説明

レーザ溶接による単結晶超合金の補修のための方法及びその生成物

レーザ溶接による単結晶超合金の補修のための方法及びその生成物が開示される。このレーザ溶接プロセスは、可搬式又は自動式のいずれであってもよい。レーザの種類には、CO、Nd:YAG、ダイオード及びファイバーレーザが含まれる。レーザプロセスを操作するためのパラメータが開示される。線材又は粉体超合金の何れかとすることができるフィラー材料が、単結晶超合金基材の少なくとも一部分を溶接するために使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、総括的には溶接方法及び溶接生成物に関し、より具体的には、レーザ溶接による単結晶超合金を補修するための方法及びその生成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ニッケル基超合金は、耐熱性が必要とされる用途で広範に使用されてきた。このような用途は、ガスタービンエンジンの高温部の部品で多く見られる。製造方法の改良は、これらの等軸多結晶対応物よりも良好な高温寿命及び高温強度をもたらす単結晶形態の構成部品の鋳造につながってきた。長期にわたると、このような構成部品(特にタービンブレード)は、浸食、腐食、酸化、及び熱的疲労により損傷又は劣化し、補修又は修復を必要とすることになる。幾つかの要因の中には特に、硫酸ナトリウム及び塩化ナトリウムなどといった多くの化合物を含有する、発電用ガスタービンで使用される燃料ガスがあり、これはタービンブレードの高温腐食及び酸化を促進する。
【0003】
ガスタービンエンジンの効率は、タービンブレードとエンジンのタービンセクションのシュラウドとの間での加圧空気の漏洩を最小にする能力にある程度依存する。上述のような運転中に、タービンブレード先端及びベーンエアフォイルは、過酷な酸化、腐食、及び異物衝突によって浸食されて磨耗し、このような損傷した構成部品は廃棄部品となる。従って、可能な限り構成部品を補修することが有利である。
【0004】
しかしながら、これらの構成部品は、高強度であるが低い延性の特性を有する超合金からなるので、溶接中に亀裂が生じることになる。亀裂は、応力により急激に伝播し、結果として使用できない部品となる。超合金は、主として、ガンマプライムとして知られるNi(Al,Ti)析出物を生成する制御された熱処理によって強化される。経年劣化により生じる析出硬化現象及び関連する容積変化により亀裂が促進され、これらの合金の溶接が極めて困難になる。
【0005】
溶接に伴って高温となる結果として、超合金部品を同様の合金組成物の他の部品と接合することを可能としながら、両部品の強度及び延性特性並びにこれにより形成される結合部の完全性を維持する改良されたプロセスに対する必要性がある。上述のような腐食した既存部品をコーティングするための改良されたプロセスもまた望ましい。
前述の理由のため、レーザ溶接による単結晶超合金の補修のための改良された方法及びその生成物を提供することが望ましい。
【0006】
【非特許文献1】SUPERALLOYS II、Syms他編、John Wiley & Sons、1987、p581−586
【非特許文献2】G.L.Erickson、「Superalloys Resist Hot Corrosion and Oxidation(高温腐食及び酸化に耐性のある超合金)」、Advanced Materials and processes、3、1997、p27−30
【発明の開示】
【0007】
タービンブレード及びノズルガイドベーンなどの損傷した高温セクション構成部品の寸法及び幾何形状の両方を修復し、高温特性(耐環境特性及び耐クリープ性の両方など)を維持するために、先進超合金フィラー材料が構成部品の磨耗又は損傷部位上にレーザ堆積される。このようにして損傷した先進タービン超合金(方向性凝固及び単結晶鋳造)の構成部品は、優れた高温特性を備えてこれらの元の形状及び寸法に完全に補修され修復される。本発明のプロセスを用いて、航空宇宙分野及び地上用タービン業界の両方において高温セクションの先進タービン超合金(方向性凝固及び単結晶鋳造)の構成部品(タービンブレード、ベーン及びノズル)を補修することができる。
