レーザ装置
【課題】レーザ光出力ポートを構成する複数の光出射端それぞれからのレーザ光供給を可能にするレーザ装置に於いて、全体として低消費電力化と低非線形化を実現する。
【解決手段】種光源41と、出射端70a,70bと、中間光増幅器AMP0と、光分岐器80と、最終段光増幅器AMP11,AMP12を備え、光出射端70a,70bの数は種光源41の数よりも多く、最終段光増幅器AMP11,AMP12と光出射端70a,70bとは互いに一対一に対応し、光分岐器80は、種光源41に対応した入力ポートと光出射端70a,70bそれぞれに対応した複数の出力ポートを有し、中間光増幅器AMP0は種光源41と光分岐器80との間の光路上に配置される一方、最終段光増幅器AMP11,AMP12は光出射端70a,70bと光分岐器80との間の光路上にそれぞれ配置される。
【解決手段】種光源41と、出射端70a,70bと、中間光増幅器AMP0と、光分岐器80と、最終段光増幅器AMP11,AMP12を備え、光出射端70a,70bの数は種光源41の数よりも多く、最終段光増幅器AMP11,AMP12と光出射端70a,70bとは互いに一対一に対応し、光分岐器80は、種光源41に対応した入力ポートと光出射端70a,70bそれぞれに対応した複数の出力ポートを有し、中間光増幅器AMP0は種光源41と光分岐器80との間の光路上に配置される一方、最終段光増幅器AMP11,AMP12は光出射端70a,70bと光分岐器80との間の光路上にそれぞれ配置される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光出力ポートとして複数の光出射端を備えたレーザ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、パルスレーザ光(レーザ光を所定周期でパルス化しながら繰り返し出力することで得られる)を用いた加工技術が注目されており、加工用や医療用等の分野において高出力レーザ装置の需要が高まっている。各種レーザ装置の中でも特に注目されているレーザ装置として、光ファイバレーザが挙げられる。この光ファイバレーザは、Yb(イットリビウム)、Er(エルビウム)、Tm(ツリウム)等の希土類元素がコアに添加された増幅用光ファイバを光増幅媒体として採用している。この増幅用光ファイバ内に励起光が供給されると、増幅用光ファイバ内を伝搬する種光が増幅される。これにより、増幅用光ファイバからは、高パワーの増幅光を出力するか、あるいは、共振器構造を利用してレーザ発振させることによりレーザ光が出力される。光ファイバレーザの利点としては、例えば、レーザ光が光ファイバ内で閉じ込められていることからその扱いが容易である点や、熱放射性が良いことから大規模な冷却設備を必要とすることがない点などが挙げられる。
【0003】
上述のように光ファイバレーザには、希土類元素添加光ファイバが適用されており、添加される希土類の中でもYbの変換効率が高いことから、特に、Yb添加光ファイバが高パワー出力用の増幅用光ファイバとして広く利用されている。Ybも他の希土類元素と同じく、励起光を用いて励起される。一方、増幅用光ファイバ内で吸収しきれなかった励起光は増幅用光ファイバの他端から出射される。
【0004】
光ファイバレーザの構成として、例えば、両端にファイバブラッググレーティング(FBG:Fiber Bragg Grating)や、反射ミラーなどを利用した共振器構造が採用されている場合、共振器内に光スイッチや音響光学変調器(AOM:Acoustic Optical Modulator)を配置することでパルス変調を行っている。また、特許文献1に記載されたようなMOPA(Master Oscillator Power Amplifier)型の光ファイバレーザは、被増幅光を出力する種光源(発光素子)を直接変調あるいは外部変調することでパルス変調を行い、得られた光パルスを増幅することで高パワー出力光を得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−042981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発明者らは、従来のレーザ装置について検討した結果、以下のような課題を発見した。すなわち、従来のレーザ装置を利用したレーザ加工では、レーザ光出力ポートとして複数の光出射端からのレーザ光供給を実現する場合、第1に、レーザ光出力ポートとして1つの光出射端を有するサブレーザ装置を数台並べる方法、第2に、レーザ光出力ポートとして複数の光出射端を用意し、最終段の光増幅器で増幅して得られた加工用レーザ光をミラーなどの光学素子を用いて分岐することにより、光出射端それぞれに分岐されたレーザ光を供給する方法が採用されてきた。
【0007】
しかしながら、上記第1の方法では、パルスレーザ光を利用した加工の場合、レーザ装置を構成する複数のサブレーザ装置、特に各サブレーザ装置の光出射端間において、それぞれ出射されるレーザ光(光パルス)の位相差が発生・増大してしまうおそれがある。なお、光パルスの位相差は、発振器として機能する各サブレーザ装置自体のパルス動作に起因して生じるものである。加えて、複数のサブレーザ装置を並列配置することで構成されたレーザ装置では、その占有空間が拡大してしまう。また、出力ポート数に応じて、装置台数も増加し、消費電力が増大する。一方、上記第2の方法では、レーザ光出力ポートに到達する直前に加工用レーザ光を分岐するため、最終段光増幅器で、予め分岐前のレーザ光パワーを大幅に強める必要があり、ファイバの損傷や、非線形現象による出力減少が発生してしまうおそれがある。
【0008】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、レーザ光出力ポートを構成する複数の光出射端それぞれからのレーザ光供給を可能にするための構造を備えるとともに、全体として、装置の大型化や低消費電力化の問題と最終段光増幅器でのハイパワー化の問題を解決するための構造を備えたレーザ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するため、本発明に係るレーザ装置は、発光素子と、光分岐器と、複数の最終段光増幅器と、複数の光出射端を備える。発光素子は、所定波長の被増幅光を出力する。光分岐器は、被増幅光を入力し、複数の光に分岐する。この分岐器が発光素子と複数の光出射端との間に配置されることにより、発光素子と複数の光出射端との間において多分岐光路が構成される。複数の最終段光増幅器は、それぞれが光分岐器の分岐線路に対応しており、光分岐器により分岐された光(分岐光)を個別に増幅する。そのため、これら複数の最終段光増幅器は、光分岐器と複数の光出射端との間の対応する光路上にそれぞれ配置される。複数の光出射端は、複数の最終段光増幅器と一対一に対応しており、それぞれ、対応する最終段光増幅器において増幅された増幅光を出力する。なお、各光増幅器に入射する被増幅光の波長は、基本的に同一である。
【0010】
上述のように、本発明に係るレーザ装置によれば、光分岐器と複数の光出射端との間に、それぞれが複数の光出射端のいずれかに対応した複数の最終段光増幅器が配置されている。この構成では、分岐前の被増幅光パワーを過剰に増大させる必要がないので、分岐器前の光ファイバの非線形現象の発現の抑圧が可能になる。また、光分岐器の上流側、すなわち、パルス変調される発光素子側が共通しているため、その分だけ各光出射端での光パルスの位相差が低減し得る。
【0011】
ただし、光出射端それぞれにおける出力光パワーを更に高くしたい場合、発光素子の出力を増加させるだけでは不十分なケースも十分考えられる。その場合、本願発明に係るレーザ装置は、発光素子と光分岐器との間の光路上に配置された中間光増幅器を備えてもよい。
【0012】
上述のような構造を有する、本発明に係るレーザ装置において、発光素子から複数の光出射端までの光路長それぞれは、最大光路長と最小光路長との差が1m以下になるように設定されるのが好ましい。この構成は、複数の光出射端から出力される光パルスの位相差を低減する上で、より好ましい。
【0013】
本願発明に係るレーザ装置に適用可能な種々の構成として、光分岐器と複数の最終段光増幅器の間のそれぞれ光路上に、第1の光路長調整用光ファイバが配置されてもよい。また、中間光増幅器と複数の最終段光増幅器それぞれの増幅媒質は、Yb元素添加光ファイバであってもよい。発光素子と光分岐器との間の光路上に中間光増幅器が配置される構成において、当該レーザ装置は、誘導ラマン散乱(SRS:Stimulated Raman Scattering)の影響を低減するため、中間光増幅器と光分岐器との間に配置された第2の光路長調整用光ファイバを備えてもよい。第2の光路長調整用光ファイバの長さは、SRS閾値が問題ない範囲で設定されるのが好ましい。デリバリ用光ファイバ同様、第2の光路長調整用光ファイバでも高パワーの光が入力されるので、この場合、第2の光路長調整用光ファイバの長さ調節が重要にある(長さが長いとSRSが問題になるおそれがある)。
【0014】
光分岐器の上流側に中間光増幅器が配置される一方、光分岐器の下流側に複数の最終段光増幅器が配置された構成において、これら複数の最終段光増幅器は常時増幅動作を行っているわけではない。すなわち、当該レーザ装置の動作中、増幅動作を行っている有効な最終段光増幅器(光分岐器により被増幅光として分岐された分岐光が入力されている最終段光増幅器)のグループと、増幅動作を行っていない無効な最終段光増幅器(分岐光が入力されていない最終段光増幅器)のグループとが存在し、その割合は変動する可能性がある。したがって、複数の最終段光増幅器のうち分岐光を入力する有効な最終段光増幅器(増幅動作を行っている最終段光増幅器)の数の変動に依存することなく、有効な最終段光増幅器それぞれに入力される光のパワーは、一定であるのが好ましい。そのため、本発明に係るレーザ装置は、増幅動作を行っている有効な最終段光増幅器の数に応じて、発光素子又は中間光増幅器から出力される被増幅光のパワーを設定するパワー設定手段を、備えるのが好ましい。
【0015】
本発明に係るレーザ装置において、複数の最終段光増幅器のうち少なくとも2以上の最終段光増幅器で使用される増幅用光ファイバそれぞれは、出力光パワーが一致しないように、互いに異なるモードフィールド径(MFD)を有してもよい。この場合、光出射端ごとに所望のパワーの加工用出力光を得ることが可能になる。
【0016】
本発明に係るレーザ光源は、発光素子を含む光源と光分岐器が光増幅器を介することなく光学的に接続された構成を有してもよい。この場合、本発明に係るレーザ装置は、光源と、光分岐器と、複数の最終段光増幅器と、複数の光出射端と、複数の第1の光路長調整用光ファイバと、複数のデリバリ用光ファイバを備える。光源は、被増幅光を出力する。光分岐器は、光源から出力された被増幅光を分岐する光学部品であって、光源と複数の最終段光増幅器との間で多分岐光路を構成する。複数の最終段光増幅器は、光分岐器と複数の光出射端との間に位置する複数の分岐線路に対応して設けられており、それぞれ、対応する分岐光を増幅する。複数の光出射端は、複数の最終段光増幅器に一対一に対応して設けられており、それぞれは、対応する最終段光増幅器で増幅された増幅光を出力する。上述の構成において、複数の第1の光路長調整用光ファイバは、光分岐器と複数の最終段光増幅器との間の分岐線路上に、それぞれ配置される。また、複数のデリバリ用光ファイバは、複数の最終段光増幅器と複数の光出射端とを一対一に接続させるよう、それぞれ配置されている。
【0017】
上述のように、光源と光分岐器が光増幅器を介することなく光学的に接続された構成において、光源は、被増幅光を出力する発光素子と、この発光素子から出力された被増幅光を光分岐器へ導く第2の光路長調整用光ファイバとを含んでもよい。なお、光分岐器の分岐線路にそれぞれ対応して設けられた複数の最終段光増幅器のうち増幅動作を行う有効な最終段光増幅器の数が多くなる場合、光源は、上述の中間光増幅器として、発光素子と第2の光路長調整用光ファイバとの間に設けられた別の光増幅器を含んでもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、種光源である発光素子の数が、レーザ構成最終段の光増幅器の数よりも少ない構成を備えるため、最終段以外の光増幅器及び被増幅光源の数を減らすことができ、省スペース化および低消費電力化が可能になる。
【0019】
複数の光出射端それぞれにレーザ光を供給する光分岐器の下流側に、複数の光出射端それぞれに対応した複数の最終段光増幅器を配置したことにより、分岐前のレーザ光パワーを増大させる必要がないため、装置全体として非線形現象の影響低減が可能になる。
【0020】
複数の光出射端に対して光分岐器の上流側の構成(種光源を含む)が共通化されているため、分岐以降の光路長を調整・設定することで、光出射端から出力される光パルス間の位相差が効果的に低減される。また、光分岐器と最終段光増幅器との間の光路長調整用光ファイバで光路長を調整することで、最終段光増幅器以降のデリバリ用光ファイバで光路長を必要以上に長くすることがないので、その分非線形現象の影響を受けづらくしている。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1比較例に係るレーザ装置(光ファイバレーザ)の構成を示す図である。
【図2】増幅用光ファイバの断面構造を示す図及びその屈折率プロファイルである。
【図3】増幅用光ファイバの吸収断面積及び放出断面積それぞれの波長依存性を示すグラフである。
【図4】デリバリ用光ファイバの断面構造を示す図及びその屈折率プロファイルである。
【図5】コンバイナの構成を説明するための図である。
【図6】第2比較例に係るレーザ装置(光ファイバレーザ)の構成を示す図である。
【図7】第3比較例に係るレーザ装置(光ファイバレーザ)の構成を示す図である。
【図8】第1比較例に係るレーザ装置における平均出力5Wの種光パルスおよび平均出力10Wの種光パルスそれぞれの増幅特性を示す。
【図9】第2比較例に係るレーザ装置において発生する光パルスの位相差を説明するための図である。
【図10】第3比較例に係るレーザ装置の各部におけるパルスレーザ光のスペクトルである。
【図11】本発明に係るレーザ装置(光ファイバレーザ)の第1実施形態の構成を示す図である。
【図12】最終段光増幅器の種々の構成例を示す図である。
【図13】第1実施形態に係るレーザ装置の光出射端におけるパルスレーザ光と、第3比較例に係るレーザ装置の光出射端におけるパルスレーザ光スペクトルである。
【図14】本発明に係るレーザ装置(光ファイバレーザ)の第2実施形態の構成を示す図である。
