説明

レール装置

【課題】上レールの前後方向に沿う位置調整を可能とし得るとともに、上レールを取り付ける際の作業性を向上し得るレール装置を提供する。
【解決手段】レール装置1は、建具7を案内する上レール20と、前記上レールの長手方向と直交する方向を長径とした長孔14が形成され、下面に前記上レールの上面が当接される取付片部11と、取付対象2に対して固定される固定片部15とを有したレールベース10と、前記上レールの上面部22に形成された止具孔24及び前記レールベースの取付片部の長孔を介して挿通される止具9に螺合する雌ねじ孔34が形成され、前記取付片部の上面側に配置されるナット片部31と、このナット片部に連成され、前記長孔に挿通される挿通片部35と、この挿通片部に連成され、前記取付片部の下面に沿うように配置される抜止片部36,36とを有したレール固定金具30と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建具を案内するレール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の建具を案内する上レールとしては、建物の壁部に開設された開口部の内周に沿って開口枠を取り付け、この開口枠の上枠として設けられることが一般的であった。
ところで、近年、意匠性の観点や、開き戸から引戸等へリフォームする際における施工性の観点等の種々の理由から、壁面に沿って引戸等の建具を納める構造としたアウトセット型納めが提案されている。このようなアウトセット型納めでは、開口部に設けられた枠部材の種類やちり寸法、または壁面の起伏等の種々の要因により、上レールの前後方向(当該上レールの長手方向と直交する方向)に沿う位置調整が必要となる場合があった。
【0003】
例えば、下記特許文献1では、壁面に対して上レールの長手方向と直交する方向に上レールを位置調整自在に取り付ける構造とした引戸装置が提案されている。この引戸装置は、上レールの上面に当該上レールの長手方向と直交する方向に長い長孔を設ける一方、壁面に固定される取着金具の横片に設けられたスライドガイド部に、ナット板を上レールの長手方向と平行な方向にスライド自在に装着した構造とされている。
また、下記特許文献2では、壁面等に固定される取付ブラケットの下面にレールの上部を当接させて、これらにネジを貫通させ、このネジを取付ブラケットの上面に配置されたナットに螺合させる構造とされたレール取付構造が提案されている。このレール取付構造は、上記取付ブラケットの上面に、レールの幅方向と直交する方向に平行に延びる凹条及び凸条からなる凹凸を、レールの幅方向に等間隔で設けるとともに、長軸をレールの幅方向とした長孔を設けた構造とされている。また、このレール取付構造は、上記ナットに、上記取付ブラケットの凹条にそれぞれが係合する一対の係合片を設けた構造とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−199377号公報(図9〜図11参照)
【特許文献2】特開2009−68208号公報(図3参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載された引戸装置では、上レールのメンテナンスや交換等の際を含み、上レールを取着金具に取り付ける際に、面倒な作業となることが考えられる。すなわち、取着金具のスライドガイド部に装着されたナット板が、スライドガイド部に沿って移動すれば、このナット板と止めねじとが螺合し難くなることが考えられる。特に、上レールが天井面近傍位置に配設される場合には、位置ずれしたナット板を螺合する位置に戻す際に面倒な作業となる。
また、上記特許文献2に記載されたレール取付構造では、取付ブラケットの上面に形成された凹凸に対して、ナットの一対の係合片の係合位置を選択して、上レールの前後方向に沿う位置を調整する構造となるため、微調整し難いという問題があった。また、このものでも、上記同様、上レールを取付ブラケットに取り付ける際に、ナットが移動し易く面倒な作業となることが考えられる。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、上レールの前後方向に沿う位置調整を可能とし得るとともに、上レールを取り付ける際の作業性を向上し得るレール装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明に係るレール装置は、建具を案内する上レールと、前記上レールの長手方向と直交する方向を長径とした長孔が形成され、下面に前記上レールの上面が当接される取付片部と、取付対象に対して固定される固定片部とを有したレールベースと、前記上レールの上面部に形成された止具孔及び前記レールベースの取付片部の長孔を介して挿通される止具に螺合する雌ねじ孔が形成され、前記取付片部の上面側に配置されるナット片部と、このナット片部に連成され、前記長孔に挿通される挿通片部と、この挿通片部に連成され、前記取付片部の下面に沿うように配置される抜止片部とを有したレール固定金具と、を備えていることを特徴とする。
【0008】
本発明においては、前記レール固定金具のナット片部に、前記止具の螺合により前記レールベースの取付片部の上面に食い込む爪部を形成してもよい。
また、本発明においては、前記レール固定金具に、前記挿通片部とともに、前記ナット片部の水平面域における揺動を規制する水平揺動規制部を設けてもよい。
また、本発明においては、前記レール固定金具に、前記抜止片部とともに、前記ナット片部の上下方向への揺動を規制する上下揺動規制部を設けてもよい。
また、本発明においては、前記レール固定金具の抜止片部を、前記挿通片部の下端部から前記レールベースの長孔の幅方向両側に突出するように形成してもよい。
また、本発明においては、前記レール固定金具及び前記上レールに、前記長手方向と直交する方向に沿う互いの位置合わせをし、かつ、これらに設けられた前記雌ねじ孔と前記止具孔とを整合させるための位置決め部をそれぞれに設けてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るレール装置は、上述のような構成としたことで、上レールの前後方向に沿う位置調整を可能とすることができるとともに、上レールを取り付ける際の作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(a)、(b)は、いずれも本発明の一実施形態に係るレール装置を模式的に示し、同レール装置の施工工程の一例を説明するための一部破断概略分解斜視図である。
