説明

レーザ彫刻識別マークを有する物品

【課題】読みやすく、さらに、比較的大量の情報が伝えられる場合にも、製造耐久性があり、また比較的廉価に製造できる識別マークを提供する。
【解決手段】物品は、物品の外面(18)の領域にわたって延在するポリマコーティング(20)と、コーティング内に形成されるレーザ彫刻の識別マーク(22)とを含む。ポリマコーティングは外面の色と対照的な色を有し、明瞭かつ読みやすい表示が得られる。任意に、レーザ彫刻の識別マーク(22)は、物品に関する種のデータを表し、一方、ポリマコーティングを使用して、物品に関する類のデータを表す第2の識別マーク(24)を形成でき、したがって、同時に製造コストを低減しつつ、種々の物品の消費者による視覚的区別を容易にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
1.発明の分野
本発明は、物品と、色、サイズ、カタログ番号等のような物品に関する情報を識別するように機能する1つ以上の識別マークを有する物品を製造するための方法とに関する。より詳しくは、本発明は、物品と、物品の外面に適用されるポリマコーティングを使用することによって形成されるレーザ彫刻識別マークを有する物品を製造するための方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
2.関連技術の説明
レーザ彫刻装置は、種々の物品にマークまたは彫刻するために広く使用されている。レーザ彫刻される物品の一般的な例は、トロフィー、サイン、スポーツ用品および賞品を含む。他のレーザ彫刻物品は、製品容器、楽器および木工製品を含む。
【0003】
製品容器は、種々の目的に使用されるいくつかの識別マークを有することが多い。製品容器は、少なくとも製品名、ならびに製品の製造業者または販売業者の名前を一般に含む。製品の性質が容易に認識できないならば、容器は、容器内の製品の種類を総称で説明するテキストとして書かれる識別マークも含むことが可能である。
【0004】
多くの場合、製品容器は、他の目的に使用されるいくつかの追加の識別マークも含む。例えば、容器は、製品の色、形状、サイズ、重さまたは容量を示したマークを有し得る。また、製品容器は、製造業者または販売業者の住所あるいは製品の原産国を識別するマークを有することが一般的である。
【0005】
多くの製品容器は、他の情報も同様に伝える追加の識別マークも含む。例えば、製品容器上の識別マークは連続番号あるいはバッチまたはロットコードを含むことが可能であり、それらは、容器内の特定の製品の製造工程に関する製造業者へのより詳細な情報を識別するのに役立つ。さらに、製品容器上の識別マークは、製品用のカタログまたは製品番号として使用される文字または番号を含み得る。
【0006】
過去において、識別マークは、数種類のインク印刷技術を用いて製品容器にしばしば適用されてきた。ある場合には、インクマークは、例えば、裏側に接着剤コーティングを有する紙またはプラスチックフィルムの部分から製造されたラベルに適用される。ラベルは、それにマークした後に容器に適用されることが多い。
【0007】
他の場合、インク印刷技術を利用して、インク識別マークを容器の外面に直接適用する。その場合、インクの色は、得られる識別マークの可視性を強化するために容器の外面の色と対照になるように選択されることが多い。識別マークは、インクのポジ画像として(すなわち、インクが文字、記号または他の識別用の指標を形成する場合)、あるいはネガ画像として(インクの欠如、すなわち容器の下層外面が文字、番号または他の指標を形成するように)形成し得る。
【0008】
しかし、インク印刷に関連してある問題が長い間存在していた。例えば、オペレータは、十分な量の新しいインクが常に使用できることを確実にしなければならない。また、後続する処理の間にマークが不鮮明になるか、さもなければ傷つかないように、オペレータは、適用後にインクが適切に固化または硬化することを確実にしなければならない。さらに、特にインクパッド印刷技術については、1つの識別マークから他の識別マークに切り替える作業に関連して、相当の労働、時間および出費がしばしば伴う。
【0009】
