レーダ装置
【課題】周波数選定範囲が狭い場合であっても、目標検出性能や測角精度を向上させ、また追尾能力を向上させることができるレーダ装置を提供する。
【解決手段】アレイアンテナ1と、基準位置をオフセットさせることによってアレイアンテナに与える複数の複素ウェイトを算出するウェイト演算部44と、ウェイト演算部で算出された複数の複素ウェイトをアレイアンテナに順次設定してビームを形成させるビーム形成部121〜12Nと、ビーム形成部で形成されたビームに基づき得られたビームデータを順次取得するビームデータ取得部41と、ビームデータ取得部で順次取得された複数のビームデータの最大値を検出して受信信号とする最大値検出部42と、最大値検出部で得られた受信信号に基づいて目標を検出する目標検出処理部43とを備えている。
【解決手段】アレイアンテナ1と、基準位置をオフセットさせることによってアレイアンテナに与える複数の複素ウェイトを算出するウェイト演算部44と、ウェイト演算部で算出された複数の複素ウェイトをアレイアンテナに順次設定してビームを形成させるビーム形成部121〜12Nと、ビーム形成部で形成されたビームに基づき得られたビームデータを順次取得するビームデータ取得部41と、ビームデータ取得部で順次取得された複数のビームデータの最大値を検出して受信信号とする最大値検出部42と、最大値検出部で得られた受信信号に基づいて目標を検出する目標検出処理部43とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェーズドアレイアンテナを用いたレーダ装置に関し、特にマルチパスによる受信信号のレベル低下を排除する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のレーダ装置では、マルチパス環境下においては、目標から反射されて直接に到達する直接波と途中で海面や地表などで反射されて到達するマルチパス波とが合成されてアンテナに入力されるため、距離によっては受信電力が急激に低下する(非特許文献1、p.49−55参照)。その結果、目標の検出や追随維持ができなかったり、測角精度が大幅に劣化するという問題を生じていた。
【0003】
このような問題の対策として、複数の周波数を使用して、受信電力の急激なレベル低下点をずらすことにより得られる受信信号の最大値を使用する周波数ダイバーシティ法が知られている(例えば、非特許文献1、p.269−272参照)。
【非特許文献1】吉田孝監修、「改訂 レーダ技術」、初版、社団法人電子情報通信学会、平成15年2月15日
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来のレーダ装置では、周波数ダイバーシティ法を利用する場合に、周波数の可変幅に制約があり、周波数選定範囲が狭いシステムでは、受信電力のレベル低下点を大きくずらすことができない。その結果、周波数ダイバーシティ法を用いたとしても、大きな効果を期待できないという問題がある。
【0005】
本発明は、上述した問題を解消するためになされたものであり、その課題は、周波数選定範囲が狭い場合であっても、目標検出性能や測角精度を向上させ、また追尾能力を向上させることができるレーダ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明に係るレーダ装置は、上記課題を解決するために、アレイアンテナと、該アレイアンテナを制御するための信号処理器とを備えたレーダ装置において、信号処理器は、基準位置をオフセットさせることによってアレイアンテナに与える複数の複素ウェイトを算出するウェイト演算部と、ウェイト演算部で算出された複数の複素ウェイトをアレイアンテナに順次設定してビームを形成させるビーム形成部と、ビーム形成部で形成されたビームに基づき得られたビームデータを順次取得するビームデータ取得部と、ビームデータ取得部で順次取得された複数のビームデータの最大値を検出して受信信号とする最大値検出部と、最大値検出部で得られた受信信号に基づいて目標を検出する目標検出処理部とを備えたことを特徴とする。
【0007】
また、第2の発明に係るレーダ装置は、第1の発明に係るレーダ装置において、最大値検出部で得られた受信信号をスクイント測角の基準ビーム又は位相モノパルス測角のΣビームとして測角を行う測角処理部をさらに備えたことを特徴とする。
【0008】
また、第3の発明に係るレーダ装置は、アレイアンテナと、該アレイアンテナを制御する信号処理器とを備えたレーダ装置において、信号処理器は、ビームの位相パターンに傾きを持たせたビームを指向性合成により求めて複数の複素ウェイトを算出するウェイト演算部と、ウェイト演算部で算出された複数の複素ウェイトをアレイアンテナに順次設定してビームを形成させるビーム形成部と、ビーム形成部で形成されたビームに基づき得られたビームデータを順次取得するビームデータ取得部と、ビームデータ取得部で順次取得された複数のビームデータの最大値を検出して受信信号とする最大値検出部と、最大値検出部で得られた受信信号に基づいて目標を検出する目標検出処理部とを備えたことを特徴とする。
【0009】
また、第4の発明に係るレーダ装置は、第3の発明に係るレーダ装置において、最大値検出部で得られた受信信号をスクイント測角の基準ビーム又は位相モノパルス測角のΣビームとして測角を行う測角処理部をさらに備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
第1の発明に係るレーダ装置によれば、基準位置をオフセットさせてビーム出力の位相パターンの傾きを変えることにより、直接波とマルチパス波の位相関係をずらせて、距離に対するレベル低下点を変化させ、複数ビーム間の最大値をとって受信信号とすることにより、マルチパス環境下で、周波数選定範囲が狭い場合であっても、受信信号のレベル低下を防ぐことができる。その結果、目標検出性能や追尾能力を向上させることができる。
【0011】
第2の発明に係るレーダ装置によれば、第1の発明に係るレーダ装置と同様にして得られた、マルチパスに起因するレベル低下の少ない受信信号を基準にしてスクイント測角や位相モノパルス測角を実施するので、マルチパス環境下で、周波数選定範囲が狭い場合であっても、測角精度を向上させることができる。
【0012】
第3の発明に係るレーダ装置によれば、位相パターンに傾きを持たせたビームを指向性合成により求めてビーム出力の位相パターンの傾きを変えることにより、直接波とマルチパス波の位相関係をずらせて、距離に対するレベル低下点を変化させ、複数ビーム間の最大値をとって受信信号とするので、マルチパス環境下で、周波数選定範囲が狭い場合であっても、受信信号のレベル低下を防ぐことができる。その結果、目標検出性能や追尾能力を向上させることができる。
【0013】
第4の発明に係るレーダ装置によれば、第3の発明に係るレーダ装置と同様にして得られた、マルチパスに起因するレベル低下の少ない受信信号を基準にしてスクイント測角や位相モノパルス測角を実施するので、マルチパス環境下で、周波数選定範囲が狭い場合であっても、測角精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施例に係るレーダ装置を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0015】
図1は本発明の実施例1に係るレーダ装置の構成を示すブロック図である。このレーダ装置は、アレイアンテナ1、送信器2、受信器3および信号処理器4を有して構成されている。
【0016】
アレイアンテナ1は、アンテナ素子111〜11N、送受信モジュール121〜12Nおよび給電回路13から構成されており、アクティブフェーズドアレイ構成をとっている。
【0017】
アンテナ素子111〜11Nは、送受信モジュール121〜12Nから送られてくる高周波信号を空中に向けてそれぞれ送信するとともに、空中からの信号、つまり目標からの直接波およびマルチパス波を受信し、送受信モジュール121〜12Nにそれぞれ送る。
【0018】
送受信モジュール121〜12Nは、本発明のビーム形成部に対応する。送受信モジュール121〜12Nの各々は、図2に示すように、サーキュレータ121、送信側増幅器122s、送信側移相器123s、受信側増幅器122rおよび受信側移相器123rから構成されている。
