説明

ローソク用ワックスとその製造方法及び該ワックスを使用したローソク

【課題】大量に廃棄されている廃食用油をワックス、特にローソク用ワックスとして再利用することにより、石油枯渇によるローソクの主たる原料であるパラフィンワックスの供給問題、廃食用油の廃棄による環境汚染問題等を解決するとともに、植物性油脂をローソク原料とする植物性ローソクのように食用となる植物性油脂を原料とするのではなく、廃棄される廃食用油を原料として再利用することにより、世界的な食料不足問題にも対応した、環境にやさしいローソク用ワックス及び該ワックスを原料としたローソクを提供することである。また、従来のパラフィンワックスのように、ローソク製造時にクラックが生じにくく、燃焼時に油煙の少ない、燃焼性に優れた、廃食用油を原料としたローソクを提供することである。
【解決手段】廃食用油を水素添加して得られた、融点が45〜65℃、ヨウ素価が5〜45の硬化油からなるローソク用ワックス及び該ワックスから製造されたローソクである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃食用油より製造された硬化油を原料としたワックス、特にローソク用ワックスとその製造方法及び該ローソク用ワックスを使用したローソクとその製造方法に関するものである。原料供給に不安のある石油製品の一つであるパラフィンワックスの代替として、大部分が廃棄されていた廃食用油をローソク原料として有効に再利用した、環境にやさしいワックス、特にローソク用ワックスとその製造方法及び該ローソク用ワックスを使用したローソクとその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、家庭、外食産業、ホテル等で食品の加工に使用された使用済みの食用油の大部分が廃棄処分されていたが、最近再利用に関して、種々の方法が提案され、一部実用化されている。例えば食品関連事業者から排出される廃食用油は油脂再生配合業者等に集められて物理・化学処理後、成分調整されて、飼料、肥料、油脂関係会社や化学会社で肥料に添加されたり、飼料や工業油脂に加工されている。
【0003】
また、セッケンへの加工が比較的容易であるため昔から一部の家庭では、廃食用油からセッケンをつくって再利用しているが、セッケンを作る際にアルカリ性の強い苛性ソーダを使用するため、家庭での使用に危険を伴うことや、セッケンの使用により河川の富栄養化が促されるとの指摘もある。最近の石油製品の高騰から廃食用油を原料としたバイオディーゼル燃料が注目され、官民あげて技術開発が活発化しているものの、化学反応過程で生じる10%程度のグリセリン等の有効利用が進んでおらず、しかも軽油代替燃料とするには製造コストが高いため、未だ実用化の目途が立っていない。
【0004】
さらに、廃食用油の一部はボイラーなどの熱源として使用されているが、精製の必要性や回収コストなどの点から利用できる場所が限定されている。最近、イベント等で家庭から集められた廃食用油を小型容器に入れ、ゲル化剤を添加してゲル化したローソクがエコローソクの名称で使用されているが、ゲルローソクは燃焼の際の油煙が多い、燃焼芯を消耗させる、炎が小さい、燃焼芯に大量に煤がたまって炎が消える等の問題があるため、自分で作って楽しむローソクとして細々と再利用されているにすぎない。
【0005】
このように、大量に発生する廃食用油はその一部が再利用されているに過ぎず、残りの大部分は固化剤で固めたり、吸油剤に吸わせてゴミとして焼却処理されたり、活性汚泥で生分解処理されたり、処理されずにそのまま河川に垂れ流されているのが現状である。
本発明者らは大量に廃棄されている廃食用油を、パラフィンワックス代替のローソク原料として再利用すると、石油枯渇による原料問題、廃棄による環境汚染問題等が一挙に解決されることに着目し、廃食用油を原料としたローソク用ワックス及びローソクについて更に検討した。
【0006】
まず、従来の石油を原料とするパラフィンワックスに代わり、廃食用油の主成分である植物油を原料とした植物性ワックスを使用したローソクについて検討した。かかる植物性ワックスを使用したローソクに関し、3件の文献が提案されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。
