説明

ロック構造

【課題】意図しない対象物の露出を防ぐことができるロック構造を提供する。
【解決手段】ケースと、ケース内部に対象物を係止する第一ロック手段と、第一係合手段と係合する第二係合手段と、を具備し、第一ロック手段が対象物を係止する係止位置とその係止を解除する解除位置との間をスライドするスライド部材と、解除位置から係止位置方向へスライド部材を弾性的に付勢する第一付勢手段と、を備える。第二係合手段と第一係合手段との内、一方は突起であり、他方は溝である。溝は第二ロック手段を具備する。係止位置から解除位置方向へスライド部材をスライドすると、突起と第二ロック手段とが係合し、対象物がケースから出る方向とは反対方向にスライド部材を押し込むことで、溝と第二ロック手段との係合が解除され、さらに、係止位置から解除位置方向へスライド部材をスライドさせることで、対象物と第一ロック手段との係止が解除される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は対象物、特に回転収納式コネクタをケース内部に係止するロック構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1記載の回転収納式コネクタが従来技術として知られている。また、特許文献2記載の回転収納式コネクタは、プラグがケースから出る方向(以下「回転飛び出し方向」という)に弾性的に付勢されており、ロックを解除することで自動的にプラグがケース外部に出る従来技術として知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−217190号公報
【特許文献2】実開昭62−127681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1は、プラグのプラグ側とは反対側の凹凸部を手動で回転させ、プラグをケース外部に露出させる必要があり、その操作が煩雑である。また、凹凸部に衝撃等が加わることにより意図せずにプラグが露出してしまう虞がある。意図しないコネクタの露出は、破損等の原因となる。特許文献2は、つまみをスライドさせ、ロックを解除することで、自動的にプラグをケース外部に露出させることができる。しかし、つまみのスライド方向に衝撃等が加わった場合、意図せずにロックが解除され、プラグが露出してしまう虞がある。自動的にプラグ全体がケース外部に露出するため、特許文献1よりも露出部分が大きくなる可能性が高く、破損等の可能性も高くなる。
【0005】
本発明は、意図しない対象物(例えば、コネクタ)の露出を防ぐことができるロック構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の第一の態様に係るロック構造は、対象物が出入りする開口部と、第一係合手段と、を具備し、対象物を収納する空間が形成されているケースと、ケース内部に対象物を係止する第一ロック手段と、第一係合手段と係合する第二係合手段と、を具備し、第一ロック手段が対象物を係止する係止位置とその係止を解除する解除位置との間をスライドするスライド部材と、解除位置から係止位置方向へスライド部材を弾性的に付勢する第一付勢手段と、を備える。第二係合手段と第一係合手段との内、一方は突起であり、他方は突起が嵌るようにスライド方向に形成された溝である。溝は第二ロック手段を具備する。係止位置から解除位置方向へスライド部材をスライドすると、突起と第二ロック手段とが係合し、対象物がケースから出る方向とは反対方向にスライド部材を押し込むことで、溝と第二ロック手段との係合が解除され、さらに、係止位置から解除位置方向へスライド部材をスライドさせることで、対象物と第一ロック手段との係止が解除される。
