説明

レーダ画像処理装置

【課題】処理装置の規模を抑えつつ、演算精度の劣化も抑える。
【解決手段】複数の高速フーリエ変換を行うFFT部5,8と複数の逆高速フーリエ変換を行うIFFT部9,12とが直列に接続されており、高速フーリエ変換または逆高速フーリエ変換の演算結果は、複数の固定小数点データとそれらのデータに共通する1つの指数とで表現するブロック浮動小数点形式で出力される。また、固定小数点データに対して、高速フーリエ変換または逆高速フーリエ変換を実施する時、固定小数点データの中に指数が異なるデータが含まれている場合に、それらの指数の調整を行う指数調整部7,11が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はレーダ画像処理装置に関し、特に、レーダ信号に、FFT(高速フーリエ変換)やIFFT(逆高速フーリエ変換)等を施し、レーダ画像を生成する、レーダ画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーダ信号に、FFTやIFFT等を施し、レーダ画像を生成する方法としては、例えば、特許文献1に示す方法がある。
【0003】
しかしながら、このFFTやIFFTは、積和演算を繰り返す処理であり、この演算において、精度の劣化を抑えるためには、データ形式に、浮動小数点形式を用いたり、ビット数を増やした固定小数点を用いたりする必要があり、処理装置の規模を押し上げる要因となっている。
【0004】
これに対し、特許文献2は、2次元画像を対象にFFTやIFFTを施す際、ビット数を抑えた固定小数点で処理する方法について述べたものである。この文献では、直流成分の分離とビットシフトという処置を加えることで、桁落ちによる精度の劣化を抑える方法が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−338004号公報
【特許文献2】特開平3−116271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の特許文献2に記載の従来技術では、桁落ちに対する効果が十分ではなく、精度の劣化を招くという問題点があった。
【0007】
この発明は、かかる問題点を解決するためになされたものであり、処理装置の規模を抑えつつ、演算精度の劣化も抑えることが可能なレーダ画像処理装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、入力データとして入力されるレーダ信号からレーダ画像を生成するためのレーダ画像処理装置であって、高速フーリエ変換を行うFFT手段と、逆高速フーリエ変換を行うIFFT手段とをそれぞれ複数ずつ備え、前記FFT手段および前記IFFT手段は、高速フーリエ変換または逆高速フーリエ変換の演算結果を、複数の固定小数点データとそれらのデータに共通する1つの指数とで表現するブロック浮動小数点形式で出力するものであって、前記FFT手段および前記IFFT手段はすべて直列に接続されており、最前段の前記FFT手段または前記IFFT手段に前記入力データが入力され、当該入力データに対して前記FFT手段および前記IFFT手段が高速フーリエ変換または逆高速フーリエ変換を順次行っていくものであって、直列に接続されたそれらの前記FFT手段および前記IFFT手段のうち、前段の前記FFT手段または前記IFFT手段の演算結果である複数の固定小数点データに対して後段の前記FFT手段または前記IFFT手段が高速フーリエ変換または逆高速フーリエ変換を実施する時、当該固定小数点データの中に指数が異なるデータが含まれている場合に、それらの指数の調整を行う指数調整部を当該前段と後段との間に設け、指数調整された固定小数点データを前記後段のFFT手段またはIFFT手段に入力することを特徴とするレーダ画像処理装置である。
【発明の効果】
【0009】
