ロッキング椅子
【課題】ロッキングに対する弾性手段としてゴムを使用して椅子において、ゴムの耐久性を確保しつつ背もたれの後傾角度を大きく取ることを可能ならしめる。
【手段】椅子は、背支持装置を構成する揺動部材18とバックフレームとを有している。揺動部材18の後傾動は、受け部材41に配置した左右の固定式ゴム40と、操作ユニットのスライダーに装着した可動式ゴムとで支持される。受け部材41はベースに取付けられている。揺動部材18の下面には押圧部材38が固定されており、固定式ゴム40には揺動部材18によって初期荷重(プリテンション)が付与されている。固定式ゴム40及び可動式ゴム側面視扇形(又は台形状)であり、側面視で上面40aの延長線と下面40bの延長線とが第1軸19の軸心かその近傍を通っている。ゴム40は扇形であることにより、ロッキングに際して全体にわたって均等に圧縮される。
【手段】椅子は、背支持装置を構成する揺動部材18とバックフレームとを有している。揺動部材18の後傾動は、受け部材41に配置した左右の固定式ゴム40と、操作ユニットのスライダーに装着した可動式ゴムとで支持される。受け部材41はベースに取付けられている。揺動部材18の下面には押圧部材38が固定されており、固定式ゴム40には揺動部材18によって初期荷重(プリテンション)が付与されている。固定式ゴム40及び可動式ゴム側面視扇形(又は台形状)であり、側面視で上面40aの延長線と下面40bの延長線とが第1軸19の軸心かその近傍を通っている。ゴム40は扇形であることにより、ロッキングに際して全体にわたって均等に圧縮される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、ロッキングに抵抗を付与する弾性手段としてゴムを使用している椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ロッキング椅子において、ロッキングに対する抵抗を付与する弾性手段としてゴムを使用することは、例えば特許文献1に記載されている。この特許文献1では座と背もたれとが一体に連結されており、脚の上端に固定したベースと座との間に直方体状のゴムを配置している。当然ながら、ゴムは背もたれ及び座の回動支点から相当に離れた部位(後ろ)に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公昭43−13628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さて、事務用回転椅子では弾性手段としてコイルスプリングやトーションバーが多用されており、ゴムはあまり使用されていない。これは、特許文献1のようにゴムを背もたれの回動支点から相当に離れた部位に配置すると、背もたれの後傾角度をあまり大きく取ることができないからに他ならない。
【0005】
他方、近年、弾性や耐久性に優れたゴムが開発されており、本願発明者たちは、このような優れたゴムを使用して大きなロッキング角度を得ることを着想した。本願発明は、まず、このようにロッキングに対する弾性手段としてゴムを使用しつつ、大きなロッキング角度を得ることのできる椅子を提供せんとするものである。
【0006】
更に本願発明は,ロッキングに対する弾性手段としてゴムを使用した椅子において、背もたれを大きく傾動させることを可能ならしめつつ、ゴムの耐久性も確保することも目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、脚の上端に設けたベースと、前記ベースの上方に配置した座と、前記ベースに後傾動自在に連結した背支持装置と、前記背支持装置に設けた背もたれと、前記背支持装置の後傾動に抵抗を付与するゴムとを有しており、前記ゴムはロッキングに際して相対的に回動する第1部材と第2部材とで挟圧されて圧縮するようになっている、という構成において、前記ゴムを、前記第1部材と第2部材との回動軸心に近づけて設けている。請求項2の発明は、請求項1において、前記ゴムを均一に圧縮させる加圧均等化手段を講じている。
【0008】
他方、請求項3の発明は、請求項1又は2において、脚の上端に設けたベースと、前記ベースの上方に配置した座と、前記ベースに後傾動自在に連結した背支持装置と、前記背支持装置に設けた背もたれと、前記背支持装置の後傾動に抵抗を付与するゴムとを有しており、前記ゴムを、前記背支持装置の回動支点の後ろ側に配置してこれを背支持装置とベースとで挟圧するようになっている、という椅子であって、前記ゴムは、前記加圧均等化手段として、側面視で背支持装置の回動支点に近い側が薄くて遠い側が厚い扇形又は台形状に形成されている。ベースと背支持装置とはロッキングに際して相対回動する部材(第1部材と第2部材)の典型である。ゴムは他の部材でで荷重を掛けことも可能である。
【0009】
請求項4の発明は、請求項3において、前記ゴムは、側面視で、上面の延長線と下面の延長線とが背支持装置の回動支点又はその近傍を通るように設定されている。更に請求項5の発明は、請求項1〜4のうちのいずれかにおいて、ロッキングに際して座が上昇しつつ後退するようになっており、このため、ロッキング時には着座者の体重の一部が背もたれを戻すように作用している。
【0010】
なお、本願発明における「ゴム」とは荷重が掛かると圧縮変形する弾性体という意味であり、合成ゴムや天然ゴムなどの他、エラストマーのような合成樹脂系のものも範疇に含まれる。単一構造でもよいし複合(積層)構造でもよい。
【発明の効果】
【0011】
さて、背支持装置がある角度だけ回動する場合、背支持装置とベースとの上下間隔は背支持装置の回動支点に近づくほど小さくなる。従って、ゴムが押し潰される量は背支持装置の回動支点に近づくほど小さくなる。そして、本願発明ではゴムは第1部材と第2部材とが相対回動する軸心に近づけているため、コンパクトであっても大きなロッキング角度を得るこができる。これにより、椅子の構造の簡素化に貢献できる。
【0012】
さて、特許文献1のような単なる直方体状をゴムが回動支点にごく近づけて配置すると、ゴムのうち背支持装置の回動支点に近い部分が強く圧縮されて遠い部分は圧縮力が弱くなっており、このため、荷重の掛かり方が不均一になってゴムの耐久性が低下したり、背もたれへのもたれ掛かりの当初は急速に後傾してそれから後傾の度合いが遅くなるという不自然なロッキング態様が生じたりする不具合がある。また、ゴムが座屈しやすいため椅子を使用しているうちに弾性力が低下してしまうことも懸念される。
【0013】
これに対して請求項2の構成を採用すると、ゴムのへたりを抑制して耐久性を格段に向上できると共に、ロッキングの当初から終わりまで安定した反力を付与できて、もたれ心地にも優れたものとできる。請求項3の発明によると、ゴムは側面視で背支持装置の回動支点に近い部分が厚さが小さい扇形又は台形状になっているため、ゴムを背支持装置の回動支点にごく近づけても全体にわたって略均等に圧縮作用を受ける。従って、ゴムを扇形や台形に形成するのは加圧均等化手段の一例である。
【0014】
ゴムを扇形や台形に形成すると、ゴムを背支持装置の回動支点にできるだけ近づけつつ、ゴムを均等に圧縮させることができるのであり、その結果、ゴムの部分的なへたりを防止して耐久性を向上できると共に、背もたれを後傾初期から後傾終期まで自然な状態で後傾させることができるのである。
【0015】
請求項3の構成では、ロッキングに際して着座者の体重の一部を背もたれを戻そうと作用しているため、特許文献1のような椅子に比べてゴムに対して作用するモーメントが小さくなっている。このため、ゴムの耐久性向上に一層貢献している。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(A)は実施形態に係る椅子の部分斜視図、(B)は側面視図である。
【図2】分離斜視図である。
【図3】分離斜視図である。
【図4】下方から見た分離図である。
【図5】分離斜視図である。
【図6】(A)は可動式ゴムの部分的な分離斜視図、(B)はバックフレームの取付け構造を示すための分離斜視図である。
【図7】要部の分離斜視図である。
【図8】(A)は部材の分離斜視図、(B)は受け部材を裏返した状態での斜視図、(C)はベースの一部破断斜視図である。
【図9】分離斜視図である。
【図10】固定式ゴムの箇所での側断面図である。
【図11】(A)はロック体の箇所での側断面図、(B)は可動式ゴムを弱位置に配置した状態での側断面図である。
【図12】(A)は分離平面図、(B)は操作機構部の斜視図である。