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の第二の態様に係るロック構造は、一端側に接続端子を備え、回動自在に支持されているコネクタが出入りする開口部と、筒状突起と、を具備し、コネクタを収納する空間が形成されているケースと、ケース内部にコネクタの一端側を係止する係止爪と、筒状突起と係合する溝と、を具備し、係止爪がコネクタの一端側を係止する係止位置とその係止を解除する解除位置との間をスライドするスライド部材と、解除位置から係止位置方向へスライド部材を弾性的に付勢する第一付勢手段と、を備える。スライド部材の溝には段差が形成される。係止位置から解除位置方向へスライド部材をスライドすると、筒状突起と段差とが係合し、コネクタの一端側がケースから出る方向とは反対方向にスライド部材を押し込むことで、筒状突起と段差との係合が解除され、さらに、係止位置から解除位置方向へスライド部材をスライドさせることで、コネクタの一端側と係止爪との係止が解除される。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るロック構造は、突起と第二ロック手段(例えば、溝に形成された段差)との係合により、意図しない対象物の露出を防止する効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】回転収納式コネクタ100の正面、右側面及び平面を示す斜視図。
【図2】回転収納式コネクタ100の正面、右側面及び平面を示す分解斜視図。
【図3】図3(A)はシェル131を透過したプラグ130の平面図、図3(A)はシェル131を透過したプラグ130の底面図。
【図4】上ケース110の正面、右側面及び底面を示す斜視図。
【図5】図5(A)はスライド部材140の平面図、図5(B)はスライド部材140の背面図。
【図6】図6(A)はロック状態の回転収納式コネクタ100の平面図、(B)は(A)の状態から上ケース110を透過した状態を示す平面図。
【図7】ロック解除直後の状態の回転収納式コネクタ100の平面図。
【図8】図8は図6(B)の範囲Dの拡大図。
【図9】プラグ使用状態の回転収納式コネクタ100の平面図。
【図10】プラグ収納途中状態の回転収納式コネクタ100の平面図。
【図11】図6(A)のX−X断面図。
【図12】動画撮影装置10の外観図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、USB規格に準拠するプラグ(以下、単に「プラグ」という)に本発明の技術思想を適用した実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。但し、本発明の技術思想が適用可能なコネクタは特定の規格に準拠するコネクタに限定されるものではなく、任意の規格(例えば、miniUSB規格、IEEE1394規格、JIS C 8303−1993など)に準拠するコネクタ全般に適用可能である。
【0011】
<第一実施形態>
図1及び図2を用いて第一実施形態に係る回転収納式コネクタ100を説明する。図1及び図2に示すように回転収納式コネクタ100は上ケース110と下ケース111と回転軸120とプラグ130とスライド部材140と第一付勢手段150とを備える。なお、図1において、プラグ130及びスライド部材140が露出している面を回転収納式コネクタ100の正面とし、下ケース111からなる面を底面とし、回転収納式コネクタ100の中心から見て正面方向を前方とし、下ケース111方向を下方として説明する。
【0012】
<回転軸120及びプラグ130>
図2及び図3に示すようにプラグ130はシェル131と第一ボディ132と第二ボディ133と第二付勢手段134と4つの接続端子135とを具備する。
【0013】
プラグ130は一端側に接続端子135を、他端側にその内周面が回転軸120の外周面と接するように形成された貫通孔132aを具備し、回転軸120を中心として回動自在に支持されている。プラグ130の形状はUSB規格に準拠するものとする。
【0014】
第二付勢手段134は、例えばねじりコイルばねであり、第一ボディ132に形成された略円筒状の第二付勢手段用溝132bに遊嵌される。
【0015】
第二ボディ133は右方向に突出する接続端子支持板133aを有する。この接続端子支持板133aの底面には、所定の間隔で4本の接続端子受容溝が形成されている。接続端子135は、これらの接続端子受容溝に圧入されて、図3(B)に示すように、その接点部135aが接続端子支持板133aの底面に配置される。接続端子135は、第二ボディ133の左方向から第一ボディ132に延出して、左側端に電子機器内部の端子と電気的に接続するためのリード線等の接続線を接続される端子部135bを具備する。なお、図3(B)において、右端以外の接続端子については接点部135a及び端子部135bの記載を省略している。