【0019】
サーキュレータ121は、送信側増幅器122sから送られてくる高周波送信信号をアンテナ素子11i(i=1〜Nの何れか1つ)に送るか、アンテナ素子11iから送られてくる高周波受信信号を受信側増幅器122rに送るかを切り替える。
【0020】
送信側増幅器122sは、送信側移相器123sから送られてくる高周波送信信号を増幅し、サーキュレータ121に送る。送信側移相器123sは、給電回路13から送られてくる信号の位相を調整して高周波送信信号に変換し、送信側増幅器122sに送る。
【0021】
受信側増幅器122rは、サーキュレータ121から送られてくる高周波受信信号を増幅し、送信側移相器123sに送る。受信側移相器123rは、受信側増幅器122rから送られてくる高周波受信信号の位相を調整して中間周波信号に変換し、受信信号として給電回路13に送る。
【0022】
給電回路13は、送信器2から送られてくる信号をN個に電力分配して送受信モジュール121〜12Nに送る。また、給電回路13は、送受信モジュール121〜12Nから送られてくる受信信号を合成して受信器3に送る。
【0023】
受信器3は、給電回路13から送られてくる信号を周波数変換し、さらにデジタル信号に変換する。受信器3で得られたデジタル信号は、受信デジタル信号として信号処理器4に送られる。
【0024】
信号処理器4は、MTI/DFT/パルス圧縮処理部41、最大値検出部42、目標検出処理部43およびレーダ制御部44から構成されている。
【0025】
MTI/DFT/パルス圧縮処理部41は、本発明のビームデータ取得部に対応し、受信器3から送られてくる受信デジタル信号に対し、レーダの種類に応じて、MTI(Moving Target Indicator;移動目標検出)処理、DFT(Discrete Fourier Transformation;離散フーリエ変換)処理、パルス圧縮処理等を行う。MTI/DFT/パルス圧縮処理部41における処理結果は、ビームデータとして最大値検出部42に送られる。
【0026】
最大値検出部42は、MTI/DFT/パルス圧縮処理部41から送られてくるビームデータから最大値を検出する。最大値検出部42で検出された最大値は、目標検出処理部43に送られる。
【0027】
目標検出処理部43は、最大値検出部42から順次送られてくる距離毎の最大値を連結して受信信号を生成し、生成した受信信号に基づいて目標検出を行う。目標検出処理部43における検出結果は、目標情報として外部に送出される。
【0028】
レーダ制御部44は、本発明のウェイト演算部に対応し、複数のオフセットに対するウェイト演算を行う。レーダ制御部44におけるウェイト演算によって得られた複素ウェイトは、アレイアンテナ1に送られる。レーダ制御部44で行われる処理の詳細は後述する。
【0029】
次に、上記のように構成される本発明の実施例1に係るレーダ装置の動作を説明する。まず、レーダ装置の動作の概略を、図3〜図6を参照しながら説明する。
【0030】
図3は距離に対する受信信号の振幅レベルの変化を説明するための図である。従来のレーダ装置では、例えばアレイアンテナ1に対しオフセットしない複素ウェイト(例えばオフセット1の複素ウェイト)が与えられる。この場合、直接波とマルチパス波との干渉に起因して、距離によっては、振幅レベルの落ち込みが大きい部分Aが発生する。
【0031】
これに対して、本発明の実施例1に係るレーダ装置では、複数のオフセット(図3に示す例ではオフセット1とオフセット2)を有する複素ウェイトをアレイアンテナ1に与えることによって、落ち込みの発生する距離が異なる複数の受信信号を取得し、これら複数の受信信号の各距離における最大値(太線で示す)を検出して受信信号とする。従って、落ち込みが少ない、略フラットな振幅レベルを有する受信信号を得ることができる。
【0032】
ここで、オフセットについて説明する。図4(a)は所定のアンテナ素子11s(s=1〜Nの何れか1つ)を基準位置とし、太線で示すように位相が変化する複素ウェイトを各アンテナ素子に与える状態を示している。図4(b)は基準位置にオフセットLを加えた状態を示している。この場合、各アンテナ素子に与えられる複素ウェイトの位相は太線で示すように変化(漸増)するので、図4(a)に示す場合に較べて、大きい位相が各アンテナ素子に与えられる。
【0033】
図5は図4(a)に示すような、オフセットされていない複素ウェイトがアレイアンテナ1に与えられたときの振幅特性および位相特性を示す。この場合、位相パターンは角度に対して一定であるので、直接波とマルチパス波との位相特性は同じになり、直接波の位相とマルチパス波の位相が相違することに起因して、図3のオフセット1に示すように、所定の距離で受信信号の振幅レベルが落ち込む部分Aが発生する。
【0034】
これに対し、図6は図4(b)に示す基準位置にオフセットLが加えられた複素ウェイトがアレイアンテナ1に与えられたときの振幅特性および位相特性を示す。この場合、振幅特性はオフセットされていない場合と同じであるが、位相パターンは角度に対して傾きを有する。この傾きは、オフセットLの大きさに応じて大きくなる。従って、直接波とマルチパス波との位相特性はオフセットに応じて異なることになる。従って、図3のオフセット2に示すように、受信信号の振幅レベルは、オフセットされていない場合と異なる距離の部分Bで落ち込む。そこで、各距離について、複数のオフセットに対して得られる複数の受信信号の最大値を最終的な受信信号として選択すれば、図3の太線で示すように、落ち込みが少ない、略フラットな振幅レベルを有する受信信号を得ることができる。
【0035】
次に、本発明の実施例1に係るレーダ装置の詳細な動作を、図7に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0036】
まず、所定の距離に対して、所定のオフセットによるウェイト演算が実行される(ステップS10)。即ち、レーダ制御部44は、送信および受信ビームの複素ウェイトWmnを式(1)に従って算出する。算出された複素ウェイトWmnは、給電回路13を介して送受信モジュール121〜12Nに送られる。次に、ビーム形成が行われる(ステップS11)。即ち、複素ウェイトWmnが送受信モジュール121〜12Nに設定されると、式(1)で表される形成ビームbm(θ)が生成される。
【数1】
…(1)
ここで、Wmnはbmのn番目の素子の複素ウェイト(n=1〜N)、bm(θ)は形成ビーム(m=1〜M)、en(θ)はn番目の素子パターン(n=1〜N)、θは観測角度、Anは振幅ウェイト、θbはビームピーク方向、jは虚数単位、kは波数(2π/λ)、λは波長、dnはn番目の素子の基準位置からの距離(n=1〜N)およびLmはbmのビームの基準位置からのオフセット量である。
【0037】
次に、ビームデータ取得が行われる(ステップS12)。即ち、受信器3から得られた受信デジタル信号は、信号処理器4のMTI/DFT/パルス圧縮処理部41で、レーダの種類に応じて、MTI(Moving Target Indicator;移動目標検出)、DFT(Discrete Fourier Transformation;離散フーリエ変換)処理、パルス圧縮処理等が実行される。次に、全ビームの取得が完了したかどうか、つまり全てのオフセットに対する受信信号の取得が完了したかどうかが判定される(ステップS13)。ここで、全ビームの取得が完了していないことが判断されると、シーケンスはステップS10に戻り、上述した処理が繰り返される。
【0038】
一方、ステップS13において、全ビームの取得が完了したことが判断されると、最大値検出が行われる(ステップS14)。即ち、最大値検出部42は、ステップS10〜ステップS13の処理によって取得された複数のビームb1〜bMから、式(2)によって最大値ビームbmaxを取得する。
【0039】
bmax=max[bm]…(2)
ここで、max[ ]は最大値を表す。
【0040】
ステップS14で取得された最大値ビームbmaxは、目標検出処理部43に送られる。次に、全ての距離に対するデータ取得が終了したかどうかが判定される(ステップS15)。ここで終了していないことが判断されると、次の距離が選択され(ステップS16)、その後、シーケンスはステップS10に戻って上述した動作が繰り返される。そして、ステップS15において、データ取得が終了したことが判断されると、受信信号を取得する処理は終了する。その後、図示は省略するが、目標検出処理部43において、目標検出処理が行われる。