この発明は、入力データとして入力されるレーダ信号からレーダ画像を生成するためのレーダ画像処理装置であって、高速フーリエ変換を行うFFT手段と、逆高速フーリエ変換を行うIFFT手段とをそれぞれ複数ずつ備え、前記FFT手段および前記IFFT手段は、高速フーリエ変換または逆高速フーリエ変換の演算結果を、複数の固定小数点データとそれらのデータに共通する1つの指数とで表現するブロック浮動小数点形式で出力するものであって、前記FFT手段および前記IFFT手段はすべて直列に接続されており、最前段の前記FFT手段または前記IFFT手段に前記入力データが入力され、当該入力データに対して前記FFT手段および前記IFFT手段が高速フーリエ変換または逆高速フーリエ変換を順次行っていくものであって、直列に接続されたそれらの前記FFT手段および前記IFFT手段のうち、前段の前記FFT手段または前記IFFT手段の演算結果である複数の固定小数点データに対して後段の前記FFT手段または前記IFFT手段が高速フーリエ変換または逆高速フーリエ変換を実施する時、当該固定小数点データの中に指数が異なるデータが含まれている場合に、それらの指数の調整を行う指数調整部を当該前段と後段との間に設け、指数調整された固定小数点データを前記後段のFFT手段またはIFFT手段に入力することを特徴とするレーダ画像処理装置であるので、処理装置の規模を抑えつつ、演算精度の劣化も抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施の形態1に係るレーダ画像処理装置を示すブロック構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係るFFT/IFFTの入出力を補足するための構成図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係る指数調整ブロックを示す構成図である。
【図4】この発明の実施の形態2に係る指数調整ブロックを示す構成図である。
【図5】この発明の実施の形態3に係るレーダ画像処理装置を示すブロック構成図である。
【図6】この発明の実施の形態3に係る指数調整ブロックを示す構成図である。
【図7】この発明の実施の形態4に係るレーダ画像処理装置を示すブロック構成図である。
【図8】この発明に係るレーダ画像処理装置で処理される画像データにおけるX軸方向の塊およびY軸方向の塊を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
この発明のレーダ画像処理装置は、入力信号としてレーダ信号が入力され、当該レーダ信号にIFFやIFFTを施す処理を行って、レーダ画像を生成し出力するものである。以下、この発明のレーダ画像処理装置の実施形態につき、図面を用いて説明する。各図において同一または相当する部分については、同一符号を付して説明する。
【0012】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係るレーダ画像処理装置の構成を示すブロック図である。図1に示すように、このレーダ画像処理装置は、レーダ信号を入力する入力線1と、処理を行う処理装置2と、処理結果を出力する出力線3とから構成されている。
【0013】
また、処理装置2は、前処理を行う前処理部4と、一方向(X軸方法)のFFTを行うFFT部5と、FFT部5によるFFT結果を保持するメモリ6と、メモリ6から読み出した値の指数を調整する指数調整部7と、一方向(Y軸方向)のFFTを行うFFT部8と、一方向(Y軸)のIFFTを行うIFFT部9と、IFFT部9によるIFFT結果を保持するメモリ10と、メモリ10から読み出した値の指数を調整する指数調整部11と、一方向(X軸)のIFFTを行うIFFT部12と、後処理を行う後処理部13とを備えている。
【0014】
図2は、FFT部5,8およびIFFT部9,12の入出力を示す構成図である。FFT部5,8およびIFFT部9,12は基本的に同じ構成を有しており、FFTを行うか又はIFFTを行うかのみが異なる。図2に示すように、FFT部5,8およびIFFT部9,12は、処理対象であるデータを受け取るデータ入力線21と、データにFFTまたはIFFTを実施するFFT/IFFT処理部22と、処理結果であるデータを引き渡すデータ出力線23と、処理結果であるデータに付随する指数を引き渡す指数出力線24と、前段処理が指数出力を持つ場合にその指数を受け取る指数入力線25とを備えている。
【0015】
図3は、指数調整部7,11の内部構成を示す構成図である。指数調整部7,11は基本的に同じ構成を有している。図3に示すように、指数調整部7,11は、大きく分けて、FFT部5またはIFFT部9から指数情報を受け取る指数入力線31と、メモリ6またはメモリ10から指数調整を行うデータを受け取るデータ入力線32と、指数調整を行う指数調整処理部33と、指数調整処理部33による指数調整結果を出力するデータ出力線34とで構成されている。
【0016】