【0016】
第一ボディ132及び第二ボディ133は、例えばプラスチック等の絶縁体からなる。シェル131及び接続端子135は例えば、導電体からなる。
【0017】
シェル131は、一体化した第一ボディ132と第二ボディ133とを覆うように四角筒状に形成され、第一ボディ132の貫通孔132aに対応する部分(上壁及び底壁)に、同じ大きさの孔が形成される(図2参照)。シェル131の孔と第一ボディ132の貫通孔132aを併せてプラグ130のプラグ孔部130aとする。
【0018】
第二付勢手段134は、例えば金属等の導電体からなるねじりコイルばねであり、一端に後述する下ケース111と係止する下ケース用係止部134aを、他端に第一ボディ132と係止する第一ボディ用係止部134bを備え、各係止部が係止されることで、プラグ130を後述するケースから出る方向(以下「回転飛び出し方向」または「第二付勢方向」という)に弾性的に付勢する。
【0019】
回転軸120は、例えば円筒状に形成される。
【0020】
<上ケース110及び下ケース111>
ケースは例えばプラスチック等の絶縁体からなる上ケース110及び下ケース111を一体化して形成され(図2参照)、略矩形板状である。板状の上ケース110の両側端及び後方端から下方に周縁部110eが延長して形成され(図4参照)、周縁部110eを下ケース111で蓋する。このような構成により、ケースはプラグ130を収納する空間と、プラグ130が出入りする開口部とを備える(図1参照)。言い換えると、ケースには、プラグ130を収納する空間とプラグ130が出入りする開口部とが形成されている。なお、後方端から下方に延長して形成された周縁部110eには、開口部110gが形成され、この開口部110gを介してリード線等を後方に備える基板等の端子に接続する(但しリード線等、基板等は図示していない)。
【0021】
上ケース110は下方に突出して形成された円筒状突起110a,110bと前方に突出して形成された長円筒状突起110cとを備え(図4参照)、下ケース111は上方に突出して形成された円筒状突起111a,111bを備える(図2参照)。上ケースは、後述するスライド部材140の溝に嵌り、かつ、スライド部材140を固定する円筒状突起110a,110bと長円筒状突起110cが、異なる面に連続して形成される。下ケースの円筒状突起111a,111bも後述するスライド部材140の溝に嵌り、かつ、スライド部材140を固定する。さらに、上ケース110は、回転軸120を受ける軸受部110dを備える。軸受部110dは円筒状の穴であり、その底と回転軸120の上面が当接し、その内周面は回転軸120の外周面と当接するように形成される。さらに、下ケース111は、回転軸120が貫通(軸通)する下ケース孔部111cを備え、その内周面は回転軸120の外周面と当接するように形成される。また、下ケース111は、前述の第二付勢手段134の一端の下ケース用係止部134aと係止する第二付勢手段用係止部111dを備える。第二付勢手段用係止部111dは、例えば、上方に突出して形成され、さらに突出部分の略中央に円筒状の穴が形成される。その穴の内周面は第二付勢手段の下ケース用係止部134aの外周面と当接するように形成される。
【0022】
上ケース110及び下ケース111にはそれぞれプラグ用受部110f及び111eが形成され、前述のプラグ130が使用状態(詳細は後述する)のときに、第二付勢手段134によって付勢されるプラグ130の後方端130bを受ける。
【0023】
<スライド部材140及び第一付勢手段150>
