説明

ロータリジョイント

【課題】 漏電の虞がある電力を用いることなしに、シール部のシール性が不完全な状態にある時でも、シール部からの液漏れを抑制することができると共に、運転状況に応じて両シール面の面圧調整が可能になるロータリジョイントの提供。
【解決手段】 非回転軸2の流路である供給穴(非回転軸側流路)2aに供給される内部流体圧力とは別系統の圧力エアをピン23における拡大頭部23bの第1受圧面が受圧することにより非回転軸2をロータ軸3方向に移動させて両シール面41、42を互いに密着させる方向に付勢する第1流体圧付勢手段5が備えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種機械に装着してクーラント、薬品等の内部流体を回転軸側に供給する場合、また回転軸側流路と非回転軸側流路に負圧を発生させる場合に適したロータリジョイントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工作機械の主軸先端に取付けた回転工具等へ切削用のクーラント液を供給するような場合、主軸後端部、あるいは直結主軸モータのロータ軸後端部にロータリジョイントを直結し、夫々の軸心に設けた流路を介してこのロータリジョイントからクーラント液等を圧送している。
また、CMP等のような半導体製造装置や洗浄機等でも同様にロータリジョイントが用いられている。
【0003】
この種のロータリジョイントは、非回転軸側流路と回転軸側流路との間にはそれぞれシール面が備え付けられ、工作機械駆動時には供給する内部流体の内部流体圧力によって非回転軸(フローティングシート)側のシール面を回転軸(主軸モータのロータ軸)側のシール面方向に移動させ、両シール面を互いに密着させることによりシール部が構成されるようになっている。
【0004】
通常、前記シール部の非回転側のシール面と回転軸側のシール面は平滑に仕上げられ、内部の流路を流れる内部流体が漏れないように互いに完全に密着するようになっている。
【0005】
そして、回転工具等の付け替え時等において内部流体の供給を停止すると、コイルスプリング等の付勢力で非回転軸(フローティングシート)側を押し戻して両シール面を互いに離間させることにより、潤滑液、冷却液等の役割を持つ内部流体の供給がない状態における両シール面の摩耗や焼き付きを防止するようになっている(例えば、特許文献1参照。)
【0006】
しかしながら、従来例(特許文献1)のロータリジョイントにおいては、工作機械駆動時には供給する内部流体の内部流体圧力によって非回転軸側のシール面をコイルスプリング等の付勢力に抗して回転軸側のシール面方向に押圧移動させ、両シール面を互いに密着させることによりシール部が構成されるようになっているため、内部流体の供給が開始されてから両シール面が完全に密着してシール部を構成するまでにタイムラグがある。このため、その間にシール部から内部流体が外部に漏れ出し、この漏れ量が多いと、他の部位まで侵入して重大なトラブルを発生させる虞があるという問題がある。
【0007】
また、内部流体圧力が負圧の場合、前記固定軸側のシール面が前記回転軸側のシール面と逆方向に摺動され、両シール面が引き離されてしまう。このため、シール部から内部流体が外部に漏れ出してしまうという問題がある。
【0008】
そこで、以上のような問題の解決策として、磁力、電磁力(例えば、特許文献2参照。)、付勢スプリングにより、非回転軸を回転軸方向に移動させて両シール面を互いに密着させる方向に付勢するようにすることが提案されている。
【特許文献1】特開平9−152077号
【特許文献2】特開平6−241364号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述の磁力による場合、及び付勢スプリングによる場合は、付勢力の調整ができないため、シール面の面圧を調整することができず流体圧力や回転数に制限が生じるという問題がある。
これに対し、電磁力による場合(特許文献2)は、電力を調整することにより付勢力の調整が可能であるため、シール面の面圧を調整することはできるが、電磁力による場合は、永久磁石と電磁石を対向配置させると共に電磁石へ電源を供給するための配線が必要になる等、構造が複雑になると共に、漏れた内部流体で濡れた雰囲気の中に設けられるため、漏電の虞があり、その対策も必要になるという多くの問題がある。
