段をさらに設けることができる。
【0017】
これにより、より確実にレーザ光の出力異常の原因を特定することができる。
【0018】
このレーザ加工装置においては、前記複数の部品は、レーザ光を発振するレーザ発振器、レーザ発振器から出射されたレーザ光を出射光学系に導く導光部、および、出射光学系のうちのいずれかにそれぞれ設けられる。
【0019】
これにより、レーザ発振器、導光部、または、出射光学系に設けられた部品が起因のレーザ光の出力異常の原因を容易かつ迅速に特定することができる。
【0020】
このレーザ加工装置においては、前記導光部は、レーザ発振器からレーザ光が入射される入射光学系と、入射光学系と出射光学系とを接続する光ファイバとを備え、この温度測定手段には、入射光学系と光ファイバの接続部の近傍、および、出射光学系と光ファイバの接続部の近傍の温度を少なくとも測定させることができる。
【0021】
これにより、光ファイバの破断や接続異常を容易かつ迅速に検出することができる。
【0022】
このレーザ加工装置においては、温度測定手段により測定された各測定箇所の温度を監視する温度監視手段と、温度が所定の閾値を超えた測定箇所がある場合に通知するように制御する通知制御手段とさらに設けることができる。
【0023】
これにより、異常が発生する可能性が高い部品を特定し、レーザ光の出力異常を未然に防止することができる。
【0024】
このレーザ加工装置においては、各測定箇所の温度を所定の周期で記録部に記録するように制御する記録制御手段をさらに設けることができる。
【0025】
これにより、レーザ加工装置の過去の動作状態を分析することが可能になる。
【0026】
本発明の第2の側面のレーザ加工装置の異常監視方法は、レーザ光を用いて加工対象物の加工を行うレーザ加工装置において、加工対象物に向けてレーザ光を出射する出射光学系からのレーザ光の出力の異常を監視する方法であって、レーザ光の光路上の複数の部品の所定の位置であって、レーザ光が入射される位置、レーザ光が通過する位置、レーザ光が出射される位置、および、光路上の他の部品と接続される位置のうちの少なくとも1箇所の近傍の温度を測定し、出射光学系からのレーザ光の出力の異常が検出された場合、測定された各測定箇所の温度を記録部に記録するように制御するステップを含む。
【0027】
本発明の第2の側面のレーザ加工装置の異常監視方法においては、レーザ光の光路上の複数の部品の所定の位置であって、レーザ光が入射される位置、レーザ光が通過する位置、レーザ光が出射される位置、および、光路上の他の部品と接続される位置のうちの少なくとも1箇所の近傍の温度が測定され、出射光学系からのレーザ光の出力の異常が検出された場合、測定された各測定箇所の温度が記録部に記録される。
【0028】
従って、レーザ光の出力異常の原因を容易かつ迅速に特定することができる。
【0029】
このレーザ加工装置は、例えば、液晶ディスプレイ、太陽電池パネル、各種の基板等の加工を行うレーザ加工装置、もしくは、レーザ溶接および切断を行うレーザ加工装置により構成される。
【0030】
また、温度を測定する対象となる複数の部品は、例えば、ガラスアパーチャ、各種ミラー、各種レンズ、光路切替器、光ファイバ、ノズル、レーザ光を発振する発振器の共振器および集光器などにより構成される。さらに、各部品における温度の測定箇所は、例えば、当該部品にレーザ光が入射される位置、当該部品においてレーザ光が通過する位置、当該部品からレーザ光が出射される位置、および、当該部品と他の部品とが接続される位置のうちの少なくとも1箇所の近傍とされる。
【発明の効果】
【0031】
本発明の第1の側面または第2の側面によれば、レーザ光の出力異常の原因を容易かつ迅速に特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明を適用したレーザ加工装置の本体部の構成例を示す図である。
【図2】本発明を適用したレーザ加工装置の発振器の構成例を示す図である。
【図3】本発明を適用したレーザ加工装置の入射光学系の構成例を示す図である。
【図4】本発明を適用したレーザ加工装置の出射光学系の構成例を示す図である。
【図5】本発明を適用したレーザ加工装置の制御系の一部の構成例を示すブロック図である。
【図6】レーザ加工装置の制御系の主制御部により実現される機能の一部の構成例を示すブロック図である。
【図7】レーザ制御監視処理を説明するためのフローチャートである。
【図8】レーザ加工装置の出力が正常である場合の各種の信号のタイミングチャートの例を示す図である。
【図9】レーザ加工装置の出力に異常が発生した場合の各種の信号のタイミングチャートの例を示す図である。
【図10】レーザ加工装置の各測定箇所の温度の測定結果の例を示すグラフである。
【図11】レーザ加工装置の各測定箇所の温度の測定結果の例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施の形態という)について説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態
2.変形例
【0034】
<実施の形態>
[レーザ加工装置の構成例]
