説明

ロッカーおよびロッカー用の符号錠装置

【課題】従来のロッカーの機構に大幅な変更を加えずに符号錠装置を組み込むことが可能なロッカーと、そのロッカーに使用される符号錠装置とを提供する。
【解決手段】扉2Aの解放端側の内側にハンドル操作による外力と復帰バネによるバネ力とを受けて正逆各方向へ回動する伝達軸3と、伝達軸3の正逆回動に連動してロッカー本体1のラッチ受け部11,12と係脱動作するラッチ31,32とが配設されている。扉2Aの内面の伝達軸3が露出している部分に符号錠装置4が組み込まれている。符号錠装置4は、解錠符号列の整列時は回動が許容され解錠符号列の不整列時は回動が規制される筒軸部を有し、筒軸部の一端に回動操作用の摘みが、他端に駆動板6が、それぞれ取り付けられる。駆動板6の先端部分には、筒軸部の正逆回動に伴って駆動板6が往復動作したとき伝達軸3と係脱する係合溝61が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、種々の物品の収納や保管に用いられる錠装置付きのロッカーに関し、特にこの発明は、例えば、扉が前後方向へ開閉することが可能なように扉の一側端縁がロッカー本体の前面の開口縁に支持されて成るロッカーと、複数個のダイヤルにより解錠のための符号列(以下「解錠符号列」という。)を揃えたり崩したりすることにより解錠や施錠が行われるロッカー用の符号錠装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、典型的なスチール製のロッカーは、図10,11に示すように、2枚の扉2A,2Bが前後方向へ開閉することが可能なように各扉2A,2Bの一側端縁がそれぞれロッカー本体1の前面の左右の開口縁に支持されている。右左の扉2A,2Bのうち、図中、左側の扉(以下「左扉」という。)2Bの解放端縁には突縁部(図示せず)が形成されており、右左の扉2A,2Bを閉じたとき、右側の扉(以下「右扉」という。)2Aの解放端縁が前記突縁部上に重なり、右左の扉2A,2Bが閉じた状態に保持されるようになっている。
【0003】
この種のロッカーとして、右扉2Aの解放端側の内側に、ハンドル21の操作による外力と復帰バネ(図示せず)によるバネ力とを受けて一定の角度範囲で正逆各方向へ回動する伝達軸3と、伝達軸3の正逆回動に連動してロッカー本体1の上下のラッチ受け部11,12と係脱動作する上下のラッチ31,32とを配設したものがある(例えば特許文献1参照)。なお、図中、20はハンドル21による外力を伝達軸3に伝達して回動させる動力伝達機構や後述する錠装置が組み込まれた機械ボックスである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−114708号公報
【0005】
右左の扉2A,2Bが閉じられた状態において、ハンドル21に手をかけて操作すると、伝達軸3が一方向へ一定角度だけ回動して上下の各ラッチ31,32がそれと一体に回動する。これにより各ラッチ31,32とロッカー本体1の各ラッチ受け部11,12との係合が外れて右扉2Aの開放が可能となり、さらに、左扉2Bの開放も可能となる。右扉2Aを開いた後、ハンドル21から手を離すと、伝達軸3が図示しない復帰バネによるバネ力を受けて前記と反対方向へ回動し、ラッチ31,32がそれと一体に回動して元の状態に復帰する。この復帰した状態で右扉2Aを閉めると、各ラッチ31,32はラッチ受け部11,12に突き当たって回動した後、復帰バネによるバネ力を受けて復帰動作するので、ラッチ受け部11,12と係合して拘束され、右左の扉2A,2Bが閉じた状態に保持される。
【0006】