また、指数調整処理部33は、指数入力線31から受け取った指数を保持する指数表35と、データの最大値を検出する最大値検出部36と、データを一定時間遅らせるFIFO(First−In First−Out)37と、データに係数乗算を行う係数乗算部38と、データの桁数を調整するシフタ39とを備えている。
【0017】
このような構成により、指数調整部7,11は、前段のFFT部またはIFFT部の演算結果である複数の固定小数点データに対して後段のFFT部またはIFFT部が高速フーリエ変換または逆高速フーリエ変換を実施する時、当該固定小数点データの中に指数が異なるデータが含まれている場合に、それらの指数の調整を行うものである。したがって、指数調整部は、前段のFFT手段またはIFFT手段と後段のFFT手段またはIFFT手段との間に設けられ、指数が異なる複数の値同士間で指数調整を行って、当該指数調整された固定小数点データを後段のFFT手段またはIFFT手段に入力する。
【0018】
以下、図1を参照しながら、レーダ画像処理装置の各部の機能と動作について説明する。まず、装置の基本動作は、以下のようになる。
【0019】
・処理装置2が、入力線1からX軸方向に連続するデータ(レーダ信号)を受け取る。
・これにより、前処理部4が、入力線1で受け取ったデータに、例えば、係数乗算、係数加算、データの並び替えなどの前処理を施し、その結果をFFT部5に渡す。
・次に、FFT部5が、前処理部4から受け取ったデータに、X軸方向の1次元FFTを施し、その結果をメモリ6に格納する。また、その1次元FFTに共通する指数を、指数調整部7に渡す。
・指数調整部7が、メモリ6からY軸方向に連続する形でデータを読み出し、当該データに指数調整を施し、その結果をFFT部8に渡す。
・FFT部8が、指数調整部7から受け取ったデータに、Y軸方向の1次元FFTを施し、その結果をIFFT部9に渡す。また、その1次元FFTに共通する指数も、IFFT部9に渡す。
・IFFT部9が、FFT部8から受け取ったデータに、Y軸方向の1次元IFFTを施し、その結果をメモリ10に格納する。また、その1次元IFFTに共通する指数とFFT部8から受け取った指数との和を演算し、指数調整部11に渡す。
・指数調整部11が、メモリ10からX軸方向に連続する形でデータを読み出し、当該データに指数調整を施し、その結果をIFFT部12に渡す。
・IFFT部12が、指数調整部11から受け取ったデータに、X軸方向の1次元FFTを施し、その結果を後処理部13に渡す。また、その1次元FFTに共通する指数も、後処理部13に渡す。
・後処理部13が、IFFT部12から受け取ったデータと指数とを使って後処理を施し、その結果を出力線3に渡す。後処理で行う処理も、前処理と同様に、例えば、係数乗算、係数加算、データの並び替えなどの処理である。なお、この後処理には、IFFT部12が出力する指数に対する調整も含まれる。この調整は、指数調整部7,11で行う動作と基本的に同じである。ただし、最大値や最大桁とする値は、前回の画像処理結果や、後処理用に固定値を設定する。
【0020】
以上の基本動作により、レーダ画像処理装置は、入力線1から受け取ったデータに対し、処理装置2で画像処理した結果を、出力線3から出力する。
【0021】
ちなみに、画像処理の対象となるデータは、2次元のデータであり、X軸方向のFFT及びIFFTは、図8のX軸方向の塊(データの1行分)に対して、FFTまたはIFFTを実施し、Y軸方向のFFT及びIFFTは、同図のY軸方向の塊(データの1列分)に対して、FFTまたはIFFTを実施することを示す。
【0022】
また、FFT部5、メモリ6、指数調整部7、および、FFT部8における一連の処理は、これらを合わせて、2次元FFTという処理を実現している。同様に、IFFT部9、メモリ10、指数調整部11、および、IFFT部12における一連の処理は、これらを合わせて、2次元IFFTという処理を実現している。
【0023】
なお、図1の構成では、FFT(X軸)→FFT(Y軸)→IFFT(Y軸)→IFFT(X軸)という順番の処理となっているが、この場合に限らず、FFT(Y軸)→IFFT(Y軸)→FFT(X軸)→IFFT(X軸)と同軸をペアとする構成をとる画像処理装置も構成することができる。但し、この場合は、軸が変化する、IFFT(Y軸)からFFT(X軸)に移行する間に、メモリや指数調整のブロックを挟み込んだ構成になる。
【0024】