【0007】
例えば、特許文献1には、植物油を原料とする高級脂肪酸を母材の主体成分とする植物性ローソク組成物であって、高級脂肪酸が5〜15℃の融点差を有し、かつ融点50℃以上の飽和高級脂肪酸の2種以上の混合物からなる植物性ローソク組成物が記載されている。また従来技術として、植物由来の原料を使用してなる植物性ローソクとしては、硬化油を原料として製造されたものが公知であるが、硬化油を原料とする植物性ローソクは、補助容器の必要な5cm3未満の小さなローソクばかりであった。その理由は、硬化油の主成分は単一の脂肪酸エステルからなり、ローソクの母材であるパラフィンなどに比べて融点の分布幅がシャープであるため、ローソクの製造に際してクラックが発生しやすいと記載されている。
【0008】
特許文献2には、植物性ローソクの成型性を改善する効果を持つグリセリン脂肪酸エステル及び/又はポリグリセリン脂肪酸エステルを用いて製造した植物性ローソクが記載されている。また、従来技術としてパラフィンワックスは、石油から得られるため、環境面においても石油枯渇問題、環境破壊問題等、数多くの問題を抱えているのが現状である。そこで、最近、ローソク用の油脂として、天然ろうやパラフィンワックスの代わりに、植物油から得られる硬化油を使用する方法が注目されてきた。しかし上記植物硬化油のみではローソクに成型する際、油脂の固化状態が悪く、粗大結晶の発生により表面が粗くなり、更にひび割れが生じるなど、パラフィンワックス等に比べて一般的なローソクの形に成型することは難しいという問題を抱えていると記載されている。
【0009】
特許文献3には、ローソク組成物が、ゲル化剤であるベンジリデンソルビトール類と植物油とを含み、ベンジリデンソルビトール類が植物油100重量部に対し0.5〜5重量部であるとし、これらを混合してガラスなどの容器に入れて形成するゲルローソクが記載されている。
【特許文献1】特開平2003−206494
【特許文献2】特開2004−168797
【特許文献3】特開昭58−217597
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、各特許文献にローソク原料として記載された植物性ワックスの多くが、食用となる植物性油脂を原料としているため、石油を原料とするパラフィンワックスのような枯渇のおそれはないが、昨今の世界的な食料不足の折から、食料以外の用途であるローソク原料に使用するには好ましくない。また植物性油脂として廃食用油を使用することについては各文献には、全く記載されていない。
【0011】
特許文献1及び特許文献2に従来技術として記載されている植物油から得られる硬化油を使用した植物性ローソクは、文献中にも、ローソクの製造に際に、クラックが発生しやすいという問題がある。また不飽和分の分解揮発臭がする。炎が小さくなる。燃焼芯に煤が付着する。燃焼芯への吸い上げが悪い。等の問題がある。そのため、硬化油を原料とする植物性ローソクは、上記影響を比較的受けにくい小型(小径)のローソクに限定され、大型(直径20mm以上)のローソクは上市されていないと、硬化油を原料とした大型ローソクはいまだ実用化されていないことが記載されている。
【0012】

特許文献3に記載されているゲル化ローソクは、容器の中でゲル化させた容器ローソクの形でしか使用できない。また燃焼芯への吸い上げが悪く、炎が小さく、しかも燃焼芯に煤がたまったりして燃焼芯を消耗させる等の問題がある。また、ローソクの燃焼終了時には、容器は不燃物として分別廃棄する必要がある。特許文献3に記載されているゲル化ローソクは自立できず、自立して形状が保持できる本発明のローソクとは異なるローソクである。
【0013】
