説明

レール塗装装置

【課題】レール頭部を確実に無塗装で残しつつレール側面に遮熱塗装を行える構造のレール塗装装置を提案する。
【解決手段】本発明に係るレール塗装装置は、第1の台車1の進行方向端部に取り付けられてレールRの側面に塗料を吹き付ける吹き付け機構10を含んで構成される。吹き付け機構10は、第1の台車1に水平方向揺動可能にヒンジ接続されるアーム10gと、アーム先端部に水平方向揺動可能にヒンジ接続されて、レール上を走行させる車輪10kを軸支するフレーム10hと、フレーム10hから垂下してレール頭部の側方に延在するマスキング板10lと、レール側面からの離間距離を調整可能にしてフレーム10hに取り付けられ、マスキング板10lの延在位置においてレール側面に塗料を吹き付けるノズル10qと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道のレール側面に塗装を施す塗装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道におけるレールの熱膨張対策として、敷設されているレールの側面に遮熱(遮光)塗装を施し、夏場におけるレールの温度上昇を抑制することが、特許文献1に提案されている。特許文献1の装置は、線路上の台車を一定速度で移動させながら、該台車上の塗装装置からノズルを通してレール側面に遮熱塗料を吹き付け、塗装する装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平09−173923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の図3にあるように、レールに施す遮熱塗装は側面に限定され、車輪が載るレールの頭部は無塗装で残さなければならない。そこで、特許文献1の装置の場合、特許文献1の図2に示されるように台車の側部からレール側面の間近までノズルを垂下して塗料を吹き付けることで、塗装範囲を限定している。しかし、敷設されているレールの側方にはパンドロール等の締結器具や継ぎ目板があり、これらがノズルの移動に対し障害物となるため、レール頭部に塗料がかからない程度までレールに近接させてノズルを配置することが、実際には難しい。
【0005】
このような背景に鑑みると、レール頭部を確実に無塗装で残しつつレール側面に遮熱塗装を行える構造のレール塗装装置が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題に対して提案するレール塗装装置は、線路を走行する第1の台車と、該第1の台車の進行方向端部に、前記線路の各レールに対して1つずつ取り付けられて当該レール側面に塗料を吹き付ける吹き付け機構と、を含んで構成される。
その吹き付け機構は、前記第1の台車に水平方向揺動可能にヒンジ接続されるアームと、該アーム先端部に水平方向揺動可能にヒンジ接続されて、前記レール上を走行させる車輪を軸支するフレームと、該フレームから垂下して前記レール頭部の側方に延在するマスキング板と、前記レール側面からの離間距離を調整可能にして前記フレームに取り付けられ、前記マスキング板の延在位置において前記レール側面に塗料を吹き付けるノズルと、を備えている。
【発明の効果】
【0007】
上記提案に係るレール塗装装置の吹き付け機構は、レール上を車輪が走行することによりレールに沿って移動するフレームから、マスキング板が垂下しており、該マスキング板が、塗装時にレール頭部の側方に延在する。このマスキング板が延在している位置においてノズルが塗料を吹き付けて塗装していくので、レール頭部は、吹き付けられる塗料に対し、マスキング板により常にマスキングされる。
マスキング板でレール頭部がマスキングされているので、ノズルを、レール側方にある障害物を避けられる程度にレール側面から離して配置し、噴射塗料の広がる範囲にレール頭部が入ったとしても、マスキングされたレール頭部は、無塗装で残されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】レール塗装装置の実施形態を示した側面図。
