説明

ロボット

【課題】線条体の寿命を延ばすことが可能なロボットを提供する。
【解決手段】ベース12と、ベース12に旋回可能に設けられた旋回部13と、旋回部13に基端部が回転可能に支持され、前後方向に揺動する下部アーム15と、下部アーム15の長手方向に沿って、下部アーム15の側面に並んでそれぞれ配線された第1及び第2の線条体31、32を下部アーム15の長手方向に移動可能に支持する案内部41、案内部41の下部アーム15の長手方向の両側にそれぞれ設けられ、第1及び第2の線条体31、32が移動することより生じる第1及び第2の線条体31、32のロボット10の幅方向の変形を抑制する2つの押さえ部材42a、42b及び下部アーム15の基端部側の側面及び先端部側の側面をそれぞれ覆い、第1及び第2の線条体31、32を保護する2つの保護部材44a、44bを有する線条体支持機構20とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、配線部材とロボット自身や周辺機器との干渉を防止し、接触による摩耗を低減して、ロボットや配線部材のメンテナンスを低減することができる配線部材案内装置が記載されている。この配線部材案内装置は、ロボットや配線部材の寿命を延ばし、ランニングコストを低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−150382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、線条体の寿命を延ばすことが可能なロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的に沿う本発明に係るロボットは、1)ベースと、
2)前記ベースに旋回可能に設けられた旋回部と、
3)前記旋回部に基端部が回転可能に支持され、前後方向に揺動する下部アームと、
4)前記下部アームの長手方向に沿って、該下部アームの側面に並んでそれぞれ配線された第1及び第2の線条体と、
5)前記第1及び第2の線条体を前記下部アームの長手方向に移動可能にそれぞれ支持する案内部と、該案内部の前記下部アームの長手方向の両側にそれぞれ設けられ、前記第1及び第2の線条体が移動することより生じる該第1及び第2の線条体の該ロボットの幅方向の変形を抑制する2つの押さえ部材と、前記下部アームの基端部側の側面及び先端部側の側面をそれぞれ覆い、前記第1及び第2の線条体を保護する2つの保護部材とを有する線条体支持機構とを備える。
【0006】
本発明に係るロボットにおいて、前記第1の線条体は、前記下部アームの先に設けられた上部アーム及び前記上部アームの先端部に設けられた手首部を駆動するサーボモータに電源を供給するケーブルを含み、
前記第2の線条体は、前記手首部に設けられた溶接部に溶接電流を供給するケーブルを含むことができる。
【0007】
本発明に係るロボットにおいて、前記案内部は、互いに間隔をあけて前記下部アームの長手方向に延びる1対のスライドレールと、
前記1対のスライドレールにそれぞれ載って、前記下部アームの長手方向に独立に移動可能なスライダとを有し、
前記第1及び第2の線条体は、前記スライダにそれぞれ固定されることが好ましい。
【0008】
本発明に係るロボットにおいて、前記スライダは、一方の前記スライドレールの上から他方の前記スライドレールの方向にそれぞれ張り出す第1及び第2の張り出し部と、
前記第1及び第2の張り出し部にそれぞれ固定され、該第1及び第2の張り出し部の表側の面よりも前記下部アーム側に配置される線条体固定部材とを有し、
前記第1及び第2の線条体は、それぞれ前記線条体固定部材に固定されることが好ましい。
【0009】
本発明に係るロボットにおいて、前記線条体固定部材は、前記スライドレールの長手方向に延びる部材であり、該スライドレールの長手方向中央部よりも前記下部アームの基端部側及び先端部側にて、前記第1及び第2の張り出し部に固定されることが好ましい。
【0010】
本発明に係るロボットにおいて、前記スライドレールが、カバーにより覆われていることが好ましい。
【0011】
本発明に係るロボットにおいて、側面視して前記下部アームの両縁に沿ってそれぞれリブが形成され、前記案内部は、該リブの間に配置されることが好ましい。
【0012】