【0010】
本発明は、上述のような従来の問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、漏電の虞がある電力を用いることなしに、シール部のシール性が不完全な状態にある時でも、シール部からの液漏れを抑制することができると共に、運転状況に応じて両シール面の面圧を調整することができるロータリジョイントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、請求項1記載のロータリジョイントは、軸心にそれぞれ流路が備えられた非回転軸と回転軸との対向端面にはそれぞれシール面が備え付けられ、前記非回転軸は回転が阻止された状態、且つケーシングに形成された摺動支持孔に沿って移動自在に設けられていて前記非回転軸を回転軸方向に移動させて前記両シール面を互いに密着させることによりシール部が形成されるように構成されたロータリジョイントであって、前記非回転軸側流路に供給される内部流体圧力とは別系統の流体圧力により前記非回転軸を回転軸方向に移動させて前記両シール面を互いに密着させる方向に付勢する第1流体圧付勢手段が備えられていることを特徴とする手段とした。
【0012】
請求項2記載のロータリジョイントは、軸心にそれぞれ流路が備えられた非回転軸と回転軸との対向端面にはそれぞれシール面が備え付けられ、前記非回転軸は回転が阻止された状態、且つケーシングに形成された摺動支持孔に沿って移動自在に設けられていて前記非回転軸を回転軸方向に移動させて前記両シール面を互いに密着させることによりシール部が形成され、前記非回転軸には該非回転軸を回転軸方向に移動させて前記両シール面を互いに密着させる方向に付勢する第1付勢手段が備えられたロータリジョイントであって、前記非回転軸側流路に供給される内部流体圧力とは別系統の流体圧力により前記非回転軸を回転軸方向に移動させて前記両シール面を互いに密着させる方向に付勢する第1流体圧付勢手段が備えられていることを特徴とする手段とした。
【0013】
請求項3記載のロータリジョイントは、軸心にそれぞれ流路が備えられた非回転軸と回転軸との対向端面にはそれぞれシール面が形成され、前記非回転軸は回転が阻止された状態、且つケーシングに形成された摺動支持孔に沿って移動自在に設けられていて前記非回転軸を回転軸方向に移動させて前記両シール面を互いに密着させることによりシール部が形成され、前記非回転軸には該非回転軸を回転軸とは逆方向に移動させて前記両シール面を引き離す方向に付勢する第2付勢手段が備えられたロータリジョイントであって、前記非回転軸側流路に供給される内部流体圧力とは別系統の流体圧力により前記非回転軸を回転軸方向に移動させて前記両シール面を互いに密着させる方向に付勢する第1流体圧付勢手段が備えられていることを特徴とする手段とした。
【0014】
請求項4記載のロータリジョイントは、請求項1〜3のいずれか1項に記載のロータリジョイントにおいて、前記非回転軸は該非回転軸を軸方向に移動自在に支持するケーシングに対し非回転軸から突出形成されたピンが前記ケーシングに軸方向に形成されたピン挿通孔内に移動自在に挿入できる様に設けられており、前記ピンには前記回転軸方向に推力を発生させる第1受圧面が形成され、前記第1流体圧付勢手段は、前記ピンが挿入されたピン挿通孔に前記非回転軸側流路に供給される内部流体圧力とは別系統の流体圧力が供給され、該流体圧力を前記ピンの第1受圧面で受圧することによって前記非回転軸を回転軸方向に移動させて前記両シール面を互いに密着させるように構成されていることを特徴とする手段とした。
【0015】
請求項5記載のロータリジョイントは、請求項4に記載のロータリジョイントにおいて、前記ピンが前記非回転軸に対し固定されることにより、非回転軸の回転を阻止する回り止めピンとしての役目をなすように構成されていることを特徴とする手段とした。
【0016】
請求項6記載のロータリジョイントは、軸心にそれぞれ流路が備えられた非回転軸と回転軸との対向端面にはそれぞれシール面が備え付けられ、前記非回転軸は回転が阻止された状態、且つケーシングに形成された摺動支持孔に沿って移動自在に設けられていて前記非回転軸を回転軸方向に移動させて前記両シール面を互いに密着させることによりシール部が形成され、前記非回転軸には該非回転軸を回転軸方向に移動させて前記両シール面を互いに密着させる方向に付勢する第1付勢手段が備えられたロータリジョイントであって、前記非回転軸側流路に供給される内部流体圧力とは別系統の流体圧力により前記非回転軸を前記両シール面の密着力を弱める方向に付勢する第2流体圧付勢手段が備えられていることを特徴とする手段とした。