この種のロッカーには、右左の扉2A,2Bが閉じられた状態のとき、右扉2Aの開動作を規制するための錠装置が組み込まれている。右扉2Aの前面には鍵孔9が設けてあり、この鍵孔9へ鍵を挿入して一方向へ回すと、錠装置が作動して施錠状態となり、反対方向へ鍵を回すと、錠装置が作動して解錠状態となる。施錠状態ではハンドル21の操作が規制され、伝達軸3を回動させることができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記した構成のロッカーでは、鍵を所持する者だけがロッカーの使用が可能であり、複数人がロッカーを使用する場合には、人数分だけ鍵を複製する必要がある。しかし、複製した鍵の本数が増すと、鍵を紛失する可能性も増し、信頼性が低下する。
そこで、鍵を必要とする錠装置に代えて、鍵を必要としない符号錠装置を用いることが考えられるが、右扉2Aの内側の機械ボックス20内の機構を符号錠装置に合わせて大幅に設計変更する必要があり、それに加えて、鍵を必要とする錠装置が組み込まれたタイプのロッカーと、鍵を必要としない符号錠装置が組み込まれたタイプのロッカーとの2種類の製品を製作し、製品毎に管理する必要がある。
【0008】
この発明は、上記の問題に着目してなされたもので、従来のロッカーの機構に大幅な変更を加えずに符号錠装置を組み込むことが可能なロッカーと、そのロッカーに使用される符号錠装置とを提供することを目的とする。
また、この発明が他に目的とするところは、鍵を必要とする錠装置が組み込まれた既成のロッカーに簡単に付加できる符号錠装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明によるロッカーは、開閉可能な扉の内側に、ハンドル操作による外力と復帰バネによるバネ力とを受けて正逆各方向へ回動する伝達軸と、伝達軸の正逆回動に連動してロッカー本体のラッチ受け部と係脱動作するラッチとが配設されている。扉の内面の前記伝達軸が露出している部分には複数個のダイヤルを扉の外面に臨ませた状態で符号錠装置が組み込まれている。前記符号錠装置は、解錠符号列が整列したとき所定の角度範囲の回動が許容され解錠符号列が整列していないとき前記回動が規制される筒軸部と、筒軸部の扉外への突出端部に取り付けられた回動操作用の摘みと、筒軸部の扉内への突出端部に取り付けられた駆動板とを有している。前記駆動板の先端部分には、筒軸部の正逆回動に伴って駆動板が往復動作したとき前記伝達軸と係脱して伝達軸の回動を規制しまたは規制を解除するための係合溝が形成されている。
【0010】
この発明が適用される典型的なロッカーは、前後方向へ開閉することが可能なように一側端縁がロッカー本体の前面の開口縁に支持された扉を有し、その扉の解放端側の内側に伝達軸とラッチとが配設されたものである。扉は1枚のものであってもよく、左右2枚のものであってもよい。また、この発明のロッカーは、ロッカー本体および扉がスチール製のものであってもよく、木製のものであってもよい。さらに、この発明は、扉が引出タイプのロッカーにも適用できる。
【0011】
上記した構成のロッカーにおいて、扉が閉じた状態にあるとき、ハンドルを操作すると、符号錠装置が解錠状態にありかつ回動操作用の摘みが解錠位置にあれば、伝達軸は一方向へ回動してラッチがそれと一体に回動する。これによりラッチは、ロッカー本体のラッチ受け部との係合が外れて拘束が解除され、扉を開くことができる。扉を開いた後、ハンドルから手を離すと、伝達軸が復帰バネによるバネ力を受けて前記と反対方向へ回動し、ラッチがそれと一体に回動して元の状態に復帰する。この状態で扉を閉めると、ラッチはラッチ受け部に突き当たって回動した後に復帰バネによるバネ力を受けて復帰動作するので、ラッチ受け部と係合して拘束され、扉が閉じた状態に保持される。
【0012】
扉が閉じた状態のとき、符号錠装置の解錠符号列が揃った状態にあれば、回動操作用の摘みを回すことが可能である。摘みを回して施錠位置にセットすると、駆動板の先端部分の係合溝と伝達軸とが係合した状態となり、伝達軸の回動が規制される。この状態でハンドルを操作しても、伝達軸の回動が規制されているので、ラッチは回動せず、ロッカー本体のラッチ受け部と係合して拘束されたままであり、扉が閉じた状態に保持される。次にダイヤル操作により解錠符号列を崩すと、符号錠装置は施錠状態となり、摘みを回して解錠位置にセットすることができない。
