説明

レース障子貼り用貼着剤

【課題】 障子枠にレース地を貼り付ける際、簡単な作業で貼り付けることができるようにし、均一な接着力が確保される貼着剤を提供する。
【解決手段】 障子枠1にレース地2を貼着するための貼着剤として、揮発性の有機溶剤に合成ゴムを溶かし込んだ合成ゴム系接着剤で平素は液状で保管されるものとし、保管時の23℃の粘度が200〜1000mpa・sで、有機溶剤が蒸発すると80℃以下の温度では硬化し、90℃以上の温度に加熱すると溶融状態になるものとする。そして、この貼着剤を障子枠1にハケ3で塗り付け、乾燥させた後、レース地2を重ねて、アイロン等の加熱手段4で加熱溶融させて接着する。また、有機溶剤にトルエンを含まないものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、障子枠にレース地を貼り付ける際に好適な貼着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、本出願人は、障子が使用される建物の室内を明るくするとともに、室内に新鮮な空気や日光を採り入れることができるようにするため、障子枠に障子紙を貼る代わりに、レース地を貼るような技術を提案しており(例えば、特許文献1参照。)、このようなレース貼り障子は、新鮮な空気や日光の採り入れが行えることに加えて、レースが汚れたような場合でも、レース障子に直接水を吹き付ける等によって簡単に掃除して綺麗にすることができるなど手軽なため、近年人気を呼んでいる。この技術では、貼着剤として、感熱型接着剤(ホットメルト式)を使用し、これを障子の枠体に塗り付けるか、またはレース地の上下左右の框に対応する箇所に塗り付けておき、障子枠にレース地を重ねてアイロン等で加熱し、貼着するようにしている。
一方、障子枠にレース地を貼り付ける技術として、両面接着テープを使用する技術(例えば、特許文献2参照。)や、感圧接着テープを使用する技術(例えば、特許文献3参照。)なども知られている。
【特許文献1】特開平10−331533号公報
【特許文献2】実公昭48−30029号公報
【特許文献3】実願昭62−123351号(実開昭64−27388号)のマイクロフィルム
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記の特許文献1のような技術では、障子枠やレース地に液状の感熱型接着剤を塗布する際、スプレー塗布したり、ハケ塗りしたりする場合に、塗り方に合せて接着剤の粘度を調整する必要があり、また、スプレー塗布等の場合は、所望の箇所に綺麗に塗布することが出来ず、しかも作業性も良くなかった。
また、接着剤の有機溶剤にトルエンが使用されていたり、粘度調整のためトルエンが含まれるシンナーを使用して粘度を薄めたりするような場合に、VOC(有害揮発性物質)によりシックハウスの原因ともなり、環境衛生上、好ましくなかった。
一方、特許文献2のように、両面接着テープを使用する方法は、テープの接着面が触ると直ちに接着するため、一枚の大きなレース地を弛みなく貼り付けるのは困難であり、シワや弛みが生じて見た目が悪くなるという問題があり、また、特許文献3のような感圧接着テープによる貼り付けは、例えば面粗度の粗い棧やレース地に対しては接着強度が不足するという問題があった。
【0004】
そこで本発明は、障子枠にレース地を貼り付ける際、綺麗に貼れて接着力も十分発揮され、しかも作業性に優れた貼着剤を提供することを目的とし、その際、環境衛生上にも配慮することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため本発明は、障子枠にレース地を貼り付けるための貼着剤として、揮発性の有機溶剤に合成ゴムを溶かし込んだ合成ゴム系接着剤で平素は液状で保管され、保管時の23℃の粘度が200〜1000mpa・sであり、且つ、有機溶剤が蒸発すると、80℃以下の温度では硬化し、90℃以上の温度に加熱すると溶融状態になるものとした。
そして、このような貼着剤を、ハケ塗りで障子枠上に塗布すると、有機溶剤が蒸発して硬化する。そして、表面が乾いてベトツキがなくなったら、その上にレース地を重ね、テンションを与えてレース地が弛まないようにしてアイロン等で90℃以上の温度に加熱して障子枠の貼着剤層を溶かすと、アイロン等の加熱源がなくなって温度が80℃以下に下がると硬化してレース地が障子枠に接着される。
この際、貼着剤の保管時の粘度を上記粘度範囲にすることで、ハケ塗りする際の作業性を良好にすることができ、しかも障子枠全面に綺麗に均一に塗布出来る。