本発明に係るロボットにおいて、前記各押さえ部材、及び前記各保護部材の材質は、自己潤滑性を有するエンジニアリングプラスチックであることが好ましい。
【0013】
本発明に係るロボットにおいて、前記下部アームの長手方向が垂直方向に一致した場合に、前記第2の線条体は前記第1の線条体よりも前側に配置され、
前記線条体支持機構は、前記旋回部の側部に配置され、前記第2の線条体が下方に垂れ下がることを抑制する第1のサポート部材と、
前記下部アームの先端部の側面に配置され、前記第2の線条体が下方に垂れ下がることを抑制する第2のサポート部材とを更に有することが好ましい。
【0014】
本発明に係るロボットにおいて、前記下部アームの長手方向が垂直方向に一致した場合に、前記第1の線条体は前記第2の線条体よりも前側に配置され、前記線条体支持機構は、前記旋回部の側部に配置され、前記第1の線条体が下方に垂れ下がることを抑制する第1のサポート部材と、
前記下部アームの先端部の側面に配置され、前記第1の線条体が下方に垂れ下がることを抑制する第2のサポート部材とを更に有することが好ましい。
【0015】
本発明に係るロボットにおいて、前記第1及び第2のサポート部材の材質は、自己潤滑性を有するエンジニアリングプラスチックであることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
請求項1〜11記載のロボットにおいては、本発明の構成をとらない場合に比べて、線条体の寿命を延ばすことが可能である。
【0017】
特に、請求項2記載のロボットにおいては、溶接ロボットに適用することが可能である。
【0018】
請求項4記載のロボットにおいては、幅方向の寸法を抑えることが可能である。
【0019】
請求項5記載のロボットにおいては、本発明の構成をとらない場合に比べて、スライドレールの長手方向に延びる線条体固定部材が第1及び第2の張り出し部により両持ちされ、線条体を安定して支持することが可能である。
【0020】
請求項6記載のロボットにおいては、本発明の構成をとらない場合に比べて、スパッタがスライドレールの褶動部分に付着する可能性が低減される。
【0021】
請求項7記載のロボットにおいては、幅方向の寸法を抑えると共に、アームの剛性を増大させることが可能である。
【0022】
請求項8記載のロボットにおいては、線条体の損傷を抑制することが可能である。
【0023】
請求項9、10記載のロボットにおいては、線条体が下方向に垂れ下がることが抑制される。
【0024】
請求項11記載のロボットにおいては、線条体の損傷を抑制することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】(A)、(B)、(C)は、それぞれ、本発明の第1の実施の形態に係るスポット溶接ロボットの平面図、側面図及び正面図である。
【図2】同スポット溶接ロボットの拡大図である。
【図3】図2に示すA−A断面図である。
【図4】同スポット溶接ロボットの下部アームに設けられた線条体支持機構の案内部の平面図である。
【図5】(A)、(B)、(C)は、同スポット溶接ロボットがとる姿勢による第1及び第2の線条体の挙動を模式的に示す説明図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係るスポット溶接ロボットの側面図である。
【図7】同スポット溶接ロボットが前傾した状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。なお、各図において、説明に関連しない部分は図示を省略する場合がある。
【0027】
図1(A)〜(C)に示すように、本発明の第1の実施の形態に係るスポット溶接ロボット(ロボットの一例、以下、「ロボット」又は「溶接ロボット」ともいう)10は、ベース12と、旋回部13と、下部アーム15と、上部アーム16と、手首部18と、線条体支持機構20とを備える、例えば6軸(関節軸J1〜J6)のロボットである。ここで、関節軸J1は、スポット溶接ロボット10の設置面と交差するように配置される。関節軸J2は、設置面と略平行に配置される。関節軸J3は、関節軸J2と略平行に配置される。関節軸J4は、関節軸J1と交差するように配置される。関節軸J5は、関節軸J4と交差するように配置される。関節軸J6は、関節軸J5と交差するように配置される。
