説明

ロータリドレッサ

【課題】進み側フランクおよび追い側フランクの逃げ形状が異なるねじれ溝タップを能率的に製造できるようにして製造コストを低減する。
【解決手段】ロータリドレッサ50によってドレッシングされるねじ研削用砥石42は、仕上げ研削用の第1研削山32および第2研削山34がねじ山14のピッチPの2倍の間隔2Pだけ軸方向に離間して設けられているとともに、一方の第1研削山32は進み側フランク26のみを研削加工するように断面形状が定められている一方、他方の第2研削山34は追い側フランク28のみを研削加工するように断面形状が定められているため、ねじれ溝22のねじれよって両フランク26、28に対する研削加工のタイミングがずれ、カム形状44に倣ってねじ研削用砥石42を周期的に接近離間させるだけで、進み側フランク26および追い側フランク28に異なる逃げ形状の逃げが設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はねじれ溝タップに係り、特に、進み側フランクおよび追い側フランクの逃げ形状が異なるねじれ溝タップを能率的に製造する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
おねじを分断するねじれ溝に沿って切れ刃が設けられているねじれ溝タップにおいて、進み側フランクおよび追い側フランクの逃げ形状を異ならせたものが提案されている。特許文献1に記載のタップはその一例で、切れ刃のすくい角が正となる側のフランクには逃げ角が負となる二番取り(逃げ面加工)が施されており、タップ立ての際に安定したリード送りが行われるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公昭62−37615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このように進み側フランクと追い側フランクとで逃げ形状を異ならせる場合、従来は別々に研削加工を行っていたため、加工工数が増えて能率が悪く、製造コストが高くなるという問題があった。
【0005】
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、進み側フランクおよび追い側フランクの逃げ形状が異なるねじれ溝タップを能率的に製造できるようにして製造コストを低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために、本発明は、おねじを分断するねじれ溝に沿って切れ刃が設けられているねじれ溝タップを製造する際に、軸心まわりに回転駆動されつつタップ素材に対して前記おねじに沿って相対移動させられるとともに相対的に接近離間させられることにより、そのおねじのねじ山の進み側フランクおよび追い側フランクを研削加工する仕上げ研削用の一対の研削山が設けられているねじ研削用砥石に対し、その一対の研削山を同時にドレッシングするために外周研削部に一対のドレッサ溝が設けられているロータリドレッサであって、(a) 前記一対の研削山は、前記おねじのピッチPの2以上の整数倍だけ軸方向に離間して設けられているとともに、(b) その一対の研削山の一方の第1研削山の一対の側面のうち前記進み側フランクを研削する側の側面は、加工すべきめねじのフランク角と同じ角度で傾斜させられているが、反対側の側面は、前記追い側フランクと干渉しないようにそのフランク角より小さな角度で傾斜させられ、全体として断面が非対称の三角形状を成している一方、(c) 前記一対の研削山の他方の第2研削山の一対の側面のうち前記追い側フランクを研削する側の側面は、前記フランク角と同じ角度で傾斜させられているが、反対側の側面は、前記進み側フランクと干渉しないようにそのフランク角より小さな角度で傾斜させられ、全体として断面が非対称の三角形状を成しており、(d) 前記一対のドレッサ溝は、前記第1研削山および前記第2研削山の間隔と同じ間隔だけ離間して設けられているとともに、(e) その一対のドレッサ溝の断面形状は、それぞれ前記第1研削山、前記第2研削山の断面形状に対応して一対の内壁面の傾斜角度が異なる非対称の三角形状を成していることを特徴とする。
【0007】
