説明

レーザ超音波法による材料中の縦波と横波の音速の計測方法及び装置

【課題】レーザ超音波検出装置における被検査体のレーザ光照射によるダメージを軽減し、縦波及び横波の音速を計測する。
【解決手段】被検査体に超音波発生用パルスレーザ光を線状照射して超音波を発生させる超音波発生用レーザ光源11と、被検査体に超音波検出用レーザ光を照射して超音波を検出する超音波検出用レーザ光源12と、超音波発生用パルスレーザ光を回折させて、被検査体の表面に回折光を照射する回折格子14と、回折光の照射により発生した超音波を周波数解析することで、非対称波板波の周波数を算出する非対称波周波数算出部61と、超音波発生用パルスレーザ光の線状照射により発生した超音波を周波数解析することで、縦波音速を算出する縦波音速算出部62と、非対象波板波の周波数、及び、縦波音速に対応する横波音速を算出する横波音速算出部63と、を備えるレーザ超音波検出装置10cを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザを被検査材に照射して発生する超音波を検出するレーザ超音波測定装置及びその方法に関し、特に、被検査体の表面にダメージを軽減して縦波及び横波の音速を計測するレーザ超音波測定装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ超音波法は、被検査材に対しパルスレーザ光を照射し、発生する熱的応力、あるいは表面近傍の被検査材自体の気化により発生する気化反力を利用して超音波を送信し、連続発振する別のレーザ光を受信点に照射し、その直進性や可干渉性を用いて超音波によって誘起される変位を受信して被検査材中を伝播した超音波を検出する技術である。
レーザ超音波法は、超音波を用いて材料のき裂や内在欠陥の検出、あるいは材料特性の評価を、非接触で行うことが可能であり、種々の材料評価分野への応用が期待されている。
【0003】
図9を用いて、レーザ超音波法の原理について説明する。
高いエネルギーのパルスレーザである超音波発生用レーザを、例えば被検査材である鋼材表面に照射するとその衝撃で金属表面に生じる熱膨張及び収縮により、歪みが発生する。そして発生した歪みが超音波として鋼材内部を伝播する。次に超音波検出用の単一周波数の連続レーザ光を金属表面に照射すると、その反射光は、伝播した超音波による表面の振動に応じた周波数の変化(ドップラーシフト)を受ける。以下に、ドップラーシフト量(Δf)を示す式を示す。
Δf=2V/λ
ここで、V=表面変位速度、λ=レーザ波長
【0004】
レーザ超音波法を用いた計測器は、ファブリペロー干渉計等のレーザ干渉計を備えている。ファブリペロー干渉計は、特定周波数のみを共振させて透過させるフィルターとして動作する。例えば、鋼材内部に欠陥部がある場合、表面振動が通常の鋼材と異なるため、ドップラーシフト量は、通常の鋼材と異なる値を示す。そのため、ファブリペロー干渉計を透過する透過光料が変化し、検査材のき裂や欠陥の検査又は材料評価を行うことができる。
【0005】
レーザ超音波法では、レーザ光が届く範囲であれば、検査対象に何も接触させずに検査対象の状態を観測できる。レーザ光は、光ファイバーやミラーを用いることで、接触や近接が困難な被検査材に対しても比較的容易に超音波検査を行うことができる。
【0006】
図10を用いて、レーザ光照射による超音波の発生原理について説明する。(a)は、レーザ光を被検査体に照射して被検査体の一部を蒸発させる現象であるアブレーションにより、超音波を発生させるケースであり、(b)は、レーザ光を被検査体に照射して被検査体に熱弾性変化を生じさせて、超音波を発生させるケースである。
【0007】
アブレーション発生ケースでは、蒸発反力により弾性波を発生させるため、材料に照射痕が発生する。一方、熱弾性ケースでは、レーザによる急速加熱による熱膨張・収縮に伴う弾性波発生を発生させるが、材料に照射痕は生じない。熱弾性ケースは材料にダメージを与えないが、アブレーション条件に比べ熱弾性ケースではフルーエンスレベルは2桁近く低いため、発生する超音波音圧はそれ以上の割合で減少してしまう。
【0008】
従来のレーザ超音波法は、対象材にダメージを与えて超音波を発生させるアブレーション領域で使用する方法である。この方法は、発生超音波の強度が強く、超音波の縦波や横波の音速を検出する。また、検出した縦波や横波の音速を活用し、相変態率を計測に活用する方法(下記、非特許文献1及び2)や、ポアソン比を計測する方法(下記、非特許文献3)が提案されている。
【0009】
【非特許文献1】M. Dubois, A. Moreau, M. Militzer, and J. F. Bussiere, “Laser−Ultrasonic Monitoring of Phase Transformations in Steels”, Scripta Materialia, Vol. 39, No. 6, p.735−741, 1998
