説明

ロボット・ハンドによるドラム天地板の受払い方法およびその装置

【課題】 ロボットハンドによりドラム天地板のセンタリングと同時に天地板を掴ませて天地板の受払いを行う方法およびその装置を提供する。
【解決手段】 ドラム缶製造ラインにおけるボンデ処理前後の天地板を籠から受払いする工程において、天地板をセンタリングさせ、常に同位置をロボットハンドにて天地板を掴ませて天地板の受払いを行うことを特徴とするロボット・ハンドによるドラム天地板の受払い方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットハンドによりドラム天地板のセンタリングと同時に天地板を掴ませて天地板の受払いを行う方法およびその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ドラム缶の連続製造ラインは、胴体成形ラインと天板成形ラインおよび地板成形ラインを備え、各ラインで成形された胴体、天板および地板がドラム缶組立ラインに供給され、ここでドラム缶製品として組立てられるようになっている。この場合、胴体成形ライン、天板成形ラインおよび地板成形ラインから供給された各々の胴体と天板および地板は一体として化成処理ラインに搬送され、りん酸亜鉛皮膜処理(いわゆるボンデ処理)が行われた後ドラム缶成形ラインで仮ばめ装置、巻締め機にてドラム缶に成形され、気密試験が行われ、その後塗装ラインにて外面塗装および内面塗装がされ、最終的に仕上げラインで内面検査、秤量、マーキング等が行われて最終製品が得られる。
【0003】
上述したような工程において、例えば特開平5−213447号公報(特許文献1)に開示しているように、上記胴体成形ラインと天板成形ラインおよび地板成形ラインでの供給バランスの関係から、天地板の取り込みおよび送り出については、天地板成形ラインから引続き天地板を移送する天地板搬送コンベアの横に作業者が付き、取り込みに際しては、その作業者が搬送コンベア上に載せるという人手による作業で行われていたものを、天板の取り込みおよび送り出しを自動的に行うことで省力化および作業能率の向上を図り、また、集積蓋板を立体的に収納することで工場内の限られたスペースを有効に利用した保管ができるドラム缶用天地板供給装置を提供するものである。
【特許文献1】特開平5−213447号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1は確かに胴体成形ラインと天板成形ラインおよび地板成形ラインでの自動化は改善されているが、しかし、ボンデ処理でのドラムを胴体、天板および地板の3ピースの状態で化成処理を行うための、天板および地板をハンガーセットおよび降ろす工程については未だ人手によらざるを得なかったのが実状である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述したような問題を解消するために、発明者らは鋭意開発を進めた結果、天板および地板をハンガーに装着および降ろす工程をロボット化し、天板と地板をセンタリングするためのアームを配設することにより、天板と地板をロボットで安定して掴むことにより、胴体と天地板の受払い作業を自動化することにより、人手による作業における省力化および作業能率の向上を図る方法を提供するものである。
【0006】
その発明の要旨とするところは、
(1)ドラム缶製造ラインにおけるボンデ処理前後の天地板を籠から受払いする工程において、天地板をセンタリングさせ、常に同位置をロボットハンドにて天地板を掴ませて天地板の受払いを行うことを特徴とするロボット・ハンドによるドラム天地板の受払い方法。
(2)前記(1)に記載の天地板を籠から受払いする工程において、天地板をセンタリング用アームで持ち上げ、天地板をセンタリングしながら胴体側に傾けてから、ロボット・ハンド部で天地板のフランジを掴みことを特徴とするロボット・ハンドによるドラム天地板の受払い方法。
【0007】
(3)前記(2)に記載の天地板をセンタリング用アームで40〜60mm持ち上げ、胴体側に3〜5°傾けたことを特徴とするロボット・ハンドによるドラム天地板の受払い方法。
(4)ボンデ処理設備の入口部と出口部にロボットを設置し、該ロボット・ハンドによる掴み治具に天地板をセンタリングするためのアームを設けたことを特徴とするロボット・ハンドによるドラム天地板の受払い装置にある。
【発明の効果】
【0008】