【図15】本発明に係るレーザ装置(光ファイバレーザ)の第3実施形態の構成を示す図である。
【図16】第2及び第3実施形態に係るレーザ装置における光分岐器の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係るレーザ装置の各実施形態を、図1〜図16を参照しながら詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0023】
以下の説明では本実施形態と対比されるべき比較例について説明した後に、比較例と対比しつつ本実施形態及び変形例について説明する。
【0024】
(第1比較例)
図1は、本発明のレーザ装置における基本的な構成要素を含む第1比較例に係るレーザ装置(光ファイバレーザ)の構成を示すものであって、具体的にはMOPA方式の光ファイバレーザの構成を示す。すなわち、この第1比較例に係る光ファイバレーザ100は、レーザ光出力ポートとして単一の光出射端を有する光ファイバレーザの構造を備える。図1(a)において、第1比較例に係る光ファイバレーザ100は、発光素子である種光源41と、変調器51、中間光増幅器AMP0と、最終段光増幅器AMP1と、デリバリ用光ファイバ11と、光出射端70を備える。最終段光増幅器AMP1は、増幅用光ファイバ10、コンバイナ20、励起光源31および光ファイバ32を備える。また、中間光増幅器AMP0も基本的には最終段光増幅器AMP1と同様の構造を備え、増幅用光ファイバ61を備える。図1(a)に示したように、種光源41は、電気信号線52を介して変調器51に接続されており、種光源41に対して変調器51が内蔵する所定の基本パルス変調パターンに従って直接変調することで、種光パルス(被増幅光としてのパルスレーザ光)が繰り返し生成される。なお、変調器51における基本パルス変調パターンの設定の操作は、手動でもよいし、外部トリガー信号線を介してでもよい。なお、この明細書において、各図に示された記号「×」は、接続点を意味し、例えば光ファイバ間を融着等により接続する場合、ファイバ融着接続点を意味する。
【0025】
光ファイバレーザ100では、光ファイバ32を通過した励起光源31からの励起光と、光ファイバ42及び光アイソレータ61を通過した種光源41からの種光パルスが、コンバイナ20により合波される。コンバイナ20からの合波光は、増幅用光ファイバ10の一端に入射される。なお、励起光源31は、図1(b)に示されたように、所定波長の励起光を、コンバイナ20を介して増幅用光ファイバ10に供給する複数のレーザダイオード(LD1〜LD6)(個数は必要に応じて決定)により構成されてもよい。
【0026】
合波された励起光及び種光パルスが伝搬する増幅用光ファイバ10内では、増幅用光ファイバ10に添加された希土類元素(Yb、Er、Tm、Ho、Nd、Pr、Tbなど)が励起光により励起されることにより、種光パルスが増幅される。そして、増幅用光ファイバ10において増幅された種光パルスは、増幅用光ファイバ10の他端で融着接続されたデリバリ用光ファイバ11を通過した後、光出射端70から外部へ出力される。
【0027】
例えば、増幅用光ファイバ10は、図2(a)及び2(b)に示すような断面構造及び屈折率プロファイルを有する。すなわち、増幅用光ファイバ10は、図2(a)に示すように、所定軸に沿って伸びた、所定の屈折率を有するコア10aと、コア10aの外周に設けられた、コア10aよりも低い屈折率を有する第1クラッド10bと、第1クラッド10bの外周に設けられた、第1クラッド10bよりも低い屈折率を有する第2クラッド10cを備える。図2(b)は、増幅用光ファイバ10の径方向L1(増幅用光ファイバ10の光軸に直交する方向)に沿った屈折率プロファイル150を示す。領域151は、コア10aの径方向L1に沿った屈折率、領域152は、第1クラッド10bの径方向L1に沿った屈折率、領域153は、第2クラッド153の径方向L1に沿った屈折率をそれぞれ示す。コア10a、第1クラッド10b、第2クラッド10cは、ダブルクラッド構造を構成する。コア10aは、種光パルスをシングルモード伝搬させ、第1クラッド10bは励起光をマルチモード伝搬させる。コア10aには、希土類元素としてYbが添加されており、種光パルスはコア10a内で増幅される。
【0028】
増幅用光ファイバ10における励起光吸収は、増幅用光ファイバ10の特性により決定され、主に、モードフィールド径(MFD)、第1クラッド10bの外径、及び、コア10aにおける希土類元素添加濃度の調整により変化する。図3は、Yb添加光ファイバの吸収断面積及び放出断面積それぞれの波長依存性を示す。グラフG310は吸収断面積を示し、グラフG320は、放出断面積を示す。このYb添加光ファイバ(増幅用光ファイバ10に相当)は、Yb添加量が10000ppm、MFDが7μm、第1クラッド10bの外径が130μm、長さ5mで、励起波長915nm波長帯において約2.4dBの励起光が吸収される。なお、励起光の波長帯は、940nm帯や975nm帯であってもよいが、添加される希土類元素の種類によって異なる。
【0029】
励起光源31は、上述のように単一のレーザダイオードで構成されても、また、図1(b)に示すように複数のレーザダイオードLD1〜LD6により構成されてもよい。励起光源31から出力される励起光の波長は915nm帯、940nm帯または975nm帯である。種光源41は、例えばLD、VCSELなどの発光素子である。変調器51は、電気信号線52を介して種光源41に駆動用電気信号を印加することで、種光源41を直接変調する(パルス変調)。種光源41から出力される種光パルスの波長は、1030nm〜1130nmの波長範囲内にあり、例えば1060nmである。なお、パルス変調は、外部変調であってもよい。
【0030】
励起光源31とコンバイナ20との間に設けられた光ファイバ32及びデリバリ用光ファイバ11のそれぞれは、図4に示したような断面構造及び屈折率プロファイルを有する。なお、図4には、光ファイバ32の断面構造および屈折率プロファイルだけ示されているが、デリバリ用光ファイバ11も同様の断面構造および屈折率プロファイルを有する。すなわち、図4(a)に示すように、光ファイバ32、11は、所定軸沿って伸びた、所定の屈折率を有するコア32aと、コア32aの外周に設けられた、コア32aよりも低い屈折率を有するクラッド32bを備える。また、図4(b)は、光ファイバ32の径方向L2(光ファイバ32の光軸に直交する方向)に沿った屈折率プロファイル320であり、領域321は、コア32aの径方向L2に沿った屈折率、領域322は、クラッド32bの径方向L2に沿った屈折率をそれぞれ示す。なお、コア32aは、励起光源31から出力された励起光をマルチモード伝搬する。
【0031】
図5は、コンバイナ20の構成を示す。この図5に示したコンバイナ20は、一方の側に複数(図5の例では7個)の光入出力ポートP1〜P7を有し、他方の側に共通ポートP0を有する。コンバイナ20は、光入出力ポートP1〜P7に入力された光を合波し、共通ポートP0から出力する。逆に、コンバイナ20は、共通ポートP0に入力された光を分岐し、分岐光それぞれを光入出力ポートP1〜P7から出力する。
【0032】
コンバイナ20の共通ポートP0側の光ファイバは、増幅用光ファイバ10と同様のダブルクラッド構造を有し、増幅用光ファイバ10に接続される。光入出力ポートP1は、光ファイバ42を介して種光源41に光学的に接続される。光入出力ポートP2は、光ファイバ32を介して励起光源31に光学的に接続される。なお、励起光源31からの励起光の入力ポートは、図1(a)では1つだけを示したが、図1(b)に示すように、他の光入出力ポートP3〜P7も、他の光ファイバを介して他の励起光源LD1〜LD6に光学的に接続されてもよい。
【0033】
(第2および第3比較例)
レーザ出力ポートとして2つの光出射端を用意し、各光出射端からそれぞれ5Wのレーザ光供給を実施する場合、図1(a)に示す光ファイバレーザ100と同一構造をそれぞれ有する2つの光ファイバレーザを用意し、それぞれの光ファイバレーザから5Wのレーザ光を出力させる構成(第2比較例)と、レーザ光出力ポート側において10Wのレーザ光を2分岐し、2つの光出射端それぞれから5Wのレーザ光を出力する構成(第3比較例)が考えられる。なお、図6は、第2比較例に係るレーザ装置(光ファイバレーザ)の構成を示す図であり、図7は、第3比較例に係るレーザ装置(光ファイバレーザ)の構成を示す図である。
【0034】
図6に示すように、第2比較例に係る光ファイバレーザ110は、サブレーザ装置として、それぞれが図1(a)の光ファイバレーザ100と同一構造を有するレーザ1およびレーザ2が並列配置されることにより構成されている。また、レーザ1は光路長L10を有する一方、レーザ2は光路長L20を有する。レーザ1およびレーザ2のいずれにおいても、光路長は、種光源41における種光パルスの出射端面から光出射端70における出射端面までの距離(実質的には、種光源41から光出射端70までのファイバ長)で規定される。
【0035】
第3比較例に係る光ファイバレーザ120は、図7に示すように、レーザ光出力ポート側の構造を除き、図1(a)の光ファイバレーザ100と同一構造を有する。すなわち、第3比較例に係る光ファイバレーザ120では、レーザ光出力ポートが、最終段光増幅器AMP1から出力されたレーザ光(加工用レーザ光)を2分岐するための光カプラ21と、2つの光出射端70a、70bと、光カプラ21と2つの光出射端70a、70bそれぞれを光学的に接続するためのデリバリ用光ファイバ11a、11bにより構成されている。
【0036】
図1(a)の光ファイバレーザ100においてパルス幅5ns、繰り返し周波数100kHzでパルス変調させたときの、平均出力5Wの種光パルスおよび平均出力10Wの種光パルスそれぞれの増幅特性を図8に示す。この図8において、グラフG810は平均出力10Wの種光パルスの増幅特性であって、約35kWのパルスピークを有する。一方、グラフG810は、平均出力5Wの種光パルスの増幅特性であって、約17kWのパルスピークを有する。平均出力10Wおよび5Wいずれの種光パルスの増幅特性もパルスピークはほぼ一致することが分かる。
【0037】
第2比較例に係る光ファイバレーザ110(図6)では、同一構造を有するレーザ1およびレーザ2が並列配置されるため、その設置空間が光ファイバレーザ100の2倍以上必要になる。また、レーザ1およびレーザ2間において、光路長L10と光路長L20の差や、種光パルスとしてレーザ光をパルス化する変調器51の位相差が影響する。そのため、レーザ1の光出射端70とレーザ2の光出射端70との間では、光パルスの位相差が発生してしまうおそれがあり、加工時の位置精度のずれが大きくなってしまう。例えば、レーザ1の光路長L10とレーザ2の光路長L20との差が1mの場合、図9に示すように、出力される光パルスには5nsの伝搬遅延(遅延差)が生じ、レーザ1の光出射端とレーザ2の光出射端70間において光パルスの位相差が発生してしまう。なお、図9は、第2比較例に係る光ファイバレーザ110において発生する光パルスの位相差を説明するための図である。
【0038】
第3比較例に係る光ファイバレーザ120(図7)では、上述のようなレーザ1の光出射端70とレーザ2の光出射端70との間での光パルスの位相差は軽減される。しかしながら、装置全体として、この第3比較例に係る光ファイバレーザ120では、消費電力の増大を招く可能性がある。また、平均出力15Wのレーザ光をパルス化した際に、非線形現象が大きく発現してしまい、所定のパルスピークが得られない可能性がある。平均出力15Wの種光パルスが伝搬する各部(図7において、矢印Aおよび矢印Bでそれぞれ示す部位)で発生する非線形現象が図10に示すように光ファイバレーザ120における各部に伝搬してしまう。そのため、第3比較例に係る光ファイバレーザ120では、非線形現象によるレンズ色収差、波長損失特性が問題となる。なお、図10は、第3比較例に係るレーザ装置の各部におけるパルスレーザ光のスペクトルである。また、図10において、G1010は、第3比較例に係る光ファイバレーザ120(図7)において、矢印Aで示された最終段光増幅器AMP1の出射端における光パルスのスペクトルを示し、G1020は、矢印Bで示された光出射端70における光パルスのスペクトルを示す。
【0039】
(第1実施形態)
本発明に係るレーザ装置の第1実施形態について説明する。図11は、第1実施形態に係る光ファイバレーザ200の構成を示す図である。この光ファイバレーザ200は、レーザ光出力ポートして複数の光出射端を有するとともに、光出射端それぞれに対して一対一に対応する複数の最終段光増幅器を備える。すなわち、図11において、第1実施形態に係る光ファイバレーザ200は、発光素子である種光源41と、変調器51、中間光増幅器AMP0と、光分岐器80と、第1の光路長調整用光ファイバ82と、最終段光増幅器AMP11、AMP12と、デリバリ用光ファイバ11a、11bと、光出射端70a、70bを備える。なお、中間光増幅器は、1段では増幅パワーが不足する場合は、多段に構成しても良い。
【0040】
上述の種光源41と、変調器51、中間光増幅器AMP0については、図1(a)の光ファイバレーザ100と同様の構造を有する。すなわち、この第1実施形態に係る光ファイバレーザ200においても、中間光増幅器AMP0は増幅用光ファイバ61を備える。また、図1(a)の光ファイバレーザ100と同様に、種光源41は、電気信号線52を介して変調器51に接続されており、種光源41に対して変調器51が内蔵する所定の基本パルス変調パターンに従って直接変調することで、種光パルス(被増幅光としてのパルス光)が繰り返し生成される。変調器51における基本パルス変調パターンの設定の操作は、手動でもよいし、外部トリガー信号線を介してでもよい。このように、第1実施形態では、種光源41および中間光増幅器AMP0は図1(a)の光ファイバレーザ100と同様の構造を有するが、最終段光増幅器AMP11、AMP12は必要な光出射端70a、70bの数だけ準備されている。なお、この第1実施形態では、中間光増幅器AMP0からの種光パルスを光分岐器80で分岐し、それぞれ分岐された種光パルス(分岐光)が第1の光路長調整用光ファイバ82を介して最終段光増幅器AMP11、AMP12のそれぞれに供給される。当該光ファイバレーザ200における出力パワーは、1光出射端当り5Wである。また、この第1実施形態では、種光源41と変調器51により光源Sが構成される。
【0041】