【図13】(A)は背面カバーの斜視図、(B)は操作ユニットの分離斜視図、(C)は操作機構部の部分斜視図である。
【図14】別例図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、事務用等に使用される回転椅子に適用している。以下の説明及び請求項で方向を特定するため「前後」「左右」の文言を使用しているが、この文言は、椅子に普通の姿勢で着座した人が向いた方向を前として定義している。正面視は着座者と相対向した方向から見たものである。
【0018】
(1).椅子の概要
図1に示すように、椅子は、脚支柱(ガスシリンダ)1のみを表示した脚装置、脚支柱1の上端に固定したベース2、ベース2の上方に配置した座体3、着座した人がもたれ掛かり得る背もたれ4を有している。なお、ベース2にはオプション品として肘掛け装置を取り付けることができる。図2から理解できるように、座体3は合成樹脂製の座板(座インナーシェル)5とその上面に重ね配置したクッション材6とを有しており、クッション材6にはクロス等の表皮材が張られている。
【0019】
図2に示すように、背もたれ4は、合成樹脂製のバックフレーム10とその前面に固定した合成樹脂製の背板11とを備えている。背板11は横長の穴が多段に空いた横縞状に形態になっており、これにメッシュ等の表皮材12が張られている。背板11の前面にクッション材を配置することもある。この場合は、クッション材は袋状の表皮材で覆われる。バックフレーム10は、上下長手の左右サイドフレーム13と、その上端を繋ぐアッパーフレーム14と、左右サイドフレーム13の下端を繋ぐロアフレーム15とを有しており、左右サイドフレーム13とアッパーフレーム14とに背板11が固定されている。
【0020】
バックフレーム10はサイドフレーム13から一連に延びる左右の前向きアーム部16を有しており、左右の前向きアーム部16には上板17aと左右側板17bとを有するジョイント部17が一体に繋がっている。ベース2の後部には金属板製の揺動部材18が左右長手の第1軸19によって傾動自在に連結されており、揺動部材18にバックフレーム10のジョイント部17がビスで固定されている。第1軸19の左右端部は揺動部材18の外側に露出している。
【0021】
従って、本実形態では、揺動部材18及びバックフレーム10とで背支持装置が構成されており、背もたれ4は第1軸19を中心にして傾動する(第1軸19が背もたれ4の枢支軸になっている。)。なお、揺動部材18とバックフレーム10とを一体に構成したり、前向きアーム部16をサイドフレーム13とは別部材にしたり、揺動部材18と前向きアーム16とを一体化したりすることも可能である。
【0022】
揺動部材18には側面視傾斜姿勢で前方及び上方に延びるサポートアーム18aが一体に設けられており、左右サポートアーム18aの先端に、リア係合ピン20を挿通している。そして、例えば図5に示すように、座受け体7の下面にはリア係合ピン20に後ろから引っ掛かり嵌合する左右一対のリア係合爪21が一体成形されている。このため、背もたれ4が後傾すると座受け体7及び座体3は後ろに引っ張られる。
【0023】
他方、例えば図5に示すように、ベース2は金属板製であって、左右の側板2aを有する上向き開口の箱状の形態を成しており、その前部に左右横長の第2軸22を取り付けて、この第2軸22に単一構造のフロントリンク23を回動自在に連結し、かつ、フロントリンク23の上端は座受け体7に形成した上雌形嵌合部24に回動可能に嵌入している。従って、着座した人が背もたれ4に凭れ掛かると、揺動部材18で座受け体7が後ろに引っ張られ、これに伴ってフロントリンクが回動して座部8は上昇しながら後退する。
【0024】
図5に示すように、ベース2には上から上カバー25が装着されており、リア係合ピン20は上カバー25で支持されている。また、ベース2は下方から下カバー26で覆われている。ベース2の後部には、操作機構部27と背面カバー28とを有する制御ユニット29が配置されている。この制御ユニット29により、ロッキングに対する抵抗の切り換えと、背もたれ4の後傾の規制とが行われる。
【0025】
(2).ベース2と揺動部材18とバックフレーム10との関係
以下、各部の詳細を説明する。まず、ベース2と揺動部材18とバックフレーム10との関係を説明する。既述のとおりベース2は上向きに開口した箱型の形態であり、例えば図5に示すように、ベース2の内部のうち略中央部に側断面下向き開口コの字型の第1インナーブラケット31を溶接しており、このインナーブラケット31とベース2の底板とにブッシュ32を固着し、このブッシュ32に脚支柱1を下方から嵌着している。
【0026】
第1インナーブラケット31には上向き開口コの字形の第2インナーブラケット33が固着されており、両インナーブラケット31,33で囲われた空間に肘掛け装置の基端部が横方向から挿入されるようになっている。第2インナーブラケット33の左右両端部はベース2の外側に露出していてその先端に下向き片33aを形成しており、下向き片33aに肘掛け装置の基端部がビスで締結される。
【0027】
揺動部材18は上板と左右側板18bとを有する基本形態であり、左右側板18bでベース2を外側から囲い、ベース2の左右側板2aと揺動部材18の左右側板18bとに第1軸19が貫通している。第1軸19はブッシュを介してベース2に取り付けている。揺動部材18のサポートアーム18aは側板18bから延びている。
【0028】
揺動部材18における左右側板18bの後部には、左右長手のフレーム受け軸34が挿通している。フレーム受け軸34の左右両端部は揺動部材18の外側に露出している。他方、例えば図4に示すように、バックフレーム10の前向きアーム部16はある程度の左右巾を有する厚肉状になっており、左右前向きアーム部16の先端には第1軸19の露出端部に嵌入する前向き開口溝35が形成されており、更に、前向き開口溝35よりも後ろの部位には、フレーム受け軸34の先端部に上方から嵌まる下向き開口溝36が形成されている。
【0029】
図6(B)から容易に理解できるように、バックフレーム10のジョイント部17は揺動部材18に上から重なっており、更に、揺動部材18の下面には樹脂製の押圧部材38が重なっている。そして、ジョイント部17の上面板17aと揺動部材18の上面板とをビス37で締結している。従って、バックフレーム10と揺動部材18とは一体に回動する。
【0030】
ロッキングするとリア係合ピン20でリア係合爪21が後ろに引っ張られるが、ロッキングの戻り時にリア係合ピン20で座受け体7を前に押さねばならない。そこで、図示していないが、座受け体7に、リア係合ピン20を前後相対動不能に保持するためのストッパーを上からの嵌め込みで装着している。
【0031】
(3).固定式ゴムの配置態様
例えば図10に示すように、押圧部材38とベース2との間には左右一対の固定式ゴム40を配置しており、固定式ゴム40はベース2に取り付けた受け部材41に装着されている。非ロッキング状態でも固定式ゴム40は押圧部材38で圧縮されている。すなわち、固定式ゴム40には予備荷重(プリテンション)が掛かっている。固定式ゴム40や受け部材41は、揺動部材18の回動支点よりも後ろに配置されている。
【0032】
また、固定式ゴム40は、第1軸19に近づけた状態で配置しており、このた固定式ゴム40の圧縮によって揺動部材18を大きな角度(例えば15〜20°)で後傾させることができる。具体的には、第1軸19と固定式ゴム40との間には、第1軸19の半径寸法より小さい寸法しか空いていない。
【0033】
固定式ゴム40を第1軸19にどれだけ近づけるかは、必要とする後傾角度(ストローク)と固定式ゴム40の高さ寸法との関係で決まる。固定式ゴム40としてできるだけ小さいものを使用する場合は、固定式ゴム40は第1支軸19の外周面にできるだけ近づける必要がある。一般には、第1軸19と固定式ゴム40との間隔は数mmが好ましく、多くとも十数mmに納めるのがよいと言える。回動軸心からの間隔としては、十数mm〜2数mmが好適であると言える。
【0034】
固定式ゴム40は側面視扇形のブロック形状を成しており、図10に点線で示すように、上面40aと下面40bとが第1軸19の軸心の延長線に位置するように配置している。このため、固定式ゴム40の各部位は押圧部材38によって均等に圧縮される。換言すると、プリテンション及びロッキングに伴う荷重は固定式ゴム40の各部位に均等に作用する。このため、片当たりを無くして耐久性を向上できる。
【0035】
受け部材41は樹脂製であり、例えば図9に示すように、左右の固定式ゴム40が装着される左右の固定式ゴムマウント部42を有している。押圧部材38の下面にも固定式ゴム40がずれ不能に嵌まるゴムマウント部42を設けている。