図1乃至図5は、本発明を適用したレーザ加工装置の一実施の形態を示す図である。図1は、レーザ加工装置101の本体部111の構成例を示す図である。図2は、レーザ加工装置101の発振器131の構成例を示す図である。図3は、レーザ加工装置101の入射光学系132の構成例を示す図である。図4は、レーザ加工装置101の出射光学系113の構成例を示す図である。図5は、レーザ加工装置101の制御系124の一部の構成例を示すブロック図である。
【0035】
図1に示されるように、レーザ加工装置101は、本体部111、光ファイバ112、出射光学系113、および、ハンディターミナル114を含むように構成される。本体部111と出射光学系113は、光ファイバ112を介して接続されている。また、ハンディターミナル114は、本体部111に内蔵されている制御系124に接続されている。
【0036】
本体部111の下段には、レーザ電源121a乃至121d、および、冷却部122が内蔵されている。また、本体部111の上段には、発振器131(図2)および入射光学系132(図3)からなるレーザヘッド123が内蔵されている。なお、図1では、図を分かりやすくするために、レーザヘッド123を構成する部品の一部のみを図示している。また、本体部111には、上述したように制御系124が内蔵されている。
【0037】
[発振器の構成例]
図2に示されるように、発振器131は、ガイド光発振器141、ミラー142、ミラー143、共振器144、第1共振器シャッタ145、第1集光器146、第2共振器シャッタ147、および、第2集光器148を含むように構成される。
【0038】
共振器144は、全反射ミラー144a、および、所定の透過率のミラー144bにより構成され、全反射ミラー144aおよびミラー144bは、第1集光器146を挟んで互いに平行になるように配置されている。そして、レーザ電源121a,121bにより第1集光器146のフラッシュランプが点灯されると、第1集光器146内のレーザ媒質(例えば、Nd:YAG)が励起され、レーザ媒質内で誘導放出が発生する。誘導放出により発生した光は、全反射ミラー144aとミラー144bの間を往復することにより増幅され、全反射ミラー144aとミラー144bとの間の光の損失を上回る増幅が得られたとき、ミラー144bから第2集光器148の方向にレーザ光が出射される。第2集光器148に入射したレーザ光は、レーザ電源121c,121dにより第2集光器148のフラッシュランプが点灯され、第2集光器148内のレーザ媒質(例えば、Nd:YAG)が励起され、レーザ媒質内で誘導放出が発生することにより、増幅されて第2集光器148から出射される。第2集光器148から出射されたレーザ光は、入射光学系132に入射する。
【0039】
なお、レーザ電源121a乃至121dから第1集光器146のフラッシュランプおよび第2集光器148のフラッシュランプにパルス電流を供給し、フラッシュランプを所定の間隔で点滅させることにより、第2集光器148から入射光学系132にパルス状のレーザ光が出射される。
【0040】
ガイド光発振器141、ミラー142、およびミラー143は、レーザ光の光路を調整するために用いられる。また、第1共振器シャッタ145および第2共振器シャッタ147は、全反射ミラー144aとミラー144bの間の光路を遮断し、発振器131からのレーザ光の出力を停止するために用いられる。
【0041】
[入射光学系の構成例]
図3に示されるように、入射光学系132は、ガラスアパーチャ161、ミラー162、折り返しミラー163、リレーレンズ164、光路切替器165a乃至165d、入射光学器166a乃至166d、ミラー167、ビームダンパ168、エネルギモニタ169、および、レーザダイオード170a,170bを含むように構成される。入射光学系132は、光ファイバ112とともに、発振器131から出射されたレーザ光を出射光学系113に導く導光部としての機能を有する。
【0042】
発振器131から入射光学系132に入射したレーザ光は、ガラスアパーチャ161により光径が調整され、所定の透過率のミラー162により、その一部がエネルギモニタ169の方向に反射され、残りがミラー162を透過する。ミラー162を透過したレーザ光は、折り返しミラー163によりリレーレンズ164の方向に反射され、リレーレンズ164を透過し、光路切替器165aに入射する。
【0043】
光路切替器165a乃至165dは、レーザ光の光路の切替えに用いられる。より具体的には、光路切替器165a乃至165dにより、レーザ光の光路は、入射光学器166a乃至166dまたはミラー167のいずれかに入射するように設定される。
【0044】
入射光学器166aは、光ファイバ112を介して出射光学系113に接続されている。そして、入射光学器166aから出射されたレーザ光は、光ファイバ112を介して出射光学系113に入射する。なお、図1に示されるように、光ファイバ112は、本体部111の天面に設けられているアタッチメント125aにより、本体部111の天面において、その位置が固定される。
【0045】
なお、本実施形態では、入射光学器166aのみに出射光学系113を接続する例を示しているが、入射光学器166b乃至166dにも、それぞれ光ファイバを介して出射光学系を接続することが可能である。すなわち、レーザ加工装置101は、レーザ光の出力系統を最大4系統まで増やすことが可能である。また、図1では、アタッチメント125a,125bの2つのアタッチメントのみを図示しているが、各出力系統の光ファイバ用に合計4つのアタッチメントが設けられる。
【0046】