光分岐器80の下流側に位置する一方の分岐線路の構成要素(第1の光路長調整用光ファイバ82、最終段光増幅器AMP11、デリバリ用光ファイバ11a、光出射端70a)と、他方の分岐線路の構成要素(第1の光路長調整用光ファイバ82、最終段光増幅器AMP12、デリバリ用光ファイバ11b、光出射端70b)も、第1の光路長調整用光ファイバ82、を除き、図1(a)の光ファイバレーザ100における最終段光増幅器AMP1、デリバリ用光ファイバ11、光出射端70それぞれと同様の構造を有する。第1の光路長調整用光ファイバ82それぞれは、デリバリ用光ファイバ11と同様の構造を有する。
【0042】
光出射端70a、70bの数は、種光源41の数よりも多い。また、光分岐器80は、種光源41発光素子からのレーザ光を複数の光出射端それぞれに供給するため、種光源41に対応した入力ポートと、光出射端70a、70bそれぞれに対応した出力ポートを有する2分岐光カプラ81を含む。この光分岐器80は、種光源41と光出射端70a、70bそれぞれとを光学的に結合する光路の一部を構成する。最終段光増幅器AMP11、AMP12は、光出射端70a、70bのいずれかに対応しており、光出射端70a、70bのうち対応する一方と光分岐器80との間の光路上にそれぞれ配置されている。
【0043】
最終段光増幅器AMP11、AMP12のそれぞれは、互いに異なる構造を備えてもよく、また、同じ構造を備えてもよい。なお、最終段光増幅器AMP11、AMP12の構造としては、例えば図12に示す種々の構造が適用可能である。
【0044】
例えば、最終段光増幅器AMP11、AMP12の少なくとも一方は、図1(a)の最終段光増幅器AMP1と同様の構造(図12(a)に示す前方励起を実現する構造)を備えてもよい。すなわち、この前方励起を実現する最終段光増幅器AMP1n(n=1〜N)は、増幅用光ファイバ10、コンバイナ20、励起光源31および光ファイバ32を備える。増幅用光ファイバ10は、図2に示す断面構造および屈折率プロファイル150を有する。コンバイナ20は、図5に示す構造を有する。励起光源31は、図1(b)に示すように複数のレーザダイオードLD1〜LD6で構成されてもよい。また、光ファイバ32は、図4に示す断面構造および屈折率プロファイル320を有する。
【0045】
最終段光増幅器AMP11、AMP12の少なくとも一方は、図12(b)に示す後方励起を実現する構造を備えてもよい。すなわち、この後方励起を実現する最終段光増幅器AMP1n(n=1〜N)は、増幅用光ファイバ10、コンバイナ40、励起光源33および光ファイバ34を備える。励起光源33は、単一のレーザダイオードで構成されてもよく、また、図1(b)に示すように複数のレーザダイオードLD1〜LD6で構成されてもよい。コンバイナ40は、コンバイナ20と同様に、図5に示す構造を有する。ただし、コンバイナ40では、共通ポートP0が増幅用光ファイバ10の光出射端に接続される一方、入出力ポートP1が対応するデリバリ用光ファイバに接続される。他の入出力ポートP2〜P7は、用意された励起光源31(単一のレーザダイオード又は複数のレーザダイオードLD1〜LD6)にそれぞれ接続される。光ファイバ34は、光ファイバ32と同様に、図4に示す断面構造および屈折率プロファイル320を有する。
【0046】
最終段光増幅器AMP11、AMP12の少なくとも一方は、図12(c)に示す双方向励起を実現する構造を備えてもよい。すなわち、この双方向励起を実現する最終段光増幅器AMP1n(n=1〜N)は、コンバイナ20、励起光源31、光ファイバ32、増幅用光ファイバ10、コンバイナ40、励起光源33および光ファイバ34を備える。励起光源31と励起光源33のそれぞれは、上述のように同じ構造を有する。コンバイナ20とコンバイナ40のそれぞれも、同じ構造を有する。光ファイバ32と光ファイバ34のそれぞれも、同じ断面構造および屈折率プロファイル320を有する。
【0047】
上述のように構成された、第1実施形態に係る光ファイバレーザ200によれば、光照射端70a、70b間における光パルスの位相差の低減、消費電力の抑圧、および、光照射端70a、70b間における非線形閾値の抑圧を可能にする。
【0048】
以下、1光出射端当りの平均出力、パルスピークを揃えた構成に関して、第1実施形態の構成と、上述の各比較例の構成とを比較する。従来の構成と本発明の構成を比較する。
【0049】
占有空間に関し、第2比較例に係る光ファイバレーザ110(図6)は、用意されるサブレーザ装置(レーザ1、レーザ2)の台数分だけ占有空間を必要とする。一方、レーザ光出力ポートとしての光出射端の数が増加するほどその占有面積も大きくなるため、光1実施形態に係る光ファイバレーザ200の占有面積は、第1比較例に係る光ファイバレーザ100(図1)よりも増加するが、第2比較例に係る光ファイバレーザ110(図6)よりも抑えられる。
【0050】
消費電力に関し、光源S(種光源41)1個のみの消費電力で計算すると、第1実施形態に係る光ファイバレーザ200の消費電力は、約48W、第2比較例に係る光ファイバレーザ110(図6)では約47W、第3比較例に係る光ファイバレーザ120(図7)では約64Wになる。第2比較例では、ポート数に応じて種光源の個数が増加するので、光源部分の消費電力が増加する。種光源数が同じ、第1実施形態と第3比較例と比較すると、第1実施形態の消費電力は約25%抑圧することができる。これは、第3比較例に係る光ファイバレーザ120の場合、高出力化のために励起光源部分の電流、温度制御の負荷が大きくなるためである。
【0051】
非線形現象の発現に関し、第2比較例に係る光ファイバレーザ110(図6)と第1実施形態に係る光ファイバレーザ200とで、非線形現象の発現具合に差異はない。ただし、第3比較例に係る光ファイバレーザ120(図7)と第1実施形態に係る光ファイバレーザ200との比較結果を図13に示す。この図13は、パルス動作状態において、同じ平均出力(1光照射端当り5W)、同じパルスピーク(1光照射端当り約15kW)でのスペクトルを示す。なお、図13において、G1310は、第1実施形態に係る光ファイバレーザ200のスペクトル、G1320は、第3比較例に係る光ファイバレーザ120のスペクトルを示す。図13に示す比較結果から、第1実施例の構成では非線形現象、つまりSRSが抑圧される一方、第3比較例の構成ではSRSが大きく発現することが分かる。したがって、SRSにより、レンズ色収差、波長損失特性が問題となってきた場合、本発明の構成は有利となる。
【0052】
レーザ光出力ポートを構成する光出射端間における光パルスの位相差について言及すれば、パルス幅が数nsオーダーで変調される場合、光出射端間における光パルスの位相差も数nsレベルで調整する必要がある。種光源から各光出射端までの光路を構成する光ファイバ内の光伝搬を考えると、1mの光路長間で約5ns位相がずれる。この第1実施形態の構成では、最終段光増幅器AMP11、AMP12のみで光出射端70a、70b間における光パルスの位相差が決定されるため、最終段光増幅器AMP11、AMP12のそれぞれにおける光路長(ファイバ長)を調整することで光パルスの位相差を吸収させることができる。例えば、第1実施形態の構成において、最終段光増幅器AMP11、AMP12それぞれにおけるファイバ全長は約5mであり、ファイバ長の調整は容易である。これに対し、第2比較例の構成(図6)では、レーザ1における全ファイバ長と、レーザ2における全ファイバ長で光出射端70それぞれから出力される光パルスの位相差が決まるため、ファイバ長の調整、レーザ1およびレーザ2間での変調器51の位相調整が必要であり、調整作業の困難さが増してしまう。また、第2比較例の構成では、レーザ1およびレーザ2それぞれにおける全ファイバ長は約50mであり、光パルスの位相差に影響する全ファイバ長に対する1mのファイバ長調整の割合は、第2比較例と第1実施形態とでは一桁程度異なることからも、第2比較例における調整作業の困難さが増大することは明白である。
【0053】
(第2実施形態)
図14は、本発明に係るレーザ装置(光ファイバレーザ)の第2実施形態の構成を示す図である。この第2実施形態に係る光ファイバレーザ210は、1つの光源S(発光素子である種光源41と変調器51を含む)、中間光増幅器AMP0、光分岐器80、2つの最終段光増幅器AMP11、AMP12が並列に配置された増幅ユニットU、光出射端70a、70bを備えた点において、上述の第1実施例と同様である。また、第2実施形態に係る光ファイバレーザ210も、第1実施形態に係る光ファイバレーザ200と同様に、光分岐器80と最終段光増幅器AMP11、AMP12の間の分岐線路上に配置された第1の光路調節用光ファイバ82と、一対一に対応している最終段光増幅器AMP11、AMP12と光出射端70a、70bの間に配置されたデリバリ用光ファイバ11a、11bを備える。
【0054】
第2実施形態に係る光ファイバレーザ210は、第2の光路長調整用光ファイバ83と、バンドパスフィルタ84と、パワー設定手段300を備えた点で、第1実施形態に係る光ファイバレーザ200と異なる。
【0055】
第2の光路長調整用光ファイバ83の長さは、SRS閾値が問題ない範囲で設定されるのが好ましい。また、パワー設定手段は、増幅動作を行っている有効な最終段光増幅器(光分岐器80により分岐され、対応する分岐線路上を伝搬してきた被増幅光としての種光パルスが入力された最終段光増幅器)の数に応じて、種光源41又は中間光増幅器AMP0から出力される被増幅光のパワーを設定する。通常、光分岐器80の上流側に中間光増幅器AMP0が配置される一方、光分岐器80の下流側に最終段光増幅器AMP11、AMP12が配置された構成において、これら最終段光増幅器AMP11、AMP12は常時増幅動作を行っているわけではない。すなわち、当該光ファイバレーザ210の動作中、増幅動作を行う有効な最終段光増幅器の数は変動している。したがって、この第2実施形態では、最終段光増幅器AMP11、AMP12のうち分岐光を入力する有効な最終段光増幅器(増幅動作を行っている最終段光増幅器)の数の変動に依存することなく、有効な最終段光増幅器それぞれに入力される光のパワーを一定にするため、パワー設定手段300が設けられている。
【0056】
第2の光路長調整用光ファイバ83の長さは、SRS閾値が問題ない範囲で設定されるが、この「SRSの閾値が問題ない範囲」は、発明者らによるシミュレーションの結果及び実測値から、「波長1060nm(被増幅光の波長)のピーク成分と、波長1110nm(一次SRSの中心波長)のピーク成分との差が20dB以上であること」を意味する。ただし、このような具体的な数値は、最終段光増幅器AMP11、AMP12における増幅用光ファイバ10がYbDFであり、これら増幅用光ファイバ10が波長1060nmの被増幅光を増幅することを前提としている。基本波(被増幅光の波長1060nm)に対する一次SRS波長1110nmは、最終段光増幅器AMP11、AMP12において利得を生じる波長である。また、基本波の利得増加のためには、基本波以外の他の波長成分は除去されることが望ましい。SRSのうち基本波に対する一次SRS光の比率は、通常20dB以上であることから、上記数値となる。
【0057】
この第2実施形態に係る光ファイバレーザ210において、第2の光路長調整用光ファイバ83と光分岐器80との間には、バンドパスフィルタ84が設けられている。このバンドパスフィルタ84は、通常30dB程度の出力差を有し、SRSを十分に除去できる。また、光源Sと光分岐器80との間に中間光増幅器AMP0が存在する構成では、SRS光だけでなく、ASE光も除去されるため、バンドパスフィルタ84は特に有効である。
【0058】
光源S、特に種光源41から光出射端70a、70bまでの各光路長は、第1実施形態に場合、第1の光路長調整用光ファイバ82とデリバリ用光ファイバ11a、11bにより調整される。また、第2実施形態の場合、各光路長は、第1の光路長調整用光ファイバ82、第2の光路長調整用光ファイバ83、及びデリバリ用光ファイバ11a、11bにより調整される。すなわち、これら光ファイバ82、83、11a、11bは、当該光ファイバレーザ200、210が実際の使用環境に設置される際の、配置用又は作業用の余長ファイバ(以下、配置/作業用余長という)として機能することになる。
【0059】
第2の光路長調整用光ファイバ83は、上述のように、長くなると、SRSの問題が発生し、一次SRS光が発生し、最終段での利得低化の原因となる他、基本波である被増幅光のパワー低下を招来し、光分岐器80での分岐数が増加すると最終段光増幅器AMP11、AMP12それぞれに十分なパワーの被増幅光を供給できなくなる可能性もある。そこで、この第2実施形態に係る光ファイバレーザ210において、パワー設定手段300が、最終段光増幅器AMP11、AMP12それぞれに必要なパワーを確保するため、中間光増幅器AMP0での利得を調整する。第2の光路長調整用光ファイバ83の長さは、この調整分の影響、すなわち一次SRS光の影響で、基本波パワーが必要以上に落ちない長さに設定される。中間光増幅器AMP0での利得は、SRSの影響も考慮して、最終段光増幅器AMP11、AMP12それぞれに必要なパワーに対し多めに設定されるのが好ましい。
【0060】
配置/作業用余長が、大きく必要なとき、第2の光路長調整用光ファイバ83の長さにも限界がある。このような場合は、不足した余長が、第1の光路長調整用光ファイバ82やデリバリ用光ファイバ11a、11bの長さで補完される。
【0061】
第1の光路長調整用光ファイバ82は、光分岐器80において分岐された被増幅光(分岐光)が伝搬する。このときの分岐光のパワーは低く、他の光路長調整用光ファイバ83、11a、11b等と比べて、第1の光路長調整用光ファイバ82は、SRSの影響を受けにくい。そのため、当該光ファイバレーザ210全体の配置/作業用余長は、第1の光路長調整用光ファイバ82によって調整されてもよい。
【0062】
デリバリ用光ファイバ11a、11bそれぞれは、積極的にSRS光を利用する場合以外、SRSの影響を受けない長さに設定しておくのが好ましい。SRSの影響がない場合、出力光は単色光となり、色収差により出力ビーム形状が歪むという問題も解消される。ただし、デリバリ用光ファイバ11a、11bの長さ調整がうまく行かず、SRS成分が出る場合には、その除去手段として、PBGF(フォトニックバンドギャップファイバ)がデリバリ用光ファイバ11a、11bに適用されてもよい。
【0063】
配置/作業用余長は、光分岐器80の下流側に位置する分岐線路ごとに異なる場合がある。その場合、光出射端70a、70bそれぞれで出力光の位相が異なることがある。これら出力光間の位相調整は、例えば、第1の光路長調整用光ファイバ82の長さを調節することにより対応可能である。