近年、レーザ技術は、製品識別マークを製品容器上に直接彫刻するために使用されてきた。レーザ彫刻技術は、レーザ彫刻装置によりオペレータが1つの識別マークから他の識別マークに容易に切り替えることができるという点で、インク印刷技術と較べて重要な利点を有する。例えば、レーザ彫刻装置は、レーザビームの運動を方向付ける制御器を含み得る。その場合、識別マークの変更は、制御器により利用される、ビーム経路を決定する1組のコンピュータ命令を単に変更することによって実施される。
【0010】
しかし、製品容器上のレーザ彫刻識別マークは時々見にくい。マークの見やすさは、マークの幅および下層の容器表面の色を含む多くの要因に関係する。オペレータはまた、容器の強度が大きく損なわれないように、容器表面のビームエネルギが容器を貫いて燃やすか、さもなければ容器を過度に弱化するほど十分に強くないことを確実にするように、注意を払わなければならない。
【0011】
レーザ彫刻識別マークは他の歯科用物品にも使用されてきた。例えば、米国特許第5,322,436号は、レーザ彫刻識別マークを外面に有する歯列矯正バンドを記載している。当該特許に記述されている識別マークは、美的で読みやすい半白の外観を有する。
【0012】
上述のマークを含む公知の識別マークは幾分満足でき、広く使用されている。しかし、従来技術を改善する必要性が継続的に存在する。特に、読みやすく、さらに、比較的大量の情報が伝えられる場合にも、製造耐久性があり、また比較的廉価に製造できる識別マークを提供することが望ましい。
【0013】
発明の要旨
本発明は、上述のインク印刷およびレーザ彫刻技術の両方の多くの利点を組み合わせ、その結果として、美的であり、読みやすくまた比較的廉価である識別マークを有する物品に関する。本発明の識別マークは必要に応じて要求に合わせて製造され、人間がほとんど介入することなく、特定製品の特定データを作成できる。本発明はまた、改良された識別マークを製造するための方法に関する。
【0014】
一態様では、本発明は、ある色の外面を有する本体を備える物品に関する。ポリマコーティングは、外面のある領域にわたって延在する。コーティングは、外面の色と対照的な色を有する。物品はまた、コーティング内に形成されるレーザ彫刻識別マークを含む。
【0015】
本発明の他の態様は、物品を製造する方法に関する。本方法は、物品の外面の色と対照的な色を有するポリマコーティングを選択するステップを含む。本方法はまた、物品の外面のある領域にコーティングを適用するステップを含む。本方法は、コーティングが化学反応を受けて識別マークを形成するようにさせるのに十分なパワーで、レーザビームをコーティングに向かって方向付けるステップを、さらに含む。
本発明のさらなる詳細は請求項の特徴部分に規定されている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態によるレーザ彫刻の識別マークを有する物品の側面図であり、この場合の物品は製品容器であり、特に、ある量の歯科用材料を保管および分配するための使い捨て可能なカートリッジである。
【図2】本発明の他の態様によるレーザ彫刻の識別マークを有する物品の斜視図であり、この場合の物品は歯列矯正バンドである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
好ましい実施形態の詳細な説明
図1に示した本発明の一実施形態によるレーザ彫刻識別マークを有する物品は、全体的に数字10で示した製品容器である。本実施例の製品容器10は、流動可能な材料を保管および収容するための使い捨て可能なカートリッジである。より詳しくは、図1に示した製品容器10は、1人の歯科の患者に使用するための使い捨て可能な保管および分配カートリッジであり、歯科用シーラントまたは歯科用修復材料のような歯科用組成物を保管および収容するために特に有用である。
【0018】
製品容器10は、ポリマ材料から任意に製造される本体12を含む。本体は円形後部フランジ14および前部分配ノズル16を含む。図面には示していないが、本体12は、分配すべき材料を収容するための中空の内部チャンバを有する。さらに、製品容器10は、そのチャンバ内に受容されるピストンを含む。ピストンがノズル16に向かって前進させられるにつれ、チャンバの材料はノズル16内の通路を通して付勢され、適用部位に直接分配される。容器10の追加の態様は米国特許第5,100,320号および第5,624,260号に記述されている。
