説明

レーザ定着装置、及びそれを具備した画像形成装置、並びに定着方法

【課題】
余計な電力消費を抑えつつ、十分な定着ができ、ボイドの発生を抑えたレーザ定着装置、及びそれを具備した画像形成装置を提供する。
【解決手段】
本発明に係るレーザ定着装置は光照射部と、光を複数の分割光へと分割する分割光学系と、前記複数の分割光が、それぞれ前記記録用紙上の別の位置を照射するように配置された照射光学系と備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機やプリンタ、ファクシミリ等の電子写真方式の画像形成装置に用いられるレーザ定着装置及びこのレーザ定着装置を備えた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置には、記録用紙上に形成された未定着トナー像を加熱溶融させることによって用紙上に定着させる定着装置が備えられている。定着装置には、記録用紙上に形成された未定着トナー像にレーザ光を照射し、トナー像を溶融することで定着を行うレーザ光方式のものがある。
【0003】
たとえば、特許文献1では、図11に示すように、用紙搬送装置860、フラッシュ定着装置870、レーザ定着装置880を備えた定着装置が開示されている。図11(a)は、フラッシュ定着装置870からみて用紙搬送方向下流側にレーザ定着装置880を配設した場合であり、図11(b)はフラッシュ定着装置870からみて用紙搬送方向上流側にレーザ定着装置880を配設した場合である。フラッシュ定着装置870は、用紙搬送装置860によって搬送される用紙Pのほぼ全面にインコヒーレントな光を照射し、用紙P上のトナーを溶融・定着させる。また、レーザ定着装置880は、用紙搬送装置860によって搬送される用紙P上のトナー保持位置に選択的にコヒーレントなレーザ光を照射し、用紙P上のトナーをさらに溶融・定着させる。このとき、フラッシュ定着装置870は用紙Pのほぼ全面に光を照射し、レーザ定着装置880は用紙P上のトナーの形成部位に局所的にレーザ光を照射する。
【0004】
特許文献2には、一般的なレーザ定着装置として、図12及び図13に示すように、感光体ドラム901上に形成されたトナー像を、転写コロトロン902を介して、複写用紙903に転写した後、レーザ光源904からのレーザ光を、モータ905によって高速回転している回転多面鏡906で反射すると共に、定着すべき幅だけスキャニングし、前記反射光を適当な光路補正レンズ907を介して、前記複写用紙903表面の照射線上に集光する装置が開示されている。
【0005】
また、図13に示すように、未定着トナー像を付着した複写用紙903の搬送路上に、前記複写用紙903と実質的に平行に、鏡面平板908を前記複写用紙903に近接配置し、その前記平板と前記複写用紙903との間隙909を通して、レーザ光910を照射するように構成することで、前記平板908の鏡面と前記複写用紙903との間で反射を繰り返したレーザ光910は、前記複写用紙903及びその表面に付着する未定着トナーを前記レーザ光910の直接照射をうける前に予熱し、定着させると共に、レーザ光のエネルギー利用効率を向上させることが開示されている。
【特許文献1】特開2008−107576(平成20年5月8日公開)
【特許文献2】特開昭59−95567(昭和59年6月1日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1で示された方法によれば、レーザ定着装置以外に、別途フラッシュ定着装置が必要となり、該フラッシュ定着装置は用紙のほぼ全面に光を照射するため、トナー以外の余計な用紙部分を暖めることになり、用紙上のトナーを暖める手段としては余計な電力を消費することとなる。
【0007】
また、特許文献2に開示された方法では、トナーの光反射率が複写用紙903に比べて低いため、トナーで反射したレーザ光910のエネルギーは著しく低下し、トナーを十分に予熱できず、定着が不十分なトナーが発生するという問題があり、また、トナーを定着させるためにレーザ光源904の出力密度を高くした場合には、レーザ光910の直接照射を受けたトナーの表面が集中的に熱され、トナーの水分が蒸発し、ボイドが発生してしまうという問題があった。なお、ここでボイドとは光定着特有の印字欠陥で、トナーや記録用紙の水分が定着の際に突沸することでトナー像の一部が欠損し、穴ぼこ状の欠陥が発生する現象を意味する。