食用となる植物性油脂を原料とした従来の植物性ワックスに代わるローソク原料として、廃食用油から硬化油が製造できれば、廃食用油を原料としたローソク用ワックス及び該ワックスを使用したローソクが製造できるため、更に検討した結果、油脂である廃食用油の多くが融点の低い不飽和脂肪酸を多く含むため常温で液体となり、ローソク原料としては好ましくない。そこで廃食用油に水素添加を行い、融点の高い飽和脂肪酸の割合を増加させると、常温で固形化した油脂が製造でき、該油脂はローソク原料として使用できる。また、水素添加の程度で一部の不飽和脂肪酸を残すと液体と固体の中間の柔らかい硬化油とすることもできるし、完全に飽和脂肪酸とすると硬い硬化油とすることもできる。水素添加の程度を示す指標となるヨウ素価の小さい硬い硬化油は、ローソク製造時にクラックを生じやすい。一方ヨウ素価の大きい硬化油は柔らかくて融点が低くなり夏場の保管中に溶融したり、不快な油脂臭が残ったり、燃焼時に油煙が発生しやすくなるといった不都合を生じる。
【0014】
本発明者らは、硬化油のヨウ素価と融点を特定の範囲に調整すれば、クラックの発生がなく、不快な油脂臭や燃焼時に油煙の発生しないローソク、特に従来製造が困難であった直径20mm以上の大型のローソクが製造できるとの確信の下に、さらに鋭意検討した結果、本発明に到達したものである。
【0015】
したがって、本発明の第一の目的は、廃食用油を原料とする特定のヨウ素価を有する硬化油からなるワックスを提供することである。
本発明の第二の目的は、ローソク製造時にクラックを生じにくく、油煙が少なく、燃焼性に優れたローソク原料として、廃食用油を原料とする特定のヨウ素価を有する硬化油からなるローソク用ワックスを提供することである。
【0016】
本発明の第三の目的は、廃食用油を原料とした、特定のヨウ素価を有する硬化油からなるローソク用ワックスの製造方法を提供することである。
本発明の第四の目的は、廃食用油を原料とした、特定のヨウ素価を有する硬化油を使用したローソクを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
すなわち、第1の発明は、廃食用油を水素添加して得られた、融点が40〜70℃、ヨウ素価が55以下の硬化油からなるワックスである。
第2の発明は、融点が45〜65℃、ヨウ素価が5〜45の硬化油からなる第1の発明記載のローソク用ワックスである。
第3の発明は、廃食用油を原料とし、金属触媒の存在下で、水素添加して製造された硬化油を脱臭・ろ過して第2の発明記載の硬化油を製造するローソク用ワックスの製造方法である。
【0018】
第4の発明は、第2の発明記載のローソク用ワックスから製造されたローソクである。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、大量に廃棄されている廃食用油をワックス、特にローソク用ワックスとして再利用することにより、石油枯渇による原料枯渇問題、廃棄による環境汚染問題等を解決することができる。また、植物性油脂をローソク原料とする植物性ローソクのように食用となる植物性油脂を原料とするのではなく、廃棄される廃植物油を原料とするため、世界的な食料不足問題にも対応した環境にやさしいローソク用ワックス及び該ワックスを原料としたローソクが提供できる。
また、硬化油のヨウ素価を特定の範囲に設定することで、クラックが生じにくく、油煙の少ない、燃焼性に優れた、従来のパラフィンワックスと同等のローソク用ワックス及びローソクが提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に本発明のローソク用ワックスの製造システムの一例について図1にて説明する。図1はシステムのフロー図であり、本システムは、反応槽1、水素ボンベ2、窒素ボンベ3、脱臭手段及びろ過手段10で構成されている。反応槽1は耐圧構造であり、胴体部に防爆型のバンドヒーター4が取り付けられている。反応槽1には防爆型の撹拌機5が取り付けられている。また、反応槽1の上部には、水素ガスボンベ2と配管で接続された水素ガス導入口6、窒素ガスボンベ3と配管で接続された窒素ガス導入口7、触媒や廃食用油の投入口8が設けられている。反応槽1の下部には、硬化油の排出口9が設けられている。10は硬化油から触媒を取り除くためのろ過手段である。11はボトムバルブ、12はローソク原料配合槽である。
【0021】
