説明

ロボット加工機および加工システム

【課題】一のロボット加工機で穴加工と搬送の両方を行えるようにする。
【解決手段】複数の関節からなるロボットアーム12を備え、穴加工を行うロボット加工機10であって、ワークの搬送を行うハンドユニット16と、主軸18aによって穴加工を行う加工ユニット18と、ハンドユニット16と加工ユニット18とを交換して保持するユニット交換機構14と、ユニット交換機構14によってハンドユニット16から加工ユニット18に交換し、穴加工を行うように制御する制御装置Cとを有する。ロボットアーム12は可搬重量が制限されているが、ユニット交換機構14によってユニットを交換できるので、非同時であるものの穴加工と搬送の両方を行える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の関節からなるロボットアームを備えて穴加工を行うロボット加工機と、当該ロボット加工機を少なくとも備えて加工を行う加工システムとに関する。
【背景技術】
【0002】
穴加工を行う従来のロボット加工機としては、例えばカメラを備え、当該カメラで撮像した画像情報によって加工部位の計測結果が許容範囲内か否かに従って穴加工を行う技術の一例が開示されている(例えば特許文献1を参照)。
【特許文献1】実開平7−17486号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1のロボット加工機は穴加工を行えるものの、ワークを搬送することはできない。穴加工と搬送の両方を行うようにするには、搬送用のロボット装置を別個に備えるか、穴加工用のユニットと搬送用のユニットをロボットアームに備える必要がある。前者は、コストが嵩むだけでなく、加工中は搬送用のロボット装置を動作させることができないので待機せざるを得ず、工程に無駄な時間が生じる。後者は、ロボットアームの可搬重量に制限があり、関節数が増すにつれて可搬重量が少なくなるため、穴加工用のユニットと搬送用のユニットの双方をロボットアームに備えるのは現実的に困難である。
【0004】
また特許文献1のロボット加工機で行える穴加工は、加工時に生じる反力によってロボットアームが振れやすい。加工中にロボットアームが振れると穴の径や深さにムラが生じるので、精度が要求されない穴加工しか行えないという問題がある。
【0005】
本発明はこのような点に鑑みてなしたものであり、一のロボット加工機で穴加工と搬送の両方を行えるようにすることを第1の目的とする。さらにはロボット加工機を用いて高精度の穴加工が行える加工システムを提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)課題を解決するための手段(以下では単に「解決手段」と呼ぶ。)1は、複数の関節からなるロボットアームを備え、穴加工を行うロボット加工機であって、ワークの搬送を行うハンドユニットと、主軸によって穴加工を行う加工ユニットと、前記ハンドユニットと前記加工ユニットとを交換していずれか一方のユニットを保持するユニット交換機構と、前記ユニット交換機構によって前記ハンドユニットから前記加工ユニットに交換し、穴加工を行うように制御する制御装置とを有することを要旨とする。
【0007】
ユニット交換機構は、ロボットアームの先端およびユニットのうち一方または双方に備える。解決手段1によれば、搬送用のハンドユニットと加工用の加工ユニットはユニット交換機構によって交換して用いるので、ロボットアームには一方のユニットしか装着しない。可搬重量が制限されているロボットアームを有する一のロボット加工機において、非同時であるものの穴加工と搬送の両方を行うことができ、他のロボット装置を必要としない点でコストを安く抑えることができる。
【0008】
(2)解決手段2は、解決手段1に記載したロボット加工機であって、加工ユニットは、主軸割り出し位置を記憶する記憶部を有し、制御装置は、前記記憶部に記憶された主軸割り出し位置に従って穴加工を行うように制御することを要旨とする。
【0009】
解決手段2によれば、加工ユニットには主軸割り出し位置を記憶部に記憶するので、ハンドユニットに交換した後にさらに穴加工を行う場合でも主軸の位置検出を行わずにすぐに穴加工が行える。したがって、主軸の位置検出を行わずに済む分、工程に無駄な時間が生じない。
【0010】
(3)解決手段3は、解決手段2に記載したロボット加工機であって、加工ユニットは、前記記憶部の記憶内容を保持する電源部を有することを要旨とする。
