説明

ロボットセル

【課題】ロボットステーションの小型化と、メンテナンス性及び高剛性の両立が可能なロボットセルを提供する。
【解決手段】 複数のロボットによって部品を組立てるロボットセルにおいて、一対のロボットアーム102をそれぞれ搭載した複数の架台101を互いに隣接させてそれぞれ収容する複数のブース103を設ける。各架台101の一側面は、電源コントローラボックス106を出入するための開口部101aを有し、開口部101aによって架台101の剛性が低下するのを補うため、各ブース越しに互いに隣接する2つの架台101を接続部材120によって結合する。各接続部材120の両端部は、それぞれビスによって両側の架台101に締結される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生産システムに組込まれるロボットを有するユニット化された汎用組立装置(ロボットステーション)を組合わせて構成されるロボットセルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、小型の電機製品、電子製品等は、多品種少量生産化や製品サイクルの短期化が進んでおり、これらを生産する生産ラインも、生産対象となる製品にあわせて、ライン構成の組換えが頻繁に行われる傾向がある。こうした生産ラインは、他の製品に移行する際、ライン変更に時間や専用の治具を作る必要があるため、ある程度、まとまった数が出ない場合は、自動化を見送り人手によるセル生産で対応しているものが多い。しかしながら近年では、このような場合にあっても、製品の品質の安定や、急激な生産増加等に対応するため、生産ラインの自動化が望まれている。
【0003】
そこで、特許文献1、特許文献2に開示されたように、汎用利用可能なロボットステーションが注目されている。これらロボットステーションを利用したロボットセルは、被加工物であるワークの加工、組立、搬送に、汎用的に利用可能な複数のロボットステーションを、その都度、生産計画に応じて再配列して、新たなロボットセルを構築することができる。また、急激な生産増加等にも、生産縮小する生産ラインから、汎用的なロボットステーションを取り外し、他のロボットセルに転用することで、対応することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平07−001298号公報
【特許文献2】特開2008−229738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなロボットステーションを構成するうえで、重要な要素は、ロボットステーションの小型化と高速化である。汎用的に使えるロボットステーションであっても、人の組立ラインに対して大きな占有面積を占めたり、人手作業より時間がかかってしまってはメリットが少なくなる。
【0006】
特許文献1に開示されたロボットステーションは、相反する方向に搬送可能な一対のコンベア装置と、コンベア装置の可動部上に載置されるワーク搬送パレットと、ワークの加工、組立等を行うロボットや測定装置とを単一のステーション内に収容している。筐体の架台部分の内部には、ステーションに載置されるロボットや測定装置の制御部が構成されている。これらのロボットステーションを連結ピンで複数台連結し、複数台のロボットステーションの始端及び終端に搬送パレット折返し手段を設けて生産ラインを構成している。これにより、生産ラインの設置、移動及び工程変更を容易に行なうことができる。
【0007】
また、特許文献2に開示されたロボットステーションは、円弧状の動作領域を持つロボットアームを天井部に有し、ロボットステーションのワークスペースは、六角形状をしている。天井部には、ロボットステーション周囲を見渡せるカメラを有し、ロボットステーションが自律走行可能な走行台車を有し、生産計画に応じた生産ラインを自動的に構成できるようにしている。
【0008】
しかしながら、これらのロボットステーションでは、移動及び工程変更の容易性を重視した生産システムとなっているため、以下のような未解決の課題がある。
【0009】
特許文献1に開示されたロボットステーションでは、ステーション単体での剛性を確保する必要があるため、筐体の架台部分を強固で太い構造部材で構成することになる。これにより架台内部の容積が制約され、小型化しようとすると、容積の縮小と同時に制御部へのメンテナンスのためのスペースが確保できず、作業性が悪くなる。
【0010】
メンテナンス性を確保するため、架台の構造部材の一部を切り欠くなどすると、こんどは架台の剛性が落ちる。剛性が落ちることで、ロボットの動作により架台自体も振動し、ロボットアーム先端部での振動が大きくなり、組立や搬送等での不良が発生する。また、振動が所望の振幅に静定するのに時間がかかり、タクトタイムが伸びてしまう等の不具合が発生する。さらに、剛性が落ちるのを防止するため、切り欠いた部分に蓋をするように補助部材を設けた場合は、架台内部へのアクセスの際にいちいち外す作業が必要となり、メンテナンス性は落ちてしまう。このように、メンテナンス性と架台の高剛性を両立させることが難しい。
【0011】
