説明

レーダ装置

【課題】簡単な回路構成で安価なレーダ装置を得る。
【解決手段】送信信号を電磁波として放射し、目標物体5で反射した電磁波を受信信号として受信し、受信信号に基づいて、目標物体5までの距離を測定するレーダ装置1であって、送信信号と受信信号とを混合するミキサ32と、目標物体5までの距離に応じて、ミキサ32の電圧利得を制御する制御部4とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば車両等に搭載され、電磁波を送受信して目標物体までの距離等を測定するレーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば車両に搭載され、電磁波の送受信によって自車の前方に存在する目標物体(前方車両や障害物等)を検知するとともに、その目標物体までの距離等を測定する装置として、レーダ装置が知られている。この種のレーダ装置では、パルス状の送信信号を電磁波として空間に放射し、目標物体で反射した電磁波を受信して、受信信号におけるパルスの遅延時間から、目標物体までの距離を測定している。
【0003】
また、このようなレーダ装置において、受信信号の信号レベルは、目標物体までの距離の4乗に反比例することが知られている。そのため、目標物体が近距離に存在する場合には、受信信号の信号レベルが高くなり、目標物体が遠距離に存在する場合には、受信信号の信号レベルが低くなる。そこで、受信信号の信号レベルが、目標物体が近距離に存在する場合には低く、遠距離に存在する場合には高くなるように、目標物体までの距離に応じて受信信号の信号レベルを調整することが望ましい。
【0004】
ここで、目標物体までの距離に応じて受信信号の信号レベルを調整する機能を有するレーダ装置として、目標物体で反射した電磁波を受信する受信部において、可変ゲインアンプおよびゲイン制御手段が設けられたレーダ装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。このレーダ装置において、ゲイン制御手段は、目標物体が近距離に存在する場合にはゲインが小さく、遠距離に存在する場合にはゲインが大きくなるように、可変ゲインアンプのゲインを制御する。これにより、受信信号の信号レベルが調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−107158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術には、以下のような課題がある。
すなわち、特許文献1に記載のレーダ装置では、目標物体までの距離に応じて受信信号の信号レベルを調整するために、可変ゲインアンプおよびゲイン制御手段を用いている。ここで、可変ゲインアンプは、一般に回路構成が複雑であり、かつ高価であるという問題がある。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、簡単な回路構成で安価なレーダ装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係るレーダ装置は、送信信号を電磁波として放射し、目標物体で反射した電磁波を受信信号として受信し、受信信号に基づいて、目標物体までの距離を測定するレーダ装置であって、送信信号と受信信号とを混合するミキサと、目標物体までの距離に応じて、ミキサの電圧利得を制御する制御部とを備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明に係るレーダ装置によれば、制御部は、目標物体までの距離に応じて送信信号と受信信号とを混合するミキサの電圧利得を制御することにより、目標物体までの距離に応じて受信信号の信号レベルを調整する。
そのため、回路構成が複雑であり、かつ高価な可変ゲインアンプを不要とすることができ、簡単な回路構成で安価なレーダ装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施の形態1に係るレーダ装置を示すブロック構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係るレーダ装置における送信信号と受信信号との関係を示す説明図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係るレーダ装置におけるミキサの負荷抵抗の抵抗値とミキサの電圧利得との関係を示す説明図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係るレーダ装置における目標物体までの距離とミキサの負荷抵抗の抵抗値との関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明に係るレーダ装置の好適な実施の形態につき図面を用いて説明するが、各図において同一、または相当する部分については、同一符号を付して説明する。なお、以下の実施の形態では、レーダ装置が車両に搭載されている場合を例に挙げて説明するが、これに限定されず、レーダ装置は、航空機や船舶等に搭載されてもよい。
【0012】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係るレーダ装置1を示すブロック構成図である。図1において、レーダ装置1は、パルス方式に準じて動作する装置であり、送信部2、受信部3および制御部4から構成されている。レーダ装置1は、送信部2から送信信号を電磁波として放射し、目標物体5で反射した電磁波を受信部3で受信信号として受信し、受信信号に基づいて、制御部4で目標物体5までの距離を測定するものである。
【0013】
送信部2は、発振器21、分配器22、スイッチ23および送信アンテナ24を有している。受信部3は、受信アンテナ31、ミキサ32(例えば、偶高調波ミキサ)、ミキサ32の負荷抵抗33、アンプ34、ローパスフィルタ35(LPF:Low Pass Filter)およびA/D(Analog to Digital)変換器36を有している。ここで、制御部4は、CPU(Central Processing Unit)とプログラムを格納したメモリとを有するマイクロプロセッサ(図示せず)で構成されている。
【0014】
続いて、送信部2の機能について説明する。
まず、発振器21は、所定周波数の送信信号を発生し、分配器22に出力する。分配器22は、発振器21からの送信信号を、スイッチ23およびミキサ32に分配して出力する。スイッチ23は、制御部4からのスイッチ制御信号(後述する)に応じて所定の時間オン状態となり、分配器22からの送信信号を、図2の上段に示されるようなパルス状の送信信号に変調して送信アンテナ24に出力する。送信アンテナ24は、スイッチ23からのパルス状の送信信号を、電磁波として空間に放射する。
