説明

レーザ発振装置

【解決手段】 レーザ治療装置1は、励起用光源14およびレーザ媒質13とを備えたレーザ発振器3と、放電により励起用光源に給電するコンデンサ5と、冷却液を循環させて上記レーザ発振器を冷却する冷却手段4と、該冷却手段の冷却液を加温するヒータ6と、上記コンデンサおよびヒータに給電する電源7と、上記ヒータを電源又はコンデンサに通電させるヒータ用スイッチ手段S2とを備えている。
上記ヒータ用スイッチ手段によって上記電源がヒータに給電すると、該ヒータにより上記冷却液を加温することができ、また上記コンデンサがヒータに給電すると、該コンデンサの電荷をヒータにより放電することができる。
【効果】 装置を簡素化できると共に、安定してレーザ光を照射することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレーザ発振装置に関し、詳しくはレーザ発振器の励起用光源に給電するコンデンサと、上記レーザ発振器を冷却する冷却手段とを備えたレーザ発振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、励起用光源およびレーザ媒質を備えたレーザ発振器と、放電により励起用光源に給電するコンデンサとを有するレーザ発振装置が知られ、上記コンデンサから給電された励起用光源が励起光を照射することで、上記レーザ媒質を励起し、レーザ光が照射されるようになっている(特許文献1)。
また、励起用光源およびレーザ媒質を備えたレーザ発振器と、冷却液を循環させて該レーザ発振器を冷却する冷却手段とを備えたレーザ発振装置も知られている(特許文献2)。
さらに、上記コンデンサに蓄積された電荷を放電するため、回路に抵抗を設けてコンデンサと該抵抗とを通電させ、放電を行う技術が知られている(特許文献3)。
【特許文献1】特開2000−14679号公報
【特許文献2】特開2002−45371号公報
【特許文献3】特開2001−320830号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1のレーザ発振装置の回路に、特許文献3のような抵抗を設けてコンデンサの電荷を放電しようとすると、当該抵抗のほかにも、放電の際における抵抗の過熱を抑制するための専用回路が必要となるため、回路が大型化するという問題があった。
また、特許文献2のレーザ発振装置において、上記冷却手段が循環させる冷却液の温度が低すぎると、レーザ発振器が過度に冷却されてしまい、レーザ光の発振効率が変化して安定したレーザ光を得られないという問題もあった。
このような問題に鑑み、本発明は装置を簡素化できると共に、安定したレーザ光を照射することの可能なレーザ発振装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
すなわち、請求項1の発明は、励起用光源およびレーザ媒質を備えたレーザ発振器と、放電により励起用光源に給電するコンデンサと、冷却液を循環させて上記レーザ発振器を冷却する冷却手段とを備えたレーザ発振装置において、
上記冷却手段の冷却液を加温するヒータと、上記コンデンサおよびヒータに給電する電源と、上記ヒータを電源又はコンデンサに通電させるスイッチ手段とを備え、
上記スイッチ手段は、上記ヒータと電源とを通電させた際には該ヒータにより上記冷却液を加温させ、また上記ヒータとコンデンサとを通電させた際には該コンデンサの電荷をヒータにより放電させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0005】
上記発明によれば、上記ヒータと電源とを通電させることで、上記冷却液を加温して冷却液をレーザ光の照射に適した温度とすることができ、安定したレーザ光を照射することができる。
さらに、上記ヒータとコンデンサとを通電させることで、コンデンサに蓄積された電荷を上記ヒータにより放電することができ、放電のための抵抗やこれに付随する回路が不要となるので、装置全体を簡素化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、図示実施例について説明すると、図1はレーザ発振装置としてのレーザ治療装置1を示し、使用者が保持可能なハンドピース2からレーザ光を照射して、患者の皮膚等の治療を行うものとなっている。