【0011】
解決手段3によれば、ハンドユニットと加工ユニットの交換時に、電源部と記憶部との間の接続を気にする必要がなく有利である。
【0012】
(4)解決手段4は、解決手段1から3のいずれか一項に記載したロボット加工機と、他の加工機とを備え、双方の加工機を作動させて穴加工を行う加工システムであって、前記ロボット加工機がハンドユニットによって搬送を終えた後、前記他の加工機が搬送を行っている間に、前記ロボット加工機はユニット交換機構によって前記ハンドユニットから加工ユニットに交換し、前記他の加工機が搬送を終えた後、前記ロボット加工機は記憶部に記憶された主軸割り出し位置に従ってワークに穴加工を行うように制御することを要旨とする。
【0013】
解決手段4によれば、解決手段1と同様にして搬送用のハンドユニットと加工用の加工ユニットをユニット交換機構によって交換するので、結果的に一のロボット加工機で穴加工と搬送の両方を行うことができる。また、他の加工機が搬送を行っている間にユニット交換機構で加工ユニットに交換し、搬送を終えた後にロボット加工機がワークに穴加工を行うので、工程に無駄な時間が生じない。
【0014】
(5)解決手段5は、解決手段4に記載した加工システムであって、他の加工機によって搬送され、ワークの加工位置ごとに対応して設けられるとともに主軸の軸方向に沿って所定長を有するガイド部を備え、前記ワークを一時的に固定する固定ボックスを有し、ロボット加工機は加工ユニットの主軸を前記ガイド部に位置決めした後、前記ワークに穴加工を行うように制御することを要旨とする。
【0015】
解決手段5によれば、加工ユニットの主軸をガイド部に位置決めすると、何らかの要因でロボットアームが振れた場合でも主軸の動きが規制される。よって、ロボット加工機を用いて穴加工を行う場合でも高精度の穴を加工することができる。
【0016】
(6)解決手段6は、解決手段4または5に記載した加工システムであって、他の加工機によって搬送され、ワークの加工位置ごとに対応して設けられるとともに先端側が径方向に広がるように形成されたテーパー状の係合部を備え、前記ワークを一時的に固定する固定ボックスを有し、加工ユニットは先端側が狭まるように形成されたテーパー状のクランプ部を有し、ロボット加工機は、前記係合部と前記クランプ部とを係合保持した後、ワークに穴加工を行うように制御することを要旨とする。
【0017】
解決手段6によれば、係合部とクランプ部とを係合保持すると、何らかの要因でロボットアームが振れた場合でも主軸の動きが規制される。よって、ロボットアームの先端部に加工ユニットを備えて穴加工を行う場合でも、高精度の穴を加工することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、一のロボット加工機で穴加工と搬送の両方を行うことができる。また、ロボット加工機を用いて高精度の穴加工が行える加工システムを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0020】
〔ロボット加工機の構成例〕
まず、ロボット加工機の構成例について図1〜図3を参照しながら説明する。図1に表すロボット加工機10は、多関節からなるロボットアーム12や制御装置Cなどを有する。ロボットアーム12の先端部と、ハンドユニット16および加工ユニット18のそれぞれには、ハンドユニット16と加工ユニット18とを交換していずれか一方のユニットを保持するユニット交換機構14を有する。ロボットアーム12の先端部には、着脱凸部12bを備えたアーム側着脱部12aを有する(図2,図3を参照)。このアーム側着脱部12aは、後述するユニット側着脱部16b,18e(図2,図3を参照)とともにユニット交換機構14を構成する。制御装置Cの機能については後述する。
【0021】
図2にはハンドユニット16の構成例を表す。ハンドユニット16は、チャック16aやユニット側着脱部16b等を有する。チャック16aは、ワーク等を把持や保持等して搬送する機能を果たす。ユニット側着脱部16bには着脱凹部16cを有し、アーム側着脱部12aの着脱凸部12bと嵌まり合う。例えば着脱凸部12bが径方向に拡大することで一時的に固定し、逆に径方向に縮小することで固定を解除する。
【0022】