また、特許文献2に開示されたロボットステーションでは、架台の底部に走行台車を備えていることで、架台自体の構造に剛性があっても床面に対する剛性は確保できない。走行台車があることで、架台自体は不安定で架台内部の収容容積も制約されることから、特許文献1と同様に、ロボットステーションの小型化及びメンテナンス性と高剛性の両立が不可能であると言う課題がある。
【0012】
本発明は、ロボットステーションの小型化において、特に架台のメンテナンス性と高剛性の両立が可能なロボットセルを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明のロボットセルは、複数のロボットによって部品を組立てるロボットセルにおいて、前記複数のロボットをそれぞれ搭載した複数の架台と、各架台の一側面に開口する開口部と、前記複数の架台を各架台の前記開口部が同じ開口方向を向くように互いに隣接させて、各架台の前記一側面において、互いに隣接する2つの架台を結合する接続部材と、前記互いに隣接する2つの架台に、前記接続部材の両端部をそれぞれ面接触させて締結する手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
隣接するロボットステーションの架台の開口部において、互いに隣接する架台の支柱に接続部材を面接触させて結合することで、メンテナンス性を確保しつつ、架台の剛性を向上させることができる。これにより、ロボットアームを高速動作させたときの振動を抑制し、組立や搬送による不良を防ぐことができ、また、静定時間を短くしてタクトタイムの短縮に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例1によるロボットセルに係るもので、(a)は各ロボットステーションの構成を示す斜視図、(b)はロボットセル全体を示す斜視図である。
【図2】図1のロボットステーションの架台部を示すもので、(a)は各架台の構成を示す斜視図、(b)は3個の架台の接続構成を示す斜視図である。
【図3】図1のロボットステーションの架台部と電源コントローラボックスを示す斜視図である。
【図4】実施例2によるロボットセルのロボットステーションの架台部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0016】
図1は、実施例1によるロボットセルを示す。この装置は、部品を組立てるためのロボットをそれぞれ搭載する複数のロボットステーション100を組合わせたものである。図1(a)に示すように、各ロボットステーション100は、架台101、ロボットを構成する一対のロボットアーム102、ブース103、カメラ104、照明105を基本構成とする。図1(b)に示すように、このロボットステーション100を複数組合わせて、一連の生産システムであるロボットセルを構築している。
【0017】
各ブース103は架台101を収容し、架台上のワークスペースに対して、ワークや供給された部品の位置姿勢を計測するためのカメラ104を固定するため、剛性を持つ支柱により組上げられた骨組体である。ブース103の幅方向は、架台101とブース支柱が接触しない程度に離間する程度の大きさとする。また、ブース長手方向は、ロボットアーム102のエンドエフェクタを含めた可動範囲を干渉せずに包含する大きさとする。高さ方向は、架台高さにエンドエフェクタ含めたロボットアーム102の最大到達高さ以上で、カメラ撮影の焦点距離に合わせた高さとする。架台101は、ブース103の設置エリアのほぼ中央部に設置する。
【0018】
ブース上部には、組立てるワークや供給された部品の位置を計測するカメラ104や、撮影用の照明105が設置してあり、これらは、撮影に最適な条件が出せるよう、位置姿勢を調整できる機構を持っている。
【0019】
図2(a)は、架台101の構成を示す。各架台101は、一対のロボットアーム102を搭載し、ロボットが各種作業を行うためのワークスペースを提供する箱体であり、ステンレス製の天板110がワークスペースの役目を果たし正方形状になっている。この天板110には、ロボットアーム102が使用する各種のツール等を載置するための台座や、部品を入れておくトレイ等を供給する供給装置等が固定できる構成になっている。
【0020】
架台101は、天板110と、支柱111、上側梁112、下間梁113、中側梁114からなる構造体と、一側面を除く残りの側面に配置された側面板115と、を有し、前記一側面のみ中間梁と下側梁が欠落し、該側面に開口する開口部101aを形成する。
【0021】
架台101の構造体の下面には、移動が容易にできるようにキャスターが配置され、天板110の水平高さ出しのための調整ねじのついた足116が設置されている。また、ロボットの稼動に伴う振動を抑えるため、架台自体を床面にアンカーボルトを打ち込み、絞め込んで固定するための固定金具が設けられている。
【0022】
ロボットアーム102は、6軸制御可能なロボットアームであり、各アームの先端部分には、各種作業に応じて様々なエンドエフェクタを取り付けることができる。エンドエフェクタは、人間の手、指に相当する部分であり、例えば、一方のロボットアームには細かい作業を可能にする小型のエンドエフェクタを装着し、他方には比較的大きな部材を扱うエンドエフェクタを装着している。