なお、障子枠に塗布した貼着剤の表面が乾いてからレース地の貼付け作業が行われるため、レース地の貼着箇所以外の場所に貼着剤が付着して目が潰れたり、レース地が汚れたり、予期しない箇所が接着されたりするような不具合がなく、綺麗に貼ることができる。
【0006】
なお、貼着剤の粘度が200mpa・s以下であると、粘度が不足して、障子枠にハケ塗りする際、障子枠から垂れたりして作業性が悪くなり、粘度が1000mpa・s以上であると、粘度が高すぎて塗布にムラができたり、ハケでは塗りにくくなる等の作業性が悪くなる。
なお、上記粘度範囲のうち、特に250〜500mpa・sにした場合は、ハケ塗りする際の作業性が一層良好になるとともに、綺麗に且つ均一に塗れるようになる。
また、80℃以下の温度で硬化するような貼着剤とすることで、夏場等の気温の高い時でも軟化するような不具合はなく、また90℃以上の温度で溶融状態になるようにすることで、例えばアイロン等を使用して簡単に溶融させることができ手軽に接着作業が行える。
【0007】
また、ここでいうレース地とは、繊維を編織して、例えば透かし模様や透かし地にした一般的なレース生地であり、繊維の種類や編織方法等は任意である。
また、揮発性の有機溶剤に合成ゴムを溶かし込んだ合成ゴム系接着剤としては、例えばコニシ株式会社が販売しているスチレンブタジエンゴムを有機溶剤に溶かし込んだ接着剤などが好適である。
またこの際、前記貼着剤として、有機溶剤にトルエンを含ませないことにより、シックハウス等の環境衛生上の問題がなくなり、より好ましい。
【発明の効果】
【0008】
障子枠にレース地を貼り付けるための貼着剤として、揮発性の有機溶剤に合成ゴムを溶かし込んだ液状の合成ゴム系接着剤を使用し、粘度を所定範囲にすることで、ハケを使用して障子枠に塗る作業がやりやすくなり、綺麗にしかも均一に塗ることができる。そして、有機溶剤にトルエンを含ませないことにより、環境衛生上の不具合が生じない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の実施の形態について添付した図面に基づき説明する。
ここで、図1は障子枠に貼着剤を塗る状態を示す説明図、図2は塗った貼着剤をアイロンで加熱溶融させてレース地を貼り付ける状態の説明図である。
【0010】
本発明に係るレース障子貼り用貼着剤は、通常の和風住宅等の障子枠に、例えば透かし模様等が入ったレース地を手軽に貼着できるようにされ、このような貼着剤で貼り付けられたレース障子は、従来の障子紙では得られないような風合や効果、すなわち、日の当たる条件では室内に日光を採り入れることが可能で、風通しや室内換気を良好にできるとともに、部屋の中から庭や外の景色を楽しむことができ、しかも障子紙に比べて丈夫で、汚れた場合でも網戸のように水洗いできるなどの利点を有しているものである。
【0011】
そして、本レース障子貼り用貼着剤は、障子枠全域に対してレース地を十分な接合強度で均一に接着できるとともに、だれでも手軽に作業して綺麗に貼り付けることができるようにされ、揮発性の有機溶剤に合成ゴムを溶かし込んだ合成ゴム系接着剤で、粘度が200〜1000mpa・sの液状のものとし、ハケ塗りするのに適したものとされている。この際、レース地は障子紙に比べて重量があり、十分な接着力がないと、すぐ剥げたりするため、全体を均一にしかも強固に接着する必要がある。
【0012】
このため、このようなレース障子貼り用貼着剤を、図1に示すように、ハケ3により障子枠1の貼着面側の全域に均一に塗り付けて接着力の確保を図るが、このような塗り付け作業は、従来の障子紙を貼り付ける場合と同様の手順である。なお、障子紙の場合は、接着剤を塗った後、乾く前に貼り付ける必要があるが、本発明の場合は、後述するように、一度乾かしてから貼り付けるため、作業が容易である。
また、例えば、障子枠1が古くて貼着面の面粗度が粗くなり、凹凸が激しいような場合でも、本発明の場合は、必要に応じて二度塗り、三度塗り等の重ね塗りも可能であり、接合強度を十分確保することができる。
【0013】
障子枠1に貼着剤を塗布した後、数分乾燥させ溶剤を揮発させる。そして、手で触ってもベトつかない程度に乾燥すると、図2に示すように、この上にレース地2を重ね合わせ、たるみがでないようにレース地2にテンションをかけながらアイロン等の加熱手段4で貼着剤を溶かして接着する。
すると、アイロン等の加熱手段4が通過した部分のレース地2は、障子枠1に対応する箇所だけで接着されることになり、また、障子枠1にレース地2を重ねる際にも、貼着剤が乾燥しているため、障子枠1以外の箇所に貼着剤が付着して周辺のレース目が潰れたりするような不具合がなく、綺麗に貼り付けられる。