図3には加工ユニット18の構成例を表す。加工ユニット18は、主軸18a,ユニット側係合部18b,記憶部18c,電源部18d,ユニット側着脱部18eなどを有する。主軸18aはワーク等を加工する工具に相当し、例えばドリル,リーマ,タップ等が該当する。ユニット側係合部18bは後述する固定ボックス32のブッシュ部40と係合し、少なくとも加工時においてロボットアーム12を固定ボックス32に固定する機能を果たす(図7,図10等を参照)。なお、ユニット側係合部18bの構成例については後述する。記憶部18cは例えばSRAM等が該当し、主軸18aの割り出し位置などを記憶する。この記憶は、バッテリ等の電源部18dによって保持される。ユニット側着脱部18eは上述したユニット側着脱部16bと同等の機能を果たし、着脱凹部18fは着脱凹部16cに相当する。
【0023】
図1の制御装置Cは、ユニット交換機構14によってハンドユニット16と加工ユニット18とのいずれか一方のユニットに交換したり、加工ユニット18に交換した場合は記憶部18cに記憶された主軸割り出し位置に従って穴加工を行う等の制御を行う。
【0024】
〔加工システムの構成例〕
次に、加工システムの構成例について図4〜図7を参照しながら説明する。本例はワークに対して穴加工を行うために構成した例である。
【0025】
まず、図4には加工システムの構成例を表す。加工システム20は、複数台(本例は3台)の加工ロボット22,24,26、複数台(本例は2台)のロボット加工機10A,10B、ハンドユニット16A,16B、加工ユニット18A,18B、ワーク置き台28、ワーク固定台30、固定ボックス32、制御装置Cなどを有する。
【0026】
加工ロボット22,24,26はそれぞれが加工機に相当し、本例では所定の加工位置で穴加工を行うように構成されている。ロボット加工機10A,10Bはそれぞれが上述したロボット加工機10に相当する。ハンドユニット16A,16Bはそれぞれが上述したハンドユニット16に相当し、使用しない場合にはユニット置き台36に置かれる。加工ユニット18A,18Bはそれぞれが上述した加工ユニット18に相当し、使用しない場合にはユニット置き台38に置かれる。ワーク置き台28には次に加工するワークWbを載せておく。ワーク固定台30にはこれから加工するワークWaを固定する。
【0027】
次に図5には、固定ボックスの構成例を表す。固定ボックス32は、ワークW(Wa,Wb)の入れ替え時にはボックス置き台34に置かれ、加工時にはワーク固定台30に固定されたワークWを上方から覆う。この固定ボックス32は底面部分が開口した構造になっており、開口部分を除いた面にはワークWの加工位置ごとに対応して複数のブッシュ部40が設けられている。なお、固定ボックス32はワークWを被せた後にワーク固定台30に固定される。制御装置Cは1台または複数台の筐体で構成され、加工ロボット22,24,26およびロボット加工機10A,10Bの作動を個別に制御する。
【0028】
ところで、穴あけ加工やタッピング加工等では、加工時に主軸18aを回転させるとスラスト方向(すなわち穴あけ方向と反対の方向)への反力が生じることが知られている。もし反力がロボットアーム12の軸許容モーメントを超えると、ロボットアーム12が振れやすくなる。ロボットアーム12が振れると加工精度が低下することから、加工精度を向上するためにロボットアーム12の振れを防止する構成(すなわちユニット側着脱部16bとブッシュ部40の構成)について以下に説明する。
【0029】
図6には、ユニット側係合部18bの構成例を部分断面図で表す。ユニット側係合部18bは係合部本体18iを基体として、アクチュエータ18g,ベアリング18j,回転筒体18k,クランプ部18mなどを有する。アクチュエータ18gは可動部18hを動かす。回転筒体18kは、ベアリング18jを介して係合部本体18iに取り付けられている。可動部18hと回転筒体18kとは、可動部18hの進退運動が回転筒体18kの回転運動に変換されるように連結される。クランプ部18mは回転筒体18kの端部に設けられ、テーパ面18nや凹部18p等を有する(図9〜図11を参照)。テーパ面18nは、後述するブッシュ部40の係合部40aに備えられたテーパ面40fと接触して係合することにより(図7,図11(B)を参照)、加工ユニット18(ひいてはロボットアーム12の全体)を保持する。テーパ面18nは、クランプ部18mの先端側が主軸18a側(中心側)に張り出すように形成されている。凹部18pは後述するブッシュ部40に備えられた係合部40aの個数(本例では4個)に対応して設けられ、ブッシュ部40に対して主軸18aを出し入れする際に係合部40aを通過させる。