スライド部材140は例えばプラスチック等の絶縁体からなり、略直方体状であり、図5に示すように左側端には後方に突出して形成された係止爪140aを具備する。この係止爪140aが前記プラグ130の一端側(接続端子135を備える側)をケース内部に係止する(詳細は後述する)。スライド部材140は、正面に凸部140eが前方に突出して形成される。回転収納式コネクタ100の利用者は、凸部140eを押圧してスライド部材140をスライド操作することができる。背面に右側端から左方向に延びる長円筒状突起用溝140dが形成される。平面及び底面に溝140b,140gが形成される。さらに、溝140bには段差140cが形成される。溝140b,140gは、細溝部140fで連通される。言い換えると、スライド部材140の平面及び底面には、スライド方向に溝140b,140g及び細溝部140fが形成されている。溝140bには前述の円筒状突起110a及び111aが嵌り、溝140gには前述の円筒状突起110b及び111bが嵌るように形成される。なお、溝140bの幅は一定ではなく、段差140cが形成される。また、スライド部材140の背面のスライド方向に長円筒状突起用溝140dが形成される。なお、図示していないが底面にも同様の溝が形成される。
【0024】
溝140bは、その幅が上ケース110の円筒状突起110a及び下ケース111の円筒状突起111aの直径よりも長く形成され、溝140gは、その幅が上ケース110の円筒状突起110b及び下ケース111の円筒状突起111bの直径よりも長く形成される。細溝部140fは、その幅が円筒状突起110a及び110b並びに下ケース111の円筒状突起111a及び111bの直径よりも短く形成される。
【0025】
また長円筒状突起用溝140dは、その幅が長円筒状突起110cの短手方向の幅よりも長く形成される。
【0026】
このような構成により、スライド部材140は、前後方向において、その移動を、溝140b,140gと円筒状突起110a,110b,111a及び111bとの係合により規制される。さらに左右方向(スライド方向)において、その移動を、細溝部140fと円筒状突起110a,110b,111a及び111bとの係合により規制される。細溝部140fは、その長さが、円筒状突起110aと110bとの距離、及び、円筒状突起111aと111bとの距離よりも短く形成される。このような構成により、スライド部材140は、円筒状突起の距離と細溝部の長さの差分だけスライドする。スライド部材140は、上下方向において、その移動を、長円筒状突起用溝140dと長円筒状突起110cとの係合により規制される。
【0027】
また、段差140cは、第二付勢方向に突出して形成されている。
【0028】
第一付勢手段150は、例えば圧縮コイルばねである。その一端が上ケース110の右側壁の内周面と当接し、他端がスライド部材140の右側面に設けられた第一付勢手段用穴140h(図2参照)の底と当接する。第一付勢手段150は、スライド部材140をその付勢方向(左方向であり、以下、「第一付勢方向」という)に弾性的に付勢する。
【0029】
<ロック>
スライド部材140は、係止爪140aがプラグ130の一端側を係止する係止位置(図6(B)参照)と、その係止を解除する解除位置(図7参照)との間をスライドする。言い換えると、収納状態のプラグ130の正面及び背面と平行にスライドし、第一付勢方向及びその反対方向にスライドする。
【0030】
第一付勢手段150は、解除位置から係止位置方向(図6(B)の矢印Gの方向であり、前述の第一付勢方向である)へスライド部材140を弾性的に付勢する。図6(A)はロック状態の回転収納式コネクタ100の平面図を、(B)は(A)の状態から上ケース110を透過した状態を示す平面図である。図8は図6(B)の範囲Dの拡大図である。なお、図6(B)及び図8中、係止爪140a、円筒状突起110a,110bの位置を一点鎖線で示し、円筒状突起111a,111bの位置は省略する。
【0031】
図8に示すようにスライド部材140は第一付勢手段150によって、第一付勢方向(図中の矢印G方向)に付勢されるが、細溝部140fと上ケース110及び下ケース111のそれぞれの円筒状突起110a及び111aによって、第一付勢方向に対し規制される。また、プラグ130は、第二付勢手段134により、第二付勢方向(図中の矢印C方向)に弾性的に付勢されている。図8に示すように係止爪140aの先端が、プラグ130の一端側のシェル131の内周面と当接し、第二付勢方向に付勢されているプラグ130を係止する。スライド部材140は、係止爪140aを介して第二付勢方向に(つまり、前方に)弾性的に付勢される。言い換えると、第二付勢手段134に付勢されたプラグ130の一端側が、係止爪140aを介してスライド部材140を第二付勢方向に付勢する。このとき、溝140b,140gと円筒状突起110a,110b,111a及び111bによって、第二付勢方向に対して規制されている。スライド部材140は、ケースに対し第二付勢方向に押し当てられる。
