説明

ロック解除可能なアタッチ部材

【課題】 従来のアタッチ部材は一旦、ロック状態とするとそのロックを解除する事が原則として行なえず、ループ形成材を切断して商品から取り外すものとなっており、簡単に商品への着脱を繰り返し行なうことができないもので、仮にロック解除して繰り返し使用することを可能としてもその操作性が取り扱いずらいものとなっていたという点である。
【解決手段】 ロック解除可能なアタッチ部材は可撓性を有するループ形成材の一端に、少なくとも窓孔を形成し、その窓孔の周縁の一部あるいは近傍に係止部を備え、前記窓孔に連通する受孔を有する受部を固設し、前記ループ形成材の他端には、前記受部の受孔に挿入される挿入部を固設するとともに、その挿入部の一部に前記係止部と係合してロック状態とする係合部を備えたアタッチ部材に於いて、前記係合部は窓孔から露呈されるバネ片としてあることとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアタッチ部材、主として商品としての衣服類等に価格や品質あるいはブランドを示すタグを吊持するため、ループを形成するアタッチ部材であって、そのループのロック状態を解除して、何度でも使用したり、購入者が他の装飾用として利用することもできるようにしたロック解除可能なアタッチ部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上記した目的で使用されるアタッチ部材はループを形成する素材として伸延加工された強靭なプラスチック線材を用い、その一端に受孔と係止部を備えた受部を一体に固設し、他端に前記した受孔へ挿入され係止部に係合される係合部を備えた挿入部を一体に固設してあり、挿入部をタグの挿通孔へ通して吊持状態とし、その後に挿入部を受部の受孔へ挿入して係合部を係止部と係合してロック状態とすると、そのロック状態は外す事ができず、前記したプラスチック線材をカッターや鋏で切断して商品から取り除くこととする構成となっていた。
【0003】
また、上記したアタッチ部材は衣服のボタンホールやベルトループ等に於いて取り付けられるが、試着をする場合にはその存在が邪魔となるため、現状は安全ピンにこのアタッチ部材を取り付け、その安全ピンを衣服に対し着脱するという煩わしい作業が行なわれている。
【0004】
さらに、近時はブランドタグを吊持する際等は、装飾効果を得るため、プラスチック線材に代えて、チェーンや色彩を多様として素材、紐材等々をループ形成素材として使用する事が増えてきている。そして、かかる場合、このアタッチ部材は購入者は商品と共に持ち帰り、各自が携帯電話のストラップや身飾り品、バッグ等の装飾品と利用する事例も増えてきている。
【特許文献1】特願2006−160676号出願書類
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする問題点は、従来のアタッチ部材は一旦、ロック状態とするとそのロックを解除する事が原則として行なえず、ループ形成材を切断して商品から取り外すものとなっており、簡単に商品への着脱を繰り返し行なうことができないもので、仮にロック解除して繰り返し使用することを可能としてもその操作性が取り扱いずらいものとなっていたという点である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この問題点を解決するために、本発明に係るロック解除可能なアタッチ部材は可撓性を有するループ形成材の一端に、少なくとも窓孔を形成し、その窓孔の周縁の一部あるいは近傍に係止部を備え、前記窓孔に連通する受孔を有する受部を固設し、前記ループ形成材の他端には、前記受部の受孔に挿入される挿入部を固設するとともに、その挿入部の一部に前記係止部と係合してロック状態とする係合部を備えたアタッチ部材に於いて、前記係合部は窓孔から露呈されるバネ片としてあることを特徴とし、前記したバネ片は天面を弧面として、先端側が固定され、浮いた遊端を窓孔の一縁に係合するものとするとともに、前記受部の受孔にはこのバネ片をガイドするガイド溝が形成されていることを特徴としている。
【0007】
また、本発明に係るロック解除可能なアタッチ部材は可撓性を有するループ形成材の一端に、少なくとも窓孔を形成し、その窓孔の周縁の一部あるいは近傍に係止部を備え、前記窓孔に連通する受孔を有する受部を固設し、前記ループ形成材の他端には、前記受部の受孔に挿入される挿入部を固設するとともに、その挿入部の一部に前記係止部と係合してロック状態とする係合部を備えたアタッチ部材に於いて、前記係止部は窓孔の周縁下面に形成された円柱状の突起とし、前記係合部は挿入部の先端部分に形成されたL字状の溝としたことを特徴とし、前記した挿入部のL字状の溝を形成する壁面の先端側上面には挿入をガイドするガイドテーパが形成され、前記したL字状の溝の挿入部の軸芯と直交する部分は弧状の回転ガイド面が形成されていることを特徴としている。