システムは、まずバンドヒーター4で加熱された反応槽1の投入口8から一定量の廃食用油と触媒を投入した後、窒素ガスボンベ3から反応槽内に窒素ガスを導入して反応槽内の空気を完全に窒素置換する。その後、水素ガスボンベ2から水素ガスを導入口6から槽内に導入するとともに、撹拌機5を回転させて、廃食用油と水素を反応させる。予め設定された単位時間当たりの水素ガスの消費量とヨウ素価との関係から、設定されたヨウ素価に対応する水素ガスが消費されると水素ガスの供給を中止して、硬化油反応を終了する。反応終了後、ボトムバルブ11を開放して、製造された硬化油を排出する。製造された硬化油には、金属触媒が含まれていたり、廃食用油に含まれる不純物の分解臭がするため、ろ過手段10で金属触媒を除去し、また、脱臭手段(図示せず)でローソク原料として使用するのに支障にならない程度に臭気成分を除去する。脱臭手段及びろ過手段で処理された硬化油は、一旦ローソク原料配合槽12に貯蔵し、公知の方法でローソクを製造することができる。
【0022】
食品加工には、通常牛脂、豚脂、魚油、鶏油などの動物性油脂からなる動物油、大豆油、ナタネ油、ゴマ油、綿実油、パーム油、サフラワー油、コーン油、米ぬか油、やし油、オリーブ油などの植物性油脂からなる植物油が使用されているが、ローソク原料となる廃食用油は、食品を加工した後の使用済みで、かつ上記動植物由来の油あれば特に制限はない。
原料の廃食用油には、揚げ物の場合は、加工工程で小麦粉、原料かす、水分等が混入するため、予めろ布や遠心分離等の公知のろ過手段でろ過して、廃食用油に含まれる水分、小麦粉などのゴミやかす等を取り除いておく必要がある。
【0023】
硬化油の臭気は、硬化油中に含まれる不純物の分解成分である。この分解成分は、硬化油をローソク原料として使用するのに支障にならない程度まで除去する必要がある。硬化油に含まれる分解成分を除去して脱臭する脱臭手段は、公知の脱臭手段が採用できる。例えば溶融状態の硬化油を活性炭や活性白土などを用いて吸着脱臭したり、反応槽1内の溶融状態の硬化油を真空(減圧)下で脱臭することができる。真空下での脱臭時に溶融状態の硬化油を撹拌したり、水蒸気や窒素ガスなどを吹き込むと、脱臭効果が向上して好ましい。
【0024】
硬化油の合成に使用した金属触媒は公知の手段で除去することができる。除去手段ではローソクの燃焼に阻害が生じない程度に金属触媒を除去すればよい。例えば、遠心分離で溶融した硬化油から金属触媒を除去してもよいし、ろ紙やろ布を用いた加圧ろ過、減圧ろ過、自然ろ過でも良いが、通常加圧ろ過や減圧ろ過が好ましく適用される。
【0025】
廃食用油の水素添加で用いられる金属触媒は特に限定されるものではなく、ニッケル、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、銅、銅−クロム、銅−ニッケル等が使用でき、ニッケル、白金、銅−クロム、銅−ニッケルが好ましく、なかでもニッケル、白金が好ましい。特にコスト面からニッケルが好ましい。
【0026】
さらに上記のニッケル触媒は、湿式還元ニッケル触媒、乾式還元ニッケル触媒等を使用することができる。触媒の添加量は反応温度、水素分圧、反応時間、などに左右されるが、添加量は特に限定されるものではない。金属触媒は製造コストに占める割合が高いため、コストを考慮すると原料となる廃食用油100重量部に対して0.005〜2.0重量部程度が好ましい。通常0.01〜0.5重量部が適当である。上記範囲未満であれば水添反応が進みにくく、上記範囲を超えるとコストアップとなり、パラフィンワックスの価格に対抗できない。
【0027】
水素添加の反応条件は、通常の反応条件と同様な条件でよく、廃食用油と金属触媒を反応槽に入れた後に、撹拌下で、反応させる。水素添加反応は反応温度、水素分圧、反応時間、金属触媒量などに左右されるが、パラフィンワックスに対し、競争力のあるコストで製造できる条件に設定すればよい。廃食用油100重量部に対して0.005〜2.0重量部の金属触媒を使用する場合は、通常、反応温度は130〜250℃、水素分圧は1.0×10−1MPa(常圧)(760mmHg)〜2.0MPa(20気圧)(15,200mmHg)の範囲に設定される。反応時間は上記条件で硬化油が製造できる時間に適宜設定される。上記範囲未満であれば水添反応が進みにくく、上記範囲を超えるとエネルギーコストが大きくなり、製品のコストアップが避けられない。
【0028】