【0036】
左右の固定式ゴムマウント部42の間には、可動式ゴム43(詳細は後述する)を受けてロッキングに対する抵抗を強状態にするための可動式ゴム受け台44と、ロッキングしても可動式ゴム43が圧縮されないように逃がすための可動式ゴム逃がし部45とが左右に並んだ状態で形成されている。
【0037】
図10に示すようにベース2の底板は概ね水平姿勢になっている一方、固定式ゴム40は側面視で第1軸19の軸心を通る水平面を挟んで略上下対称形状になっている。このため固定式ゴムマウント部43は水平面に対して後傾した姿勢に傾斜している。
【0038】
また、固定式ゴムマウント部42には、固定式ゴム40を後ろ向きずれ不能に保持するためのリアリブ42aと、左右ずれ不能に保持するためのサイドリブ42bと。上向きに突設されている。可動式ゴム受け台43は固定式ゴムマウント部42よりも高くなっており、このため、可動式ゴム受け台43と隣り合った左側の固定式ゴム40は、可動式ゴム受け台43が固定式ゴム40の内向き移動を阻止するストッパーの役割を果たしている。従って、左側の固定式ゴム40ではサイドリブ42bは一つしか存在していない。他方、右側の固定式ゴムマウント部42ではサイドリブ42bは左右2つ存在している。
【0039】
例えば図9や図10に示すように、押圧部材38と固定式ゴム40との間、及び、固定式ゴム40と固定式ゴムマウント部42との間には、左右横長で断面半円条の突条46を設けている。他方、押圧部材38及び受け部材41のゴムマウント部42には、突条46が嵌まる受け溝47を形成している。突条46を一体化することに代えて、ピンを介在させてもよい。
【0040】
既述のとおり可動式ゴム受け台44は固定式ゴムマウント部42よりも高い高さである一方、図11の(A)と(B)との比較から理解できるように、可動式ゴム逃がし部45は固定式ゴムマウント部42の上面よりも低く(深く)なっている。可動式ゴム逃がし部45の底面も、側面視でその延長線が第1軸19の軸心かその近傍を通るように設定されている。
【0041】
受け部材41は樹脂の成形品であり、底には多数のリブ(或いは空所)を形成している。また、図8(B)に示すように、受け部材41はの底面に左右の位置決めピン48を突設している一方、図8(B)には位置決めピン48が嵌まる位置決め穴49を空けている。このため、受け部材41はビス止めしなくてもずれ不能で脱落不能に保持されている。もとより、ビスで固定することは構わない。
【0042】
押圧部材38は樹脂製品であり、おおむね左右長手で角形に近いブロック状の外観を呈しているが、軽量化のため多数の空所を有している。そして、図11(A)に示すように、バックフレーム10のジョイント部17が揺動部材18にビス37で締結されている。
【0043】
図8に示すように、押圧部材38の上面には突起38aが形成されている一方、図7に示すように、揺動部材18には押圧部材38の突起38aが嵌まる穴18cを設けている。揺動部材42には固定式ゴム40の押圧力がプリテンションとして常に作用しているため、突起38aと穴18cとの嵌合関係は維持続けられる。従って、押圧部材38はビスで固定しなくてもずれ不能に保持される。もとより、ビスで共締めすることは自由である。
【0044】
(4).操作ユニットのロック切り換え装置
次に、操作ユニット29を説明する。まず、主としてロック切り換え装置を説明する。既述のとおり、操作ユニット29は操作機構部27とこれが取り付いた背面カバー28とで構成されている。
【0045】
背面カバー28は左右のリブ板側板28aを有しており、縦長き左右アターリブ28aに、背面カバー28をフレーム受け軸34に取り付けるための挟持部28bが前向き開口している。挟持部28bは、弾性に抗して変形させることでフレーム受け軸34に嵌め込まれてる。
【0046】
例えば図9に示すように、背面カバー28には揺動部材18の後部上面に重なる庇部28cを設けており、庇部28cをビス51で揺動部材18の上面板18aに固定している。庇部28cには、ビス51の頭を収納する凹所52が形成されている。
【0047】
例えば図12にから理解できるように、操作機構部27は中心軸54とこれを覆う外筒55とを有している。中心軸54は弾力調節装置を構成するものであり、その一端部(右端)は外筒55の外側にはみ出しており、ここに強弱調節レバー56を取付けている。
【0048】
他方、外筒55はロック切り換え装置を構成しており、その一端部(右端)にロックレバー57を設けている。両レバー56,57は、強弱調節レバー56が外側でロックレバー57が内側に位置するように配置している。また、両レバー56,57は人が操作しやすいように側面視での姿勢を異ならせて配置している。外筒55の一端部は大径部55aになっており、この大径部55aに強弱調節レバー56の軸部が回転自在に保持されており、中心軸54は強弱調節レバー56の軸部に相対回転不能に嵌合している。
【0049】
例えば図9に示すように、背面カバー28の左右側端面にはその上半分程度において手前に突出する側板28dを設けており、側板28dの内側に既述のアウターリブ28aを前向き突設している。側板28dは、バックフレーム10におけるジョイント部17の側板17bに後ろから重なっている。
【0050】
外筒55のうちロックレバー57と反対側の端部には、その軸心から突出したロック体59を一体に設けており、背面カバー28には、ロック体59を左側から挟むインナーリブ60を形成し、外筒55の内端部55bをインナーリブ60に形成した軸受け穴61に嵌め込んでいる。すなわち、ロック体59の付け部がアウターリブ28aとインナーリブ60とで左右両側から囲われている。アターリブ28aには、外筒55の他端部55cが嵌まる係合溝穴62を形成している。係合溝穴62は開口部が巾狭のくびれた形状をしている。
【0051】
図13に示すように、外筒55の他端部55cには、外周面を平坦に切欠いたヌスミ溝63が形成されており、外筒55は、ヌスミ溝63が係合溝穴62と平行となる姿勢にすることによって係合溝穴62に嵌め込むことができ、かつ、嵌め込んでから使用姿勢に回転させると抜け不能に保持される。支持部55cには、外筒55が内向き移動を阻止するストッパー片64を形成している。
【0052】
ロック体59は外筒55から略下向きに突出した姿勢になっており、ベース2に向いた第1段部65と第2段部66との2つの段部を有している。第1段部66が先端側に位置している。他方、ロック体59の背面部には、第1〜第4の4つの係合溝67a〜67dが形成されており、この係合溝67a〜67dに、後ろからストッパー68が選択的に嵌合するようになっている。ストッパー68は背面カバー28に形成したポケット部69に前後動のみするように装着されており、ブロック状弾性体70で前進方向に付勢されている。図11(A)に示すように、外筒55の他方の端部には、安定した回転を確保するため、中心軸54に外側から当接する内向きリブ71を設けている。
【0053】
図11(A)から理解できるように、ロック体59は、ベース3における後ろ壁2bに設けた外向き支持フランジ2cに上から当接し得るようになっている。図11(A)では、ロック体59は第1段部56が支持フランジ2cの上面に対向したロック姿勢になっており、この状態では背もたれ4は殆ど後傾しない完全ロック状態になっている。また、ストッパー68は第2係合溝66bに嵌まっており、このためロック体59は姿勢保持されている。
【0054】
図11(A)の状態で外筒55を半時計回りに回転させると、ロック体59は、第2段部66が支持フランジ2cと対向する中間姿勢と、第2段部66が支持フランジ2cの外側に向いたフリー姿勢とに切り換わる。中間姿勢では、背もたれ4が最大傾動範囲の半分程度の範囲まで傾動すると第2段部66が支持フランジ2cに当接し、これにより、背もたれ4の後傾範囲が最大ストロークの半分程度に規制される。また、この中間姿勢では、第3係合溝67cにストッパー68が嵌まっている。後傾し切った状態にロックすることも可能である。
【0055】
更に、フリー姿勢ではロッキングに際してロック体59が支持フランジ2cに当たることはなく、このため、背もたれ4は最大傾動範囲だけ自由に傾動する。このフリー状態ではストッパー68は第4係合溝67dに嵌まっている。
【0056】
(5).操作ユニットのうち可動式ゴム