以上述べたように、本発明による天板と地板をロボットで安定して挟み掴むことにより、胴体と天地板の受払い作業を自動化することにより、人手による作業における省力化および作業能率の向上を図る極めて優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明について図面に従って詳細に説明する。
図1は、ボンデ処理ライン出口部での天地板の取り出し状態を示す概略図である。この図1に示すように、トロリーコンベア1で籠2に胴体3と天板4および地板5がセットで搬送されて、天地板チャック用エアーシリンダー6で天板4および地板5のフランジ部7をチャックする。その後天地板昇降用油圧シリンダー8にて天板4および地板5を持ち上げる。一方、天地板前進・後退用油圧シリンダー9にて後退し、天地板回転用油圧シリンダー10にて天地板を90°回転させ、天地板昇降用油圧シリンダー8にて天板4および地板5を降下させる。
【0010】
その後、天地板チャック用エアーシリンダー6で天板4および地板5をフランジ部7をチャックしている天板4または地板5を開放させる。そして天地板用横転機11が90°横転し、ローラーコンベア12にて天板4および地板5が搬送される。このような天地板の動作が行われる。上述した操作はボンデライン出口部の天地板取り出しについて説明したが、天地板を挿入させる場合の操作は全く逆の操作であって、ローラーコンベア12にて天板4および地板5が搬送されて来た天地板を天地板回転用油圧シリンダー10にて天地板を90°回転させ、天地板前進・後退用油圧シリンダー9にて後退させた後天地板昇降用油圧シリンダー8にて天板4および地板5を持ち上げ、トロリーコンベア1で籠2に胴体3と天板4および地板5がセットで搬送される。この動作の繰り返し作業する装置である。
【0011】
図2は、本発明に係るボンデラインでのロボットによる天地板を胴体に挿入ないし払出しするためのレアウトを示す図である。天地板搬送コンベア13により天板および地板が送られて天地振分け装置18により天板および地板が振分けられ、一方は天板搬送コンベア15により、また、一方は地板搬送コンベア16により、ロボット20に送られる。胴体は胴体搬送コンベア17から胴体挿入装置23を介して自動受台追従装置21に搬送され籠回転22により自動受台追従装置21にセットされる。セットに当たっては、ロボット20を用いて胴体3に天板4および地板5がセットされる。このロボット20によって自動的にセットされた胴体、天地板セット19はボンデライン14に搬送されて塗装下地処理であるりん酸亜鉛皮膜処理、いわゆるボンデ処理が行われる。
【0012】
りん酸亜鉛皮膜装置により胴体、天地板にボンデ処理が行われた後、水切乾燥炉(図示せず)にて乾燥された胴体、天地板セット19を、ロボット20によって自動的にセットされた胴体、天地板セット19をロボット・ハンドにて保持した後、籠回転22により自動受台追従装置21にセットされ、胴体払出装置24によって、天板4ないし地板5と胴体3に分離されドラム缶成形ラインに搬送される。
【0013】
図3は、本発明に係る自動受台追従装置の全体概念図である。この図3に示すように、トロリーコンベアで籠2に胴体3が搬送され、籠2に天地板がセットされる自動受台追従装置である。この自動受台追従装置によって胴体籠取り出し、積込みが行われる。なお、符号25は自動受台の追従のためのLMブロック、26は自動受台の追従のためのサーボモーター、27は自動受台の追従のためのLMガイドレール、28はサポートヤユニット固定、29は籠揺れ対策のための平行ハンドシリンダー、30は揺れ防止のためのロッドレスシリンダーを示す。
【0014】
図4は、本発明に係るロボット・セット用ハンドを示す図である。この図4に示すように、ロボット20はコンパクトで強力な吸着パット31により天板4ないし地板を吸着するロボット・セット用ハンドである。図5は、本発明に係るロボット・セット用ハンドによる天地板の取出しハンド装置の概略図である。この図5に示すように、ロボット20のハンド部にフレーム35を設け、該フレーム35に掴むためのハサミ34と共にセンタリング用アーム32を配設する。また、フレーム35の先端に吸着パットを有するロボット・セット用ハンド33を設けて、天地板4、5のセンターを吸着し、かつ天地板4、5のフランジ部を掴み保持するように構成する。
【0015】