【0013】
扉を開く場合は、ダイヤル操作により解錠符号列を揃えることで符号錠装置は解錠状態となり、摘みを回して解錠位置にセットすることができる。摘みを解錠位置にセットすると、駆動板の先端部分の係合溝と伝達軸との係合が外れた状態となり、伝達軸の回動規制が解除される。この状態でハンドル操作すると、伝達軸が回動してラッチがそれと一体に回動し、これによりラッチとロッカー本体のラッチ受け部との係合が外れるので、扉を開くことができる。
【0014】
この発明が適用される符号錠装置は、開閉可能な扉の内側に、ハンドル操作による外力と復帰バネによるバネ力とを受けて正逆各方向へ回動する伝達軸と、伝達軸の正逆回動に連動してロッカー本体のラッチ受け部と係脱動作するラッチとが配設されて成るロッカー、例えば、扉が前後方向へ開閉することが可能なように扉の一側端縁がロッカー本体の前面の開口縁に支持されたロッカーに組み込まれるものである。
この発明による符号錠装置は、解錠符号列が整列したとき所定の角度範囲の回動が許容され解錠符号列が整列していないとき前記回動が規制される筒軸部と、筒軸部の一端部に取り付けられた回動操作用の摘みと、筒軸部の他端部に取り付けられた駆動板とを有し、前記駆動板の先端部分には、筒軸部の正逆回動に伴って駆動板が往復動作したとき前記伝達軸と係脱可能な係合溝が形成されている。
【0015】
上記した構成の符号錠装置を、駆動板の往復動作により駆動板の係合溝と伝達軸とが係脱する位置に、複数個のダイヤルを扉の外面に臨ませた状態にして扉に組み付ける。
【0016】
この符号錠装置では、解錠符号列が揃った状態のとき、回動操作用の摘みを正逆いずれの方向にも回すことが可能である。摘みを施錠位置にセットすると、駆動板の先端部分の係合溝と伝達軸とが係合した状態となり、伝達軸の回動が規制される。この状態でハンドルを操作しても、伝達軸の回動が規制されているので、ラッチは回動せず、ロッカー本体のラッチ受け部と係合して拘束されたままであり、扉が閉じた状態に保持される。この状態でダイヤル操作により解錠符号列を崩すと、符号錠装置は施錠状態となり、摘みを回して解錠位置にセットすることができない。
【0017】
ダイヤル操作により解錠符号列を揃えると、符号錠装置は解錠状態となり、摘みを回して解錠位置にセットすることができる。摘みを解錠位置にセットすると、駆動板の先端部分の係合溝と伝達軸との係合が外れた状態となり、伝達軸の回動規制が解除される。この状態でハンドル操作すると、伝達軸が回動してラッチがそれと一体に回動し、これによりラッチはロッカー本体のラッチ受け部との係合が外れて拘束が解除され、扉を開くことができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明によると、従来のロッカーの機構に大幅な変更を加えずに符号錠装置を組み込むことができ、また、既成のロッカーに符号錠装置を簡単に付加することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の一実施例であるロッカーの外観を示す斜視図である。
【図2】図1の実施例の一方の扉を開いた状態を示す斜視図である。
【図3】ラッチがラッチ受け部と係合した状態を示す断面図である。
【図4】ラッチが開口より抜け出た状態を示す断面図である。
【図5】ラッチとラッチ受け部との係脱動作を示す断面図である。
【図6】扉に組み込まれた符号錠装置を拡大して示す背面図である。
【図7】図6の符号錠装置の正面図である。
【図8】図6の符号錠装置の側面図である。
【図9】駆動板の係合溝と伝達軸とが係合した状態を示す断面図である。