【0008】
さらに、本発明に係るロック解除可能なアタッチ部材は可撓性を有するループ形成材の一端に、少なくとも窓孔を形成し、その窓孔の周縁の一部あるいは近傍に係止部を備え、前記窓孔に連通する受孔を有する受部を固設し、前記ループ形成材の他端には、前記受部の受孔に挿入される挿入部を固設するとともに、その挿入部の一部に前記係止部と係合してロック状態とする係合部を備えたアタッチ部材に於いて、前記係止部は窓孔内に一部を膨出する円柱状の突起とし、前記係合部は挿入部の先端部分に前端を開放したスパイラル溝としたことを特徴とし、前記スパイラル溝を形成する壁面は回転のガイドテーパ面とされていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るロック解除可能なアタッチ部材は上記のように構成されている。そのため、ロック状態からワンタッチのプッシュ作業あるいは回転作業を行なうのみで、容易にロックは解除され、商品から取り外す事ができる。また、再び取り付けロックする作業も容易となっているもので、商品購入後に需要者が種々の装飾目的に応用使用することに関しても使い勝手が良いものとなっている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図面として示し、実施例で説明したように構成することで実現した。
【実施例1】
【0011】
次に、本発明の好ましい第一実施例を図1乃至図10を参照して説明する。図1は本発明の第一実施例を示すアタッチ部材のロック状態を示す断面図、図2は同じく平面図、図3は同じく他方向からの断面図、図4は受部を示す平面図、図5は同じく側面図、図6は同じく正面図、図7は同じく挿入部を示す平面図、図8は同じく側面図、図9は同じく正面図、図10は同じく背面図である。
【0012】
この図1乃至図10にあって1はループ形成材を示しており、この実施例にあっては糸を想定している。このループ形成材1の一端にはポリプロピレンあるいはナイロンあるいはポリアセタールで成形された受部2が一体的に固着されている。この一体的な固着構造はループ形成材1の端部に球状部1aを構成し、この球状部1aを受部2の基端に設けられる透孔内に接着剤と共に圧入し、脱落防止を図っている。
【0013】
また、この受部2は全体として断面楕円状の有底筒体となっており、先端面に後述する挿入部が挿し込まれる開口を有する受孔3が形成され、この受孔3は受部2の一部に形成された窓孔4と連通されている。この窓孔4が形成された面の先端側には補強と操作時の指の滑り止めとなるリブ5、5が一体に形成されている。
【0014】
この受部2にあっては、窓孔4のリブ5、5側の開口縁4aが後述する挿入部の係合部となるバネ片の係止部となるもので、前記受孔3にはこのバネ片の挿入をガイドする溝部3aが形成されている。
【0015】
一方、図中6はループ成形材1の他端に固着されたポリプロピレンあるいはナイロンあるいはポリアセタールで成形された挿入部であり、この場合の固着は挿入部6の基端から先端まで形成されている貫通孔内に接着剤とともにループ成形材1の他端部分を圧挿通することによりなされ、脱落防止を図っている。
【0016】
この挿入部6は上面を平坦とし、底面の長手方向に沿ったエッジ部分は受孔3に沿うようにアール形成されている。上面には挿し込み作業を行なうための操作部7が設けられ、この操作部7は基端側が指腹で押し易いようにスロープが形成され、かつ、滑り止め用のリブ8、8‥が本実施例では三つ一体に並設されている。
【0017】
また、挿入部6の上面先端側には係合部としてのバネ片9が備えられている。このバネ片9は弧状に形成され、その基端を挿入部6の上面先端縁に沿って設けられているもので、遊端9aが前記した受部2の窓孔4の開口縁4aと係合してロック状態、即ちループ成形材1をループ状態に安定させることとなる。
【0018】
ここで、必要に応じてバネ片9、特にその遊端9aを窓孔4を通して押し下げることで、ロック状態は解除され、アタッチ部材そのものを被装着体から取り外す事ができる。
【実施例2】
【0019】
次いで、図11乃至図16を参照して本発明の好ましい第二実施例を説明する。図11は本発明の第二実施例を示すアタッチ部材のロック状態を示す平面図、図12は同じく正面図、図13は同じく受部を示す平面図、図14は同じく側面図、図15は同じく挿入部を示す平面図、図16は同じく側面図である。
【0020】
この図11乃至図16にあって1は第一実施例と同様のループ成形材としての糸を示し、このループ成形材1と受部、挿入部との固着構造は第一実施例と同様である。
【0021】
