説明

レーザ装置

【課題】装置内部の摺動部分に生じたダストの付着によって光学素子が損傷することを防止できるレーザ装置を提供する。
【解決手段】励起光L1を出射する半導体レーザ10と、励起光L1が入射し、励起光L1から生成された出射光L4を出射するレーザ出力部20と、レーザ出力部20を構成する光学素子の少なくともいずれかを支持し、金属製の摺動部分を有するホルダ30と、ホルダ30の摺動部分の近傍に配置され、金属片を吸着する強磁性を有する吸着装置40とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子の位置調整機能を有するレーザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
装置内部の光学素子の位置や光軸に対する角度を調整する機構を有するレーザ装置では、出射光の出射位置や出射角度が調整される。例えば、レーザ装置を構成する光学素子をそれぞれホルダに取り付けた状態で摺動させることにより、光学素子の光軸位置調整を行う方法が提案されている(例えば特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−210899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、光学素子を支持するホルダを摺動させて光学素子の位置や角度を調整したり、ねじによって角度を調整する機構においては、ホルダの摺動面やねじ部の摩擦により、金属片のダストが発生する。このダストが光学素子の光学面に付着した状態でレーザ装置が発振した場合、光学素子が損傷するという問題があった。
【0005】
上記問題点に鑑み、本発明は、装置内部の摺動部分に生じたダストの付着によって光学素子が損傷することを防止できるレーザ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、(イ)励起光を出射する半導体レーザと、(ロ)励起光が入射し、励起光から生成された出射光を出射するレーザ出力部と、(ハ)レーザ出力部を構成する光学素子の少なくともいずれかを支持し、金属製の摺動部分を有するホルダと、(ニ)ホルダの摺動部分の近傍に配置され、金属片を吸着する強磁性を有する吸着装置とを備えるレーザ装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、装置内部の摺動部分に生じたダストの付着によって光学素子が損傷することを防止できるレーザ装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るレーザ装置の構成を示す模式図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るレーザ装置の吸着装置の配置例を示す模式図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係るレーザ装置の吸着装置の配置例を示す模式図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係るレーザ装置の吸着装置の他の配置例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面を参照して、本発明の第1及び第2の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであることに留意すべきである。又、以下に示す第1及び第2の実施形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の実施形態は、構成部品の構造、配置などを下記のものに特定するものでない。この発明の実施形態は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0010】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係るレーザ装置1は、図1に示すように、励起光L1を出射する半導体レーザ10と、励起光L1が入射し、励起光L1から生成された出射光L4を出射するレーザ出力部20と、レーザ出力部20を構成する光学素子の少なくともいずれかを支持し、光学素子の位置若しくは光軸に対する角度を調整するための金属製の摺動部分を有するホルダ30と、ホルダ30の摺動部分の近傍に配置され、金属片を吸着する強磁性を有する吸着装置40とを備える。
【0011】
レーザ出力部20は、図1に示すように光学素子として、固体レーザ媒質21、ビームスプリッタ22、波長変換素子23、反射面ミラー24、及び調整ミラー25を有する。
【0012】
固体レーザ媒質21は、励起光L1によって励起されて発振光L2を出力する。固体レーザ媒質21の励起光L1が入射する面には、入射面ミラー211が配置されている。そして、入射面ミラー211との間で発振光L2が共振する光共振器200を構成するように、発振光L2の光軸上に反射面ミラー24が配置されている。
【0013】
入射面ミラー211と反射面ミラー24との間で構成される光共振器200内に、ビームスプリッタ22と波長変換素子23が配置されている。波長変換素子23は、基本波光として発振光L2が入射され、発振光L2を波長変換して得られる高調波の光(以下において、「高調波光」という。)L3を出力する。ビームスプリッタ22は、光共振器200から高調波光L3を取り出す。
【0014】
調整ミラー25は、ビームスプリッタ22により取り出された高調波光L3の出射位置及び出射角度を調整し、出射光L4としてレーザ出力部20の外部に出力する。
【0015】
ホルダ30は、固体レーザ媒質21、ビームスプリッタ22、波長変換素子23、反射面ミラー24、及び調整ミラー25の少なくともいずれかを保持する。図1に示した実施形態では、調整ミラー25がホルダ30によって支持され、ホルダ30の近傍に吸着装置40が配置されている例を示している。