廃食用油を水素添加した硬化油は、融点は40〜70℃、ヨウ素価は55以下である。ローソクに適した硬化油の融点は、通常45〜65℃、ヨウ素価は5〜45である。成形時にクラックが発生しやすい大型ローソクの場合はヨウ素価が15〜30の硬化油を使用するのが好ましい。ヨウ素価が上記の範囲未満では硬くて融点が高くなりローソク製造時にクラックを生じやすく、上記範囲を超えると柔らかくて融点が低くなり夏場の保管中に溶融したり、不快な油脂臭が残ったり燃焼時に油煙が発生しやすいという問題がある。
【0029】
本発明の廃食用油を水素添加した硬化油をローソク原料とする場合は、特にヨウ素価が5未満の硬化油は硬すぎて、該硬化油のみでローソクを製造すると成形時にクラックが発生するため、ローソク用ワックスとして不適当であるが、成形改善剤として他のワックスを混合すると成形性が向上してローソクが製造可能となる。また、融点が45〜65℃、ヨウ素価が5〜45のローソク用ワックスは、該ローソク用ワックスのみでローソクを製造することができるが、成形改善剤として他のワックスを混合すると成形性を更に向上させることができる。成形改善剤としてのワックスとしては、例えば硬化ひまし油などの硬化油、パラフィンワックスやマイクロクリスタリンワックスなどの石油ワックス、ポリエチレンワックスなどの合成炭化水素系ワックス、ステアリン酸やパルミチン酸などの高級脂肪酸、ミツロウや木ロウなどの天然ワックスなどがある。
【0030】
さらに本発明のローソク用ワックスに顔料、染料、香料、酸化防止剤、紫外線吸収剤などを添加すると、ローソクの品質を安定化させたり、機能性を高めることができる。
【実施例】
【0031】
実施例1〜実施例4及び比較例1〜比較例2
家庭から回収された、ゴミやかすを取り除いた使用済みてんぷら油60gをニッケル触媒(SO−850:堺化学製)0.6gとともに100mL容量のステンレス製小型圧力容器に入れ、窒素ガスで3回パージし、200℃に加熱した後、容器に水素ガスを供給し、容器内のガス圧を0.9Mpaに維持しつつマグネット式撹拌装置で撹拌しながら2時間30分水素添加反応を行って得られた硬化油を比較例1とした。
また、同じ条件で3時間反応させて得られた硬化油を実施例1とし、4時間反応させて得られた硬化油を実施例2とし、6時間反応させて得られた硬化油を実施例3とし、7時間反応させて得られた硬化油を実施例4とし、8時間反応させて得られた硬化油を比較例2とした。
【0032】
各実施例及び比較例で製造された硬化油のヨウ素価、融点とそれら原料としてを用いたローソクの成形性、燃焼性及びローソクとしての評価を[表−1]に示す。
【表−1】

【0033】
比較例1は融点が42℃と低いため、気温の高い夏場に溶融するおそれがあり、しかも、比較例1の硬化油で製造したローソクは柔らかくて、べとつき、油脂臭も残っており、燃焼の際には油煙が発生するためローソク用の硬化油(ワックス)としては不適である。
比較例2の硬化油で製造したローソクは、油脂臭なく燃焼の際の油煙が発生しないものの、硬化油は硬く成形時に激しいクラックを発生するためローソク用ワックスとしては不適である。
【0034】
実施例1の硬化油で製造したローソクは、燃焼時にやや油煙が発生するものの、ワックスはやや柔らかく良好な成形性を示すため容器入りローソク用のワックスとして好ましく使用できる。
実施例2及び実施例3の硬化油で製造したローソクは、成形性が良好で燃焼時の油煙もないため、通常の大型ローソクにも使用できる。
実施例4の硬化油で製造したローソクは、水冷下で成形した場合は、少々クラックを生じるものの、通常の空冷下の成形においてはクラックを生じず、また燃焼の際の油煙なく、ローソク用のワックスとして使用できる。
【0035】
実施例5〜実施例6
予めろ紙にてゴミやかすを取り除いた、ホテル厨房の使用済み揚げ油3kgをニッケル触媒(プリキャット9920:ユニケマ インターナショナル社製)13gとともにて6L容量のステンレス製圧力反応容器に入れ、窒素ガスで3回パージし、190℃に加熱した後、水素ガスを注入し、容器内の水素ガス圧を0.7Mpaに維持しつつ、毎分700回転の撹拌機で2時間30分撹拌した。その後、排出弁を開放し、製造された硬化油をろ紙でろ過して、触媒を分離することにより溶融状態の硬化油を得た。得られた硬化油のヨウ素価は22、融点は58℃であった。