【0032】
落下等によりスライド方向に衝撃を受けた場合、特許文献2等の場合には、その衝撃によりつまみが係止位置から解除位置方向にスライドし、つまみとプラグの係止が解除され、プラグがケース外部に飛び出してしまう虞がある。一方、本実施形態の場合、前述の通り、段差140cは、第二付勢方向に突出して形成されている。そのため、落下等によりスライド方向に衝撃を受けた場合にも、言い換えると、係止位置から解除位置方向(矢印Fの方向)へスライド部材140をスライドさせようとする力がかかりスライドした場合、スライド部材140がスライドしないように円筒状突起110a及び111aと段差140cとが係合する。このような構成により、意図しないプラグ130の露出を防止することができる。
【0033】
さらに、前述の通り、スライド部材140は、係止爪140aを介して第二付勢方向に(つまり、前方に)弾性的に付勢され、その溝140b,140gの後方側の側壁が円筒状突起110a,110b,111a及び111bに押し当てられている。この押圧により、落下等によりスライド方向に衝撃を受けた場合に、円筒状突起110a及び111aと溝140b内の段差140cの密着度が高まるので、係止位置から解除位置方向(矢印Fの方向)へスライドする場合に、前述の円筒状突起110a及び111aと段差140cとの係合を解除するためにより大きい押し下げる力(段差を乗り越える力)が必要となる。スライド部材140が第二付勢手段134によって付勢されることで、意図しないプラグ130の露出を防止する効果がより高くなる。
【0034】
<ロック解除>
ロックを解除する場合には、まず、第二付勢方向とは反対方向(図8中、矢印Eの方向)にスライド部材を押し込む。それにより円筒状突起110a及び111aと段差140cとの係合が解除される。さらに、係止位置から解除位置方向(図8中、矢印Fの方向であり、第一付勢方向とは反対方向)へスライド部材140をスライドさせることで、プラグ130の一端側と係止爪140aとの係止が解除される。なお、前述の通り、円筒状突起110a及び111aと段差140cとが係合しているため、係止位置から解除位置方向(矢印Fの方向)の力のみで、プラグ130の一端側と係止爪140aとの係止を解除しようとすると、非常に大きな力が必要となる。
【0035】
本実施形態において、段差140cは、第一付勢手段150の第一付勢方向に向かって、前方(第二付勢方向)に対してその厚みを増すようにテーパ状に突出して形成されている。そのため、係止位置から解除位置方向(矢印Fの方向)に大きな力を加えると、スライド部材140は第二付勢手段134の付勢方向とは反対方向(後方)に押し込まれ、円筒状突起110a及び111aと段差140cとの係合が解除される。さらに、係止位置から解除位置方向(矢印Fの方向)に大きな力を加えることで、スライド部材140を係止位置から解除位置にスライドさせることができ、プラグ130の一端側と係止爪140aとの係止が解除される。
【0036】
落下等の衝撃では、通常、矢印Eの方向へ押し込んだ上で、矢印Fの方向に力を加えるといった力のかかり方はしない。また、落下等の衝撃では、力がかかるのは、一瞬であり、継続的に矢印Fの方向に力がかかることはない。よって、本実施形態にかかるロック構造は、意図しないプラグ130の露出を防止することができる。
【0037】
ロックが解除されると、プラグ130は、第二付勢手段134によって、第二付勢方向(図6(B)の矢印Cの方向)に付勢され、図9に示すように、プラグ130が前方に突出した状態となり、相手方レセプタクル等に挿入可能な状態(使用状態)となる。上ケース110及び下ケース111のプラグ用受部110f及び111eと(但し、図9中、プラグ用受部110fは省略する)、プラグ130の後方端130bとが当接し、第二付勢方向においてプラグ130の回動を規制する。なお、ロック解除後に、利用者がスライド部材140を離すと、スライド部材140は第一付勢手段150に付勢され、係止位置に戻る。このとき、スライド部材140の細溝部140fと円筒状突起110a及び111aが係合するので、スライド部材140が第一付勢方向に飛び出すことはない。