【0008】
本発明の実施形態に従って、単結晶超合金を溶接する方法が開示される。高出力エネルギー源を用いて、超合金からなるフィラーを予熱して完全に溶融し、且つ単結晶超合金からなる基材の表面の少なくとも一部に浅く溶融させる。フィラーは、基材表面の一部上に堆積され、基材上に中実クラッドを形成し、超合金溶接部をもたらす。この高出力エネルギー源はレーザである。
【0009】
別の実施形態によれば、単結晶超合金を溶接する方法は、処理すべき基材を準備する段階を含む。基材は単結晶超合金からなり、超合金からなるフィラーが提供される。フィラーは、高出力エネルギー源に曝され、高出力エネルギー源によってフィラーの予熱及び溶融が生じる。基材の表面の一部が、高出力エネルギー源に曝され、高出力エネルギー源による基材の表面の一部の狭い溶融が生じる。フィラーが、基材の溶融表面の一部上に堆積され、基材上に中実クラッドを形成して、超合金溶接部をもたらす。
【0010】
基材は、SC180、RENE N5及びN6、CMSX−2、CMSX−4及びCMSX−10、並びにPWA 1480及び1484からなる群の少なくとも1つから選択される。基材は、Ni、Co、Cr、Mo、W、Ta、Al、Ti、Re、Nb、Hf、C及びBからなる群の少なくとも1つから選択される元素を含む。
【0011】
フィラーは、HS−188、HASTELLOY X、INCO 713、INCO 738、INCO 939、MAR−M247、RENE80、C101及び改質MCrAlYからなる群の少なくとも1つから選択される。改質MCrAlYは、Pt、Pd、Re、Ta、Hf、Zr、Si、C及びBからなる群の少なくとも1つから選択される1つの元素で改質される。MCrAlYのMは、Ni、Co及びFe又はその組み合わせからなる群の少なくとも1つから選択される。フィラーは、Ni、Co、Fe、Cr、W、Mo、Al、Si、Nb、Ti、Ta、Zr、Re、Hf、C、B、Y及びLaからなる群の少なくとも1つから選択される元素を含む。
【0012】
フィラーは、高出力エネルギー源の同軸ノズルを介して供給される。フィラー及び基材の表面の一部は、不活性ガスで覆われ、基材の隣接部分に対する高出力エネルギー源のビームの急激な相対移動により中実クラッドを形成することができる。
【0013】
粉体の形態のフィラーは、粉体供給装置によって同軸ノズル内に供給される。粉体は、粉体供給装置によって毎分約1.5−20グラムの量で供給される。好ましくは、粉体は、粉体供給装置によって毎分約1.5−10グラムの量で供給される。或いは、フィラーは、線材又は線材と粉体との組み合わせを含む。
【0014】
高出力エネルギー源のビームの急激な相対移動は、部分的に溶融した基材の表面の隣接部分に対して、好ましくは毎分約5−22インチの速度で引き起こされる。好ましくは、高出力エネルギー源のビームの急激な相対移動は、部分的に溶融した基材の表面の隣接部分に対して、毎分約5−14インチの速度で引き起こされる。
【0015】
高出力エネルギー源はレーザを備える。レーザは、二酸化炭素、Nd:YAG、ダイオード及びファイバーレーザからなる群の少なくとも1つから選択される。該レーザは、約50−2500ワットの出力を有する。好ましくは、レーザは、50−1500ワットの出力を有する。レーザのレーザビームは、約0.02−0.1インチにデフォーカスされる。好ましくは、レーザのレーザビームは、0.04−0.06にデフォーカスされる。レーザは、約0.02−0.100インチの幅を有するレーザ溶接クラッドビードを生成する。好ましくは、レーザは、約0.04−0.06インチの幅を有するレーザ溶接クラッドビードを生成する。
【0016】