【0008】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、余計な電力消費を抑えつつ、十分な定着ができ、ボイドの発生を抑えたレーザ定着装置、及びそれを具備した画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るレーザ定着装置は、光を照射する光照射部と、光照射部からの光を複数の分割光へと分割する分割光学系と、前記複数の分割光が、それぞれ記録用紙上の別の位置を照射するように配置された照射光学系と備えることを特徴とする。
【0010】
さらに、前記照射光学系は、反射ミラーと、前記複数の分割光に前記記録用紙上を走査させる走査ミラーとを有することが好ましい。
【0011】
さらに、前記反射ミラーは、前記複数の分割光の内2つ以上が、同一の前記走査ミラーへ導かれるように配置されていることが好ましい。
【0012】
さらに、前記複数の分割光は、前記記録用紙の搬送方向の下流側に照射される分割光の出力が小さく分割されることが好ましい。
【0013】
さらに、前記記録用紙の搬送方向の最も下流側に照射される分割光の出力が、その他の分割光の出力の総和よりも大きくなるように、前記分割光学系、及び前記照射光学系が配置されていることが好ましい。
【0014】
さらに、前記記録用紙の搬送方向の最も下流側に照射される前記分割光の照射位置と、最も下流から2番目に下流側に照射される前記分割光の照射位置との距離が5mm以上30mm以下となるように、前記分割光学系、及び前記照射光学系が配置されていることが好ましい。
【0015】
さらに、前記光照射部は、光源を複数備えることが好ましい。さらに、前記光照射部の出力を制御する制御部を備えることが好ましい。
【0016】
本発明に係る画像形成装置は、前記レーザ定着装置を備えることを特徴とする。本発明に係るレーザ定着方法は、前記レーザ定着装置において、前記制御部は前記複数の分割光のいずれの照射位置にもトナーが無ければ、前記光照射部の出力を切り、いずれかの照射位置にトナーが存在すれば前記光照射部の出力を入れることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
余計な電力消費を抑えつつ、十分な定着ができ、ボイドの発生を抑えたレーザ定着装置、及びそれを具備した画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態1における画像定着部の概略構成図である。
【図2】実施形態1における分割光による記録用紙の走査を示した図である。
【図3】実施形態1における分割光がトナーへ照射される様子を示した図である。
【図4】実施形態2における画像定着部の概略構成図である。
【図5】実施形態2におけるレーザ光による記録用紙の走査を示した図である。
【図6】実施形態2における分割光がトナーへ照射される様子を示した図である。
【図7】実施形態3における定着部材の斜視図である。
【図8】実施形態3におけるレーザ光ヘッドの断面図である。
【図9】実施形態3におけるレーザ光ヘッドの側面図である。
【図10】実施形態3における分割光帯による記録用紙の走査を示した図である。
【図11】従来技術に係るレーザ定着装置の構成例を示した図である。
【図12】従来技術に係るレーザ定着装置の概念を示す構成図である。
【図13】従来技術に係るレーザ定着装置の一実施例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係るレーザ定着装置及び、それを備えた画像形成装置の一例について、図面を参照して説明する。尚、本明細書中では、記録用紙搬送路上で、記録用紙が進む方向を基準に、上流、下流という用語を用いる。
【0020】
〔実施形態1〕
(画像定着部の構成)
図1は、実施形態1における画像定着部の概略図を表す。実施形態1では、定着部71として、単体のレーザ光源から発した光を2つに分割して、記録用紙に照射する画像定着部について説明する。
【0021】
画像定着部70は、画像形成部(図示せず)で形成された未定着のトナー画像を、記録用紙に定着させる。そして、画像定着部70で形成されたトナー定着済みの記録用紙は、画像形成装置1の外へ排出される。画像定着部70は、定着部71及び搬送部材72を備え、定着部71は、レーザ光源71a、ポリゴンミラー71b、補正レンズ71c、反射ミラー71d及びビームスプリッタ101を備える。
【0022】