【0028】
ベース12は、スポット溶接ロボット10の設置面に固定される。
旋回部13は、ベース12に旋回可能に設けられ、関節軸J1(旋回軸)回りに旋回することができる。
下部アーム15は、旋回部13に基端部が関節軸J2回りに回転可能に支持され、前後方向に揺動することができる。
上部アーム16は、下部アーム15の先端部に、基端部が関節軸J3回りに回転可能に支持され、上下方向に揺動することができる。
手首部18は、上部アーム16の先端部に取り付けられている。手首部18の先端部は、関節軸J3と実質的に平行な関節軸J5回りに回転する。手首部18は、関節軸J1と実質的に交差する関節軸J4回りに回転することができる。手首部18は、その先端に、関節軸J6回りに回転する手首フランジ22を有している。手首フランジ22には図示しないスポット溶接ガン(溶接部の一例)が取り付けられる。
【0029】
スポット溶接ロボット10には第1及び第2の線条体31、32が配線されている。第1の線条体31は、例えば、下部アーム15の先に設けられた上部アーム16及び手首部18を駆動するサーボモータ(不図示)に接続されるケーブル、内部に設けられたセンサに接続されるケーブル及びエアホースが撚り合わされて構成されている。第2の線条体32は、例えば、手首部18に設けられたスポット溶接ガンに溶接電流を供給するケーブル、センサに接続されるケーブル及び冷却用のホースが撚り合わされて構成されている。
第1の線条体31は、図2に示すように、旋回部13に設けられた固定具33aと、上部アーム16に設けられた固定具34aとによって固定されている。第2の線条体32は、旋回部13に設けられた固定具33bと、上部アーム16に設けられた固定具34bとによって、固定されている。第1及び第2の線条体31、32は、下部アーム15の側面に並んで、下部アーム15の長手方向に沿うように配線されている。更に具体的には、下部アーム15の長手方向が垂直方向に一致した場合に、第2の線条体は第1の線条体よりも前側に配置されている。別の観点から説明すると、下部アーム15の長手方向が垂直方向に一致した場合に、第1の線条体31は、固定具33aによって固定された箇所から下部アーム15の長手方向と交差する方向に延び、一旦下方に垂れ下がりながら湾曲して上方向に延びて下部アーム15の側面に配線される。第1の線条体31は、下部アーム15の側面から湾曲して上部アーム16へと延び、固定具34aにて固定される。

また、第2の線条体32は、固定具33bによって固定された箇所から下部アーム15の長手方向と交差する方向に延び、一旦下方に垂れ下がりながら第1の線条体31が湾曲する外側を湾曲して上方向に延びて下部アーム15の側面に配線される。第2の線条体32は、下部アーム15の側面から第1の線条体31が湾曲する内側を湾曲して上部アーム16へと延び、固定具34bにて固定される。第1及び第2の線条体31、32は、ジッパーチューブ(登録商標)により覆われて、保護されている。
第1及び第2の線条体31、32は、下部アーム15の側面に並んで配線されているため、第1及び第2の線条体31、32のうち、少なくとも一方の線条体は、関節軸J2と交差しない。同様の理由で、第1及び第2の線条体31、32のうち、少なくとも一方の線条体は、関節軸J3とも交差しない。
【0030】
線条体支持機構20は、スポット溶接ロボット10の側面に設けられている。線条体支持機構20は、第1及び第2の線条体31、32を下部アーム15の長手方向に移動可能に支持することができる。
【0031】
次に、線条体支持機構20について詳細に説明する。
図2に示すように、線条体支持機構20は、案内部41と、2枚の押さえ板(押さえ部材の一例)42a、42bと、2枚の保護板(保護部材の一例)44a、44bとを有している。
【0032】
案内部41は、図3及び図4に示すように、1対のスライドレール50と、各スライドレール50にそれぞれ載って、下部アーム15の長手方向に独立に移動可能なスライダ55を有し、カバー56により覆われている。スライダ55のストロークは、例えば100〜150mmである。
【0033】