【0016】
以下に、レーザ装置1の動作について説明する。
【0017】
半導体レーザ10から出射された励起光L1は、集光レンズ11a、11bによって集光される。半導体レーザ10には、例えばスーパールミネセントダイオード(SLD)や傾斜型ストライプ構造を有する半導体レーザなどが採用可能である。
【0018】
集光レンズ11a、11bによって集光された励起光L1は、固体レーザ媒質21に入射される。固体レーザ媒質21は励起光L1によって励起され、発振光L2を発生する。例えば、励起光L1の波長が808nmの場合に、ネオジウムがドープされた固体レーザ媒質21により、波長1064nmの発振光L2が発生する。
【0019】
固体レーザ媒質21の励起光L1が入射する入射面ミラー211は、励起光L1は透過するが、発振光L2は反射するという特性を有する。例えば、波長808nmの励起光L1は入射面ミラー211を透過するが、波長1064nmの発振光L2は入射面ミラー211で反射する。
【0020】
固体レーザ媒質21で発生した発振光L2は、ビームスプリッタ22及び波長変換素子23を通過した後、反射面ミラー24において反射される。反射面ミラー24で反射された発振光L2は、波長変換素子23及びビームスプリッタ22を通過して固体レーザ媒質21に入射し、入射面ミラー211で反射される。このように、入射面ミラー211と反射面ミラーとの間に、発振光L2が共振する光共振器200が構成される。
【0021】
発振光L2が入射する波長変換素子23は、例えば発振光L2の第2高調波の高調波光L3を生成する。具体的には、波長1064nmの発振光L2が入射した場合に、波長変換素子23が波長532nmの高調波光L3を生成する。波長変換素子23は、例えば非線形波長変換素子である。
【0022】
波長変換素子23で生成された高調波光L3は、反射面ミラー24で反射されて波長変換素子23を通過した後、或いは、波長変換素子23から直接に、ビームスプリッタ22に入射する。このため、反射面ミラー24は、発振光L2及び高調波光L3を反射するという特性を有する。例えば、反射面ミラー24は、波長1064nmの発振光L2及び波長532nmの高調波光L3を反射する。
【0023】
ビームスプリッタ22は、入射された高調波光L3を光共振器200から取り出す。一方、発振光L2はビームスプリッタ22をそのまま通過する。例えば、波長1064nmの発振光L2はビームスプリッタ22を通過し、光共振器200内で共振するが、波長532nmの高調波光L3はビームスプリッタ22によって光共振器200から取り出される。
【0024】
ビームスプリッタ22により取り出された高調波光L3は、光共振器200外部の調整ミラー25に出力される。高調波光L3は、調整ミラー25によって出射位置及び出射角度が調整され、出射光L4としてレーザ装置1の外部に出射される。
【0025】
調整ミラー25はホルダ30によって支持される。ホルダ30の摺動部分を動かすことによって、調整ミラー25の鏡面の位置や、入射される高調波光L3の光軸に対する角度が調整される。
【0026】
図2に、調整ミラー25を支持するホルダ30の構造例を示す。ホルダ30は、第1の支持板31と、第1の支持板31上に配置された第2の支持板32とを有する。第1の支持板31と第2の支持板32とは、ねじ33によって締結されている。第1の支持板31と第2の支持板32、ねじ33は金属からなり、例えばSUS430などの強磁性を有する金属が採用可能である。
【0027】
調整ミラー25は第2の支持板32上に配置されている。ねじ33を緩めることにより、第1の支持板31上で第2の支持板32を移動させることができる。これにより、調整ミラー25のビームスプリッタ22に対する相対的な位置や角度が調節される。なお、ビームスプリッタ22は、第1の支持板31上に配置されていてもよい。
【0028】
第1の支持板31及び第2の支持板32のねじ33を取り付けるねじ部、及び第1の支持板31と第2の支持板32とが互いに接する摺動面が、ホルダ30の摺動部分である。ねじ33を回転させたり、第1の支持板31上で第2の支持板32を摺動させることにより、摩擦によって摺動部分から金属片のダストが発生する。
【0029】
ホルダ30の摺動部分の近傍に、金属片を吸着する吸着装置40が配置されている。図2の吸着装置40は円筒体であるが、吸着装置40の形状はどのようなものであってもよい。摺動部分から発生する金属片のダストは、吸着装置40によって吸着される。図2では第1の支持板31上に吸着装置40が配置された例を示したが、ホルダ30の摺動部分の近傍であれば、吸着装置40はどこに配置されていてもよい。
【0030】
ダストが光学素子の光学面に付着した状態でレーザ装置1を発振させると、光学素子が損傷する原因となり得る。しかし、図1に示したレーザ装置1では、ホルダ30の摺動部分から発生したダストは飛散せずに、吸着装置40に吸着する。このため、ダストによってレーザ出力部20内の光学素子が損傷することが防止される。
【0031】
吸着装置40には、例えば、磁石や磁化された強磁性体などが使用される。例えば、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、ガドリニウム(Gd)、SUS430などのフェライト系ステンレス、フェライトなどが、吸着装置40の材料に採用可能である。
【0032】
吸着装置40は、ホルダ30の摺動部分で発生したダストが吸着される距離以内に、摺動部分の近傍に配置されている必要がある。ダストが吸着される距離は、吸着装置40の磁性の強さなどに応じて定まる。吸着装置40は光学素子の摺動部分で発生するダストを吸着するが、光学素子の位置や角度には影響を及ぼさない。
【0033】