【0017】
請求項7記載のロータリジョイントは、請求項6に記載のロータリジョイントにおいて、前記非回転軸は該非回転軸を軸方向に移動自在に支持するケーシングに対し非回転軸から突出形成されたピンを前記ケーシングに軸方向に形成されたピン挿通孔内に移動自在に挿入できる様に設けられており、前記ピンには前記回転軸方向とは逆方向に推力を発生させる第2受圧面が形成され、前記第2流体圧付勢手段は、前記ピンが挿入されたピン挿通孔に前記非回転軸側流路に供給される内部流体圧力とは別系統の流体圧力が供給され、該流体圧力を前記ピンの第2受圧面で受圧することによって前記非回転軸を前記両シール面の密着力を弱める方向に付勢するように構成されていることを特徴とする手段とした。
【0018】
請求項8記載のロータリジョイントは、請求項1〜7のいずれか1項に記載のロータリジョイントにおいて、前記非回転軸側流路に供給される内部流体圧力とは別系統の流体圧力は圧力調整手段により圧力調整可能に構成されていることを特徴とする手段とした。
【0019】
請求項9記載のロータリジョイントは、請求項8に記載のロータリジョイントにおいて、前記圧力調整手段は、前記非回転固定軸側流路に供給される内部流体圧力に応じて流体圧力が制御されるように構成されていることを特徴とする手段とした。
【0020】
請求項10記載のロータリジョイントは、請求項8に記載のロータリジョイントにおいて、前記圧力調整手段は、前記回転軸の回転数に応じて流体圧力が制御されるように構成されていることを特徴とする手段とした。
【0021】
請求項11記載のロータリジョイントは、請求項1〜10のいずれか1項に記載のロータリジョイントにおいて、前記回転軸が工作機械の回転軸に接続されていることを特徴とする手段とした。
【発明の効果】
【0022】
請求項1記載のロータリジョイントでは、上述のように、非回転軸側流路に供給される内部流体圧力とは別系統の流体圧力により非回転軸を回転軸方向に移動させて前記両シール面を互いに密着させる方向に付勢する第1流体圧付勢手段が備えられることにより、非回転軸の流路に内部流体圧力が供給される前に、エア等の流体圧力を供給することにより、非回転軸を移動させて両シール面を互いに密着させた状態にすることができるため、その後に非回転軸の流路に供給される流体がシール部から漏れ出すことを防止することができるようになる。
【0023】
なお、非回転軸の流路に液が供給されると同時に流体圧力を供給した場合でも、非回転軸を移動させて両シール面が互いに密着するまでの時間を短縮することができるため、シール部から流体が漏れ出すことを抑制することができるようになる。
【0024】
さらに、非回転軸側の流路の内部流体圧力が負圧である場合でも、非回転軸を回転軸方向に移動させて両シール面を互いに密着させることができ、これにより、回転軸側の流路を負圧にすることができるようになる。
【0025】
従って、漏電の虞がある電力を用いることなしに、シール部のシール性が不完全な状態にある時でも、シール部からの液漏れを抑制することができると共に、運転状況に応じて両シール面の面圧調整が可能になるという効果が得られる。
【0026】
請求項2記載のロータリジョイントでは、上述のように、非回転軸には該非回転軸を回転軸方向に移動させて両シール面を互いに密着させる方向に付勢する第1付勢手段が備えられたロータリジョイントにおいて、非回転軸側流路に供給される内部流体圧力とは別系統の流体圧力により非回転軸を回転軸方向に移動させて両シール面を互いに密着させる方向に付勢する第1流体圧付勢手段が備えられることにより、請求項1と同様の効果が得られる他に、第1付勢手段による付勢力を補強し、面圧力を任意に調節することができるようになるという効果が得られる。
【0027】
請求項3記載のロータリジョイントでは、上述のように、非回転軸には該非回転軸を回転軸とは逆方向に移動させて両シール面を引き離す方向に付勢する第2付勢手段が備えられたロータリジョイントにおいて、非回転軸側流路に供給される内部流体圧力とは別系統の流体圧力により非回転軸を回転軸方向に移動させて前記両シール面を互いに密着させる方向に付勢する第1流体圧付勢手段が備えられることにより、請求項1と同様の効果が得られる。