次に、操作機構部27のうち可動式ゴムを説明する。既述のとおり、可動式ゴムは中心軸54を有している。例えば図13(B)から理解できるように、中心軸54の先端部は背面カバー28における他方のアウターリブ28aで支持されており、先端には抜け止めのためスナップリング73を装着している。そして、中心軸54のうち、背面カバー28のインナーリブ60と他方のアウターリブ28aとの間には、例えば図9や図11(B)に示すように、スライダー74及びこれを左右動させる作動カム75が嵌まっている。
【0057】
スライダー74は中心軸54にスライド自在に嵌まっていると前向きに突出しており、その下面に可動式ゴム43を配置している。スライダー74は下向きに開口しており、このため可動式ゴム43は左右方向及び前後方向にずれ不能に保持されている。また、図13(B)に示すように、可動式ゴム43の一側面に溝43aを形成する一方、スライダー74には溝43aに嵌まるリブ74を形成しており、これによって脱落を確実に阻止している。可動式ゴム43をスライダー74に接着してもよい。
【0058】
スライダー74及び可動式ゴム43は押圧部材38に形成した空所76に左右スライド自在に嵌入している。可動式ゴム43も側面視扇形の形態を成している。また、スライダー74の先端には左右2つのガイド突起77を設けている一方、押圧部材38の前端部にガイド突起77が嵌まるガイド溝78を設けており、これにより、スライダー74及び可動式ゴム43は上下に触れることなく安定して左右スライドする。なお、ガイド手段は他の構造でも良い。
【0059】
例えば図12に示すように、スライダー74は中心軸54に嵌まる筒体79、これを囲うケース部80とを有しており、ケース部80は背面カバー28に形成したリブ82(図13(A)参照)の群で左右スライド自在に保持されている。また、ケース部80はばね93で強弱調節レバー56に向けて付勢されている。
【0060】
そして、筒体79には、平面視で強弱調節レバー56に向けて間隔が広がる雌形カム溝部84がリブを立てることで形成されている一方、作動カム75は筒体79を外側から抱くように配置された二股状になっており、雌形カム溝部84と重なり合う平面視テーパ状のカム面84aを有している。作動カム75は、中心軸54に相対回転不能及びスライド不能に固定されている。
【0061】
従って、強弱調節レバー56を回転させると、作動カム75と雌形カム溝部84とのガイド作用により、スライダー74が左右動する。作動カム75の先端には、雌形カム溝部84の開口縁の平坦部84′に係合する段部85を形成している。
【0062】
図12(A)のように、作動カム75が雌形カム溝部84に嵌まった状態では、スライダー74はばね83によって後退してその嵌まり合い状態が保持されている。このようにスライダーが後退した状態では、可動式ゴム43は受け部材41における可動式ゴム逃がし部45上方に位置しており、従って、可動式ゴム43がロッキングに際しての抵抗として作用することはない。つまり、弾力調節装置はロッキングに対する抵抗が小さい弱状態になっている。
【0063】
そして、スライダー74が後退した状態で作動カム75を図12(B)の矢印方向に回転させると、スライダー74はばね83に抗して強弱調節レバー56から逃げる方向に押しやられ、作動カム75の段部85が雌形カム溝部84の開口縁に当接することで、スライダー74は前進状態に保持される。この前進状態では、可動式ゴム43は可動式ゴム受け台44の上方に位置しており、従って、可動式ゴム43はロッキングに際して抵抗として作用する。すなわち、弾力調節装置はロッキングに際しての抵抗が大きい強状態になっている。
【0064】
図12に示すように、作動カム75の基端部には、スライダー74が後退した状態で図12(A)の点線矢印A方向には回転させられないように、スライダー74における雌形カム溝部84の開口縁に当接する規制部86を設けている。背面カバー28は揺動部材18を後ろから塞いでいる。そこで、揺動部材18の左右側板には、操作機構部27の外筒55が嵌まり込む逃がし溝穴87を空けている。
【0065】
(6).まとめ
既述のように、固定式ゴム40及び可動式ゴム43を側面視扇形(又は台形状)に形成されているため、ロッキングに際して両ゴム40,43には全体にわたって均等な押圧力が作用しており、このため、耐久性に優れていると共に、後傾の度合いと抵抗の増大の度合いとを均等な関係に保持して快適なロッキング状態を得ることができる。
【0066】
本実施形態のように固定式ゴム40と押圧部材38及び受け部材41との間にストッパーピン46を介在させると、ロッキングに際しての固定式ゴム40のずれを確実に阻止して固定式ゴム40を均一な状態に圧縮させることができる利点がある。
【0067】
また、可動式ゴムとロック切り換え装置とを操作ユニット29に組み込むと、着座者は片手で弾力調節とロック切り換えとを行えるため、操作性に優れている。また、中心軸54を弾力調節装置に使用して外筒55をロック切り換え装置に使用すると、スライダー74のスライドを無理なく行えるのみならず、外周が大きい外筒55でロッキング荷重を受けるため、支持強度にも優れている。
【0068】
可動式ゴム43を使用せずに、可動式ゴム43に相当する中間固定式ゴムを受け部材41に装着し、スライダー74を中間固定式ゴムに当たる位置と当たらない位置に移動させることも可能である。
【0069】
(7).他の実施形態
図14に示す実施形態は、フロントリンク23と揺動部材18とで平行リンク機構を構成して座受け体7を昇降する構成において、フロントリンク23に設けた枝部23aと受け部材41とでゴム40を挟圧するようになっている。フロントリンク23の枝部23aと受け部材41とには凹所42を形成している。この場合は、ベース2が第1部材でフロントリンク23を第2部材と観念することができる。
【0070】
(8).その他
本願発明は、上記の実施形態の他にも様々に具体化できる。例えば、ロッキングに際して座部が上昇及び後退動しない椅子に適用できることはいうまでもない。また、弾力調節装置を備えていない椅子にも適用できることは言うまでもない。上記の実施形態ではゴムは押圧部材を介して加圧されているが、揺動部材のような背支持装置で直接に加圧してもよい。
【0071】
加圧均等化手段の一例として、例えば、ケースの内部にゴムを配置してこれをケースにスライドに嵌まった押圧体で押圧し、押圧体に対して背支持装置等の部材で荷重をかけることが考えられる。この場合は、押圧体は荷重の作用方向が変わってもケースによって一方方向にスライドするだけであり、このため、直方体のゴムであっても均等に加圧できる。
【0072】
適用対象となる椅子は回転椅子に限定されるものではなく、会議用椅子のような非昇降式の椅子や劇場用椅子のような固定式椅子にも適用可能である。請求項2以下の発明は請求項1とは独立した発明たり得る。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本願発明椅子に具体化してその有用性が発揮される。従って産業上利用できる。
【符号の説明】
【0074】
1 脚支柱(ガスシリンダ)
2 ベース
3 座体
4 背もたれ
7 座受け体
10 バックフレーム
16 バックフレームの前向きアーム部
18 揺動部材
19 背支持装置及び背もたれの回動支点を成す第1軸
29 操作ユニット
39 固定式ゴム
41 受け部材
43 可動式ゴム
56 強弱調節レバー
57 ロックレバー
74 スライダー
【技術分野】
【0001】
本願発明は、ロッキングに抵抗を付与する弾性手段としてゴムを使用している椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ロッキング椅子において、ロッキングに対する抵抗を付与する弾性手段としてゴムを使用することは、例えば特許文献1に記載されている。この特許文献1では座と背もたれとが一体に連結されており、脚の上端に固定したベースと座との間に直方体状のゴムを配置している。当然ながら、ゴムは背もたれ及び座の回動支点から相当に離れた部位(後ろ)に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公昭43−13628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さて、事務用回転椅子では弾性手段としてコイルスプリングやトーションバーが多用されており、ゴムはあまり使用されていない。これは、特許文献1のようにゴムを背もたれの回動支点から相当に離れた部位に配置すると、背もたれの後傾角度をあまり大きく取ることができないからに他ならない。
【0005】