【0041】
以上説明したように、本発明の実施例1に係るレーダ装置によれば、基準位置をオフセットさせてビーム出力の位相パターンの傾きを変えることにより、直接波とマルチパス波の位相関係をずらせて、距離に対するレベル低下点を変化させ、複数ビーム間の最大値をとって受信信号とする。これにより、マルチパスに起因するレベル低下の少ない受信信号を用いて目標の検出処理や追随処理を実施できるので、検出確率や追尾維持率を向上させることができる。
【実施例2】
【0042】
図8は本発明の実施例2に係るレーダ装置の構成を示すブロック図である。このレーダ装置は、信号処理器4にMTI/DFT/パルス圧縮処理部45が追加されるとともに、実施例1の目標検出処理部43が目標検出測角処理部46に置き換えられて構成されている。また、レーダ制御部44は、さらに、測角用ビームを生成するための複素ウェイトをアレイアンテナ1に送る。
【0043】
MTI/DFT/パルス圧縮処理部45の構成および機能は、MTI/DFT/パルス圧縮処理部41と同じであり、アレイアンテナ1から得られる検出および測角用ビームに対して、レーダの種類に応じて、MTI処理、DFT処理、パルス圧縮処理等を行う。MTI/DFT/パルス圧縮処理部45における処理結果は、目標検出測角処理部46に送られる。
【0044】
目標検出測角処理部46は、最大値検出部42から送られてくる最大値ビームbmaxに基づき目標検出処理を行うとともに、該最大値ビームbmaxとMTI/DFT/パルス圧縮処理部45から送られてくる測角用ビームとに基づき測角処理を実行する。この測角処理の詳細は後述する。目標検出測角処理部46における目標検出の結果および測角の結果は、目標情報として外部に送出される。
【0045】
次に、本発明の実施例2に係るレーダ装置の詳細な動作を、図9に示すフローチャートを参照しながら説明する。この図9に示すフローチャートは、図7に示した実施例1に係るレーダ装置の動作を説明するためのフローチャートのステップS14とステップS15と間に測角処理を実施するステップS20が挿入されている点のみが実施例1のそれと異なる。ステップS20における測角処理では、スクイント測角処理または位相モノパルス処理が実行される。
【0046】
まず、スクイント測角処理について説明する。なお、スクイント測角は、振幅比較モノパルスとも言われており、一部が重なりあった2個のアンテナビームを一組として用い、角度誤差(アンテナ正面方向からのずれ)を検出する。方位、高低の両方について角度誤差を検出するときは、4個のアンテナビームを必要とする。通常、一組のアンテナビームは、高低方向用の近接した2個のフィードホーンを用い、この両フィードホーンに共通の、リフレクタやプレーナフェーズドアレーなどに電波を放射する。更に方位方向の検出も同時に行う場合には、2対4個のホーンを配列する。ホーンの後段には合成器が置かれ、合成器は、ホーンの出力を合成して和信号(Σ1)と和信号(Σ2)とを得る。和信号(Σ1)と和信号(Σ2)とによって角度誤差が検出できる。角度誤差電圧εは和信号(Σ2)を和信号(Σ1)で正規化して、すなわち、ε=Σ2/Σ1の形で演算される。角度誤差電圧は、概ねS字の形状となり、アンテナの正面方向からのずれが検出できる。アンテナ正面方向をα、この方式で得られた角度誤差をεとすると、目標の観測値γは、γ=α+εで表される。
【0047】
スクイント測角処理では、目標検出測角処理部46は、実施例1で説明した方法によって最大値検出部42から最大値ビームbmaxを取得し、図4に示すように、取得した最大値ビームbmaxをスクイント測角用の下方ビームbmaxlとすると、MTI/DFT/パルス圧縮処理部45から得られる上方ビームbmaxuも含めて、ビームは、式(3)で表現できる。なお、下方ビームbmaxlは、本発明の基準ビームに対応する。
【数2】
…(3)
ここで、Wlnは下方ビームbmaxlのn番目の素子の複素ウェイト、Wunは上方ビームbmaxuのn番目の素子の複素ウェイト、Θsqはbmaxlとbmaxuのスクイント角、Lmaxはbmaxlの場合のオフセットLである。
【0048】
これら下方ビームbmaxlと上方ビームbmaxuとを用いて測角する場合は、式(4)により得られる誤差電圧esqと、あらかじめ取得しておいた基準誤差電圧のテーブルとを比較することにより、角度が算出される。
【数3】
…(4)
ここで、Reは実部、「*」は複素共役を表す。
【0049】
次に、位相モノパルス測角処理について説明する。なお、位相モノパルス測角は、主としてアレイアンテナで用いられている。アレー面の半分の出力をそれぞれ、A,Bとし、各々の位相差をΨとすると、Ψ=2πdζ/λとなる。ここで、dは半アレーの中心間の距離、ζはアレー面とビームとのなす角度αの方向余弦cosα、λは波長である。スクイント測角と同様に、前置比較器でAとBとの和と差がとられる。スクイント測角とは異なり、AとBとの振幅は等しいと考えることができるため、式(5)が得られる。
【0050】
Σ=A+B=2Acos(Ψ/2)・e(−jΨ/2)
Δ=A−B=2jAsin(Ψ/2)・e(−jΨ/2)
…(5)
Δチャネルの位相を90°回転させた後、Σチャネルの信号で正規化することにより、角度誤差εはtan(Ψ/2)となり、アンテナビームの中央近傍では、ほぼΨに比例した値となる。この角度誤差εによって、スクイント測角方式と同様にアンテナ正面方向からの目標のずれを検出することができる。
【0051】
位相モノパルス測角処理では、実施例1で説明した方法によって最大値検出部42から最大値ビームbmaxを取得し、図10に示すように、この取得した最大値ビームbmaxを位相モノパルス測角用のΣビームbmaxσとすると、MTI/DFT/パルス圧縮処理部45から得られるΔビームbmaxδも含めて、ビームは、式(6)で表現できる。なお、Σビームbmaxσは、本発明の基準ビームに対応する。
【数4】
…(6)
ここで、WσnはΣビームbmσのn番目の素子の複素ウェイト、WδnはΔビームbmδのn番目の素子の複素ウェイトである。
【0052】
これらΣビームbmaxσとΔビームbmaxδとを用いて測角する場合は、式(7)により得られる誤差電圧εと、あらかじめ取得しておいた基準誤差電圧のテーブルとを比較することにより、角度が算出される。
【数5】
…(7)
以上説明したように、この発明の実施例2に係るレーダ装置によれば、実施例1に係るレーダ装置と同様にして得られた、マルチパスに起因するレベル低下の少ない受信信号を基準にしてスクイント測角や位相モノパルス測角を実施するので、マルチパス環境下で、周波数選定範囲が狭い場合であっても、測角精度を向上させることができる。
【実施例3】
【0053】
本発明の実施例3に係るレーダ装置の構成は、信号処理器4のレーダ処理部44で実行される処理内容が異なる点を除けば、図1に示した実施例1に係るレーダ装置の構成と同じである。以下では、相違する部分についてのみ説明する。
【0054】
レーダ処理部44は、例えば図6に示すような振幅特性および傾きを持たせた位相特性を有する所望ビームをあらかじめ用意しておき、用意された所望ビームを逆フーリエ変換して複素ウェイトを算出する。
【0055】
次に、本発明の実施例3に係るレーダ装置の詳細な動作を、図11に示すフローチャートを参照しながら説明する。図11に示すフローチャートは、図7に示したフローチャートにおけるステップS10のオフセットによるウェイト演算処理を、所望ビームの逆フーリエ変換によるウェイト演算処理に変更してステップS30としたものである。
【0056】
まず、ステップS30のウェイト演算処理では、例えば図6に示すような、あらかじめ作成された位相パターンに傾きを持たせた所望ビームbm0を指向性合成により求めて複数の複素ウェイトWmnを算出する。指向性合成としては、例えば逆フーリエ変換が使用される。
【0057】