【0038】
プラグ130の使用が終わり、プラグ130をケース内に収納する場合には、第二付勢方向とは反対方向にプラグ130を押し込む。図10に示すように、スライド部材140の左側面に形成された傾斜面とプラグ130の先端が係合する。スライド部材140の左側面に形成された傾斜面は、第二付勢方向とは反対方向(後方)に向かって、第一付勢方向(左方向)に対して厚みを増すようにテーパ状に形成されている。さらに第二付勢方向とは反対方向にプラグ130を押し込むと、傾斜面を介して、スライド部材140は、第一付勢方向とは反対方向(右方向)に押し込まれる。言い換えると、第二付勢方向とは反対方向にプラグ130を押し込むことにより、スライド部材140が係止位置から解除位置方向へスライドするように、スライド部材140の左側端に傾斜面が形成されている。プラグ130を後方まで押し込むと、スライド部材140の左側面に形成された傾斜面とプラグ130の先端との係合が解除され、スライド部材140が第一付勢方向にスライドする。そして、プラグ130のシェル131の成す空間(プラグ130の一端側の先端の開口部)にスライド部材140の係止爪140aが入り込み、嵌り、ロック状態(図6参照)となる。このような構成により、収納の際の動作を簡略化することができる。仮に、スライド部材140がこのような形状でなかった場合、係止位置のスライド部材140を利用者が解除位置まで押し下げた上で、第二付勢方向とは反対方向にプラグ130を押し込む必要があり、動作が煩雑となる。
【0039】
<組立て>
図2を用いて、回転収納式コネクタ100の組立て方法を説明する。まず、本実施形態の回転収納式コネクタ100を備える電子機器等の筐体に下ケース111を固定する。次に、下ケース111の第二付勢手段用係止部111dに形成された穴に、プラグ130の第二付勢手段134の一端の下ケース用係止部134aを挿入する。プラグ130のプラグ孔部130aと下ケースの下ケース孔部111cとを合わせ、回転軸120を挿入する。
【0040】
一方、スライド部材140の第一付勢手段用穴140hに第一付勢手段150を挿入し、スライド部材140と第一付勢手段150を上ケース110に組込む。スライド部材140と第一付勢手段150とが組込まれた上ケース110を、回転軸120とプラグ130とが組込まれた下ケース111に被せ、ネジ止め等する。
【0041】
前述の通り、上ケース110には円筒状突起が3つ形成され、円筒状突起110a,110bと長円筒状突起110cは異なる二面に連続して形成されている(図4及び図11参照)。円筒状突起110aが溝140bに嵌り、円筒状突起110bが溝140gに嵌る。さらに、長円筒状突起110cが長円筒状突起用溝140dに嵌る。そのため、スライド部材140を上ケース110に組込む際に、スライド部材140を異なる二面で固定することができる。仮に、円筒状突起110aと110b、または、長円筒状突起110cのみの場合、上ケース110を下ケース111に被せる際に、上ケース110からスライド部材140が落下し、外れてしまう。そのため、スライド部材140を上ケース110と下ケース111とでスライド部材140を挟み込み、固定するまで、スライド部材140を上ケース110に対し手等で固定する必要があり、組立作業性が非常に悪い。本実施形態の場合、スライド部材140を異なる二面で固定することができるので、手等で固定せずとも、スライド部材140が落下することはなく、組立作業性が良い。
【0042】
また、前述の通り、スライド部材140の細溝部140fは、その幅が円筒状突起110a及び111aの直径よりも短く形成されている。スライド部材140と第一付勢手段150を上ケース110に組込むときに、スライド部材140が第一付勢方向に付勢されているが、細溝部140fと円筒状突起110a及び111aとが係合し、スライド部材の第一付勢方向の移動を制限することができる。仮に、細溝部140fがない場合には、第一付勢方向に付勢されたスライド部材140が、第一付勢方向に飛び出してしまうため、上ケース110と下ケース111でスライド部材140を挟み込むまで、スライド部材140を手等で位置固定しなければならず、組立作業性が悪い。本実施形態の場合、スライド部材の第一付勢方向の移動を制限することができるので、スライド部材140が第一付勢方向に飛び出すことがない。そのため、組立作業性が良い。