【図2】同レール装置が施工された状態を模式的に示す概略正面図である。
【図3】(a)は、図2におけるX−X線矢視に対応させた一部破断概略拡大横断面図、(b)は、図2におけるY1−Y1線矢視に対応させた一部破断概略拡大縦断面図である。
【図4】(a)は、図3(b)におけるZ1部に対応させた一部破断概略拡大縦断面図、(b)は、同レール装置が施工された状態の他例を示し、(a)に対応させた一部破断概略拡大縦断面図である。
【図5】(a)は、図1(b)におけるZ2部に対応させた一部破断概略拡大平面図、(b)は、図4(b)の例に対応させた(a)と同様図、(c)は、図1(b)におけるZ2部に対応させた一部破断概略拡大正面図、(d)は、(a)におけるY2−Y2線矢視に対応させた一部破断概略拡大縦断面図、(e)は、同レール装置が備えるレール固定金具の一例を模式的に示す概略斜視図である。
【図6】(a)は、同レール装置の一部破断概略平面図、(b)は、図4(b)の例に対応させた(a)と同様図である。
【図7】(a)は、同レール装置の施工工程の一例を説明するための一部破断概略分解正面図、(b)は、同レール装置が施工された状態を模式的に示す一部破断概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
図1〜図7は、本実施形態に係るレール装置について説明するための説明図である。
なお、以下の実施形態では、図3(a)に示すV方向から見た状態を基準として、図3(a)において下側(内壁の壁面に沿って配された引戸が存在する側の空間側)を前方、図3(a)において上側(当該引戸によって開閉される開口の奥側の空間側)を後方として説明する。また、本実施形態に係るレール装置が施工された状態を基準として、その前後方向や上下方向等を説明する。
また、一部の図では、他図に付している詳細な符号の一部を省略している。
【0012】
本実施形態に係るレール装置1は、図2及び図3に示すように、住居等の建物の内壁2に開設された出入り口としての開口5を閉塞または開放する片引き式の引戸7の上端部に沿って配設された例を示している。図例では、取付対象としての内壁2の天井側入隅部近傍部位に沿ってレール装置1を配設した例を示している。つまり、本実施形態では、引戸7を壁面2aに沿ってレール装置1によって案内し、引戸7をいわゆるアウトセット型納めによって納めた例を示している。
【0013】
内壁2は、図3(a)に示すように、柱材(間柱)や横桟、胴縁等の壁下地4の前面及び後面に壁材3,3を添設して構成されている。これら壁材3,3は、石膏ボードや合板捨張下地等の下地ボードの表面に、壁クロスや壁紙、その他の表面化粧材等を貼着して構成されたものとしてもよい。この内壁2のレール装置1が取り付けられる部位には、図3(b)に示すように、レール下地として、上記同様の壁下地4が設けられている。
内壁2に開設された開口5は、図例では、床面から天井面近傍部位にまで形成されており、その内周両側面及び内周天面には、開口枠6が設けられている。
開口枠6は、図例では、縦本枠6a及縦額縁6bからなる一対の縦枠と、上本枠6c及び上額縁6dからなる上枠とを備えたいわゆるケーシング枠とされている。これら縦枠及び上枠は、図3に示すように、それぞれの額縁6b,6dが壁面2aよりも手前側に突出するように設けられている。なお、開口枠としては、このようなケーシング枠に限られず、固定枠としてもよく、さらには、開口枠を設けずに、開口内周を構成したものにも本実施形態に係るレール装置の適用が可能である。
【0014】
引戸7は、開口5を閉塞し得るように、高さ寸法が床面近傍から天井面近傍までの高さとされている。
この引戸7の上端部には、図2及び図3(b)に示すように、当該引戸7の幅方向(開閉方向)に沿ってレール装置1に案内、支持されるランナー部材(走行部材)53,53が連結固定されている。また、この引戸7の下端部には、床面に向けて開口したガイド凹溝7bが引戸7の幅方向に沿って形成されており、このガイド凹溝7bには、床面に固定された固定ピン54が挿入(遊挿)されて、引戸7の開閉方向に沿う移動がガイドされる。
引戸7は、図3(b)に示すように、上記のように壁面2aよりも手前側に突出する額縁6b,6dの前面との間に、当該引戸7の開閉の際に必要となる僅かなクリアランスを隔てて、レール装置1及び固定ピン54によってガイドされる。
なお、図2において符号7aは、当該引戸7の開閉時に操作される引手である。
【0015】
レール装置1は、図1(b)に示すように、壁面2aに沿って配設され、引戸7を開閉方向に案内する上レール20と、この上レール20を支持するレールベース10と、上レール20をレールベース10に固定する固定金具30,40とを備えている。本実施形態では、上レール20の長手方向の各端部とレールベース10の長手方向の各端部とをそれぞれに連結固定する一対の端部固定金具40,40と、これらの長手方向途中部位を連結固定する複数個(図例では三個)の中間固定金具(レール固定金具)30とを備えている。
また、本実施形態では、図2及び図3に示すように、当該レール装置1の前方側及び長手方向両端側を覆い隠すカバー部材50を設けている。このカバー部材50は、レール装置1の前方側を覆い隠す幕板51と、レール装置1の長手方向両端側をそれぞれに覆い隠す一対のエンドキャップ52,52とからなる。
【0016】
レールベース10は、図1及び図4に示すように、壁面2aから略水平方向前方に突出するように配設される取付片部11と、この取付片部11の基端側に連成され、内壁2に固定される固定片部15とを備え、上レール20の長手方向に沿って配設される。このレールベース10は、本実施形態では、上レール20の長さよりもやや短く形成されている。
取付片部11は、薄平板状とされ、その長手方向両端部12,12には、長手方向と直交する方向(前後方向、以下、同じ。)を長径とした端部長孔13,13がそれぞれに形成されている。この端部長孔13は、取付片部11の端部12の手前側(先端側)寄りに設けられ、当該取付片部11を上下に貫通して設けられている。