1対のスライドレール50は、互いに間隔をあけて下部アーム15の長手方向に延びている。スライドレール50は、下部アーム15に固定された固定板57に固定されている。スライドレール50の上方には、スライドレール50を覆うカバー58が設けられている。このカバー58により、スポット溶接ロボット10が溶接作業を行う際に発生するスパッタが、スライドレール50の褶動部分に付着する可能性が低減される。
【0034】
各スライダ55は、第1及び第2のスライド部材60a、60bと線条体固定部材61とで少なくとも構成される。
第1及び第2のスライド部材60a、60bは、それぞれスライドレール50の固定面とは反対の側に配置され、スライドレール50上を摺動することができる。第1及び第2のスライド部材60a、60bは、一方のスライドレール50の上から他方のスライドレール50の方向に張り出す第1及び第2の張り出し部65a、65bをそれぞれ有している。第1の張り出し部65aは、スライドレール50の長手方向中央部よりも、下部アーム15の基端部側に設けられ、第2の張り出し部65bは、スライドレール50の長手方向中央部よりも、下部アーム15の先端部側に設けられている。
【0035】
各線条体固定部材61は、スライドレール50の長手方向に延びる、例えば板状の部材である。各線条体固定部材61には、第1及び第2の線条体31、32が固定される。各線条体固定部材61は、その長手方向中央部よりも下部アーム15の基端部側及び先端部側にて、第1及び第2の張り出し部65a、65bの裏側の面(下部アーム15側の面)に、上面が接するように固定される。即ち、線条体固定部材61は、断面視して第1及び第2のスライド部材60a、60bよりも下側(下部アーム15側)の位置にて、第1及び第2のスライド部材60a、60bに固定される(図3参照)。このように、線条体固定部材61は、第1及び第2の張り出し部65a、65bの表側の面(下部アーム15側の面とは反対側の面)よりも下部アーム15側に配置されるため、線条体固定部材61が第1及び第2の張り出し部65a、65bの上面に接するように固定される場合よりも、線条体固定部材61の厚み分、第1及び第2の線条体31、32がスポット溶接ロボット10の幅方向(以下、単に「幅方向」という場合がある)内側で固定され、スポット溶接ロボット10の幅方向の寸法が抑えられる。また、スライドレール50の長手方向に延びる線条体固定部材61が第1及び第2の張り出し部65a、65bにより両持ちされ、第1及び第2の線条体31、32が線条体固定部材61と面接触して支持される。
【0036】
線条体固定部材61の長手方向両端部には、第1及び第2の線条体31、32を縛るバンド70を固定する固定具71がそれぞれ設けられている。このように、線条体固定部材61は、スライドレール50の長手方向に延びる部材であり、第1及び第2の線条体31、32を面で支えるので、第1及び第2の線条体31、32が安定して支持される。
【0037】
なお、案内部41は、側面視して下部アーム15の両縁に沿って形成されたリブ75の間かつ下部アーム15の長手方向中央部に設けられる。案内部41は、下部アーム15の側面からの高さh1(図3参照)がリブ75の突出高さh2よりも小さくなるように設定されている。
このように、リブ75によって形成されたくぼみ部に案内部41(カバー56を除く)が配置されるので、下部アーム15の剛性が増大すると共に、スポット溶接ロボット10の幅方向の寸法が抑制される。
【0038】
2枚の押さえ板42a、42b(図2参照)は、案内部41の長手方向外側にそれぞれ設けられている。押さえ板42a、42bは、それぞれ第1及び第2の線条体31、32の上方(ロボット10の幅方向外側)を覆うように設けられている。押さえ板42a、42bは、案内部41が第1及び第2の線条体31、32を案内することにより生じる第1及び第2の線条体31、32の幅方向の変形を抑制することができる。押さえ板42a、42bの材質は、例えばポリアセタール樹脂及びポリアミド樹脂等の自己潤滑性を有するエンジニアリングプラスチックである。押さえ板42aの上下の辺(それぞれ下部アーム15の長手方向と交差する2つの辺)は、それぞれ下部アーム15の基端部方向に膨らむように湾曲している。また、押さえ板42bの上下の辺(それぞれ下部アーム15の長手方向と交差する2つの辺)は、それぞれ下部アーム15の先端方向に膨らむように湾曲している。