【図10】従来のロッカーの外観を示す斜視図である。
【図11】従来のロッカーの一方の扉を開いた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1はこの発明の一実施例であるスチール製のロッカーの外観を示している。
図示例のロッカーは、前面が開口したボックス形状のロッカー本体1と、ロッカー本体1の前面の開口部を塞ぐ開閉可能な右左の扉2A,2Bとで構成されている。各扉2A,2Bは、前後方向へ開閉することが可能なように、一側端縁がロッカー本体1の前面の両側の開口縁に枢支具22A,23A、22B,23Bによりそれぞれ支持されている。
【0021】
右左の扉2A,2Bのうち、左扉2Bの解放端縁には一定幅の突縁部24が高さ全体にわたって形成されている。左扉2Bを閉じた後、右扉2Aを閉じたとき、右扉2Aの解放端縁が左扉2Bの突縁部24上に重なるので、右左の扉2A,2Bが閉じた状態に保持される。右扉2Aの前面の解放端側には、高さ中央部に開閉操作のためのハンドル21が、その上に後述する符号錠装置4が、それぞれ配置されている。
【0022】
右扉2Aの解放端側の内側には、図2に示すように、高さ中央部の機械ボックス20を上下に貫通するように伝達軸3が配設されている。なお、伝達軸3はほぼ全長が露出している。伝達軸3は、一定の角度範囲で正逆各方向へ回動するように、上下端部が右扉2Aの解放端縁の上下各位置に取り付けられた軸受33,34により回動自由に支持されている。この実施例の伝達軸3は、軸方向と直交する断面が正方形状の角軸により構成されているが、符号錠装置4の後述する駆動板6の係合溝61が伝達軸3に係合したときに伝達軸3の回動が規制されるものであれば、断面形状が正方形状のものに限らず、六角形などの多角形状や楕円形状のものであってもよい。
【0023】
機械ボックス20の内部には、図示していないが、ハンドル21の操作による外力を伝達軸3に伝達して伝達軸3を一方向へ回動させる動力伝達機構と、伝達軸3にバネ力を作用させてハンドル21による外力が解除されたときに伝達軸3を反対方向へ回動させて復帰動作させる復帰バネとが組み込まれている。
【0024】
伝達軸3の上端部と下端部には、伝達軸3の正逆回動に連動して一体に回動する合成樹脂製のラッチ31,32が取り付けられている。上下の各ラッチ31,32は、図3〜図5に示すように、その先端部に傾斜し彎曲するカム面36と鈎状部35とが形成されたものである。鈎状部35は、右扉2Aが閉じた状態のとき、ロッカー本体1の上板部13および底板部14に形成されたラッチ受け部11,12の内面に係合する。カム面36は、右扉2Aを開いた状態から閉じるとき、ラッチ受け部11,12の外面に突き当たって押圧されるもので、その押圧力を受けてラッチ31,32が回動する。
【0025】
図示例の各ラッチ受け部11,12は、上板部13および底板部14に各ラッチ31,32の挿脱が可能な大きさの矩形状の開口15,16をそれぞれ開設することにより形成されており、各開口15,16の一側縁がラッチ受け部11,12を構成している。
【0026】
図3は、ラッチ31,32の鈎状部35がラッチ受け部11,12の内側に係合した状態、すなわち、右扉2Aが閉じた状態を示しており、この係合により各ラッチ31,32は拘束され、右扉2Aは閉じた状態に保持される。
図4は、ハンドル21の押操作によりラッチ31,32の鈎状部35とラッチ受け部11,12との係合が外れたときの状態を示しており、各ラッチ31,32は拘束が解除され、右扉2Aを開放することが可能である。
図5は、ハンドル21を押操作したまま右扉2Aを開いたときの状態を示しており、ラッチ31,32は開口15,16を通過して抜け出ている。なお、図5の一点鎖線は、ハンドル21の押操作を解除して復帰バネによるバネ力でラッチ31,32が復帰動作したときの状態を示している。