また、この取付片部11の長手方向途中部位には、前後方向を長径とした中間部長孔14が、複数箇所(図例では、三箇所)に間隔を空けて形成されている。この中間部長孔14は、当該取付片部11を上下に貫通して設けられ、かつ前方に開口しており、その基端側縁部が当該取付片部11の基端部近傍部位に至るまで形成されている。
【0017】
固定片部15は、取付片部11の基端部から上方に向けて立ち上がるように連成された上固定片16と、取付片部11の基端部から下方に向けて垂れ下がるように連成された下固定片17とを備えている。各固定片16,17の前面は、僅かに斜め前下方に向くように形成された傾斜面とされている。また、これら各固定片16,17の前面には、図1及び図4に示すように、断面略V字状の細凹溝が長手方向に沿って形成されている。この細凹溝に沿って長手方向の複数箇所に間隔を空けて下孔を加工し、図1(a)に示すように、タッピンねじや木ねじ等の止具としてのねじ8を捻じ込み、当該レールベース10を、内壁2に対して固定するようにしてもよい。なお、このような細凹溝を設けずに予め適所に止具孔を形成しておくようにしてもよい。
【0018】
本実施形態では、このレールベース10は、図4に示すように、これら上固定片16及び下固定片17からなる固定片部15と、取付片部11とによって縦断面形状が、略倒T字状とされている。
なお、このレールベース10は、アルミニウムやステンレス、炭素鋼等の適宜の金属材料から押出成形や鋳造成形または切削加工等によって一体的に成形された金属製としてもよい。または、硬質合成樹脂製としてもよい。
【0019】
上レール20は、図1及び図4に示すように、レールベース10の取付片部11の下面に当接される上面部22と、この上面部22の手前縁から垂れ下がるように連成された前面部21と、上面部22の後縁から垂れ下がるように連成された後面部27とを備えている。図例では、これら上面部22、前面部21及び後面部27によって縦断面形状が、下方に向けて開口する略コ字状とされている。このコ字状の内方空間に、ランナー部材53の転動部(ローラー)等が収容される。
【0020】
前面部21の上縁部及び下縁部には、図4に示すように、レール装置1の前方側を覆う幕板51の後面に形成された一対の係止突起51a,51aを係止する係止部21a,21aが当該上レール20の長手方向の全長に亘って形成されている。また、この前面部21の下縁部には、後方に向けて突出するローラー案内片21bが当該上レール20の長手方向の全長に亘って設けられている。
後面部27の下縁部には、上記同様のローラー案内片27bが前方に向けて突出するように設けられている。これら前面部21及び後面部27の各ローラー案内片21b,27bに、ランナー部材53のローラーが当該上レール20の長手方向に沿って転動自在に支持される。
また、後面部27の下縁部には、後方に向けて突出する突出片27aが当該上レール20の長手方向の全長に亘って設けられている。この突出片27aは、当該上レール20をレールベース10に対して取り付ける際に、開口枠6(図例では、縦額縁6b)の前面等の位置合わせ面に当接され、当該上レール20の前後方向の施工位置を位置決めする位置決め部として機能する。
【0021】
上面部22の長手方向両端部には、図6及び図7に示すように、端部固定金具40を固定する止具孔25が上下方向に貫通して形成されている。図例では、各端部において長手方向に間隔を空けて二箇所に止具孔25,25をそれぞれに設けた例を示している。
また、これら各端部における端部固定金具固定用の止具孔25の長手方向中央側寄りの部位には、レールベース10の取付片部11の端部12と当該上レール20の端部とを連結固定する端部連結固定用の止具孔23,23がそれぞれに設けられている。これら端部連結固定用の止具孔23は、図6及び図7に示すように、レールベース10の取付片部11の端部12に設けられた端部長孔13に対応させた位置に設けられている。
また、この上面部22の長手方向の途中部位には、図1(a)に示すように、複数箇所(図例では、三箇所)に、レールベース10の取付片部11の途中部位と当該上レール20の途中部位とを連結固定する中間部連結固定用の止具孔24が設けられている(図5(d)も参照)。これら中間部連結固定用の止具孔24は、図5(a)、(d)に示すように、レールベース10の取付片部11に設けられた中間部長孔14に対応させた位置に設けられている。
【0022】
また、この上面部22は、図4に示すように、前後方向(当該上レール20の幅方向)中央部に、上方に向けて膨出するように形成された段部を有し、この段部の上面がレールベース10の取付片部11の下面に当接して配置される。また、この段部の後側段壁部26が、中間固定金具30との互いの前後方向に沿う位置合わせをするための位置決め部として機能する。
なお、この上レール20は、上記同様の金属製としてもよい。または、硬質合成樹脂製としてもよい。
【0023】
中間固定金具30は、図1に示すように、上レール20の中間部連結固定用の止具孔24及びレールベース10の中間部長孔14を介して挿通されるねじ等の止具9に螺合する雌ねじ孔34を有している(図5(d)も参照)。また、この中間固定金具30は、レールベース10の中間部長孔14に沿って移動自在に係合保持される構造とされている。
本実施形態では、この中間固定金具30は、レールベース10の取付片部11の上面側に配置されるナット片部31と、このナット片部31の後側部に連成された第1挿通片部35と、この第1挿通片部35の下端部に連成された抜止片部36とを備えている。
【0024】
ナット片部31は、図5に示すように、平板状で平面視して略矩形状とされており、レールベース10の取付片部11に設けられた中間部長孔14を幅方向(上レール20の長手方向)に跨ぐように配置される。つまり、このナット片部31の幅寸法(上レール20の長手方向に沿う寸法)は、中間部長孔14の短径よりも大きく形成されている。
また、このナット片部31の前端両角部には、爪部としての爪片32,32が設けられている。この爪片32は、図例では、ナット片部31の前端両角部を下方に向けて折り曲げるようにして形成されている。
また、このナット片部31の略中央部には、上方に向けて突出する筒部33が形成されている。ナット片部31の雌ねじ孔34は、この筒部33を含み、当該ナット片部31を上下方向に貫通して形成されている。