なお、レーザ光の出力系統の数は、その一例であり、4系統以外の数にすることも可能である。
【0047】
また、光路切替器165a,165bにより、レーザ光がミラー167に入射するように設定されている場合、レーザ光は、ミラー167により反射されてビームダンパ168に入射する。なお、この光路に設定することにより、発振器131の稼動を停止させずに、外部へのレーザ光の出力を一時的に停止させることができる。
【0048】
エネルギモニタ169は、ミラー162により反射されたレーザ光の強度を検出することにより、発振器131から出力されるレーザ光の強度を監視する。
【0049】
レーザダイオード170a,170bは、レーザ光の光路の調整用の光を出力する。
【0050】
[出射光学系の構成例]
図4に示されるように、出射光学系113は、入射部181、出射部182、ノズル183、観察部184、および、カメラ185を含むように構成される。入射部181は、出射部182の側面の上端付近に設けられ、光ファイバ112に接続されている。ノズル183は、出射部182の下端に設けられている。観察部184は、出射部182の上端に設けられている。カメラ185は、観察部184の上端に接続されている。
【0051】
出射部182には、所定の透過率(例えば、0.5%)のミラー191、レンズ192、レンズ193、および、シールドガラス194が内蔵されている。また、出射部182の側面の入射部181と対向する位置には、フォトセンサなどからなる出射部センサ195が設けられている。
【0052】
観察部184には、フィルタ196が内蔵されている。
【0053】
入射光学系132の入射光学器166aから出射されたレーザ光は、光ファイバ112により伝送され、入射部181に入射した後、ミラー191に入射し、一部がミラー191を透過し、残りがレンズ192の方向に反射される。
【0054】
レンズ192の方向に反射されレーザ光は、レンズ192によりコリメートされ、レンズ193およびシールドガラス194を透過した後、ノズル183の先端から加工対象物(不図示)に向けて出射され、加工対象物に照射される。このとき、レンズ193により、加工対象物の加工面においてレーザ光が集光される。
【0055】
一方、ミラー191を透過したレーザ光は、出射部センサ195に入射し、出射部センサ195によりその強度(光量)が検出される。
【0056】
カメラ185は、ノズル183、シールドガラス194、レンズ193、レンズ192、フィルタ196等を介して、加工対象物の加工部分の撮影を行う。
【0057】
[温度センサの設置位置の例]
レーザ加工装置101においてレーザ光の出力異常が発生する場合、ほとんどのケースにおいて、レーザ光の光路上の1つまたは複数の部品がレーザ光により破損する。また、レーザ光により破損した部分は、非常に高温になる。そこで、レーザ加工装置101では、レーザ光の光路上の複数の部品の所定の位置であって、レーザ光が入射される位置、レーザ光が通過する位置、レーザ光が出射される位置、および、光路上の他の部品と接続される位置のうちの少なくとも1箇所の近傍の温度を測定するように、温度センサが設置されている。これにより、レーザ光の出力異常が発生したときに、高温になっている部品を検出することにより、レーザ光の出力異常が発生した原因を容易かつ迅速に特定することが可能になる。
【0058】
ここで、図2乃至図4を参照して、温度センサの設置位置の具体例について説明する。
【0059】
例えば、レーザ光の光路上のレンズ、ミラーなどの光学部品の汚れ、経時劣化または損傷が生じている部分にレーザ光が入射すると、その部分が加熱され、焼損したり、変色したりする。そして、焼損または変色した部分で、レーザ光の光路にズレが生じたり、レーザ光が拡散したり、レーザ光の一部または全部が遮断されたりして、レーザ光の出力異常が発生する。
【0060】
なお、光学部品の汚れは、例えば、埃などの異物が付着したり、堆積することにより発生する。また、光学部品の損傷は、例えば、外から力が加わったり、レーザ加工装置101が振動したりすることにより発生する。
【0061】
従って、レーザ加工装置101では、レーザ光の光路上の光学部品であって、汚れ、経時劣化または損傷によりレーザ光の出力異常を誘発する可能性のある光学部品に、温度センサが設置されている。具体的には、発振器131の共振器144(全反射ミラー144aおよびミラー144b)、入射光学系132のガラスアパーチャ161、ミラー162、折り返しミラー163、リレーレンズ164、および、光路切替器165a乃至165d、並びに、出射光学系113のミラー191に、温度センサTS1、温度センサTS4、温度センサTS7乃至TS14、および、温度センサTS21がそれぞれ設置されている。
【0062】
また、例えば、レーザ光の光路上の部品のレーザ光が出射される部分など(例えば、ノズル183の出射部など)において、出射したレーザ光の反射光や戻り光が照射され、レーザ光が照射された部分が加熱され、破損する場合がある。そして、破損した部分で、レーザ光の光路のズレが生じたり、レーザ光が拡散したり、レーザ光の一部または全部が遮断されたりして、レーザ光の出力異常が発生する。
【0063】