なお、各押さえ板42a、42bは、前述の形状に限定されるものではない。押さえ板42a、42bがそれぞれ下部アーム15の基端部方向及び先端部方向に向かって延び、下部アーム15の側面を広く覆うように設けられた方が、第1及び第2の線条体31、32の幅方向の変形を抑制する観点からは、好ましい。
【0039】
2枚の保護板44a、44bは、下部アーム15の基端側の側面(関節軸J2の周囲)及び先端側の側面(関節軸J3の周囲)をそれぞれ覆っている。保護板44a、44bの材質は、例えばポリアセタール樹脂及びポリアミド樹脂等の自己潤滑性を有するエンジニアリングプラスチックである。第1及び第2の線条体31、32の湾曲部分は、この保護板44a、44bに接触し、鋳鉄製の下部アーム15の表面に直接接触して擦れることがないので、第1及び第2の線条体31、32の損傷が抑制される。
【0040】
次に、溶接ロボット10の動作について図5に基づいて説明する。なお、前述の通り、第1及び第2の線条体31、32の内、少なくとも一方の線条体は、関節軸J2、J3と交差しないが、以下の説明においては、両方とも関節軸J2、J3と交差しないものとして説明する。
図5において、一点鎖線はスポット溶接ロボット10のアーム、黒丸はスポット溶接ロボット10の関節軸、実線は第1及び第2の線条体31、32、白丸は第1及び第2の線条体31、32の固定箇所(固定具)を示している。
図5(A)は、下部アーム15の長手方向が垂直方向に一致した状態である基準姿勢(図1(B)に示す姿勢)を示している。この状態においては、第1及び第2の線条体31、32に大きな外力は加わっていない。
【0041】
図5(B)に示すように、基準姿勢から下部アーム15が後傾し、更にその状態から上部アーム16の先端が下方向を向くように上部アーム16が関節軸J3回りに回転した場合には、固定具33aと固定具71との間の区間S1aにおいて、第1の線条体31の配線距離が短くなるので、第1の線条体31に対し、第1の線条体31が弛むように力が作用する。また、固定具34aと固定具71との間の区間S2aにおいて、第1の線条体31の配線距離が長くなるので、第1の線条体31に対し、第1の線条体31が突っ張るように力が作用する。
ところが、線条体支持機構20(案内部41)に設けられた第1の線条体31を支持するスライダ55が下部アーム15の先端側へ移動することにより、第1の線条体31に加わる力が緩和される。
【0042】
一方、固定具33bと固定具71との間の区間S1bにおいて、第2の線条体32の配線距離が長くなるので、第2の線条体32に対し、第2の線条体32が突っ張るように力が作用する。また、固定具34bと固定具71との間の区間S2bにおいて、第2の線条体32の配線距離が短くなるので、第2の線条体32に対し、第2の線条体32が弛むように力が作用する。
ところが、線条体支持機構20(案内部41)に設けられた第2の線条体32を支持するスライダ55が下部アーム15の基端側へ移動することにより、第2の線条体32に加わる力が緩和される。
【0043】
図5(C)に示すように、基準姿勢から下部アーム15が前傾し、更にその状態から上部アーム16の先端が基準姿勢よりも上方向を向くように上部アーム16が関節軸J3回りに回転した場合には、固定具33aと固定具71との間の区間S1aにおいて、第1の線条体31の配線距離が長くなるので、第1の線条体31に対し、第1の線条体31が突っ張るように力が作用する。また、固定具34aと固定具71との間の区間S2aにおいて、第1の線条体31の配線距離が短くなるので、第1の線条体31に対し、第1の線条体31が弛むように力が作用する。
ところが、線条体支持機構20(案内部41)に設けられた第1の線条体31を支持するスライダ55が下部アーム15の基端側へ移動することにより、第1の線条体31に加わる力が緩和される。
【0044】
一方、固定具33bと固定具71との間の区間S1bにおいて、第2の線条体32の配線距離が短くなるので、第2の線条体32に対し、第2の線条体32が弛むように力が作用する。また、固定具34bと固定具71との間の区間S2bにおいて、第2の線条体32の配線距離が長くなるので、第2の線条体32に対し、第2の線条体32が突っ張るように力が作用する。