レーザ光源71aは、記録用紙80上のトナー81を定着させるためのレーザ光を発する1ビーム方式の半導体レーザ光源で、実施形態1におけるレーザ光の強度は150W、波長は780nm、ビーム径及びスポット径は50μmである。また、レーザ光源71aは、制御部(図示せず)によって、レーザ光のON・OFF、レーザ光の強度、ビーム径及びスポット径を可変制御できる。レーザ光源71aが1ビーム方式の場合、単位面積当たりの出力が大きく、短時間の照射でトナー81を加熱するのに十分な熱量をトナー81に与えることができる。
【0023】
ビームスプリッタ101は、レーザ光源71aが発したレーザ光から2つの分割光に分割する光分割部材で、入射した光の一部を反射し、残りを透過する機能を有する。ビームスプリッタ101は、直角プリズムを二つ貼り合わせたもので、接合面には誘電体多層膜や金属薄膜のコーティングが施してあり、簡単なものはガラス膜でできている。但し、ビームスプリッタ101はプリズムに限定されるものではなく、平面型、ウェッジ基板型を用いてもよい。
【0024】
ビームスプリッタ101で反射した光の強度と透過した光の強度との比は4:1である。すなわち、レーザ光源71aが発したレーザ光の強度は150Wであるため、ビームスプリッタ101で反射した光(以下、反射光と記す)の強度は120W、透過した光(以下、透過光と記す)の強度は30Wとなる。但し、ビームスプリッタ101は、光の強度を71に分割するものに限定されるものではなく、トナーの特性、レーザ光の強度、レーザ光のスポット半径、記録用紙の定着速度等を鑑み、所定の比率に分割できればよい。
【0025】
図2は、2本のレーザ光による記録用紙80の走査を示した図である。ポリゴンミラー71bは、高速回転することにより、照射されたレーザ光を記録用紙80の横方向(搬送方向に略直交する方向)に走査させる走査ミラーである。厳密には、ポリゴンミラー71bによって反射ミラー71dが横方向に走査され、反射ミラー71dで反射された光が、記録用紙80を横方向に走査する。実施形態1では、定着部71は、各分割光、すなわち反射光と透過光と、それぞれに対してポリゴンミラー71bを1つずつ、つまり合計で2つ備えている。
【0026】
補正レンズ71cは、レーザ光の偏向により生じる収差を補正することができ、ポリゴンミラー71bで反射されたレーザ光を、反射ミラー71dに導くことで、記録用紙80の全域を走査することが可能となる。さらに、搬送部材72によって記録用紙80を搬送することで、記録用紙80の全域に、レーザ光を照射することが可能となる。ここで、補正レンズ71cとしては、fθレンズを用いるが、これに限定されるものではなく、集光レンズなどを用いてもよい。
【0027】
反射ミラー71dは、レーザ光を、ポリゴンミラー71b及び補正レンズ71cを経由させ、記録用紙80へ照射させるためのもので、レーザ光源71a、ビームスプリッタ101、ポリゴンミラー71b及び補正レンズ71cの位置関係によって、適当な位置及び枚数が設置される。実施形態1では、透過光をポリゴンミラー71bまで導くために1枚の反射ミラー71dを用い、ポリゴンミラー71bによって導かれた反射光及び透過光を、補正レンズ71c通過後に、記録用紙80へ導くために、それぞれ1枚の反射ミラー71dが用いられた。また、反射ミラー71dは、透過光が上流側、反射光が下流側に導かれるように設置された。
【0028】
搬送部材72は、記録用紙80を搬送するためのものである。尚、搬送部材72が記録用紙80を搬送する速度は、定着速度と呼ばれる。
【0029】
画像定着部70は、記録用紙80の表面に形成された未定着のトナー画像を、レーザ光の熱によって記録用紙80に定着させるものである。より具体的には、記録用紙80のレーザ光が照射される位置に、所定の定着速度および複写速度で未定着トナー像を担持した記録媒体が搬送され、レーザ光の熱によって定着が行われる。
【0030】
実施形態1では、最大定着速度は225mm/sec、最大複写速度は50枚/分(A4横送り)であり、後述するように定着速度及び複写速度は画像パターンにより可変制御される。
【0031】
定着部71からの2つのレーザ光、すなわち、透過光と反射光とは、記録用紙80上のそれぞれ別の位置を照射する。搬送部材72の上流には透過光(30W)が、下流には反射光(120W)が照射され、2つの照射位置に、共にトナー81が存在しなければ、レーザ光源の出力を切り、それ以外はレーザ光源の出力を入れる制御を行った。記録用紙80上に、トナー81が存在するか否かは、記憶部40に保存された画像データを基にして判断される。
【0032】
(定着方法)
図3は、単体のレーザ光源から発した2つの分割光、すなわち透過光及び反射光がトナー81へ照射される様子を表した図である。実線矢印は反射光(120W)を、破線矢印は透過光(30W)を表し、記録用紙80上の円はトナー81を表す。また、図3は(a)〜(d)を時系列順に並べている。