従って、レーザ加工装置101では、反射光や戻り光により破損する可能性がある部分に温度センサが設置されている。具体的には、発振器131の第2集光器148のフランジ148B、並びに、出射光学系113の入射部181の光ファイバ112が接続される部分の近傍、およびノズル183に、温度センサTS6、温度センサTS20、および、温度センサTS22がそれぞれ設置されている。例えば、第2集光器148のフランジ148Bには、第2集光器148から出射されたレーザ光の反射光が照射される可能性があり、入射部181と光ファイバ112の接続部、および、ノズル183には、加工対象物に照射されたレーザ光の反射光(いわゆる、戻り光)が照射される可能性がある。
【0064】
さらに、例えば、レーザ光の光路の調整不良により、レーザ光の出力異常が発生するとともに、レーザ光の光路上の部品の入射部において、レーザ光が正常な位置に入射されず、その近傍に照射され、レーザ光が照射された部分が加熱され、破損する場合がある。
【0065】
従って、レーザ加工装置101では、レーザ光の光路の調整不良により破損する可能性がある部分に温度センサが設置されている。具体的には、発振器131の第1集光器146の両端のフランジ146A,146B、および、第2集光器148のフランジ148Aに、温度センサTS2、温度センサTS3、および、温度センサTS5が、それぞれ設置されている。
【0066】
また、例えば、レーザ光の光路上で複数の部品を接続する場合、その接続が正常になされていないと、レーザ光の光路にズレが生じ、レーザ光の出力異常が発生するとともに、接続部にレーザ光が照射され、破損する場合がある。
【0067】
従って、レーザ加工装置101では、レーザ光の光路上において、複数の部品を接続する接続部の近傍に温度センサが設置されている。具体的には、入射光学系132の入射光学器166a乃至166dの光ファイバ112との接続部の近傍、および、出射光学系113の入射部181の光ファイバ112との接続部の近傍に、温度センサTS16乃至TS18および温度センサTS20が、それぞれ設置されている。
【0068】
さらに、レーザ光の出力異常の原因を特定する目的とは異なるが、ビームダンパ168に温度センサTS19が設置されている。これは、ビームダンパ168は、レーザ光を一時的に遮断するために用いられるので、レーザ光による焼損が発生しやすいためである。
【0069】
なお、各温度センサは、レーザ光の光路から外れた位置であって、レーザ光の光路になるべく近い位置に設置することが望ましい。すなわち、各温度センサは、レーザ光の一部または全部を遮断することなく、レーザ光の出力異常が発生した場合に温度が上昇することが想定される位置の近傍に設置されることが望ましい。
【0070】
また、図2乃至図4に示した温度センサの設置位置は、その一例であり、必要に応じて設置位置を増やしたり、減らしたりすることが可能である。また、より確実に温度の異常を検出できるように、例えば、図2乃至図4に示した設置位置において、複数の温度センサを設置するようにしてもよい。
【0071】
[制御系およびハンディターミナルの構成例]
図5に示されるように、レーザ加工装置の制御系124は、主制御部201、電源制御部202、および、光路制御監視部203を含むように構成される。また、ハンディターミナル114は、操作部231、出力部232、および、通信部233を含むように構成される。
【0072】
主制御部201は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサ、および、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリなどの記録装置などにより構成され、レーザ加工装置101の各部の動作の制御を行う。
【0073】
電源制御部202は、例えば、複数の回路等が設けられた電源制御基板により構成される。電源制御部202は、エネルギモニタ169から、レーザ光の強度の検出結果を取得し、主制御部201に供給する。また、電源制御部202は、主制御部201の制御の基に、レーザ電源121a乃至121dに指令を出し、レーザ電源121a乃至121dのオンおよびオフ、並びにパワーを制御する。さらに、電源制御部202は、レーザ電源121a乃至121dの状態等を示す信号をレーザ電源121a乃至121dから取得し、主制御部201に供給する。
【0074】
光路制御監視部203は、レーザ光の光路を制御したり、レーザ光の監視を行ったりする。光路制御監視部203は、センサ部221およびドライバ222a乃至222dを含むように構成される。
【0075】
センサ部221は、例えば、複数の回路等が設けられたセンサ基板により構成される。センサ部221は、温度センサTS1乃至TS22から、各測定箇所の温度の測定結果を取得する。また、センサ部221は、出射光学系113の出射部センサ195から、出射光学系113から出射されるレーザ光の強度を示す信号を取得する。そして、センサ部221は、各測定箇所の温度、および、出射光学系113から出射されるレーザ光の強度を示す信号を主制御部201に供給する。
【0076】
なお、本実施形態では、出射光学系113が1つのみ設けられ、出射部センサ195が1つだけセンサ部221に接続される例を示したが、出射光学系113が2つ以上設けられる場合、各出射光学系113の出射部センサ195が、それぞれセンサ部221に接続される。
【0077】
ドライバ222a乃至222dは、主制御部201の制御の基に、光路切替器165a乃至165dを制御し、レーザ光の光路を切替える。