【0030】
図7には、ブッシュ部40の構成例を表す。平面図を図7(A)に表し、当該図7(A)におけるB7−B7線断面図を図7(B)に表す。ブッシュ部40はブッシュ本体40bを基体として、係合部40a,取付部40c,ガイド穴40d,ガイド部40eなどを有する。ブッシュ本体40bの一方側(ロボットアーム12側)の端部は、クランプ部18mが通り易くするために面取りされている。複数個(本例では4個)の係合部40aは、ブッシュ本体40bの一方側の端部(またはその近傍)に設けられている。それぞれの係合部40aは、ブッシュ本体40bの先端側が広がるように形成されたテーパ面40fを有する。このテーパ面40fは、上述したテーパ面18nと接触し係合する機能を有する。取付部40cは、ネジ等の固定部材を用いてブッシュ部40を固定ボックス32に取り付けるための穴を有する。ガイド穴40dは主軸18aをガイドする貫通穴である。ガイド部40eはブッシュ本体40bの他方側(固定ボックス32側)の端部であってガイド穴40dの内側に設けられ、主軸18aよりも固い素材で形成されている。ガイド部40eは所定の長さを有し、ワークWの加工面に対する主軸18aの中心軸が直角となるように保持する役割を果たす。
【0031】
以上のように構成された加工システム20において、ワークWaに対して行われる穴加工の工程例について図4を参照しながら説明する。この工程例は、制御装置Cによって制御される一例である。なお、ワーク置き台28には既にワークWaが置かれており、ワーク固定台30には何も置かれてないと仮定する。
【0032】
(工程1)ロボット加工機10Aは、ロボットアーム12に加工ユニット18が装着されていた場合には、予めユニット交換機構14によってハンドユニット16に交換する。このハンドユニット16によって、ワーク置き台28に置いてあるワークWaをワーク固定台30に搬送して固定する。
【0033】
(工程2)ロボット加工機10Bは、ロボットアーム12に加工ユニット18が装着されていた場合には、予めユニット交換機構14によってハンドユニット16に交換する。ワークWaが固定されると、ロボット加工機10Bはボックス置き台34に置いてある固定ボックス32をワークWaを覆うように被せて固定する。この搬送および固定と並行して、ロボット加工機10Aではユニット交換機構14によってハンドユニット16を加工ユニット18に交換する。
【0034】
(工程3)ワークWaおよび固定ボックス32の双方が固定されると、加工ロボット22,24,26にそれぞれ割り当てられた加工位置についてブッシュ部40を通じて穴加工を行う。この穴加工と並行して、ロボット加工機10Aはロボットアーム12に装着された加工ユニット18の主軸18aで割り当てられた加工位置を穴加工するとともに、ロボット加工機10Bではユニット交換機構14によってハンドユニット16を加工ユニット18に交換する。
【0035】
(工程4)加工ユニット18に交換し終えたロボット加工機10Bは、当該加工ユニット18の主軸18aで割り当てられた加工位置を穴加工する。
【0036】
(工程5)全ての穴加工を終えたロボット加工機10A,10Bは、それぞれがユニット交換機構14によって加工ユニット18をハンドユニット16に交換する。ロボット加工機10Bは、固定が解除された固定ボックス32を搬送してボックス置き台34に置く。その後、ロボット加工機10Aは固定が解除されたワークWaを搬送して完成品置き場(図示せず)に置く。その後、他のワークWを加工する場合は工程1に戻って繰り返す。
【0037】
ここで、上記工程4において加工ユニット18で穴加工を行う際に、ユニット側係合部18bとブッシュ部40を用いて主軸18aでワークWを加工可能な状態にするまでの手順について図8〜図12を参照しながら説明する。
【0038】
まず、加工ユニットを移動させている状態を図8に表し、加工ユニットをブッシュ部に係合させる手順の例を図9に表す。図8と図9にそれぞれ表すように、主軸18aがガイド穴40dを通るように加工ユニット18を進行方向(図中の矢印D2方向)に移動させる。この移動中にブッシュ部40の係合部40aがクランプ部18mの凹部18pを通る。なお移動中における主軸18aは、ワークWと衝突しない位置まで退避させておくのが望ましい。
【0039】