【0033】
図3(a)は透過光(30W)によってトナー81表面が熱される様子を表し、図3(b)はトナー81表面の熱がトナー81全体に伝導した様子を表し、図3(c)は更に反射光(120W)によって熱される様子を表し、図3(d)はトナー81が記録用紙80に定着された様子を表す。
【0034】
トナー81は、まず透過光(30W)によって表面が約100度まで加熱され、反射光(120W)を照射するまでに時間を置く事により、トナー81全体に熱が伝導する。図3(b)では、反射光(120W)及び透過光(30W)の照射位置に、トナー81が存在しないため、レーザ光はOFFとなる。そして、その後、更に反射光(120W)がトナー81へと照射され、トナー81は約160度まで加熱され、図3(d)に示すように、トナー81は記録用紙80に定着される。
【0035】
また、記録用紙80上において透過光が照射される位置と反射光が照射される位置との間の距離は、5mm以上30mm以下であることが好ましい。もし、5mmよりも距離を近くすれば、透過光(30W)を照射してからトナー81下層に熱が伝導する時間を確保することができず、反射光(120W)を照射する際にトナー81表層が突沸しやすくなる。また、30mmよりも距離を遠くすると、透過光(30W)を照射してから反射光(120W)を照射するまでにトナー81が冷めてしまうため、定着性が悪くなる。
【0036】
実施形態1におけるレーザ定着装置は、トナー81を定着させるのに必要なエネルギーを、ビームスプリッタ101によって、2度に分けてレーザ光照射する構成をとることで、トナー81温度が急激に上昇することがなく、1度に全てのエネルギーをレーザ光照射する場合に比べて、ボイドの発生を抑えることができた。
【0037】
また、レーザ定着装置とは、別にフラッシュ定着装置を設けるような場合に比べ、ビームスプリッタ101によってレーザ光を分割する構成にすることで、余計な電力消費を抑えつつ、定着ができ、ボイドの発生を抑えたレーザ定着装置を提供することができた。
【0038】
〔実施形態2〕
(画像定着部の構成)
図4は、実施形態2における画像定着部の概略図を表す。実施形態2では、単体のレーザ光源から発したレーザ光を3つに分割して、記録用紙に照射する画像定着部について説明する。
【0039】
実施形態2において、実施形態1と異なるのは、ビームスプリッタの数、ポリゴンミラーの数及び反射ミラー71dの数のみで、他の構成は実施形態1と同様である。以下、ビームスプリッタ、ポリゴンミラー及び反射ミラーについて説明する。
【0040】
画像定着装置70は、ビームスプリッタ201及びビームスプリッタ202を備える。
【0041】
ビームスプリッタ201及びビームスプリッタ202は、レーザ光源71aから発光されたレーザ光(出力150W、波長780nm、ビーム径及びスポット径50μm)を、3つに分割する。
【0042】
ビームスプリッタ201で反射した光の強度と透過する光の強度との比は4:1で、ビームスプリッタ202で反射した光の強度と透過する光の強度との比は3:2である。
【0043】
レーザ光源71aから発光されたレーザ光210は、ビームスプリッタ201により、第一反射光211(120W)と第一透過光212(30W)の2つに分割され、第一透過光は、更にビームスプリッタ202により、第二反射光213(18W)と第二透過光214(12W)に分割される。
【0044】
ポリゴンミラー71bは、高速回転することにより、照射されたレーザ光を記録用紙80の横方向(搬送方向に略直交する方向)に走査させるものである。厳密には、反射ミラー71dが横方向に走査され、反射ミラー71dで反射された光が、記録用紙80を横方向に走査する。実施形態2では、実施形態1とは異なり、第一反射光211(120W)、第二反射光213(18W)及び第二透過光214(12W)は、同一のポリゴンミラー71bに導かれる。同一のポリゴンミラー71bを共用することで、画像定着部70を小型化することができる。
【0045】
実施形態2では、第二反射光213、第二透過光214を同一のポリゴンミラー71bまで導くために合計5枚の反射ミラー71dを用い、さらに、ポリゴンミラー71bによって反射された光を、補正レンズ71c通過後に、記録用紙80へ導くために1枚の反射ミラー71dが用いられた。また、反射ミラー71dは、第一反射光211が最上流側、第二透過光214が最下流側に導かれるように設置された。