【0028】
請求項4記載のロータリジョイントでは、上述のように、非回転軸は該非回転軸を軸方向に移動自在に支持するケーシングに対し非回転軸から突出形成されたピンをケーシングに軸方向に形成されたピン挿通孔内に移動自在に挿入させることにより、前記ピンには前記回転軸方向に推力を発生させる第1受圧面が形成され、第1流体圧付勢手段は、ピンが挿入されたピン挿通孔に前記非回転軸側流路に供給される内部流体圧力とは別系統の流体圧力が供給され、該流体圧力を前記ピンの第1受圧面で受圧することによって非回転軸を回転軸方向に移動させて両シール面を互いに密着させるように構成されることにより、従来から備えられていたピンを利用し、簡単な構造の追加のみで第1流体圧付勢手段を備えることができるようになるという追加の効果が得られる。
【0029】
請求項5記載のロータリジョイントでは、上述のように、前記ピンが非回転軸に対し固定されることにより、非回転軸の回転を阻止する回り止めピンとしての役目をなすように構成されることにより、回り止めピンを有効利用して第1流体圧付勢手段を備えることができ、これにより、構造の簡略化とコンパクト化が可能になるという効果が得られる。
【0030】
請求項6記載のロータリジョイントでは、上述のように、非回転軸には該非回転軸を回転軸方向に移動させて両シール面を互いに密着させる方向に付勢する第1付勢手段が備えられたロータリジョイントにおいて、非回転軸側流路に供給される内部流体圧力とは別系統の流体圧力により非回転固定軸を両シール面の密着力を弱める方向に付勢する第2流体圧付勢手段が備えられることにより、請求項1と同様の効果が得られると共に、シール面の摩耗及び焼き付きを防止することができるようになるという追加の効果が得られる。
【0031】
請求項7記載のロータリジョイントでは、上述のように、非回転軸は該非回転軸を軸方向移動自在に支持するケーシングに対し非回転軸から突出形成されたピンをケーシングに軸方向に形成されたピン挿通孔内に移動自在に挿入できる様に設けられており、ピンには回転軸方向とは逆方向に推力を発生させる第2受圧面が形成され、第2流体圧付勢手段は、ピンが挿入されたピン挿通孔に非回転軸側流路に供給される内部流体圧力とは別系統の流体圧力が供給され、該流体圧力をピンの第2受圧面で受圧することによって非回転軸を前記両シール面の密着力を弱める方向に付勢するように構成されることにより、従来から備えられていたピンを利用し、簡単な構造の追加のみで第2流体圧付勢手段を備えることができるようになるという追加の効果が得られる。
【0032】
請求項8記載のロータリジョイントでは、上述のように、軸側流路に供給される内部流体圧力とは別系統の流体圧力は圧力調整手段により圧力調整可能に構成されることにより、運転状況に応じて両シール面の面圧を任意に調整することができるようになる。
【0033】
請求項98記載のロータリジョイントでは、上述のように、圧力調整手段は、非回転軸側流路に供給される内部流体圧力に応じて流体圧力が制御されるように構成されることにより、内部流体圧力の変動によるシール面の面圧変動を修正することができるようになる。
【0034】
請求項10記載のロータリジョイントでは、上述のように、圧力調整手段は、回転軸の回転数に応じて流体圧力が制御されるように構成されることにより、回転数の変動によるシール面の面圧変動を修正することがきるようになる。
【0035】
請求項11記載のロータリジョイントでは、上述のように、前記回転軸が工作機械の回転軸に接続されているものにおいては、シール部からの液漏れを抑制することにより、重要部品である軸受けや主軸モータ等が被害を被ることを防止することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明の実施例を図面により説明する。
【実施例1】
【0037】
この実施例1のロータリジョイントは、請求項1、4、5、8〜11に記載の発明に対応する。
なお、この実施例1では、ロータリジョイントの回転軸が工作機械の回転軸に接続されていて、加工部分に流体圧力としてクーラント(液体)を供給し、第1流体圧付勢手段の流体としてエアを用いる場合を例にとって説明する。
【0038】
図1はこの実施例1のロータリジョイントを示す図2のI−I線における断面図、図2は図1のII−II線における断面図、図3は図1の III−III 線における断面図である。