次に、図2を用いて、FFT部5,8、および、IFFT部9,12について補足する。
・まず、N点の固定小数点データが、データ入力線21から入力される。
・FFT/IFFT処理部22は、当該N点の固定小数点データを受け取り、これにFFTもしくはIFFTを施し、その結果であるN点の固定小数点データをデータ出力線23に引き渡すと同時に、N点の固定小数点データに共通する指数(1個)を指数出力線24に出力する。
このように、複数の固定小数点データとそれらの複数の固定小数点データに共通する1つの指数とで値を表現する形式は、ブロック浮動小数点形式と呼ばれる。
【0025】
なお、ここでいう固定小数点データとは、例えば、実数部と虚数部がそれぞれ16bitで表現されているもの等を指す。以下の説明では、この16bitで表現するケースを例として取り上げる。また、Nは、入力データを2次元画像としてみた時、X軸方向のFFT/IFFTならX軸の画素数、Y軸方向のFFT/IFFTならY軸の画素数に相当する。
【0026】
次に、図3を用いて、指数調整部7,11の動作について補足する。まず、指数調整部7の動作は以下のようになる。なお、Y軸方向の画素数をNとする。
・指数入力線31からN行の指数を受け取り、指数表35に格納する。
・データ入力線32から、メモリ6にあるデータ(N点)をY軸方向に連続する形で読み出す。
・最大値検出部36が、データ入力線32から受け取ったデータとそれに対応する指数とを乗算した値の最大値Mを、N点の塊毎に算出し、結果を係数乗算部38に渡す。
【0027】
なお、ここで、指数表35に格納したN行分の指数のi番目をE(i)とし、データ入力線32から読み込んだN個からなるデータの塊の中でi番目のデータをF(i)と表現すると、最大値Mの検出は、以下のように表すことができる。以下において、abs()は絶対値を求める関数、max()は最大値を求める関数である。
【0028】
M = max(E(i) × abs(F(i))), i=1〜N
【0029】
・係数乗算部38は、N点のデータの塊毎に、最大値検出部36からMを、指数表35からE(i)を、FIFO37からF(i)を受け取り、
E(i) × F(i) × α
の演算を行い、シフタ39に渡す。ここで、シフタ39に渡すデータは、指数が取りうる値の最大値がEmaxだとすると、16 + Emax bitの固定小数点形式になる。また、αとは、指数調整のために設定した値をDとした時、以下の式で示す値である。
【0030】
α = D ÷ M
【0031】
このDとしては、16+ Emaxで表現できる最大値などを設定する。
【0032】
なお、FIFO37は、データ入力線32で読み出したデータを、係数αの算出が終わるまで待ち合わせるための遅延回路である。
【0033】
・シフタ39は、係数乗算部38から受け取った16+ Emax bitのデータの上位16bitを切り出して、データ出力線34に出力する。
【0034】
以上が、指数調整部7の動作である。指数調整部11の動作は、一塊とするデータがX軸方向の塊となる点だけで、基本的に指数調整部7と同じ動作になる。
【0035】
以上の動作により、実施の形態1に係るレーダ画像処理装置は、入力データに対して、2次元FFTと2次元IFFTを含む画像処理を施すことができる。また、固定小数点データの入出力となるFFT/IFFTを用いることで、処理装置の規模を抑え、かつ、指数調整を組み込むことで、演算精度の劣化を抑え込むことを実現している。
【0036】
なお、図1では示してないが、FFT部5,8やIFFT部9,12の後に、データを加工するための中間処理を加えても良い。また、abs(F(i))は、F(i)の複素数の実数部をre、虚数部をimとした時、
max(|re|,|im|)
と、実数部と虚数部の値の大きいほうの選択で代用しても良い。
【0037】
以上のように、この発明の実施の形態1によれば、固定小数点と共通の指数形式で1次元FFTを実施するFFT手段と、固定小数点と共通の指数形式で1次元IFFTを実施するIFFT手段とを、それぞれ、複数個ずつ備え、これらのFFT手段およびIFFT手段の演算結果をブロック浮動小数点形式で出力するようにし、さらに、指数が異なる複数の値同士の間で調整を行う指数調整手段とを備え、FFTおよびIFFTと、ブロック浮動小数点の値調整とを組み合わせることで、処理装置の規模を抑えつつ、演算精度の劣化を抑えたレーダ画像処理装置を実現することができる。
【0038】
実施の形態2.
