説明

レーザ誘起蛍光分析用プローブ及びレーザ誘起蛍光分析装置

【課題】励起レーザの迷光によるシグナル/バックグラウンド比の劣化を防止すること。
【解決手段】分析対象元素に共鳴する波長のレーザを照射して発生させた蛍光量を計測することで、試料中の分析対象元素の濃度を定量するレーザ誘起蛍光分析装置に用いるレーザ誘起蛍光分析用プローブ19であって、選択励起レーザを試料に照射するための選択励起レーザ反射ミラー4と、選択励起レーザの照射により試料で発生したレーザ誘起蛍光の光量を検出する光量検出器12と、レーザ誘起蛍光を光量検出器12へ導くレーザ誘起蛍光反射ミラー2と、選択励起レーザ反射ミラー4と試料との間に設けられ、選択励起レーザが透過する窓材1と、を少なくとも内部に備え、窓材1が、選択励起レーザの窓材1による反射レーザがレーザ誘起蛍光反射ミラー2に入射しない所定の角度の傾斜をつけて設置してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザを用いた分光分析装置に関するものであり、特に金属精錬炉内の溶融金属中の元素濃度を遠隔にモニタリングする、レーザ誘起蛍光分析用プローブ及びレーザ誘起蛍光分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属材料の精錬工程において、精錬反応進行中の溶融金属中の成分元素濃度をリアルタイムでモニターすることは、精錬工程最適化制御の上で非常に重要である。以下、金属材料として鉄鋼を例として説明する。
【0003】
鉄鋼の製造では、酸素吹錬によって脱炭を行なう転炉精錬の後、取鍋精錬において真空脱ガスにより溶鋼中炭素濃度をさらに低減させ、目的の鋼材特性を発現するために必要な濃度範囲に入るように厳密な制御が行われる。
【0004】
このような溶鋼中成分、特に炭素や燐等の非金属元素の濃度測定を目的に、レーザを利用した発光分光分析法を適用した技術がこれまでに数多く報告されている。これらの殆どは、尖頭出力の高いパルスレーザを集光して溶鋼に照射することによってプラズマ状態を生成し、このプラズマからの発光を分光分析することにより溶鋼中元素濃度を測定するものであり、一般にレーザ発光分析法等と呼ばれている。例えば、特許文献1には、転炉の耐火物を貫通した羽口を通してレーザを溶鋼に照射し、発光を光ファイバーで分光器に伝送して分光分析する方法が開示されている。
【0005】
一方、目的元素の共鳴波長の一つに波長をチューニングしたレーザを蒸気原子に照射して、この原子の蛍光を誘起するレーザ誘起蛍光法は、高感度かつ選択性に優れた分析法として知られており、本発明者等は、この点に注目して、レーザ誘起蛍光法による溶鋼中CやPのモニタリング技術を開発した。これらの技術の詳細は、特許文献2に開示されているところである。レーザ誘起蛍光法を用いた分析では、先ず試料の一部を蒸発・原子化するためにアブレーションレーザを照射する。そして、アブレーションレーザパルスから適当な遅延時間経過後、選択励起レーザを照射する。このとき、目的元素の蛍光のみが選択的に放出されるので、大型の分光器を用いる必要は無く、光電子増倍管やフォトダイオード等の光量測定器によって直接目的元素から放出されたシグナル光量を測定することができる。
【0006】
【特許文献1】特開昭60−231141号公報
【特許文献2】特開2001−356096号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上述のレーザ誘起蛍光法による溶鋼分析においては、選択励起レーザの迷光が蛍光シグナルに干渉し、分析精度、定量下限が劣化すると言う問題がある。特に、プローブの窓材の表面で反射した選択励起レーザがシグナル検出光学系に入り込み、この問題を引き起こす。このプローブの窓材の表面での反射そのものを低減し、反射光の検出を低減するためには、選択励起レーザの波長における反射率を低く抑えた防反射コーティングを窓材に施したり、光量測定器の手前に選択励起波長における透過率が低い光学フィルターを配すことが対策として取られる。しかしながら、選択励起レーザの強度は、蛍光シグナルに比較すると数桁大きいので、極一部の散乱光とはいえ、それが検出器に到達することを完全に抑えこむことは困難であった。