上記レーザ治療装置1は、先端からレーザ光を照射するハンドピース2と、ハンドピース2へとレーザ光を照射するレーザ発振器3と、レーザ発振器3を冷却する冷却手段4と、放電によりレーザ発振器3に給電するコンデンサ5と、上記冷却手段4の冷却液を加温するヒータ6と、上記コンデンサ5およびヒータ6に給電する電源7と、レーザ治療装置1を制御する制御手段8とから構成されている。
上記ハンドピース2とレーザ発振器3とは、光ファイバやマニュピレータ等の光を伝搬する導光手段9によって接続され、使用者はハンドピース2を保持して任意の位置にレーザ光を照射することが可能となっている。
【0007】
上記レーザ発振器3は、共振器を構成するフロントミラー11およびリヤミラー12と、該フロントミラー11およびリヤミラー12の間に設けられたレーザ媒質13と、レーザ媒質13に励起光を照射する励起用光源14と、上記レーザ媒質13および励起用光源14を収納するキャビティ15とから構成されている。
上記リヤミラー12はレーザ光を全反射させ、フロントミラー11は所定出力に達しないレーザ光をリヤミラー12へと反射させるとともに、所定出力に達したレーザ光を透過させて、レーザ光をハンドピース2へと出射するようになっている。
上記レーザ媒質13は固体レーザからなるレーザロッドとなっており、上記励起用光源14は該レーザ媒質13を励起する励起光を照射するフラッシュランプとなっている。レーザ媒質13を励起光によって励起すると、レーザ光がフロントミラー11とリヤミラー12との間で反射を繰り返すようになっている。
キャビティ15には冷却液の流通路が形成されており、上記冷却手段4から送液された冷却液が循環して上記レーザ媒質13や励起用光源14を冷却するようになっている。
【0008】
冷却手段4は、冷却液を収容する冷却液タンク21と、該冷却液タンク21と上記レーザ発振器3のキャビティ15との間に配設された配管22と、上記配管22に設けられたポンプ23およびチラー24とから構成されている。
上記冷却液タンク21には冷却液の温度を測定する温度測定手段25が設けられており、この温度測定手段25による測定温度は上記制御手段8に受信されるようになっている。
上記ポンプ23は冷却液タンク21の冷却液をレーザ発振器3へ送液して、冷却液を冷却液タンク21とレーザ発振器3のキャビティ15との間で循環させるようになっており、レーザ発振器3を冷却して加温された冷却液は、上記チラー24を通過する際に冷却されるようになっている。
【0009】
上記電源7に対し、上記レーザ発振器3の励起用光源14と、上記コンデンサ5と、上記ヒータ6とは並列的に接続されており、上記励起用光源14に隣接した位置には、コンデンサ5と励起用光源14との通電をON/OFFする励起用スイッチ手段S1が設けられ、上記ヒータ6に隣接した位置には、電源7およびコンデンサ5とヒータ6との通電をON/OFFするヒータ用スイッチ手段S2が設けられている。
上記コンデンサ5は上記電源7から給電されると電荷を蓄積し、上記励起用スイッチ手段S1をONにするとコンデンサ5と励起用光源14とが通電し、コンデンサ5の放電により励起用光源14が励起光をレーザ媒質13へと照射するようになっている。
上記ヒータ6は、上記冷却手段4の冷却液タンク21に設けられており、上記ヒータ用スイッチ手段S2がONにされると、上記コンデンサ5又は電源7から給電されて冷却液タンク21内の冷却液を加温するようになっている。
具体的には、ヒータ用スイッチ手段S2がONにされると、上記電源7が起電力を発生させている場合には電源7がヒータ6へと給電し、電源7が起電力を発生させておらず、かつコンデンサ5に電荷が蓄積されている場合には、コンデンサ5がヒータ6へと給電するようになっている。
【0010】