ところが、線条体支持機構20(案内部41)に設けられた第2の線条体32を支持するスライダ55が下部アーム15の先端側へ移動することにより、第2の線条体32に加わる力が緩和される。
【0045】
なお、スライダ55の移動に伴い、第1又は第2の線条体31、32が、押さえ板42a、42b及び保護板44a、44bと擦れる場合があるが、これら押さえ板42a、42b及び保護板44a、44bは、自己潤滑性を有するエンジニアリングプラスチックにより形成されているので、第1及び第2の線条体31、32の損傷が抑制される。
【0046】
続いて、本発明の第2の実施の形態に係るスポット溶接ロボット80について説明する。第1の実施の形態に係るスポット溶接ロボット10と同一の構成要素については、同じ符号を付して詳しい説明を省略する。
スポット溶接ロボット80は、スポット溶接ロボット10と比較して、第1及び第2のサポート部材81a、81bを更に備えている点が相違する。
【0047】
図6に示すように、第1のサポート部材81aは、旋回部13の側部にブラケットを介して設けられている。第1のサポート部材81aは、例えば円柱状であり、底面が旋回部13の側部に接するように設けられている。第1のサポート部材81aは、スポット溶接ロボット80を側面視して、下部アーム15を回転させる関節軸J2よりも後ろ寄りかつ下側に配置されている。また、スポット溶接ロボット80を側面視して、第1のサポート部材81aは、下部アーム15と旋回部13との境界部に配置されている。
第2の線条体32の湾曲部分は、この第1のサポート部材81aの外周面に接触する。第1のサポート部材81a部材の材質は、例えばポリアセタール樹脂及びポリアミド樹脂等の自己潤滑性を有するエンジニアリングプラスチックである。
【0048】
第2のサポート部材81bは、下部アーム15の先端部であって、第1のサポート部材81aと同じ側の側面に設けられている。第2のサポート部材81bは、平面視して、線分の両端を円弧状の曲線で結んだ形状をしている。
第2のサポート部材81bは、押さえ板42bよりも先端側に配置される。更に、第2のサポート部材81bは、第2のサポート部材81bの下部アーム15の長手方向が垂直方向に一致した状態において、スポット溶接ロボット80を側面視して、上部アーム16を回転させる関節軸J3よりも前寄りかつ下側に配置される。
第2の線条体32の湾曲部分は、この第2のサポート部材81bの曲面に接触する。第2のサポート部材81bの材質は、例えばポリアセタール樹脂及びポリアミド樹脂等の自己潤滑性を有するエンジニアリングプラスチックである。
【0049】
図7に示すように、下部アーム15が前傾し、更にその状態から上部アーム16の先端が下方向を向くように上部アーム16が関節軸J3回りに回転した場合であっても、第1及び第2のサポート部材81a、81bにより、第2の線条体32の湾曲部分が支持される。その結果、第2の線条体32が下方に垂れ下がることが抑制される。また、第1及び第2のサポート部材81a、81bの材質は、自己潤滑性を有するエンジニアリングプラスチックであるため、線条体の損傷が抑えられる。
【0050】
なお、本発明は、前述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲での変更は可能である。例えば、前述の実施の形態や変形例の一部又は全部を組み合わせて発明を構成する場合も本発明の技術的範囲に含まれる。
特に、第1及び第2の線条体31、32の配置位置を互いに入れ替えても本発明を適用できることは明らかである。第1及び第2の線条体31、32の配置位置を互いに入れ替えた場合には、第1及び第2のサポート部材81a、81bは、第1の線条体31が下方に垂れ下がることを抑制することとなる。
【符号の説明】
【0051】
10:スポット溶接ロボット、12:ベース、13:旋回部、15:下部アーム、16:上部アーム、18:手首部、20:線条体支持機構、22:手首フランジ、31:第1の線条体、32:第2の線条体、33a、33b:固定具、34a、34b:固定具、41:案内部、42a、42b:押さえ板、44a、44b:保護板、50:スライドレール、55:スライダ、56:カバー、57:固定板、58:カバー、60a:第1のスライド部材、60b:第2のスライド部材、61:線条体固定部材、65a:第1の張り出し部、65b:第2の張り出し部、70:バンド、71:固定具、75:リブ、80:スポット溶接ロボット、81a、81b:サポート部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)ベースと、
