説明

ロータリバルブ

【課題】異音の発生を抑制可能なロータリバルブを提供することである。
【解決手段】上記した目的を解決するために、本発明における課題解決手段は、筒状であって側部に内外を連通するとともに一対のポート2g,2hを有するハウジング2と、ハウジング2内に周方向に回動可能に収納される弁体8とを備え、弁体8が筒状であって側部に内外を連通するとともに各々対応するハウジング2のポート2g,2hに対向可能な一対のオリフィス孔21,22を有し、弁体8を回動させて各ポート2g,2hに対応するオリフィス孔21,22を連通して流路面積を変化させるロータリバルブにおいて、各ポート2g,2hは、ハウジング2の軸方向に対して傾斜して設けられることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ロータリバルブの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のロータリバルブにおいては、緩衝器のピストンロッドに中空孔を設けてハウジングとし、このハウジング内に回動可能に筒状の弁体を挿入して構成され、ハウジングの側部にはハウジング内外を連通するとともに互いに対面するよう向き合う一対のポートが形成され、また、弁体の側部にその内外を連通し且つ互いに対面するよう向き合ってハウジングのポートに対向可能な一対のオリフィス孔を設けたものが知られている。
【0003】
この従来のロータリバルブにあっては、弁体をハウジングに対し回動させることにより上記ポートとオリフィス孔との重なり(ラップ)の度合いを変化させて流路面積を変化させ、作動油がロータリバルブを通過するときの圧力損失を変化させることができ、これによって緩衝器の発生する減衰力を調整することが可能である。
【特許文献1】特開2008−39065号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
詳しくは、上記したロータリバルブは、緩衝器のピストンに設けられてリーフバルブによって開閉される主減衰通路を迂回して上方室と下方室を連通するバイパス路の途中に設けられており、当該緩衝器の減衰特性(ピストン速度に対する発生減衰力の特性)をソフトからハードまで広範に渡って調整させるべく、一対のオリフィス孔のほかに二対の第二オリフィス孔をバイパス路中に並列させている。
【0005】
このバイパス路は、下方室から途中に設けたオリフィス孔と第二オリフィス孔で分岐されて上方室へ通じており、第二オリフィス孔で分岐したバイパス路は、ピストンロッドの外周に設けられた仕切部材によって形成される部屋と、仕切部材に設けられた通路とで形成されて上方室に連通され、当該通路はリーフバルブによって開閉されるようになっている。また、オリフィス孔で分岐したバイパス路は、ピストンに設けられて主減衰通路を迂回する副通路によって形成されて上方室に連通している。
【0006】
そして、減衰力をソフトにする場合にはオリフィス孔をポートに対面させて流路面積を大きくするようにするが、オリフィス孔に通じるバイパス路は、リーフバルブで制限される第二オリフィス孔に通じるバイパス路に対して何ら抵抗要素を備えていないため、減衰力をソフトにする場合、オリフィス孔を通過する作動油の流量が非常に多くなる。
【0007】
ここで、ロータリバルブの弁体は、上述のように筒状であって、大流量の通過を許容するために、オリフィス孔が二つ設けられており、このオリフィス孔が互いに対面して向き合っているため、作動油の流れが弁体内で真正面から衝突し、特に、当該オリフィス孔を通過する流量が多くなると、弁体内で渦が発生したりエアレーションが生じたりして異音が発生するという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、上記した不具合を改善するために創案されたものであって、その目的とするところは、異音の発生を抑制可能なロータリバルブを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を解決するために、本発明における課題解決手段は、筒状であって側部に内外を連通するとともに一対のポートを有するハウジングと、ハウジング内に周方向に回動可能に収納される弁体とを備え、弁体が筒状であって側部に内外を連通するとともに各々対応するハウジングのポートに対向可能な一対のオリフィス孔を有し、弁体を回動させて各ポートに対応するオリフィス孔を連通して流路面積を変化させるロータリバルブにおいて、各ポートは、ハウジングの軸方向に対して傾斜して設