【0078】
ハンディターミナル114の操作部231は、例えば、各種のキー、ボタン、スイッチ等の操作手段により構成され、ユーザがレーザ加工装置101に対して各種の指令を入力するときに操作される。操作部231は、ユーザにより入力された指令を主制御部201に供給する。
【0079】
出力部232は、例えば、表示装置、音声出力装置、ランプ、ブザーなどにより構成される。出力部232は、主制御部201の制御の基に、画像、音声、光などにより、レーザ加工装置101の状態等を示す情報を出力する。
【0080】
通信部233は、主制御部201の制御の基に、所定の通信方式により、レーザ加工装置101の状態等を示す情報を外部の装置に送信する。また、通信部233は、所定の通信方式により、各種の情報を外部の装置から受信し、主制御部201に供給する。
【0081】
[主制御部により実現される機能の構成例]
次に、図6を参照して、主制御部201により実現される機能の一部の構成例について説明する。主制御部201により、レーザ制御部251および監視部252を含む機能が実現される。また、監視部252は、出力監視部261、温度監視部262、記録制御部263、記録部264、および、通知制御部265を含むように構成される。
【0082】
レーザ制御部251は、操作部231を介して入力されるユーザからの指令を取得し、取得した指令に従って、電源制御部202を介して、レーザ電源121a乃至121dを制御する。また、レーザ制御部251は、レーザ電源121a乃至121dの状態を示す信号を電源制御部202から取得する。さらに、レーザ制御部251は、レーザ電源121a乃至121dの状態等を出力監視部261および温度監視部262に通知する。
【0083】
出力監視部261は、出射光学系113から出射されるレーザ光の強度を示す信号を、センサ部221を介して出射部センサ195から取得し、レーザ光の出力を監視する。また、出力監視部261は、レーザ光の出力異常を検出した場合、レーザ光の出力異常の発生を通知するための出力異常アラームを、レーザ制御部251、記録制御部263、および、通知制御部265に供給する。
【0084】
温度監視部262は、各測定箇所の温度の測定結果を、センサ部221を介して温度センサTS1乃至TS22から取得し、各測定箇所の温度を監視する。また、温度監視部262は、各測定箇所の温度の測定結果を記録制御部263および通知制御部265に供給する。さらに、温度監視部262は、温度の異常を検出した場合、温度の異常の発生を通知制御部265に通知する。
【0085】
記録制御部263は、各測定箇所の温度の測定結果の記録部264への記録を制御する。
【0086】
記録部264は、例えば、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリなどの記録装置により構成される。
【0087】
通知制御部265は、レーザ加工装置101の状態等を示す情報を出力部232から出力させる。また、通知制御部265は、通信部233を制御して、レーザ加工装置101の状態等を示す情報を外部の装置に送信する。
【0088】
[レーザ制御監視処理]
次に、図7乃至図9を参照して、レーザ加工装置101により実行されるレーザ制御監視処理について説明する。なお、図7は、レーザ制御監視処理を説明するためのフローチャートを示している。図8は、レーザ加工装置101の出力が正常である場合の各種の信号のタイミングチャートの例を示し、図9は、レーザ加工装置101の出力に異常が発生した場合の各種の信号のタイミングチャートの例を示している。
【0089】
なお、以下、レーザ光の出射時間、パルス間隔、強度等の加工条件が電源制御部202(またはレーザ制御部251)に予め設定されているものとする。また、この処理は、例えば、ユーザが、レーザ加工の開始の指令を、操作部231を介してレーザ制御部251に入力したとき開始される。
【0090】
ステップS1において、レーザ制御部251は、電源制御部202への出射指令の出力を開始する。また、レーザ制御部251は、電源制御部202への出射指令の出力を開始したことを出力監視部261および温度監視部262に通知する。なお、この出射指令は、電源制御部202からレーザ制御部251に出射完了信号が供給されるまで出力される。
【0091】
ステップS2において、温度監視部262は、温度の監視を開始する。具体的には、温度監視部262は、各測定箇所の温度の測定結果を、センサ部221を介して温度センサTS1乃至TS22から取得し、各測定箇所の温度の監視を開始する。また、温度監視部262は、各測定箇所の温度の測定結果を記録制御部263および通知制御部265に供給する。
【0092】
記録制御部263は、例えば、所定の期間(例えば、数十秒)分の各測定箇所の温度の測定結果を記録部264に常時バッファリングする。すなわち、レーザ加工装置101の稼働中、所定の期間前から現在までの各測定箇所の温度の測定結果が、記録部264に常時保持される。
【0093】
また、通知制御部265は、例えば、各測定箇所の温度の測定結果を図10に示されるようなグラフにして、出力部232に表示させる。なお、図10の横軸は時間を示し、縦軸は温度および出力異常アラームの値を示している。また、図10では、説明を簡単にするために、A点乃至D点の4つの測定箇所の温度のみを示している。なお、A点乃至D点は、温度センサTS1乃至TS22により温度が測定される測定箇所のいずれかに相当する。