他方、近年、弾性や耐久性に優れたゴムが開発されており、本願発明者たちは、このような優れたゴムを使用して大きなロッキング角度を得ることを着想した。本願発明は、まず、このようにロッキングに対する弾性手段としてゴムを使用しつつ、大きなロッキング角度を得ることのできる椅子を提供せんとするものである。
【0006】
更に本願発明は,ロッキングに対する弾性手段としてゴムを使用した椅子において、背もたれを大きく傾動させることを可能ならしめつつ、ゴムの耐久性も確保することも目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、脚の上端に設けたベースと、前記ベースの上方に配置した座と、前記ベースに後傾動自在に連結した背支持装置と、前記背支持装置に設けた背もたれと、前記背支持装置の後傾動に抵抗を付与するゴムとを有しており、前記ゴムはロッキングに際して相対的に回動する第1部材と第2部材とで挟圧されて圧縮するようになっている、という構成において、前記ゴムを、前記第1部材と第2部材との回動軸心に近づけて設けている。請求項2の発明は、請求項1において、前記ゴムを均一に圧縮させる加圧均等化手段を講じている。
【0008】
他方、請求項3の発明は、請求項1又は2において、脚の上端に設けたベースと、前記ベースの上方に配置した座と、前記ベースに後傾動自在に連結した背支持装置と、前記背支持装置に設けた背もたれと、前記背支持装置の後傾動に抵抗を付与するゴムとを有しており、前記ゴムを、前記背支持装置の回動支点の後ろ側に配置してこれを背支持装置とベースとで挟圧するようになっている、という椅子であって、前記ゴムは、前記加圧均等化手段として、側面視で背支持装置の回動支点に近い側が薄くて遠い側が厚い扇形又は台形状に形成されている。ベースと背支持装置とはロッキングに際して相対回動する部材(第1部材と第2部材)の典型である。ゴムは他の部材でで荷重を掛けことも可能である。
【0009】
請求項4の発明は、請求項3において、前記ゴムは、側面視で、上面の延長線と下面の延長線とが背支持装置の回動支点又はその近傍を通るように設定されている。更に請求項5の発明は、請求項1〜4のうちのいずれかにおいて、ロッキングに際して座が上昇しつつ後退するようになっており、このため、ロッキング時には着座者の体重の一部が背もたれを戻すように作用している。
【0010】
なお、本願発明における「ゴム」とは荷重が掛かると圧縮変形する弾性体という意味であり、合成ゴムや天然ゴムなどの他、エラストマーのような合成樹脂系のものも範疇に含まれる。単一構造でもよいし複合(積層)構造でもよい。
【発明の効果】
【0011】
さて、背支持装置がある角度だけ回動する場合、背支持装置とベースとの上下間隔は背支持装置の回動支点に近づくほど小さくなる。従って、ゴムが押し潰される量は背支持装置の回動支点に近づくほど小さくなる。そして、本願発明ではゴムは第1部材と第2部材とが相対回動する軸心に近づけているため、コンパクトであっても大きなロッキング角度を得るこができる。これにより、椅子の構造の簡素化に貢献できる。
【0012】
さて、特許文献1のような単なる直方体状をゴムが回動支点にごく近づけて配置すると、ゴムのうち背支持装置の回動支点に近い部分が強く圧縮されて遠い部分は圧縮力が弱くなっており、このため、荷重の掛かり方が不均一になってゴムの耐久性が低下したり、背もたれへのもたれ掛かりの当初は急速に後傾してそれから後傾の度合いが遅くなるという不自然なロッキング態様が生じたりする不具合がある。また、ゴムが座屈しやすいため椅子を使用しているうちに弾性力が低下してしまうことも懸念される。
【0013】
これに対して請求項2の構成を採用すると、ゴムのへたりを抑制して耐久性を格段に向上できると共に、ロッキングの当初から終わりまで安定した反力を付与できて、もたれ心地にも優れたものとできる。請求項3の発明によると、ゴムは側面視で背支持装置の回動支点に近い部分が厚さが小さい扇形又は台形状になっているため、ゴムを背支持装置の回動支点にごく近づけても全体にわたって略均等に圧縮作用を受ける。従って、ゴムを扇形や台形に形成するのは加圧均等化手段の一例である。
【0014】
ゴムを扇形や台形に形成すると、ゴムを背支持装置の回動支点にできるだけ近づけつつ、ゴムを均等に圧縮させることができるのであり、その結果、ゴムの部分的なへたりを防止して耐久性を向上できると共に、背もたれを後傾初期から後傾終期まで自然な状態で後傾させることができるのである。
【0015】
請求項3の構成では、ロッキングに際して着座者の体重の一部を背もたれを戻そうと作用しているため、特許文献1のような椅子に比べてゴムに対して作用するモーメントが小さくなっている。このため、ゴムの耐久性向上に一層貢献している。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(A)は実施形態に係る椅子の部分斜視図、(B)は側面視図である。
【図2】分離斜視図である。
【図3】分離斜視図である。
【図4】下方から見た分離図である。
【図5】分離斜視図である。
【図6】(A)は可動式ゴムの部分的な分離斜視図、(B)はバックフレームの取付け構造を示すための分離斜視図である。
【図7】要部の分離斜視図である。
【図8】(A)は部材の分離斜視図、(B)は受け部材を裏返した状態での斜視図、(C)はベースの一部破断斜視図である。
【図9】分離斜視図である。
【図10】固定式ゴムの箇所での側断面図である。
【図11】(A)はロック体の箇所での側断面図、(B)は可動式ゴムを弱位置に配置した状態での側断面図である。
【図12】(A)は分離平面図、(B)は操作機構部の斜視図である。
【図13】(A)は背面カバーの斜視図、(B)は操作ユニットの分離斜視図、(C)は操作機構部の部分斜視図である。
【図14】別例図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、事務用等に使用される回転椅子に適用している。以下の説明及び請求項で方向を特定するため「前後」「左右」の文言を使用しているが、この文言は、椅子に普通の姿勢で着座した人が向いた方向を前として定義している。正面視は着座者と相対向した方向から見たものである。
【0018】
(1).椅子の概要
図1に示すように、椅子は、脚支柱(ガスシリンダ)1のみを表示した脚装置、脚支柱1の上端に固定したベース2、ベース2の上方に配置した座体3、着座した人がもたれ掛かり得る背もたれ4を有している。なお、ベース2にはオプション品として肘掛け装置を取り付けることができる。図2から理解できるように、座体3は合成樹脂製の座板(座インナーシェル)5とその上面に重ね配置したクッション材6とを有しており、クッション材6にはクロス等の表皮材が張られている。
【0019】
図2に示すように、背もたれ4は、合成樹脂製のバックフレーム10とその前面に固定した合成樹脂製の背板11とを備えている。背板11は横長の穴が多段に空いた横縞状に形態になっており、これにメッシュ等の表皮材12が張られている。背板11の前面にクッション材を配置することもある。この場合は、クッション材は袋状の表皮材で覆われる。バックフレーム10は、上下長手の左右サイドフレーム13と、その上端を繋ぐアッパーフレーム14と、左右サイドフレーム13の下端を繋ぐロアフレーム15とを有しており、左右サイドフレーム13とアッパーフレーム14とに背板11が固定されている。
【0020】
バックフレーム10はサイドフレーム13から一連に延びる左右の前向きアーム部16を有しており、左右の前向きアーム部16には上板17aと左右側板17bとを有するジョイント部17が一体に繋がっている。ベース2の後部には金属板製の揺動部材18が左右長手の第1軸19によって傾動自在に連結されており、揺動部材18にバックフレーム10のジョイント部17がビスで固定されている。第1軸19の左右端部は揺動部材18の外側に露出している。
【0021】
従って、本実形態では、揺動部材18及びバックフレーム10とで背支持装置が構成されており、背もたれ4は第1軸19を中心にして傾動する(第1軸19が背もたれ4の枢支軸になっている。)。なお、揺動部材18とバックフレーム10とを一体に構成したり、前向きアーム部16をサイドフレーム13とは別部材にしたり、揺動部材18と前向きアーム16とを一体化したりすることも可能である。
【0022】
揺動部材18には側面視傾斜姿勢で前方及び上方に延びるサポートアーム18aが一体に設けられており、左右サポートアーム18aの先端に、リア係合ピン20を挿通している。そして、例えば図5に示すように、座受け体7の下面にはリア係合ピン20に後ろから引っ掛かり嵌合する左右一対のリア係合爪21が一体成形されている。このため、背もたれ4が後傾すると座受け体7及び座体3は後ろに引っ張られる。