【0064】
光分岐器80の上流側に中間光増幅器AMP0が配置される一方、光分岐器80の下流側に複数の最終段光増幅器AMP11、AMP12が配置された構成において、増幅ユニットUの構成要素である複数の最終段光増幅器AMP11、AMP12は常時増幅動作を行っているわけではない。なお、この第2実施形態では増幅ユニットUを構成する最終段光増幅器の数は2であるが、後述する第3実施形態のように、N(2以上の整数)個の最終段光増幅器により増幅ユニットUが構成されてもよい。すなわち、当該第2実施形態に係る光ファイバレーザ210の動作中、被増幅光として分岐された種光パルスが入力される有効な最終段光増幅器のグループと、種光パルスが入力されない無効な最終段光増幅器のグループとが存在し、その割合は変動する可能性がある。この場合、僧服ユニットUを構成する最終段光増幅器AMP11、AMP12のうち増幅動作を行っている最終段光増幅器の数の変動に依存することなく、有効な最終段光増幅器に入力される光のパワーは、一定であるのが好ましい。そこで、当該光ファイバレーザ210は、パワー設定手段300を備える。このパワー設定手段300は、増幅動作を行っている有効な最終段光増幅器の数に応じて、光源S(具体的には種光源41)又は中間光増幅器AMP0から出力される被増幅光のパワーを設定するよう機能する。
【0065】
増幅ユニットUを構成する最終段光増幅器AMP11、AMP12(後述の第3実施形態ではN個の最終段光増幅器)のうち、有効な最終段光増幅器の数が増えたとき、光源S又は中間光増幅器AMP0のパワーが一定のままでは、有効な最終段光増幅器それぞれへの入力光パワーが小さくなってしまう。この場合、(1)被増幅光である分岐された種光パルスが入力された最終段光増幅器内でASE光が増大する、(2)パルスピークパワーの伸びに弊害を及ぼす、又は、(3)増幅用ファイバ10が破断される、などのおそれがある。
【0066】
そこで、当該第2実施形態に係る光ファイバレーザ210は、有効な最終段光増幅器の数に応じて、光源S又は中間光増幅器AMP0の出力パワーを設定又は調整できるように、パワー設定手段300を備える。
【0067】
パワー設定手段300による中間光増幅器AMP0の出力パワー調整は、中間光増幅器AMP0内の励起光光源(LD)の出力パワーを増減させるだけでよい。ただし、パワー設定手段300による光源Sの出力パワー調整は、種光源41へ供給される駆動電流値を変化させたときに、変調器51からの変調電圧値と温度を変更する必要性がある。
【0068】
この第2実施形態に係る光ファイバレーザ210は、光出射端70a、70bごとに所望のパワーの加工用出力光を得る構成を備えてもよい。なお、後述の第3実施形態においても同様である。この場合、増幅ユニットUを構成する最終段光増幅器AMP11、AMP12で使用される増幅用光ファイバ10それぞれは、非線形現象による制限を受けずに異なる出力光を効率的に増幅できるように、互いに異なるモードフィールド径(MFD)を有してもよい。互いに異なるMFDを有することにより、MFDに応じた光パワーを出力するように最終段の光増幅器への励起光パワーの供給を設定することができる。
【0069】
最終段光増幅器間における出力の優位な差としては、最低出力パワーを基準として0.5倍以上のパワー差があるのが好ましい。例えば、最終段光増幅器AMP11が最低出力パワー1であるとき、最終段光増幅器AMP12の出力パワーは1.5以上である。より具体的に「出力の優位な差」は、被増幅光の波長において増幅用光ファイバ10のMFDは、最低MFDを基準として1.22倍(≒1.2倍)異なる場合、出力パワーでは約1.49倍(≒1.5倍)となることを意味する。
【0070】
最終段光増幅器AMP11、AMP12の出力各ポート間で、出力パワーが同じになるように設定されてもよいが、使用状況によっては、何れかの最終段光増幅器のみの出力パワーを優位に設定することが求められることがある。
【0071】
その場合、用いられる増幅用光ファイバ10の被増幅光波長でのMFDが同じである環境下で、利得を調節することによって対応すると、パワー増大によりSRS上の問題が生じる。また、MFDを変えるために、コア径が異なる増幅用光ファイバを用いてもよいが、コア径が異なると、光分岐器80との接続損失等の問題が生じる可能性があるの。そのため、できれば、光分岐器80の出力ポートとは同じコア径でかつMFDが異なる増幅用光ファイバを用いる方が望ましい。なお、光分岐器80自体の各ポートでのコア径が異なる場合は、このような問題は気にしなくてよい。また、増幅用光ファイバのMFDを変える他の方法としては、NAを変える方法もある。接続損失が許容できる範囲であれば、コア径とNAを両方変更してもよい。
【0072】
増幅用光ファイバのMFDの変更範囲としては、例えば、基本波(被増幅光として分岐された種光パルス)の波長が1060nmの場合、6μm〜24μmである。なお、MFDの下限値は6μmであるが、非線形現象の影響が大きくなるので、特別な事情がなければ、設定されるべきMFDの値は、この下限値よりも大き目の値であるのが望ましい。また、MFDの上限値は24μmであるが、出力がマルチモード化する可能性があり、特別な事情がなければ、設定されるべきMFDの値は、この上限値よりも小さめの値であるのが望ましい。最終段光増幅器AMP11、AMP12それぞれの出力光をシングルモードにするためには、光分岐器80と最終段光増幅器AMP11、AMP12それぞれとのファイバ接続部で、被増幅光がシングルモードとして入力されるように十分注意を払うことが必要である。因みに、コア径10μm、NA0.08の増幅用光ファイバでは、そのMFDは12μmである。
【0073】
補足すると、最終段光増幅器AMP11、AMP12それぞれの構成のみの変更でも、最終段光増幅器AMP11、AMP12間の出力パワー調整は可能である。具体的には、最終段光増幅器AMP11、AMP12それぞれのコンバイナや増幅用ファイバのコア径を異ならせる。コア径を大きく(又は小さく)することで、非線形現象を抑圧でき、平均出力で比較した際に、パルスエネルギーやパルスピークを増加させることが可能になる。
【0074】
コア径の調整範囲は以下のように設定される。すなわち、通常用いている光ファイバのコア径は約10μm(NA=約0.08)である。このコア径の大きさに対して、例えば、(1)ダブルクラッド構造で閉じ込めが利くコア径、(2)被増幅光の波長からレーザのM2(ビーム品質)をある程度保ったまま、伝搬できるコア径、以上の2点を考慮し、コア径5μm〜20μm(NA=約0.08)が有効な範囲と言える。
【0075】
コア径が5μm未満では、SRS成分が増加してしまう。この場合、(1)パルスピークの弊害を生んでしまう、(2)接続のミスマッチが大きくなる、などの弊害がある。一方、コア径が20μmより大きい場合は、被増幅光の波長(1060nm)において高次モードが顕著に目だってしまう。この場合、(1)パワーの安定性への弊害、(2)レーザ出力をコリメートした際のビーム品質の劣化、などを生じさせてしまう。
【0076】
(第3実施形態)
本発明に係るレーザ装置の第3実施形態について説明する。図15は、第3実施形態に係る光ファイバレーザ220の構成を示す図である。この光ファイバレーザ220は、実質的に上述の第2実施形態に係る光ファイバレーザ210(図14)と同様の構造を備えるが、光分岐器80が多段に構成されている点で相違しており、レーザ光出力ポートとしてN(3以上の整数)個の光出射端701〜70Nを備える。レーザ光出力ポートである光出射端の数に合わせて光分岐器80の構成が異なっている。すなわち、第3実施形態に係る光ファイバレーザ220において、光分岐器80は、図16に示すように、中間光増幅器AMP0から最終段光増幅器AMP11〜AMP1Nそれぞれまでの光路長に差が生じないよう配置された複数の2分岐光カプラ81a、81b1、81b2、81c1、81c2、81c3、81c4、…を含む。この構成により、光分岐器80は、種光源41に対応した1つの入力ポートと、光出射端701〜70Nのそれぞれに対応した複数の出力ポートを有する。
【0077】
図15では、第2実施形態に係る光ファイバレーザ210の拡張構成が示されているが、この第3実施形態に係る光ファイバレーザ220の構成は、図11に示す第1実施形態に係る光ファイバレーザ200の拡張構成であってもよい(第2の光路長調整用光ファイバ83、バンドパスフィルタ84、パワー設定手段300がない構成)。また、図15に示す構成において、得られる作用、効果は、上述尾第2実施形態と同様である。
【0078】
この第3実施形態に係る光ファイバレーザ220において、第1の光路長調整用光ファイバ82を介して光分岐器80と接続されている最終段光増幅器AMP11〜AMP1Nは、光出射端701〜70Nのいずれかに対応している。また、一対一に対応した最終段光増幅器AMP11と光出射端701、…、最終段光増幅器AMP1Nと光出射端70Nは、それぞれ対応するデリバリ用光ファイバ111〜11Nによって接続されている。光分岐器80を構成する光カプラは、上述の1×2光カプラ(1入力−2出力の2分岐光カプラ)だけでなく、1×4光カプラ(1入力−4出力の4分岐光カプラ)、2×2光カプラ(2入力−2出力の光カプラ)でもよい。1×2光カプラの出力比を1:2とし、出力比の大きい側の出力ポートに、1×2光カプラ(出力比1:1)を配置すれば、全体として、出力の同じ3つの出力ポートを用意することもできる。2×2光カプラの場合は、入力ポートの一方を前段に位置する中間光増幅器AMP0からの被増幅光の入力ポートとし、他方のポートは、監視用に使用してもよい。
【0079】
光分岐器80の下流側に位置する分岐線路上に配置された最終段光増幅器AMP11〜AMP1Nのそれぞれは、上述の第1及び第2実施形態と同様に、図12(a)〜図12(c)のいずれかの構造を備える。
【0080】
上述のような消費電力、非線形性の発現、光パルスの位相差等に関し、第1及び第2実施形態に係る光ファイバレーザ200、210と同様の効果を奏する。
【0081】
上述の第1〜第3実施形態に係る光ファイバレーザ200〜220(図11、図14及び図15)は、何れも光源Sと光分岐器80との間に配置された中間光増幅器AMP0を備えているが、この中間光増幅器AMP0は、必ずしも必要はない。特に、近年、発光素子の性能は向上しており、光源Sに含まれる種光源41にも十分な光出力が得られる発光素子を適用することが可能になってきたからである。
【0082】
ただし、最終段光増幅器の数が多くなる場合(光出射端の増加)、中間光増幅器が必要になる。この場合、中間光増幅器として機能する光増幅器は光源S内に配置されればよい。特に、光増幅器を含む光源Sと光分岐器80とが中間光増幅器を介さずに接続される構成では、上述の第1〜第3実施形態と同様に、光分岐器80と複数の最終段光増幅器との間に第1の光路長調整用光ファイバ82が配置されるとともに、光源Sと光分岐器80との間に第2の光路長調製用光ファイバ83が配置されるのが好ましい。
【0083】
SRSの影響を受けるのは、第2の光路長調整用光ファイバ83の方で、当該第2の光路長調整用光ファイバ83はSRSの影響を受けない長さに設定されればよい。一方、SRSの影響の少ない第1の光路長調整用光ファイバ82の方は、当該光ファイバレーザ全体の光路長を調整するよう機能する。ただし、ある程度SRSの影響を残したい場合には、第2の光路長調整用光ファイバ83の長さを所望の長さに設定し、第1の光路長調整用光ファイバ82で当該光ファイバレーザ全体の光路長を調整すればよい。
【符号の説明】
【0084】
200、210、220…レーザ装置、41…種光源、AMP0…中間光増幅器、80…光分岐器、AMP1n(n=1〜N)…最終段光増幅器、70a、70b、701〜70N…光出射端、82…第1光路長調整用光ファイバ、83…第2光路長調整用光ファイバ、11a、11b、111〜11N…デリバリ用光ファイバ、300…パワー設定手段、S…光源、U…増幅ユニット。
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光出力ポートとして複数の光出射端を備えたレーザ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、パルスレーザ光(レーザ光を所定周期でパルス化しながら繰り返し出力することで得られる)を用いた加工技術が注目されており、加工用や医療用等の分野において高出力レーザ装置の需要が高まっている。各種レーザ装置の中でも特に注目されているレーザ装置として、光ファイバレーザが挙げられる。この光ファイバレーザは、Yb(イットリビウム)、Er(エルビウム)、Tm(ツリウム)等の希土類元素がコアに添加された増幅用光ファイバを光増幅媒体として採用している。この増幅用光ファイバ内に励起光が供給されると、増幅用光ファイバ内を伝搬する種光が増幅される。これにより、増幅用光ファイバからは、高パワーの増幅光を出力するか、あるいは、共振器構造を利用してレーザ発振させることによりレーザ光が出力される。光ファイバレーザの利点としては、例えば、レーザ光が光ファイバ内で閉じ込められていることからその扱いが容易である点や、熱放射性が良いことから大規模な冷却設備を必要とすることがない点などが挙げられる。
【0003】
上述のように光ファイバレーザには、希土類元素添加光ファイバが適用されており、添加される希土類の中でもYbの変換効率が高いことから、特に、Yb添加光ファイバが高パワー出力用の増幅用光ファイバとして広く利用されている。Ybも他の希土類元素と同じく、励起光を用いて励起される。一方、増幅用光ファイバ内で吸収しきれなかった励起光は増幅用光ファイバの他端から出射される。
【0004】
光ファイバレーザの構成として、例えば、両端にファイバブラッググレーティング(FBG:Fiber Bragg Grating)や、反射ミラーなどを利用した共振器構造が採用されている場合、共振器内に光スイッチや音響光学変調器(AOM:Acoustic Optical Modulator)を配置することでパルス変調を行っている。また、特許文献1に記載されたようなMOPA(Master Oscillator Power Amplifier)型の光ファイバレーザは、被増幅光を出力する種光源(発光素子)を直接変調あるいは外部変調することでパルス変調を行い、得られた光パルスを増幅することで高パワー出力光を得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−042981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発明者らは、従来のレーザ装置について検討した結果、以下のような課題を発見した。すなわち、従来のレーザ装置を利用したレーザ加工では、レーザ光出力ポートとして複数の光出射端からのレーザ光供給を実現する場合、第1に、レーザ光出力ポートとして1つの光出射端を有するサブレーザ装置を数台並べる方法、第2に、レーザ光出力ポートとして複数の光出射端を用意し、最終段の光増幅器で増幅して得られた加工用レーザ光をミラーなどの光学素子を用いて分岐することにより、光出射端それぞれに分岐されたレーザ光を供給する方法が採用されてきた。