なお、第1研削山および第2研削山は何れも一方の側面のみで研削加工を行うことから、その断面形状を適宜設定することが可能であるため、それ等の研削山の軸方向の離間寸法は、研削山そのものの中心間距離を意味するのではなく、研削山が挿入されるおねじのねじ溝の中心間距離を意味する。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、ねじ研削用砥石の仕上げ研削用の一対の研削山がおねじのピッチPの2以上の整数倍だけ軸方向に離間して設けられているとともに、一方の第1研削山は進み側フランクを研削するように一方の側面がめねじのフランク角と同じ角度で傾斜させられ、他方の第2研削山は追い側フランクを研削するように一方の側面がめねじのフランク角と同じ角度で傾斜させられている一方、各研削山の反対側の側面は何れもフランクと干渉しないように退避させられているため、一対の第1研削山および第2研削山により進み側フランクおよび追い側フランクが別々に研削加工されることになる。その場合に、第1研削山および第2研削山は2ピッチ以上離間しているとともに、それ等によって研削加工される進み側フランクおよび追い側フランクは、ねじれ溝によってタップ素材の軸心まわりにずれているため、両フランクに対する研削加工のタイミングがずれ、例えば所定のカム形状に倣ってねじ研削用砥石を周期的に接近離間させるだけで、進み側フランクおよび追い側フランクに異なる逃げ形状の逃げを形成することができる。
【0009】
このように、単一のねじ研削用砥石を用いて、1回の研削加工で、逃げ形状が異なる進み側フランクおよび追い側フランクを同時に研削することができるため、ねじれ溝タップを能率的に製造できるようになり、製造コストが低減されるとともに、熟練を要することなく容易に高い精度で所定の逃げ形状を形成することができる。
【0010】
また、第1研削山および第2研削山の一対の側面のうち研削加工に供される側の側面は、何れも加工すべきめねじのフランク角と同じ角度で傾斜させられているため、進み側フランクおよび追い側フランクの歯たけ方向の全域に亘って所定の逃げを設けることができる。
【0011】
本発明は、このようなねじ研削方法が可能なねじ研削用砥石をドレッシングするためのロータリドレッサに関するもので、実質的に上記の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】逃げ形状が異なるフランクが形成されたねじれ溝タップの一例を示す正面図である。
【図2】図1のねじれ溝タップのおねじ部のねじ山形状を説明する図で、ねじ山を有効径で切断して斜線を付したものであり、(a) はおねじ部の展開図、(b) は一つのねじ山を拡大して単独で示した図である。
【図3】図1のねじれ溝タップのねじ山を研削加工する際の加工方法を説明する図で、(a) はタップ素材の軸方法から見た正面図、(b) は平面図、(c) はねじ研削用砥石の外周部の形状を拡大して示した断面図である。
【図4】図3のねじ研削加工において、仕上げ研削用の一対の研削山による研削加工のタイミングがねじれ溝のねじれによってずれたり、それに伴って両フランクの逃げ形状が変化したりすることを説明する図で、(a) はタップ素材とねじ研削用砥石との接触状態を示す図で、(b) はおねじ部の展開図で、(c) はねじ研削用砥石を接近離間させるカム形状を示す図である。
【図5】図3に示すねじ研削用砥石をドレッシングするダイヤモンドロータリドレッサの一例を示す図で、(a) は一部を切り欠いた正面図、(b) は外周研削部の拡大断面図、(c) は仕上げ研削用の一対の研削山をドレッシングするドレッサ溝の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、2枚刃や3枚刃、4枚刃等のねじれ溝タップを製造する場合に好適に適用され、ねじれ溝のねじれ方向は右ねじれであっても左ねじれであっても良く、ねじれ角も適宜定められる。ねじれ角が小さいと、第1研削山および第2研削山による進み側フランクおよび追い側フランクに対する研削加工のタイミングのずれが小さくなるが、それ等の第1研削山および第2研削山の離間寸法を大きくすれば、研削加工のタイミングのずれが大きくなり、進み側フランクおよび追い側フランクの逃げ形状を異ならせることができる。第1研削山および第2研削山の離間寸法が、例えばおねじのピッチPの2倍だけ離間している場合は、ねじれ溝のねじれ角が15°以上であることが望ましい。
【0014】
一対の研削山は、おねじのピッチPの2以上の整数倍、例えば2P或いは3Pだけ軸方向に離間して設けられる。
【0015】
進み側フランクおよび追い側フランクの逃げ形状は、ねじ研削用砥石をタップ素材に対して周期的に接近離間させるカム形状等によって定められ、逃げ角が正の逃げ部や逃げ角が負の逃げ部、或いは逃げ角が0°のマージン部が設けられる。すくい角が正の側のフランクには、逃げ角が負の逃げ部や逃げ角が0°のマージン部を設けることが望ましく、それ等に続いて、反対側のフランクと共に逃げ角が正の逃げ部が設けられるようにすることが望ましい。
【0016】