なお、符号36はシリンダーブラケットを示し、37はクランプ、38はセンサーブラケット、39はプレート、40はロケーター、41はクランプシリンダー、42は近接スイッチをそれぞれ示す。図6は、本発明に係るロボット・ハンドの動作を示す概略図である。図6(a)は天地板をセンタリング用アームでLの長さ持ち上げる状態を示しており、また、図6(b)はRの角度を胴体側に傾けている状態を示している。この図6に示すように、天地板4、5をセンタリング用アーム32でLの長さ、例えば40〜70mm、好ましくは40〜60mm持ち上げ、天地板4、5をセンタリングしながら、Rの角度を3〜7°、好ましくは4〜6°胴体側に傾けてから、ロボットハンドのハサミ34で天地板4、5のフランジ部7を掴み保持して、天地板を籠から取出し移送ラインに載る作業をロボットにて自動的に行う。
【0016】
上述したように、ドラム缶製造工程において、ボンデ処理前後の天地板を籠に挿入ないし取出す工程において、天地板をロボット・ハンドによりセンタリングさせ、何時も同じ位置にロボット・ハンドにて、天地板を挟み掴ませて籠に胴体、天地板を受払い作業をロボットにて自動化させることにより人手を必要とせず、しかも設備の安定稼働が可能となり、作業能率の向上を図る極めて優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】ボンデ処理ライン出口部での天地板の取り出し状態を示す概略図である。
【図2】本発明に係るボンデラインでのロボットによる天地板を胴体に挿入ないし払出しするためのレアウトを示す図である。
【図3】本発明に係る自動受台追従装置の全体概念図である。
【図4】本発明に係るロボット・セット用ハンドを示す図である。
【図5】本発明に係るロボット・セット用ハンドによる天地板の取出しハンド装置の概略図である。
【図6】本発明に係るロボット・ハンドの動作を示す概略図である。
【符号の説明】
【0018】
1 トロリーコンベア
2 籠
3 胴体
4 天板
5 地板
6 天地板チャック用エアーシリンダー
7 フランジ部
8 天地板昇降用油圧シリンダー
9 天地板前進・後退用油圧シリンダー
10 天地板回転用油圧シリンダー
11 天地板用横転機
12 ローラーコンベア
13 天地板搬送コンベア
14 ボンデライン
15 天板搬送コンベア
16 地板搬送コンベア
17 胴体搬送コンベア
18 天地振分け装置
19 天地板セット
20 ロボット
21 自動受台追従装置
22 籠回転
23 胴体挿入装置
24 胴体払出装置
25 LMブロック
26 サーボモーター
27 LMガイドレール
28 サポートヤユニット固定
29 平行ハンドシリンダー
30 ロッドレスシリンダー
31 吸着パット
32 センタリング用アーム
33 ロボット・セット用ハンド
34 ハサミ
35 フレーム
36 シリンダーブラケット
37 クランプ
38 センサーブラケット
39 プレート
40 ロケーター
41 クランプシリンダー
42 近接スイッチ


出願人 日鐵ドラム株式会社
代理人 弁理士 椎 名 彊 他1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドラム缶製造ラインにおけるボンデ処理前後の天地板を籠から受払いする工程において、天地板をセンタリングさせ、常に同位置をロボットハンドにて天地板を掴ませて天地板の受払いを行うことを特徴とするロボット・ハンドによるドラム天地板の受払い方法。
【請求項2】
請求項1に記載の天地板を籠から受払いする工程において、天地板をセンタリング用アームで持ち上げ、天地板をセンタリングしながら胴体側に傾けてから、ロボット・ハンド部で天地板のフランジを掴みことを特徴とするロボット・ハンドによるドラム天地板の受払い方法。
【請求項3】
請求項2に記載の天地板をセンタリング用アームで40〜70mm持ち上げ、胴体側に3〜7°傾けたことを特徴とするロボット・ハンドによるドラム天地板の受払い方法。
【請求項4】
ボンデ処理設備の入口部と出口部にロボットを設置し、該ロボット・ハンドによる掴み治具に天地板をセンタリングするためのアームを設けたことを特徴とするロボット・ハンドによるドラム天地板の受払い装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−248098(P2009−248098A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−95349(P2008−95349)
【出願日】平成20年4月1日(2008.4.1)
【出願人】(000233675)日鐵ドラム株式会社 (12)
【Fターム(参考)】