上述の実施の形態1では、指数調整部7,11の中で最大値検出を行っていたが、これを最大桁検出に置き換えることができる。実施の形態2においては、その場合について説明する。図4は、実施の形態2における指数調整部7,11の構成を示した図である。なお、実施の形態1と2の違いは、図3の最大値検出部36が、図4においては、最大桁検出部40に置き換わっている点のみである。
【0039】
実施の形態1の例と同様に、実施の形態2における指数調整部7の動作について述べる。
・指数入力線31からN行の指数を受け取り、指数表35に格納する。
・データ入力線32から、メモリ6にあるデータ(N点)をY軸方向に連続する形で読み出す。
・最大桁検出部40が、データ入力線32から受け取ったデータとそれに対応する指数とを乗算した値の最大値の桁数Lを、N点の塊毎に算出し、結果を係数乗算部38に渡す。
【0040】
なお、ここで、指数表35に格納したN行分の指数のi番目をE(i)とし、データ入力線32から読み込んだN個からなるデータの塊の中でi番目のデータをF(i)と表現すると、この最大値Lの検出は、以下のように表すことができる。但し、abs()は絶対値を求める関数、max()は最大値を求める関数、bitlength()は、引数の値を表現できるビット幅を求める関数である。
【0041】
L = bitlength(max(E(i) × abs(F(i)))),
i=1〜N
【0042】
・係数乗算部38は、N点のデータの塊毎に、最大桁検出部40からLを、指数表35からE(i)を、FIFO37からF(i)を受け取り、
(E(i) × F(i)) << β
をシフタ39に渡す。ここで、シフタ39に渡すデータは、指数が取りうる値の最大値がEmaxだとすると、16+ Emax bitの固定小数点形式になる。また、「<< β」は、値をβビット左シフトすることを示す。このβの値は、指数調整のための設定値であり、例えば、以下の式で求められる値を用いる。
【0043】
β = (16 − 1) + Emax − L
【0044】
・シフタ39は、係数乗算部38から受け取った16+ Emax bitのデータの上位16bitを切り出して、データ出力線34に出力する。
【0045】
以上が、指数調整部7の動作である。指数調整部11の動作は、一塊とするデータがX軸方向の塊となる点だけで、基本的に指数調整部7と同じ動作になる。
【0046】
以上の動作により、実施の形態2のレーダ画像処理装置は、実施の形態1に比べ、演算精度の劣化を抑える効果が若干低下するものの、更に装置規模を縮小することが可能になる。
【0047】
実施の形態3.
図5は、実施の形態3のレーダ画像処理装置の構成を示すブロック図である。図5に示す構成は、図1と比較して、最大値検出部41,42が追加された点のみが異なっている。なお、最大値検出部41は、FFT部5の処理結果の中で最大値となる値を検出するものである。また、最大値検出部42は、IFFT部9の処理結果の中で最大値となる値を検出するものである。
【0048】
図6は、実施の形態3における指数調整部7,11の内部構成を示す図である。図6に示す構成は、図3と比較して、図3における最大値検出部36とFIFO37を削除し、代わりに、最大値入力線50を追加した点が異なる。最大値入力線50は、最大値検出部41または42から、それで検出された最大値の値が入力されるための入力線である。上述のように、本実施の形態においては、最大値は最大値検出部41,42で検出する構成であるため、指数調整部7,11における最大値検出部36は不要となる。
【0049】
すなわち、本実施の形態においては、上述の実施の形態1で示した指数調整部7,11の機能を最大値検出の部分と指数調整の部分とに分け、最大値検出の部分を最大値検出部41,42で行い、指数調整の部分を指数調整部7,11で行うようにしている。
【0050】
以下、図5を用いて、実施の形態3に係るレーダ画像処理装置の基本動作を説明する。なお、最大値検出部41,42の動作が加わった点を除けば、実施の形態1と基本的に同じである。
【0051】
・処理装置2が、入力線1からX軸方向に連続するデータ(レーダ信号)を受け取る。
・前処理部4が、入力線1で受け取ったデータに前処理を施し、その結果をFFT部5に渡す。