【0025】
第1挿通片部35は、ナット片部31の後側部の略中央部から下方に向けて垂れ下がるように折り曲げ形成されており、レールベース10の取付片部11に設けられた中間部長孔14に上下に挿通される。この第1挿通片部35の幅寸法(上レール20の長手方向に沿う寸法)は、中間部長孔14に挿通可能な程度に、この中間部長孔14の短径よりも僅かに小さく形成されている。本実施形態では、第1挿通片部35が中間部長孔14内において、その幅方向に僅かに移動が可能となるように中間部長孔14の幅方向両内周縁部との間にクリアランスを設けている。
また、この第1挿通片部35は、図4に示すように、その前面側下部が上レール20の後側段壁部26に当接して配置される構造とされており、この第1挿通片部35の前面側下部が、上レール20との互いの前後方向に沿う位置合わせをするための位置決め部として機能する。
【0026】
抜止片部36は、第1挿通片部35の下端部から後方に向けて折り曲げるようにして形成されており、レールベース10の取付片部11の下面に沿うように、この下面に近接乃至は当接して配置される。
この抜止片部36は、本実施形態では、図5(a)、(c)に示すように、第1挿通片部35の下端部からレールベース10の取付片部11の中間部長孔14の幅方向両側に突出するように形成された一対の抜止片部36,36とされている。これら一対の抜止片部36,36は、それぞれが、レールベース10の取付片部11の中間部長孔14の幅方向両側下面に沿うように配置される。つまり、これら一対の抜止片部36,36は、第1挿通片部35の下端部から後方に向けて折り曲げられ、この折り曲げられた部位から幅方向両外方側に向けて延出するように形成されており、中間部長孔14を幅方向に跨ぐように配置される。
【0027】
また、中間固定金具30は、第1挿通片部35とともに、ナット片部31の水平面域における揺動を規制する水平揺動規制部としての第2挿通片部37を備えている。この第2挿通片部37は、上記のように中間部長孔14の幅方向両側に突出された一対の抜止片部36,36の略中央部後側部から上方に向けて立ち上がるように折り曲げ形成されており、レールベース10の取付片部11に設けられた中間部長孔14に上下に挿通される。つまり、本実施形態では、この第2挿通片部37は、図4及び図5(a)、(d)に示すように、抜止片部36を挟んで第1挿通片部35と前後に対向するように形成されている。
【0028】
この第2挿通片部37の幅寸法は、第1挿通片部35の幅寸法と略同寸法とされ、これら第1挿通片部35と第2挿通片部37とは、前後方向において略一致するように形成されている。
このように、レールベース10の取付片部11の中間部長孔14に上下にそれぞれが挿通される第1挿通片部35及び第2挿通片部37を備えた構造とすることで、ナット片部31の水平面域における揺動が規制される。つまり、第1挿通片部35のみを設けた場合には、当該中間固定金具30の幅方向への移動は規制されるが、第1挿通片部35廻りに水平面域において回動乃至は揺動することが考えられる。上記構成とされた中間固定金具30によれば、この第1挿通片部35と、これに対して前後に間隔を空けて対向するように設けられた第2挿通片部37とによって、上記のような回動乃至は揺動を規制することができる。
【0029】
また、中間固定金具30は、抜止片部36とともに、ナット片部31の上下方向への揺動を規制する上下揺動規制部としての引掛片部38を備えている。この引掛片部38は、第2挿通片部37の上端部から後方に向けて折り曲げるようにして形成されており、レールベース10の取付片部11の上面に沿うように、この上面に近接乃至は当接して配置される。
この引掛片部38は、本実施形態では、図5(a)に示すように、第2挿通片部37の上端部からレールベース10の取付片部11の中間部長孔14の幅方向両側に突出するように形成された一対の引掛片部38,38とされている。これら一対の引掛片部38,38は、それぞれが、レールベース10の取付片部11の中間部長孔14の幅方向両側上面に沿うように配置される。つまり、これら一対の引掛片部38,38は、第2挿通片部37の上端部から後方に向けて折り曲げられ、この折り曲げられた部位から幅方向両外方側に向けて延出するように形成されており、中間部長孔14を幅方向に跨ぐように配置される。または、後記するように、当該中間固定金具30が中間部長孔14に沿って前後方向に移動され、最後方側に配置された状態では、中間部長孔14の後方側上面に配置される(図4(b)及び図5(b)参照)。
【0030】
このように、レールベース10の取付片部11の下面に沿うように配置される抜止片部36と、取付片部11の上面に沿うように配置される引掛片部38とを備えた構造とすることで、ナット片部31の上下方向への揺動が規制される。つまり、抜止片部36のみを設けた場合には、当該中間固定金具30の上下方向への移動(つまり、上方への抜け)は規制されるが、第1挿通片部35廻りに垂直面域において回動乃至は揺動する(ばたつく)ことが考えられる。上記構成とされた中間固定金具30によれば、取付片部11の上面及び下面に沿うようにそれぞれが配置される引掛片部38と抜止片部36とによって、この取付片部11を上下で挟むようにして配置されるので、上記のような回動乃至は揺動を規制することができる。つまり、中間固定金具30のナット片部31の雌ねじ孔34にねじ等の止具9を螺合させる際に、このナット片部31が浮き上がったり、ばたついたりすることを防止することができる。
【0031】
上記構成とされた中間固定金具30は、図4及び図5(d)に示すように、縦断面形状が、逆ハット状の形状とされ、また、図5(c)に示すように、正面視において、略I字状(略倒H字状)の形状とされている。この中間固定金具30を、レールベース10の取付片部11に係合保持させる際には、取付片部11の中間部長孔14の前方開口から第2挿通片部37及び第1挿通片部35をこの順に中間部長孔14に挿入させるようにして取り付け、係合保持させるようにしてもよい(図1(a)も参照)。
なお、この中間固定金具30は、鋼板等の金属板を打ち抜き加工や切削加工、折り曲げ加工することによって形成するようにしてもよい。
【0032】