ループ成形材1の一端に固着された受部10は基端がすぼまったポリプロピレンあるいはナイロンあるいはポリアセタールで成形された有底円筒状をしており、先端に後述する挿入部が挿し込まれる開口を形成した受孔11が設けられ、この受孔11は受部10の一部に設けられた窓孔12と連通している。また、この窓孔12の先端側縁の下方には略円柱として形成されている係止部としての突起13が一体に備えられている。
【0022】
一方、ループ成形材1の他端に固着された挿入部14はポリプロピレンあるいはナイロンあるいはポリアセタールで成形された略円柱状のものとされ、その先端に底面は本体部分と面一とし、上方は略矩形とした装着部15が一体に形成されている。そして、この装着部15の先端側上面は挿入をガイドするためのテーパ面15aが形成されるとともに、挿入部14の軸芯方向に沿った長溝16aとその長溝16aと直交する短溝16bが形成され、この長溝16aと短溝16bは連通されて略L字状の溝となっている。また、長溝16aの先端側は開放され、短溝16bの奥端は後述するロック時の回転ストッパ壁となっているもので、この短溝16bの溝底面は回転をガイドする弧状となっている。さらには、長溝16aの両壁面は挿入をガイドするため、上方に向かって拡開するテーパ面16c、16cが形成されている。
【0023】
この第二実施例の場合、挿入部14を受部10の受孔11へ挿入してロック状態とするには、挿入部14の長溝16aを受部10の突起13に沿わせて受孔11の開口から挿入し、その突起13が長溝16aの奥端に当接した時点で挿入部14を略90度、短溝16bを突起13に沿わせて回転する。この回転は短溝16bの奥壁で停止されて位置決めされる。この状態で突起13は係合部としての短溝16bの両壁16d、16dと係合し、その位置から引き抜きや更なる挿入は抑制されてロック状態となり、ループ成形材1によるループが形成される。
【0024】
このロック状態を解除するには、挿入部14をロック時と逆方向に略90度回転させ、突起13の位置を短溝16bから長溝16aへ戻せば、そのまま引き抜くことで完了する。尚、このロック時、その解除時の回転作業は挿入部14側ではなく、受部10側を回転させることでも同様の効果が得られる。この第二実施例にあって窓孔12は主としてロック状態を目視確認するためのものとなる。
【実施例3】
【0025】
さらに、図17乃至図21を参照して本発明の好ましい第三実施例を説明する。図17は本発明の第三実施例を示すアタッチ部材のロック状態を示す平面図、図18は同じく正面図、図19は同じく受部の平面図、図20は同じく側断面図、図21は同じく挿入部を示す平面図である。
【0026】
この図17乃至図21にあって1は第一実施例、第二実施例と同様のループ成形材としての糸を示し、このループ成形材1と受部、挿入部との固着構造は第一実施例、第二実施例と同様である。
【0027】
ループ成形材1の一端に固着された受部17は基端がすぼまったポリプロピレンあるいはナイロンあるいはポリアセタールで成形された有底円筒状をしており、先端に後述する挿入部が挿し込まれる開口を形成した受孔18が設けられ、この受孔18は受部17に対称的に設けられた窓孔19、19aと連通している。また、一方の窓孔19の先端側縁には一部を窓孔19内に膨出し、略円柱状として形成されている係止部としての突起20が一体的に備えられている。
【0028】
一方、ループ成形材1の他端に固着された挿入部21はポリプロピレンあるいはナイロンあるいはポリアセタールで成形された略円柱状のものとされ、その先端側から途中までの外面にスクリュー溝22が形成されている。このスクリュー溝22の底面の幅は前記した突起20の外径と略一致するものとされ、両壁面は上方へ向かって拡開するテーパ面とされ、このスクリュー溝22の先端側は突起20を受け入れるため開放された構成となっている。
【0029】
この第三実施例にあって、ロック状態とするためには、挿入部21を先端から受孔18へ挿し込む際に、スクリュー溝22の先端開放部分を突起20に沿わせる。そして突起20がスクリュー溝22の壁面と当接した時点で挿入部21を略180度回転させてやると、スクリュー溝22が突起20に沿って受部17内へ入り込み、スクリュー溝22の壁面間に突起20が位置されることで、引き抜きが抑制されることとなる。
【0030】