2)前記ベースに旋回可能に設けられた旋回部と、
3)前記旋回部に基端部が回転可能に支持され、前後方向に揺動する下部アームと、
4)前記下部アームの長手方向に沿って、該下部アームの側面に並んでそれぞれ配線された第1及び第2の線条体と、
5)前記第1及び第2の線条体を前記下部アームの長手方向に移動可能にそれぞれ支持する案内部と、該案内部の前記下部アームの長手方向の両側にそれぞれ設けられ、前記第1及び第2の線条体が移動することより生じる該第1及び第2の線条体の該ロボットの幅方向の変形を抑制する2つの押さえ部材と、前記下部アームの基端部側の側面及び先端部側の側面をそれぞれ覆い、前記第1及び第2の線条体を保護する2つの保護部材とを有する線条体支持機構とを備えたロボット。
【請求項2】
請求項1記載のロボットにおいて、前記第1の線条体は、前記下部アームの先に設けられた上部アーム及び前記上部アームの先端部に設けられた手首部を駆動するサーボモータに電源を供給するケーブルを含み、
前記第2の線条体は、前記手首部に設けられた溶接部に溶接電流を供給するケーブルを含むロボット。
【請求項3】
請求項2記載のロボットにおいて、前記案内部は、互いに間隔をあけて前記下部アームの長手方向に延びる1対のスライドレールと、
前記1対のスライドレールにそれぞれ載って、前記下部アームの長手方向に独立に移動可能なスライダとを有し、
前記第1及び第2の線条体は、前記スライダにそれぞれ固定されるロボット。
【請求項4】
請求項3記載のロボットにおいて、前記スライダは、一方の前記スライドレールの上から他方の前記スライドレールの方向にそれぞれ張り出す第1及び第2の張り出し部と、
前記第1及び第2の張り出し部にそれぞれ固定され、該第1及び第2の張り出し部の表側の面よりも前記下部アーム側に配置される線条体固定部材とを有し、
前記第1及び第2の線条体は、それぞれ前記線条体固定部材に固定されるロボット。
【請求項5】
請求項4記載のロボットにおいて、前記線条体固定部材は、前記スライドレールの長手方向に延びる部材であり、該スライドレールの長手方向中央部よりも前記下部アームの基端部側及び先端部側にて、前記第1及び第2の張り出し部に固定されるロボット。
【請求項6】
請求項5記載のロボットにおいて、前記スライドレールが、カバーにより覆われているロボット。
【請求項7】
請求項6記載のロボットにおいて、側面視して前記下部アームの両縁に沿ってそれぞれリブが形成され、前記案内部は、該リブの間に配置されるロボット。
【請求項8】
請求項7記載のロボットにおいて、前記各押さえ部材、及び前記各保護部材の材質は、自己潤滑性を有するエンジニアリングプラスチックであるロボット。
【請求項9】
請求項7又は8記載のロボットにおいて、前記下部アームの長手方向が垂直方向に一致した場合に、前記第2の線条体は前記第1の線条体よりも前側に配置され、
前記線条体支持機構は、前記旋回部の側部に配置され、前記第2の線条体が下方に垂れ下がることを抑制する第1のサポート部材と、
前記下部アームの先端部の側面に配置され、前記第2の線条体が下方に垂れ下がることを抑制する第2のサポート部材とを更に有するロボット。
【請求項10】
請求項7又は8記載のロボットにおいて、前記下部アームの長手方向が垂直方向に一致した場合に、前記第1の線条体は前記第2の線条体よりも前側に配置され、
前記線条体支持機構は、前記旋回部の側部に配置され、前記第1の線条体が下方に垂れ下がることを抑制する第1のサポート部材と、
前記下部アームの先端部の側面に配置され、前記第1の線条体が下方に垂れ下がることを抑制する第2のサポート部材とを更に有するロボット。
【請求項11】
請求項9又は10記載のロボットにおいて、前記第1及び第2のサポート部材の材質は、自己潤滑性を有するエンジニアリングプラスチックであるロボット。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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