【0039】
この実施例1のロータリジョイントは、ケーシング1と、フローティングシート(非回転軸)2と、主軸モータのロータ軸(回転軸)3と、シール部4と、第1流体圧付勢手段5と、を主な構成として備えている。
【0040】
さらに詳述すると、上記ケーシング1の軸心部には上記フローティングシート2の軸部21を軸方向移動可能に支持する摺動支持孔11が形成され、この摺動支持孔11はクーラント液等の供給部と連通された状態となっている。
【0041】
上記フローティングシート2とロータ軸3は同軸上において対向配置されていて、その軸心部には、供給部から供給されるクーラント液等を工作機械等に供給するための流路を形成する供給穴(非回転軸側流路)2aと供給穴(回転軸側流路)3aがそれぞれ形成されている
【0042】
そして、フローティングシート2の軸部21が摺動支持孔11内に軸方向移動可能に挿入支持され、摺動支持孔11の内周面に備えたOリング12により、該摺動支持孔11内周面と軸部21の外周面との間がシールされた状態となっていて、供給部から供給されるクーラント液等の流体圧力を軸部21の端面で受圧することにより、ロータ軸3方向に押圧移動させて連通させるようになっている。
【0043】
上記シール部4は、フローティングシート2の端面に備え付けられたシール面41とロータ軸3の端面に備え付けられたシール面42とで構成され、両シール面41、42が互いに対面する状態で配置されている。
【0044】
また、フローティングシート2における軸部21のシール面41側端部外周には、フランジ部22が形成されている。
【0045】
そして、上記フランジ部22に取り付け固定されたピン23をケーシング1に軸方向に形成されたピン挿通孔13に対し軸方向移動自在に挿入係止させることにより、フローティングシート2の回り止めが行われるようになっている。
【0046】
このピン23は、その基端側に六角レンチを係合可能な係合溝23aを有する拡大頭部23bと、先端側にフランジ部22に形成された雌ねじ孔22aに螺合可能な雄ねじ部23cが形成されていて、ピン挿通孔13から挿入して先端雄ねじ部23cを雌ねじ孔22aに螺合させることにより、雄ねじ部23cをピン挿通孔13内に移動自在に支持させた状態でフランジ部22に取り付け固定されている。
【0047】
ピン挿通孔13には、摺動支持孔11から供給穴(非回転軸側流路)2aに供給される内部流体圧力とは別系統であるエアポンプ51から、圧力調整器(圧力調整手段)52を介して圧力エア(流体圧力)が供給されるようになっている。
【0048】
そして、ピン挿通孔13に圧力エアが供給されると、この圧力をピン23における拡大頭部23bの端面(第1受圧面)24が受圧することで、ピン23を介してフローティングシート2をロータ軸3方向に移動させ、これにより、両シール面41、42を互いに当接させることができるようになっている。
【0049】
また、圧力調整器52でピン挿通孔13に供給されるエア圧力を調整することにより、両シール面41、42の面圧を調整することができるようになっている。
そして、ピン挿通孔13に供給されるエア圧力の調整は、運転状況に応じてその都度手動で行ってもよいが、固定軸2側流路に供給される内部流体圧力、又はロータ軸3の回転数に応じて制御するようにしておくことが望ましい。
即ち、フランジ部22と、ピン挿通孔13と、ピン23と、エアポンプ51と、圧力調整器52とで、第1流体圧付勢手段5が構成されている。
【0050】
次に本発明実施例1の作用・効果を説明する。
【0051】
この実施例1のロータリジョイントでは、上述のように、非回転軸2の流路である供給穴(非回転軸側流路)2aに供給される内部流体圧力とは別系統の圧力エアにより非回転軸2をロータ軸3方向に移動させて両シール面41、42を互いに密着させる方向に付勢する第1流体圧付勢手段5が備えられることにより、非回転軸2の流路にクーラント液が供給される前に、エアポンプ51から圧力エアを供給することで、非回転軸2を移動させて両シール面41、42を互いに密着させた状態にすることができるため、その後に非回転軸2の流路に供給されたクーラント液がシール部4から漏れ出すことを防止することができるようになる。
【0052】