また、このロック状態を解除するためには、挿入部21を逆方向に回転させてやることで、突起20はスクリュー溝22から外れ、引き抜く事ができる。尚、ロック時、ロック解除時の回転作用は挿入部21に代えて受部17側を回転させてやることでも同様に実行できる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の実施例は上記したように構成されている。この実施例ではループ成形材1として糸を想定しているが、これは延伸加工したプラスチック線材やチェーン、ボールチェーン、紐、ゴム紐等を可撓性を有してループを成形する事ができる素材ならば使用する事が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第一実施例を示すアタッチ部材のロック状態を示す断面図である。
【図2】平面図である。
【図3】他方向からの断面図である。
【図4】受部を示す平面図である。
【図5】側面図である。
【図6】正面図である。
【図7】挿入部を示す平面図である。
【図8】側面図である。
【図9】正面図である。
【図10】背面図である。
【図11】本発明の第二実施例を示すアタッチ部材のロック状態を示す平面図である。
【図12】正面図である。
【図13】受部を示す平面図である。
【図14】側面図である。
【図15】挿入部を示す平面図である。
【図16】側面図である。
【図17】本発明の第三実施例を示すアタッチ部材のロック状態を示す平面図である。
【図18】正面図である。
【図19】受部の平面図である。
【図20】側断面図である。
【図21】挿入部を示す平面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 ループ成形材
2 受部
3 受孔
3a 溝部
4 窓孔
4a 開口縁
5 リブ
6 挿入部
7 操作部
8 リブ
9 バネ片
10 受部
11 受孔
12 窓孔
13 突起
14 挿入部
15 装着部
16a 長溝
16b 短溝
16c テーパ面
16d 壁面
17 受部
18 受孔
19 窓孔
19a 窓孔
20 突起
21 挿入部
22 スクリュー溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有するループ形成材の一端に、少なくとも窓孔を形成し、その窓孔の周縁の一部あるいは近傍に係止部を備え、前記窓孔に連通する受孔を有する受部を固設し、前記ループ形成材の他端には、前記受部の受孔に挿入される挿入部を固設するとともに、その挿入部の一部に前記係止部と係合してロック状態とする係合部を備えたアタッチ部材に於いて、前記係合部は窓孔から露呈されるバネ片としてあることを特徴とするロック解除可能なアタッチ部材。
【請求項2】
前記したバネ片は天面を弧面として、先端側が固定され、浮いた遊端を窓孔の一縁に係合するものとするとともに、前記受部の受孔にはこのバネ片をガイドするガイド溝が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のロック解除可能なアタッチ部材。
【請求項3】
可撓性を有するループ形成材の一端に、少なくとも窓孔を形成し、その窓孔の周縁の一部あるいは近傍に係止部を備え、前記窓孔に連通する受孔を有する受部を固設し、前記ループ形成材の他端には、前記受部の受孔に挿入される挿入部を固設するとともに、その挿入部の一部に前記係止部と係合してロック状態とする係合部を備えたアタッチ部材に於いて、前記係止部は窓孔の周縁下面に形成された円柱状の突起とし、前記係合部は挿入部の先端部分に形成されたL字状の溝としたことを特徴とするロック解除可能なアタッチ部材。
【請求項4】
前記した挿入部のL字状の溝を形成する壁面の先端側上面には挿入をガイドするガイドテーパが形成され、前記したL字状の溝の挿入部の軸芯と直交する部分は弧状の回転ガイド面が形成されていることを特徴とする請求項3に記載のロック解除可能なアタッチ部材。
【請求項5】
可撓性を有するループ形成材の一端に、少なくとも窓孔を形成し、その窓孔の周縁の一部あるいは近傍に係止部を備え、前記窓孔に連通する受孔を有する受部を固設し、前記ループ形成材の他端には、前記受部の受孔に挿入される挿入部を固設するとともに、その挿入部の一部に前記係止部と係合してロック状態とする係合部を備えたアタッチ部材に於いて、前記係止部は窓孔内に一部を膨出する円柱状の突起とし、前記係合部は挿入部の先端部分に前端を開放したスパイラル溝としたことを特徴とするロック解除可能なアタッチ部材。
【請求項6】
前記スパイラル溝を形成する壁面は回転のガイドテーパ面とされていることを特徴とする請求項5に記載のロック解除可能なアタッチ部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2009−143619(P2009−143619A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−325823(P2007−325823)
【出願日】平成19年12月18日(2007.12.18)
【出願人】(000134464)株式会社トスカ (23)
【Fターム(参考)】