即ち、レーダ制御部44は、送信および受信ビームの複素ウェイトWmnを、式(8)に従って、所望ビームbm0の逆フーリエ変換により算出する。算出された複素ウェイトWmnは、給電回路13を介して送受信モジュール121〜12Nに送られる。次に、ビーム形成が行われる(ステップS11)。即ち、複素ウェイトWmnが送受信モジュール121〜12Nに設定されると、式(8)で表される形成ビームbm(θ)が生成される。以下の処理は、図7のフローチャートを参照して説明した実施例1に係るレーダ装置における処理と同じである。
【数6】
…(8)
ここで、Wmnはn番目の素子の複素ウェイト(n=1〜N)、bm0(θq)は位相パターンの異なる所望ビーム(m=1〜M)、θqは位相パターンを規定する角度(q=1〜Q)、bm(θ)は形成ビーム(m=1〜M)である。
【0058】
以上説明したように、本発明の実施例3に係るレーダ装置によれば、位相パターンに傾きを持たせたビームを逆フーリエ変換により求めてビーム出力の位相パターンの傾きを変えることにより、直接波とマルチパス波の位相関係をずらせて、距離に対するレベル低下点を変化させ、複数ビーム間の最大値をとって受信信号とする。これにより、実施例1の場合と同様に、マルチパスに起因するレベル低下の少ない受信信号を用いて目標の検出処理や追随処理を実施できるので、検出確率や追尾維持率を向上させることができる。
【実施例4】
【0059】
本発明の実施例4に係るレーダ装置の構成は、レーダ処理部44で実行される処理内容が異なる点を除けば、図8に示した実施例2に係るレーダ装置の構成と同じである。レーダ処理部44で実行される処理は、実施例3に係るそれと同じである。
【0060】
次に、本発明の実施例4に係るレーダ装置の詳細な動作を、図12に示すフローチャートを参照しながら説明する。図12のフローチャートに示した処理は、図11に示したフローチャートのステップS14とステップS15と間に測角処理を実施するステップS20が挿入されている点のみが実施例3のそれと異なる。ステップS20における測角処理では、スクイント測角処理または位相モノパルス処理が実行される。
【0061】
スクイント測角処理では、目標検出測角処理部46は、実施例3で説明した方法によって最大値検出部42から最大値ビームbmaxを取得し、図4に示すように、この取得した最大値ビームbmaxをスクイント測角用の下方ビームbmaxlとすると、MTI/DFT/パルス圧縮処理部45から得られる上方ビームbmaxuも含めて、ビームは、式(9)で表現できる。なお、下方ビームbmaxlは、本発明の基準ビームに対応する。
【数7】
…(9)
ここで、bmax0l(θq)は下方ビームに相当する位相パターンに傾きを持った所望ビーム(1〜M)のうち最大値となるビーム、bmax0u(θq)はbmax0lに対応する上方ビーム、θqは位相パターンを規定する角度(q=1〜Q)、Wlmaxnはbmlのn番目の素子の複素ウェイト、Wumaxnはbmuのn番目の素子の複素ウェイト、θbは下方ビームのピーク方向(上方ビームのピーク方向の制御は、bmax0uに含む)である。
【0062】
上記ステップS20における処理以外の処理は、図9のフローチャートを参照して説明した実施例2に係るレーダ装置における処理と同じである。
【0063】
また、位相モノパルス測角処理の場合は、オフセット量の代わりに位相の傾きを位相パターンで与えることにより、実施例2と同様の方法で測角処理を行うことができる。
【0064】
以上説明したように、この発明の実施例4に係るレーダ装置によれば、実施例3に係るレーダ装置と同様にして得られた、マルチパスに起因するレベル低下の少ない受信信号を基準にしてスクイント測角や位相モノパルス測角を実施するので、マルチパス環境下で、周波数選定範囲が狭い場合であっても、測角精度を向上させることができる。
【0065】
なお、上述した実施例1〜実施例4に係るレーダ装置では、送受信モジュール121〜12Nを用いたアクティブフェーズドアレイの場合について説明したが、非特許文献1のp.289−291に説明されているDBF(Digital Beam Forming)の場合や移相器のみのパッシブフェーズドアレイの場合も、上述した手法を適用できる。
【0066】
また、測角手法として、スクイント測角と位相モノパルス測角の場合について説明したが、マルチパスによるレベル低下の少ないビームを用いて測角するとことにより測角精度を向上させるのが主旨であり、他の測角方法を用いることができる。
【0067】
また、位相パターンが異なる傾きをもつ複数のビームを用いて、直接波とマルチパス波の位相関係を変えて、マルチパスによるレベル低下を防ぐことが目的であるため、他のビーム形成方法を用いることもできる。さらに、大きい効果が得られる位相パターンのみではなく、振幅パターンの差違も含めて、レベル低下を防ぐように構成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の実施例1に係るレーダ装置の構成を示す図である。
【図2】図1に示した送受信モジュールの詳細な構成を示す図である。
【図3】本発明の実施例1に係るレーダ装置の距離に対する振幅レベルの変化を説明するための図である。
【図4】本発明の実施例1に係るレーダ装置におけるオフセットおよび実施例2に係るレーダ装置におけるスクイント測角を説明するための図である。
【図5】本発明の実施例1に係るレーダ装置のオフセットがない場合のビームパターンを説明するための図である。
【図6】本発明の実施例1に係るレーダ装置のオフセットがある場合のビームパターンを説明するための図である。
【図7】本発明の実施例1に係るレーダ装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施例2に係るレーダ装置の構成を示す図である。
【図9】本発明の実施例2に係るレーダ装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】本発明の実施例2に係るレーダ装置における位相モノパルス測角を説明するための図である。
【図11】本発明の実施例3に係るレーダ装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【図12】本発明の実施例4に係るレーダ装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0069】
1 アレイアンテナ
2 送信器
3 受信器
4 信号処理器
111〜11N アンテナ素子
121〜12N 送受信モジュール
13 給電回路
41 MTI/DFT/パルス圧縮処理部
42 最大値検出部
43 目標検出処理部
44 レーダ制御部
45 MTI/DFT/パルス圧縮処理部
46 目標検出測角処理部
121 サーキュレータ
122s 送信側増幅器
122r 受信側増幅器
123s 送信側移相器
123r 受信側移相器
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェーズドアレイアンテナを用いたレーダ装置に関し、特にマルチパスによる受信信号のレベル低下を排除する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のレーダ装置では、マルチパス環境下においては、目標から反射されて直接に到達する直接波と途中で海面や地表などで反射されて到達するマルチパス波とが合成されてアンテナに入力されるため、距離によっては受信電力が急激に低下する(非特許文献1、p.49−55参照)。その結果、目標の検出や追随維持ができなかったり、測角精度が大幅に劣化するという問題を生じていた。
【0003】
このような問題の対策として、複数の周波数を使用して、受信電力の急激なレベル低下点をずらすことにより得られる受信信号の最大値を使用する周波数ダイバーシティ法が知られている(例えば、非特許文献1、p.269−272参照)。
【非特許文献1】吉田孝監修、「改訂 レーダ技術」、初版、社団法人電子情報通信学会、平成15年2月15日
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来のレーダ装置では、周波数ダイバーシティ法を利用する場合に、周波数の可変幅に制約があり、周波数選定範囲が狭いシステムでは、受信電力のレベル低下点を大きくずらすことができない。その結果、周波数ダイバーシティ法を用いたとしても、大きな効果を期待できないという問題がある。