【非特許文献2】M. Ericsson, E.Lindh−Ulmgren, D. Artymowicz and B. Hutchison, “’Laser−ultrasonics (LUS) for microstructure characterization”. Research report IM−2003−113, Swedish institute for metals research, 2003
【非特許文献3】B. Hutchinson, B. Moss, A. Smith, A. Astill, C. Scruby, G. Engberg, and J. Bjorklund, “Online characterisation of steel structures in hot strip mill using laser ultrasonic measurements”, Ironmaking and Steelmaking, Vol. 29, No. 1, p.77−80, 2002
【非特許文献4】J.D.Achenbach, “Wave propagation in elastic solids”, Amsterdam, North−Holland, 1973
【非特許文献5】J. Huang, Y. Nagata, S. Krishnaswamy, and J. D. Achenbach, “Laser-based ultrasonics for flaw detection”, Proc. of IEEE Ultrasonics Symp., p1205-1209, 1994
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
被検査体の表面にダメージを与えずに超音波を発生させる熱弾性領域においては、超音波の発生伝播方向により縦波と横波の大きさが異なり、超音波伝播の指向性を有するので、縦波及び横波の音速を計測することが困難である。そのため、従来提案されている方法では、縦波及び横波音速の計測にアブレーション領域が利用されており、被検査体に与えるダメージが大きい。
【0011】
上述の問題点に鑑み、本発明は、対象材の表面に与えるダメージを軽減し、縦波及び横波の音速を計測するレーザ超音波測定装置及びレーザ超音波測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため提供される本発明のレーザ超音波測定装置及びレーザ超音波測定方法は、下記に記載のとおりである。
本発明のレーザ超音波測定装置は、被検査体に超音波発生用レーザ光源によりパルスレーザ光を照射して超音波を発生させ、超音波検出用レーザ光源により連続波レーザ光を該被検査体に照射してそのレーザ反射光を干渉計で干渉させて、上記超音波によるドップラーシフトによる光強度変化を検知して、上記被検査体内を伝播した超音波を検出するレーザ超音波測定装置であって、上記パルスレーザ光を断面形状が線状のビームに変換した後に、上記被検査体上に回折格子で複数の線状スポットの干渉縞を生成して照射する第1の照射光学系と、上記パルスレーザ光を上記被検査体上に単一の線状のスポットに集光・照射する第2の照射光学系と、上記第1の照射光学系により生成した複数の線状スポットにより発生され、被検査体内を該線状スポットの配列方向に伝播した板波超音波、及び上記単一の線状スポットにより発生し被検査体の厚さ方向に伝播した縦波超音波それぞれを別々に検出するために、上記連続波レーザ光を被検査体上の所定の検査点に集光・照射し、そのレーザ反射光を上記干渉計に入射させて干渉させる検出光学系と、上記干渉計を透過したレーザ光を受光して光強度変化を電気信号として出力する光検出部と、上記光検出部から出力された電気信号が入力されて、被検査体の音速を導出する信号処理部とを具備し、上記信号処理部は、上記第1の照射光学系により発生した板波超音波による光強度変化の電気信号に基づき、周波数解析をして非対称波板波の周波数を算出する非対称波板波周波数算出部と、上記第2の照射光学系により発生した縦波超音波による光強度変化の電気信号に基づき、周波数解析をして縦波音速を算出する縦波音速算出部と、上記非対称波板波の周波数、及び、上記縦波音速に基づき、所定の式を用いて横波音速を算出する横波音速算出部と、を備えることを特徴とする。
【0013】
又、上記のレーザ超音波測定装置において、非対称波板波周波数算出部は、上記第1の照射光学系により発生した板波超音波による光強度変化の電気信号に基づき、周波数解析をしてA0非対称波板波モードの周波数を導出し、該A0非対称波板波モードの周波数と上記複数の線状スポットのピッチとからA0非対称板波モードの位相速度を算出するものであり、上記縦波音速算出部は、上記第2の照射光学系により発生した縦波超音波による光強度変化の電気信号に基づき、周波数解析をして上記被検査体の板厚方向の超音波の共振周波数を導出し、該共振周波数と被検査体の板厚とから縦波音速を算出するものであり、上記横波音速算出部は、上記A0非対称波板波モードの周波数及び位相速度、並びに、上記縦波超音波の共振周波数及び縦波音速を用いて、所定の超音波伝播の理論式に基づき繰り返し演算を実施して横波音速を導出することを特徴とする。
【0014】