【0036】
次に、溶融状態の硬化油をローソク原料配合槽に移し、硬化油100重量部に対して20重量部のステアリン酸と溶融混合した約80℃のローソク配合原料を、芯を配置したローソク金型に注入し燃焼剤を冷却固化して、図−2に示すような直径50mm、高さ150mmの円筒形状のローソク15を製造した。16は燃焼芯である。このローソクを実施例5とする。
【0037】
実施例5のローソクは、硬化油のややくすんだ色合いが市販の白色ステアリン酸を配合することで落ち着いた色合いとなり、完全に飽和脂肪酸とした硬化油は硬くて、冷却固化させる際に亀裂を生じやすいがステアリン酸を配合することで成型性を高めることができる。
次に、芯に点火し燃焼性を観察したところ、油煙や煤の発生もなく、良好な燃焼状態を保った。また、ローソクの上面外周部が堰となって燃焼中のロウが垂れることもなく、燃焼に伴う悪臭も認められなかった。
【0038】
実施例5で用いたローソク原料配合槽内の溶融状態の硬化油に、等量の135°Fパラフィンワックスを溶融混合し、公知の造粒手段で造粒した。該造粒体を金型に入れて圧縮成形したローソク17の中心に芯18を装着して図−3に示す直径36mm、高さ20mmのローソクを製造した。このローソクを実施例6とする。
【0039】
一般に硬化油だけで造粒されたローソク原料は圧縮成形に不向きであることが多いが、実施例6のローソクは、圧縮成形に向くパラフィンワックスを等量配合することで、圧縮成形が可能であった。成形されたローソク17の中心に設けられた孔に芯18を装通し、その芯の下端をスチール製の座金で固定した。次に実施例6のローソクを、内径38mm深さ24mmのポリカーボネート製カップ内に入れて、芯に点火し4時間燃焼性を観察したところ、油煙や煤の発生や臭いもなく良好な燃焼状態であった。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明のローソクは、廃食用油より製造された硬化油をそのままローソクの原料とするもので、廃食用油の有効な活用のみならず、昨今の石油高騰によりローソクの主たる原料であるパラフィンワックスの供給不安を払拭する代替ワックスとしての硬化油を用いた環境にやさしいローソクである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】 本発明のローソク用ワックスである硬化油の製造システムの一実施例を示すシステムフロー図である。
【図2】 本発明のローソクの一実施例を示すローソクの正面図である。
【図3】 本発明の他のローソクの一実施例を示すローソクの正面図である。
【符号の説明】
【0042】
1・・反応槽
2・・水素ボンベ
3・・窒素ボンベ
4・・バンドヒーター
5・・撹拌機
6・・水素ガス導入口
7・・窒素ガス導入口
8・・廃食用油投入口
9・・硬化油排出口
10・・ろ過手段
11・・ボトムバルブ
15、17・・ローソク
16、18・・燃焼芯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃食用油を水素添加して得られた、融点が40〜70℃、ヨウ素価が55以下の硬化油からなるワックス。
【請求項2】
融点が45〜65℃、ヨウ素価が5〜45の硬化油からなる請求項1記載のローソク用ワックス。
【請求項3】
廃食用油を原料とし、金属触媒の存在下で水素添加して製造された硬化油を脱臭・ろ過して、請求項2記載の硬化油を製造することを特徴とするローソク用ワックスの製造方法。
【請求項4】
請求項2記載のローソク用ワックスから製造されることを特徴とするローソク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−90382(P2010−90382A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−232831(P2009−232831)
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【出願人】(593121782)ペガサスキヤンドル株式会社 (9)
【Fターム(参考)】