【0008】
そこで、本発明では、上記の選択励起レーザの迷光によるシグナル/バックグラウンド比の劣化を防止するレーザ誘起蛍光分析用プローブ及びこれを用いた分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述の問題を解決するためになされたものであり、その主旨は、以下の通りである。
【0010】
(1) 分析対象元素に共鳴する波長のレーザを照射して発生させた蛍光量を計測することで、試料中の分析対象元素の濃度を定量するレーザ誘起蛍光分析装置に用いるレーザ誘起蛍光分析用プローブであって、選択励起レーザを試料に照射するための選択励起レーザ反射ミラーと、選択励起レーザの照射により試料で発生したレーザ誘起蛍光の光量を検出する光量検出器と、前記レーザ誘起蛍光を前記光量検出器へ導くレーザ誘起蛍光反射ミラーと、前記選択励起レーザ反射ミラーと試料との間に設けられ、前記選択励起レーザが透過する窓材と、を少なくとも内部に備え、前記窓材が、選択励起レーザの前記窓材による反射レーザが前記レーザ誘起蛍光反射ミラーに入射しない所定の角度の傾斜をつけて設置してなることを特徴とする、レーザ誘起蛍光分析用プローブ。
【0011】
(2) 試料側の一端が開口し、ガス吹込み口を有し、前記選択励起レーザ及び前記レーザ誘起蛍光が通過する中空管を有し、該中空管の他端を前記窓材で気密に封止してなることを特徴とする、(1)に記載のレーザ誘起蛍光分析用プローブ。
【0012】
(3) 前記窓材の表面の法線の方向が、前記窓材に入射する選択励起レーザの伝播方向に対してブリュースター角度に設定されたことを特徴とする、(1)に記載のレーザ誘起蛍光分析用プローブ。
【0013】
(4) アブレーションレーザを試料に照射するためのアブレーションレーザ反射ミラーと、アブレーションレーザの照射により試料で発生したプラズマの発光を反射して発光受光光学系へ導くレーザ発光反射ミラーと、前記発光受光光学系により集光された光を受光するレーザ発光受光伝送端末と、を更に備えてなることを特徴とする、(1)に記載のレーザ誘起蛍光分析用プローブ。
【0014】
(5) (1)〜(4)のいずれかに記載のレーザ誘起蛍光分析用プローブと、アブレーションレーザ発振器と、選択励起レーザ発振器と、分光器と、レーザ誘起蛍光シグナル処理装置と、前記アブレーションレーザ発振器、前記選択励起レーザ発振器、前記分光器及び前記レーザ誘起蛍光シグナル処理装置の動作を制御するためのパルス発生器と、前記光量検出器から前記レーザ誘起蛍光シグナル処理装置への電気シグナルの伝送手段と、レーザ発光受光伝送端末から前記分光器への光シグナルの伝送手段と、を少なくとも具備することを特徴とするレーザ誘起蛍光分析装置。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、選択励起レーザの迷光検出強度を減少させ、レーザ誘起蛍光シグナルのシグナル/バックグラウンド比が向上し、迷光検出強度の変動に起因する測定値のバラツキが軽減されることから、分析精度を向上させることができる。従って、例えば、製鋼操業の制御性改善に寄与するところ大である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0017】
本発明に関わるレーザ誘起蛍光分析用プローブ19の構成の一例を、図1に示す。アブレーションレーザ発振器21から発振されるアブレーションレーザaは、レーザ誘起蛍光分析用プローブ19内のアブレーションレーザ集光レンズ20によって収束しながらアブレーションレーザ反射ミラー5によって反射され、反射ミラー2,3,4を透過し、さらに窓材1を透過して、中空管16内を伝播して、測定試料面17に照射される。窓材1は、中空管16と連通する風箱14の端部に装着されている。アブレーションレーザaの照射によって生成したプラズマからの発光dは、中空管16内をアブレーションレーザaとは逆向きに伝播し、レーザ発光反射ミラー3により反射され、レンズ6により光ファイバー8の受光端7に集光され、光ファイバー8によって分光器24に伝送されて分光測定される。