【図2】レール塗装装置の実施形態を示した平面図。
【図3】吹き付け機構の詳細を示した要部拡大図。
【図4】吹き付け機構を跳ね上げた状態を示した図。
【図5】手動操作バルブの詳細を示した要部拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1及び図2に、台車(トロ)を3両編成としたレール塗装装置の実施形態を示している。図示の例では、第1の台車1が最後尾、第2の台車2が中間、第3の台車3が動力車で先頭車両になっている(この逆に、第1の台車1を先頭、第3の台車3を最後尾とすることもできる)。これら台車1〜3は同構造で、連結具4により所定の間隔で連結され、第3の台車3の駆動により線路上を前進及び後退する。各台車1〜3の車輪5は絶縁材でコーティングされており、敷設されたレールRを流れる電流が通らないようにしてある。また左右の車輪5の間隔は、狭軌、標準軌、広軌などの軌間に合わせて、車軸端部のカラー部材の抜き差しで調整できるものとなっている。
【0010】
第1の台車1は、その進行方向端部に、レールRの側面に遮熱塗料を吹き付ける吹き付け機構10が取り付けられている。また、当該第1の台車1上には、吹き付け機構10に対する遮熱塗料の供給を制御する手動操作バルブ11と、遮熱塗料を送り出すポンプ12と、が載置される。ポンプ12は、手で持ち運ぶことのできる大きさのものが使用される。
【0011】
第2の台車2は、ポンプ12に供給する遮熱塗料を貯留した一斗缶等の塗料容器20を多数載せている。
第3の台車3は、発電機30を載せており、インバータを含んだ制御ボックス31を通して動力源モータ32に電力供給することで、第3の台車3が動力車として他の台車1,2を牽引する。図示は省略しているが、動力源モータ32は車輪5をチェーン駆動する。制御ボックス31にコード接続された制御盤31aが、台車3上に固定された逆U字形の手摺り33にねじ止め等で装着されており、第3の台車3に乗った作業員が制御盤31aを操作することで、前進、後退、速度の制御が実行される。なお、発電機30は蓄電池であってもよい。また、発電機30は少なくとも2人で持ち運べる大きさのものが使用される。
【0012】
第1〜第3の台車1〜3はアルミ製で軽く、数人で持ち運べるものにしてある。したがって、塗装作業中に列車が近づいてきたときなどには、連結具4を外し、作業員の手によってポンプ12、塗料容器20、発電機30、台車1〜3を線路から運び出して退避させることができる。
【0013】
このレール塗装装置による塗装時には、第3の台車3に運転作業員、第2の台車2に塗料供給作業員、そして第1の台車1に吹き付け作業員がそれぞれ乗り込んで、作業する。
【0014】
第1の台車1に取り付けられた吹き付け機構10について、図1〜図3を参照して説明する。
吹き付け機構10は、本例の場合、第1の台車1の進行方向後端部において、レールRに対応させて左右の両側部にそれぞれ設けられている。このために、第1の台車1の後端角部には、横に寝かせた台座角パイプ10aが溶接等で固定され、該台座角パイプ10a上に離間させて、2つの支柱角パイプ10bが溶接等で立設されている。この支柱角パイプ10bの側面に、軸受ブラケット10cが後方へ突出させて溶接等で固定され、該軸受ブラケット10cの突出部分に垂直回動軸10dが軸支されている。垂直回動軸10dには、後方に突出する互いに平行なフランジが上下に形成されたアーム支持ブラケット10eが固定される。このアーム支持ブラケット10eのフランジ間に、2本のヒンジ軸10fが離間させて平行に軸支され、該ヒンジ軸10fにより2本のアーム10gが水平方向揺動可能にヒンジ接続されている。
【0015】
アーム10gは、斜め下方へ延長されており、その先端部に、フレーム10hが水平方向揺動可能にヒンジ接続される。フレーム10hを接続した2本のアーム10gは互いに平行となり、平行リンクが形成される。具体的には、フレーム10hの前端部側面に、コ字形のアーム接続ブラケット10iが溶接等で固定されており、該アーム接続ブラケット10iにヒンジ軸10jが軸支され、該ヒンジ軸10jによりアーム10gがヒンジ接続されている。なお、アーム10gは片側1本の片持ち式とすることもできるが、2本のアーム10gによる平行リンク方式が安定していて良い。