【0007】
しかしながら、上記第1の方法では、パルスレーザ光を利用した加工の場合、レーザ装置を構成する複数のサブレーザ装置、特に各サブレーザ装置の光出射端間において、それぞれ出射されるレーザ光(光パルス)の位相差が発生・増大してしまうおそれがある。なお、光パルスの位相差は、発振器として機能する各サブレーザ装置自体のパルス動作に起因して生じるものである。加えて、複数のサブレーザ装置を並列配置することで構成されたレーザ装置では、その占有空間が拡大してしまう。また、出力ポート数に応じて、装置台数も増加し、消費電力が増大する。一方、上記第2の方法では、レーザ光出力ポートに到達する直前に加工用レーザ光を分岐するため、最終段光増幅器で、予め分岐前のレーザ光パワーを大幅に強める必要があり、ファイバの損傷や、非線形現象による出力減少が発生してしまうおそれがある。
【0008】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、レーザ光出力ポートを構成する複数の光出射端それぞれからのレーザ光供給を可能にするための構造を備えるとともに、全体として、装置の大型化や低消費電力化の問題と最終段光増幅器でのハイパワー化の問題を解決するための構造を備えたレーザ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するため、本発明に係るレーザ装置は、発光素子と、光分岐器と、複数の最終段光増幅器と、複数の光出射端を備える。発光素子は、所定波長の被増幅光を出力する。光分岐器は、被増幅光を入力し、複数の光に分岐する。この分岐器が発光素子と複数の光出射端との間に配置されることにより、発光素子と複数の光出射端との間において多分岐光路が構成される。複数の最終段光増幅器は、それぞれが光分岐器の分岐線路に対応しており、光分岐器により分岐された光(分岐光)を個別に増幅する。そのため、これら複数の最終段光増幅器は、光分岐器と複数の光出射端との間の対応する光路上にそれぞれ配置される。複数の光出射端は、複数の最終段光増幅器と一対一に対応しており、それぞれ、対応する最終段光増幅器において増幅された増幅光を出力する。なお、各光増幅器に入射する被増幅光の波長は、基本的に同一である。
【0010】
上述のように、本発明に係るレーザ装置によれば、光分岐器と複数の光出射端との間に、それぞれが複数の光出射端のいずれかに対応した複数の最終段光増幅器が配置されている。この構成では、分岐前の被増幅光パワーを過剰に増大させる必要がないので、分岐器前の光ファイバの非線形現象の発現の抑圧が可能になる。また、光分岐器の上流側、すなわち、パルス変調される発光素子側が共通しているため、その分だけ各光出射端での光パルスの位相差が低減し得る。
【0011】
ただし、光出射端それぞれにおける出力光パワーを更に高くしたい場合、発光素子の出力を増加させるだけでは不十分なケースも十分考えられる。その場合、本願発明に係るレーザ装置は、発光素子と光分岐器との間の光路上に配置された中間光増幅器を備えてもよい。
【0012】
上述のような構造を有する、本発明に係るレーザ装置において、発光素子から複数の光出射端までの光路長それぞれは、最大光路長と最小光路長との差が1m以下になるように設定されるのが好ましい。この構成は、複数の光出射端から出力される光パルスの位相差を低減する上で、より好ましい。
【0013】
本願発明に係るレーザ装置に適用可能な種々の構成として、光分岐器と複数の最終段光増幅器の間のそれぞれ光路上に、第1の光路長調整用光ファイバが配置されてもよい。また、中間光増幅器と複数の最終段光増幅器それぞれの増幅媒質は、Yb元素添加光ファイバであってもよい。発光素子と光分岐器との間の光路上に中間光増幅器が配置される構成において、当該レーザ装置は、誘導ラマン散乱(SRS:Stimulated Raman Scattering)の影響を低減するため、中間光増幅器と光分岐器との間に配置された第2の光路長調整用光ファイバを備えてもよい。第2の光路長調整用光ファイバの長さは、SRS閾値が問題ない範囲で設定されるのが好ましい。デリバリ用光ファイバ同様、第2の光路長調整用光ファイバでも高パワーの光が入力されるので、この場合、第2の光路長調整用光ファイバの長さ調節が重要にある(長さが長いとSRSが問題になるおそれがある)。
【0014】
光分岐器の上流側に中間光増幅器が配置される一方、光分岐器の下流側に複数の最終段光増幅器が配置された構成において、これら複数の最終段光増幅器は常時増幅動作を行っているわけではない。すなわち、当該レーザ装置の動作中、増幅動作を行っている有効な最終段光増幅器(光分岐器により被増幅光として分岐された分岐光が入力されている最終段光増幅器)のグループと、増幅動作を行っていない無効な最終段光増幅器(分岐光が入力されていない最終段光増幅器)のグループとが存在し、その割合は変動する可能性がある。したがって、複数の最終段光増幅器のうち分岐光を入力する有効な最終段光増幅器(増幅動作を行っている最終段光増幅器)の数の変動に依存することなく、有効な最終段光増幅器それぞれに入力される光のパワーは、一定であるのが好ましい。そのため、本発明に係るレーザ装置は、増幅動作を行っている有効な最終段光増幅器の数に応じて、発光素子又は中間光増幅器から出力される被増幅光のパワーを設定するパワー設定手段を、備えるのが好ましい。
【0015】
本発明に係るレーザ装置において、複数の最終段光増幅器のうち少なくとも2以上の最終段光増幅器で使用される増幅用光ファイバそれぞれは、出力光パワーが一致しないように、互いに異なるモードフィールド径(MFD)を有してもよい。この場合、光出射端ごとに所望のパワーの加工用出力光を得ることが可能になる。
【0016】
本発明に係るレーザ光源は、発光素子を含む光源と光分岐器が光増幅器を介することなく光学的に接続された構成を有してもよい。この場合、本発明に係るレーザ装置は、光源と、光分岐器と、複数の最終段光増幅器と、複数の光出射端と、複数の第1の光路長調整用光ファイバと、複数のデリバリ用光ファイバを備える。光源は、被増幅光を出力する。光分岐器は、光源から出力された被増幅光を分岐する光学部品であって、光源と複数の最終段光増幅器との間で多分岐光路を構成する。複数の最終段光増幅器は、光分岐器と複数の光出射端との間に位置する複数の分岐線路に対応して設けられており、それぞれ、対応する分岐光を増幅する。複数の光出射端は、複数の最終段光増幅器に一対一に対応して設けられており、それぞれは、対応する最終段光増幅器で増幅された増幅光を出力する。上述の構成において、複数の第1の光路長調整用光ファイバは、光分岐器と複数の最終段光増幅器との間の分岐線路上に、それぞれ配置される。また、複数のデリバリ用光ファイバは、複数の最終段光増幅器と複数の光出射端とを一対一に接続させるよう、それぞれ配置されている。
【0017】
上述のように、光源と光分岐器が光増幅器を介することなく光学的に接続された構成において、光源は、被増幅光を出力する発光素子と、この発光素子から出力された被増幅光を光分岐器へ導く第2の光路長調整用光ファイバとを含んでもよい。なお、光分岐器の分岐線路にそれぞれ対応して設けられた複数の最終段光増幅器のうち増幅動作を行う有効な最終段光増幅器の数が多くなる場合、光源は、上述の中間光増幅器として、発光素子と第2の光路長調整用光ファイバとの間に設けられた別の光増幅器を含んでもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、種光源である発光素子の数が、レーザ構成最終段の光増幅器の数よりも少ない構成を備えるため、最終段以外の光増幅器及び被増幅光源の数を減らすことができ、省スペース化および低消費電力化が可能になる。
【0019】
複数の光出射端それぞれにレーザ光を供給する光分岐器の下流側に、複数の光出射端それぞれに対応した複数の最終段光増幅器を配置したことにより、分岐前のレーザ光パワーを増大させる必要がないため、装置全体として非線形現象の影響低減が可能になる。
【0020】
複数の光出射端に対して光分岐器の上流側の構成(種光源を含む)が共通化されているため、分岐以降の光路長を調整・設定することで、光出射端から出力される光パルス間の位相差が効果的に低減される。また、光分岐器と最終段光増幅器との間の光路長調整用光ファイバで光路長を調整することで、最終段光増幅器以降のデリバリ用光ファイバで光路長を必要以上に長くすることがないので、その分非線形現象の影響を受けづらくしている。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1比較例に係るレーザ装置(光ファイバレーザ)の構成を示す図である。
【図2】増幅用光ファイバの断面構造を示す図及びその屈折率プロファイルである。
【図3】増幅用光ファイバの吸収断面積及び放出断面積それぞれの波長依存性を示すグラフである。
【図4】デリバリ用光ファイバの断面構造を示す図及びその屈折率プロファイルである。
【図5】コンバイナの構成を説明するための図である。
【図6】第2比較例に係るレーザ装置(光ファイバレーザ)の構成を示す図である。
【図7】第3比較例に係るレーザ装置(光ファイバレーザ)の構成を示す図である。
【図8】第1比較例に係るレーザ装置における平均出力5Wの種光パルスおよび平均出力10Wの種光パルスそれぞれの増幅特性を示す。
【図9】第2比較例に係るレーザ装置において発生する光パルスの位相差を説明するための図である。
【図10】第3比較例に係るレーザ装置の各部におけるパルスレーザ光のスペクトルである。
【図11】本発明に係るレーザ装置(光ファイバレーザ)の第1実施形態の構成を示す図である。
【図12】最終段光増幅器の種々の構成例を示す図である。
【図13】第1実施形態に係るレーザ装置の光出射端におけるパルスレーザ光と、第3比較例に係るレーザ装置の光出射端におけるパルスレーザ光スペクトルである。
【図14】本発明に係るレーザ装置(光ファイバレーザ)の第2実施形態の構成を示す図である。
【図15】本発明に係るレーザ装置(光ファイバレーザ)の第3実施形態の構成を示す図である。
【図16】第2及び第3実施形態に係るレーザ装置における光分岐器の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係るレーザ装置の各実施形態を、図1〜図16を参照しながら詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0023】
以下の説明では本実施形態と対比されるべき比較例について説明した後に、比較例と対比しつつ本実施形態及び変形例について説明する。
【0024】
(第1比較例)
図1は、本発明のレーザ装置における基本的な構成要素を含む第1比較例に係るレーザ装置(光ファイバレーザ)の構成を示すものであって、具体的にはMOPA方式の光ファイバレーザの構成を示す。すなわち、この第1比較例に係る光ファイバレーザ100は、レーザ光出力ポートとして単一の光出射端を有する光ファイバレーザの構造を備える。図1(a)において、第1比較例に係る光ファイバレーザ100は、発光素子である種光源41と、変調器51、中間光増幅器AMP0と、最終段光増幅器AMP1と、デリバリ用光ファイバ11と、光出射端70を備える。最終段光増幅器AMP1は、増幅用光ファイバ10、コンバイナ20、励起光源31および光ファイバ32を備える。また、中間光増幅器AMP0も基本的には最終段光増幅器AMP1と同様の構造を備え、増幅用光ファイバ61を備える。図1(a)に示したように、種光源41は、電気信号線52を介して変調器51に接続されており、種光源41に対して変調器51が内蔵する所定の基本パルス変調パターンに従って直接変調することで、種光パルス(被増幅光としてのパルスレーザ光)が繰り返し生成される。なお、変調器51における基本パルス変調パターンの設定の操作は、手動でもよいし、外部トリガー信号線を介してでもよい。なお、この明細書において、各図に示された記号「×」は、接続点を意味し、例えば光ファイバ間を融着等により接続する場合、ファイバ融着接続点を意味する。
【0025】
光ファイバレーザ100では、光ファイバ32を通過した励起光源31からの励起光と、光ファイバ42及び光アイソレータ61を通過した種光源41からの種光パルスが、コンバイナ20により合波される。コンバイナ20からの合波光は、増幅用光ファイバ10の一端に入射される。なお、励起光源31は、図1(b)に示されたように、所定波長の励起光を、コンバイナ20を介して増幅用光ファイバ10に供給する複数のレーザダイオード(LD1〜LD6)(個数は必要に応じて決定)により構成されてもよい。
【0026】
合波された励起光及び種光パルスが伝搬する増幅用光ファイバ10内では、増幅用光ファイバ10に添加された希土類元素(Yb、Er、Tm、Ho、Nd、Pr、Tbなど)が励起光により励起されることにより、種光パルスが増幅される。そして、増幅用光ファイバ10において増幅された種光パルスは、増幅用光ファイバ10の他端で融着接続されたデリバリ用光ファイバ11を通過した後、光出射端70から外部へ出力される。
【0027】
例えば、増幅用光ファイバ10は、図2(a)及び2(b)に示すような断面構造及び屈折率プロファイルを有する。すなわち、増幅用光ファイバ10は、図2(a)に示すように、所定軸に沿って伸びた、所定の屈折率を有するコア10aと、コア10aの外周に設けられた、コア10aよりも低い屈折率を有する第1クラッド10bと、第1クラッド10bの外周に設けられた、第1クラッド10bよりも低い屈折率を有する第2クラッド10cを備える。図2(b)は、増幅用光ファイバ10の径方向L1(増幅用光ファイバ10の光軸に直交する方向)に沿った屈折率プロファイル150を示す。領域151は、コア10aの径方向L1に沿った屈折率、領域152は、第1クラッド10bの径方向L1に沿った屈折率、領域153は、第2クラッド153の径方向L1に沿った屈折率をそれぞれ示す。コア10a、第1クラッド10b、第2クラッド10cは、ダブルクラッド構造を構成する。コア10aは、種光パルスをシングルモード伝搬させ、第1クラッド10bは励起光をマルチモード伝搬させる。コア10aには、希土類元素としてYbが添加されており、種光パルスはコア10a内で増幅される。