【0019】
図1に示した特定の製品容器10は例示目的のみのために示されており、いくつかの他の容器も可能である。例えば、容器はいくつかの他の任意の形状またはサイズを有することが可能であり、またこの容器を使用して、歯科用シーラントまたは修復材料以外の材料を収容し得る。容器はまた、米国特許第5,722,829号および第5,651,397号に示された双胴カートリッジのような多数の製品チャンバを任意に有することが可能である。
【0020】
容器10は、米国特許第5,195,663号および第4,198,756号に記載されたアプリケータのようなハンドヘルド型アプリケータのレセプタクルに取外し自在に受容されるように適合される。しかし、他の構造も可能である。例えば、容器は、米国特許第5,735,437号に示された一体の容器を有するディスペンサアセンブリのような手で材料を分配するためのアプリケータ構造を含み得る。
【0021】
本体12は、ある色の外面18を有する。ポリマコーティング20の部分は、外面18のある領域にわたって延在する。この領域の面積は外面18全体の面積よりも小さい。本実施形態では、当該領域は長方形を有するが、他の形状も可能である。好ましくは、コーティング20が肉眼によって外面18から容易に区別できるように、コーティング20は外面18の色と対照的な色を有する。
【0022】
物品または製品容器10はまた、コーティング20内に形成されるレーザ彫刻の識別マーク22を含み、外面18の上述の長方形の領域にわたって延在する。図1では、識別マーク22は表示用の英数字表示「A3.5」を有する。識別マーク22の色は、コーティング20の隣接範囲の色と異なるので、比較的見やすい。
【0023】
識別マーク22は、レーザビームをポリマコーティングに向かって方向付け、またコーティングの一部分が化学反応を受けて、所望の識別表示を形成するようにさせることによって形成される。例えば、レーザビームは、レーザビーム経路に存在するコーティング部分を揮発させるのに十分なパワーで、コーティングに向かって方向付けることができる。次に、レーザビームを必要に応じて移動して、所望の英字、数字または他の種類の識別マークを形成する。図示した実施形態では、外面18が容易に見え、コーティング20の隣接範囲から目立つように、識別マークの所望の範囲のコーティングの部分は本質的に完全に揮発させられる。
【0024】
任意に、コーティング20は第2の識別マークも提供する。1つの種類の第2の識別マークの例は、英数字表示「Z250」を有する識別マーク24である。第2の識別マーク24は、識別マーク22を含む長方形の領域から離間した外面18の範囲に配置される。
【0025】
好ましくは、第2の識別マーク24は類の識別マークであり、一方、第1の識別マーク22は種の識別マークである。例えば、識別マーク24を使用して、色または陰影は別として同一の物理的特性を有する一連の歯科用修復材料を識別し得る。次に、第1の識別マーク22を使用して、歯科用修復材料の陰影を示し得るので、患者の歯構造の陰影に調和する修復材料を選択できる。
【0026】
図1に示した製品容器10は、第2の識別マーク24を有するが、第1の識別マーク22を有しないいくつかのこのような容器10を予め製造し得るという点で、特に有利である。製造業者が容器10を在庫から取り出し、また必要なときに修復材料の特定の陰影を容器に書き入れるとき、レーザ装置を使用して、第1の識別マーク22を形成し、また製品容器10のチャンバ内の歯科用修復材料の特定の陰影を識別する陰影表示を製品容器10に永久的にマークすることができる。したがって、製造業者は、いくつかの異なる製品容器を保存して、製品シリーズ(例えば「Z250」)の異なる種類のすべての製品(例えば種々の陰影)を識別する代わりに、各製品シリーズ用の1つの種類の製品容器を在庫に保存することで済む。
【0027】