更に別の実施形態によれば、単結晶超合金基材の表面の一部を補修する方法が開示される。溶接された単結晶超合金が、この方法に従って調製される。表面欠陥を有する単結晶超合金基材と超合金フィラーとが準備される。フィラーをレーザ発生源に露光し、レーザ発生源によりフィラーを予熱及び溶融させる。基材の欠陥表面の一部をレーザ発生源に露光し、レーザ発生源による基材の欠陥表面の一部を溶融させる。フィラーが、基材の欠陥表面の一部上に堆積され、基材の欠陥表面の一部上に中実クラッドを形成し、基材の表面欠陥の超合金補修部をもたらす。
【0017】
フィラーは、レーザ発生源の同軸ノズルを介して供給される。フィラーと基材の欠陥表面の一部とを不活性ガスで覆い、基材の表面の隣接部分に対するレーザ発生源のビームの急激な相対移動によって中実クラッドを形成することができる。フィラーは、粉体の形態であり、粉体供給装置によって同軸ノズル内に供給される。
【0018】
別の実施形態によれば、単結晶超合金の表面をコーティングする方法が開示される。処理を行うために単結晶の表面の一部が選択され、先進超合金フィラーが準備される。フィラーがレーザ発生源に露光され、レーザ発生源によりフィラーを予熱及び溶融させ、基材の表面の一部をレーザ発生源に露光し、レーザ発生源により基材の表面の一部を溶融させる。フィラーが基材の表面の一部上に堆積されて中実クラッドを形成し、基材の表面のエピタキシャルコーティングをもたらす。
【0019】
フィラーが、レーザ発生源の同軸ノズルを介して供給され、フィラーと基材の表面の一部を不活性ガスで覆う。基材の表面の隣接部分に対してレーザ発生源のビームの急激な相対移動により中実クラッドを形成することができる。粉体の形態のフィラーは、粉体供給装置によって同軸ノズル内に供給される。
【0020】
更に別の実施形態によれば、単結晶超合金基材をレーザ溶接する方法が開示される。単結晶超合金からなる基材は、SC180、RENE N5及びN6、CMSX−2、CMSX−4及びCMSX−10、並びにPWA 1480及び1484からなる群の少なくとも1つから選択される。基材は、Ni、Co、Cr、Mo、W、Ta、Al、Ti、Re、Nb、Hf、C及びBからなる群の少なくとも1つから選択される元素を含む。
【0021】
フィラーは、粉体及び線材からなる群の少なくとも1つから選択される。フィラーは、HS−188、HASTELLOY X、INCO 713、INCO 738、INCO 939、MAR−M247、RENE80、C101及び改質MCrAlYからなる群の少なくとも1つから選択される先進超合金フィラー材料からなる。MCrAlYは、Pt、Pd、Re、Ta、Hf、Zr、Si、C及びBからなる群の少なくとも1つから選択される少なくとも1つの元素で改質される。MCrAlYのMは、Ni、Co及びFe又はその組合せからなる群の少なくとも1つから選択される。
【0022】
フィラーをレーザ発生源に露光し、レーザ発生源によりフィラーを予熱及び溶融させる。レーザ発生源は、二酸化炭素、Nd:YAG、ダイオード及びファイバーレーザからなる群の少なくとも1つから選択される。フィラーは、Ni、Co、Fe、Cr、W、Mo、Al、Si、Nb、Ti、Ta、Zr、Re、Hf、C、B、Y及びLaからなる群の少なくとも1つから選択される元素を含む。レーザ発生源は、約50−1500ワットの出力を有し、約0.04−0.06インチにデフォーカスしたレーザビームを含む。
【0023】
基材の表面の一部をレーザ発生源に露光し、レーザ発生源により基材の表面の一部を予熱及び溶融させる。予熱及び溶融したフィラーは、基材の溶融表面の一部上に堆積され、基材の表面の一部上に約0.04−0.06インチの幅を有するエピタキシャルクラッドビードを形成する。レーザ発生源によるフィラーの予熱及び溶融は、レーザ発生源の同軸ノズルを介してフィラーを供給することによって達成される。粉体は、粉体供給装置によって毎分約1.5から10グラムの量で供給され、予熱及び溶融したフィラーと溶融基材の表面の一部とが、He及びArからなる群の少なくとも1つから選択される不活性ガスで覆われる。部分的に溶融した基材の表面の隣接部分に対して、毎分約5から約14インチの速度でレーザ発生源のビームの急激な相対移動により、エピタキシャル超合金溶接部が得られる。