係合部40aが凹部18pを通った後に加工ユニット18を静止させると、図10に表すような状態になる。図10(A)には図10(B)におけるA10−A10線断面図を表し、図10(B)には図10(A)におけるB10−B10線断面図を表す。本例では、係合部40aの無い部位のブッシュ本体40bをクランプ部18mが通過し、主軸18aの先端部がガイド部40eにガイドされている。
【0040】
図10に表した状態のとき、アクチュエータ18gを駆動させて可動部18hを動かす。すなわち回転筒体18kとともにクランプ部18mを係合方向(図9,図10に表す矢印D4方向)に回転させ、図11に表すような状態にする。図11(A)には図11(B)におけるA11−A11線断面図を表し、図11(B)には図11(A)におけるB11−B11線断面図を表す。係合方向への回転は、クランプ部18mのテーパ面18nが係合部40aのテーパ面40fと接触するまで行う。本例では、図11(A)に表すように基線L2から基線L4までの角度θだけ回転させている。
【0041】
上述したようにテーパ面18nがテーパ面40fと接触した状態を図12に表す。この状態で主軸18aを回転させて加工方向(図12に表す矢印D8方向)にワークWを加工を行うと、加工中に生じた反力(図12に表す矢印D6方向の力)をブッシュ部40が吸収する。したがって、加工中に加工ユニット18が振れることがない。
【0042】
なお加工後は、上述した手順とは逆の手順でクランプ部18mを解除方向(図9,図10に表す矢印D4方向と逆方向)に回転させてテーパ面の係合を解除し、加工ユニット18を退避方向(図8の矢印D2方向と逆方向)に移動させればよい。
【0043】
上述した実施の形態によれば、以下に表す各効果を得ることができる。
(1)ユニット交換機構14は、ロボットアーム12の先端に備えたアーム側着脱部12aと、ハンドユニット16に備えたユニット側着脱部16bおよび加工ユニット18に備えたユニット側着脱部18eのうち双方に備えた(図1〜図3を参照)。搬送用のハンドユニット16と加工用の加工ユニット18はユニット交換機構14によって交換して用いるので、ロボットアーム12には一方のユニットしか装着しない。可搬重量が制限されているロボットアーム12を有する一のロボット加工機10において、非同時であるものの穴加工と搬送の両方を行うことができ、他のロボット装置を必要としない点でコストを安く抑えることができる。
【0044】
(2)加工ユニット18は、主軸18aの割り出し位置を記憶部18cに記憶した(図3を参照)。ハンドユニット16に交換した後にさらに穴加工を行う場合でも、主軸18aの位置検出を行わずにすぐに穴加工が行える。したがって、主軸18aの位置検出を行わずに済む分、工程に無駄な時間が生じない。
また加工ユニット18には記憶部18cの記憶内容を保持する電源部18dを備えたので、ハンドユニット16と加工ユニット18の交換時に電源部18dと記憶部18cとの間の接続を気にする必要がなく有利である。
【0045】
(3)加工システム20では、搬送用のハンドユニット16と加工用の加工ユニット18をユニット交換機構14によって交換するので、結果的に一のロボット加工機10で穴加工と搬送の両方を行うことができる。また、ロボット加工機10Bが固定ボックス32の搬送を行っている間にロボット加工機10Aがユニット交換機構14で加工ユニット18に交換し(工程2)、ロボット加工機10Bの搬送を終えた後にロボット加工機10AがワークWに穴加工を行うので(工程3)、工程に無駄な時間が生じない。
【0046】
(4)加工システム20では、加工ユニット18の主軸18aをガイド部40eに位置決めした後、ワークWに穴加工を行うように制御する構成とした(図10を参照)。主軸18aをガイド部40eに位置決めすると、何らかの要因でロボットアーム12が振れた場合でも主軸18aが径方向に対する動きが規制される。よって、ロボット加工機10を用いて穴加工を行う場合でも高精度の穴を加工することができる。
【0047】
(5)加工システム20では、係合部40aとクランプ部18mとを係合保持した後、ワークWに穴加工を行うように制御する構成とした(図8〜図12を参照)。係合部40aとクランプ部18mとを係合保持すると、何らかの要因でロボットアーム12が振れた場合でも軸方向(穴の深さ方向)及び径方向に対する主軸18aの動きが規制される。よって、ロボットアーム12の先端部に加工ユニット18を備えて穴加工を行う場合でも、高精度の穴を加工することができる。