【0005】
本発明は、上述した問題を解消するためになされたものであり、その課題は、周波数選定範囲が狭い場合であっても、目標検出性能や測角精度を向上させ、また追尾能力を向上させることができるレーダ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明に係るレーダ装置は、上記課題を解決するために、アレイアンテナと、該アレイアンテナを制御するための信号処理器とを備えたレーダ装置において、信号処理器は、基準位置をオフセットさせることによってアレイアンテナに与える複数の複素ウェイトを算出するウェイト演算部と、ウェイト演算部で算出された複数の複素ウェイトをアレイアンテナに順次設定してビームを形成させるビーム形成部と、ビーム形成部で形成されたビームに基づき得られたビームデータを順次取得するビームデータ取得部と、ビームデータ取得部で順次取得された複数のビームデータの最大値を検出して受信信号とする最大値検出部と、最大値検出部で得られた受信信号に基づいて目標を検出する目標検出処理部とを備えたことを特徴とする。
【0007】
また、第2の発明に係るレーダ装置は、第1の発明に係るレーダ装置において、最大値検出部で得られた受信信号をスクイント測角の基準ビーム又は位相モノパルス測角のΣビームとして測角を行う測角処理部をさらに備えたことを特徴とする。
【0008】
また、第3の発明に係るレーダ装置は、アレイアンテナと、該アレイアンテナを制御する信号処理器とを備えたレーダ装置において、信号処理器は、ビームの位相パターンに傾きを持たせたビームを指向性合成により求めて複数の複素ウェイトを算出するウェイト演算部と、ウェイト演算部で算出された複数の複素ウェイトをアレイアンテナに順次設定してビームを形成させるビーム形成部と、ビーム形成部で形成されたビームに基づき得られたビームデータを順次取得するビームデータ取得部と、ビームデータ取得部で順次取得された複数のビームデータの最大値を検出して受信信号とする最大値検出部と、最大値検出部で得られた受信信号に基づいて目標を検出する目標検出処理部とを備えたことを特徴とする。
【0009】
また、第4の発明に係るレーダ装置は、第3の発明に係るレーダ装置において、最大値検出部で得られた受信信号をスクイント測角の基準ビーム又は位相モノパルス測角のΣビームとして測角を行う測角処理部をさらに備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
第1の発明に係るレーダ装置によれば、基準位置をオフセットさせてビーム出力の位相パターンの傾きを変えることにより、直接波とマルチパス波の位相関係をずらせて、距離に対するレベル低下点を変化させ、複数ビーム間の最大値をとって受信信号とすることにより、マルチパス環境下で、周波数選定範囲が狭い場合であっても、受信信号のレベル低下を防ぐことができる。その結果、目標検出性能や追尾能力を向上させることができる。
【0011】
第2の発明に係るレーダ装置によれば、第1の発明に係るレーダ装置と同様にして得られた、マルチパスに起因するレベル低下の少ない受信信号を基準にしてスクイント測角や位相モノパルス測角を実施するので、マルチパス環境下で、周波数選定範囲が狭い場合であっても、測角精度を向上させることができる。
【0012】
第3の発明に係るレーダ装置によれば、位相パターンに傾きを持たせたビームを指向性合成により求めてビーム出力の位相パターンの傾きを変えることにより、直接波とマルチパス波の位相関係をずらせて、距離に対するレベル低下点を変化させ、複数ビーム間の最大値をとって受信信号とするので、マルチパス環境下で、周波数選定範囲が狭い場合であっても、受信信号のレベル低下を防ぐことができる。その結果、目標検出性能や追尾能力を向上させることができる。
【0013】
第4の発明に係るレーダ装置によれば、第3の発明に係るレーダ装置と同様にして得られた、マルチパスに起因するレベル低下の少ない受信信号を基準にしてスクイント測角や位相モノパルス測角を実施するので、マルチパス環境下で、周波数選定範囲が狭い場合であっても、測角精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施例に係るレーダ装置を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0015】
図1は本発明の実施例1に係るレーダ装置の構成を示すブロック図である。このレーダ装置は、アレイアンテナ1、送信器2、受信器3および信号処理器4を有して構成されている。
【0016】
アレイアンテナ1は、アンテナ素子111〜11N、送受信モジュール121〜12Nおよび給電回路13から構成されており、アクティブフェーズドアレイ構成をとっている。
【0017】
アンテナ素子111〜11Nは、送受信モジュール121〜12Nから送られてくる高周波信号を空中に向けてそれぞれ送信するとともに、空中からの信号、つまり目標からの直接波およびマルチパス波を受信し、送受信モジュール121〜12Nにそれぞれ送る。
【0018】
送受信モジュール121〜12Nは、本発明のビーム形成部に対応する。送受信モジュール121〜12Nの各々は、図2に示すように、サーキュレータ121、送信側増幅器122s、送信側移相器123s、受信側増幅器122rおよび受信側移相器123rから構成されている。
【0019】
サーキュレータ121は、送信側増幅器122sから送られてくる高周波送信信号をアンテナ素子11i(i=1〜Nの何れか1つ)に送るか、アンテナ素子11iから送られてくる高周波受信信号を受信側増幅器122rに送るかを切り替える。
【0020】
送信側増幅器122sは、送信側移相器123sから送られてくる高周波送信信号を増幅し、サーキュレータ121に送る。送信側移相器123sは、給電回路13から送られてくる信号の位相を調整して高周波送信信号に変換し、送信側増幅器122sに送る。
【0021】
受信側増幅器122rは、サーキュレータ121から送られてくる高周波受信信号を増幅し、送信側移相器123sに送る。受信側移相器123rは、受信側増幅器122rから送られてくる高周波受信信号の位相を調整して中間周波信号に変換し、受信信号として給電回路13に送る。
【0022】
給電回路13は、送信器2から送られてくる信号をN個に電力分配して送受信モジュール121〜12Nに送る。また、給電回路13は、送受信モジュール121〜12Nから送られてくる受信信号を合成して受信器3に送る。
【0023】
受信器3は、給電回路13から送られてくる信号を周波数変換し、さらにデジタル信号に変換する。受信器3で得られたデジタル信号は、受信デジタル信号として信号処理器4に送られる。
【0024】
信号処理器4は、MTI/DFT/パルス圧縮処理部41、最大値検出部42、目標検出処理部43およびレーダ制御部44から構成されている。
【0025】
MTI/DFT/パルス圧縮処理部41は、本発明のビームデータ取得部に対応し、受信器3から送られてくる受信デジタル信号に対し、レーダの種類に応じて、MTI(Moving Target Indicator;移動目標検出)処理、DFT(Discrete Fourier Transformation;離散フーリエ変換)処理、パルス圧縮処理等を行う。MTI/DFT/パルス圧縮処理部41における処理結果は、ビームデータとして最大値検出部42に送られる。
【0026】
最大値検出部42は、MTI/DFT/パルス圧縮処理部41から送られてくるビームデータから最大値を検出する。最大値検出部42で検出された最大値は、目標検出処理部43に送られる。
【0027】
目標検出処理部43は、最大値検出部42から順次送られてくる距離毎の最大値を連結して受信信号を生成し、生成した受信信号に基づいて目標検出を行う。目標検出処理部43における検出結果は、目標情報として外部に送出される。
【0028】
レーダ制御部44は、本発明のウェイト演算部に対応し、複数のオフセットに対するウェイト演算を行う。レーダ制御部44におけるウェイト演算によって得られた複素ウェイトは、アレイアンテナ1に送られる。レーダ制御部44で行われる処理の詳細は後述する。
【0029】