【0024】
この方法に従ってレーザ溶接された単結晶超合金が調製される。
【0025】
本発明の前述及び他の目的、特徴、及び利点は、本発明の好ましい実施形態に関する以下のより詳細な説明及び図面から明らかとなるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
ガンマプライムが析出強化された高強度ニッケル基超合金は、一般的には1600°F以上の温度でも高強度を有するものとされている。一般にこれらの超合金は、1200°Fで少なくとも125Ksi及び1600°Fで少なくとも100Ksiの極限引張強度、1200°Fで少なくとも100Ksi及び1600°Fで少なくとも70Ksiの0.2%オフセットの降伏強度、並びに1600°Fで少なくとも25Ksiの破断強度(1000時間)を有する(SUPERALLOYS II、Syms他編、John Wiley & Sons、1987、p581−586を参照)。
【0027】
表1は、幾つかの第1世代単結晶超合金の公称組成を示し、表2は、本発明で使用することができる幾つかの第2世代単結晶超合金の公称組成を示す。より具体的には、例えば、PWA1480(第1世代超合金)は、8.70kg/dmの密度と、1060°Fの140MPaでの破断まで100時間を基準とした温度性能とを有する。これに対し、PWA1484(第2世代超合金)は、8.95Kg/dmの密度と、1100°Fの140MPaで破断まで100時間を基準とした温度性能を有する(G.L.Erickson、「Superalloys Resist Hot Corrosion and Oxidation(高温腐食及び酸化に耐性のある超合金)」、Advanced Materials and processes、、1997、p27−30を参照)。
【0028】
【表1】

【0029】
【表2】

【0030】
図1は、本発明に好適な自動レーザ溶接治具のブロック図である。本方法は、レーザ溶融法、超合金粉体又は超合金線材、及びターゲット単結晶超合金基材のコンピュータ数値制御を利用する。レーザ制御部12は、レーザ14を駆動してレーザビーム16を生成させ、該ビームがミラー18によって反射されてレーザ集光レンズ20に入り、レーザビーム16の集束及び単結晶超合金基材36の表面の一部の照射が生じる。少なくとも1つのスクリュー式粉体供給装置22は、アルゴン又はヘリウムのような加圧不活性ガス(図示せず)で超合金粉体ストリーム(図示せず)を多数の送出管24を介して粉体スプリッタ26に移送する。超合金粉体ストリームは、より小さい超合金粉体ストリームに分割され、これらが多数の接続管28を介して同軸レーザノズル30に送出され、円錐形状の超合金粉体ストリームを形成する。不活性ガスシールド(図示せず)が、開口部32を介して同軸ノズル30に送られる。不活性ガス・シールドは、溶接の間に単結晶超合金基材36の表面の一部上に導かれる。レーザビーム16は、超合金粉体ストリームと相互作用し、その超合金粉体ストリームを予熱し溶融させる。同時に、レーザビーム16は、単結晶超合金基材36の表面の一部を溶融させる。予熱され溶融した超合金粉体ストリームが、単結晶超合金基材36の表面の溶融部分上に送られ、単結晶超合金基材36の表面上に超合金クラッド34が形成されて溶接部が生じる。コンピュータ数値制御部38が、単結晶超合金基材36の配置及びレーザ位置決め制御のための視覚システム40により支援される基材位置決めテーブル42の移動を駆動する。超合金線材が、フィラーの異なる供給機構を提供することによって超合金粉体の代わりに使用することができる。可搬式レーザ溶接トーチも利用できる。
【0031】