【0046】
図5は、3本のレーザ光による記録用紙80の走査を示した図である。定着部71から照射された3本のレーザ光、第一反射光211(120W)、第二反射光213(18W)及び第二透過光214(12W)は、記録用紙80上のそれぞれ別の位置を照射する。搬送部材72の最上流には第二透過光(12W)が、最下流には第一反射光(120W)が、間には第二反射光(18W)が照射され、3つの照射位置に、いずれもトナーが存在しなければ、レーザ光源の出力を切り、それ以外はレーザ光源の出力を入れる制御を行った。ここで、記録用紙80上に、トナーが存在するか否かは、記憶部40に保存された画像データを基にして判断される。
【0047】
(定着方法)
図6は、3つの分割光、すなわち、第一反射光211(120W)、第二反射光213(18W)及び第二透過光214(12W)がトナー81へ照射される様子を表した図である。実線矢印は第一反射光211(120W)、破線矢印は第二反射光213(18W)、長鎖線矢印は第二透過光214(12W)を表し、記録用紙80上の円はトナー81を表す。また、図6は(a)〜(d)を時系列順に並べている。
【0048】
図6(a)は第二透過光(12W)によってトナー81表面が熱される様子を表し、図6(b)は第二反射光(18W)によってトナー81表面が熱される様子を表し、図6(c)は反射光(120W)によって熱される様子を表し、図6(d)はトナー81が記録用紙80に定着された様子を表す。
【0049】
トナー81は、まず第二透過光(12W)によって表面が加熱され、第二反射光(18W)が照射されるまでに時間を置く事により、トナー81全体に熱が伝導する。そして、その後、第二反射光(18W)がトナー81へと照射され、トナー81は加熱され、第一反射光(120W)が照射されるまでに時間を置く事により、トナー81全体に熱が伝導する。そして、その後、更に第一反射光(120W)がトナー81へと照射され、トナー81は約160度まで加熱され、図6(d)に示すように、トナー81は記録用紙80に定着される。図6(d)では、第一反射光(120W)、第二反射光(18W)及び第二透過光(12W)のいずれの照射位置にもトナーが存在しないため、レーザ光はOFFとなる。
【0050】
また、記録用紙80上において透過光が照射される位置と反射光が照射される位置との間の距離は、5mm以上30mm以下であることが好ましい。もし、5mmよりも距離を近くすれば、第二反射光(18W)を照射してからトナー81下層に熱が伝導する時間を確保することができず、第一反射光(120W)を照射する際にトナー81表層が突沸しやすくなる。また、30mmよりも距離を遠くすると、第二反射光(18W)を照射してから第一反射光(120W)を照射するまでにトナー81が冷めてしまうため、定着性が悪くなる。
【0051】
実施形態2におけるレーザ定着装置は、最も下流側に照射された分割光である第一反射光(120W)の出力が、その他の分割光、すなわち、第二反射光(18W)及び第二透過光(12W)の合計出力よりも大きくすることにより、トナー81の昇温速度をゆるやかにし、トナー81の下層も含めて均一に加熱することで、トナー81の温度が急激に上昇することがなく、一度に加熱する場合に比べ、ボイドの発生を抑えることができた。
【0052】
また、上流側に照射する分割光の出力ほど小さい構成、すなわち、上流側から第二透過光(12W)、第二反射光(18W)、第一反射光(120W)の順番に照射することで、トナー81の昇温速度をゆるやかにし、トナー81の下層も含めて均一に加熱することで、トナー温度が急激に上昇することがなく、一度に加熱する場合に比べ、ボイドの発生を抑えることができた。
【0053】
〔実施形態3〕
(画像定着部の構成)
図7は、実施形態3における定着部の斜視図である。実施形態3では、図7に示すように、複数のレーザ光源からなるレーザ光ヘッドから発せられた複数のレーザ光の群(以下、光帯と記す)を、2つに分割して記録用紙に照射する定着部71について説明する。
【0054】
実施形態3において、実施形態1と異なるのは、定着部71のみで、他の構成は実施形態1と同様である。以下、定着部71の構成について説明する。
【0055】
定着部71は、レーザ光ヘッド310、ビームスプリッタ320、補正レンズ330及び反射ミラー71dを備える。レーザ光ヘッド310は、実施例1におけるレーザ光源71aとは異なり、単体ではなく複数個のレーザ光素子をアレイ状に並べた半導体レーザ光アレイ311を備える。
【0056】