第1研削山および第2研削山の一対の側面のうち研削加工に関与しない反対側の側面は、例えばめねじのフランク角よりも5°以上小さな角度であれば干渉が略防止され、めねじのフランク角が30°であれば25°以下の傾斜角度とすることが適当である。
【実施例】
【0017】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、右ねじ用の3枚刃のねじれ溝タップ10を示す図で、軸心と直角方向から見た正面図であり、ねじ立て盤などに把持されて回転駆動されるシャンク12と、加工すべきめねじのねじ溝に対応する形状のねじ山14を有するおねじが設けられたおねじ部16とを、同一の軸線上に一体に備えている。おねじ部16には、先端程小径となるテーパ形状の食付き部18と、径寸法が一定の完全山部20とが設けられているとともに、右まわりにねじれた3本のねじれ溝22が形成されている。上記ねじ山14は、このねじれ溝22によって複数に分断されており、その一端部、すなわち回転切削方向であってシャンク12側からみて右まわり方向の端部には、それぞれ切れ刃24が形成されている。ねじれ溝22のねじれ角は15°以上で、本実施例では20°程度である。
【0018】
図2の(a) は、おねじ部16の一部を展開するとともに、ねじ山14を有効径部分で切断して斜線を付した図で、(b) は、(a) においてねじれ溝22により分断された一つのねじ山14を拡大して示す図である。前記切れ刃24は、加工すべきめねじと同じリードLの右巻きのつる巻き線上に配列されており、図2の一点鎖線はリードLのつる巻き線と平行な直線で、ねじ山14の進み側フランク26および追い側フランク28に対応する線である。これ等の進み側フランク26および追い側フランク28にはそれぞれ逃げが設けられているが、進み側フランク26側の切れ刃24aは鋭角であることから、その切れ刃24a側の所定範囲に逃げ角が負の第1逃げ部(面取り)26aが設けられ、その第1逃げ部26aに続いてヒールに至るまで逃げ角が正の第2逃げ部26bが設けられている一方、追い側フランク28側の切れ刃24bは鈍角であるため、その切れ刃24bからヒールに至るまで逃げ角が正の逃げが設けられている。このようなねじ山14のフランク26、28の逃げは、本実施例では食付き部18および完全山部20を含むおねじ部16の全域に設けられているが、食付き部18だけなどおねじ部16の一部の逃げ形状を異ならせるだけでも良い。
【0019】
そして、このようなねじれ溝タップ10は、被加工物に予め設けられた下穴内に食付き部18側からねじ込まれることにより、その食付き部18に設けられた切れ刃24によって下穴の内周面にめねじを切削加工するとともに、切り屑はねじれ溝22内を通ってシャンク12側へ排出される。その場合に、右ねじ、右ねじれ溝の本実施例のねじれ溝タップ10においては、進み側フランク26側の切れ刃24aが鋭角で、追い側フランク28側の切れ刃24bが鈍角であることから、切削加工時に軸心方向の先端側へ向かう推力が発生するが、本実施例では進み側フランク28に逃げ角が負の第1逃げ部26aが設けられているため、先端方向へ向かう推力で切れ刃24aが切り込み過ぎることが防止される。これにより、ねじれ溝22に起因するリード送りのずれが抑制され、正規のリードでねじれ溝タップ10が螺進させられるようになって、めねじを高い精度で切削加工できる。
【0020】
一方、このように逃げ形状が異なる進み側フランク26および追い側フランク28は、図3に示すように、前記3本のねじれ溝22が設けられたタップ素材30を用意することにより、仕上げ研削用の第1研削山32および第2研削山34が軸方向に離間して設けられたねじ研削用砥石42を用いて、前記おねじ部16のねじ山14を研削加工する際に、同時に形成することができる。すなわち、ねじ研削用砥石42の軸心Sがタップ素材30の軸心Oに対して、ねじ山14のリード角と同じ傾斜角度θだけ傾斜する姿勢で配置するとともに、ねじ研削用砥石42を軸心Sまわりに回転駆動しつつ、タップ素材30のねじ山14に沿って相対移動するように、例えばタップ素材30を軸心Oまわりに回転させつつ軸心O方向へ移動させる際に、進み側フランク26および追い側フランク28の逃げ形状に合わせて、例えば図4の(c) に示すカム形状44を有するカムを用いてねじ研削用砥石42をタップ素材30に対して相対的に接近離間させれば、逃げ形状が異なる進み側フランク26および追い側フランク28を研削加工できる。図3の(a) はタップ素材30の軸方法から見た正面図で、(b) は軸心OおよびSの関係を示す平面図、(c) はねじ研削用砥石42の外周研削面の凹凸形状を示す拡大断面図である。
【0021】