【0018】
アブレーションレーザaの照射から適当な時間間隔を取って、選択励起レーザ22から発振される選択励起レーザbは、レーザ誘起蛍光分析用プローブ19内の選択励起レーザ反射ミラー4によって反射され、ミラー3,2を透過し、さらに窓材1を透過して中空管16内を伝播して試料面17に照射される。そして、発生したレーザ誘起蛍光cは、中空管16内を選択励起レーザbとは逆向きに伝播して、レーザ誘起蛍光反射ミラー2によって反射され、レンズ9及び10によって集光、コーリメートされた後、光フィルター11を通って光量検出器12によって電気シグナルに変換され、電送線13によってレーザ誘起蛍光シグナル処理装置25へ伝送される。
【0019】
アブレーションレーザ発振器21と選択励起レーザ発振器22は、パルス発生器23から供給されるトリガーパルスにより、それぞれレーザa,bを発振する。レーザ誘起蛍光シグナル処理装置25は、光量検出器12にて電気シグナルに変換され、電送ケーブル13によって電送されたレーザ誘起蛍光シグナルを表示すると共に、デジタルデータに変換して、データ解析用コンピューター26に転送する。また、分光器24は、光ファイバー8によって伝送されたレーザ発光を波長分散して分光スペクトルを測定し、その結果をデータ解析用コンピューター26に転送する。レーザa,bのプローブ19への伝送は、例えばミラーやプリズム等を用いて空間を伝播させることによって行われる。
【0020】
以上のように、本実施形態によれば、分光器で検出された分光スペクトルの解析結果からレーザ発光分析法による元素の解析が可能であり、且つ、光量検出器12で検出されたレーザ誘起蛍光シグナルの解析結果からレーザ誘起蛍光法による元素の解析が可能である。炭素(C)や燐(P)は、レーザ誘起蛍光法によって分析され、また、その他の元素はレーザ発光分析法によってレーザ誘起蛍光法と同時に分析される。
【0021】
ミラー2,3,4,5、レンズ6,9,10、光フィルター11、光量検出器等12の光学部品は、溶融金属の試料面17からのダストやスプラッシュ、熱輻射から保護するために、保護ケース18内に収納されている。また、レーザや発光、蛍光の光路からのダスト、スプラッシュ、ヒューム等の排除、及び、中空管16の内壁や窓材1の汚染防止を目的として、ガス導入口15より、風箱14内にガスを流入させ、中空管16の試料側端面より、試料面17に向けてガスを吹き付ける。尚、ここでガスの種類としては、試料との反応が生じないAr,He,N等の不活性ガスが用いられる。
【0022】
中空管16の試料側端面は、溶融金属中に浸漬されていても良い。また、溶融金属容器の底面又は側面の耐火物を貫通させて中空管16を設けた場合には、中空管16を通した溶融金属の流出を防ぐために必要なガス流量をガス導入口15から吹き込むようにする。
【0023】
上記窓材1は、アブレーションレーザ、選択励起レーザ及び試料表面からの発光や蛍光の透過率が高い材質を選べばよい。原子の発光や蛍光は、通常、可視域から紫外域に亘るので、石英ガラスやMgF,CaF等が使用可能である。
【0024】
選択励起レーザbが窓材1を透過する際に、その一部が窓材1の表面で反射される。垂直入射、即ち、入射レーザと窓材1の法線とのなす角が0°の場合、一般に、反射率Rは、R=(n−n’)/(n+n’)となる。ここに、nは窓材1の屈折率であり、n’は窓材1が接している気体の屈折率である。例えば、空気中を伝播してきたレーザが石英ガラス製の窓材1に入射する場合、nとn’は、それぞれ1.5及び1.0であり、R=0.04となる。即ち、この場合入射レーザの4%が反射する。
【0025】