【0048】
〔他の実施の形態〕
以上では本発明を実施するための最良の形態について説明したが、本発明は当該形態に何ら限定されるものではない。言い換えれば、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施することもできる。例えば、次に示す各形態を実現してもよい。
【0049】
(1)上述した実施の形態では、ユニット交換機構14はハンドユニット16と加工ユニット18とを交換可能に構成した(図1〜図3を参照)。この形態に代えて(あるいは加えて)、他のユニットと交換可能に構成してもよい。他のユニットは任意の作業を行うユニットを適用可能であり、例えば溶接を行う溶接ユニットや、塗装を行う塗装ユニット等が該当する。したがって、搬送以外の作業と並行して加工を行うことができる。
また、ユニット交換機構14は着脱凸部12bが径方向に拡大することで着脱凹部16cと嵌まり合って固定する構成とした(図2,図3を参照)。この形態に代えて、他の着脱機構を備えることでユニットを交換可能に構成してもよい。他の着脱機構は、例えば雄ネジと雌ネジとからなる構成や、着脱凸部および着脱凹部の一方または他方を奥行き方向にテーパー状に形成した構成などが該当する。
【0050】
(2)上述した実施の形態では、加工システム20はワークWに対して穴加工を行うように制御する構成とした(工程1〜5を参照)。この形態に代えて(あるいは加えて)、他の加工(例えばタップ加工,切削加工,面取り加工等)が行える工具を備えた加工ユニット18を用いて、ワークWに対して他の加工を行うように制御する構成としてもよい。この構成であっても、ロボットアーム12の振れが防止され、工具(主軸18a)の動きが規制されるので、高精度の加工を行うことができる。なお、穴加工を行う加工ロボット22,24,26以外の加工機(例えば切削加工を行う加工ロボットや、組み立てを行う組立ロボット等)を適用してもよい。
【0051】
(3)上述した実施の形態では、クランプ部18mのテーパ面18nと係合部40aのテーパ面40fは平滑面で構成した(図8〜図12を参照)。この形態に代えて、テーパ面18nおよびテーパ面40fの一方または双方について非平滑面で構成してもよい。非平滑面は、例えばL字状や階段状に形成したり、凹凸面に形成する。非平滑面であれば滑り抵抗が大きくなるので、反力が大きくなっても吸収することが可能になる。したがって、ロボットアーム12が振れた場合でも軸方向(穴の深さ方向)に対する主軸18aの動きをより確実に規制することができる。
【0052】
(4)上述した実施の形態では、クランプ部18mのテーパ面18nと係合部40aのテーパ面40fは互いに並行する曲面で構成した(図8〜図12を参照)。この形態に代えて、テーパ面18nおよびテーパ面40fの一方または双方について回転方向に傾斜するテーパー状に構成してもよい。すなわちテーパ面18nとテーパ面40fを係合させるには相対的に回転させる必要があるが、少なくとも一方の面を回転方向に傾斜させることによって回転角に応じた締め付け力を与えることができる。したがって、回転角でクランプ部18mとブッシュ部40との係合力を調整することができる。
【0053】
(5)上述した実施の形態では、加工ユニット18は記憶部18cに記憶した内容(例えば主軸18aの割り出し位置)を保持するために電源部18dを備えた(図1を参照)。言い換えれば、記憶部18cが揮発性メモリであるために電源部18dを必要とする。この形態に代えて、不揮発性メモリを記憶部18cとして適用した場合には電源部18dは不要になる。不揮発性メモリは、例えばEEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)、フラッシュメモリ、FeRAM(Ferroelectric RAM)などが該当する。したがって、電源部18dが不要となってコストを安く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】ロボット加工機の構成例を表す側面図である。
【図2】ハンドユニットの着脱を説明する図である。
【図3】加工ユニットの着脱を説明する図である。
【図4】加工ステーションの構成例を表す平面図である。
【図5】固定ボックスの構成例を表す斜視図である。
【図6】ユニット側係合部の構成例を表す部分断面図である。