一対の端部固定金具40,40は、図1に示すように、上レール20の長手方向の各端部にそれぞれが固定され、レールベース10の取付片部11の長手方向の各端部12,12に対して前後方向にスライド自在にそれぞれが係合する構造とされている。
この端部固定金具40は、図6及び図7に示すように、上レール20に固定されるレール固定片部41と、このレール固定片部41の内方側(上レール20の長手方向中央側)端部に連成された係合連結片部42とを備えている。
レール固定片部41には、上レール20の長手方向端部に設けられた上記端部固定金具固定用の止具孔25に対応させた雌ねじ孔45が設けられている。このレール固定片部41は、図7(a)に示すように、上レール20の止具孔25を介して挿通されたねじ等の止具9が雌ねじ孔45に螺合されて上レール20の端部に固定される。
【0033】
係合連結片部42は、図7に示すように、その下面と、上レール20の上面との間に、レールベース10の取付片部11の長手方向の端部12を受け入れる係合凹所44が形成されるように、レール固定片部41の内方側端部に連成されている。また、この係合連結片部42には、上レール20の長手方向端部に設けられた端部連結固定用の止具孔23と上下方向において整合するように、雌ねじ孔43が設けられている。この雌ねじ孔43には、上レール20の端部連結固定用の止具孔23及びレールベース10の端部長孔13を介して挿通されるねじ等の止具9が螺合される。
【0034】
上記構成とされた一対の端部固定金具40,40を上レール20の長手方向の各端部に固定した状態では、図7(a)に示すように、各係合連結片部42,42が互いに対向するように配置される。また、各係合凹所44,44が上レール20の長手方向中央側に向けて開口するとともに、前後方向に開口した構造とされ、図7(b)に示すように、これら各係合凹所44,44に、レールベース10の取付片部11の長手方向の各端部12,12が係合する。この係合によって、上レール20の長手方向両端部がレールベース10に保持されるとともに、レールベース10に対する上レール20の長手方向の位置決めがなされる。
なお、これら端部固定金具40,40は、中間固定金具30と同様、鋼板等の金属板を打ち抜き加工や切削加工、折り曲げ加工することによって形成するようにしてもよい。
【0035】
次に、上記構成とされたレール装置1の施工手順の一例について説明する。
まず、図1(a)に示すように、レールベース10を取付対象としての内壁2に対して、上記したように、ねじ8によって固定する。この際、図4に示すように、レールベース10の下固定片17の下端面を、開口枠6(図例では、上額縁6d)の上面に当接させて、当該レールベース10の固定位置の位置決めを行うようにしてもよい。
また、レールベース10の中間部長孔14に、上記したようにして中間固定金具30を係合保持させる。
次いで、長手方向両端部のそれぞれに端部固定金具40,40を固定した上レール20を、レールベース10に係合保持させる。つまり、図1(a)及び図7(a)に示すように、端部固定金具40の係合凹所44にレールベース10の取付片部11の端部12を受け入れさせるようにして係合させ、図1(b)及び図7(b)に示すように、上レール20を内壁2に固定されたレールベース10に保持させる。
【0036】
そして、上レール20の前後方向の施工位置を調整する。つまり、レールベース10に対して上レール20の前後位置を調整する。この際、当該上レール20によって案内される引戸7と、上記のように壁面2aよりも手前側に突出する額縁6b,6dの前面との間に、上記クリアランスが形成されるように位置調整を行うようにしてもよい。
このような前後位置の調整は、図4及び図6に示すように、開口5(図3参照)の内周に固定される開口枠6の種類やちり寸法、または壁面の起伏等の種々の要因により必要とされる場合がある。図4(a)、図5(a)及び図6(a)では、開口枠6(図例では縦額縁6b)が内壁2の壁面2aから手前に比較的、大きく突出し、そのちり寸法D1が比較的、大きいものを例示している。一方、図4(b)、図5(b)及び図6(b)では、開口枠6のちり寸法D2が比較的、小さいものを例示している。
【0037】
上記のように、本実施形態では、上レール20の後面部27に、当該上レール20の前後方向の施工位置を位置決めする位置決め部としての突出片27aを設けている。従って、この突出片27aの先端面(後端面)を開口枠6(縦額縁6b)の前面に当接させることで、上レール20の前後位置の調整を容易に行うことができる。なお、レールベース10の取付高さ位置によっては、開口枠6と突出片27aとが当接しない場合があるが、この場合は、開口枠6の前面と突出片27aの後端面とが前後方向において略一致した位置となるように、位置合わせを行うようにしてもよい。つまり、これら開口枠6の前面と突出片27aの後端面とが略同一平面状となるように位置合わせを行うようにしてもよい。
【0038】
上レール20の長手方向端部においては、図6に示すように、上レール20の前後方向への移動に伴って、上レール20の止具孔23及び端部固定金具40の雌ねじ孔43が、レールベース10の端部長孔13に沿うようにして前後方向に移動する。
また、上レール20の長手方向途中部位においては、図4及び図5(a)、(b)に示すように、上レール20の前後方向への移動に伴って、上レール20の止具孔24が、レールベース10の中間部長孔14に沿うようにして前後方向に移動する。また、レールベース10の中間部長孔14に沿って前後方向に移動自在に係合保持された中間固定金具30を上レール20の前後位置に合わせて移動させる。この際、上レール20の後側段壁部26に中間固定金具30の第1挿通片部35の前面側下部を当接させることで、上レール20の止具孔24と中間固定金具30の雌ねじ孔34とが上下方向において整合し、当該中間固定金具30の位置決めがなされる。なお、中間固定金具30を中間部長孔14の手前側寄りに係合保持させておき、上レール20の前後位置の調整に伴って、当該中間固定金具30が上レール20の後側段壁部26によって後方に移動させられることで、当該中間固定金具30の位置決めがなされるようにしてもよい。
【0039】