ここで、図1の中から本発明の主要部を構成する部分を抜き出した図を、図2(A)に示し、また、本発明に定める構成要件を備えていない比較例を図2(B)に示す。
【0026】
図2(B)に示すように、選択励起レーザbが窓材1の表面で反射され、その反射光b’がレーザ誘起蛍光反射ミラー2に入射する場合、反射光b’の一部は、光フィルター11をも透過し、最終的に光量検出器12にまで到達してしまう。この反射光b’は、窓材1の表面に選択励起レーザbの波長における反射率を低減する防反射コーティングを施すことで低減され、さらに、光フィルター11によっても減衰するのであるが、いずれの効果も反射光b’の強度を完全に抑え込むまでには至らない。特に、検出目的元素が低濃度となるに従い、光量検出器12で検出される蛍光強度と選択励起レーザbの窓材表面反射に起因する迷光強度はほぼ同程度となり、定量精度に大きな影響を与え、精度の良い定量を困難とする問題が起こるのである。
【0027】
これに対し、図2(A)に示した本発明によれば、窓材1は選択励起レーザbの反射光b’がレーザ誘起蛍光反射ミラー2に入射しない角度の傾斜をつけて設置しており、窓材1による反射光b’は、レーザ誘起蛍光反射ミラー2の反射領域から反れるため、光量検出器12に到達しない。このため、選択励起レーザbの窓材1び表面反射に起因する迷光(反射光b’)は効果的に低減され、精度の良い定量が可能となる。
【0028】
本発明において、窓材1の法線と選択励起レーザ入射方向とのなす角、即ち、入射角は、反射光b’がレーザ誘起蛍光反射ミラー2の反射領域から外れる角度であれば良い。しかし、後述するブリュースター角が存在する場合を除いて、入射角の増加と共に反射率は増大するので、必要以上に入射角を大きく取ることは好ましくない。
【0029】
本発明のより好適な実施形態は、直線偏光の選択励起レーザbの伝播方向と窓材1の法線とのなす角がブリュースター角となるようにすることで実現される。これは、図3に示すように、選択励起レーザbの電気ベクトル103が、入射面と平行となるようにし、選択励起レーザbの窓材1への入射方向104及び、屈折光線の伝播方向105のそれぞれが、窓材の法線102となす角、θとθ(図3参照)とが、θ=90°の関係を満たすようにすることによって、実現される。このとき、フレネルの公式から反射率は0となる。そして、屈折の法則から、sin(θ)/sin(90°-θ)=n’/nが成り立つ。今、n,n’をそれぞれ、1(空気)、1.5(石英ガラス)とすれば、θ=56.3°となり、これがブリュースター角である。本発明では、このようにして定められるブリュースター角を含み、その近傍の反射率が十分に低くなる(例えば1%以下となる)角度に設定すれば、実用上より高い効果が得られる。上述のように、窓材1が石英ガラスであり、選択励起レーザbの電気ベクトル103が入射面と平行である場合について、入射角と反射率の関係を図4に示す。例えば、反射率を1%以下とすれば良い場合は、図4に示した範囲θi1≦θ≦θi2の入射角となるように窓材1の角度を設定すれば良い。
【0030】
窓材1の傾きを上記の条件が満たされるように設定することにより、反射光b’がレーザ誘起蛍光反射ミラー2によって反射されて光量検出器12に入ることが防げるのみではなく、反射光b’が保護ケース18の壁面や保護ケース18内部の光学素子、ホルダー等に反射あるいは散乱されて廻りこんで光量検出器12に入る迷光をも極小化することが可能となる。
【実施例】
【0031】
誘導溶解炉で溶融させた溶鋼表面に、図1に示したレーザ誘起蛍光分析用プローブ19を近づけてレーザ誘起蛍光法により溶鋼中の炭素、及び燐の蛍光シグナル強度を測定した。また、同時に光ファイバー8で伝送したレーザ発光を分光器24で分光分析した。アブレーションレーザ発振器21としてQスイッチパルスNd:YAGレーザを、選択励起レーザ発振器22としては、チタンサファイアレーザを用いた。アブレーションレーザと選択励起レーザとの遅延時間を100μsとし、ガス導入口15からArガスを導入し、中空管16の下端よりArガス溶鋼面(試料面17)に吹き付けながら分析した。