任意に、コーティング20は、類の識別マークを表す色を有し得る。例えば、コーティングは、黒色の外面を有する製品容器に使用するために赤色を有し、後歯に使用するのに特に適切な1つの一連の歯科用修復材料を表すことが可能であり、一方、コーティングは、黒色の外面を有する製品容器に使用するために緑色を有し、前歯に使用するのに特に適切な修復材料の他の製品シリーズを表し得る。次に、第1の識別マーク22を使用して、製品シリーズの各々の修復材料の色または陰影を識別する種の識別マークを形成できる。
【0028】
他の選択として、コーティング20の形状は類の識別マークを表し得る。例えば、外面18のコーティング20の形状は、1つの一連の製品を表すために長方形(図示したように)でもよく、また他の一連の製品を表すために三角形または円形でもよい。他の形態も可能である。
【0029】
他の選択として、レーザビームにより揮発以外の化学反応をコーティングが受けるようにし得る。例えば、表面酸化物の色が隣接したコーティングの色と、色彩において対照となるように、レーザビームによりコーティングの経路が酸化するようにし得る。他の例として、レーザビームによりその経路内のコーティングが固化および/または硬化して、容器に固着するようにさせることが可能であり、一方、コーティングの残部は洗浄または溶解ステップによって引き続き除去される。さらなる例として、レーザビームによりコーティングが脱色(光漂白)工程または発色工程を受けて、コーティングの隣接範囲の色と色彩において対照となるようにし得る。レーザビームによって引き起こされる他の種類の化学反応も可能である。さらに、このパラグラフに記述したすべての工程は、得られるマークがネガまたはポジ画像であるかどうかに関係なく、本発明の目的では、レーザ彫刻の識別マークを「コーティング内に」形成することとして考慮すべきである。
【0030】
レーザ彫刻工程と組み合わせたポリマコーティングの使用は、レーザビームにより外面があまり乱されないことを望む場合、特に有利である。例えば、物品表面の凹凸を避けたいと望む場合があり得る(例えば、金属製物品上の潜在的な腐食部位の制限を望む場合)。他の場合、物品は、レーザビームによって過度に弱化され得る材料から製造される可能性がある。これらの場合、コーティングの存在は、本体の下層外面の代わりにコーティングがレーザビームエネルギの大部分を吸収するのを任意に可能にし、この結果、本体の下層面は悪影響を受けない。しかし、ある用途において望まれるならば、物品の外面を粗くし、同時に、粗くした部分にコーティングが「定着」して、所望の識別マークの形成を任意に可能にするために十分なエネルギで、レーザビームを物品に方向付けることが可能である。
【0031】
他の選択として、同様にレーザビームを利用して、第1の識別マーク22または第2の識別マーク24と異なる目的を有する第3の識別マークを形成し得る。第3の識別マーク26は、コーティングから離間した位置の外面18に直接製造可能であり、第1の識別マーク22または第2の識別マーク24よりも肉眼で見にくいマークが得られる。第3の識別マークは、製品の通常の用途において消費者が認識または観察する必要がない製品容器10に情報を直接記録するために特に有用である。
【0032】
例えば、第3の識別マーク26はロットコードまたはバッチコードを含み得る。このようなコードは通常必要とされないが、容器にしばしば永久的にマークされて、必要なときに製品の追跡に役立つ。例えば、あるバッチでまたはあるロットで製造されたすべての材料を製造業者が回収する必要があるならば、製品容器10内の製品に回収義務があるかどうかを消費者が確認できるように、望むときに肉眼によってロットまたはバッチコードを識別できる。
【0033】
さらなる代替例として、第3の識別マーク26は、製品容器10内の製品の推奨使用期限、推奨販売期限、保管寿命データ、保証期限または製造期限のようなデータを含み得る。このような情報は、例えば、新しい製品が頻繁に入着する多忙な歯科医院では、通常の実務過程では必要とされないかもしれない。しかし、開業医は第3の識別マーク26を参照して、必要または所望の時により詳しく検査する際にこのような情報を獲得できる。
【0034】