次に、上記のように構成される本発明の実施例1に係るレーダ装置の動作を説明する。まず、レーダ装置の動作の概略を、図3〜図6を参照しながら説明する。
【0030】
図3は距離に対する受信信号の振幅レベルの変化を説明するための図である。従来のレーダ装置では、例えばアレイアンテナ1に対しオフセットしない複素ウェイト(例えばオフセット1の複素ウェイト)が与えられる。この場合、直接波とマルチパス波との干渉に起因して、距離によっては、振幅レベルの落ち込みが大きい部分Aが発生する。
【0031】
これに対して、本発明の実施例1に係るレーダ装置では、複数のオフセット(図3に示す例ではオフセット1とオフセット2)を有する複素ウェイトをアレイアンテナ1に与えることによって、落ち込みの発生する距離が異なる複数の受信信号を取得し、これら複数の受信信号の各距離における最大値(太線で示す)を検出して受信信号とする。従って、落ち込みが少ない、略フラットな振幅レベルを有する受信信号を得ることができる。
【0032】
ここで、オフセットについて説明する。図4(a)は所定のアンテナ素子11s(s=1〜Nの何れか1つ)を基準位置とし、太線で示すように位相が変化する複素ウェイトを各アンテナ素子に与える状態を示している。図4(b)は基準位置にオフセットLを加えた状態を示している。この場合、各アンテナ素子に与えられる複素ウェイトの位相は太線で示すように変化(漸増)するので、図4(a)に示す場合に較べて、大きい位相が各アンテナ素子に与えられる。
【0033】
図5は図4(a)に示すような、オフセットされていない複素ウェイトがアレイアンテナ1に与えられたときの振幅特性および位相特性を示す。この場合、位相パターンは角度に対して一定であるので、直接波とマルチパス波との位相特性は同じになり、直接波の位相とマルチパス波の位相が相違することに起因して、図3のオフセット1に示すように、所定の距離で受信信号の振幅レベルが落ち込む部分Aが発生する。
【0034】
これに対し、図6は図4(b)に示す基準位置にオフセットLが加えられた複素ウェイトがアレイアンテナ1に与えられたときの振幅特性および位相特性を示す。この場合、振幅特性はオフセットされていない場合と同じであるが、位相パターンは角度に対して傾きを有する。この傾きは、オフセットLの大きさに応じて大きくなる。従って、直接波とマルチパス波との位相特性はオフセットに応じて異なることになる。従って、図3のオフセット2に示すように、受信信号の振幅レベルは、オフセットされていない場合と異なる距離の部分Bで落ち込む。そこで、各距離について、複数のオフセットに対して得られる複数の受信信号の最大値を最終的な受信信号として選択すれば、図3の太線で示すように、落ち込みが少ない、略フラットな振幅レベルを有する受信信号を得ることができる。
【0035】
次に、本発明の実施例1に係るレーダ装置の詳細な動作を、図7に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0036】
まず、所定の距離に対して、所定のオフセットによるウェイト演算が実行される(ステップS10)。即ち、レーダ制御部44は、送信および受信ビームの複素ウェイトWmnを式(1)に従って算出する。算出された複素ウェイトWmnは、給電回路13を介して送受信モジュール121〜12Nに送られる。次に、ビーム形成が行われる(ステップS11)。即ち、複素ウェイトWmnが送受信モジュール121〜12Nに設定されると、式(1)で表される形成ビームbm(θ)が生成される。
【数1】
…(1)
ここで、Wmnはbmのn番目の素子の複素ウェイト(n=1〜N)、bm(θ)は形成ビーム(m=1〜M)、en(θ)はn番目の素子パターン(n=1〜N)、θは観測角度、Anは振幅ウェイト、θbはビームピーク方向、jは虚数単位、kは波数(2π/λ)、λは波長、dnはn番目の素子の基準位置からの距離(n=1〜N)およびLmはbmのビームの基準位置からのオフセット量である。
【0037】
次に、ビームデータ取得が行われる(ステップS12)。即ち、受信器3から得られた受信デジタル信号は、信号処理器4のMTI/DFT/パルス圧縮処理部41で、レーダの種類に応じて、MTI(Moving Target Indicator;移動目標検出)、DFT(Discrete Fourier Transformation;離散フーリエ変換)処理、パルス圧縮処理等が実行される。次に、全ビームの取得が完了したかどうか、つまり全てのオフセットに対する受信信号の取得が完了したかどうかが判定される(ステップS13)。ここで、全ビームの取得が完了していないことが判断されると、シーケンスはステップS10に戻り、上述した処理が繰り返される。
【0038】
一方、ステップS13において、全ビームの取得が完了したことが判断されると、最大値検出が行われる(ステップS14)。即ち、最大値検出部42は、ステップS10〜ステップS13の処理によって取得された複数のビームb1〜bMから、式(2)によって最大値ビームbmaxを取得する。
【0039】
bmax=max[bm]…(2)
ここで、max[ ]は最大値を表す。
【0040】
ステップS14で取得された最大値ビームbmaxは、目標検出処理部43に送られる。次に、全ての距離に対するデータ取得が終了したかどうかが判定される(ステップS15)。ここで終了していないことが判断されると、次の距離が選択され(ステップS16)、その後、シーケンスはステップS10に戻って上述した動作が繰り返される。そして、ステップS15において、データ取得が終了したことが判断されると、受信信号を取得する処理は終了する。その後、図示は省略するが、目標検出処理部43において、目標検出処理が行われる。
【0041】
以上説明したように、本発明の実施例1に係るレーダ装置によれば、基準位置をオフセットさせてビーム出力の位相パターンの傾きを変えることにより、直接波とマルチパス波の位相関係をずらせて、距離に対するレベル低下点を変化させ、複数ビーム間の最大値をとって受信信号とする。これにより、マルチパスに起因するレベル低下の少ない受信信号を用いて目標の検出処理や追随処理を実施できるので、検出確率や追尾維持率を向上させることができる。
【実施例2】
【0042】
図8は本発明の実施例2に係るレーダ装置の構成を示すブロック図である。このレーダ装置は、信号処理器4にMTI/DFT/パルス圧縮処理部45が追加されるとともに、実施例1の目標検出処理部43が目標検出測角処理部46に置き換えられて構成されている。また、レーダ制御部44は、さらに、測角用ビームを生成するための複素ウェイトをアレイアンテナ1に送る。
【0043】
MTI/DFT/パルス圧縮処理部45の構成および機能は、MTI/DFT/パルス圧縮処理部41と同じであり、アレイアンテナ1から得られる検出および測角用ビームに対して、レーダの種類に応じて、MTI処理、DFT処理、パルス圧縮処理等を行う。MTI/DFT/パルス圧縮処理部45における処理結果は、目標検出測角処理部46に送られる。
【0044】
目標検出測角処理部46は、最大値検出部42から送られてくる最大値ビームbmaxに基づき目標検出処理を行うとともに、該最大値ビームbmaxとMTI/DFT/パルス圧縮処理部45から送られてくる測角用ビームとに基づき測角処理を実行する。この測角処理の詳細は後述する。目標検出測角処理部46における目標検出の結果および測角の結果は、目標情報として外部に送出される。
【0045】
次に、本発明の実施例2に係るレーダ装置の詳細な動作を、図9に示すフローチャートを参照しながら説明する。この図9に示すフローチャートは、図7に示した実施例1に係るレーダ装置の動作を説明するためのフローチャートのステップS14とステップS15と間に測角処理を実施するステップS20が挿入されている点のみが実施例1のそれと異なる。ステップS20における測角処理では、スクイント測角処理または位相モノパルス処理が実行される。
【0046】