【0094】
ステップS3において、レーザ制御部251は、電源制御部202から出射中信号の出力が開始されたか否かを判定する。具体的には、電源制御部202は、レーザ制御部251からの出射指令の供給が開始された後、レーザ電源121a乃至121dを制御して、レーザ光の出射準備を行う。そして、電源制御部202は、出射準備が完了した後、レーザ制御部251への出射中信号の出力を開始する。レーザ制御部251は、電源制御部202から出射中信号が供給されてくるまで、ステップS3の判定処理を繰返し、電源制御部202から出射中信号が供給されてきたとき、出力中信号の出力が開始されたと判定し、出力中信号の出力が開始されたことを出力監視部261に通知し、その後、処理はステップS4に進む。
【0095】
ステップS4において、出力監視部261は、レーザ光の出力の監視を開始する。すなわち、出力監視部261は、センサ部221を介して出射部センサ195から供給される信号に基づいて、出射光学系113から出射されるレーザ光の強度を、所定の検出周期で検出する。
【0096】
ステップS5において、レーザ制御部251は、電源制御部202からパルス開始信号が出力されたか否かを判定する。具体的には、電源制御部202は、出射中信号の出力を開始した後、レーザ電源121a乃至121dに所定の周期でパルス状の出力制御信号を出力する。レーザ電源121a乃至121dは、電源制御部202からの出力制御信号に同期して、第1集光器146のフラッシュランプおよび第2集光器148のフラッシュランプを点滅させる。これにより、出射光学系113からパルス状のレーザ光が出力される。また、電源制御部202は、出力制御信号をオンしたとき、レーザ制御部251にパルス状のパルス開始信号を供給し、出力制御信号をオフしたとき、レーザ制御部251にパルス状のパルス完了信号を供給する。
【0097】
そして、ステップS5において、レーザ制御部251が、電源制御部202からパルス開始信号が出力されていないと判定した場合、処理はステップS6に進む。
【0098】
ステップS6において、レーザ制御部251は、電源制御部202から出射完了信号が出力されたか否かを判定する。具体的には、電源制御部202は、予め設定されている時間だけ出射光学系113からレーザ光が出力された後、あるいは、予め設定されている数のパルスのレーザ光が出射光学系113から出力された後、出射中信号の出力を停止し、パルス状の出射完了信号をレーザ制御部251に供給する。
【0099】
そして、ステップS6において、レーザ制御部251が、電源制御部202から出射完了信号が出力されていないと判定した場合、処理はステップS5に戻る。その後、ステップS5において、パルス開始信号が出力されたと判定されるか、ステップS6において、出射完了信号が出力されたと判定されるまで、ステップS5およびS6の処理が繰返し実行される。
【0100】
一方、ステップS5において、レーザ制御部251は、パルス開始信号が出力されたと判定した場合、パルス開始信号が出力されたことを出力監視部261に通知し、その後、処理はステップS7に進む。
【0101】
ステップS7において、出力監視部261は、レーザ光が正常に出力されてたか否かを判定する。出力監視部261は、出射部センサ195により検出されたレーザ光の強度が所定の閾値未満である場合、レーザ光が正常に出力されていないと判定し、処理はステップS8に進む。
【0102】
ステップS8において、レーザ制御部251は、電源制御部202からパルス完了信号が出力されたか否かを判定する。パルス完了信号が出力されていないと判定された場合、処理はステップS7に戻る。その後、ステップS7において、レーザ光が正常に出力されたと判定されるか、ステップS8において、パルス完了信号が出力されたと判定されるまで、ステップS7およびS8の処理が繰返し実行される。
【0103】
一方、ステップS7において、出力監視部261は、出射部センサ195により検出されたレーザ光の強度が所定の閾値以上である場合、レーザ光が正常に出力されたと判定し、処理はステップS5に戻り、ステップS5以降の処理が実行される。
【0104】
一方、ステップS8において、パルス完了信号が出力されたと判定された場合、すなわち、レーザ光が正常に出力される前に、パルス完了信号が出力された場合、処理はステップS9に進む。例えば、図9の例では、レーザ光が正常に出力される前に、時刻t1においてパルス完了信号が出力されているため、ステップS8の判定処理の後、処理はステップS9に進む。
【0105】
ステップS9において、出力監視部261は、レーザ制御部251、記録制御部263、および、通知制御部265に出力異常アラームを出力する。
【0106】
ステップS10において、電源制御部202は、レーザ制御部251の制御の基に、レーザ電源121a乃至121dを停止する。
【0107】
ステップS11において、レーザ加工装置101は、アラーム処理を行う。具体的には、記録制御部263は、レーザ光の出力異常が発生した前後の所定の期間(例えば、数十秒)の各測定箇所の温度の時系列のデータ(履歴データ)を、レーザ光の出力異常が発生した日時とともに記録部264に記録する。
【0108】