本発明のレーザ超音波測定方法は、被検査体に超音波発生用レーザ光源によりパルスレーザ光を照射して超音波を発生させ、超音波検出用レーザ光源により連続波レーザ光を該被検査体に照射してそのレーザ反射光を干渉計で干渉させて、上記超音波によるドップラーシフトによる光強度変化を検知して、上記被検査体内を伝播した超音波を検出するレーザ超音波測定装置を用いたレーザ超音波測定方法であって、上記パルスレーザ光を断面形状が線状のビームに変換した後に、上記被検査体上に回折格子で複数の線状スポットの干渉縞を生成して照射する第1のレーザ光照射工程と、上記パルスレーザ光を上記被検査体上に単一の線状のスポットに集光・照射する第2のレーザ光照射工程と、上記第1のレーザ光照射工程により生成した複数の線状スポットにより発生され、被検査体内を該線状スポットの配列方向に伝播した板波超音波、及び上記単一の線状スポットにより発生し被検査体の厚さ方向に伝播した縦波超音波それぞれを別々に検出するために、上記連続波レーザ光を被検査体上の所定の検査点に集光・照射し、そのレーザ反射光を上記干渉計に入射させて干渉させる超音波検出工程と、上記干渉計を透過したレーザ光を受光して光強度変化を電気信号として出力する光検出工程と、上記光検出部から出力された電気信号が入力されて、被検査体の音速を導出する信号処理工程とを具備し、上記信号処理工程は、上記第1のレーザ光照射工程により発生した板波超音波による光強度変化の電気信号に基づき、周波数解析をして非対称波板波の周波数を算出する非対称波板波周波数算出工程と、上記第2のレーザ光照射工程により発生した縦波超音波による光強度変化の電気信号に基づき、周波数解析をして縦波音速を算出する縦波音速算出工程と、上記非対称波板波の周波数、及び、上記縦波音速に基づき、所定の式を用いて横波音速を算出する横波音速算出工程と、を備えることを特徴とする。
【0015】
又、上記のレーザ超音波測定方法において、非対称波板波周波数算出工程は、上記第1のレーザ光照射工程により発生した板波超音波による光強度変化の電気信号に基づき、周波数解析をしてA0非対称波板波モードの周波数を導出し、該A0非対称波板波モードの周波数と上記複数の線状スポットのピッチとからA0非対称板波モードの位相速度を算出し、上記縦波音速算出工程は、上記第2のレーザ光照射工程により発生した縦波超音波による光強度変化の電気信号に基づき、周波数解析をして上記被検査体の板厚方向の超音波の共振周波数を導出し、該共振周波数と被検査体の板厚とから縦波音速を算出し、上記横波音速算出工程は、上記A0非対称波板波モードの周波数及び位相速度、並びに、上記縦波超音波の共振周波数及び縦波音速を用いて、所定の超音波伝播の理論式に基づき繰り返し演算して横波音速を導出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
上記のレーザ超音波測定装置及びレーザ超音波測定方法は、被検査材の表面へのダメージを軽減するレーザパルスエネルギ密度の低いレーザ光により、縦波及び横波の音速測定を高精度に行うことができる。そのため、被検査体は、熱弾性変化領域でのレーザ使用により損傷を軽減できる。その結果、より精度の高い検査材のき裂や欠陥の検査又は材料評価を非破壊、非接触で行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明のレーザ超音波測定装置及びレーザ超音波測定方法を実施するための形態を説明する。
【0018】
上記非特許文献4に記載される板波の理論では、板波には、それぞれが複数のモードを有する対称波板波と、非対称波板波がある。
ここで板波とは超音波探傷等の超音波利用分野で周知の超音波伝播現象であって、縦波と横波とが一体となって伝搬することで板全体を振動させるように見える波である。非対称板波とは、非対称の波形を有する板波であり、対称板波板波とは対称波の波形を有する板波である(なお、対称波板波及び非対称波板波と、それらを構成する縦波及び横波との関係は、後述する図3及び数式1〜3によって示される)。
本実施形態においては、非対称波板波測定及び縦波音速測定毎に適したレーザ超音波測定装置を用いることで、板波の縦波音速及び横波音速を検出する。
【0019】
<非対称波板波検出用のレーザ超音波測定装置の第1の構成配置>
図1(a)は、本実施の形態におけるレーザ超音波測定装置の第1の構成配置10aの概略構成を示す図である。レーザ超音波測定装置の第1の構成配置10aは、非対称波板波の超音波を被検査体5に発生させて、当該非対称波板波の検出を目的とするものである。
図1(b)は、被検査体5の上から見た平面図である。(a)に示すように、超音波発生用レーザ光源11は、被検査体5に超音波を発生させるためのレーザで、所定の繰り返し周期でパルスレーザ光を発射する。超音波発生用レーザ光源11から発せられたパルスレーザ光は、シリンドリカルレンズ43で断面形状が線状のビーム(線状光)に変換されたのち、回折格子14にて回折され、被検査体5に複数の線状スポットとして照射される。シリンドリカルレンズ43と回折格子により第1の照射光学系が構成される。
回折格子14は、例えば透明なガラスに細い線状パターンが多数平行に設けられたもので、これに照射されたレーザビームは、それぞれの線状パターンによって回折して、被検査体5の表面上で複数の線状スポットからなる干渉縞が形成され、その複数の線状スポットにより被検査体5の表面が加熱されて板波超音波(以下では板波とも記す)Wとして超音波が発生する。