なお、レールベース10の端部長孔13及び中間部長孔14の長径は、上レール20の前後位置の調整寸法や、中間固定金具30の形状に応じて設定される。つまり、本実施形態では、中間固定金具30のナット片部31の後側部に、第1挿通片部35及び第2挿通片部37を設けているので、上記前後位置の調整時に、これらが中間部長孔14内において前後方向に移動可能なように、中間部長孔14の長径を、端部長孔13の長径よりも後方側に延びるように大きく設定している。
【0040】
上記のように上レール20の前後位置を調整した後、各固定金具30,40の雌ねじ孔34,43にねじ等の止具9を螺合させ締め付ける。または、上記のように、上レール20の前後位置を調整する前に、各固定金具30,40の雌ねじ孔34,43にねじ等の止具9を仮締め(仮止め)しておき、前後位置を調整した後に、本締めするようにしてもよい。
止具9の締め付けにより、当該レール装置1の長手方向端部においては、図7(b)に示すように、レールベース10の取付片部11の端部12を端部固定金具40の係合連結片部42と上レール20の上面部22とによって挟むようにして上レール20が固定される。
また、止具9の締め付けにより、当該レール装置1の長手方向途中部位においては、図4及び図5(d)に示すように、レールベース10の取付片部11を中間固定金具30のナット片部31と上レール20の上面部22とによって挟むようにして上レール20が固定される。また、この止具9の締め付けにより、中間固定金具30のナット片部31の前端両角部に設けられた爪片32,32が、図4及び図5(c)、(d)に示すように、取付片部11の上面に食い込み、ナット片部31が取付片部11に対して強固に固定される。
【0041】
次いで、上レール20に長手方向に沿って移動自在に吊り下げられたランナー部材53,53に引戸7を連結固定し、引戸7を吊り込むようにしてもよい。また、カバー部材50をレール装置1に対して取り付けるようにしてもよい。本実施形態では、上記のように、上レール20に設けられた係止部21a,21aに幕板51の係止突起51a,51aを係止させることで、幕板51を容易に取り付けることができる。また、エンドキャップ52には、図示は省略するが、幕板51の端部が嵌め込まれる凹溝と、端部固定金具40に対して連結固定する連結固定部とが設けられており、これらに容易に取り付けが可能となっている。
【0042】
上記のように施工されたレール装置1の上レール20をメンテナンスや交換等のために、取り外す際には、まず、カバー部材50や引戸7を取り外す。
次いで、中間固定金具30及び端部固定金具40の各雌ねじ孔34,43に締め付けられた止具9を取り外し、レールベース10と上レール20との連結固定関係を解除する。この際、上レール20の両端部は、端部固定金具40によってレールベース10に保持されているので、上レール20がレールベース10から脱離、落下するようなことを防止でき、取り外し時における作業性を向上させることができる。
そして、上レール20に固定された端部固定金具40とレールベース10との係合状態を解除、つまり、上レール20をレールベース10に対して前方に向けて移動させることで、上レール20を容易に取り外すことができる。
一方、メンテナンス後の上レール20または交換後の新たな上レール20を、レールベース10に対して取り付ける際には、上記施工手順と略同様にしてなされる。
なお、上記施工手順並びに上レールの取り外し及び取り付け手順は一例であり、各部材、各部の機能を阻害しない限りにおいて、別手順でなされるようにしてもよい。
【0043】
以上のように、上記構成とされた本実施形態に係るレール装置1によれば、上レール20の前後方向に沿う位置を、上記調整寸法の範囲内において、任意の位置に言わば無段階で調整可能とすることができる。また、上レール20を取り付ける際の作業性を向上させることができる。
また、本実施形態では、上レール20の長手方向両端部にそれぞれ固定された一対の端部固定金具40,40によって、内壁2に固定されたレールベース10に対して上レール20を仮保持させることができる。また、このように仮保持させた状態で、比較的に長尺とされる上レール20の長手方向両端部及び長手方向途中部位の各固定金具30,40を用いて、レールベース10に対して上レール20を固定させることができる。
さらに、上レール20に固定された一対の端部固定金具40,40をレールベース10の各端部12,12に係合させ、前後方向にスライドさせることで、上レール20の前後方向に沿う位置調整を容易に行うことができる。
さらにまた、本実施形態では、中間固定金具30が、レールベース10の中間部長孔14に沿って移動自在に係合保持されている。従って、上記のように仮保持させた後、この中間固定金具30に対して止具9を螺合させる際に、中間固定金具30が中間部長孔14の形成された部位から脱離したり、移動したりするようなことを低減でき、作業性を向上させることができる。
【0044】
また、本実施形態では、中間固定金具30を、取付片部11の上面側に配置されるナット片部31と、中間部長孔14に挿通される第1挿通片部35と、取付片部11の下面に沿うように配置される抜止片部36とを備えた構造としている。従って、上レール20をレールベース10に対して取り付ける際に、中間固定金具30が移動し難く、作業性を向上させることができる。つまり、レールベース10の取付片部11の上面側に配置される中間固定金具30のナット片部31は、第1挿通片部35によって上レール20の長手方向に沿う移動が規制される。また、この中間固定金具30のナット片部31は、抜止片部36によって上下方向への移動が規制される。この結果、この中間固定金具30のナット片部31の下方側から挿通される止具9を、その雌ねじ孔34に螺合させ易く、作業性を向上させることができる。
さらに、本実施形態では、中間固定金具30の抜止片部を、第1挿通片部35の下端部からレールベース10の中間部長孔14の幅方向両側に突出するように形成された一対のものとしている。これにより、中間固定金具30のナット片部31の上下方向への移動を、より効果的に防止することができる。また、これら一対の抜止片部36,36によれば、ナット片部31の垂直面域における回動乃至は揺動を低減することができる。
【0045】
また、本実施形態では、上記したように、中間固定金具30に、ナット片部31の水平面域における揺動を規制する水平揺動規制部35,37を設けている。これにより、止具9をナット片部31の雌ねじ孔34に螺合させ、締め付ける際に、より作業性を向上させることができる。