本発明を実施するのに使用可能なレーザの種類には、CO(二酸化炭素)、Nd:YAG、ダイオード及びファイバーレーザがある。レーザ出力は、約50から約2500ワット、より好ましくは約50−1500ワットとすることができる。粉体供給量は、毎分約1.5から約20グラム、より好ましくは毎分約1.5から約10グラムである。レーザビーム16に対する基材位置決めテーブル42の相対移動の移動速度は、毎分約5から約22インチ、より好ましくは毎分約5−14インチである。デフォーカスレーザビーム16の寸法は、約0.02から約0.1インチ、より好ましくは約0.04から約0.06インチである。レーザ溶接ビード幅は、約0.02から約0.100インチ、より好ましくは約0.04−0.06インチである。多パスを用いて、材料の厚みを増やすことができる。
【0032】
本発明を実施するのに好適であり、粉体及び線材の形態で市販されている幾つかの超合金フィラー材料には、HS−188、HASTELLOY X、INCO 713、INCO 738、INCO 939、MAR−M247、RENE80、C101及び改質MCrAlY(Pt、Pd、Re、Ta、Hf、Zr、Si、C及びBの1つ又は組み合わせを用いて改質され、式中MはNi、Co及びFeからなる群から選択される)がある。本発明を実施するのに好適であり、レーザ溶接可能な幾つかの単結晶ベースの超合金には、SC180、RENE N5及びN6、CMSX−2、CMSX−4及びCMSX−10、並びにPWA1480及び1484が含まれる。
【0033】
図2を参照すると、50倍の断面光学顕微鏡写真は、CMSX−4単結晶超合金基材上のU溝内部のINCO738超合金フィラーのレーザ溶接の結果を示している。これは、先進単結晶超合金エアフォイルの亀裂回復補修をシミュレートし、図2は欠陥のない溶接部を示している。
【0034】
図3は、CMSX−4単結晶超合金基材の表面の一部上に堆積した先進超合金フィラーの50倍断面光学顕微鏡写真である。これは、フィラーがCMSX−4単結晶超合金基材の表面上に堆積される先端及びプラットホームの補修をシミュレートしており、図3は、レーザ溶接された先進超合金とCMSX−4単結晶超合金との間の欠陥のない溶接部を示している。
【0035】
図4は、レーザ溶接した超合金フィラーとCMSX−4単結晶超合金基材との間の溶融線での図3の光学顕微鏡写真の一部の200倍断面光学顕微鏡写真である。図4は、エピタキシャル成長微細構造を示している。
【0036】
本明細書に開示されたレーザ補修方法は、限定ではないが、エアフォイル上の亀裂回復補修、鋳造欠陥補修、先端、先端ナイフシール、及びプラットホームの補修、及び前縁及び/又は後縁補修を含む、幾つかの用途で有利に使用することができる。
【0037】
要約すると、レーザ溶接による単結晶超合金の補修の方法及びその生成物を開示してきた。レーザプロセスは、可搬式溶接トーチ又は自動溶接システムによって仕上げることができる。レーザの種類には、CO、Nd:YAG、ダイオード及びファイバーレーザが含まれる。レーザプロセスを動作するためのパラメータが開示されている。線材又は粉体超合金の何れかとすることができるフィラー材料を用いて、単結晶超合金基材の少なくとも一部を溶接する。
【0038】
本発明の好ましい実施形態を参照しながら本発明を詳細に図示し説明してきたが、本発明の概念及び範囲を逸脱することなく形態及び詳細における前述並びに他の変更を行い得ることは、当業者には理解されるであろう。例えば、先進超合金は、溶接用フィラー及びガスタービンハードウェア材料用の両方に使用できる。このレーザ溶接プロセスを用いて、様々な種類のニア・ネット・シェープを形成するために多パスを用いることによって、ガスタービン構成部品の寸法を修復することができる。このレーザ溶接プロセスを用いて、単結晶超合金基材に耐環境コーティングを施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明による超合金フィラーを用いて単結晶基材を溶接するのに使用される自動レーザ溶接システムのブロック図及び側面図である。
【図2】CMSX−4単結晶超合金基材の補修におけるU溝内部にINCO738超合金をレーザ溶接した結果の50倍断面光学顕微鏡写真である。