上記ねじ研削用砥石42の第1研削山32および第2研削山34は、前記おねじのねじ山14のピッチP(=リードL)の2倍だけ軸方向に離間して設けられており、図4の(a) に示すように、その内側に位置する側面32a、34aにより軸方向に隣接する一対のねじ山14の外側に位置する進み側フランク26、追い側フランク28をそれぞれ研削加工するようになっている。ねじ研削用砥石42には、図3の(c) に示すように上記仕上げ研削用の第1研削山32および第2研削山34の他に、粗研削用の複数の研削山として第3研削山36、第4研削山38、第5研削山40が設けられている。これ等の研削山36〜40は、研削山32、34と同じくピッチPの2倍2Pの間隔で設けられているが、何れも両側面の傾斜角度が加工すべきめねじのフランク角と同じ角度αの対称形状を成しているとともに、高さ寸法が第5研削山40へ向かうに従って低くされており、その第5研削山40側からタップ素材30に切り込んでそれぞれ両フランク26、28を研削加工することにより、対称的な三角形状のねじ山14を形成し、引き続いて仕上げ研削用の第1研削山32および第2研削山34によって両フランク26、28に仕上げ研削が行われる。
【0022】
上記第1研削山32は、前記追い側フランク28と干渉することなく進み側フランク26のみを研削加工するように、一対の側面32a、32bのうち進み側フランク26を研削する内側の側面32aは、加工すべきめねじのフランク角と同じ角度αで傾斜させられているが、反対の外側の側面32bは、追い側フランク28と干渉しないようにフランク角よりも5°程度小さい傾斜角度βで傾斜させられており、全体として断面が非対称の三角形状を成している。また、第2研削山34は、進み側フランク26と干渉することなく追い側フランク28のみを研削加工するように、一対の側面34a、34bのうち追い側フランク28を研削する内側の側面34aは上記角度αで傾斜させられているが、反対の外側の側面34bは角度βで傾斜させられており、全体として断面が非対称の三角形状を成している。本実施例では、めねじのフランク角すなわち上記角度αは30°で、角度βは約25°である。
【0023】
そして、図4の(b) に示す展開図から明らかなように、軸方向に連続するねじ山14はねじれ溝22のねじれに沿って軸心Oまわりに傾斜しているため、軸方向に2Pだけ離間している第1研削山32および第2研削山34による研削加工のタイミングがずれ、第1研削山32による進み側フランク26の研削加工はカム形状44の領域K1で行われ、第2研削山34による追い側フランク28の研削加工は領域K2で行われる。すなわち、第1研削山32による進み側フランク26の研削加工は、第2研削山34による追い側フランク28の研削加工に先行して開始されるのであり、領域K2よりも前のab間ではねじ研削用砥石42がタップ素材30から離間させられることにより、進み側フランク26に逃げ角が負の前記第1逃げ部26aが設けられる。また、b点からは、ねじ研削用砥石42がタップ素材30に対して接近させられるようになり、bd間において進み側フランク26に逃げ角が正の第2逃げ部26bが設けられると同時に、ce間で追い側フランク28に逃げ角が正の逃げが設けられる。図4の(b) の各部のフランクのうち、一点鎖線は研削山32、34による仕上げ研削が行われる前、すなわち前記第3研削山36による研削加工の形状で、点線は今回仕上げ研削が行われる部分で、実線は既に仕上げ研削が行われた部分である。
【0024】
図5は、上記ねじ研削用砥石42をドレッシングする際に好適に用いられるダイヤモンドロータリドレッサ50を示す図で、外周研削部52には、それぞれ前記第1研削山32〜第5研削山40に対応する断面形状のドレッサ溝54〜62が、それ等の研削山32〜40と同じ間隔、すなわちおねじ部16のねじ山14のピッチPの2倍の間隔2Pで設けられている。ドレッサ溝54、56は、それぞれ第1研削山32、第2研削山34に対応して一対の内壁面の傾斜角度が異なる非対称の三角形状を成している。図5の(a) はダイヤモンドロータリドレッサ50の一部を切り欠いた正面図、(b) は外周研削部の拡大断面図、(c) はドレッサ溝54、56の拡大断面図である。
【0025】