【0020】
発生した板波Wの波長λは、干渉縞のピッチpと等しい。板波Wは、被検査体5を被検査体5の面内方向で干渉縞の線状スポットの向きと直交する方向に、すなわち複数の線状スポットの配列方向に伝播して検出点6に到達すると、超音波検出用レーザ光源12から連続波レーザ光として発射している検出用レーザ光を光学系(図示せず)により当該検出点6に集光・照射すると、検出点6を通過する板波Wの振動によって検出用レーザ光の波長にドップラーシフトが生じる。このように検出点6は、複数の線状スポットの配列方向に、当該スポットから予め設定した距離の位置に設置する。そして、ドップラーシフトが生じた検出用レーザのレーザ反射光は、光学系(図示せず)によりファブリペロー干渉計等のレーザ干渉計12に導かれ、当該レーザ干渉計12の中で干渉させられる。このとき、レーザ干渉計12の共振条件は検出用レーザの反射光の共振条件から若干ずらしておく。一時的にドップラーシフトされた検出用レーザ反射光を、レーザ干渉計12を透過させると、透過したレーザ光においては、ドップラーシフトによる波長変化が光強度の変化に変換される。以上の超音波検出用レーザ光源12から出射した検出用レーザ光を検出点6へ照射し、被検査体5からのレーザ反射光をレーザ干渉計12へ導き入射させる光学系、及びレーザ干渉計12とから検出光学系が構成される。
【0021】
そして、透過レーザ光を当該レーザ光の波長に良好な感度を有する公知の光検出器で構成する光検出部(図示せず)で検知して電気信号に変換することにより、板波Wによる振動波形(以下では板波の波形とも記す)を電気信号(電圧波形)として検出することができる。このようなレーザ超音波法における超音波検出については例えば上記非特許文献5に記載されている。信号処理部60は、その電気信号を以下で説明するような信号処理することで、所望の測定情報を導出することができる。
【0022】
信号処理部60は、検出した板波Wの波形の電気信号をA/D変換器でディジタル信号として取り込んだ後、例えば周波数解析としてFFTを用いてフーリエ変換して各周波数成分の大きさの分布を導出する。当該分布においてピークの周波数を求めて、被検査体に発生した非対称波板波の周波数を検出する。こうして検出した周波数と、干渉縞のピッチpから決められる波長λとにより、板波の板波速度cを算出する。
【0023】
図2(a)は、レーザ超音波測定装置の第1の構成配置により検出した板波の電圧信号の時間変化の波形の例を示す図である。この例における測定条件は以下の通りであって、超音波発生用のレーザ光は、被検査体の著しい融解又は蒸発が発生しない、アブレーションと熱弾性の中間領域での超音波の発生に十分な強度とした。
被検査体5:厚さ(d)0.5mm×長さ(l)50mm×幅(w)50mm、被検査体の材質(鋼種、SS400)
超音波発生用レーザ光源:YAGレーザ(最大パルスエネルギ450mJ/pulse(NDフィルタで減衰)、パルス幅、10ns
レーザパルスエネルギ密度:2.5mJ/mm2(アブレーションと熱弾性の中間領域)
干渉縞:ピッチp1.0mm、干渉縞の数:5本
発生点(干渉縞3本目)から検出点6の距離:15mm
検出点6から被検査体エッジの距離10mm
図2(a)に図示した板波を検知した電気信号の波形の領域71に板波によるピークが現れる。図2(a)の板波の電圧信号の波形は、アナログ信号をA/D変換してディジタル信号化してコンピュータに取り込んでディスプレー画面上に表示した図である。この検出された板波の波長は、干渉縞のピッチと同じ1.0mmである。また、領域72には、当該測定で用いた被検査体5の形状より、被検査体5のエッジから反射した板波の反射波である。
【0024】
図2(b)は、レーザ超音波測定装置の第1の構成配置により検出した板波の電圧信号の周波数成分の分布(周波数スペクトル)を示す図である。信号処理部60で図2(a)に示した時間波形をFFT演算を用いてフーリエ変換することで、時間波形を構成する周波数スペクトルを算出することができる。図2(b)の領域73にピークとして現れていることから、2.5MHzの板波の周波数を検出することができる。以上の図2(a)、(b)の結果より、波長λ=1.0mmで、周波数fが2.5MHzであるため、板波速度は、波長λ×周波数f=2.5mm/μs、すなわち2.5×103m/secである。
このように、レーザ超音波測定装置の第1の構成配置10aを用いて、板波の周波数並びに板波速度を検出することができる。なお、後述するように、当該周波数及び板波速度は、非対称波板波の周波数及び板波速度である。
【0025】
<対称波板波と非対称波板波の説明>
図3を用いて、対称波板波及び非対称波板波の複数のモードの分散関係の計算値の一例を、横軸を周波数×被検査体の厚さ、縦軸を板波速度として示す。ここでは、図3に示す板波モードの分散関係を用いて、図2の装置で検出した板波が非対称波板波であることを示す。