レーザ光ヘッド310は、半導体レーザ光アレイ311からレーザ光群を照射し、ビームスプリッタ320によって、反射光帯341の強度と透過光帯342の強度が4:1になるように光帯340を分割する。反射光帯341は補正レンズ330で集光し、透過光帯342は反射ミラー71dで反射させたものを補正レンズ330で集光した上で、記録用紙80へ照射される。
【0057】
図8はレーザ光ヘッド310の断面図であり、図9はレーザ光ヘッド310の側面図である。図8に示すように、レーザ光ヘッド310は、半導体レーザアレイ311、ヒートシンク312及びサーミスタ319を備える。半導体レーザアレイ311は、波長780nmで、定格出力が150mWのレーザ光素子311aを1,000個配列したものを用い、各レーザ光素子311aの配列ピッチpは0.3mmで、記録用紙80上に照射されるレーザ光スポット径dも0.3mmとする。また、ヒートシンク312としては、アルミニウム合金製でベースサイズが30mm×30mm、高さ20mm、熱抵抗1.6℃/Wのヒートシンク((株)アルファ社製 UB30−20B)を計10個一列に並べたもの(トータルの熱抵抗0.16℃/W)を用いている。
【0058】
入力された信号によりレーザ光の出力は可変で、受光素子であるモニター用フォトダイオード313からの信号によりレーザ光の出力を一定に保つための制御回路(図示せず)とフォトダイオード313とがモノリシックに形成されたシリコン基板314に、レーザ光素子311aマウントし、レーザ光素子311aとシリコン基板314との間にワイヤーボンド線等で電気的接続を行う。
【0059】
次に、このレーザ光素子311a付シリコン基板314をセラミック基板315上に複数個取り付け、ワイヤーボンディング等によりセラミック基板315の表面電極316とシリコン基板314上の電極との間に電気的接続を行う。最後に、この複数個のレーザ光装置が並んだセラミック基板315に、ヒートシンク312と、複数個の集光光学系としての複数の凸レンズ317とが保持されたレンズホルダー318を取り付ける。これにより、本実施例に係るレーザ光ヘッド310が製造される。
【0060】
このレーザ光ヘッド310における複数の凸レンズ317とレンズホルダー318とは、各凸レンズ317を樹脂ホルダー等に組み込んだものよりも、樹脂によるレンズ―レンズホルダー一体成形品や、平板ガラスをレンズ状にイオン交換して製造される平板マイクロレンズなどのレンズアレイである方が、価格や工程、組立精度に関して好ましい。
【0061】
また、凸レンズ317やレンズホルダー318等の集光光学系を無くし、平行光の状態でトナー画像にレーザ光を照射することも可能である。
【0062】
図9に示すように、セラミック基板315上には、レーザ光ヘッド310の温度を測定するための温度センサとして、サーミスタ319が取り付けられている。尚、サーミスタ319は、セラミック基板315の長手方向中央部に配置されている。そして、サーミスタ319により検出された温度データに基づいて、制御回路(図示せず)が、レーザ光素子311aに印加する電圧を制御する。
【0063】
(定着方法)
図10は、2つのレーザ光帯による記録用紙80の走査を示した図である。
【0064】
半導体レーザアレイ311から照射された2本のレーザ光帯、反射光帯341及び透過光帯342は、記録用紙80上のそれぞれ別の位置を照射し、搬送部材72の最上流には透過光帯342が、最下流には反射光帯341が照射される。
【0065】
更に、詳しく説明すると、半導体レーザアレイ311に備えられたレーザ光素子311aから照射された一本のレーザ光340aは、ビームスプリッタ320によって、反射光341aと透過光342aに分けられ、搬送部材72の最上流には透過光342aが、最下流には反射光341aが照射され、2つの照射位置に、いずれもトナーが存在しなければ、レーザ光340aをOFFにし、それ以外はONにする制御を行った。記録用紙80上に、トナーが存在するか否かは、記憶部40に保存された画像データを基にして判断される。
【0066】
レーザ光源が単体の場合は、トナーを定着するために、レーザ光の出力が単体で150Wと非常に大きなレーザ光源が必要となるが、アレイ状にしてレーザ光源を多数使用することで、1つ当たりのレーザ光の出力を小さくでき、その分多数レーザ光を並べることを考慮しても低消費電力、低コストで構成することができた。
【0067】
尚、本発明は実施形態1〜3に限定されるものではない。実施形態1及び2では、レーザ光を走査するためにポリゴンミラーを用いたが、本発明はこれに限定されず、レーザ光を走査できる構成であればよく、例えば、ガルバノミラーを用いてもよい。