長方形部分ならびに第2の識別マーク24を含むコーティング20は、いくつかの適切なインク印刷技術の任意のものによって製造し得る。例えば、コーティングはパッド印刷機によって外面18に適用し得る。望むならば、コーティングの長方形部分ならびに第2の識別マークの両方は、パッド印刷機によって単一のステップで同時に適用し得る。適切なパッド印刷機の例は、Poway,CaliforniaのPrintex(Pemco Industries,Inc.の一部門)販売の機械である。代わりに、コーティング20はスクリーン印刷技術によって適用し得る。他の代替例として、コーティング20は型枠内塗装技術を用いて本体12に適用可能であり、この場合ポリマを含むウェブは本体12が成形されるときの型穴に存在する。
【0035】
ポリマコーティングは、選択されるレーザ彫刻システムおよび外面18の組成と両立できる任意の適切なコーティングであり得る。適切なコーティングの例は、ドイツのPurellからの「PUR」シリーズとして知られているインク、またはVisprox B.V.からの「Visprox」として知られているインクである。
【0036】
レーザ彫刻の第1の識別マーク22は、いくつかのレーザ彫刻システムの任意のものを用いて製造し得る。適切なレーザ彫刻システムの例は、GeneralScanning Inc.から「Hi−Mark」No.400の商標名で販売されているYAGレーザ彫刻システムである。しかし、CO2レーザおよびメーザのような他のレーザシステムも使用し得る。使用するならば、第1の識別マーク22を形成するために使用される同一のシステムによって第3の識別マーク24を製品容器10に適用することが好ましい。
【0037】
レーザ彫刻システムは、得られる識別マーク22が容易に見えるように必要に応じて調整される。例えば、上述のような商標名「Hi−Mark」レーザマークシステムNo.400と組み合わせて上述のような「PUR」シリーズのインクを使用する場合、また本体12がナイロン製である場合、レーザ彫刻システムの十分な設定は、1秒当たり70mmの速度、80%のパワー設定および30,000ヘルツの周波数を含む。
【0038】
識別マーク22は、レーザビームの1つまたは2つの通過、または幾分より広いマークを望むならば、追加の通過を用いて製造し得る。ある場合には、下層のプラスチック本体12の外面18を過度に軟化する傾向のない比較的低レベルにビームエネルギを保持できるように、レーザビームの少なくとも2つの通過が望ましい。多数の平行ビーム経路の利用によっても、レーザ装置にズームレンズまたはビーム拡大器を使用する必要性を回避するのに役立ち、潜在的なコスト節減をもたらす。
【0039】
好ましくは、レーザ彫刻システムの設定は、ビーム経路のポリマコーティングは揮発するが、本体12の下層外面が過度に加熱または軟化されないように選択される。過剰なエネルギを有するレーザビームは、外面12の可塑性材料が微視的なスケールでコーティング縁部にわたって転がり、コーティング縁部が鮮鋭さを失って、外観が幾分不明瞭となるようにさせる傾向があるような程度に、本体12の外面18を軟化させ得ることが確認されている。ビーム経路のコーティングを揮発させつつ、レーザビームエネルギを可能な限り低く維持することによって、ビーム経路に隣接したコーティング縁部は鋭くかつ明瞭であり、比較的読みやすい識別マークが得られる。
【0040】
追加の選択として、容器10は、識別マーク22または識別マーク24によって伝達されるある情報に色コード化される範囲28を有し得る。例えば、第2のマーク24によって識別される製品シリーズ「Z250」用の容器は、共通の色を範囲28に有することが可能であり、この結果、特定の手順にわたって誤った製品を使用するリスクが低減される。
【0041】
本発明の他の実施形態によるレーザ彫刻の物品が図2に示されている。図2の物品は歯列矯正バンド30である。歯列矯正バンドは、歯列矯正治療を受ける患者の臼歯上に共通に配置されて、バッカルチューブとして知られる非常に小さな装置の装着プラットフォームとして機能する。
【0042】
歯列矯正バンド30は、シリーズ300ステンレス鋼のような金属材料から製造される円形本体22を含む。本体32は外面34を有する。ポリマコーティング36は外面34の領域に適用される。
【0043】