上記制御手段8には、使用者が操作する操作パネル31と、使用者が足で操作するフットスイッチ32とが設けられており、上記操作パネル31には図示しないモニタのほか、レーザ治療装置1を起動してスタンバイ状態とするためのメインスイッチ31aと、上記スタンバイ状態からレーザ光を照射可能なレディ状態にするためのレディスイッチ31bとを備えている。
上記フットスイッチ32は、レーザ治療装置1がレディ状態となったときに操作可能となっており、該レディ状態のときに使用者がフットスイッチ32をONにすることで、上記ハンドピース2の先端からレーザ光が照射されるようになっている。
【0011】
上記構成を有するレーザ治療装置1の動作について説明する。まず上記電源7の入れられていないレーザ治療装置1の停止状態では、励起用スイッチ手段S1はOFFに、ヒータ用スイッチ手段S2はONにそれぞれなっている。
この状態から、使用者が上記操作パネル31のメインスイッチ31aをONにすると、上記電源7が起電力を発生させ、制御手段8は上記冷却手段4のポンプ23を作動させ、冷却液をレーザ発振器3と冷却液タンク21との間で循環させる。
また、上記冷却液タンク21に設けた温度測定手段25が冷却液の温度を測定してこれを制御手段8に送信し、上記制御手段8では予め登録された冷却液の設定温度(例えば、20℃±1℃)と測定温度とを比較する。
そして、温度測定手段25が測定した冷却液の温度が上記設定温度に達している場合、制御手段8はヒータ用スイッチ手段S2をOFFにしてコンデンサ5を充電し、レーザ治療装置1を直ちにスタンバイ状態とし、操作パネル31にその旨の表示をする。
他方、冷却液の温度が設定温度に達していない場合、この状態で上記レーザ発振器3からレーザ光を照射してしまうと、冷却液によってレーザ発振器3が過度に冷却されていることから、レーザ光の発振効率が変化してしまうおそれがある。
そこで、冷却液の温度が設定温度に達していない場合には、制御手段8はレーザ治療装置1を直ちに上記スタンバイ状態とはせず、ヒータ用スイッチ手段S2をONにした状態を維持する。
その結果、上記電源7によって給電されたヒータ6は冷却液を加温し、冷却液が上記設定温度に達したら、制御手段8は上記ヒータ用スイッチ手段S2をOFFにしてコンデンサ5を充電し、上記スタンバイ状態へと移行するようになっている。
このとき、ヒータ6は電源7から給電される一方、電源7はコンデンサ5にも給電しているが、スタンバイ状態となるまでは上記ヒータ用スイッチ手段S2がONにされていることから、コンデンサ5への電荷の蓄積はない。
【0012】
このようにして、レーザ治療装置1がスタンバイ状態になると、上記ヒータ用スイッチ手段S2がOFFにされ、上記コンデンサ5には上記電源7から給電されて充電が行われて、コンデンサ5には所定の電荷が蓄積された状態となる。
このスタンバイ状態となるまでの間、上記操作パネル31のレディスイッチ31bを操作できないようになっており、このスタンバイ状態からレディスイッチ31bをONにすることで、使用者ははじめて上記フットスイッチ32を操作することが可能となっている。
そして、上記レディ状態から使用者が上記フットスイッチ32をONにすると、制御手段8はヒータ用スイッチ手段S2をOFFとしたまま、上記励起用スイッチ手段S1をONとし、これによりコンデンサ5が放電して、レーザ発振器3の励起用光源14へと給電し、励起用光源14が励起光を照射する。
励起光が照射されると、上記レーザ媒質13が励起されてレーザ光を発生させ、このレーザ光は上記フロントミラー11およびリヤミラー12との間で反射を繰り返すとともに、所定出力に達したレーザ光はフロントミラー11を透過し、上記ハンドピース2の先端から患者の患部へと照射される。
このとき、コンデンサ5に蓄積された電荷が放出されるが、励起用スイッチ手段S1は直ちにOFFとされ、電源7からコンデンサ5へと給電されることで再び充電が行われる。
ここで、フットスイッチ32を続けて操作すると、励起用スイッチ手段S1が断続的にON・OFFされ、レーザ光をパルス照射することが可能となっている。
そして、操作者が所定時間内にフットスイッチ32を操作すれば、制御手段8はレディ状態を維持するようになっており、使用者はフットスイッチ32を操作するたびに上記レディスイッチ31bを操作する必要が無いようにされている。