さらに、本実施形態では、上記したように、中間固定金具30に、ナット片部31の上下方向への揺動を規制する上下揺動規制部36,38を設けている。これにより、中間固定金具30のナット片部31の雌ねじ孔34に止具9を螺合させる際に、より作業性を向上させることができる。つまり、ナット片部31の雌ねじ孔34に下方側から止具9を螺合させる際に、このナット片部31の浮き上がりを防止することができるので、作業性を極めて向上させることができる。
さらにまた、上下揺動規制部36,38によって、上下方向への揺動が規制される結果、当該中間固定金具30の前後方向に沿う移動も低減することができる。これにより、水平揺動規制部35,37を設けていることと相俟って、中間固定金具30がいずれの方向にも移動、揺動し難くなり、上レール20をメンテナンスや交換等のために取り外した後等を含み、上レール20を取り付ける際における作業性を、より向上させることができる。
【0046】
また、本実施形態では、中間固定金具30及び上レール20に、前後方向に沿う互いの位置合わせをし、かつ、これらに設けられた雌ねじ孔34と止具孔24とを整合させるための位置決め部35,26をそれぞれに設けている。従って、レールベース10に対して前後方向の位置調整がなされる上レール20と中間固定金具30との前後方向に沿う位置合わせを容易に行うことができ、より作業性を向上させることができる。
さらに、本実施形態では、第1挿通片部35及び第2挿通片部37が中間部長孔14内において、その幅方向に僅かに移動が可能となるように、これらと中間部長孔14の幅方向両内周縁部との間にクリアランスを設けている。これにより、上レール20の止具孔24と、中間固定金具30のナット片部31の雌ねじ孔34とが僅かに位置ずれした際にも、止具9を螺合させることができる。
【0047】
さらにまた、本実施形態では、中間固定金具30のナット片部31に、止具9の螺合によりレールベース10の取付片部11の上面に食い込む爪片32を設けている。これにより、止具9を締め付けた後は、この中間固定金具30の中間部長孔14に沿う前後方向への移動を防止することができる。従って、この中間固定金具30によってレールベース10に対して取り付けられた上レール20の前後方向に沿う移動を防止することができる。
【0048】
なお、レールベースの断面形状は、図例のようなものに限られず、固定片部と取付片部とを備えたものとすればよく、例えば、断面略L字状とされたものや、断面略逆L字状とされたものとしてもよい。さらには、取付対象を内壁ではなく、天井とした場合には、天井に固定される固定片部と、この固定片部に垂れ下がるように連成された垂下片部と、この垂下片部に連成された取付片部とによって前方に開口する断面略コ字状とされたものとしてもよい。
また、本実施形態では、レールベースを上レールと概ね同長さとされた長尺のものとした例を示しているが、比較的、短尺とされたものとしもよい。この場合は、レールベースを、上レールの長手方向に沿って間隔を空けて複数個、配設する態様としてもよい。
さらに、本実施形態では、レールベースに形成された中間部長孔を、前方に開口する切欠状の長孔とした例を示しているが、前方に開口していないものとしてもよい。この場合は、中間固定金具の形状にもよるが、抜止片部を中間部長孔の上下に挿通可能なように、中間部長孔の基端側等の適所に、大径部を設けるようにしてもよい。
【0049】
また、上レールは、図例のようにランナー部材を案内、支持する上吊式のものに限られず、下荷重式の建具の上端部または上端部に設けられた案内片やピボット等を受け入れるガイド凹溝を有したものとしてもよい。
さらに、中間固定金具及び上レールのそれぞれに設けた位置決め部としては、図例のような態様に限られず、長手方向と直交する方向に沿う互いの位置合わせをし、かつ、これらに設けられた雌ねじ孔と止具孔とを整合させるものとすればよい。例えば、上レールの上面部に段部を設けずに、後面部の上端部を位置決め部としてもよい。さらには、このような位置決め部を設けないようにしてもよい。
【0050】
また、上レールの長手方向両端部のそれぞれに固定される端部固定金具の固定態様としては、図例のようにねじ等の止具によって、上レールの端部に固定する態様に限られず、溶接や接着、かしめ固定等、どのような固定態様であってもよい。
さらに、端部固定金具による上レールとレールベースとの連結固定態様としては、端部固定金具の雌ねじ孔にねじ等の止具を螺合させる態様に限られない。例えば、係合連結片部の上方または上レールの下方からレールベースの端部長孔を介して止具の先端を上レールまたは端部固定金具に押圧させて、上レールとレールベースとを連結固定させる態様としてもよい。さらには、タッピンねじやドリルねじ等を、係合連結片部の上方または上レールの下方からレールベースを介して上レールまたは端部固定金具に捻じ込み、これらを連結固定する態様としてもよい。この場合は、端部固定金具の雌ねじ孔やレールベースの端部長孔、上レールの止具孔等を設けないようにしてもよい。
または、一対の端部固定金具をレールベースに対して止具によって固定しないようにしてもよい。つまり、上レールに固定された端部固定金具を、レールベースに仮保持させる仮保持手段としてのみ機能させるようにしてもよい。
さらには、一対の端部固定金具を設けずに、レール固定金具としての中間固定金具のみを設けるようにしてもよい。この場合は、適宜、中間固定金具を両端部近傍部位に設けるようにしてもよい。
【0051】
また、中間固定金具の爪部としては、平板状のナット片部の端縁両角部を折り曲げるようにして形成したものに限られず、ナット片部の下面から下方に突出させるように形成したものとしてもよい。さらには、このような爪部を設けないようにしてもよく、爪部に代えて、若しくは加えて、ナット片部の下面に滑り止め部等を設けるようにしてもよい。
さらに、中間固定金具の抜止片部や引掛片部としては、図例のように中間部長孔の幅方向両側に突出するように形成された一対のものに限られず、幅方向一方に突出するように形成されたものとしてもよい。この場合は、抜止片部と引掛片部とが前後方向において左右互い違いとなるように設けるようにしてもよい。
【0052】