【0028】
増幅用光ファイバ10における励起光吸収は、増幅用光ファイバ10の特性により決定され、主に、モードフィールド径(MFD)、第1クラッド10bの外径、及び、コア10aにおける希土類元素添加濃度の調整により変化する。図3は、Yb添加光ファイバの吸収断面積及び放出断面積それぞれの波長依存性を示す。グラフG310は吸収断面積を示し、グラフG320は、放出断面積を示す。このYb添加光ファイバ(増幅用光ファイバ10に相当)は、Yb添加量が10000ppm、MFDが7μm、第1クラッド10bの外径が130μm、長さ5mで、励起波長915nm波長帯において約2.4dBの励起光が吸収される。なお、励起光の波長帯は、940nm帯や975nm帯であってもよいが、添加される希土類元素の種類によって異なる。
【0029】
励起光源31は、上述のように単一のレーザダイオードで構成されても、また、図1(b)に示すように複数のレーザダイオードLD1〜LD6により構成されてもよい。励起光源31から出力される励起光の波長は915nm帯、940nm帯または975nm帯である。種光源41は、例えばLD、VCSELなどの発光素子である。変調器51は、電気信号線52を介して種光源41に駆動用電気信号を印加することで、種光源41を直接変調する(パルス変調)。種光源41から出力される種光パルスの波長は、1030nm〜1130nmの波長範囲内にあり、例えば1060nmである。なお、パルス変調は、外部変調であってもよい。
【0030】
励起光源31とコンバイナ20との間に設けられた光ファイバ32及びデリバリ用光ファイバ11のそれぞれは、図4に示したような断面構造及び屈折率プロファイルを有する。なお、図4には、光ファイバ32の断面構造および屈折率プロファイルだけ示されているが、デリバリ用光ファイバ11も同様の断面構造および屈折率プロファイルを有する。すなわち、図4(a)に示すように、光ファイバ32、11は、所定軸沿って伸びた、所定の屈折率を有するコア32aと、コア32aの外周に設けられた、コア32aよりも低い屈折率を有するクラッド32bを備える。また、図4(b)は、光ファイバ32の径方向L2(光ファイバ32の光軸に直交する方向)に沿った屈折率プロファイル320であり、領域321は、コア32aの径方向L2に沿った屈折率、領域322は、クラッド32bの径方向L2に沿った屈折率をそれぞれ示す。なお、コア32aは、励起光源31から出力された励起光をマルチモード伝搬する。
【0031】
図5は、コンバイナ20の構成を示す。この図5に示したコンバイナ20は、一方の側に複数(図5の例では7個)の光入出力ポートP1〜P7を有し、他方の側に共通ポートP0を有する。コンバイナ20は、光入出力ポートP1〜P7に入力された光を合波し、共通ポートP0から出力する。逆に、コンバイナ20は、共通ポートP0に入力された光を分岐し、分岐光それぞれを光入出力ポートP1〜P7から出力する。
【0032】
コンバイナ20の共通ポートP0側の光ファイバは、増幅用光ファイバ10と同様のダブルクラッド構造を有し、増幅用光ファイバ10に接続される。光入出力ポートP1は、光ファイバ42を介して種光源41に光学的に接続される。光入出力ポートP2は、光ファイバ32を介して励起光源31に光学的に接続される。なお、励起光源31からの励起光の入力ポートは、図1(a)では1つだけを示したが、図1(b)に示すように、他の光入出力ポートP3〜P7も、他の光ファイバを介して他の励起光源LD1〜LD6に光学的に接続されてもよい。
【0033】
(第2および第3比較例)
レーザ出力ポートとして2つの光出射端を用意し、各光出射端からそれぞれ5Wのレーザ光供給を実施する場合、図1(a)に示す光ファイバレーザ100と同一構造をそれぞれ有する2つの光ファイバレーザを用意し、それぞれの光ファイバレーザから5Wのレーザ光を出力させる構成(第2比較例)と、レーザ光出力ポート側において10Wのレーザ光を2分岐し、2つの光出射端それぞれから5Wのレーザ光を出力する構成(第3比較例)が考えられる。なお、図6は、第2比較例に係るレーザ装置(光ファイバレーザ)の構成を示す図であり、図7は、第3比較例に係るレーザ装置(光ファイバレーザ)の構成を示す図である。
【0034】
図6に示すように、第2比較例に係る光ファイバレーザ110は、サブレーザ装置として、それぞれが図1(a)の光ファイバレーザ100と同一構造を有するレーザ1およびレーザ2が並列配置されることにより構成されている。また、レーザ1は光路長L10を有する一方、レーザ2は光路長L20を有する。レーザ1およびレーザ2のいずれにおいても、光路長は、種光源41における種光パルスの出射端面から光出射端70における出射端面までの距離(実質的には、種光源41から光出射端70までのファイバ長)で規定される。
【0035】
第3比較例に係る光ファイバレーザ120は、図7に示すように、レーザ光出力ポート側の構造を除き、図1(a)の光ファイバレーザ100と同一構造を有する。すなわち、第3比較例に係る光ファイバレーザ120では、レーザ光出力ポートが、最終段光増幅器AMP1から出力されたレーザ光(加工用レーザ光)を2分岐するための光カプラ21と、2つの光出射端70a、70bと、光カプラ21と2つの光出射端70a、70bそれぞれを光学的に接続するためのデリバリ用光ファイバ11a、11bにより構成されている。
【0036】
図1(a)の光ファイバレーザ100においてパルス幅5ns、繰り返し周波数100kHzでパルス変調させたときの、平均出力5Wの種光パルスおよび平均出力10Wの種光パルスそれぞれの増幅特性を図8に示す。この図8において、グラフG810は平均出力10Wの種光パルスの増幅特性であって、約35kWのパルスピークを有する。一方、グラフG810は、平均出力5Wの種光パルスの増幅特性であって、約17kWのパルスピークを有する。平均出力10Wおよび5Wいずれの種光パルスの増幅特性もパルスピークはほぼ一致することが分かる。
【0037】
第2比較例に係る光ファイバレーザ110(図6)では、同一構造を有するレーザ1およびレーザ2が並列配置されるため、その設置空間が光ファイバレーザ100の2倍以上必要になる。また、レーザ1およびレーザ2間において、光路長L10と光路長L20の差や、種光パルスとしてレーザ光をパルス化する変調器51の位相差が影響する。そのため、レーザ1の光出射端70とレーザ2の光出射端70との間では、光パルスの位相差が発生してしまうおそれがあり、加工時の位置精度のずれが大きくなってしまう。例えば、レーザ1の光路長L10とレーザ2の光路長L20との差が1mの場合、図9に示すように、出力される光パルスには5nsの伝搬遅延(遅延差)が生じ、レーザ1の光出射端とレーザ2の光出射端70間において光パルスの位相差が発生してしまう。なお、図9は、第2比較例に係る光ファイバレーザ110において発生する光パルスの位相差を説明するための図である。
【0038】
第3比較例に係る光ファイバレーザ120(図7)では、上述のようなレーザ1の光出射端70とレーザ2の光出射端70との間での光パルスの位相差は軽減される。しかしながら、装置全体として、この第3比較例に係る光ファイバレーザ120では、消費電力の増大を招く可能性がある。また、平均出力15Wのレーザ光をパルス化した際に、非線形現象が大きく発現してしまい、所定のパルスピークが得られない可能性がある。平均出力15Wの種光パルスが伝搬する各部(図7において、矢印Aおよび矢印Bでそれぞれ示す部位)で発生する非線形現象が図10に示すように光ファイバレーザ120における各部に伝搬してしまう。そのため、第3比較例に係る光ファイバレーザ120では、非線形現象によるレンズ色収差、波長損失特性が問題となる。なお、図10は、第3比較例に係るレーザ装置の各部におけるパルスレーザ光のスペクトルである。また、図10において、G1010は、第3比較例に係る光ファイバレーザ120(図7)において、矢印Aで示された最終段光増幅器AMP1の出射端における光パルスのスペクトルを示し、G1020は、矢印Bで示された光出射端70における光パルスのスペクトルを示す。
【0039】
(第1実施形態)
本発明に係るレーザ装置の第1実施形態について説明する。図11は、第1実施形態に係る光ファイバレーザ200の構成を示す図である。この光ファイバレーザ200は、レーザ光出力ポートして複数の光出射端を有するとともに、光出射端それぞれに対して一対一に対応する複数の最終段光増幅器を備える。すなわち、図11において、第1実施形態に係る光ファイバレーザ200は、発光素子である種光源41と、変調器51、中間光増幅器AMP0と、光分岐器80と、第1の光路長調整用光ファイバ82と、最終段光増幅器AMP11、AMP12と、デリバリ用光ファイバ11a、11bと、光出射端70a、70bを備える。なお、中間光増幅器は、1段では増幅パワーが不足する場合は、多段に構成しても良い。
【0040】
上述の種光源41と、変調器51、中間光増幅器AMP0については、図1(a)の光ファイバレーザ100と同様の構造を有する。すなわち、この第1実施形態に係る光ファイバレーザ200においても、中間光増幅器AMP0は増幅用光ファイバ61を備える。また、図1(a)の光ファイバレーザ100と同様に、種光源41は、電気信号線52を介して変調器51に接続されており、種光源41に対して変調器51が内蔵する所定の基本パルス変調パターンに従って直接変調することで、種光パルス(被増幅光としてのパルス光)が繰り返し生成される。変調器51における基本パルス変調パターンの設定の操作は、手動でもよいし、外部トリガー信号線を介してでもよい。このように、第1実施形態では、種光源41および中間光増幅器AMP0は図1(a)の光ファイバレーザ100と同様の構造を有するが、最終段光増幅器AMP11、AMP12は必要な光出射端70a、70bの数だけ準備されている。なお、この第1実施形態では、中間光増幅器AMP0からの種光パルスを光分岐器80で分岐し、それぞれ分岐された種光パルス(分岐光)が第1の光路長調整用光ファイバ82を介して最終段光増幅器AMP11、AMP12のそれぞれに供給される。当該光ファイバレーザ200における出力パワーは、1光出射端当り5Wである。また、この第1実施形態では、種光源41と変調器51により光源Sが構成される。
【0041】
光分岐器80の下流側に位置する一方の分岐線路の構成要素(第1の光路長調整用光ファイバ82、最終段光増幅器AMP11、デリバリ用光ファイバ11a、光出射端70a)と、他方の分岐線路の構成要素(第1の光路長調整用光ファイバ82、最終段光増幅器AMP12、デリバリ用光ファイバ11b、光出射端70b)も、第1の光路長調整用光ファイバ82、を除き、図1(a)の光ファイバレーザ100における最終段光増幅器AMP1、デリバリ用光ファイバ11、光出射端70それぞれと同様の構造を有する。第1の光路長調整用光ファイバ82それぞれは、デリバリ用光ファイバ11と同様の構造を有する。
【0042】
光出射端70a、70bの数は、種光源41の数よりも多い。また、光分岐器80は、種光源41発光素子からのレーザ光を複数の光出射端それぞれに供給するため、種光源41に対応した入力ポートと、光出射端70a、70bそれぞれに対応した出力ポートを有する2分岐光カプラ81を含む。この光分岐器80は、種光源41と光出射端70a、70bそれぞれとを光学的に結合する光路の一部を構成する。最終段光増幅器AMP11、AMP12は、光出射端70a、70bのいずれかに対応しており、光出射端70a、70bのうち対応する一方と光分岐器80との間の光路上にそれぞれ配置されている。
【0043】
最終段光増幅器AMP11、AMP12のそれぞれは、互いに異なる構造を備えてもよく、また、同じ構造を備えてもよい。なお、最終段光増幅器AMP11、AMP12の構造としては、例えば図12に示す種々の構造が適用可能である。
【0044】
例えば、最終段光増幅器AMP11、AMP12の少なくとも一方は、図1(a)の最終段光増幅器AMP1と同様の構造(図12(a)に示す前方励起を実現する構造)を備えてもよい。すなわち、この前方励起を実現する最終段光増幅器AMP1n(n=1〜N)は、増幅用光ファイバ10、コンバイナ20、励起光源31および光ファイバ32を備える。増幅用光ファイバ10は、図2に示す断面構造および屈折率プロファイル150を有する。コンバイナ20は、図5に示す構造を有する。励起光源31は、図1(b)に示すように複数のレーザダイオードLD1〜LD6で構成されてもよい。また、光ファイバ32は、図4に示す断面構造および屈折率プロファイル320を有する。
【0045】
最終段光増幅器AMP11、AMP12の少なくとも一方は、図12(b)に示す後方励起を実現する構造を備えてもよい。すなわち、この後方励起を実現する最終段光増幅器AMP1n(n=1〜N)は、増幅用光ファイバ10、コンバイナ40、励起光源33および光ファイバ34を備える。励起光源33は、単一のレーザダイオードで構成されてもよく、また、図1(b)に示すように複数のレーザダイオードLD1〜LD6で構成されてもよい。コンバイナ40は、コンバイナ20と同様に、図5に示す構造を有する。ただし、コンバイナ40では、共通ポートP0が増幅用光ファイバ10の光出射端に接続される一方、入出力ポートP1が対応するデリバリ用光ファイバに接続される。他の入出力ポートP2〜P7は、用意された励起光源31(単一のレーザダイオード又は複数のレーザダイオードLD1〜LD6)にそれぞれ接続される。光ファイバ34は、光ファイバ32と同様に、図4に示す断面構造および屈折率プロファイル320を有する。
【0046】
最終段光増幅器AMP11、AMP12の少なくとも一方は、図12(c)に示す双方向励起を実現する構造を備えてもよい。すなわち、この双方向励起を実現する最終段光増幅器AMP1n(n=1〜N)は、コンバイナ20、励起光源31、光ファイバ32、増幅用光ファイバ10、コンバイナ40、励起光源33および光ファイバ34を備える。励起光源31と励起光源33のそれぞれは、上述のように同じ構造を有する。コンバイナ20とコンバイナ40のそれぞれも、同じ構造を有する。光ファイバ32と光ファイバ34のそれぞれも、同じ断面構造および屈折率プロファイル320を有する。
【0047】
上述のように構成された、第1実施形態に係る光ファイバレーザ200によれば、光照射端70a、70b間における光パルスの位相差の低減、消費電力の抑圧、および、光照射端70a、70b間における非線形閾値の抑圧を可能にする。