上記非特許文献4には、板波を構成する縦波音速及び横波音速を計算するための計算式が記載されている。上記非特許文献4では、非対称波モードの板波An(nは整数)は、下記に示す数式1によって、「速度」と「振動数×厚さ」の関係で示され、対称波モードの板波Sn(nは整数)は、下記に示す数式2によって「速度」と「振動数×厚さ」の関係で示される。なお、以下では非対称波(対称波)板波モードを単に非対称波(対称波)板波とも記す。
さらに、上記非特許文献4では、板波の縦波音速と横波音速によって決まるポアソン比νを数式3のように示している。
【0026】
【数1】

【0027】
ここで、VLは縦波音速、VSは横波音速を示す。また、ξ=2π/λを示す。
図3に示す実線は各板波のモードの位相速度、破線は各板波のモードの群速度を示し、各板波のモードにおける実線及び波線は、数式1及び2を解くことによって求められる。
【0028】
図2を用いて説明したレーザ超音波測定装置の実施例においては、被検査体5の厚さd=0.5mm、検出波形の波長λ=1.0mm、周波数f=2.5MHz、板波速度c=2.5mm/μsである。また、c=λf=(λ/d)×(fd)であり、λ/d=2.0であるので、検出波形は、c=2.0fdという関係を有する。
そこで、c=2.0fdを鎖線74として図3上に示す。鎖線74(λ/d=2.0は)は、非対称波板波(An)のうち実線で示されるA0モードと交わる。
一方、図2(b)の矢印73で示すスペクトルの周波数は、2.5MHzである。上記実施例では、被検査体5の厚さd=0.5mmであるため、図3にこの検出スペクトルの板波周波数を直線75で示す。この直線75と、鎖線74との交点76は、A0モードの関係線上近傍にあることから、図2で示した板波は、A0モードの非対称波板波であることがわかる。
しかしながら、直線75と鎖線74との交点76は、対称波板波モードSn上には無い。そのため、上記実施例では、対称波板波が検出できないことがわかる。
このように、上記非特許文献4に記載の板波の理論では、発生が推認される対称波板波は、上記実施例に係るレーザ超音波測定装置では検出できない。
【0029】
このように、レーザ超音波測定装置の上記実施例により、非対称波板波A0の位相速度cは判明する。しかし、上記実施例による検出結果だけでは、検出値が不足しているため、数式1における縦波音速VS及び横波音速VLを算出することはできない。したがって、上記レーザ超音波測定装置10aで検出した非対称波板波の周波数並びに位相速度だけでは、縦波音速VS及び横波音速VLを算出することはできない。
【0030】
<縦波音速検出用のレーザ超音波測定装置の第2の構成配置>
図4(a)は、本実施の形態におけるレーザ超音波測定装置の第2の構成配置10bの概略構成を、被検査体5の側面から見た図である。レーザ超音波測定装置の第2の構成配置10bは、縦波の超音波を被検査体5に発生させて、当該縦波を検出するための配置であって、縦波の音速の測定を目的とするものである。図4(b)は、被検査体5を上から見た平面図である。図4(a)に示すように、レーザ超音波測定装置の第2の構成配置10bは、上記レーザ超音波測定装置の第1の構成配置10aにおける回折格子14を除き、その他の光学形についてはほぼ同じ構成を有する。ただし、レーザ超音波測定装置の第2の構成配置10bは、シリンドリカルレンズ44で超音波発生用のレーザ光を断面形状が線状である単一の線状ビーム(線状光)に変換し、検出点6の近傍に線状スポットとして照射する。このように、シリンドリカルレンズ44により第2の照射光学系を構成する。なお、図示しないが、レーザ超音波測定装置の第1の構成配置10aの超音波発生用のレーザ光の光路において、回折格子14をバイパスするように移動又は脱着可能なミラーを設けることで、レーザ超音波測定装置10aの第1の構成配置と第2の構成配置とを共用することが可能である。
【0031】
図5は、レーザ超音波測定装置の第2の構成配置10bにより、被検査体5の板厚方向に超音波縦波を発生させ、被検査体5の底面で反射して再び上面に戻った超音波を検出したときの、電気信号の波形を示す図である。当該測定例における測定条件は以下の通りである。
被検査体5:厚さ(d)0.5mm×長さ(l)50mm×幅(w)50mm、被検査体(鋼種、SS400)、物性値縦波音速=5,820m/s
超音波発生用レーザ光源:YAGレーザ(最大パルスエネルギ450mJ/pulse(NDフィルタで減衰)、パルス幅、10ns
レーザパルスエネルギ密度:2.0mJ/mm2(熱弾性領域)
線状ビームサイズ:1mm×0.5mm
検出レーザビームスポット:直径1mm
【0032】
図5(a)は、線状スポットのパルスレーザ光を照射したときに検出した電気信号の時間波形を示し、 図5(b)は、図5(a)に示す時間波形をFFTによりフーリエ変換した周波数成分の分布波形を示す。
図5(b)に示すように、線状パルスレーザ光の照射により、5.82MHzに周波数スペクトルのピーク75を検出することができる。
【0033】
検出したスペクトル5.82MHzは、被検査体5の高さ方向に共振する周波数(すなわち共振周波数)であり、その共振波の波長λは、被検査体5の厚さをdとして2dとなる。このとき、共振波の音速は、CL=λ×fであるから、CL=2d×f=2×0.5mm×5.82MHz=5,820m/sとなる。