【0023】
ロボットアーム102の制御には、アーム内に内蔵されているモータの制御を行い、指令値にそった動作を行うためのロボットコントローラや電源が必要となる。また、ロボットアームがワークの組立に使用する電動ドライバーなどのコントローラや電源も必要となる。これらロボットステーション内で使用されるコントローラや電源類は、架台101の内部に一括して搬出入される電源コントローラボックス106として配置される。電源コントローラボックス106は、底面にキャスターが取り付けられ、メンテナンス等の際に各ロボットステーション100の架台101の開口部101aから前面方向(開口方向)に引き出すことができる。
【0024】
このロボットステーション100を複数組合わせて一連の生産システムであるロボットセルを構成する。このとき、各架台101の開口部101aは、ブース長手方向に対して垂直な面内に配置される。すなわち、各架台101の開口部101aが同じ開口方向(ブース長手方向)を向くように互いに隣接させて並べる。ここで、ロボットステーション100の手前側をメンテナンス側、反対側を部品供給側と決める。これにより、トレイによる部品供給をロボットセルの片側に集約し、自動搬送車等による効率的な部品供給を行う。また、図中手前側のメンテナンス側は、人による立ち入ることができるエリアとして位置付けられ、自動化部分と人が介在する部分をロボットセルにて分離することができ、安全面への配慮を施したシステムとしている。
【0025】
図3に示すように、各ロボットステーション100の架台101の内部には、電源コントローラボックス106が架台容積ぎりぎりに搬出入可能にて収納される。架台101には開口部101aがあるため、架台101は、この開口部101aを有する側面において剛性が落ちることになる。ロボットが動作した際に、この剛性の弱い方向に揺れが発生し、ワークの搬送や組立における不良発生が懸念される。
【0026】
そこで、架台101の開口部101aを有する側面に、各ブース越しに互いに2つの隣接する架台101を面接触により剛体結合する接続部材120を設ける。面接触による剛体結合は、架台101の開口部101aの支柱111に面接触する接続部材120の両端部を、高さ方向にできるだけ大きく取り、締結する手段であるビス止め部121は、3点以上で狭ピッチな多点締結部とすることによって実現される。
【0027】
このように、隣接する架台101が一体化されることで、ロボットセル全体として架台101の剛性を上げることにより、ロボットアーム102の高速動作による振動を抑制し、組立や搬送による不良を防ぐことができる。また、静定時間も短くしてタクトタイムを短縮できる。同時に、電源コントローラボックス106の出し入れが自由に行えるため、メンテナンス性と高剛性の両立を可能する。
【実施例2】
【0028】
図4は、実施例2によるロボットセルを示す。実施例1との違いは、隣接するロボットステーション100の架台101の支柱111との接続方法が異なる接続部材130を用いた点のみである。本実施例は、互いに隣接する架台101の支柱111間に接続部材130を配置し、支柱同志の対向面に接続部材130の両端部を面接触させて締結し、剛体結合することで架台101の剛性を上げるものである。
【0029】
なお、架台の開口部が2つの側面に設けられている場合は、接続部材による接続部がもう一面増えるのみで、基本的な構成及び効果は実施例1及び実施例2と同様である。
【符号の説明】
【0030】
100 ロボットステーション
101 架台
102 ロボットアーム
111 支柱
120、130 接続部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のロボットによって部品を組立てるロボットセルにおいて、
前記複数のロボットをそれぞれ搭載した複数の架台と、
各架台の一側面に開口する開口部と、
前記複数の架台を各架台の前記開口部が同じ方向を向くように互いに隣接させて、各架台の前記一側面において、互いに隣接する2つの架台を結合する接続部材と、
前記互いに隣接する2つの架台に前記接続部材の両端部をそれぞれ面接触させて締結する手段と、を有することを特徴とするロボットセル。
【請求項2】
各ロボットを制御するための電源コントローラボックスを有し、
前記電源コントローラボックスは、各架台の前記開口部から搬出入されることを特徴とする請求項1に記載のロボットセル。
【請求項3】
前記電源コントローラボックスは底面にキャスターを有し、前記開口部から一括して搬出入可能に架台に収納されていることを特徴とする請求項2に記載のロボットセル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−224742(P2011−224742A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−97994(P2010−97994)
【出願日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】