まず、スクイント測角処理について説明する。なお、スクイント測角は、振幅比較モノパルスとも言われており、一部が重なりあった2個のアンテナビームを一組として用い、角度誤差(アンテナ正面方向からのずれ)を検出する。方位、高低の両方について角度誤差を検出するときは、4個のアンテナビームを必要とする。通常、一組のアンテナビームは、高低方向用の近接した2個のフィードホーンを用い、この両フィードホーンに共通の、リフレクタやプレーナフェーズドアレーなどに電波を放射する。更に方位方向の検出も同時に行う場合には、2対4個のホーンを配列する。ホーンの後段には合成器が置かれ、合成器は、ホーンの出力を合成して和信号(Σ1)と和信号(Σ2)とを得る。和信号(Σ1)と和信号(Σ2)とによって角度誤差が検出できる。角度誤差電圧εは和信号(Σ2)を和信号(Σ1)で正規化して、すなわち、ε=Σ2/Σ1の形で演算される。角度誤差電圧は、概ねS字の形状となり、アンテナの正面方向からのずれが検出できる。アンテナ正面方向をα、この方式で得られた角度誤差をεとすると、目標の観測値γは、γ=α+εで表される。
【0047】
スクイント測角処理では、目標検出測角処理部46は、実施例1で説明した方法によって最大値検出部42から最大値ビームbmaxを取得し、図4に示すように、取得した最大値ビームbmaxをスクイント測角用の下方ビームbmaxlとすると、MTI/DFT/パルス圧縮処理部45から得られる上方ビームbmaxuも含めて、ビームは、式(3)で表現できる。なお、下方ビームbmaxlは、本発明の基準ビームに対応する。
【数2】
…(3)
ここで、Wlnは下方ビームbmaxlのn番目の素子の複素ウェイト、Wunは上方ビームbmaxuのn番目の素子の複素ウェイト、Θsqはbmaxlとbmaxuのスクイント角、Lmaxはbmaxlの場合のオフセットLである。
【0048】
これら下方ビームbmaxlと上方ビームbmaxuとを用いて測角する場合は、式(4)により得られる誤差電圧esqと、あらかじめ取得しておいた基準誤差電圧のテーブルとを比較することにより、角度が算出される。
【数3】
…(4)
ここで、Reは実部、「*」は複素共役を表す。
【0049】
次に、位相モノパルス測角処理について説明する。なお、位相モノパルス測角は、主としてアレイアンテナで用いられている。アレー面の半分の出力をそれぞれ、A,Bとし、各々の位相差をΨとすると、Ψ=2πdζ/λとなる。ここで、dは半アレーの中心間の距離、ζはアレー面とビームとのなす角度αの方向余弦cosα、λは波長である。スクイント測角と同様に、前置比較器でAとBとの和と差がとられる。スクイント測角とは異なり、AとBとの振幅は等しいと考えることができるため、式(5)が得られる。
【0050】
Σ=A+B=2Acos(Ψ/2)・e(−jΨ/2)
Δ=A−B=2jAsin(Ψ/2)・e(−jΨ/2)
…(5)
Δチャネルの位相を90°回転させた後、Σチャネルの信号で正規化することにより、角度誤差εはtan(Ψ/2)となり、アンテナビームの中央近傍では、ほぼΨに比例した値となる。この角度誤差εによって、スクイント測角方式と同様にアンテナ正面方向からの目標のずれを検出することができる。
【0051】
位相モノパルス測角処理では、実施例1で説明した方法によって最大値検出部42から最大値ビームbmaxを取得し、図10に示すように、この取得した最大値ビームbmaxを位相モノパルス測角用のΣビームbmaxσとすると、MTI/DFT/パルス圧縮処理部45から得られるΔビームbmaxδも含めて、ビームは、式(6)で表現できる。なお、Σビームbmaxσは、本発明の基準ビームに対応する。
【数4】
…(6)
ここで、WσnはΣビームbmσのn番目の素子の複素ウェイト、WδnはΔビームbmδのn番目の素子の複素ウェイトである。
【0052】
これらΣビームbmaxσとΔビームbmaxδとを用いて測角する場合は、式(7)により得られる誤差電圧εと、あらかじめ取得しておいた基準誤差電圧のテーブルとを比較することにより、角度が算出される。
【数5】
…(7)
以上説明したように、この発明の実施例2に係るレーダ装置によれば、実施例1に係るレーダ装置と同様にして得られた、マルチパスに起因するレベル低下の少ない受信信号を基準にしてスクイント測角や位相モノパルス測角を実施するので、マルチパス環境下で、周波数選定範囲が狭い場合であっても、測角精度を向上させることができる。
【実施例3】
【0053】
本発明の実施例3に係るレーダ装置の構成は、信号処理器4のレーダ処理部44で実行される処理内容が異なる点を除けば、図1に示した実施例1に係るレーダ装置の構成と同じである。以下では、相違する部分についてのみ説明する。
【0054】
レーダ処理部44は、例えば図6に示すような振幅特性および傾きを持たせた位相特性を有する所望ビームをあらかじめ用意しておき、用意された所望ビームを逆フーリエ変換して複素ウェイトを算出する。
【0055】
次に、本発明の実施例3に係るレーダ装置の詳細な動作を、図11に示すフローチャートを参照しながら説明する。図11に示すフローチャートは、図7に示したフローチャートにおけるステップS10のオフセットによるウェイト演算処理を、所望ビームの逆フーリエ変換によるウェイト演算処理に変更してステップS30としたものである。
【0056】
まず、ステップS30のウェイト演算処理では、例えば図6に示すような、あらかじめ作成された位相パターンに傾きを持たせた所望ビームbm0を指向性合成により求めて複数の複素ウェイトWmnを算出する。指向性合成としては、例えば逆フーリエ変換が使用される。
【0057】
即ち、レーダ制御部44は、送信および受信ビームの複素ウェイトWmnを、式(8)に従って、所望ビームbm0の逆フーリエ変換により算出する。算出された複素ウェイトWmnは、給電回路13を介して送受信モジュール121〜12Nに送られる。次に、ビーム形成が行われる(ステップS11)。即ち、複素ウェイトWmnが送受信モジュール121〜12Nに設定されると、式(8)で表される形成ビームbm(θ)が生成される。以下の処理は、図7のフローチャートを参照して説明した実施例1に係るレーダ装置における処理と同じである。
【数6】
…(8)
ここで、Wmnはn番目の素子の複素ウェイト(n=1〜N)、bm0(θq)は位相パターンの異なる所望ビーム(m=1〜M)、θqは位相パターンを規定する角度(q=1〜Q)、bm(θ)は形成ビーム(m=1〜M)である。
【0058】
以上説明したように、本発明の実施例3に係るレーダ装置によれば、位相パターンに傾きを持たせたビームを逆フーリエ変換により求めてビーム出力の位相パターンの傾きを変えることにより、直接波とマルチパス波の位相関係をずらせて、距離に対するレベル低下点を変化させ、複数ビーム間の最大値をとって受信信号とする。これにより、実施例1の場合と同様に、マルチパスに起因するレベル低下の少ない受信信号を用いて目標の検出処理や追随処理を実施できるので、検出確率や追尾維持率を向上させることができる。
【実施例4】
【0059】
本発明の実施例4に係るレーダ装置の構成は、レーダ処理部44で実行される処理内容が異なる点を除けば、図8に示した実施例2に係るレーダ装置の構成と同じである。レーダ処理部44で実行される処理は、実施例3に係るそれと同じである。
【0060】
次に、本発明の実施例4に係るレーダ装置の詳細な動作を、図12に示すフローチャートを参照しながら説明する。図12のフローチャートに示した処理は、図11に示したフローチャートのステップS14とステップS15と間に測角処理を実施するステップS20が挿入されている点のみが実施例3のそれと異なる。ステップS20における測角処理では、スクイント測角処理または位相モノパルス処理が実行される。
【0061】
スクイント測角処理では、目標検出測角処理部46は、実施例3で説明した方法によって最大値検出部42から最大値ビームbmaxを取得し、図4に示すように、この取得した最大値ビームbmaxをスクイント測角用の下方ビームbmaxlとすると、MTI/DFT/パルス圧縮処理部45から得られる上方ビームbmaxuも含めて、ビームは、式(9)で表現できる。なお、下方ビームbmaxlは、本発明の基準ビームに対応する。
【数7】
…(9)
ここで、bmax0l(θq)は下方ビームに相当する位相パターンに傾きを持った所望ビーム(1〜M)のうち最大値となるビーム、bmax0u(θq)はbmax0lに対応する上方ビーム、θqは位相パターンを規定する角度(q=1〜Q)、Wlmaxnはbmlのn番目の素子の複素ウェイト、Wumaxnはbmuのn番目の素子の複素ウェイト、θbは下方ビームのピーク方向(上方ビームのピーク方向の制御は、bmax0uに含む)である。