この各測定箇所の温度の履歴データを用いることにより、レーザ光の出力異常の原因の特定が容易になる。例えば、図10に示される例では、レーザ光の出力異常が検出された時刻t1において、出力異常アラームの値が0から1に変化している。その後、A点の温度が急激に上昇し、所定の故障閾値を超えている。従って、レーザ光の出力異常の原因が、A点の部品またはその近傍にあることを容易に特定することができる。
【0109】
このように、履歴データにおいて故障閾値を超えている測定箇所を検出することにより、レーザ光の出力異常の原因を容易かつ迅速に特定することができる。なお、故障閾値は、測定箇所毎に任意の値に設定することが可能である。
【0110】
なお、レーザ光の出力異常が発生してから、A点の温度が上昇するまでの間にタイムラグが存在するのは、主に温度センサの反応速度が要因である。すなわち、温度センサは、測定箇所の温度の変化に反応するのに所定の時間(例えば、1秒程度)を要するため、上述したタイムラグが発生している。
【0111】
また、図10は温度の測定結果の一例であり、例えば、レーザ光の出力異常が検出される前に、異常が発生した箇所の温度が上昇する場合もある。
【0112】
また、通知制御部265は、例えば、ハンディターミナル114の出力部232に、レーザ光の出力異常が発生したことを通知する通知画面やメッセージを表示させたり、アラーム音を出力させたりする。さらに、通知制御部265は、例えば、ハンディターミナル114の通信部233に、所定の通信方式に従って、レーザ光の出力異常が発生したことを通知する電子メール等を、外部のコンピュータや携帯電話機などの装置に送信させる。
【0113】
その後、レーザ制御監視処理は終了する。
【0114】
一方、ステップS6において、レーザ制御部251は、出射完了信号が出力されたと判定した場合、出射完了信号が出力されたことを出力監視部261に通知し、レーザ制御監視処理は終了する。すなわち、この場合、レーザ光が正常に出射され、レーザ加工が正常に行われた後、レーザ制御監視処理が終了する。
【0115】
以上のようにして、レーザ光の出力異常の原因を容易かつ迅速に特定することが可能になる。その結果、より迅速に出力異常に対する対策をとることができ、レーザ加工装置101をより迅速に復旧させることができる。
【0116】
<2.変形例>
[温度を記録するタイミング]
なお、以上の説明では、各測定箇所の温度の測定結果を所定の期間バッファリングしておき、レーザ光の出力異常が発生した前後の各測定箇所の温度を記録する例を示したが、例えば、各測定箇所の温度の測定結果のバッファリングを行わずに、出力異常が発生した後の温度のみを記録するようにすることも可能である。
【0117】
また、例えば、レーザ加工装置101の稼働中の各測定箇所の温度の履歴データを常時記録するようにしてもよい。この場合、記録するデータの容量の観点から、温度を記録するサンプリング周期は、例えば、レーザ光の出力異常の発生時に温度を記録するサンプリング周期より長い周期(例えば、数秒単位)に設定することが望ましい。
【0118】
そして、例えば、図11に示されるように、各測定箇所の温度の履歴データをグラフ化して、ハンディターミナル114の出力部232に表示することにより、経時劣化や汚れなどの要因により温度が上昇傾向にある部品を容易に把握することができる。例えば、図11の例では、D点の部品の温度が上昇傾向にあることが分かる。これにより、例えば、D点の部品をメインテナンスしたり、交換したりすることにより、レーザ光の出力異常の発生を未然に防止することができる。
【0119】
また、過去の各測定箇所の温度の履歴データを分析することにより、レーザ加工装置101の過去の動作状態を確認したり、レーザ加工装置101の運転は継続されていたが、何らかの警告が発生されていた場合、その原因を詳細に調査したりすることができる。
【0120】
[温度の常時監視]
また、レーザ加工装置101の稼働中の温度を常時監視し、所定の警告閾値を超えた測定箇所が検出された場合、例えば、その測定箇所と温度を出力部232に表示したり、通信部233を介して、電子メール等により外部の装置に通知したりして、ユーザに警告するようにしてもよい。なお、警告閾値は、故障閾値より低い温度の範囲で、測定箇所毎に任意の温度に設定することが可能である。
【0121】
さらに、レーザ加工装置101の稼働中の温度を常時監視し、故障閾値を超えた測定箇所が検出された場合、レーザ光の出力を停止するようにすることも可能である。
【0122】
[レーザ加工装置の構成の変形例]
また、本発明を適用可能なレーザ加工装置の種類は、特定のものに限定されるものではない。例えば、レーザ加工装置101のような固体レーザの他、液体レーザ、ガスレーザ、半導体レーザなどにも本発明を適用することが可能である。
【0123】
[その他の変形例]
また、例えば、ハンディターミナル114の機能を、レーザ加工装置101の本体部111に設けたり、コンピュータなどの他の情報処理装置により実現するようにしてもよい。
【0124】
さらに、以上の説明では、記録部264をレーザ加工装置101の内部に設ける例を示したが、レーザ加工装置101の外部に設けるようにしてもよい。また、各測定箇所の温度の履歴データを、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスクもしくは半導体メモリなどのリムーバブルメディアに記録するようにしてもよい。
【0125】