【0016】
フレーム10hは、下向きU字形を有し、その内側にレールR上を走行させる車輪10kを軸支している。したがって、アーム10gにより水平方向へ揺動可能に保持されたフレーム10hは、車輪10kに案内されてレールRをトレースする。このために車輪10kは、左右両側にフランジが形成されている。
【0017】
フレーム10hの左右両側面の下端部分にマスキング板10lの上端部分がボルト止め等で固定され、該マスキング板10lがフレーム10hからさらに下方へ垂下している。フレーム10hは、下端部分に、後方へ延長された延長部分を有し、マスキング板10lは、その延長部分も含めた長さをもち、レールR頭部の側方に延在する。このようなマスキング板10lは、ゴム、合成樹脂、木材など、レールRよりもやわらかい素材で形成するのが良い。なお、本例ではフレーム10hの左右両側面にマスキング板10lが設けられているが、遮熱塗装を施すレール側面が片側のみである場合、すなわち、日光の当たる側だけに遮熱塗装を施すような場合には、ノズル10qと共にマスキング板10lは、該当する片側だけに設ける形態とすることもできる。
【0018】
フレーム10hの上面には幅広平坦の載置面が形成されており、該載置面に、ノズル支持ブラケット10mが固定されている。該ノズル支持ブラケット10mは、水平ロッド10nを挟持する。これにより左右方向へ伸延する水平ロッド10nに、位置調整クランプ10oが装着され、該位置調整クランプ10oに、垂直ロッド10pがクランプされる。この垂直ロッド10pの先端に、ノズル10qが接続されている。垂直ロッド10pは遮熱塗料供給管の役割も担っており、垂直ロッド10pを通して遮熱塗料が送られるノズル10qは、マスキング板10lの延在位置において、レールR側面に向かって、遮熱塗料を吹き付ける。
【0019】
位置調整クランプ10oは、水平ロッド10nに沿ってスライドさせて位置を調整することができ、且つ垂直ロッド10pのクランプ位置を調整することができる。したがって、ノズル10qは、位置調整クランプ10oによってレールR側面からの離間距離(水平方向の間隔)及び高さを調整可能である。
【0020】
垂直ロッド10pには塗料ホース10rがそれぞれ接続されており、この塗料ホース10rは、手動操作バルブ11を介してポンプ12へつながっている。ポンプ12は、吸引ホース12aにより塗料容器20内の遮熱塗料を吸い上げ、塗料ホース10rへ吐出する。ポンプ12は発電機30から電源供給を受けている。
【0021】
吹き付け機構10のアーム10gを接続したアーム支持ブラケット10eが、上述のように垂直回動軸10dにより取り付けられているので、アーム10gは、垂直方向回動可能にして第1の台車1に接続されている。したがって、吹き付け機構10は、全体的に垂直方向へ回動させることができる。アーム支持ブラケット10eの前端面には跳ね上げロッド10sが固定されており、この跳ね上げロッド10sを押し下げると、吹き付け機構10を上方へ回動させて、不要時などには図4に示す跳ね上げ状態とすることができる。跳ね上げロッド10sの先端部にはロックリング10tが設けられているので、このロックリング10tをロックロッド10uへ引っかけると、吹き付け機構10の跳ね上げ状態が維持される。ロックロッド10uは、台座角パイプ10aの上面に溶接等で固定され、進行方向へ伸延している。
【0022】
手動操作バルブ11の詳細について、図5に示している。
手動操作バルブ11は、第1の台車1に立設した支柱パイプ11aに、上下に離間させて固定したバルブ11bを備えている。ノズル10qへの塗料供給を制御するバルブ11bは、ボールバルブやバタフライバルブ等で、その開閉コックに操作ロッド11cが固定され、該操作ロッド11cを水平方向に90°回動させることで開閉することができるようにしてある。上下に並んだバルブ11bの各操作ロッド11cは、先端部において連結ロッド11dにより互いに連結されていて、両者を一度に操作できるようになっている。また、連結ロッド11dは取り外し可能で、連結ロッド11dを取り外した場合には、片方ずつ別個に操作することができる。