【0013】
レーザ治療装置1の使用を終了する場合には、メインスイッチ31aをOFFにするようになっており、これにより電源7による起電力が停止されると共に、ヒータ用スイッチ手段S2はONに切り替わるようになっている。
このとき、上記励起用スイッチ手段S1はOFFとなっているため、コンデンサ5とヒータ6とが通電し、これによりコンデンサ5に蓄積された電荷はヒータ6へ放電される。
【0014】
以上のように、本実施例によるレーザ治療装置1によれば、上記ヒータ用スイッチ手段S2によって上記ヒータ6と電源7とを通電させ、上記ヒータ6により上記冷却液を所定の設定温度まで加温するので、上記レーザ発振器3より照射されるレーザ光を安定させることができる。
また、この冷却液の加温をレーザ治療装置1の運転開始の際に行うことで、例えばレーザ治療装置1が気温の低い環境に設置されていたとしても、これを速やかに使用可能な状態とすることができる。
次に、本実施例によるレーザ治療装置1によれば、運転終了の際に上記ヒータ6とコンデンサ5とを通電させ、コンデンサ5の電荷をヒータ6により放電させることから、放電のための抵抗や該抵抗の過熱を抑制するための専用回路が不要となり、レーザ治療装置1の構成を簡略化しコンパクトにすることができる。
また、コンデンサ5とヒータ6とを通電させて放電することで、レーザ治療装置1の停止時にコンデンサ5に電荷が蓄積されたままとなることはなく安全であり、メンテナンス時における不慮の事故を防止することも可能となっている。
そして、上記電源7は上記コンデンサ5およびヒータ6に給電する構成となっていることから、上記ヒータ6のための電源7を省略することができ、レーザ治療装置1を小型化することができ、かつレーザ治療装置1の電源定格を変更しなくてよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施例に係るレーザ治療装置の配置図。
【符号の説明】
【0016】
1 レーザ治療装置 3 レーザ発振器
4 冷却手段 5 コンデンサ
6 ヒータ 7 電源
8 制御手段 13 レーザ媒質
14 励起用光源 25 温度測定手段
S2 ヒータ用スイッチ手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
励起用光源およびレーザ媒質を備えたレーザ発振器と、放電により励起用光源に給電するコンデンサと、冷却液を循環させて上記レーザ発振器を冷却する冷却手段とを備えたレーザ発振装置において、
上記冷却手段の冷却液を加温するヒータと、上記コンデンサおよびヒータに給電する電源と、上記ヒータを電源又はコンデンサに通電させるスイッチ手段とを備え、
上記スイッチ手段は、上記ヒータと電源とを通電させた際には該ヒータにより上記冷却液を加温させ、また上記ヒータとコンデンサとを通電させた際には該コンデンサの電荷をヒータにより放電させることを特徴とするレーザ発振装置。
【請求項2】
レーザ発振装置の運転終了の際に、上記スイッチ手段によりヒータとコンデンサとを通電させて、該コンデンサの荷電をヒータにより放電させることを特徴とする請求項1に記載のレーザ発振装置。
【請求項3】
上記冷却手段に冷却液の温度を測定する温度測定手段を設け、
レーザ発振装置の運転開始の際に、上記温度測定手段により冷却液の温度を測定し、上記冷却液が所定温度に達していない場合には、上記ヒータにより上記冷却液を加温することを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載のレーザ発振装置。

【図1】
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【公開番号】特開2010−56153(P2010−56153A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−217020(P2008−217020)
【出願日】平成20年8月26日(2008.8.26)
【出願人】(000253019)澁谷工業株式会社 (503)
【Fターム(参考)】