なお、非回転軸2の流路である供給穴(非回転軸側流路)2aにクーラント液が供給されると同時にピン挿通孔13内にエア圧力を供給した場合でも、非回転軸2を移動させて両シールリング41、42のシール面が互いに密着するまでの時間を短縮することができるため、シール部4からクーラント液が漏れ出すことを抑制することができるようになる。
【0053】
なお、非回転軸2の流路である供給穴(非回転軸側流路)2aに供給される内部流体圧力が負圧の気体である場合でも、非回転軸2をロータ軸3方向に移動させて両シール面41、42を互いに密着させることができ、これにより、回転軸2側の流路を負圧にすることができるようになる。
【0054】
また、圧力調整器52で摺動支持孔11に供給されるエア圧力を調整することにより、運転状況に応じてシール面41、42間の面圧を調整することができるようになる。
【0055】
さらに、ピン挿通孔13に供給されるエア圧力を、非回転軸2側流路に供給される内部流体圧力、又はロータ軸3の回転数に応じて制御するように構成することにより、非回転軸2側流路に供給される内部流体圧力又はロータ軸3の回転数の変動に応じて両シール面41、42の面圧を自動調整することができるようになる。
【0056】
従って、漏電の虞がある電力を用いることなしに、シール部4のシール性が不完全な状態にある時でも、シール部4からの液漏れを抑制することができると共に、運転状況に応じて両シール面41、42の面圧調整が可能になるという効果が得られる。
【0057】
また、ピン23が挿入されたピン挿通孔13に非回転軸2側流路に供給される内部流体圧力とは別系統の圧力エアが供給され、該圧力エアをピン23における拡大頭部23bの端面24が受圧することによって非回転軸2をロータ軸3方向に移動させて両シール面41、42を互いに密着させるように構成されることにより、従来から備えられていたピン23を利用し、簡単な構造の追加のみで第1流体圧付勢手段を備えることができるようになるという効果が得られる。
【0058】
また、ロータ軸3が工作機械の回転軸に接続されることで、シール部4からの液漏れを抑制することができるため、重要部品である軸受けや主軸モータ等が被害を被ることを防止することができるようになる。
【0059】
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、この他の実施例については、前記実施例1と同様の構成部分の図示および説明は省略し、もしくは同一の符号を付してその説明を省略し、相違点についてのみ説明する。
【実施例2】
【0060】
この実施例2のロータリジョイントは、請求項2、4、5、8〜11に記載の発明に対応する。
この実施例2のロータリジョイントは、図4の断面図に示すように、非回転軸2には該非回転軸2をロータ軸3方向に移動させて両シール面41、42を互いに密着させる方向に付勢する圧縮コイルスプリング等(第1付勢手段)6が備えられている点が前記実施例1とは相違したものである。
即ち、この実施例2では、フランジ部22とケーシング1に形成された軸方向穴14との間に圧縮コイルスプリング等6が介装されている。
【0061】
従って、この実施例2では、上記実施例1と同様の効果が得られる他に、圧縮コイルスプリング等6による付勢力を補強し、面圧力を任意に調節することができるようになるという効果が得られる。
【実施例3】
【0062】
実施例3のロータリジョイントは、請求項3〜5、8〜11に記載の発明に対応する。
この実施例3のロータリジョイントは、図示を省略するが、非回転軸2をロータ軸3とは逆方向に移動させて両シール面41、42を引き離す方向に付勢する引きコイルスプリング等(第2付勢手段)が備えられている点が前記実施例1とは相違したものである。
従って、この実施例3においても、上記実施例1と同様の効果が得られる
【実施例4】
【0063】
この実施例4のロータリジョイントは、請求項6〜11に記載の発明に対応する。
この実施例4のロータリジョイントは、図5の断面図に示すように、フランジ部22とケーシング1との間に、非回転軸2をロータ軸3方向に移動させて両シール面41、42を互いに密着させる方向に付勢する圧縮コイルスプリング等(第1付勢手段)6が備えられている点は前記実施例2と同様であるが、非回転軸2側流路に供給される内部流体圧力とは別系統の流体圧力により非回転軸2を両シール面41、42の密着力を弱める方向に付勢する第2流体圧付勢手段7が備えられている点が、前記実施例1〜3とは相違したものである。