レーザビーム経路内にあるポリマコーティング36の部分が化学反応を受けるように、レーザ彫刻の第1の識別マーク38は、レーザビームをポリマコーティング36に向かって方向付けることによって形成される。好ましくは、化学反応はレーザビーム経路のコーティングを揮発させるので、識別マークは、ポリマコーティング36が揮発させる範囲の下の外面の外観によって形成される。好ましくは、また上述したように、外面34がレーザビームによって過度に粗くされず、さもなければ乱されないように、レーザ彫刻システムは操作される。
【0044】
バンド30が患者の口腔内および選択された歯の周囲に配置されると、通常識別マーク38が見えなくなる本体32の一部分に第1の識別マーク38を配置することが好ましい。例えば、バンド30が正確な配向で歯の上に配置された場合、識別マーク38は、隣接した歯と歯間関係で臼歯の近心側に位置決めし得る。
【0045】
ポリマコーティング36は、バンド30に滅菌が施されるときに悪影響を受けないことが好ましい。歯列矯正バンドは種々の形状およびサイズで入手可能であり、また歯列矯正医は、セメントでバンドを適所に結合する前に、患者の歯の上にバンドを試しにはめ込み、選択したバンドが患者の歯の形状に整合することを確実にし得る。バンドが適切なサイズでないならば、バンドはその後の使用のために再滅菌される。識別マーク38が後続の手順の間にも読みやすいように、ポリマコーティング36は滅菌手順に耐え得ることが好ましい。
【0046】
任意に、バンド30はまた、類のデータを表す第2の識別マーク40を含み、一方、第1の識別マーク38は種のデータを表す。例えば、第1の識別マーク38は、バンド30が意図される歯の位置を識別するのに十分な数字を含み得る。識別マーク38はまた、バンド30のサイズを表す製造業者の表記を含み得る。第2の識別マーク40を使用して、バンドの商標名または製造業者の身元のようなより多くの一般的な情報を提供し得る。図示した例では、第2の識別マーク40は商標名を「XYZ」として示した。
【0047】
いくつかの他のレーザ彫刻の物品も可能であり、また上述の実施形態は特定の実施例を示しているにすぎない。当業者は本発明の種々の他の用途および使用を認識し得る。したがって、本発明は上述の特定の実施形態に限定されると見なされるべきでなく、代わりに、それらの等価物と共に従う公正な請求の範囲によってのみ限定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品であって、
ある色の外面を有する本体と、
前記外面の任意領域にわたって延在し、前記外面の色と対照的な色を有するポリマコーティングと、
前記コーティング内に形成されるレーザ彫刻識別マークと、
を具備する物品。
【請求項2】
前記外面が前記識別マーク内に見える、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記識別マーク内に見える前記外面に表面凹凸がない、請求項2に記載の物品。
【請求項4】
前記レーザ彫刻識別マークが、前記ポリマコーティングの色と異なる色を有する、請求項1に記載の物品。
【請求項5】
前記コーティング内に形成される前記識別が種のマークであり、前記物品が、前記任意領域から離間した範囲に配置される前記ポリマコーティング製の類の識別マークをさらに有する、請求項1に記載の物品。
【請求項6】
前記ポリマコーティングが、類の識別マークを表す色を有し、前記レーザ彫刻識別マークが種のマークである、請求項1に記載の物品。
【請求項7】
前記物品が容器と該容器内の製品とを含み、前記ポリマコーティングの色が前記製品の色に調和する、請求項6に記載の物品。
【請求項8】
前記製品が歯科用シーラントまたは歯科用修復材料である、請求項7に記載の物品。
【請求項9】
前記物品が、ポリマ本体と該本体内のチャンバとを有する製品容器である、請求項1に記載の物品。
【請求項10】
前記製品容器が、流動可能な材料を前記チャンバ内に含む、請求項9に記載の物品。
【請求項11】
前記材料が歯科用シーラントまたは歯科用修復材料である、請求項10に記載の物品。
【請求項12】
前記ポリマコーティングの色が前記歯科用材料の色に調和する、請求項11に記載の物品。
【請求項13】
前記物品が、前記外面の領域から離間したレーザ彫刻識別マークをさらに有し、該レーザ彫刻識別マークが、前記コーティング内に形成された前記レーザ彫刻識別マークよりも見にくい、請求項1に記載の物品。
【請求項14】