算出した5,820m/sは、被検査体5の物性値として、別の公知の超音波測定法による縦波音速の値と一致する。この結果より、周波数スペクトルのピーク75は、共振波によるピークであることがわかる。
【0034】
以上より、レーザ超音波測定装置の第1の構成配置10aにより板波の測定から、非対称波板波の位相速度cを検出することができる。また、レーザ超音波測定装置の第2の構成配置10bにより縦波の測定から、縦波音速VLが検出することができる。これらの測定した数値を用いて上記数式1において、横波音速VS及び以外の全ての変数の数値を検出により特定することができる。数式1を数値解析により解いて、以下で説明するように横波音速VSを算出することが可能になる。
【0035】
<横波音速VSの数値解析例>
図6を用いて、横波音速VSの数値解析例を示す。
図6は、非対称波板波の数式1を用いて算出したA0モード波の周波数と位相速度の関係をシミュレーションした結果を示す。シミュレーションしたケースは以下の4通りである。
ケース1(実線):VL=5200m/s、ν=0.29
ケース2(鎖線):VL=5000m/s、ν=0.29
ケース3(一転鎖線):VL=4800m/s、ν=0.29
ケース4(点線):VL=5000m/s、ν=0.324
図示されるように、横波音速を操作変数として数式1から縦波音速の計算値を求め、計算値と縦波速度VLの検出値5,820m/sとの誤差を最小化するように再度横波音速を修正していくことで、横波音速を求めることができる。
このように、縦波音速VL及び横波音速VSの数値解析例として、予め理論値にしたがう縦波音速VL及び横波音速VS毎の複数ケースを用意しておき、各ケースから求まるA0モードの板波速度と、検出した縦波音速と数値解析の変数とする横波音速による板波速度との誤差が一定値未満になるケースを特定することで、横波音速を特定することができる。
【0036】
図7は、横波音速の算出処理を示すフロー図である。
最初に、レーザ超音波測定装置の第1の構成配置10aで、信号処理部60は、検出光から得た時間波形を周波数解析(例えばFFT)によりフーリエ変換して、板波A0モードの板波周波数A0−f(r)(MHz)、並びに、周波数から板波A0モードの板波位相速度A0−v(r)(m/s)を算出する(ステップS101)。
【0037】
レーザ超音波測定装置の第2の構成配置10bで、信号処理部60は、検出光から得た時間波形を周波数解析(例えばFFT)によりフーリエ変換して、共振周波数を求める。この共振周波数を用いて、計測前又は計測後入力される被検査体5の厚みd(mm)を用いて、被検査体5の板厚方向縦波音速VL(m/s)を算出する(ステップS102)。
信号処理部60には、入力パラメータとして、算出した周波数A0−f(MHz)、位相速度A0−v(m/s)、周波数S1−f(MHz)が入力される(ステップS103)。
さらに、信号処理部60には、任意の計算パラメータとして、横波音速VSの計算開始速度、終了速度、計算ステップ(ΔVS)が入力される(ステップS104)。
【0038】
信号処理部60は、ステップS102で算出した縦波音速VL及び数式1に示す理論式にしたがって、計算パラメータによって決まる横波音速VSから算出されるA0モードの板波周波数A0−f(p)(MHz)と板波位相速度A0−v(p)(m/s)を算出する(ステップS105)。
次に、計算パラメータを用いて理論式によりもとまった板波周波数A0−f(p)(MHz)と板波位相速度A0−v(p)(m/s)と、ステップS101及びS102で算出された板波周波数A0−f(r)(MHz)と板波位相速度A0−v(r)(m/s)との誤差をそれぞれ計算する(ステップS106)。
誤差が、規定の閾値以内に無い場合(ステップS107)は、計算ステップ(ΔVS)分、横波音速VSをそれぞれ増加させて(ステップS108)、再度ステップS105及びS106を繰り返す。
誤差が、規定の閾値以内にある場合(ステップS107)は、そのときの横波音速VSを解析値と設定して、計算を終了する。
【0039】
図8は、本発明に係るレーザ超音波測定装置10cの一例の全体図である。
超音波発生用レーザ光源11は、被検査体5に超音波を発生させるために、高出力のパルスレーザ光ELを、ミラー31a、31bを介して被検査体5に照射する。パルスレーザ光ELは、シリンドリカルレンズ43で断面形状が線状のビーム(線状ビーム)にしたのち、回折格子14により回折され、被検査体5に複数の線状スポットとして照射される。
【0040】
またパルスレーザ光ELは、ミラー駆動部15によりミラー31bを退避させることで、パルスレーザ光ELをシリンドリカルレンズ44で線状ビームにしたのち、ミラー31cを介して、被検査体5に単一の線状スポットとして照射する。
【0041】
被検査体5のパルスレーザ光ELが照射される部分は、熱膨張しその後収縮することにより歪みが発生し、被検査体5に超音波が伝搬する。前者の複数の線状スポットにより発生する超音波は、板状の被検査材が板波として伝播する。
【0042】
超音波検出用レーザ光源12からは、連続波レーザ光DLが、レンズ42、ミラー41a、41bを介して、図1(a)や図4(b)に示したような、パルスレーザ光ELにより線状スポットと所定の位置関係にある被検査体5の検出部6に照射される。