【0068】
また、実施形態1〜3において、ビームスプリッタを用いて、レーザ光を2つ又は3つに分割したが、分割光を照射してトナーを定着させることができるならば、いくつに分割してもよく、例えば、4つに分割してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、光源を有したレーザ定着装置、及びそれを具備した画像形成装置に応用できる。
【符号の説明】
【0070】
70 画像定着部
71 定着部
71a、904 レーザ光源
71b ポリゴンミラー
71c、330 補正レンズ
71d 反射ミラー
72 搬送部材
80 記録用紙
101、201、202、320 ビームスプリッタ
210、340a、910 レーザ光
211 第一反射光(120W)
212 第一透過光
213 第二反射光(18W)
214 第二透過光(12W)
310 レーザ光ヘッド
311 レーザアレイ
312 ヒートシンク
313 フォトダイオード
314 シリコン基板
315 セラミック基板
316 表面電極
317 凸レンズ
318 レンズホルダー
319 サーミスタ
340 光帯
341 反射光帯
341a 反射光
342 透過光帯
342a 透過光
p 配列ピッチ
d レーザ光スポット径
901 感光体ドラム
902 転写コロトロン
903 複写用紙
905 モータ
906 回転多面鏡
907 光路補正レンズ
908 平板
909 間隙


【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を照射する光照射部と、
光照射部からの光を複数の分割光へと分割する分割光学系と、
前記複数の分割光が、それぞれ記録用紙上の別の位置を照射するように配置された照射光学系と備えることを特徴とするレーザ定着装置。
【請求項2】
前記照射光学系は、
反射ミラーと、
前記複数の分割光に前記記録用紙上を走査させる走査ミラーとを有することを特徴とする請求項1に記載のレーザ定着装置。
【請求項3】
前記反射ミラーは、前記複数の分割光の内2つ以上が、同一の前記走査ミラーへ導かれるように配置されていることを特徴とする請求項2に記載のレーザ定着装置。
【請求項4】
前記複数の分割光は、前記記録用紙の搬送方向の下流側に照射される分割光の出力が小さく分割されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のレーザ定着装置。
【請求項5】
前記記録用紙の搬送方向の最も下流側に照射される分割光の出力が、その他の分割光の出力の総和よりも大きくなるように、
前記分割光学系、及び前記照射光学系が配置されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のレーザ定着装置。
【請求項6】
前記記録用紙の搬送方向の最も下流側に照射される前記分割光の照射位置と、最も下流から2番目に下流側に照射される前記分割光の照射位置との距離が5mm以上30mm以下となるように、
前記分割光学系、及び前記照射光学系が配置されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のレーザ定着装置。
【請求項7】
前記光照射部は、光源を複数備えることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のレーザ定着装置。
【請求項8】
前記光照射部の出力を制御する制御部を備えることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のレーザ定着装置。
【請求項9】
請求項1から8いずれかに記載のレーザ定着装置を備えた画像形成装置。
【請求項10】
請求項8記載のレーザ定着装置において、
前記制御部は前記複数の分割光のいずれの照射位置にもトナーが無い場合には、前記光照射部の出力を切り、いずれかの照射位置にトナーが存在する場合には、前記光照射部の出力を入れることを特徴とするレーザ定着方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−150373(P2012−150373A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−10463(P2011−10463)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】