【0043】
<効果>
このような構成により、本実施形態に係る回転収納式コネクタ100のロック構造は、衝撃に強く、意図しないプラグの露出を防止することができる。
【0044】
<その他の変形例>
本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。例えば、以下のように変形等してもよい。
【0045】
必ずしも第二付勢手段134は必要ではく、プラグ130はケースから出る方向に付勢されていなくともよい。例えば、特許文献1のように、手動によりプラグをケース外部に露出させる回転収納式コネクタの場合にも、意図しないプラグの露出が起きうるが、本実施形態にかかるロック構造(ケースやスライド部材140、第一付勢手段150)を用いることで意図しないプラグ130の露出を防ぐことができる。
【0046】
円筒状突起110a,110b,111a及び111b、長円筒状突起110cは、他の筒状突起(四角筒状突起等)であってもよい。また、段差140cは、テーパ状でなくとも、第二付勢方向に突出して形成されていればよい。このような構成であっても、円筒状突起110a及び111aと段差140cとが係合するため、第一実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0047】
上ケースは円筒状突起110a及び110bのうち、円筒状突起110aのみを備える構成であってもよい。同様に下ケースは円筒状突起111aのみを備える構成であってもよい。また、各ケースに3つ以上の円筒状突起を備える構成であってもよい。このような構成であっても第一実施形態と同様の効果を得ることができる。但し、円筒状突起110a及び111aのみを備える構成の場合、スライド部材140が円筒状突起110a及び111aを軸とする回転方向にがたつく。
【0048】
また、ケース側に溝を備え、スライド部材側に突起を備える構成としてもよい。このとき、ケース側に備える突起または溝を第一係合手段と呼び、スライド部材側に備える溝または突起を第二係合手段と呼ぶ。また、ケースまたはスライド部材の溝が具備する段差を第二ロック手段と呼ぶ。なお、請求項における第一ロック手段は第一実施形態における係止爪を、第二ロック手段は第一実施形態における段差を、コネクタは第一実施形態におけるプラグを、含む概念とする。
【0049】
第一ボディ132及び第二ボディ133はそれぞれ図示しない係止部を備える。同様に上ケース110及び下ケース111はそれぞれ図示しない係止部を備える。例えば、一方が凸部や係止爪を備え、他方が凹部や係止溝を備え、嵌合して係止することで一体化する。また例えば、両方がねじ孔を備え、図示しないねじにより一体化する。
【0050】
第一付勢手段150は、スライド部材140を解除位置から係止位置方向へ弾性的に付勢するものであれば、圧縮コイルばね以外のもの(例えば、板ばね等のスプリングのほかスプリング同様の機能をなす、伸縮性のあるゴムやプラスチック等)であってもよい。同様に第二付勢手段134は、プラグ130をケースからでる方向に弾性的に付勢するものであれば、ねじりコイルばね以外のものであってもよい。
【0051】
本発明のロック構造のロック対象となる対象物は、回転収納式コネクタ、さらにはコネクタに限定されるものではなく、本発明のロック構造は、様々な対象物(コネクタや回転収納式コネクタを含む)をケース内部に収納し、係止するロック構造全般に適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明に係る回転収納式コネクタを各電子機器(例えば、直接PC等に取付けられたUSBコネクタ、IEEE1394コネクタの電子回路用コネクタに接続して使用する画像/動画撮影機器、音声録音再生機器、無線LANカード等の電子機器)に利用することができる。図12は本発明の回転収納式コネクタを備える動画撮影装置10の外観を示す。なお、回転収納式コネクタ100の回転軸120、第二付勢手段134及び第一付勢手段等は筐体11の内部に組込まれており、ケース(上ケース110及び下ケース111)は、動画撮影装置10の筐体11からなるものであってもよいし、筐体11の内部に組込まれる構成としてもよい。