【0048】
以下、1光出射端当りの平均出力、パルスピークを揃えた構成に関して、第1実施形態の構成と、上述の各比較例の構成とを比較する。従来の構成と本発明の構成を比較する。
【0049】
占有空間に関し、第2比較例に係る光ファイバレーザ110(図6)は、用意されるサブレーザ装置(レーザ1、レーザ2)の台数分だけ占有空間を必要とする。一方、レーザ光出力ポートとしての光出射端の数が増加するほどその占有面積も大きくなるため、光1実施形態に係る光ファイバレーザ200の占有面積は、第1比較例に係る光ファイバレーザ100(図1)よりも増加するが、第2比較例に係る光ファイバレーザ110(図6)よりも抑えられる。
【0050】
消費電力に関し、光源S(種光源41)1個のみの消費電力で計算すると、第1実施形態に係る光ファイバレーザ200の消費電力は、約48W、第2比較例に係る光ファイバレーザ110(図6)では約47W、第3比較例に係る光ファイバレーザ120(図7)では約64Wになる。第2比較例では、ポート数に応じて種光源の個数が増加するので、光源部分の消費電力が増加する。種光源数が同じ、第1実施形態と第3比較例と比較すると、第1実施形態の消費電力は約25%抑圧することができる。これは、第3比較例に係る光ファイバレーザ120の場合、高出力化のために励起光源部分の電流、温度制御の負荷が大きくなるためである。
【0051】
非線形現象の発現に関し、第2比較例に係る光ファイバレーザ110(図6)と第1実施形態に係る光ファイバレーザ200とで、非線形現象の発現具合に差異はない。ただし、第3比較例に係る光ファイバレーザ120(図7)と第1実施形態に係る光ファイバレーザ200との比較結果を図13に示す。この図13は、パルス動作状態において、同じ平均出力(1光照射端当り5W)、同じパルスピーク(1光照射端当り約15kW)でのスペクトルを示す。なお、図13において、G1310は、第1実施形態に係る光ファイバレーザ200のスペクトル、G1320は、第3比較例に係る光ファイバレーザ120のスペクトルを示す。図13に示す比較結果から、第1実施例の構成では非線形現象、つまりSRSが抑圧される一方、第3比較例の構成ではSRSが大きく発現することが分かる。したがって、SRSにより、レンズ色収差、波長損失特性が問題となってきた場合、本発明の構成は有利となる。
【0052】
レーザ光出力ポートを構成する光出射端間における光パルスの位相差について言及すれば、パルス幅が数nsオーダーで変調される場合、光出射端間における光パルスの位相差も数nsレベルで調整する必要がある。種光源から各光出射端までの光路を構成する光ファイバ内の光伝搬を考えると、1mの光路長間で約5ns位相がずれる。この第1実施形態の構成では、最終段光増幅器AMP11、AMP12のみで光出射端70a、70b間における光パルスの位相差が決定されるため、最終段光増幅器AMP11、AMP12のそれぞれにおける光路長(ファイバ長)を調整することで光パルスの位相差を吸収させることができる。例えば、第1実施形態の構成において、最終段光増幅器AMP11、AMP12それぞれにおけるファイバ全長は約5mであり、ファイバ長の調整は容易である。これに対し、第2比較例の構成(図6)では、レーザ1における全ファイバ長と、レーザ2における全ファイバ長で光出射端70それぞれから出力される光パルスの位相差が決まるため、ファイバ長の調整、レーザ1およびレーザ2間での変調器51の位相調整が必要であり、調整作業の困難さが増してしまう。また、第2比較例の構成では、レーザ1およびレーザ2それぞれにおける全ファイバ長は約50mであり、光パルスの位相差に影響する全ファイバ長に対する1mのファイバ長調整の割合は、第2比較例と第1実施形態とでは一桁程度異なることからも、第2比較例における調整作業の困難さが増大することは明白である。
【0053】
(第2実施形態)
図14は、本発明に係るレーザ装置(光ファイバレーザ)の第2実施形態の構成を示す図である。この第2実施形態に係る光ファイバレーザ210は、1つの光源S(発光素子である種光源41と変調器51を含む)、中間光増幅器AMP0、光分岐器80、2つの最終段光増幅器AMP11、AMP12が並列に配置された増幅ユニットU、光出射端70a、70bを備えた点において、上述の第1実施例と同様である。また、第2実施形態に係る光ファイバレーザ210も、第1実施形態に係る光ファイバレーザ200と同様に、光分岐器80と最終段光増幅器AMP11、AMP12の間の分岐線路上に配置された第1の光路調節用光ファイバ82と、一対一に対応している最終段光増幅器AMP11、AMP12と光出射端70a、70bの間に配置されたデリバリ用光ファイバ11a、11bを備える。
【0054】
第2実施形態に係る光ファイバレーザ210は、第2の光路長調整用光ファイバ83と、バンドパスフィルタ84と、パワー設定手段300を備えた点で、第1実施形態に係る光ファイバレーザ200と異なる。
【0055】
第2の光路長調整用光ファイバ83の長さは、SRS閾値が問題ない範囲で設定されるのが好ましい。また、パワー設定手段は、増幅動作を行っている有効な最終段光増幅器(光分岐器80により分岐され、対応する分岐線路上を伝搬してきた被増幅光としての種光パルスが入力された最終段光増幅器)の数に応じて、種光源41又は中間光増幅器AMP0から出力される被増幅光のパワーを設定する。通常、光分岐器80の上流側に中間光増幅器AMP0が配置される一方、光分岐器80の下流側に最終段光増幅器AMP11、AMP12が配置された構成において、これら最終段光増幅器AMP11、AMP12は常時増幅動作を行っているわけではない。すなわち、当該光ファイバレーザ210の動作中、増幅動作を行う有効な最終段光増幅器の数は変動している。したがって、この第2実施形態では、最終段光増幅器AMP11、AMP12のうち分岐光を入力する有効な最終段光増幅器(増幅動作を行っている最終段光増幅器)の数の変動に依存することなく、有効な最終段光増幅器それぞれに入力される光のパワーを一定にするため、パワー設定手段300が設けられている。
【0056】
第2の光路長調整用光ファイバ83の長さは、SRS閾値が問題ない範囲で設定されるが、この「SRSの閾値が問題ない範囲」は、発明者らによるシミュレーションの結果及び実測値から、「波長1060nm(被増幅光の波長)のピーク成分と、波長1110nm(一次SRSの中心波長)のピーク成分との差が20dB以上であること」を意味する。ただし、このような具体的な数値は、最終段光増幅器AMP11、AMP12における増幅用光ファイバ10がYbDFであり、これら増幅用光ファイバ10が波長1060nmの被増幅光を増幅することを前提としている。基本波(被増幅光の波長1060nm)に対する一次SRS波長1110nmは、最終段光増幅器AMP11、AMP12において利得を生じる波長である。また、基本波の利得増加のためには、基本波以外の他の波長成分は除去されることが望ましい。SRSのうち基本波に対する一次SRS光の比率は、通常20dB以上であることから、上記数値となる。
【0057】
この第2実施形態に係る光ファイバレーザ210において、第2の光路長調整用光ファイバ83と光分岐器80との間には、バンドパスフィルタ84が設けられている。このバンドパスフィルタ84は、通常30dB程度の出力差を有し、SRSを十分に除去できる。また、光源Sと光分岐器80との間に中間光増幅器AMP0が存在する構成では、SRS光だけでなく、ASE光も除去されるため、バンドパスフィルタ84は特に有効である。
【0058】
光源S、特に種光源41から光出射端70a、70bまでの各光路長は、第1実施形態に場合、第1の光路長調整用光ファイバ82とデリバリ用光ファイバ11a、11bにより調整される。また、第2実施形態の場合、各光路長は、第1の光路長調整用光ファイバ82、第2の光路長調整用光ファイバ83、及びデリバリ用光ファイバ11a、11bにより調整される。すなわち、これら光ファイバ82、83、11a、11bは、当該光ファイバレーザ200、210が実際の使用環境に設置される際の、配置用又は作業用の余長ファイバ(以下、配置/作業用余長という)として機能することになる。
【0059】
第2の光路長調整用光ファイバ83は、上述のように、長くなると、SRSの問題が発生し、一次SRS光が発生し、最終段での利得低化の原因となる他、基本波である被増幅光のパワー低下を招来し、光分岐器80での分岐数が増加すると最終段光増幅器AMP11、AMP12それぞれに十分なパワーの被増幅光を供給できなくなる可能性もある。そこで、この第2実施形態に係る光ファイバレーザ210において、パワー設定手段300が、最終段光増幅器AMP11、AMP12それぞれに必要なパワーを確保するため、中間光増幅器AMP0での利得を調整する。第2の光路長調整用光ファイバ83の長さは、この調整分の影響、すなわち一次SRS光の影響で、基本波パワーが必要以上に落ちない長さに設定される。中間光増幅器AMP0での利得は、SRSの影響も考慮して、最終段光増幅器AMP11、AMP12それぞれに必要なパワーに対し多めに設定されるのが好ましい。
【0060】
配置/作業用余長が、大きく必要なとき、第2の光路長調整用光ファイバ83の長さにも限界がある。このような場合は、不足した余長が、第1の光路長調整用光ファイバ82やデリバリ用光ファイバ11a、11bの長さで補完される。
【0061】
第1の光路長調整用光ファイバ82は、光分岐器80において分岐された被増幅光(分岐光)が伝搬する。このときの分岐光のパワーは低く、他の光路長調整用光ファイバ83、11a、11b等と比べて、第1の光路長調整用光ファイバ82は、SRSの影響を受けにくい。そのため、当該光ファイバレーザ210全体の配置/作業用余長は、第1の光路長調整用光ファイバ82によって調整されてもよい。
【0062】
デリバリ用光ファイバ11a、11bそれぞれは、積極的にSRS光を利用する場合以外、SRSの影響を受けない長さに設定しておくのが好ましい。SRSの影響がない場合、出力光は単色光となり、色収差により出力ビーム形状が歪むという問題も解消される。ただし、デリバリ用光ファイバ11a、11bの長さ調整がうまく行かず、SRS成分が出る場合には、その除去手段として、PBGF(フォトニックバンドギャップファイバ)がデリバリ用光ファイバ11a、11bに適用されてもよい。
【0063】
配置/作業用余長は、光分岐器80の下流側に位置する分岐線路ごとに異なる場合がある。その場合、光出射端70a、70bそれぞれで出力光の位相が異なることがある。これら出力光間の位相調整は、例えば、第1の光路長調整用光ファイバ82の長さを調節することにより対応可能である。
【0064】
光分岐器80の上流側に中間光増幅器AMP0が配置される一方、光分岐器80の下流側に複数の最終段光増幅器AMP11、AMP12が配置された構成において、増幅ユニットUの構成要素である複数の最終段光増幅器AMP11、AMP12は常時増幅動作を行っているわけではない。なお、この第2実施形態では増幅ユニットUを構成する最終段光増幅器の数は2であるが、後述する第3実施形態のように、N(2以上の整数)個の最終段光増幅器により増幅ユニットUが構成されてもよい。すなわち、当該第2実施形態に係る光ファイバレーザ210の動作中、被増幅光として分岐された種光パルスが入力される有効な最終段光増幅器のグループと、種光パルスが入力されない無効な最終段光増幅器のグループとが存在し、その割合は変動する可能性がある。この場合、僧服ユニットUを構成する最終段光増幅器AMP11、AMP12のうち増幅動作を行っている最終段光増幅器の数の変動に依存することなく、有効な最終段光増幅器に入力される光のパワーは、一定であるのが好ましい。そこで、当該光ファイバレーザ210は、パワー設定手段300を備える。このパワー設定手段300は、増幅動作を行っている有効な最終段光増幅器の数に応じて、光源S(具体的には種光源41)又は中間光増幅器AMP0から出力される被増幅光のパワーを設定するよう機能する。
【0065】
増幅ユニットUを構成する最終段光増幅器AMP11、AMP12(後述の第3実施形態ではN個の最終段光増幅器)のうち、有効な最終段光増幅器の数が増えたとき、光源S又は中間光増幅器AMP0のパワーが一定のままでは、有効な最終段光増幅器それぞれへの入力光パワーが小さくなってしまう。この場合、(1)被増幅光である分岐された種光パルスが入力された最終段光増幅器内でASE光が増大する、(2)パルスピークパワーの伸びに弊害を及ぼす、又は、(3)増幅用ファイバ10が破断される、などのおそれがある。
【0066】
そこで、当該第2実施形態に係る光ファイバレーザ210は、有効な最終段光増幅器の数に応じて、光源S又は中間光増幅器AMP0の出力パワーを設定又は調整できるように、パワー設定手段300を備える。
【0067】
パワー設定手段300による中間光増幅器AMP0の出力パワー調整は、中間光増幅器AMP0内の励起光光源(LD)の出力パワーを増減させるだけでよい。ただし、パワー設定手段300による光源Sの出力パワー調整は、種光源41へ供給される駆動電流値を変化させたときに、変調器51からの変調電圧値と温度を変更する必要性がある。
【0068】
この第2実施形態に係る光ファイバレーザ210は、光出射端70a、70bごとに所望のパワーの加工用出力光を得る構成を備えてもよい。なお、後述の第3実施形態においても同様である。この場合、増幅ユニットUを構成する最終段光増幅器AMP11、AMP12で使用される増幅用光ファイバ10それぞれは、非線形現象による制限を受けずに異なる出力光を効率的に増幅できるように、互いに異なるモードフィールド径(MFD)を有してもよい。互いに異なるMFDを有することにより、MFDに応じた光パワーを出力するように最終段の光増幅器への励起光パワーの供給を設定することができる。
【0069】
最終段光増幅器間における出力の優位な差としては、最低出力パワーを基準として0.5倍以上のパワー差があるのが好ましい。例えば、最終段光増幅器AMP11が最低出力パワー1であるとき、最終段光増幅器AMP12の出力パワーは1.5以上である。より具体的に「出力の優位な差」は、被増幅光の波長において増幅用光ファイバ10のMFDは、最低MFDを基準として1.22倍(≒1.2倍)異なる場合、出力パワーでは約1.49倍(≒1.5倍)となることを意味する。
【0070】
最終段光増幅器AMP11、AMP12の出力各ポート間で、出力パワーが同じになるように設定されてもよいが、使用状況によっては、何れかの最終段光増幅器のみの出力パワーを優位に設定することが求められることがある。
【0071】