【0023】
他方、例えば図5に示すように、ベース2は金属板製であって、左右の側板2aを有する上向き開口の箱状の形態を成しており、その前部に左右横長の第2軸22を取り付けて、この第2軸22に単一構造のフロントリンク23を回動自在に連結し、かつ、フロントリンク23の上端は座受け体7に形成した上雌形嵌合部24に回動可能に嵌入している。従って、着座した人が背もたれ4に凭れ掛かると、揺動部材18で座受け体7が後ろに引っ張られ、これに伴ってフロントリンクが回動して座部8は上昇しながら後退する。
【0024】
図5に示すように、ベース2には上から上カバー25が装着されており、リア係合ピン20は上カバー25で支持されている。また、ベース2は下方から下カバー26で覆われている。ベース2の後部には、操作機構部27と背面カバー28とを有する制御ユニット29が配置されている。この制御ユニット29により、ロッキングに対する抵抗の切り換えと、背もたれ4の後傾の規制とが行われる。
【0025】
(2).ベース2と揺動部材18とバックフレーム10との関係
以下、各部の詳細を説明する。まず、ベース2と揺動部材18とバックフレーム10との関係を説明する。既述のとおりベース2は上向きに開口した箱型の形態であり、例えば図5に示すように、ベース2の内部のうち略中央部に側断面下向き開口コの字型の第1インナーブラケット31を溶接しており、このインナーブラケット31とベース2の底板とにブッシュ32を固着し、このブッシュ32に脚支柱1を下方から嵌着している。
【0026】
第1インナーブラケット31には上向き開口コの字形の第2インナーブラケット33が固着されており、両インナーブラケット31,33で囲われた空間に肘掛け装置の基端部が横方向から挿入されるようになっている。第2インナーブラケット33の左右両端部はベース2の外側に露出していてその先端に下向き片33aを形成しており、下向き片33aに肘掛け装置の基端部がビスで締結される。
【0027】
揺動部材18は上板と左右側板18bとを有する基本形態であり、左右側板18bでベース2を外側から囲い、ベース2の左右側板2aと揺動部材18の左右側板18bとに第1軸19が貫通している。第1軸19はブッシュを介してベース2に取り付けている。揺動部材18のサポートアーム18aは側板18bから延びている。
【0028】
揺動部材18における左右側板18bの後部には、左右長手のフレーム受け軸34が挿通している。フレーム受け軸34の左右両端部は揺動部材18の外側に露出している。他方、例えば図4に示すように、バックフレーム10の前向きアーム部16はある程度の左右巾を有する厚肉状になっており、左右前向きアーム部16の先端には第1軸19の露出端部に嵌入する前向き開口溝35が形成されており、更に、前向き開口溝35よりも後ろの部位には、フレーム受け軸34の先端部に上方から嵌まる下向き開口溝36が形成されている。
【0029】
図6(B)から容易に理解できるように、バックフレーム10のジョイント部17は揺動部材18に上から重なっており、更に、揺動部材18の下面には樹脂製の押圧部材38が重なっている。そして、ジョイント部17の上面板17aと揺動部材18の上面板とをビス37で締結している。従って、バックフレーム10と揺動部材18とは一体に回動する。
【0030】
ロッキングするとリア係合ピン20でリア係合爪21が後ろに引っ張られるが、ロッキングの戻り時にリア係合ピン20で座受け体7を前に押さねばならない。そこで、図示していないが、座受け体7に、リア係合ピン20を前後相対動不能に保持するためのストッパーを上からの嵌め込みで装着している。
【0031】
(3).固定式ゴムの配置態様
例えば図10に示すように、押圧部材38とベース2との間には左右一対の固定式ゴム40を配置しており、固定式ゴム40はベース2に取り付けた受け部材41に装着されている。非ロッキング状態でも固定式ゴム40は押圧部材38で圧縮されている。すなわち、固定式ゴム40には予備荷重(プリテンション)が掛かっている。固定式ゴム40や受け部材41は、揺動部材18の回動支点よりも後ろに配置されている。
【0032】
また、固定式ゴム40は、第1軸19に近づけた状態で配置しており、このた固定式ゴム40の圧縮によって揺動部材18を大きな角度(例えば15〜20°)で後傾させることができる。具体的には、第1軸19と固定式ゴム40との間には、第1軸19の半径寸法より小さい寸法しか空いていない。
【0033】
固定式ゴム40を第1軸19にどれだけ近づけるかは、必要とする後傾角度(ストローク)と固定式ゴム40の高さ寸法との関係で決まる。固定式ゴム40としてできるだけ小さいものを使用する場合は、固定式ゴム40は第1支軸19の外周面にできるだけ近づける必要がある。一般には、第1軸19と固定式ゴム40との間隔は数mmが好ましく、多くとも十数mmに納めるのがよいと言える。回動軸心からの間隔としては、十数mm〜2数mmが好適であると言える。
【0034】
固定式ゴム40は側面視扇形のブロック形状を成しており、図10に点線で示すように、上面40aと下面40bとが第1軸19の軸心の延長線に位置するように配置している。このため、固定式ゴム40の各部位は押圧部材38によって均等に圧縮される。換言すると、プリテンション及びロッキングに伴う荷重は固定式ゴム40の各部位に均等に作用する。このため、片当たりを無くして耐久性を向上できる。
【0035】
受け部材41は樹脂製であり、例えば図9に示すように、左右の固定式ゴム40が装着される左右の固定式ゴムマウント部42を有している。押圧部材38の下面にも固定式ゴム40がずれ不能に嵌まるゴムマウント部42を設けている。
【0036】
左右の固定式ゴムマウント部42の間には、可動式ゴム43(詳細は後述する)を受けてロッキングに対する抵抗を強状態にするための可動式ゴム受け台44と、ロッキングしても可動式ゴム43が圧縮されないように逃がすための可動式ゴム逃がし部45とが左右に並んだ状態で形成されている。
【0037】
図10に示すようにベース2の底板は概ね水平姿勢になっている一方、固定式ゴム40は側面視で第1軸19の軸心を通る水平面を挟んで略上下対称形状になっている。このため固定式ゴムマウント部43は水平面に対して後傾した姿勢に傾斜している。
【0038】
また、固定式ゴムマウント部42には、固定式ゴム40を後ろ向きずれ不能に保持するためのリアリブ42aと、左右ずれ不能に保持するためのサイドリブ42bと。上向きに突設されている。可動式ゴム受け台43は固定式ゴムマウント部42よりも高くなっており、このため、可動式ゴム受け台43と隣り合った左側の固定式ゴム40は、可動式ゴム受け台43が固定式ゴム40の内向き移動を阻止するストッパーの役割を果たしている。従って、左側の固定式ゴム40ではサイドリブ42bは一つしか存在していない。他方、右側の固定式ゴムマウント部42ではサイドリブ42bは左右2つ存在している。
【0039】
例えば図9や図10に示すように、押圧部材38と固定式ゴム40との間、及び、固定式ゴム40と固定式ゴムマウント部42との間には、左右横長で断面半円条の突条46を設けている。他方、押圧部材38及び受け部材41のゴムマウント部42には、突条46が嵌まる受け溝47を形成している。突条46を一体化することに代えて、ピンを介在させてもよい。
【0040】
既述のとおり可動式ゴム受け台44は固定式ゴムマウント部42よりも高い高さである一方、図11の(A)と(B)との比較から理解できるように、可動式ゴム逃がし部45は固定式ゴムマウント部42の上面よりも低く(深く)なっている。可動式ゴム逃がし部45の底面も、側面視でその延長線が第1軸19の軸心かその近傍を通るように設定されている。
【0041】
受け部材41は樹脂の成形品であり、底には多数のリブ(或いは空所)を形成している。また、図8(B)に示すように、受け部材41はの底面に左右の位置決めピン48を突設している一方、図8(B)には位置決めピン48が嵌まる位置決め穴49を空けている。このため、受け部材41はビス止めしなくてもずれ不能で脱落不能に保持されている。もとより、ビスで固定することは構わない。
【0042】
押圧部材38は樹脂製品であり、おおむね左右長手で角形に近いブロック状の外観を呈しているが、軽量化のため多数の空所を有している。そして、図11(A)に示すように、バックフレーム10のジョイント部17が揺動部材18にビス37で締結されている。
【0043】