【0064】
即ち、第2流体圧付勢手段7は、ピン23が挿入されたピン挿通孔13に非回転軸2側流路に供給される内部流体圧力とは別系統の圧力エア(流体圧力)が供給され、該圧力エアをピン23における拡大頭部23bの面(第2受圧面)25で受圧することによって非回転軸を前記両シール面41、42の密着力を弱める方向に付勢するように構成されることにより、圧縮コイルスプリング等6による付勢力を弱め、面圧力を任意に調節することができ、これにより、シール面41、42の摩耗及び焼き付きを防止することができるようになるという効果が得られる。
また、従来から備えられていたピン23を利用することで、簡単な構造の追加のみで第2流体圧付勢手段7を備えることができるようになるという効果が得られる。
【0065】
以上、本発明の実施例を説明してきたが、本発明の具体的な構成はこの実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。
【0066】
例えば、実施例では、本発明を工作機械におけるクーラントを供給するロータリジョイント部分に適用する例を示したが、その他の全てのロータリジョイント部分に適用することができる。
【0067】
また、実施例では、流体圧付勢手段5、7をピン23における拡大頭部23bの第1受圧面又は第2受圧面に非回転軸2側流路に供給される内部流体圧力とは別系統の流体圧力を受圧させる構造としたが、その他の部分に受圧面を形成させてもよい。また、流体圧力としては、液圧であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】実施例1のロータリジョイントを示す図2のI−I線における断面図である。
【図2】図1のII−II線における断面図である。
【図3】図1の III−III 線における断面図である。
【図4】実施例2のロータリジョイントを示す断面図である。
【図5】実施例4のロータリジョイントを示す断面図である。
【符号の説明】
【0069】
1 ケーシング
11 摺動支持孔
12 Oリング
13 ピン挿通孔
14 軸方向穴
2 フローティングシート(固定軸)
2a 供給穴(固定軸側流路)
21 軸部
22 フランジ部
22a 雄ねじ孔
23 ピン
23a 係合溝
23b 拡大頭部
23c 雄ねじ部
24 第1受圧面
25 第2受圧面
3 主軸モータのロータ軸(回転軸)
3a 供給穴(回転軸側流路)
4 シール部
41 シール面
42 シール面
5 第1流体圧付勢手段
51 エアポンプ
52 圧力調整器(圧力調整手段)
6 圧縮コイルスプリング(第1バネ力付け税手段)
7 第2流体圧付勢手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸心にそれぞれ流路が備えられた非回転軸と回転軸との対向端面にはそれぞれシール面が備え付けられ、前記非回転軸は回転が阻止された状態、且つケーシングに形成された摺動支持孔に沿って移動自在に設けられていて前記非回転軸を回転軸方向に移動させて前記両シール面を互いに密着させることによりシール部が形成されるように構成されたロータリジョイントであって、
前記非回転軸側流路に供給される内部流体圧力とは別系統の流体圧力により前記非回転軸を回転軸方向に移動させて前記両シール面を互いに密着させる方向に付勢する第1流体圧付勢手段が備えられていることを特徴とするロータリジョイント。
【請求項2】
軸心にそれぞれ流路が備えられた非回転軸と回転軸との対向端面にはそれぞれシール面が備え付けられ、前記非回転軸は回転が阻止された状態、且つケーシングに形成された摺動支持孔に沿って移動自在に設けられていて前記非回転軸を回転軸方向に移動させて前記両シール面を互いに密着させることによりシール部が形成され、前記非回転軸には該非回転軸を回転軸方向に移動させて前記両シール面を互いに密着させる方向に付勢する第1付勢手段が備えられたロータリジョイントであって、
前記非回転軸側流路に供給される内部流体圧力とは別系統の流体圧力により前記非回転軸を回転軸方向に移動させて前記両シール面を互いに密着させる方向に付勢する第1流体圧付勢手段が備えられていることを特徴とするロータリジョイント。
【請求項3】