なお、図1、図2では、調整ミラー25がホルダ30によって支持され、位置や高調波光L3の光軸に対する鏡面の角度が調節される場合を例示的に示した。しかし、調整ミラー25以外の光学素子のいずれか、或いは複数の光学素子が摺動部分を有するホルダ30によって支持され、位置や角度が調節される場合も同様に、本発明の実施形態による効果を得られる。
【0034】
例えば、反射面ミラー24、波長変換素子23、或いはビームスプリッタ22のいずれか、或いはこれらのうちの複数の光学素子のそれぞれを、図2と同様の構成のホルダ30によって支持する。そして、ホルダ30の摺動部分の近傍に吸着装置40を配置する。第2の支持板32に配置された反射面ミラー24、波長変換素子23、ビームスプリッタ22の位置や角度を調整するために、ねじ33を回転させたり、第1の支持板31上を第2の支持板32を摺動させたりすることによって、ダストが発生する。しかし、これらのダストは、摺動部分の近傍に配置された吸着装置40により吸着される。その結果、摺動部分に生じたダストの付着によって光学素子が損傷することを防止できる。
【0035】
以上に説明したように、第1の実施形態に係るレーザ装置1では、レーザ出力部20を構成する光学素子を支持するホルダ30の摺動部分の近傍に、強磁性を有する吸着装置40が配置される。したがって、レーザ装置1によれば、ホルダ30の摺動部分から発生したダストは飛散せずに、吸着装置40に吸着される。このため、装置内部の摺動部分に生じたダストの付着によって光学素子が損傷することを防止できるレーザ装置1を実現できる。
【0036】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係るレーザ装置1では、レーザ出力部20内を伝播する光の輪郭を補正するアパーチャ41が、ホルダ30の摺動部分の近傍に吸着装置40として配置される。アパーチャ41は、例えば強磁性を有する金属からなり、通過する光の面積を制限する。
【0037】
図3に示したアパーチャ41は、調整ミラー25の鏡面で反射された出射光L4の光軸上に配置され、出射光L4の輪郭を調整する。更に、強磁性を有するアパーチャ41をホルダ30の摺動部分の近傍に配置することにより、ホルダ30の摺動部分から発生したダストを飛散させずに、アパーチャ41が吸着する。
【0038】
図3では、アパーチャ41を出射光L4の光軸上に配置する例を示したが、必要に応じてレーザ出力部20内の光路上の任意の位置にアパーチャ41を配置することができる。具体的には、固体レーザ媒質21、ビームスプリッタ22、波長変換素子23、反射面ミラー24、及び調整ミラー25のいずれかを支持するホルダ30の摺動部分の近傍の、発振光L2、高調波光L3、出射光L4の光軸上にアパーチャ41を配置すればよい。
【0039】
以上に説明したように、第2の実施形態に係るレーザ装置によれば、ホルダ30の摺動部分から発生したダストは飛散せずに、アパーチャ41に吸着する。このため、装置内部の摺動部分に生じたダストの付着によって光学素子が損傷することを防止できるレーザ装置1を実現できる。
【0040】
なお、図4に示すように、ホルダ30の摺動部分の近傍に、アパーチャ41と共にアパーチャ以外の吸着装置40を配置してもよい。これにより、ホルダ30の摺動部分から発生したダストのレーザ出力部20内での飛散を、より確実に防止することができる。
【0041】
上記のように、本発明は第1及び第2の実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0042】
1…レーザ装置
10…半導体レーザ
20…レーザ出力部
21…固体レーザ媒質
22…ビームスプリッタ
23…波長変換素子
24…反射面ミラー
25…調整ミラー
30…ホルダ
31…第1の支持板
32…第2の支持板
40…吸着装置
41…アパーチャ
200…光共振器
211…入射面ミラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
励起光を出射する半導体レーザと、
前記励起光が入射し、前記励起光から生成された出射光を出射するレーザ出力部と、
前記レーザ出力部を構成する光学素子の少なくともいずれかを支持し、金属製の摺動部分を有するホルダと、
前記ホルダの前記摺動部分の近傍に配置され、金属片を吸着する強磁性を有する吸着装置と
を備えることを特徴とするレーザ装置。
【請求項2】
前記摺動部分が、前記ホルダを構成する複数の部材が互いに接する摺動面、又は前記部材間を固定するねじ部であることを特徴とする請求項1に記載のレーザ装置。
【請求項3】
前記吸着装置が、前記レーザ出力部内を伝播する光の輪郭を補正する、強磁性を有するアパーチャであることを特徴とする請求項1又は2に記載のレーザ装置。
【請求項4】
前記レーザ出力部が、
前記励起光が入射する面に入射面ミラーが配置され、前記励起光によって励起されて発振光を出力する固体レーザ媒質と、
前記入射面ミラーとの間で前記発振光が共振する光共振器を構成する反射面ミラーと、
前記光共振器内に配置され、前記発振光の高調波光を出力する波長変換素子と、
前記光共振器から前記高調波光を取り出すビームスプリッタと、
前記ビームスプリッタにより取り出された前記高調波光の出射位置及び出射角度を調整し、前記出射光として出力する調整ミラーと
を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のレーザ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−191041(P2012−191041A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−54189(P2011−54189)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】