【実施例】
【0014】
次に、本貼着剤の実施例について説明する。
スプレー塗布型合成ゴム系接着剤であるボンドGP200(コニシ株式会社商品名)と、ハケ塗り用合成ゴム系接着剤であるボンドGP100(コニシ株式会社商品名)を概ね1:1の割合の容積比で混ぜ、23℃の粘度が288mpa・sの合成ゴム系貼着剤を調合した。なお、これらボンドはいずれも平素は密封容器内で液状状態で保管されている。
ここで、スプレー塗布型合成ゴム系接着剤のボンドGP200は、主溶剤がトルエンを含まないシクロヘキサンで、合成ゴムとしてはスチレンブタジエンゴムが使用されており、23℃における粘度が50〜150mpa・sで、ポリプロピレン材の接着に適した接着剤であり、ハケ塗り用合成ゴム系接着剤のボンドGP100も、主溶剤がトルエンを含まないシクロヘキサンで、合成ゴムとしてはスチレンブタジエンゴムが使用されており、23℃における粘度が1200〜1600mpa・sで、ポリプロピレン材の接着に適した接着剤であり、いずれも基本となる成分組成は同一である。
【0015】
また、調合した貼着剤は、常温状態において、有機溶剤が蒸発すると硬化を始め、数分で表面のベトツキがなくなるとともに、アイロン等で加熱すると、80〜85℃付近から軟化し始めて90℃以上で溶融状態となり、加熱源が無くなって温度が下がると、80℃では硬化する特性を有している。
因みに、これらボンドGP200、GP100の一般的な使用方法は、いずれも接着する部材の両面に接着剤を塗布し、10〜15分乾燥させた後、ハンドローラ、ゴムハンマ、ロールプレス等で加圧密着させて貼り付けるような使用方法であるが、本発明の場合は、前記のように障子枠側だけに塗布し、数分乾燥させて表面のベトツキがなくなった後、アイロン等で加熱して貼り付けるようにしている。
この際、障子枠に塗布した貼着剤を一度乾燥させるため、レース地にテンションを与えたり、シワを伸ばしたりするような操作が楽に行え、貼着作業が簡単である。
【0016】
そして、上記貼着剤で貼り付けたレース障子は、接着面が平滑な障子枠の場合で27kg程度の接着力、接着面が粗い障子枠の場合で25kg程度の接着力が確保されることが確認されたが、両面テープの場合、接着面が平滑な障子枠の場合で5kg程度の接着力、接着面が粗い障子枠の場合で2kg程度の接着力であった。このため、本発明の場合は、例えば強風が吹いたような場合でも、剥がれにくい特性を有しているということがいえる。
また、有機溶剤に有害なトルエンを含まないので、シックハウス等の環境衛生上の不具合もない。
【0017】
なお、本貼着剤は、使用時以外に保管するときは、容器の蓋をしめて溶剤の揮発を防止する必要がある。
また、一度貼り付けたレース地を取り外す際は、図2に示すように、アイロン等で加熱しながら剥がせば、容易に剥がし取ることができるため、例えばレース地を交換するような場合に簡便である。
【産業上の利用可能性】
【0018】
障子枠にレース地を貼り付けるための貼着剤として、粘度が所定範囲内の液状の合成ゴム系接着剤を用いることにより、障子枠に対するハケ塗り作業を楽にしかも均一に塗ることができ、十分な接着力を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】障子枠に貼着剤を塗る状態を示す説明図
【図2】塗った貼着剤をアイロンで加熱溶融させてレース地を貼り付ける状態の説明図
【符号の説明】
【0020】
1…障子枠、2…レース地、3…ハケ、4…加熱手段。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
障子枠にレース地を貼り付けるための貼着剤であって、揮発性の有機溶剤に合成ゴムを溶かし込んだ合成ゴム系接着剤で平素は液状で保管され、保管時の23℃の粘度が200〜1000mpa・sであり、且つ、有機溶剤が蒸発すると、80℃以下の温度では硬化し、90℃以上の温度に加熱すると溶融状態になることを特徴とするレース障子貼り用貼着剤。
【請求項2】
前記有機溶剤は、トルエンを含まないことを特徴とする請求項1に記載のレース障子貼り用貼着剤。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−117855(P2006−117855A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−308965(P2004−308965)
【出願日】平成16年10月25日(2004.10.25)
【出願人】(597086070)
【Fターム(参考)】