さらにまた、中間固定金具の水平揺動規制部としては、図例のように、ナット片部の一側部(後側部)に連成された第1挿通片部と、抜止片部から立ち上がるように連成された第2挿通片部とによって構成する態様に限られない。例えば、ナット片部の一側部(後側部)から垂れ下がるように連成された第1挿通片部と、ナット片部の他側部(前側部)から垂れ下がるように連成された第2挿通片部とによって水平揺動規制部を構成するようにしてもよい。これによっても前後に対向するように設けられた第1挿通片部と第2挿通片部とによって水平揺動規制部を構成することができる。または、第2挿通片部を設けずに、第1挿通片部の幅、厚さ等を、水平面域における揺動を規制し得るように設定するようにしてもよい。さらには、このような水平揺動規制部を設けずに、ナット片部に連成され、中間部長孔に挿通される挿通片部(第1挿通片部に相当)のみを、長手方向(中間固定金具の幅方向)に沿う移動規制部として設けるようにしてもよい。
【0053】
また、中間固定金具の上下揺動規制部としては、図例のように、抜止片部から立ち上がるように設けられた第2挿通片部に連成され、取付片部の上面側に配置される引掛片部と抜止片部とによって構成する態様に限られない。例えば、ナット片部の他側部(前側部)から垂れ下がるように第2挿通片部を連成し、さらにこの第2挿通片部の下端部に取付片部の下面に沿うように配置される第2の抜止片部を連成するようにしてもよい。つまり、この第2の抜止片部と上記抜止片部とによってナット片部の上下揺動規制部を構成するようにしてもよい。この場合は、実質的にはこれらとナット片部とによって、ナット片部の上下方向への回動乃至は揺動が規制されることとなるが、このような態様によっても本実施形態と概ね同様の効果を奏する。または、これら引掛片部や第2の抜止片部等を設けずに、抜止片部の幅や形状等を、上下方向の揺動を規制し得るように設定するようにしてもよい。さらには、このような上下揺動規制部を設けずに、挿通片部(第1挿通片部に相当)に連成され、取付片部の下面に沿うように配置される上記抜止片部のみを、上下方向に沿う移動規制部として設けるようにしてもよい。
【0054】
また、本実施形態に係るレール装置によって案内する建具としては、片引き式の引戸に限られず、引き分け、引き違いの引戸を建具としてもよい。この場合は、上レールやレールベースの長さ、形状等を変形するようにすればよい。
さらに、本実施形態に係るレール装置によって案内する建具としては、引戸に限られず、複数枚の戸板を折り畳み自在に連結した折戸や、間仕切壁等を建具としてもよい。
さらにまた、出入り口としての開口を開閉する建具を案内し、壁面に沿って配設される態様に限られず、適宜の箇所に設けられる建具を案内するレール装置として、適宜の箇所に配設される態様としてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 レール装置
2 内壁(取付対象)
7 引戸(建具)
9 止具
10 レールベース
11 取付片部
14 中間部長孔(長孔)
15 固定片部
20 上レール
22 上レールの上面部
24 止具孔
26 上面部の後側段壁部(位置決め部)
30 中間固定金具(レール固定金具)
31 ナット片部
32 爪片(爪部)
34 雌ねじ孔
35 第1挿通片部(挿通片部、水平揺動規制部、位置決め部)
36 抜止片部(上下揺動規制部)
37 第2挿通片部(水平揺動規制部)
38 引掛片部(上下揺動規制部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建具を案内する上レールと、
前記上レールの長手方向と直交する方向を長径とした長孔が形成され、下面に前記上レールの上面が当接される取付片部と、取付対象に対して固定される固定片部とを有したレールベースと、
前記上レールの上面部に形成された止具孔及び前記レールベースの取付片部の長孔を介して挿通される止具に螺合する雌ねじ孔が形成され、前記取付片部の上面側に配置されるナット片部と、このナット片部に連成され、前記長孔に挿通される挿通片部と、この挿通片部に連成され、前記取付片部の下面に沿うように配置される抜止片部とを有したレール固定金具と、
を備えていることを特徴とするレール装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記レール固定金具のナット片部には、前記止具の螺合により前記レールベースの取付片部の上面に食い込む爪部が形成されていることを特徴とするレール装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記レール固定金具には、前記挿通片部とともに、前記ナット片部の水平面域における揺動を規制する水平揺動規制部が設けられていることを特徴とするレール装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項において、
前記レール固定金具には、前記抜止片部とともに、前記ナット片部の上下方向への揺動を規制する上下揺動規制部が設けられていることを特徴とするレール装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項において、
前記レール固定金具の抜止片部は、前記挿通片部の下端部から前記レールベースの長孔の幅方向両側に突出するように形成されていることを特徴とするレール装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項において、
前記レール固定金具及び前記上レールには、前記長手方向と直交する方向に沿う互いの位置合わせをし、かつ、これらに設けられた前記雌ねじ孔と前記止具孔とを整合させるための位置決め部がそれぞれに設けられていることを特徴とするレール装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−226065(P2011−226065A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−93795(P2010−93795)
【出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【出願人】(000155207)株式会社明工 (44)
【Fターム(参考)】