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のロータリバルブによれば、各ポートがハウジングの軸方向に対して傾斜して設置されているので、作動流体の流れが弁体内で真正面から衝突することが回避されるから、各オリフィス孔を通過する作動流体の流量が多くなっても、弁体内で渦が発生したりエアレーションが生じたりすることがなく、異音発生を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図に基づいて本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の一実施の形態におけるロータリバルブが適用された緩衝器の一部拡大縦断面図である。図2は、本発明の一実施の形態におけるロータリバルブの弁体の側面図である。
【0012】
さて、本発明のロータリバルブ5は、図1に示すように、緩衝器Dに適用されて減衰力調整用に使用され、この場合、詳しくはハウジングをピストンロッド2として、当該ピストンロッド2内に周方向に筒状の弁体8を回動可能に収納して構成されている。
【0013】
他方、本発明のロータリバルブが適用されている緩衝器Dは、シリンダ1と、シリンダ1内に移動自在に挿入されるピストンロッド2と、シリンダ1内に摺動自在に挿入されてピストンロッド2の外周に装着されシリンダ1内を上方室R1と下方室R2とに区画するとともに上方室R1と下方室R2とを連通する主減衰通路3a,3bを備えたピストン3と、主減衰通路3a,3bを迂回して上方室R1と下方室R2とを連通するバイパス路4と、バイパス路4の途中に設けられてバイパス路4の流路面積を変更するロータリバルブ5とを備えて構成され、シリンダ1内には作動油等の作動流体が封入されている。そして、この緩衝器Dにあっては、上記したロータリバルブ5によってバイパス路4における流路面積を変更することで減衰力調整を行うようになっている。
【0014】
なお、図示はしないが、シリンダ1の図1中上下端は封止部材(図示せず)で封止されており、シリンダ1は密閉状態下に保持されている。また、作動流体が液体である場合、緩衝器Dが伸縮する際に、ピストンロッド2がシリンダ1内に進入あるいはシリンダ1から退出することによって、シリンダ1内で過不足となる液体量を補償するため、図示はしないが、シリンダ1内の下方に挿入されるフリーピストンで区画される気体室あるいはシリンダ1内に連通されるリザーバが設けられることは当然である。
【0015】
以下、各部材について詳細に説明すると、シリンダ1は筒状に形成されており、図1中上端にはピストンロッド2を摺動自在に軸支するロッドガイド(図示せず)が設けられている。
【0016】
ピストンロッド2は、図1中下端から開口して下方室R2に臨む中空孔2aと、中空孔2aに連なって図示しない上端に通じるコントロールロッド挿通孔2bを備え、その先端となる図1中下端の外周には、ピストン3と、ピストン3より図1中上方となる上方室R1側にスペーサ6、仕切部材7が装着されている。
【0017】
そして、ピストンロッド2の中空孔2a内には、ロータリバルブ5における筒状の弁体8が回転可能に収容されている。
【0018】
また、ピストンロッド2の下方側は、小径に設定されて小径部2cと段部2dが形成されるとともに、小径部2cには、中空孔2aをピストンロッド外へ連通する一対のポート2g,2hと、当該ポート2g,2hとは別に中空孔2aをピストンロッド外へ連通するとともに円周方向に180度の間隔を持って配置されて互いに対面して向き合う上下二対の第二ポート2e,2fとが開穿されている。
【0019】
各ポート2g,2hは、ハウジングとして機能するピストンロッド2の軸方向に対して傾斜して設けられており、これら各ポート2g,2hにあっては、小径部2cの外周に現れる開口より、小径部2cの内周となる中空部2a側に現れる開口が図1中下方に配置されるように傾斜されており、ピストンロッド2の外周から各ポート2g,2hを介して中空孔2a内に流れ込む作動流体の流れを、下方室R2側へ向くように誘導してスムーズに下方室R2へ流入させることができるようになっている。さらに、各ポート2g,2hは、ピストンロッド2の円周方向に180度の間隔を持って配置されており、中空部2a側に現れる開口が同一周上でかつ対面するように配置されているが、同一周上に配置されなくともよいし、対面しなくともよい。
【0020】
なお、この実施の形態の場合、上記した第二ポート2e,2fは円形とされ、ポート2g,2hも軸線に対して垂直となる方向の断面は円形孔とされているが、形状はこれに限定されない。
【0021】