【0032】
図5中の(実施例1)は、上述した実施形態に従い、図2(A)のように、選択励起レーザbの反射光b’がレーザ誘起蛍光反射ミラー2に入射しない角度に窓材1を傾けたプローブを用いて測定した結果であり、図5中の(比較例)は、図2(B)のように、窓材1を傾ける角度がより小さく、反射光b’がレーザ誘起蛍光反射ミラー2に入射するプローブを用いて測定した結果である。さらに、図6は、窓材1の法線と選択励起レーザbの入射方向とのなす角θiを、本試験条件におけるブリュースター角度である56°となるように傾けた、本実施形態によるプローブを用いて測定した(実施例2)の結果である。いずれも、一つの濃度水準において5回測定して得た信号強度の平均値であり、エラーバーは、標準偏差を示す。また、グラフの横軸の炭素濃度[C]は、各濃度水準において採取した試料を燃焼赤外線吸収法にて定量分析した値である。
【0033】
図5中の(比較例)を参照すると、相関直線を濃度0ppmに外挿した場合の縦軸の切片の位置が、(実施例1)に比較して高い。この原因は、選択励起レーザbの迷光が比較的強く検出されていることを示している。また、図6に示した(実施例2)では、図5中の(実施例1)よりもさらに、上記切片の位置が更に低くなっている。
【0034】
上記切片の位置は、バックグラウンドに相当する。一般に、バックグラウンドが高いほどバックグラウンドノイズも大きくなり、定量精度が劣化する。バックグラウンド高さの指標の一つとして、バックグラウンド等価濃度が挙げられる。これは、バックグラウンド高さを測定元素の濃度相当量として表したものであり、一般にバックグラウンド等価濃度が低いほど、低い定量下限が得られる。
【0035】
従って、上記実施例によれば、比較例、実施例1、実施例2の順でバックグランウンドノイズが小さくなり、定量精度が向上することが判る。
【0036】
以上は、炭素のレーザ誘起蛍光強度について述べたものであるが、燐のレーザ誘起蛍光強度についても濃度範囲50ppm〜500ppmにおいて同様の結果が得られた。
【0037】
表1に、上記(実施例1)、(実施例2)及び(比較例)の各場合において得られた炭素及び燐のそれぞれにおけるバックグラウンド等価濃度と相関直線の相関係数(R)とを示した。
【0038】
【表1】

【0039】
表1から、本発明によれば、バックグラウンド濃度を大幅に低下させることができることが分かる。また、相関係数も向上しており、したがって、より低い定量下限が達成されることが示されている。
【0040】
(実施例1)、(実施例2)では1台の波長可変な選択励起レーザ発振器22を用いて、炭素と燐を交互に測定したが、2台のレーザ発振器を用いる等の手段により、これら2元素のレーザ誘起蛍光を同時に測定することも可能である。
【0041】
また、(実施例1)、(実施例2)では、レーザ誘起蛍光測定と併行してレーザ発光スペクトルも測定した。図7にその一例として、Alの分析結果を示す。その他に、MnやTiを始めとする分析線波長が概ね250nm以上にある元素は、レーザ誘起蛍光測定による炭素や燐等の元素と同時に分析可能であることは言うまでもない。
【0042】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明のプローブ及び分析装置の構成を表す図である。
【図2】プローブの要部を示す模式図であって、(A)本発明の窓材と(B)本発明によらない窓材を対比して示す図である。
【図3】選択励起レーザの入射方向と屈折方向から成る入射面と電気ベクトルを示す模式図である。
【図4】選択励起レーザの窓材への入射角と反射率との関係を示す図である。
【図5】本発明のプローブを用いた溶鋼中炭素のレーザ誘起蛍光測定結果(実施例1)と本発明によらないプローブを用いた溶鋼中炭素のレーザ誘起蛍光測定結果(比較例)を示す図である。