【0027】
前記符号錠装置4は、右扉2Aの内面の伝達軸3が露出している部分の近傍に、複数個のダイヤル41と回動操作用の摘み42を扉2Aの外面に臨ませた状態で組み付けられている。
符号錠装置4は、図6〜図8に示すように、箱状ケース40の内部に符号錠機構の構成部材が組み込まれたもので、前面板43の適所に形成された窓孔部分に4個のダイヤル41と回動操作用の摘み42とを臨ませている。4個のダイヤル41は4桁の解錠符号列を揃えたり崩したりして解錠状態および施錠状態を形成するためのものである。摘み42は所定の角度範囲θで回動するもので、その角度範囲θの一端が施錠位置X、他端が解錠位置Yになっている。
【0028】
前記符号錠機構は公知であり、ここでは詳細な説明は省略するが、解錠符号列が整列したとき前記の角度範囲θの回動が許容され解錠符号列が整列していないとき前記回動が規制される筒軸部5を有している。筒軸部5は一端が前面板43より突出し、その突出端部に前記の摘み42が取り付けられている。筒軸部5の他端は箱状ケース42の底より突出し、その突出端に駆動板6が取り付けられている。
【0029】
前記駆動板6は、金属板を屈曲して形成されており、アーム状の本体部62と矩形状の作動部63とから成る。本体部62は基端部が筒軸部5に取り付けられている。本体部62の先端部分の一側縁には本体部62と直角をなす作動部63が一体形成されている。
駆動板6は筒軸部5の正逆回動に伴って往復動して起伏動作する。作動部63の先端部には、駆動板6が倒れたとき(図6,7において一点鎖線で示す)、伝達軸3と係合して伝達軸3の回動を規制する係合溝61が形成されている。駆動板6が起立すると、係合溝61と伝達軸3との係合が外れ、伝達軸3の回動規制が解除される。
【0030】
係合溝61は、作動部63の先端縁を切り欠いて形成されている。係合溝61の溝底部61aは矩形状をなし、図9に示すように、溝底部61aの幅dは伝達軸3の各面の幅tとほぼ一致し、深さhは伝達軸3の各面の幅tより大きな値に設定されている。このように設定することで伝達軸3と係合溝61とがしっかりと係合する。
係合溝61の溝開口部61bは外広がりに形成され、溝開口部6の開口幅sは伝達軸3の各面の幅tより大きな値に設定されている。このように設定することで伝達軸3が係合溝61に入り易くなる。
【0031】
上記した構成のロッカーにおいて、左右の扉2A,2Bが閉じた状態にあり(図1、3図参照)、加えて、符号錠装置4は解錠符号列が揃った解錠状態にあり、かつ回動操作用の摘み42が解錠位置にあって駆動板6の係合溝61と伝達軸3との係合が外れた状態にあるとき(図6〜図8参照)、ハンドル21に手を当てて押操作すると、伝達軸3は一方向へ回動して上下の各ラッチ31,32がそれと一体に回動する(図3,4参照)。これにより各ラッチ31,32は、ロッカー本体1の対応するラッチ受け部11,12との係合が外れて拘束が解除され、右扉2Aを開くことができ、続いて、左扉2Bを開くことができる(図5参照)。
【0032】
右扉2Aを開いた後、ハンドル21から手を離して押圧を解除すると、伝達軸3が図示しない復帰バネによるバネ力を受けて前記と反対方向へ回動し、各ラッチ31,32がそれと一体に回動して元の状態に復帰する(図5において一点鎖線で示す状態)。この状態で右扉2Aを閉めると、各ラッチ31,32のカム面36がラッチ受け部11,12に突き当たって押圧されるので、その押圧力でラッチ31,32が回動する。ラッチ31,32は、鈎状部35が開口15,16を通過したとき、復帰バネによるバネ力を受けて復帰動作し、これにより、ラッチ受け部11,12と係合して拘束され、右扉2Aおよび左扉2Bが閉じた状態に保持される。
【0033】