連続波レーザ光DLは、被検査体5上の計測点に照射される。被検査体5からのレーザ光DLのレーザ反射光RLの周波数は、表面振動によりドップラーシフトを受ける。超音波検出用レーザ光源12としては、レーザ反射光RLは、ミラー41c、41dを介して、レンズ43により収束され、FP干渉計13に入射する。
【0043】
FP干渉計13は、入射したレーザ光を、ミラー13aと13bとの間で往復させて干渉(共振)させ、後ろ側のミラー13bで一部の光量を透過させる。FP干渉計13を透過するレーザ光のスペクトルは、極狭い波長域に急峻なピークと両側のスロープとで構成される。前記ミラー13aと13bとの間隔をレーザ光の波長の共振条件から若干ずらしておき、レーザ光の波長が当該スロープの波長域に位置するように設定しておく。このとき、レーザ反射光のドップラーシフトは、FP干渉計13を透過する際に光強度変化に変換される。そして、FP干渉計13を透過した光は、アバランシェホトダイオード等からなる高速応答可能な光検出器20に入射する。光検出器20では、透過光の光強度は電気信号S1に変換されて信号処理部60に入力する。
【0044】
信号処理部60では、非対称波板波周波数算出部61は、図9のステップS101で説明した処理を実行することができる。縦波音速算出部62は、図9のステップS102で説明した処理を実行することができる。横波音速算出部63は、図9のステップS103〜S108で説明した処理を実行することができる。
信号処理部60は、プロセッサから構成され、且つ上記した算出部61〜63は、プロセッサが、図示されないメモリに格納されたプログラムを実行することにより実装しても良い。上記算出部の算出結果は、表示装置19に出力できる。
【0045】
制御部50は、信号処理部60の指示を受けて、レーザ超音波測定装置10aからレーザ超音波測定装置10bへの形態変更又はその逆の形態変更を行うために、ミラー駆動部15を制御する。また、発振制御部18を制御して、超音波発生用レーザ光源11のレーザ照射タイミングを制御することができる。制御部50は、電子回路等で実装できる。
【0046】
上記したように、本実施形態に係るレーザ超音波測定装置及びその方法は、被検査材の表面へのダメージを軽減するレーザパルスエネルギ密度の低いレーザ光により、縦波及び横波の音速測定を、非破壊、非接触、さらに高精度に行うことができる。そのため、被検査体は、熱弾性変化領域でのレーザ使用により損傷を軽減できる。
また、本発明は、このように弱いパルスレーザの使用にのみ限定されるものではなく、アブレーションと熱弾性変化領域の共存領域、アブレーション領域であっても適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】図1は、レーザ超音波測定装置の第1の構成配置の概要を説明する図である。
【図2】図2は、レーザ超音波測定装置の第1の構成配置により検出した非対称波板波を示す図である。
【図3】図3は、対称波板波及び非対称波板波の複数のモードの分散関係を説明するための図である。
【図4】図4は、レーザ超音波測定装置の第2の構成配置の概要を説明する図である。
【図5】図5は、レーザ超音波測定装置の第2の構成配置により検出した波形を示す図である。
【図6】図6は、非対称波板波式を用いて算出したA0モード波の周波数と位相速度の関係を示す図である。
【図7】図7は、横波音速の算出処理を示すフロー図である。
【図8】図8は、本発明に係るレーザ超音波測定装置の全体図である。
【図9】図9は、レーザ超音波法の測定原理について説明する図である。
【図10】図10は、レーザ光照射による超音波の二種類の発生原理を説明するための図である。
【符号の説明】
【0048】
5 被検査体
6 検出点
10a レーザ超音波測定装置
10b レーザ超音波測定装置
10c レーザ超音波測定装置
11 超音波発生用レーザ光源
12 超音波検出用レーザ光源
13 ファブリペロー干渉計
15 ミラー駆動部
18 発振制御部
19 表示装置
20 光検出器
50 制御部
60 信号処理部
61 非対称波板波周波数算出部
62 縦波音速算出部
63 横波音速算出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査体に超音波発生用レーザ光源によりパルスレーザ光を照射して超音波を発生させ、超音波検出用レーザ光源により連続波レーザ光を該被検査体に照射してそのレーザ反射光を干渉計で干渉させて、前記超音波によるドップラーシフトによる光強度変化を検知して、前記被検査体内を伝播した超音波を検出するレーザ超音波測定装置であって、
前記パルスレーザ光を断面形状が線状のビームに変換した後に、前記被検査体上に回折格子で複数の線状スポットの干渉縞を生成して照射する第1の照射光学系と、
前記パルスレーザ光を前記被検査体上に単一の線状のスポットに集光・照射する第2の照射光学系と、