【符号の説明】
【0053】
100 回転収納式コネクタ
110 上ケース
111 下ケース
120 回転軸
130 プラグ
134 第二付勢手段
140 スライド部材
150 第一付勢手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物が出入りする開口部と、第一係合手段と、を具備し、前記対象物を収納する空間が形成されているケースと、
前記ケース内部に前記対象物を係止する第一ロック手段と、前記第一係合手段と係合する第二係合手段と、を具備し、前記第一ロック手段が前記対象物を係止する係止位置とその係止を解除する解除位置との間をスライドするスライド部材と、
前記解除位置から前記係止位置方向へ前記スライド部材を弾性的に付勢する第一付勢手段と、を備え、
前記第二係合手段と前記第一係合手段との内、一方は突起であり、他方は前記突起が嵌るようにスライド方向に形成された溝であり、前記溝は第二ロック手段を具備し、
前記係止位置から前記解除位置方向へ前記スライド部材をスライドすると、前記突起と前記第二ロック手段とが係合し、前記対象物が前記ケースから出る方向とは反対方向に前記スライド部材を押し込むことで、前記溝と前記第二ロック手段との係合が解除され、さらに、前記係止位置から前記解除位置方向へ前記スライド部材をスライドさせることで、前記対象物と前記第一ロック手段との係止が解除される、
ロック構造。
【請求項2】
一端側に接続端子を備え、回動自在に支持されているコネクタが出入りする開口部と、筒状突起と、を具備し、前記コネクタを収納する空間が形成されているケースと、
前記ケース内部に前記コネクタの一端側を係止する係止爪と、前記筒状突起と係合する溝と、を具備し、前記係止爪が前記コネクタの一端側を係止する係止位置とその係止を解除する解除位置との間をスライドするスライド部材と、
前記解除位置から前記係止位置方向へ前記スライド部材を弾性的に付勢する第一付勢手段と、を備え、
前記スライド部材の溝には段差が形成され、
前記係止位置から前記解除位置方向へ前記スライド部材をスライドすると、前記筒状突起と前記段差とが係合し、前記コネクタの一端側が前記ケースから出る方向とは反対方向に前記スライド部材を押し込むことで、前記筒状突起と前記段差との係合が解除され、さらに、前記係止位置から前記解除位置方向へ前記スライド部材をスライドさせることで、前記コネクタの一端側と前記係止爪との係止が解除される、
ロック構造。
【請求項3】
請求項2記載のロック構造であって、
前記コネクタを前記ケースから出る方向に弾性的に付勢する第二付勢手段をさらに備え、
前記第二付勢手段に付勢された前記コネクタの一端側が、前記スライド部材を、前記コネクタが前記ケースから出る方向に付勢し、
前記スライド部材の溝の段差は前記コネクタが前記第二付勢手段の付勢方向に突出して形成されている、
ロック構造。
【請求項4】
請求項2または3記載のロック構造であって、
前記コネクタの一端側を前記ケースへ入る方向に押し込むことにより、前記スライド部材が前記係止位置から前記解除位置方向へスライドするように、前記スライド部材が形成されている、
ロック構造。
【請求項5】
請求項2から4の何れかに記載のロック構造であって、
前記ケースは、上ケースと下ケースとからなり、上ケースと下ケースの何れか一方に前記スライド部材の溝に嵌り、かつ、前記スライド部材を固定する筒状突起が、少なくとも2箇所、異なる面に連続して形成される、
ロック構造。
【請求項6】
請求項2から5の何れかに記載のロック構造であって、
前記スライド部材の前記溝には、スライド方向における移動を規制するための細溝部が形成されている、
ロック構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−209507(P2012−209507A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75563(P2011−75563)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000194918)ホシデン株式会社 (527)
【Fターム(参考)】