図8に示すように、押圧部材38の上面には突起38aが形成されている一方、図7に示すように、揺動部材18には押圧部材38の突起38aが嵌まる穴18cを設けている。揺動部材42には固定式ゴム40の押圧力がプリテンションとして常に作用しているため、突起38aと穴18cとの嵌合関係は維持続けられる。従って、押圧部材38はビスで固定しなくてもずれ不能に保持される。もとより、ビスで共締めすることは自由である。
【0044】
(4).操作ユニットのロック切り換え装置
次に、操作ユニット29を説明する。まず、主としてロック切り換え装置を説明する。既述のとおり、操作ユニット29は操作機構部27とこれが取り付いた背面カバー28とで構成されている。
【0045】
背面カバー28は左右のリブ板側板28aを有しており、縦長き左右アターリブ28aに、背面カバー28をフレーム受け軸34に取り付けるための挟持部28bが前向き開口している。挟持部28bは、弾性に抗して変形させることでフレーム受け軸34に嵌め込まれてる。
【0046】
例えば図9に示すように、背面カバー28には揺動部材18の後部上面に重なる庇部28cを設けており、庇部28cをビス51で揺動部材18の上面板18aに固定している。庇部28cには、ビス51の頭を収納する凹所52が形成されている。
【0047】
例えば図12にから理解できるように、操作機構部27は中心軸54とこれを覆う外筒55とを有している。中心軸54は弾力調節装置を構成するものであり、その一端部(右端)は外筒55の外側にはみ出しており、ここに強弱調節レバー56を取付けている。
【0048】
他方、外筒55はロック切り換え装置を構成しており、その一端部(右端)にロックレバー57を設けている。両レバー56,57は、強弱調節レバー56が外側でロックレバー57が内側に位置するように配置している。また、両レバー56,57は人が操作しやすいように側面視での姿勢を異ならせて配置している。外筒55の一端部は大径部55aになっており、この大径部55aに強弱調節レバー56の軸部が回転自在に保持されており、中心軸54は強弱調節レバー56の軸部に相対回転不能に嵌合している。
【0049】
例えば図9に示すように、背面カバー28の左右側端面にはその上半分程度において手前に突出する側板28dを設けており、側板28dの内側に既述のアウターリブ28aを前向き突設している。側板28dは、バックフレーム10におけるジョイント部17の側板17bに後ろから重なっている。
【0050】
外筒55のうちロックレバー57と反対側の端部には、その軸心から突出したロック体59を一体に設けており、背面カバー28には、ロック体59を左側から挟むインナーリブ60を形成し、外筒55の内端部55bをインナーリブ60に形成した軸受け穴61に嵌め込んでいる。すなわち、ロック体59の付け部がアウターリブ28aとインナーリブ60とで左右両側から囲われている。アターリブ28aには、外筒55の他端部55cが嵌まる係合溝穴62を形成している。係合溝穴62は開口部が巾狭のくびれた形状をしている。
【0051】
図13に示すように、外筒55の他端部55cには、外周面を平坦に切欠いたヌスミ溝63が形成されており、外筒55は、ヌスミ溝63が係合溝穴62と平行となる姿勢にすることによって係合溝穴62に嵌め込むことができ、かつ、嵌め込んでから使用姿勢に回転させると抜け不能に保持される。支持部55cには、外筒55が内向き移動を阻止するストッパー片64を形成している。
【0052】
ロック体59は外筒55から略下向きに突出した姿勢になっており、ベース2に向いた第1段部65と第2段部66との2つの段部を有している。第1段部66が先端側に位置している。他方、ロック体59の背面部には、第1〜第4の4つの係合溝67a〜67dが形成されており、この係合溝67a〜67dに、後ろからストッパー68が選択的に嵌合するようになっている。ストッパー68は背面カバー28に形成したポケット部69に前後動のみするように装着されており、ブロック状弾性体70で前進方向に付勢されている。図11(A)に示すように、外筒55の他方の端部には、安定した回転を確保するため、中心軸54に外側から当接する内向きリブ71を設けている。
【0053】
図11(A)から理解できるように、ロック体59は、ベース3における後ろ壁2bに設けた外向き支持フランジ2cに上から当接し得るようになっている。図11(A)では、ロック体59は第1段部56が支持フランジ2cの上面に対向したロック姿勢になっており、この状態では背もたれ4は殆ど後傾しない完全ロック状態になっている。また、ストッパー68は第2係合溝66bに嵌まっており、このためロック体59は姿勢保持されている。
【0054】
図11(A)の状態で外筒55を半時計回りに回転させると、ロック体59は、第2段部66が支持フランジ2cと対向する中間姿勢と、第2段部66が支持フランジ2cの外側に向いたフリー姿勢とに切り換わる。中間姿勢では、背もたれ4が最大傾動範囲の半分程度の範囲まで傾動すると第2段部66が支持フランジ2cに当接し、これにより、背もたれ4の後傾範囲が最大ストロークの半分程度に規制される。また、この中間姿勢では、第3係合溝67cにストッパー68が嵌まっている。後傾し切った状態にロックすることも可能である。
【0055】
更に、フリー姿勢ではロッキングに際してロック体59が支持フランジ2cに当たることはなく、このため、背もたれ4は最大傾動範囲だけ自由に傾動する。このフリー状態ではストッパー68は第4係合溝67dに嵌まっている。
【0056】
(5).操作ユニットのうち可動式ゴム
次に、操作機構部27のうち可動式ゴムを説明する。既述のとおり、可動式ゴムは中心軸54を有している。例えば図13(B)から理解できるように、中心軸54の先端部は背面カバー28における他方のアウターリブ28aで支持されており、先端には抜け止めのためスナップリング73を装着している。そして、中心軸54のうち、背面カバー28のインナーリブ60と他方のアウターリブ28aとの間には、例えば図9や図11(B)に示すように、スライダー74及びこれを左右動させる作動カム75が嵌まっている。
【0057】
スライダー74は中心軸54にスライド自在に嵌まっていると前向きに突出しており、その下面に可動式ゴム43を配置している。スライダー74は下向きに開口しており、このため可動式ゴム43は左右方向及び前後方向にずれ不能に保持されている。また、図13(B)に示すように、可動式ゴム43の一側面に溝43aを形成する一方、スライダー74には溝43aに嵌まるリブ74を形成しており、これによって脱落を確実に阻止している。可動式ゴム43をスライダー74に接着してもよい。
【0058】
スライダー74及び可動式ゴム43は押圧部材38に形成した空所76に左右スライド自在に嵌入している。可動式ゴム43も側面視扇形の形態を成している。また、スライダー74の先端には左右2つのガイド突起77を設けている一方、押圧部材38の前端部にガイド突起77が嵌まるガイド溝78を設けており、これにより、スライダー74及び可動式ゴム43は上下に触れることなく安定して左右スライドする。なお、ガイド手段は他の構造でも良い。
【0059】
例えば図12に示すように、スライダー74は中心軸54に嵌まる筒体79、これを囲うケース部80とを有しており、ケース部80は背面カバー28に形成したリブ82(図13(A)参照)の群で左右スライド自在に保持されている。また、ケース部80はばね93で強弱調節レバー56に向けて付勢されている。
【0060】
そして、筒体79には、平面視で強弱調節レバー56に向けて間隔が広がる雌形カム溝部84がリブを立てることで形成されている一方、作動カム75は筒体79を外側から抱くように配置された二股状になっており、雌形カム溝部84と重なり合う平面視テーパ状のカム面84aを有している。作動カム75は、中心軸54に相対回転不能及びスライド不能に固定されている。
【0061】
従って、強弱調節レバー56を回転させると、作動カム75と雌形カム溝部84とのガイド作用により、スライダー74が左右動する。作動カム75の先端には、雌形カム溝部84の開口縁の平坦部84′に係合する段部85を形成している。
【0062】
図12(A)のように、作動カム75が雌形カム溝部84に嵌まった状態では、スライダー74はばね83によって後退してその嵌まり合い状態が保持されている。このようにスライダーが後退した状態では、可動式ゴム43は受け部材41における可動式ゴム逃がし部45上方に位置しており、従って、可動式ゴム43がロッキングに際しての抵抗として作用することはない。つまり、弾力調節装置はロッキングに対する抵抗が小さい弱状態になっている。