【0062】
上記ステップS20における処理以外の処理は、図9のフローチャートを参照して説明した実施例2に係るレーダ装置における処理と同じである。
【0063】
また、位相モノパルス測角処理の場合は、オフセット量の代わりに位相の傾きを位相パターンで与えることにより、実施例2と同様の方法で測角処理を行うことができる。
【0064】
以上説明したように、この発明の実施例4に係るレーダ装置によれば、実施例3に係るレーダ装置と同様にして得られた、マルチパスに起因するレベル低下の少ない受信信号を基準にしてスクイント測角や位相モノパルス測角を実施するので、マルチパス環境下で、周波数選定範囲が狭い場合であっても、測角精度を向上させることができる。
【0065】
なお、上述した実施例1〜実施例4に係るレーダ装置では、送受信モジュール121〜12Nを用いたアクティブフェーズドアレイの場合について説明したが、非特許文献1のp.289−291に説明されているDBF(Digital Beam Forming)の場合や移相器のみのパッシブフェーズドアレイの場合も、上述した手法を適用できる。
【0066】
また、測角手法として、スクイント測角と位相モノパルス測角の場合について説明したが、マルチパスによるレベル低下の少ないビームを用いて測角するとことにより測角精度を向上させるのが主旨であり、他の測角方法を用いることができる。
【0067】
また、位相パターンが異なる傾きをもつ複数のビームを用いて、直接波とマルチパス波の位相関係を変えて、マルチパスによるレベル低下を防ぐことが目的であるため、他のビーム形成方法を用いることもできる。さらに、大きい効果が得られる位相パターンのみではなく、振幅パターンの差違も含めて、レベル低下を防ぐように構成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の実施例1に係るレーダ装置の構成を示す図である。
【図2】図1に示した送受信モジュールの詳細な構成を示す図である。
【図3】本発明の実施例1に係るレーダ装置の距離に対する振幅レベルの変化を説明するための図である。
【図4】本発明の実施例1に係るレーダ装置におけるオフセットおよび実施例2に係るレーダ装置におけるスクイント測角を説明するための図である。
【図5】本発明の実施例1に係るレーダ装置のオフセットがない場合のビームパターンを説明するための図である。
【図6】本発明の実施例1に係るレーダ装置のオフセットがある場合のビームパターンを説明するための図である。
【図7】本発明の実施例1に係るレーダ装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施例2に係るレーダ装置の構成を示す図である。
【図9】本発明の実施例2に係るレーダ装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】本発明の実施例2に係るレーダ装置における位相モノパルス測角を説明するための図である。
【図11】本発明の実施例3に係るレーダ装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【図12】本発明の実施例4に係るレーダ装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0069】
1 アレイアンテナ
2 送信器
3 受信器
4 信号処理器
111〜11N アンテナ素子
121〜12N 送受信モジュール
13 給電回路
41 MTI/DFT/パルス圧縮処理部
42 最大値検出部
43 目標検出処理部
44 レーダ制御部
45 MTI/DFT/パルス圧縮処理部
46 目標検出測角処理部
121 サーキュレータ
122s 送信側増幅器
122r 受信側増幅器
123s 送信側移相器
123r 受信側移相器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アレイアンテナと、
基準位置をオフセットさせることによって前記アレイアンテナに与える複数の複素ウェイトを算出するウェイト演算部と、
前記ウェイト演算部で算出された複数の複素ウェイトを前記アレイアンテナに順次設定してビームを形成させるビーム形成部と、
前記ビーム形成部で形成されたビームに基づき得られたビームデータを順次取得するビームデータ取得部と、
前記ビームデータ取得部で順次取得された複数のビームデータの最大値を検出して受信信号とする最大値検出部と、
前記最大値検出部で得られた受信信号に基づいて目標を検出する目標検出処理部と、
を備えたことを特徴とするレーダ装置。
【請求項2】
前記最大値検出部で得られた受信信号をスクイント測角の基準ビーム又は位相モノパルス測角のΣビームとして測角を行う測角処理部をさらに備えたことを特徴とする請求項1記載のレーダ装置。
【請求項3】
アレイアンテナと、
ビームの位相パターンに傾きを持たせたビームを指向性合成により求めて複数の複素ウェイトを算出するウェイト演算部と、
前記ウェイト演算部で算出された複数の複素ウェイトを前記アレイアンテナに順次設定してビームを形成させるビーム形成部と、
前記ビーム形成部で形成されたビームに基づき得られたビームデータを順次取得するビームデータ取得部と、
前記ビームデータ取得部で順次取得された複数のビームデータの最大値を検出して受信信号とする最大値検出部と、
前記最大値検出部で得られた受信信号に基づいて目標を検出する目標検出処理部と、
を備えたことを特徴とするレーダ装置。
【請求項4】
前記最大値検出部で得られた受信信号をスクイント測角の基準ビーム又は位相モノパルス測角のΣビームとして測角を行う測角処理部をさらに備えたことを特徴とする請求項3記載のレーダ装置。
【請求項1】
アレイアンテナと、
基準位置をオフセットさせることによって前記アレイアンテナに与える複数の複素ウェイトを算出するウェイト演算部と、
前記ウェイト演算部で算出された複数の複素ウェイトを前記アレイアンテナに順次設定してビームを形成させるビーム形成部と、
前記ビーム形成部で形成されたビームに基づき得られたビームデータを順次取得するビームデータ取得部と、
前記ビームデータ取得部で順次取得された複数のビームデータの最大値を検出して受信信号とする最大値検出部と、
前記最大値検出部で得られた受信信号に基づいて目標を検出する目標検出処理部と、
を備えたことを特徴とするレーダ装置。
【請求項2】
前記最大値検出部で得られた受信信号をスクイント測角の基準ビーム又は位相モノパルス測角のΣビームとして測角を行う測角処理部をさらに備えたことを特徴とする請求項1記載のレーダ装置。
【請求項3】
アレイアンテナと、
ビームの位相パターンに傾きを持たせたビームを指向性合成により求めて複数の複素ウェイトを算出するウェイト演算部と、
前記ウェイト演算部で算出された複数の複素ウェイトを前記アレイアンテナに順次設定してビームを形成させるビーム形成部と、
前記ビーム形成部で形成されたビームに基づき得られたビームデータを順次取得するビームデータ取得部と、
前記ビームデータ取得部で順次取得された複数のビームデータの最大値を検出して受信信号とする最大値検出部と、
前記最大値検出部で得られた受信信号に基づいて目標を検出する目標検出処理部と、
を備えたことを特徴とするレーダ装置。
【請求項4】
前記最大値検出部で得られた受信信号をスクイント測角の基準ビーム又は位相モノパルス測角のΣビームとして測角を行う測角処理部をさらに備えたことを特徴とする請求項3記載のレーダ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−52977(P2006−52977A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−233392(P2004−233392)
【出願日】平成16年8月10日(2004.8.10)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月10日(2004.8.10)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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