前記外面の領域から離間した前記レーザ彫刻識別マークが、保管寿命データ、保証期限、製造期限、連続番号、バッチコードデータおよびロットコードデータからなる群から選択される情報を含む、請求項13に記載の物品。
【請求項15】
前記物品が容器と該容器内の製品とを含む、請求項1に記載の物品。
【請求項16】
前記物品が歯列矯正バンドである、請求項1に記載の物品。
【請求項17】
物品にマークする方法であって、
前記物品の外面の色と対照的な色を有するポリマコーティングを選択する行為と、
前記物品の外面の任意領域に前記コーティングを設ける行為と、
前記コーティングの少なくとも一部分が化学反応を受けて識別マークを形成するようになるのに十分なパワーで、レーザビームを前記コーティングに向かって方向付ける行為と、を含む物品マーク方法。
【請求項18】
レーザビームを前記コーティングに向かって方向付ける前記行為により、前記コーティングの少なくとも一部を揮発させる、請求項17に記載の物品マーク方法。
【請求項19】
レーザビームを前記コーティングに向かって方向付ける前記行為が、前記物品の外面に表面凹凸を生じさせない、請求項18に記載の物品マーク方法。
【請求項20】
前記物品がポリマ材料製の容器を具備し、レーザビームを前記コーティングに向かって方向付ける前記行為が、前記容器の外面を実質的に軟化させない、請求項18に記載の物品マーク方法。
【請求項21】
レーザビームを前記コーティングに向かって方向付ける前記行為により、前記コーティングの少なくとも一部が重合する、請求項17に記載の物品マーク方法。
【請求項22】
レーザビームを前記コーティングに向かって方向付ける前記行為が、前記物品の外面に大量の表面凹凸を生じない、請求項1に記載の物品マーク方法。
【請求項23】
レーザビームを前記コーティングに向かって方向付ける前記行為により、前記コーティングの少なくとも一部の色が変化する、請求項17に記載の物品マーク方法。
【請求項24】
レーザビームを前記コーティングに向かって方向付ける前記行為が、前記物品の外面に大量の表面凹凸を生じない、請求項23に記載の物品マーク方法。
【請求項25】
レーザビームを前記コーティングに向かって方向付ける前記行為が種のマークを形成し、前記コーティングを前記物品の外面に設ける前記行為が、種のマークとは別個の類のマークを形成する行為を含む、請求項17に記載の物品マーク方法。
【請求項26】
レーザビームを前記コーティングに向かって方向付ける前記行為が種のマークを形成し、前記ポリマコーティングの色が類のマークを表す、請求項17に記載の物品マーク方法。
【請求項27】
前記物品が容器と該容器内の製品とを具備し、ポリマコーティングを選択する前記行為が、前記容器内の前記製品の色に調和する色を有するポリマコーティングを選択する行為を含む、請求項17に記載の物品マーク方法。
【請求項28】
前記製品が歯科用シーラントまたは歯科用修復材料である、請求項27に記載の物品マーク方法。
【請求項29】
他の識別マークを形成するために、前記コーティングから離間した位置で前記物品に向かってレーザビームを方向付ける行為を含む、請求項17に記載の物品マーク方法。
【請求項30】
前記コーティングから離間した位置で前記物品に向かってレーザビームを方向付ける前記行為が、レーザビームを前記コーティングに向かって方向付ける前記行為によって形成される前記識別マークよりも見にくい識別マークを形成する、請求項29に記載の物品マーク方法。
【請求項31】
前記物品が歯列矯正バンドである、請求項17に記載の物品マーク方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−227514(P2011−227514A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−147419(P2011−147419)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【分割の表示】特願2001−546301(P2001−546301)の分割
【原出願日】平成12年4月19日(2000.4.19)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】