その場合、用いられる増幅用光ファイバ10の被増幅光波長でのMFDが同じである環境下で、利得を調節することによって対応すると、パワー増大によりSRS上の問題が生じる。また、MFDを変えるために、コア径が異なる増幅用光ファイバを用いてもよいが、コア径が異なると、光分岐器80との接続損失等の問題が生じる可能性があるの。そのため、できれば、光分岐器80の出力ポートとは同じコア径でかつMFDが異なる増幅用光ファイバを用いる方が望ましい。なお、光分岐器80自体の各ポートでのコア径が異なる場合は、このような問題は気にしなくてよい。また、増幅用光ファイバのMFDを変える他の方法としては、NAを変える方法もある。接続損失が許容できる範囲であれば、コア径とNAを両方変更してもよい。
【0072】
増幅用光ファイバのMFDの変更範囲としては、例えば、基本波(被増幅光として分岐された種光パルス)の波長が1060nmの場合、6μm〜24μmである。なお、MFDの下限値は6μmであるが、非線形現象の影響が大きくなるので、特別な事情がなければ、設定されるべきMFDの値は、この下限値よりも大き目の値であるのが望ましい。また、MFDの上限値は24μmであるが、出力がマルチモード化する可能性があり、特別な事情がなければ、設定されるべきMFDの値は、この上限値よりも小さめの値であるのが望ましい。最終段光増幅器AMP11、AMP12それぞれの出力光をシングルモードにするためには、光分岐器80と最終段光増幅器AMP11、AMP12それぞれとのファイバ接続部で、被増幅光がシングルモードとして入力されるように十分注意を払うことが必要である。因みに、コア径10μm、NA0.08の増幅用光ファイバでは、そのMFDは12μmである。
【0073】
補足すると、最終段光増幅器AMP11、AMP12それぞれの構成のみの変更でも、最終段光増幅器AMP11、AMP12間の出力パワー調整は可能である。具体的には、最終段光増幅器AMP11、AMP12それぞれのコンバイナや増幅用ファイバのコア径を異ならせる。コア径を大きく(又は小さく)することで、非線形現象を抑圧でき、平均出力で比較した際に、パルスエネルギーやパルスピークを増加させることが可能になる。
【0074】
コア径の調整範囲は以下のように設定される。すなわち、通常用いている光ファイバのコア径は約10μm(NA=約0.08)である。このコア径の大きさに対して、例えば、(1)ダブルクラッド構造で閉じ込めが利くコア径、(2)被増幅光の波長からレーザのM2(ビーム品質)をある程度保ったまま、伝搬できるコア径、以上の2点を考慮し、コア径5μm〜20μm(NA=約0.08)が有効な範囲と言える。
【0075】
コア径が5μm未満では、SRS成分が増加してしまう。この場合、(1)パルスピークの弊害を生んでしまう、(2)接続のミスマッチが大きくなる、などの弊害がある。一方、コア径が20μmより大きい場合は、被増幅光の波長(1060nm)において高次モードが顕著に目だってしまう。この場合、(1)パワーの安定性への弊害、(2)レーザ出力をコリメートした際のビーム品質の劣化、などを生じさせてしまう。
【0076】
(第3実施形態)
本発明に係るレーザ装置の第3実施形態について説明する。図15は、第3実施形態に係る光ファイバレーザ220の構成を示す図である。この光ファイバレーザ220は、実質的に上述の第2実施形態に係る光ファイバレーザ210(図14)と同様の構造を備えるが、光分岐器80が多段に構成されている点で相違しており、レーザ光出力ポートとしてN(3以上の整数)個の光出射端701〜70Nを備える。レーザ光出力ポートである光出射端の数に合わせて光分岐器80の構成が異なっている。すなわち、第3実施形態に係る光ファイバレーザ220において、光分岐器80は、図16に示すように、中間光増幅器AMP0から最終段光増幅器AMP11〜AMP1Nそれぞれまでの光路長に差が生じないよう配置された複数の2分岐光カプラ81a、81b1、81b2、81c1、81c2、81c3、81c4、…を含む。この構成により、光分岐器80は、種光源41に対応した1つの入力ポートと、光出射端701〜70Nのそれぞれに対応した複数の出力ポートを有する。
【0077】
図15では、第2実施形態に係る光ファイバレーザ210の拡張構成が示されているが、この第3実施形態に係る光ファイバレーザ220の構成は、図11に示す第1実施形態に係る光ファイバレーザ200の拡張構成であってもよい(第2の光路長調整用光ファイバ83、バンドパスフィルタ84、パワー設定手段300がない構成)。また、図15に示す構成において、得られる作用、効果は、上述尾第2実施形態と同様である。
【0078】
この第3実施形態に係る光ファイバレーザ220において、第1の光路長調整用光ファイバ82を介して光分岐器80と接続されている最終段光増幅器AMP11〜AMP1Nは、光出射端701〜70Nのいずれかに対応している。また、一対一に対応した最終段光増幅器AMP11と光出射端701、…、最終段光増幅器AMP1Nと光出射端70Nは、それぞれ対応するデリバリ用光ファイバ111〜11Nによって接続されている。光分岐器80を構成する光カプラは、上述の1×2光カプラ(1入力−2出力の2分岐光カプラ)だけでなく、1×4光カプラ(1入力−4出力の4分岐光カプラ)、2×2光カプラ(2入力−2出力の光カプラ)でもよい。1×2光カプラの出力比を1:2とし、出力比の大きい側の出力ポートに、1×2光カプラ(出力比1:1)を配置すれば、全体として、出力の同じ3つの出力ポートを用意することもできる。2×2光カプラの場合は、入力ポートの一方を前段に位置する中間光増幅器AMP0からの被増幅光の入力ポートとし、他方のポートは、監視用に使用してもよい。
【0079】
光分岐器80の下流側に位置する分岐線路上に配置された最終段光増幅器AMP11〜AMP1Nのそれぞれは、上述の第1及び第2実施形態と同様に、図12(a)〜図12(c)のいずれかの構造を備える。
【0080】
上述のような消費電力、非線形性の発現、光パルスの位相差等に関し、第1及び第2実施形態に係る光ファイバレーザ200、210と同様の効果を奏する。
【0081】
上述の第1〜第3実施形態に係る光ファイバレーザ200〜220(図11、図14及び図15)は、何れも光源Sと光分岐器80との間に配置された中間光増幅器AMP0を備えているが、この中間光増幅器AMP0は、必ずしも必要はない。特に、近年、発光素子の性能は向上しており、光源Sに含まれる種光源41にも十分な光出力が得られる発光素子を適用することが可能になってきたからである。
【0082】
ただし、最終段光増幅器の数が多くなる場合(光出射端の増加)、中間光増幅器が必要になる。この場合、中間光増幅器として機能する光増幅器は光源S内に配置されればよい。特に、光増幅器を含む光源Sと光分岐器80とが中間光増幅器を介さずに接続される構成では、上述の第1〜第3実施形態と同様に、光分岐器80と複数の最終段光増幅器との間に第1の光路長調整用光ファイバ82が配置されるとともに、光源Sと光分岐器80との間に第2の光路長調製用光ファイバ83が配置されるのが好ましい。
【0083】
SRSの影響を受けるのは、第2の光路長調整用光ファイバ83の方で、当該第2の光路長調整用光ファイバ83はSRSの影響を受けない長さに設定されればよい。一方、SRSの影響の少ない第1の光路長調整用光ファイバ82の方は、当該光ファイバレーザ全体の光路長を調整するよう機能する。ただし、ある程度SRSの影響を残したい場合には、第2の光路長調整用光ファイバ83の長さを所望の長さに設定し、第1の光路長調整用光ファイバ82で当該光ファイバレーザ全体の光路長を調整すればよい。
【符号の説明】
【0084】
200、210、220…レーザ装置、41…種光源、AMP0…中間光増幅器、80…光分岐器、AMP1n(n=1〜N)…最終段光増幅器、70a、70b、701〜70N…光出射端、82…第1光路長調整用光ファイバ、83…第2光路長調整用光ファイバ、11a、11b、111〜11N…デリバリ用光ファイバ、300…パワー設定手段、S…光源、U…増幅ユニット。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被増幅光を出力する発光素子と、
前記被増幅光を入力し、複数の光に分岐する光分岐器と、
前記光分岐器により分岐された前記複数の光をそれぞれ入力し、個々に増幅する複数の最終段光増幅器と、
前記複数の最終段光増幅器それぞれにおいて増幅された前記複数の光を、個々に受光して、それぞれ出力する複数の光出射端と
を備えたレーザ装置。
【請求項2】
前記発光素子と前記光分岐器の間に中間光増幅器を設けたことを特徴とする請求項1記載のレーザ装置。
【請求項3】
前記発光素子から前記複数の光出射端までのそれぞれの光路長は、最大と最小との差が1m以下になるように設定されていることを特長とする請求項1記載のレーザ装置。
【請求項4】
前記光分岐器と前記複数の最終段光増幅器の間の各光路上に、第1の光路長調整用光ファイバを配置することを特徴とする請求項1記載のレーザ装置。
【請求項5】
前記中間光増幅器と前記複数の最終段光増幅器の増幅媒質は、Yb元素添加光ファイバであることを特徴とする請求項1又は2記載のレーザ装置。
【請求項6】
前記中間光増幅器と前記光分岐器の間に第2の光路長調整用光ファイバを配置し、前記第2の光路長調整用光ファイバの長さは、SRS閾値が問題ない範囲で設定されていることを特徴とする請求項5記載のレーザ装置。
【請求項7】
前記複数の最終段光増幅器のうち前記分岐された複数の光それぞれを入力する有効な最終段光増幅器の数の変動に依存することなく前記有効な最終段光増幅器それぞれに入力される光のパワーが一定になるように、前記有効な最終段光増幅器の数に応じて、前記発光素子又は前記中間光増幅器から出力される被増幅光のパワーを設定するパワー設定手段を有する請求項2記載のレーザ装置。
【請求項8】
前記複数の最終段光増幅器のうち少なくとも2以上の最終段光増幅器で使用される増幅用光ファイバそれぞれは、出力光パワーが一致しないように、互いに異なるモードフィールド径(MFD)を有し、MFDに応じた光パワーを出力するように設定されていることを特徴とする請求項1〜7の何れか一項記載のレーザ装置。
【請求項9】
被増幅光を出力する光源と、
前記光源から出力された被増幅光を入力し、複数の光に分岐する光分岐器と、
前記分岐器により分岐された前記複数の光をそれぞれ入力して、個々に増幅する複数の最終段光増幅器と、
前記複数の最終段光増幅器それぞれにおいて増幅された前記複数の光を、個々に受光して、それぞれ出力する複数の光出射端と
前記分岐された複数の光を前記分岐器から前記最終段光増幅器にそれぞれ伝搬する複数の第1の光路長調整用光ファイバと、
前記複数の最終段光増幅器それぞれにおいて増幅された前記複数の光を、前記複数の最終段光増幅器から前記複数の光出射端に個別に伝搬する複数のデリバリ用光ファイバと
を備えたレーザ装置。
【請求項10】
前記光源は、前記被増幅光を出力する発光素子と、前記発光素子から出力された被増幅光を前記光分岐器へ導く第2の光路長調整用光ファイバとを有することを特徴とする請求項9記載のレーザ装置。
【請求項1】
被増幅光を出力する発光素子と、
前記被増幅光を入力し、複数の光に分岐する光分岐器と、
前記光分岐器により分岐された前記複数の光をそれぞれ入力し、個々に増幅する複数の最終段光増幅器と、
前記複数の最終段光増幅器それぞれにおいて増幅された前記複数の光を、個々に受光して、それぞれ出力する複数の光出射端と
を備えたレーザ装置。
【請求項2】
前記発光素子と前記光分岐器の間に中間光増幅器を設けたことを特徴とする請求項1記載のレーザ装置。
【請求項3】
前記発光素子から前記複数の光出射端までのそれぞれの光路長は、最大と最小との差が1m以下になるように設定されていることを特長とする請求項1記載のレーザ装置。
【請求項4】
前記光分岐器と前記複数の最終段光増幅器の間の各光路上に、第1の光路長調整用光ファイバを配置することを特徴とする請求項1記載のレーザ装置。
【請求項5】
前記中間光増幅器と前記複数の最終段光増幅器の増幅媒質は、Yb元素添加光ファイバであることを特徴とする請求項1又は2記載のレーザ装置。
【請求項6】
前記中間光増幅器と前記光分岐器の間に第2の光路長調整用光ファイバを配置し、前記第2の光路長調整用光ファイバの長さは、SRS閾値が問題ない範囲で設定されていることを特徴とする請求項5記載のレーザ装置。
【請求項7】
前記複数の最終段光増幅器のうち前記分岐された複数の光それぞれを入力する有効な最終段光増幅器の数の変動に依存することなく前記有効な最終段光増幅器それぞれに入力される光のパワーが一定になるように、前記有効な最終段光増幅器の数に応じて、前記発光素子又は前記中間光増幅器から出力される被増幅光のパワーを設定するパワー設定手段を有する請求項2記載のレーザ装置。
【請求項8】
前記複数の最終段光増幅器のうち少なくとも2以上の最終段光増幅器で使用される増幅用光ファイバそれぞれは、出力光パワーが一致しないように、互いに異なるモードフィールド径(MFD)を有し、MFDに応じた光パワーを出力するように設定されていることを特徴とする請求項1〜7の何れか一項記載のレーザ装置。
【請求項9】
被増幅光を出力する光源と、
前記光源から出力された被増幅光を入力し、複数の光に分岐する光分岐器と、
前記分岐器により分岐された前記複数の光をそれぞれ入力して、個々に増幅する複数の最終段光増幅器と、
前記複数の最終段光増幅器それぞれにおいて増幅された前記複数の光を、個々に受光して、それぞれ出力する複数の光出射端と
前記分岐された複数の光を前記分岐器から前記最終段光増幅器にそれぞれ伝搬する複数の第1の光路長調整用光ファイバと、
前記複数の最終段光増幅器それぞれにおいて増幅された前記複数の光を、前記複数の最終段光増幅器から前記複数の光出射端に個別に伝搬する複数のデリバリ用光ファイバと
を備えたレーザ装置。
【請求項10】
前記光源は、前記被増幅光を出力する発光素子と、前記発光素子から出力された被増幅光を前記光分岐器へ導く第2の光路長調整用光ファイバとを有することを特徴とする請求項9記載のレーザ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−146581(P2011−146581A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−6958(P2010−6958)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
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