【図7】ブッシュ部の構成例を表す図である。
【図8】加工ユニットを移動させている状態を表す部分断面図である。
【図9】加工ユニットをブッシュ部に係合させる手順を説明する図である。
【図10】主軸をガイド部に位置決めした状態を表す図である。
【図11】係合後の状態を表す図である。
【図12】主軸による加工中の状態を表す部分断面図である。
【符号の説明】
【0055】
10(10A,10B) ロボット加工機
12 ロボットアーム
12a アーム側着脱部
12b 着脱凸部
14 ユニット交換機構
16(16A,16B) ハンドユニット
16a チャック
16b ユニット側着脱部
16c 着脱凹部
18(18A,18B) 加工ユニット
18a 主軸
18b ユニット側係合部
18c 記憶部
18d 電源部
18e ユニット側着脱部
18g アクチュエータ
18h 可動部
18i 嵌合部本体
18j ベアリング
18k 回転筒体
18m クランプ部
18n テーパ面
18p 凹部
20 加工システム
22,24,26 加工ロボット(加工機)
28 ワーク置き台
30 ワーク固定台
32 固定ボックス
34 ボックス置き台
36,38 ユニット置き台
40 ブッシュ部
40a 係合部
40b ブッシュ本体
40c 取付部
40d ガイド穴
40e ガイド部
40f テーパ面
C 制御装置
L2,L4 基線
W(Wa,Wb) ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の関節からなるロボットアームを備え、穴加工を行うロボット加工機であって、
ワークの搬送を行うハンドユニットと、
主軸によって穴加工を行う加工ユニットと、
前記ハンドユニットと前記加工ユニットとを交換していずれか一方のユニットを保持するユニット交換機構と、
前記ユニット交換機構によって前記ハンドユニットから前記加工ユニットに交換し、穴加工を行うように制御する制御装置とを有するロボット加工機。
【請求項2】
請求項1に記載したロボット加工機であって、
加工ユニットは、主軸割り出し位置を記憶する記憶部を有し、
制御装置は、前記記憶部に記憶された主軸割り出し位置に従って穴加工を行うように制御するロボット加工機。
【請求項3】
請求項2に記載したロボット加工機であって、
加工ユニットは、前記記憶部の記憶内容を保持する電源部を有するロボット加工機。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載したロボット加工機と、他の加工機とを備え、双方の加工機を作動させて穴加工を行う加工システムであって、
前記ロボット加工機がハンドユニットによって搬送を終えた後、前記他の加工機が搬送を行っている間に、前記ロボット加工機はユニット交換機構によって前記ハンドユニットから加工ユニットに交換し、
前記他の加工機が搬送を終えた後、前記ロボット加工機は記憶部に記憶された主軸割り出し位置に従ってワークに穴加工を行うように制御する加工システム。
【請求項5】
請求項4に記載した加工システムであって、
他の加工機によって搬送され、ワークの加工位置ごとに対応して設けられるとともに主軸の軸方向に沿って所定長を有するガイド部を備え、前記ワークを一時的に固定する固定ボックスを有し、
ロボット加工機は加工ユニットの主軸を前記ガイド部に位置決めした後、前記ワークに穴加工を行うように制御する加工システム。
【請求項6】
請求項4または5に記載した加工システムであって、
他の加工機によって搬送され、ワークの加工位置ごとに対応して設けられるとともに先端側が径方向に広がるように形成されたテーパー状の係合部を備え、前記ワークを一時的に固定する固定ボックスを有し、
加工ユニットは先端側が狭まるように形成されたテーパー状のクランプ部を有し、
ロボット加工機は、前記係合部と前記クランプ部とを係合保持した後、ワークに穴加工を行うように制御する加工システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−184055(P2009−184055A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−25052(P2008−25052)
【出願日】平成20年2月5日(2008.2.5)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】