【図3】CMSX−4単結晶超合金基材の表面の一部上に堆積した先進超合金フィラーの50倍断面光学顕微鏡写真である。
【図4】レーザ溶接した超合金フィラーとCMSX単結晶超合金基材との間の溶融線の図3の光学顕微鏡写真の一部の200倍断面光学顕微鏡写真である。
【符号の説明】
【0040】
12 レーザ制御部
14 レーザ
16 レーザビーム
18 ミラー
20 レーザ集光レンズ
22 スクリュー式粉体供給装置
24 送出管
26 粉体スプリッタ
28 接続管
30 同軸レーザノズル
32 開口部
34 超合金クラッド
36 単結晶超合金基材
38 コンピュータ数値制御部
40 視覚システム
42 基材位置決めテーブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単結晶超合金を溶接する方法であって、
高出力エネルギー源を使用して、超合金からなるフィラーの予熱及び溶融の両方を行い、単結晶超合金からなる基材の表面の少なくとも一部を溶融させる段階と、
前記フィラーを前記基材の表面の一部上に堆積して前記基材上に中実クラッドを形成し超合金溶接部をもたらす段階と、
を含む方法。
【請求項2】
単結晶超合金を溶接する方法であって、
単結晶超合金からなる、処理されるべき基材を準備する段階と、
超合金からなるフィラーを準備し、前記フィラーを高出力エネルギー源に曝して、前記高出力エネルギー源により前記フィラーを予熱及び溶融させる段階と、
前記基材の表面の一部を前記高出力エネルギー源に曝し、前記高出力エネルギー源により前記基材の表面の一部を部分溶融させる段階と、
前記フィラーを前記基材の溶融表面の一部上に堆積し、前記基材上に中実クラッドを形成し超合金溶接部をもたらす段階と、
を含む方法。
【請求項3】
前記基材は、SC180、RENE N5及びN6、CMSX−2、CMSX−4及びCMSX−10、並びにPWA1480及び1484からなる群の少なくとも1つから選択されることを特徴とする請求項2に記載の単結晶超合金を溶接する方法。
【請求項4】
前記基材は、Ni、Co、Cr、Mo、W、Ta、Al、Ti、Re、Nb、Hf、C及びBからなる群の少なくとも1つから選択される元素を含むことを特徴とする請求項2に記載の単結晶超合金を溶接する方法。
【請求項5】
前記フィラーは、HS−188、HASTELLOY X、INCO 713、INCO 738、INCO 939、MAR−M247、RENE80、C101及び改質MCrAlYからなる群の少なくとも1つから選択されることを特徴とする請求項2に記載の単結晶超合金を溶接する方法。
【請求項6】
前記フィラーを前記高出力エネルギー源の同軸ノズルを介して供給する段階と、
前記フィラー及び前記基材の表面の一部を不活性ガスで覆う段階と、
前記基材表面の隣接部分に対して前記高出力エネルギー源のビームの急激な相対移動を生じさせて、中実クラッドを形成可能にする段階と、
更に含む請求項2に記載の単結晶超合金を溶接する方法。
【請求項7】
前記フィラーを粉体の形態で準備する段階と、
前記フィラーの粉体を前記同軸ノズル内に供給する粉体供給装置を提供する段階と、
を更に含み、
前記粉体が、毎分約1.5から約20グラムの量で前記粉体供給装置によって供給され、
前記レーザが、二酸化炭素、Nd:YAG、ダイオード及びファイバーレーザからなる群の少なくとも1つから選択され、前記レーザが、約50から約2500ワットの出力を有することを特徴とする請求項6に記載の単結晶超合金を溶接する方法。
【請求項8】
単結晶超合金基材の表面の一部を補修する方法であって、
表面欠陥を有する単結晶超合金基材を準備する段階と、
超合金フィラーを準備する段階と、
前記フィラーをレーザ発生源に露光して前記レーザ発生源により前記フィラーを予熱及び溶融させ、前記基材の欠陥表面の一部を前記レーザ発生源に露光して前記レーザ発生源による前記基材の欠陥表面の一部を溶融させる段階と、