右左の扉2A,2Bが閉じた状態において、符号錠装置4の解錠符号列が揃った状態にあるときは、回動操作用の摘み42は施錠位置Xと解錠位置Yとの間を正逆いずれの方向にも回すことが可能である。摘み42を回して施錠位置Xにセットすると、駆動板6が倒れて作動部63の係合溝61と伝達軸3とが係合した状態となり(図6,7において一点鎖線で示す状態および図9に示す状態)、伝達軸3の回動が規制される。この状態でハンドル21を操作しても、伝達軸3の回動が規制されているので、各ラッチ31,32は回動せず、ロッカー本体1のラッチ受け部11,12と係合して拘束されたままであり、扉2A,2Bが閉じた状態に保持される。次に、4個のダイヤル41を操作して解錠符号列を崩すと、符号錠装置4は施錠状態となり、摘み42を施錠位置Xから解錠位置Yに回すことができない。
【0034】
扉2A,2Bを開く場合は、4個のダイヤル41を操作して解錠符号列を揃えることで符号錠装置4は解錠状態となり、摘み42を施錠位置Xから解錠位置Yまで回して解錠位置Yにセットすることができる。摘み42を解錠位置Yにセットすると、駆動板6の作動部63の係合溝61と伝達軸3との係合が外れた状態となり、伝達軸3の回動規制が解除される。この状態でハンドル21を操作すると、伝達軸3が回動して各ラッチ31,32がそれと一体に回動し、これにより各ラッチ31,32とロッカー本体1の対応するラッチ受け部11,12との係合が外れるので、右扉2Aを開くことができる。
【0035】
なお、上記の実施例は、鍵を必要とする錠装置に代えて符号錠装置4を組み込んだものであるが、鍵を必要とする錠装置に加えて符号錠装置4を組み込むこともできる。そのような実施態様によれば、錠装置と符号錠装置4とのいずれかを選択的に用いることもでき、また、二重ロックとして両方を用いることもできる。
【符号の説明】
【0036】
1 ロッカー本体
2A,2B 扉
3 伝達軸
4 符号錠装置
5 筒軸部
6 駆動板
11,12 ラッチ受け部
20 機械ボックス
21 ハンドル
31,32 ラッチ
41 ダイヤル
42 摘み
61 係合溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉可能な扉の内側に、ハンドル操作による外力と復帰バネによるバネ力とを受けて正逆各方向へ回動する伝達軸と、伝達軸の正逆回動に連動してロッカー本体のラッチ受け部と係脱動作するラッチとが配設されて成るロッカーにおいて、
扉の内面の前記伝達軸が露出している部分に複数個のダイヤルを扉の外面に臨ませた状態で符号錠装置が組み込まれて成り、前記符号錠装置は、解錠符号列が整列したとき所定の角度範囲の回動が許容され解錠符号列が整列していないとき前記回動が規制される筒軸部と、筒軸部の扉外への突出端部に取り付けられた回動操作用の摘みと、筒軸部の扉内への突出端部に取り付けられた駆動板とを有しており、前記駆動板の先端部分には、筒軸部の正逆回動に伴って駆動板が往復動作したとき前記伝達軸と係脱して伝達軸の回動を規制しまたは規制を解除するための係合溝が形成されて成るロッカー。
【請求項2】
開閉可能な扉の内側に、ハンドル操作による外力と復帰バネによるバネ力とを受けて正逆各方向へ回動する伝達軸と、伝達軸の正逆回動に連動してロッカー本体のラッチ受け部と係脱動作するラッチとが配設されて成るロッカーに組み込まれる符号錠装置であって、解錠符号列が整列したとき所定の角度範囲の回動が許容され解錠符号列が整列していないとき前記回動が規制される筒軸部と、筒軸部の一端部に取り付けられた回動操作用の摘みと、筒軸部の他端部に取り付けられた駆動板とを有し、前記駆動板の先端部分には、筒軸部の正逆回動に伴って駆動板が往復動作したとき前記伝達軸と係脱可能な係合溝が形成されて成るロッカー用の符号錠装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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