【0015】
次に、受信部3の機能について説明する。
まず、受信アンテナ31は、例えばレーダ装置1が搭載された車両の前方に存在する目標物体5で反射した電磁波を受信信号として受信し、受信信号をミキサ32に出力する。ミキサ32は、受信アンテナ31からの受信信号を分配器22からの送信信号と混合し、混合後の受信信号(ビート信号)を生成する。この混合後の受信信号は、負荷抵抗33の端子電圧としてアンプ34に出力される。なお、負荷抵抗33の抵抗値は、制御部4からの抵抗制御信号(後述する)によって設定される。
【0016】
アンプ34は、一般的に端子間の電圧を増幅する機能を有し、負荷抵抗33からの混合後の受信信号を電圧増幅してローパスフィルタ35に出力する。ローパスフィルタ35は、アンプ34からの電圧増幅された受信信号の高周波成分を除去して、図2の下段に示されるような立ち上がりが遅れた出力波形の受信信号をA/D変換器36に出力する。A/D変換器36は、ローパスフィルタ35からの受信信号をデジタル信号に変換し、変換後の受信信号を制御部4に出力する。
【0017】
最後に、制御部4の機能について説明する。
制御部4は、図2に示されるように、パルス状の送信信号が電磁波として放射されてから、目標物体5で反射した電磁波が受信信号として受信されるまでの遅延時間Tdに基づいて、R=c・Td/2(cは光速)により、目標物体5までの距離Rを算出する。
【0018】
また、制御部4は、目標物体5までの距離に応じてミキサ32の電圧利得を制御することにより、目標物体5までの距離に応じて受信信号の信号レベルを調整する。すなわち、制御部4は、目標物体5が近距離に存在する場合には電圧利得が小さく、遠距離に存在する場合には電圧利得が大きくなるように、ミキサ32の電圧利得を制御する。
【0019】
ここで、制御部4は、目標物体5までの距離に応じて、ミキサ32の負荷抵抗33の抵抗値を変化させることにより、ミキサ32の電圧利得を制御する。このために、制御部4は、スイッチ23に対して、スイッチ23を所定の周期で所定の時間オンさせるスイッチ制御信号を出力するとともに、負荷抵抗33に対して、負荷抵抗33の抵抗値を変化させる抵抗制御信号を出力する。
【0020】
ここで、図3を参照しながら、ミキサ32の負荷抵抗33の抵抗値と、ミキサ32の電圧利得との関係について説明する。一般的に、負荷抵抗33の抵抗値が小さい場合には、負荷抵抗33の端子電圧が小さくなり、負荷抵抗33の抵抗値が大きい場合には、負荷抵抗33の端子電圧が大きくなることが知られている。すなわち、図3に示されるように、負荷抵抗33の抵抗値が小さい場合には電圧利得が小さくなり、負荷抵抗33の抵抗値が大きい場合には電圧利得が大きくなる。
【0021】
したがって、制御部4は、目標物体5が近距離に存在する場合にはミキサ32の電圧利得が小さくなり、遠距離に存在する場合にはミキサ32の電圧利得が大きくなるように、目標物体5までの距離が遠くなるにつれて、負荷抵抗33の抵抗値が大きくなるような抵抗制御信号を生成する。具体的には、制御部4は、例えば図4に示されるように、目標物体5までの距離に比例して、負荷抵抗33の抵抗値が大きくなるような抵抗制御信号を生成する。
【0022】
また、このとき、制御部4は、スイッチ23をオンさせるタイミング(送信信号を放射するタイミング)と、負荷抵抗33の抵抗値を変化させるタイミング(ミキサ32の電圧利得を制御するタイミング)とが同期するように、スイッチ制御信号および抵抗制御信号を出力する。すなわち、受信部3は、送信部2から放射された送信信号の1つのパルスに対して、例えば10回の受信を実行する処理を繰り返しており、同期をとることによって、目標物体5までの距離に応じて受信信号の信号レベルを調整することができる。
【0023】
以上のように、実施の形態1によれば、制御部は、目標物体までの距離に応じて送信信号と受信信号とを混合するミキサの電圧利得を制御することにより、目標物体までの距離に応じて受信信号の信号レベルを調整する。すなわち、制御部は、送信信号を放射するタイミングと同期をとって、目標物体までの距離が遠くなるにつれて抵抗値が大きくなるように、ミキサの負荷抵抗の抵抗値を変化させる。
そのため、回路構成が複雑であり、かつ高価な可変ゲインアンプを不要とすることができ、簡単な回路構成で安価なレーダ装置を得ることができる。
【0024】
なお、上記実施の形態1では、送信アンテナ24と受信アンテナ31とが別々に設けられている場合を例に挙げて説明したが、これに限定されず、送受信兼用アンテナおよびサーキュレータを用いて、同様の機能を有するレーダ装置を構成してもよい。
【符号の説明】
【0025】
1 レーダ装置、2 送信部、3 受信部、4 制御部、5 目標物体、21 発振器、22 分配器、23 スイッチ、24 送信アンテナ、31 受信アンテナ、32 ミキサ、33 負荷抵抗、34 アンプ、35 ローパスフィルタ、36 A/D変換器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信信号を電磁波として放射し、目標物体で反射した前記電磁波を受信信号として受信し、前記受信信号に基づいて、前記目標物体までの距離を測定するレーダ装置であって、
前記送信信号と前記受信信号とを混合するミキサと、
前記目標物体までの距離に応じて、前記ミキサの電圧利得を制御する制御部と、
を備えたことを特徴とするレーダ装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記送信信号を放射するタイミングと、前記ミキサの電圧利得を制御するタイミングとの同期をとる
ことを特徴とする請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記ミキサの負荷抵抗の抵抗値を変化させることによって、前記ミキサの電圧利得を制御する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のレーダ装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記目標物体までの距離が遠くなるにつれて抵抗値が大きくなるように、前記ミキサの負荷抵抗の抵抗値を変化させる
ことを特徴とする請求項3に記載のレーダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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