このように、本実施例のねじ研削用砥石42は、仕上げ研削用の第1研削山32および第2研削山34がおねじ部16のねじ山14のピッチPの2倍の間隔2Pだけ軸方向に離間して設けられているとともに、一方の第1研削山32は進み側フランク26のみを研削加工するように断面形状が定められている一方、他方の第2研削山34は追い側フランク28のみを研削加工するように断面形状が定められているため、それ等の一対の第1研削山32および第2研削山34により進み側フランク26および追い側フランク28が別々に研削加工されることになる。その場合に、第1研削山32および第2研削山34は2Pだけ離間しているとともに、それ等によって研削加工される進み側フランク26および追い側フランク28は、ねじれ溝22によってタップ素材30の軸心まわりにずれているため、両フランク26、28に対する研削加工のタイミングがずれ、カム形状44に倣ってねじ研削用砥石42を周期的に接近離間させるだけで、進み側フランク26および追い側フランク28に異なる逃げ形状の逃げを形成することができる。本実施例では、進み側フランク26には逃げ角が負の第1逃げ部26aに続いて逃げ角が正の第2逃げ部26bが設けられる一方、追い側フランク28には切れ刃24bからヒールに至るまで逃げ角が正の逃げが設けられる。
【0026】
そして、単一のねじ研削用砥石42を用いて、1回の研削加工で、逃げ形状が異なる進み側フランク26および追い側フランク28を同時に研削することができるため、ねじれ溝タップ10を能率的に製造できるようになり、製造コストが低減される。また、カム機構を用いて前記カム形状44に倣ってねじ研削用砥石42を接近離間させるだけで、熟練を要することなく容易に高い精度で所定の逃げ形状を形成することができる。
【0027】
また、第1研削山32および第2研削山34の一対の側面32a、32b、34a、34bのうち研削加工に供される側の側面32a、34aは、何れも加工すべきめねじのフランク角と同じ角度αで傾斜させられているため、進み側フランク26および追い側フランク28の歯たけ方向の全域に亘って所定の逃げを設けることができる。
【0028】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更,改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0029】
10:ねじれ溝タップ 14:ねじ山 16:おねじ部 22:ねじれ溝 24:切れ刃 26:進み側フランク 28:追い側フランク 30:タップ素材 32:第1研削山 34:第2研削山 42:ねじ研削用砥石 50:ダイヤモンドロータリドレッサ 52:外周研削部 54、56:ドレッサ溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
おねじを分断するねじれ溝に沿って切れ刃が設けられているねじれ溝タップを製造する際に、軸心まわりに回転駆動されつつタップ素材に対して前記おねじに沿って相対移動させられるとともに相対的に接近離間させられることにより、該おねじのねじ山の進み側フランクおよび追い側フランクを研削加工する仕上げ研削用の一対の研削山が設けられているねじ研削用砥石に対し、該一対の研削山を同時にドレッシングするために外周研削部に一対のドレッサ溝が設けられているロータリドレッサであって、
前記一対の研削山は、前記おねじのピッチPの2以上の整数倍だけ軸方向に離間して設けられているとともに、
該一対の研削山の一方の第1研削山の一対の側面のうち前記進み側フランクを研削する側の側面は、加工すべきめねじのフランク角と同じ角度で傾斜させられているが、反対側の側面は、前記追い側フランクと干渉しないように該フランク角より小さな角度で傾斜させられ、全体として断面が非対称の三角形状を成している一方、
前記一対の研削山の他方の第2研削山の一対の側面のうち前記追い側フランクを研削する側の側面は、前記フランク角と同じ角度で傾斜させられているが、反対側の側面は、前記進み側フランクと干渉しないように該フランク角より小さな角度で傾斜させられ、全体として断面が非対称の三角形状を成しており、
前記一対のドレッサ溝は、前記第1研削山および前記第2研削山の間隔と同じ間隔だけ離間して設けられているとともに、
該一対のドレッサ溝の断面形状は、それぞれ前記第1研削山、前記第2研削山の断面形状に対応して一対の内壁面の傾斜角度が異なる非対称の三角形状を成している
ことを特徴とするロータリドレッサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−284796(P2010−284796A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−187647(P2010−187647)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【分割の表示】特願2005−145445(P2005−145445)の分割
【原出願日】平成17年5月18日(2005.5.18)
【出願人】(000103367)オーエスジー株式会社 (180)
【Fターム(参考)】