【図6】本発明のプローブにおいて特に選択励起レーザの入射角がブリュースター角度となるように傾けたプローブを用いた溶鋼中炭素の測定結果(実施例2)を示す図である。
【図7】本発明のプローブを用いて、レーザ誘起蛍光強度測定と同時に測定されたAlのレーザ発光強度測定結果を示す図である。
【符号の説明】
【0044】
1 窓材
2 レーザ誘起蛍光反射ミラー
3 レーザ発光反射ミラー
4 選択励起レーザ反射ミラー
5 アブレーションレーザ反射ミラー
6,9,10 レンズ
7 光ファイバー受光端
8 光ファイバーケーブル
11 光学フィルター
12 光量検出器
13 シグナル電送ケーブル
14 風箱
15 ガス導入口
16 中空管
17 試料
18 保護ケース
19 レーザ誘起蛍光分析用プローブ
20 アブレーションレーザ集光レンズ
21 アブレーションレーザ発振器
22 選択励起レーザ発振器
23 パルス発生器
24 分光器
25 レーザ誘起蛍光シグナル処理装置
26 データ解析用コンピューター
a アブレーションレーザ
b 選択励起レーザ
b’ 選択励起レーザの窓材1による反射光
c レーザ誘起蛍光
d レーザ発光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析対象元素に共鳴する波長のレーザを照射して発生させた蛍光量を計測することで、試料中の分析対象元素の濃度を定量するレーザ誘起蛍光分析装置に用いるレーザ誘起蛍光分析用プローブであって、
選択励起レーザを試料に照射するための選択励起レーザ反射ミラーと、選択励起レーザの照射により試料で発生したレーザ誘起蛍光の光量を検出する光量検出器と、前記レーザ誘起蛍光を前記光量検出器へ導くレーザ誘起蛍光反射ミラーと、前記選択励起レーザ反射ミラーと試料との間に設けられ、前記選択励起レーザが透過する窓材と、を少なくとも内部に備え、
前記窓材が、選択励起レーザの前記窓材による反射レーザが前記レーザ誘起蛍光反射ミラーに入射しない所定の角度の傾斜をつけて設置してなることを特徴とする、レーザ誘起蛍光分析用プローブ。
【請求項2】
試料側の一端が開口し、ガス吹込み口を有し、前記選択励起レーザ及び前記レーザ誘起蛍光が通過する中空管を有し、
該中空管の他端を前記窓材で気密に封止してなることを特徴とする、請求項1に記載のレーザ誘起蛍光分析用プローブ。
【請求項3】
前記窓材の表面の法線の方向が、前記窓材に入射する選択励起レーザの伝播方向に対してブリュースター角度に設定されたことを特徴とする、請求項1記載のレーザ誘起蛍光分析用プローブ。
【請求項4】
アブレーションレーザを試料に照射するためのアブレーションレーザ反射ミラーと、
アブレーションレーザの照射により試料で発生したプラズマの発光を反射して発光受光光学系へ導くレーザ発光反射ミラーと、前記発光受光光学系により集光された光を受光するレーザ発光受光伝送端末と、を更に備えてなることを特徴とする、請求項1記載のレーザ誘起蛍光分析用プローブ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のレーザ誘起蛍光分析用プローブと、アブレーションレーザ発振器と、選択励起レーザ発振器と、分光器と、レーザ誘起蛍光シグナル処理装置と、前記アブレーションレーザ発振器、前記選択励起レーザ発振器、前記分光器及び前記レーザ誘起蛍光シグナル処理装置の動作を制御するためのパルス発生器と、前記光量検出器から前記レーザ誘起蛍光シグナル処理装置への電気シグナルの伝送手段と、レーザ発光受光伝送端末から前記分光器への光シグナルの伝送手段と、を少なくとも具備することを特徴とするレーザ誘起蛍光分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−215851(P2008−215851A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−49836(P2007−49836)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】