【0023】
以上のように構成されたレール塗装装置は、塗装時、第3の台車3に運転作業員が乗車し、制御盤31aを操作して定速走行させる。また、第2の台車2には塗料供給作業員が乗車し、塗料容器20の残量を見ながら、吸引ホース12aを挿入する塗料容器20を適宜切り替えていく。そして、第1の台車1には吹き付け作業員が乗車し、レールRの継ぎ目などを確認しながら、手動操作バルブ11を操作する。場合によっては、跳ね上げロッド10sにより吹き付け機構10を跳ね上げ状態とする。
【0024】
この塗装時、上述のように、吹き付け機構10のフレーム10hからマスキング板10lが垂下しており、該マスキング板10lが、レールR頭部の側方に延在する。このマスキング板10lの延在位置においてノズル10qが遮熱塗料を吹き付けて塗装していくので、レールRの頭部は、吹き付けられる遮熱塗料に対し、マスキング板10lにより常にマスキングされる。したがって、ノズル10qを、レールRの側方にあるパンドロール等の障害物を避けられる程度にレールR側面から離して配置する結果、ノズル10qから噴射される塗料が広がる範囲(図3中の一点鎖線参照)に、レールRの頭部が入っていたとしても、マスキング板10lでマスキングされたレールRの頭部は、無塗装で残される。
【符号の説明】
【0025】
1 第1の台車
2 第2の台車
3 第3の台車
4 連結具
5 車輪
10 吹き付け機構
10a 台座角パイプ
10b 支柱角パイプ
10c 軸受ブラケット
10d 垂直回動軸
10e アーム支持ブラケット
10f ヒンジ軸
10g アーム
10h フレーム
10i アーム接続ブラケット
10j ヒンジ軸
10k 車輪
10l マスキング板
10m ノズル支持ブラケット
10n 水平ロッド
10o 位置調整クランプ
10p 垂直ロッド
10q ノズル
11 手動操作バルブ
12 ポンプ
20 塗料容器
30 発電機
31 制御ボックス
32 動力源モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線路を走行する第1の台車と、
該第1の台車の進行方向端部に、前記線路の各レールに対して1つずつ取り付けられて当該レール側面に塗料を吹き付ける吹き付け機構と、
を含んで構成され、
前記吹き付け機構は、
前記第1の台車に水平方向揺動可能にヒンジ接続されるアームと、
該アーム先端部に水平方向揺動可能にヒンジ接続されて、前記レール上を走行させる車輪を軸支するフレームと、
該フレームから垂下して前記レール頭部の側方に延在するマスキング板と、
前記レール側面からの離間距離を調整可能にして前記フレームに取り付けられ、前記マスキング板の延在位置において前記レール側面に塗料を吹き付けるノズルと、
を備える、
レール塗装装置。
【請求項2】
前記吹き付け機構のアームは、
垂直方向回動可能にして前記第1の台車に接続されている、
請求項1記載のレール塗装装置。
【請求項3】
前記第1の台車上に設けられ、前記吹き付け機構のノズルに対する塗料供給を制御する手動操作バルブをさらに含む、
請求項1又は請求項2記載のレール塗装装置。
【請求項4】
前記第1の台車に連結される第2の台車と、
該第2の台車に連結される第3の台車と、
をさらに含み、
前記第1の台車に、塗料を前記ノズルへ送り出すポンプが載置され、
前記第2の台車に、前記ポンプに供給する塗料を貯留した塗料容器が載置され、
前記第3の台車が、動力源モータを備えた動力車である、
請求項1〜3のいずれかに記載のレール塗装装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−31204(P2011−31204A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−181508(P2009−181508)
【出願日】平成21年8月4日(2009.8.4)
【出願人】(590002482)株式会社NIPPO (130)
【Fターム(参考)】