前記フィラーを前記基材の欠陥表面の一部上に堆積させて、前記基材の欠陥表面の一部上に中実クラッドを形成し、前記基材の表面欠陥の超合金補修部をもたらす段階と、
を含む方法。
【請求項9】
単結晶超合金基材の表面をコーティングする方法であって、
処理すべき単結晶超合金基材の表面の一部を選択する段階と、
先進超合金フィラーを準備する段階と、
前記フィラーをレーザ発生源に露光して、前記レーザ発生源により前記フィラーを予熱及び溶融させる段階と、
前記基材の表面の一部を前記レーザ発生源に露光して前記レーザ発生源により前記基材の表面の一部を溶融させる段階と、
前記フィラーを前記基材の表面の一部上に堆積させて中実クラッドを形成し、前記基材の表面上に単結晶超合金コーティングをもたらす段階と、
を含む方法。
【請求項10】
単結晶超合金基材をレーザ溶接する方法であって、
SC180、RENE N5及びN6、CMSX−2、CMSX−4及びCMSX−10、並びにPWA1480及び1484からなる群の少なくとも1つから選択される単結晶超合金からなる基材を準備する段階と、
Ni、Co、Cr、Mo、W、Ta、Al、Ti、Re、Nb、Hf、C及びBからなる群から選択される少なくとも1つの元素を含む前記基材を準備する段階と、
粉体及び線材からなる群の少なくとも1つから選択され、且つHS−188、HASTELLOY X、INCO 713、INCO 738、INCO 939、MAR−M247、RENE80、C101及び改質MCrAlYからなる群の少なくとも1つから選択される超合金からなり、前記MCrAlYがPt、Pd、Re、Ta、Hf、Zr、Si、C及びBからなる群の少なくとも1つから選択される少なくとも1つの元素で改質され、前記MはNi、Co及びFe並びにこれらの組み合わせからなる群の少なくとも1つから選択される、フィラーを準備する段階と、
前記フィラーを二酸化炭素、Nd:YAG、ダイオード及びファイバーレーザからなる群の少なくとも1つから選択されたレーザ発生源に露光して、前記レーザ発生源により前記フィラーを予熱及び溶融させる段階であって、前記フィラーが、Ni、Co、Fe、Cr、W、Mo、Al、Si、Nb、Ti、Ta、Zr、Re、Hf、C、B、Y及びLaからなる群の少なくとも1つから選択される元素を含み、前記レーザ発生源が約50−1500ワットの出力を有し、前記レーザ供給源が約0.04から約0.06インチにデフォーカスされたレーザビームを含む段階と、
前記基材の表面の一部を前記レーザ発生源に露光して前記基材の表面の一部を溶融させる段階と、
前記予熱され溶融したフィラーを前記基材の溶融表面の一部上に堆積させて、前記基材の表面の一部上に約0.04から約0.06インチの幅を有するエピタキシャル構造を備えたレーザ溶接クラッドビードを形成する段階と、
前記レーザ供給源の同軸ノズルを介して前記フィラーを供給することによって前記レーザ供給源による前記フィラーの前記予熱及び溶融を行う段階と、
粉体供給装置を準備して、該粉体供給装置によって前記粉体が毎分1.5−10グラムの量で前記同軸ノズル内に供給され、前記予熱され溶融したフィラーと前記溶融した基材の表面の一部とをHe及びArからなる群の少なくとも1つから選択される不活性ガスで覆う段階と、
前記溶融基材の表面の隣接部分に対して約5−14インチの速度で前記レーザ発生源のビームの急激な相対移動を生じさせて、エピタキシャルレーザ溶接部を形成する段階と、
を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−512964(P2007−512964A)
【公表日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−542731(P2006−542731)
【出願日】平成16年12月3日(2004.12.3)
【国際出願番号】PCT/US2004/040295
【国際公開番号】WO2005/077589
【国際公開日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】