軸心にそれぞれ流路が備えられた非回転軸と回転軸との対向端面にはそれぞれシール面が形成され、前記非回転軸は回転が阻止された状態、且つケーシングに形成された摺動支持孔に沿って移動自在に設けられていて前記非回転軸を回転軸方向に移動させて前記両シール面を互いに密着させることによりシール部が形成され、前記非回転軸には該非回転軸を回転軸とは逆方向に移動させて前記両シール面を引き離す方向に付勢する第2付勢手段が備えられたロータリジョイントであって、
前記非回転軸側流路に供給される内部流体圧力とは別系統の流体圧力により前記非回転軸を回転軸方向に移動させて前記両シール面を互いに密着させる方向に付勢する第1流体圧付勢手段が備えられていることを特徴とするロータリジョイント。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のロータリジョイントにおいて、前記非回転軸は該非回転軸を軸方向に移動自在に支持するケーシングに対し非回転軸から突出形成されたピンが前記ケーシングに軸方向に形成されたピン挿通孔内に移動自在に挿入できる様に設けられており、
前記ピンには前記回転軸方向に推力を発生させる第1受圧面が形成され、
前記第1流体圧付勢手段は、前記ピンが挿入されたピン挿通孔に前記非回転軸側流路に供給される内部流体圧力とは別系統の流体圧力が供給され、該流体圧力を前記ピンの第1受圧面で受圧することによって前記非回転軸を回転軸方向に移動させて前記両シール面を互いに密着させるように構成されていることを特徴とするロータリジョイント。
【請求項5】
請求項4に記載のロータリジョイントにおいて、前記ピンが前記非回転軸に対し固定されることにより、非回転軸の回転を阻止する回り止めピンとしての役目をなすように構成されていることを特徴とするロータリジョイント。
【請求項6】
軸心にそれぞれ流路が備えられた非回転軸と回転軸との対向端面にはそれぞれシール面が備え付けられ、前記非回転軸は回転が阻止された状態、且つケーシングに形成された摺動支持孔に沿って移動自在に設けられていて前記非回転軸を回転軸方向に移動させて前記両シール面を互いに密着させることによりシール部が形成され、前記非回転軸には該非回転軸を回転軸方向に移動させて前記両シール面を互いに密着させる方向に付勢する第1付勢手段が備えられたロータリジョイントであって、
前記非回転軸側流路に供給される内部流体圧力とは別系統の流体圧力により前記非回転軸を前記両シール面の密着力を弱める方向に付勢する第2流体圧付勢手段が備えられていることを特徴とするロータリジョイント。
【請求項7】
請求項6に記載のロータリジョイントにおいて、前記非回転軸は該非回転軸を軸方向に移動自在に支持するケーシングに対し非回転軸から突出形成されたピンを前記ケーシングに軸方向に形成されたピン挿通孔内に移動自在に挿入できる様に設けられており、
前記ピンには前記回転軸方向とは逆方向に推力を発生させる第2受圧面が形成され、
前記第2流体圧付勢手段は、前記ピンが挿入されたピン挿通孔に前記非回転軸側流路に供給される内部流体圧力とは別系統の流体圧力が供給され、該流体圧力を前記ピンの第2受圧面で受圧することによって前記非回転軸を前記両シール面の密着力を弱める方向に付勢するように構成されていることを特徴とするロータリジョイント。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のロータリジョイントにおいて、前記非回転軸側流路に供給される内部流体圧力とは別系統の流体圧力は圧力調整手段により圧力調整可能に構成されていることを特徴とするロータリジョイント。
【請求項9】
請求項8に記載のロータリジョイントにおいて、前記圧力調整手段は、前記非回転固定軸側流路に供給される内部流体圧力に応じて流体圧力が制御されるように構成されていることを特徴とするロータリジョイント。
【請求項10】
請求項8に記載のロータリジョイントにおいて、前記圧力調整手段は、前記回転軸の回転数に応じて流体圧力が制御されるように構成されていることを特徴とするロータリジョイント。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載のロータリジョイントにおいて、前記回転軸が工作機械の回転軸に接続されていることを特徴とするロータリジョイント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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