また、上述した一連の処理は、ハードウエアにより実行することもできるし、ソフトウエアにより実行することもできる。一連の処理をソフトウエアにより実行する場合には、そのソフトウエアを構成するプログラムが、コンピュータにインストールされる。ここで、コンピュータには、専用のハードウエアに組み込まれているコンピュータや、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のパーソナルコンピュータなどが含まれる。
【0126】
なお、コンピュータが実行するプログラムは、本明細書で説明する順序に沿って時系列に処理が行われるプログラムであっても良いし、並列に、あるいは呼び出しが行われたとき等の必要なタイミングで処理が行われるプログラムであっても良い。
【0127】
また、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0128】
101 レーザ加工装置
111 本体部
112 光ファイバ
113 出射光学系
114 ハンディターミナル
121a乃至121d レーザ電源
123 レーザヘッド
124 制御系
131 発振器
132 入射光学系
144 共振器
144a 全反射ミラー
144b ミラー
146 第1集光器
146A,146B フランジ
148 第2集光器
148A,148B フランジ
161 ガラスアパーチャ
162 ミラー
163 折り返しミラー
164 リレーレンズ
165a乃至165d 光路切替器
166a乃至166d 入射光学器
168 ビームダンパ
181 入射部
182 出射部
183 ノズル
191 ミラー
195 出射部センサ
201 主制御部
202 電源制御部
203 光路制御監視部
221 センサ部
232 出力部
233 通信部
251 レーザ制御部
252 監視部
261 出力監視部
262 温度監視部
263 記録制御部
264 記録部
265 通知制御部
TS1乃至TS22 温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を用いて加工対象物の加工を行うレーザ加工装置において、
前記加工対象物に向けて前記レーザ光を出射する出射光学系からの前記レーザ光の出力を監視する出力監視手段と、
前記レーザ光の光路上の複数の部品の所定の位置であって、前記レーザ光が入射される位置、前記レーザ光が通過する位置、前記レーザ光が出射される位置、および、前記光路上の他の部品と接続される位置のうちの少なくとも1箇所の近傍の温度を測定する温度測定手段と
を備えることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
前記レーザ光の出力の異常が検出された場合、前記測定手段により測定された各測定箇所の温度を記録部に記録するように制御する記録制御手段を
さらに備えることを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記複数の部品は、前記レーザ光を発振するレーザ発振器、前記レーザ発振器から出射された前記レーザ光を前記出射光学系に導く導光部、および、前記出射光学系のうちのいずれかにそれぞれ設けられる
ことを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記導光部は、
前記レーザ発振器から前記レーザ光が入射される入射光学系と、
前記入射光学系と前記出射光学系とを接続する光ファイバと
を備え、
前記温度測定手段は、前記入射光学系と前記光ファイバの接続部の近傍、および、前記出射光学系と前記光ファイバの接続部の近傍の温度を少なくとも測定する
ことを特徴とする請求項3に記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
前記温度測定手段により測定された各測定箇所の温度を監視する温度監視手段と、
温度が所定の閾値を超えた測定箇所がある場合に通知するように制御する通知制御手段と
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
各測定箇所の温度を所定の周期で記録部に記録するように制御する記録制御手段を
さらに備えることを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項7】
レーザ光を用いて加工対象物の加工を行うレーザ加工装置において、前記加工対象物に向けて前記レーザ光を出射する出射光学系からの前記レーザ光の出力の異常を監視する方法であって、
前記レーザ光の光路上の複数の部品の所定の位置であって、前記レーザ光が入射される位置、前記レーザ光が通過する位置、前記レーザ光が出射される位置、および、前記光路上の他の部品と接続される位置のうちの少なくとも1箇所の近傍の温度を測定し、
前記出射光学系からの前記レーザ光の出力の異常が検出された場合、測定された各測定箇所の温度を記録部に記録するように制御する
ステップを含むレーザ加工装置の異常監視方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−240361(P2011−240361A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−113929(P2010−113929)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】