前記第1の照射光学系により生成した複数の線状スポットにより発生され、被検査体内を該線状スポットの配列方向に伝播した板波超音波、及び前記単一の線状スポットにより発生し被検査体の厚さ方向に伝播した縦波超音波それぞれを別々に検出するために、前記連続波レーザ光を被検査体上の所定の検査点に集光・照射し、そのレーザ反射光を前記干渉計に入射させて干渉させる検出光学系と、
前記干渉計を透過したレーザ光を受光して光強度変化を電気信号として出力する光検出部と、
前記光検出部から出力された電気信号が入力されて、被検査体の音速を導出する信号処理部とを具備し、
前記信号処理部は、
前記第1の照射光学系により発生した板波超音波による光強度変化の電気信号に基づき、周波数解析をして非対称波板波の周波数を算出する非対称波板波周波数算出部と、
前記第2の照射光学系により発生した縦波超音波による光強度変化の電気信号に基づき、周波数解析をして縦波音速を算出する縦波音速算出部と、
前記非対称波板波の周波数、及び、前記縦波音速に基づき、所定の式を用いて横波音速を算出する横波音速算出部と、を備えることを特徴とするレーザ超音波測定装置。
【請求項2】
前記非対称波板波周波数算出部は、前記第1の照射光学系により発生した板波超音波による光強度変化の電気信号に基づき、周波数解析をしてA0非対称波板波モードの周波数を導出し、該A0非対称波板波モードの周波数と前記複数の線状スポットのピッチとからA0非対称板波モードの位相速度を算出するものであり、
前記縦波音速算出部は、前記第2の照射光学系により発生した縦波超音波による光強度変化の電気信号に基づき、周波数解析をして前記被検査体の板厚方向の超音波の共振周波数を導出し、該共振周波数と被検査体の板厚とから縦波音速を算出するものであり、
前記横波音速算出部は、前記A0非対称波板波モードの周波数及び位相速度、並びに、前記縦波超音波の共振周波数及び縦波音速を用いて、所定の超音波伝播の理論式に基づき繰り返し演算を実施して横波音速を導出することを特徴とする請求項1に記載のレーザ超音波測定装置。
【請求項3】
被検査体に超音波発生用レーザ光源によりパルスレーザ光を照射して超音波を発生させ、超音波検出用レーザ光源により連続波レーザ光を該被検査体に照射してそのレーザ反射光を干渉計で干渉させて、前記超音波によるドップラーシフトによる光強度変化を検知して、前記被検査体内を伝播した超音波を検出するレーザ超音波測定装置を用いたレーザ超音波測定方法であって、
前記パルスレーザ光を断面形状が線状のビームに変換した後に、前記被検査体上に回折格子で複数の線状スポットの干渉縞を生成して照射する第1のレーザ光照射工程と、
前記パルスレーザ光を前記被検査体上に単一の線状のスポットに集光・照射する第2のレーザ光照射工程と、
前記第1のレーザ光照射工程により生成した複数の線状スポットにより発生され、被検査体内を該線状スポットの配列方向に伝播した板波超音波、及び前記単一の線状スポットにより発生し被検査体の厚さ方向に伝播した縦波超音波それぞれを別々に検出するために、前記連続波レーザ光を被検査体上の所定の検査点に集光・照射し、そのレーザ反射光を前記干渉計に入射させて干渉させる超音波検出工程と、
前記干渉計を透過したレーザ光を受光して光強度変化を電気信号として出力する光検出工程と、
前記光検出部から出力された電気信号が入力されて、被検査体の音速を導出する信号処理工程とを具備し、
前記信号処理工程は、
前記第1のレーザ光照射工程により発生した板波超音波による光強度変化の電気信号に基づき、周波数解析をして非対称波板波の周波数を算出する非対称波板波周波数算出工程と、
前記第2のレーザ光照射工程により発生した縦波超音波による光強度変化の電気信号に基づき、周波数解析をして縦波音速を算出する縦波音速算出工程と、
前記非対称波板波の周波数、及び、前記縦波音速に基づき、所定の式を用いて横波音速を算出する横波音速算出工程と、を備えることを特徴とするレーザ超音波測定方法。
【請求項4】
前記非対称波板波周波数算出工程は、前記第1のレーザ光照射工程により発生した板波超音波による光強度変化の電気信号に基づき、周波数解析をしてA0非対称波板波モードの周波数を導出し、該A0非対称波板波モードの周波数と前記複数の線状スポットのピッチとからA0非対称板波モードの位相速度を算出し、
前記縦波音速算出工程は、前記第2のレーザ光照射工程により発生した縦波超音波による光強度変化の電気信号に基づき、周波数解析をして前記被検査体の板厚方向の超音波の共振周波数を導出し、該共振周波数と被検査体の板厚とから縦波音速を算出し、
前記横波音速算出工程は、前記A0非対称波板波モードの周波数及び位相速度、並びに、前記縦波超音波の共振周波数及び縦波音速を用いて、所定の超音波伝播の理論式に基づき繰り返し演算して横波音速を導出することを特徴とする請求項3に記載のレーザ超音波測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−71884(P2010−71884A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−241501(P2008−241501)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【出願人】(592000691)ポスコ (130)
【Fターム(参考)】