・FFT部5が、前処理部4から受け取ったデータに、X軸方向の1次元FFTを施し、その結果をメモリ6に格納する。また、その1次元FFTに共通する指数を、指数調整部7に渡す。
・最大値検出部41が、FFT部5がメモリ6や指数調整部7に渡しているデータと同じものを受け取り、その中で最大値を算出し、指数調整部7に渡す。
・指数調整部7が、メモリ6からY軸方向に連続する形で読み出したデータに、最大値検出部41から受け取った最大値を用いて、指数調整を施し、その結果をFFT部8に渡す。
・FFT部8が、指数調整部7から受け取ったデータに、Y軸方向の1次元FFTを施し、その結果をIFFT部9に渡す。
・IFFT部9が、FFT部8から受け取ったデータに、Y軸方向の1次元IFFTを施し、その結果をメモリ10に格納する。また、その1次元IFFTに共通する指数を、指数調整部11に渡す。
・最大値検出部42が、IFFT部9がメモリ10や指数調整部11に渡しているデータと同じものを受け取り、その中で最大値を算出し、指数調整部11に渡す。
・指数調整部11が、メモリ10からX軸方向に連続する形で読み出したデータに、最大値検出部42から受け取った最大値を用いて、指数調整を施し、その結果をIFFT部12に渡す。
・IFFT部12が、指数調整部11から受け取ったデータに、X軸方向の1次元FFTを施し、その結果を後処理部13に渡す。
・後処理部13が、IFFT部12から受け取ったデータに後処理を施し、その結果を出力線3に渡す。
【0052】
以上の基本動作により、レーダ画像処理装置は、入力線1から受け取ったデータに対し、処理装置2で画像処理した結果を、出力線3から出力する。
【0053】
なお、最大値検出部41,42における最大値の求め方は、実施の形態1の最大値検出部36と基本的に同じである。ただし、実施の形態3の最大値検出部41,42では、実施の形態1の最大値検出部36と異なり、X軸方向の塊1つあるいはY軸方向の塊1つというように塊毎に最大値を求めるのではなく、全塊(画像1枚分)の中での最大値を求める点が異なる。
【0054】
更に、図6を用いて、指数調整部7,11の動作について補足する。まず、指数調整部7の動作は、以下のようになる。なお、Y軸方向の画素数をNとする。
・指数入力線31からN行の指数を受け取り、指数表35に格納する。
・最大値入力線50から1個の最大値Mを受け取り、これを係数乗算部38の中で保持する。
・データ入力線32から、メモリ6にあるデータ(N点)をY軸方向に連続する形で読み出す。
・係数乗算部38は、指数表35からE(i)を、データ入力線32からF(i)を受け取り、保持している最大値Mを使って、
E(i) × F(i) × α
を算出し、シフタ39に渡す。ここで渡すデータは、指数が取りうる値の最大値がEmaxだとすると、16+ Emax bitの固定小数点形式になる。また、αとは、指数調整のために設定した値をDとした時、以下の式で示す値である。
【0055】
α = D ÷ M
【0056】
このDとしては、16+ Emaxで表現できる最大値などを設定する。
【0057】
・シフタ39は、係数乗算部38から受け取った16+ Emax bitのデータの上位16bitを切り出して、データ出力線34に出力する。
【0058】
以上が、指数調整部7の動作である。指数調整部11の動作は、一塊とするデータがX軸方向の塊となる点だけで、基本的に指数調整部7と同じ動作になる。
【0059】
以上のように、本実施の形態においては、実施の形態1と同様の効果が得られるとともに、さらに、実施の形態1に比べ、演算精度の劣化を抑える効果が若干低下するものの、更に装置規模を縮小することが可能になる。
【0060】
なお、本実施の形態においては、最大値を検出する最大値検出部を設ける例について示したが、その代わりに、最大桁を検出する最大桁検出部を設けるようにしてもよく、その場合にも、同様の効果が得られることは言うまでもない。なお、最大桁の求め方は、実施の形態2の最大桁検出部40と基本的に同じである。ただし、本実施の形態の最大桁検出部では、実施の形態2の最大桁検出部40と異なり、X軸方向の塊1つあるいはY軸方向の塊1つというように塊毎に最大値を求めるのではなく、全塊(画像1枚分)の中での最大値を求めるようにする。
【0061】
実施の形態4.