【0063】
そして、スライダー74が後退した状態で作動カム75を図12(B)の矢印方向に回転させると、スライダー74はばね83に抗して強弱調節レバー56から逃げる方向に押しやられ、作動カム75の段部85が雌形カム溝部84の開口縁に当接することで、スライダー74は前進状態に保持される。この前進状態では、可動式ゴム43は可動式ゴム受け台44の上方に位置しており、従って、可動式ゴム43はロッキングに際して抵抗として作用する。すなわち、弾力調節装置はロッキングに際しての抵抗が大きい強状態になっている。
【0064】
図12に示すように、作動カム75の基端部には、スライダー74が後退した状態で図12(A)の点線矢印A方向には回転させられないように、スライダー74における雌形カム溝部84の開口縁に当接する規制部86を設けている。背面カバー28は揺動部材18を後ろから塞いでいる。そこで、揺動部材18の左右側板には、操作機構部27の外筒55が嵌まり込む逃がし溝穴87を空けている。
【0065】
(6).まとめ
既述のように、固定式ゴム40及び可動式ゴム43を側面視扇形(又は台形状)に形成されているため、ロッキングに際して両ゴム40,43には全体にわたって均等な押圧力が作用しており、このため、耐久性に優れていると共に、後傾の度合いと抵抗の増大の度合いとを均等な関係に保持して快適なロッキング状態を得ることができる。
【0066】
本実施形態のように固定式ゴム40と押圧部材38及び受け部材41との間にストッパーピン46を介在させると、ロッキングに際しての固定式ゴム40のずれを確実に阻止して固定式ゴム40を均一な状態に圧縮させることができる利点がある。
【0067】
また、可動式ゴムとロック切り換え装置とを操作ユニット29に組み込むと、着座者は片手で弾力調節とロック切り換えとを行えるため、操作性に優れている。また、中心軸54を弾力調節装置に使用して外筒55をロック切り換え装置に使用すると、スライダー74のスライドを無理なく行えるのみならず、外周が大きい外筒55でロッキング荷重を受けるため、支持強度にも優れている。
【0068】
可動式ゴム43を使用せずに、可動式ゴム43に相当する中間固定式ゴムを受け部材41に装着し、スライダー74を中間固定式ゴムに当たる位置と当たらない位置に移動させることも可能である。
【0069】
(7).他の実施形態
図14に示す実施形態は、フロントリンク23と揺動部材18とで平行リンク機構を構成して座受け体7を昇降する構成において、フロントリンク23に設けた枝部23aと受け部材41とでゴム40を挟圧するようになっている。フロントリンク23の枝部23aと受け部材41とには凹所42を形成している。この場合は、ベース2が第1部材でフロントリンク23を第2部材と観念することができる。
【0070】
(8).その他
本願発明は、上記の実施形態の他にも様々に具体化できる。例えば、ロッキングに際して座部が上昇及び後退動しない椅子に適用できることはいうまでもない。また、弾力調節装置を備えていない椅子にも適用できることは言うまでもない。上記の実施形態ではゴムは押圧部材を介して加圧されているが、揺動部材のような背支持装置で直接に加圧してもよい。
【0071】
加圧均等化手段の一例として、例えば、ケースの内部にゴムを配置してこれをケースにスライドに嵌まった押圧体で押圧し、押圧体に対して背支持装置等の部材で荷重をかけることが考えられる。この場合は、押圧体は荷重の作用方向が変わってもケースによって一方方向にスライドするだけであり、このため、直方体のゴムであっても均等に加圧できる。
【0072】
適用対象となる椅子は回転椅子に限定されるものではなく、会議用椅子のような非昇降式の椅子や劇場用椅子のような固定式椅子にも適用可能である。請求項2以下の発明は請求項1とは独立した発明たり得る。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本願発明椅子に具体化してその有用性が発揮される。従って産業上利用できる。
【符号の説明】
【0074】
1 脚支柱(ガスシリンダ)
2 ベース
3 座体
4 背もたれ
7 座受け体
10 バックフレーム
16 バックフレームの前向きアーム部
18 揺動部材
19 背支持装置及び背もたれの回動支点を成す第1軸
29 操作ユニット
39 固定式ゴム
41 受け部材
43 可動式ゴム
56 強弱調節レバー
57 ロックレバー
74 スライダー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脚の上端に設けたベースと、前記ベースの上方に配置した座と、前記ベースに後傾動自在に連結した背支持装置と、前記背支持装置に設けた背もたれと、前記背支持装置の後傾動に抵抗を付与するゴムとを有しており、前記ゴムはロッキングに際して相対的に回動する第1部材と第2部材とで挟圧されて圧縮するようになっている、という椅子であって、
前記ゴムを、前記第1部材と第2部材との回動軸心に近づけて設けている、
ロッキング椅子。
【請求項2】
前記ゴムを均一に圧縮させる加圧均等化手段を講じている、
請求項1に記載したロッキング椅子。
【請求項3】
脚の上端に設けたベースと、前記ベースの上方に配置した座と、前記ベースに後傾動自在に連結した背支持装置と、前記背支持装置に設けた背もたれと、前記背支持装置の後傾動に抵抗を付与するゴムとを有しており、前記ゴムを、前記背支持装置の回動支点の後ろ側に配置してこれを背支持装置とベースとで挟圧するようになっている、という椅子であって、
前記ゴムは、前記加圧均等化手段として、側面視で背支持装置の回動支点に近い側が薄くて遠い側が厚い扇形又は台形状に形成されている、
請求項1又は2に記載したロッキング椅子。
【請求項4】
前記ゴムは、側面視で、上面の延長線と下面の延長線とが背支持装置の回動支点又はその近傍を通るように設定されている、
請求項3に記載したロッキング椅子。
【請求項5】
ロッキングに際して座が上昇しつつ後退するようになっており、このため、ロッキング時には着座者の体重の一部が背もたれを戻すように作用している、
請求項1〜4のうちのいずれかに記載したロッキング椅子。
【請求項1】
脚の上端に設けたベースと、前記ベースの上方に配置した座と、前記ベースに後傾動自在に連結した背支持装置と、前記背支持装置に設けた背もたれと、前記背支持装置の後傾動に抵抗を付与するゴムとを有しており、前記ゴムはロッキングに際して相対的に回動する第1部材と第2部材とで挟圧されて圧縮するようになっている、という椅子であって、
前記ゴムを、前記第1部材と第2部材との回動軸心に近づけて設けている、
ロッキング椅子。
【請求項2】
前記ゴムを均一に圧縮させる加圧均等化手段を講じている、
請求項1に記載したロッキング椅子。
【請求項3】
脚の上端に設けたベースと、前記ベースの上方に配置した座と、前記ベースに後傾動自在に連結した背支持装置と、前記背支持装置に設けた背もたれと、前記背支持装置の後傾動に抵抗を付与するゴムとを有しており、前記ゴムを、前記背支持装置の回動支点の後ろ側に配置してこれを背支持装置とベースとで挟圧するようになっている、という椅子であって、
前記ゴムは、前記加圧均等化手段として、側面視で背支持装置の回動支点に近い側が薄くて遠い側が厚い扇形又は台形状に形成されている、
請求項1又は2に記載したロッキング椅子。
【請求項4】
前記ゴムは、側面視で、上面の延長線と下面の延長線とが背支持装置の回動支点又はその近傍を通るように設定されている、
請求項3に記載したロッキング椅子。
【請求項5】
ロッキングに際して座が上昇しつつ後退するようになっており、このため、ロッキング時には着座者の体重の一部が背もたれを戻すように作用している、
請求項1〜4のうちのいずれかに記載したロッキング椅子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−92474(P2011−92474A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−249960(P2009−249960)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(000139780)株式会社イトーキ (833)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(000139780)株式会社イトーキ (833)
【Fターム(参考)】
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