図7は、実施の形態4のレーダ画像処理装置の構成を示すブロック図である。図7の構成は、図5と比較して、IFFT部12の処理結果の中で最大値となる値を検出する最大値検出部43と、IFFT部12の処理結果を一時的に保持するメモリ14と、指数調整を行う指数調整部15とが追加されている点が異なる。最大値検出部43は、複数のFFT部およびIFFT部のうちの最終段となるFFT部またはIFFT部に接続される(図7の例では、IFFT部12がそれに相当する。)。
【0062】
図7を用いて、実施の形態4の動作を説明する。この場合の動作は、以下のようになる。
・処理装置2が、入力線1からX軸方向に連続するデータ(レーダ信号)を受け取る。
・前処理部4が、入力線1で受け取ったデータに前処理を施し、その結果をFFT部5に渡す。
・FFT部5が、前処理部4から受け取ったデータに、X軸方向の1次元FFTを施し、その結果をメモリ6に格納する。また、その1次元FFTに共通する指数を、指数調整部7に渡す。
・最大値検出部41が、FFT部5がメモリ6や指数調整部7に渡しているデータと同じものを受け取り、その中で最大値を算出し、指数調整部7に渡す。
・指数調整部7が、メモリ6からY軸方向に連続する形で読み出したデータに、指数調整を施し、その結果をFFT部8に渡す。
・FFT部8が、指数調整部7から受け取ったデータに、Y軸方向の1次元FFTを施し、その結果をIFFT部9に渡す。
・IFFT部9が、FFT部8から受け取ったデータに、Y軸方向の1次元IFFTを施し、その結果をメモリ10に格納する。また、その1次元IFFTに共通する指数を、指数調整部11に渡す。
・最大値検出部42が、IFFT部9がメモリ10や指数調整部11に渡しているデータと同じものを受け取り、その中で最大値を算出し、指数調整部11に渡す。
・指数調整部11が、メモリ10からX軸方向に連続する形で読み出したデータに、指数調整を施し、その結果をIFFT部12に渡す。
【0063】
ここまでの処理は、上述の実施の形態3と同じである。以降の処理が実施の形態3とは異なる。
【0064】
・IFFT部12が、指数調整部11から受け取ったデータに、X軸方向の1次元FFTを施し、その結果をメモリ14に格納する。また、その1次元IFFTに共通する指数を、指数調整部15に渡す。
・最大値検出部43が、IFFT部12がメモリ14や指数調整部15に渡しているデータと同じものを受け取り、その中で最大値を算出し、指数調整部15に渡す。
・指数調整部15が、メモリ14からX軸方向に連続する形で読み出したデータに、指数調整を施し、その結果を後処理部13に渡す。
・後処理部13が、指数調整部15から受け取ったデータに後処理を施し、その結果を出力線3に渡す。
【0065】
以上の基本動作により、レーダ画像処理装置は、入力線1から受け取ったデータに対し、処理装置2で画像処理した結果を、出力線3から出力する。
【0066】
以上の動作により、実施の形態4の装置は、実施の形態3に比べ、装置規模が若干増すものの、演算精度の劣化をより抑えることができる。また、後処理前の指数調整は、実施形態1,2にも同様に適用することができる。
【0067】
実施の形態5.
上述の実施の形態4で示した図7の最大値検出部41,42,43は、それぞれが検出した最大値を指数調整部7,11,15に渡していたが、例えばこれら3つの値の積などの統合した結果(統合値)を、レーダ画像処理装置として、画像処理結果と共に、出力線3より出力することもできる。なお、本実施の形態の構成については、基本的に図7と同じであるため、特に図は設けない。
【0068】
最大値検出部41,42,43の統合結果を出力する本実施の形態では、本レーダ画像処理装置の後段で、データの絶対レベルを把握した処理を行うことができる。
【0069】
例えば、実施の形態4では、入力線1で受け取る信号のレベルが倍になっても区別できないが、本実施の形態であれば、最大値検出部41,42,43の統合結果から、倍になったことを知ることができる。
【0070】
なお、本実施の形態によるレーダ画像処理装置が出力する、複数の最大値検出の統合値としては、図7の最大値検出部41,42,43のそれぞれが検出した3つの最大値の積の他に、3つの最大値の和でもよく、他の演算により得られる統合値でもよい。さらに、最大値の統合値だけでなく、検出した最大桁の統合値を出力するようにしてもよい。
【0071】
以上のように、本実施の形態においては、上述の実施の形態4と同様の効果が得られるとともに、さらに、最大値検出部41,42,43の統合結果を出力するようにしたので、入力線1で受け取る信号のレベルが倍になったような場合でも、最大値検出部41,42,43の統合結果から、倍になったことを知ることができるという効果が得られる。
【符号の説明】
【0072】
1 入力線、2 レーダ画像処理装置、3 出力線、4 前処理部、5,8 FFT部、6,10,14 メモリ、7,11,15 指数調整部、9,12 IFFT部、13 後処理部、21,32 データ入力線、22 FFT/IFFT処理部、23,34 データ出力線、24 指数出力線、25,31 指数入力線、33 指数調整処理部、35 指数表、36 最大値検出部、37 FIFO(First−In First−Out)、38 係数乗算部、39 シフタ、40 最大桁検出部、41,42,43 最大値検出部、50 最大値入力線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力データとして入力されるレーダ信号からレーダ画像を生成するためのレーダ画像処理装置であって、
高速フーリエ変換を行うFFT手段と、
逆高速フーリエ変換を行うIFFT手段と
をそれぞれ複数ずつ備え、
前記FFT手段および前記IFFT手段は、高速フーリエ変換または逆高速フーリエ変換の演算結果を、複数の固定小数点データとそれらのデータに共通する1つの指数とで表現するブロック浮動小数点形式で出力するものであって、
前記FFT手段および前記IFFT手段はすべて直列に接続されており、
最前段の前記FFT手段または前記IFFT手段に前記入力データが入力され、当該入力データに対して前記FFT手段および前記IFFT手段が高速フーリエ変換または逆高速フーリエ変換を順次行っていくものであって、
直列に接続されたそれらの前記FFT手段および前記IFFT手段のうち、前段の前記FFT手段または前記IFFT手段の演算結果である複数の固定小数点データに対して後段の前記FFT手段または前記IFFT手段が高速フーリエ変換または逆高速フーリエ変換を実施する時、当該固定小数点データの中に指数が異なるデータが含まれている場合に、それらの指数の調整を行う指数調整部を当該前段と後段との間に設け、指数調整された固定小数点データを前記後段のFFT手段またはIFFT手段に入力する
ことを特徴とするレーダ画像処理装置。
【請求項2】
前記指数調整部は、後段の前記FFT手段または前記IFFT手段が複数の固定小数点データに対して高速フーリエ変換または逆高速フーリエ変換を実施する時、当該固定小数点データの中に指数が異なるデータが含まれている場合に、当該固定小数点データの中の最大値を検出し、当該最大値の値を用いて前記指数の調整を行うことを特徴とする請求項1に記載のレーダ画像処理装置。
【請求項3】
前記指数調整部は、後段の前記FFT手段または前記IFFT手段が複数の当該固定小数点データに対して高速フーリエ変換または逆高速フーリエ変換を実施する時、当該固定小数点データの中に指数が異なるデータが含まれている場合に、当該固定小数点データの中の最大桁数を検出し、当該最大桁数の値を用いて前記指数の調整を行うことを特徴とする請求項1に記載のレーダ画像処理装置。
【請求項4】
前記FFT手段またはIFFT手段に接続された最大値検出部をさらに備え、
前記FFT手段または前記IFFT手段が複数の当該固定小数点データに対して高速フーリエ変換または逆高速フーリエ変換を実施する時、当該固定小数点データの中に指数が異なるデータが含まれている場合に、前記最大値検出部が、画像1枚分の中の当該固定小数点データの中で最大値または最大桁を検出し、前記指数調整部が、検出されたその値を用いて前記指数の調整を行うことを特徴とする請求項1に記載のレーダ画像処理装置。
【請求項5】
前記複数のFFT手段またはIFFT手段の中で最終段となるFFT手段またはIFFT手段に接続された最終段用最大値検出部をさらに備え、
前記FFT手段または前記IFFT手段が複数の当該固定小数点データに対して高速フーリエ変換または逆高速フーリエ変換を実施する時、当該固定小数点データの中に指数が異なるデータが含まれている場合に、前記最終段用最大値検出部が、画像1枚分の中の当該固定小数点データの中で最大値または最大桁を検出し、前記指数調整部が、検出されたその値を用いて前記指数の調整を行うことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のレーダ画像処理装置。
【請求項6】
画像処理結果と共に、複数の最大値検出または最大桁検出の統合値を出力することを特徴とする請求項2ないし5のいずれか1項に記載のレーダ画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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