ピストン3は、環状に形成され、上方室R1と下方室R2とを連通し緩衝器Dが伸長するときに作動流体が通過するとともに伸側の主減衰通路3aと、上方室R1と下方室R2とを連通し緩衝器Dが圧縮するときに作動流体が通過する圧側の主減衰通路3bとを備えている。そして、このピストン3の上下にはリーフバルブV1,V2がそれぞれ積層されており、主減衰通路3aの出口端となる下端をリーフバルブV1で開閉し、反対に主減衰通路3bの出口端となる上端をリーフバルブV2で開閉するようになっている。
【0022】
したがって、緩衝器Dが伸長作動する際に、上記リーフバルブV1は、伸側の主減衰通路3aを通過して上方室R1から下方室R2へ移動する作動流体の流れに抵抗を与えて緩衝器Dに伸側の減衰力を発生させ、他方のリーフバルブV2は、緩衝器Dが圧縮作動する際に、圧側の主減衰通路3bを通過して下方室R2から上方室R1へ移動する作動流体の流れに抵抗を与えて緩衝器Dに圧側の減衰力を発生させるようになっている。
【0023】
スペーサ6は、有底筒状に形成されて、底部にピストンロッド2の小径部2cの挿通を許容する孔6aが設けられるとともに、筒部6bには内外を連通する切欠6cが設けられ、ピストンロッド2の小径部2cの外周に組みつけられている。なお、切欠6cは、筒部6bの端部に設けてもよく、筒部6bの中間に孔状に設けてもよい。この実施の形態の場合、スペーサ6は、ピストン3の上方に積層されるリーフバルブV2に直接積層されるようになっており、リーフバルブV2の撓み量を規制するバルブストッパとして機能させるようにしてもよい。
【0024】
仕切部材7は、ピストンロッド2の小径部2cの外周に組みつけられる環状のバルブディスク9と、バルブディスク9とピストンロッド3の外周に組み付けられる有底筒状のキャップ10とを備えており、バルブディスク9とキャップ10とで上方室R1内に部屋11を仕切っている。
【0025】
詳しくは、バルブディスク9は、その上下を貫通する伸側通路9aと、圧側通路9bとを備えている。
【0026】
そして、伸側通路9aの出口端はバルブディスク9の図1中下方に積層したリーフバルブV3によって開閉され、伸側通路9aは緩衝器Dが伸長行程時のみに開放される一方通行の通路に設定され、通過する作動流体にリーフバルブV3で抵抗を与えるようになっている。反対に、圧側通路9bの出口端はバルブディスク9の図1中上方に積層したリーフバルブV4によって開閉され、圧側通路9bは緩衝器Dが圧縮行程時のみに開放される一方通行の通路に設定され、通過する作動流体にリーフバルブV4で抵抗を与えるようになっている。なお、予め、リーフバルブV3,V4における撓み剛性は、ピストン3に積層されているリーフバルブV1,V2における撓み剛性より小さく設定しているので、リーフバルブV1,V2における開弁圧より低い開弁圧によって伸側通路9aおよび圧側通路9bが開放されるようになっている。
【0027】
また、キャップ10は、有底筒状に形成されており、底部にピストンロッド2の小径部2cの挿通を許容する孔10aが設けられるとともに、筒部の開口部がバルブディスク9の外周に嵌合されている。そして、このキャップ10の底部とバルブディスク9との間には、有底筒状であってキャップ10より小径に設定されるバルブ抑え12が介装されており、当該バルブ抑え12は、底部でリーフバルブV3の内周のバルブディスク9からの浮き上がりを阻止してリーフバルブV3を外開きに設定している。また、バルブ抑え12は、筒部12aに切欠12bを備えており、当該切欠12bによって内外を連通するようになっている。なお、切欠12bは、筒部12aの端部に設けてもよく、筒部12aの中間に孔状に設けてもよい。
【0028】
そして、ピストンロッド2の小径部2cには、図1中上から順に、ピストンロッド2の段部2dによってピストンロッド2に対して上方への移動が規制されたバルブストッパ13、リーフバルブV4、バルブディスク9、リーフバルブV3、バルブ抑え12、キャップ10、スペーサ6、リーフバルブV2、ピストン3、リーフバルブV1およびリーフバルブV1の撓み量を規制する環状のバルブストッパ14が組みつけられ、ピストンロッド2の最下端に螺子締結されるピストンナット15によって上記した各部材がピストンロッド2に固定される。
【0029】
このように、各部材がピストンロッド2に組みつけられ固定された状態において、スペーサ6の筒部6bにピストンロッド2に設けたポート2g,2hが対向し、さらに、バルブ抑え12の筒部12aにピストンロッド2に設けた第二ポート2e,2fが対向するようになっており、下方室R2に臨む中空孔2aは、ポート2g,2hおよびスペーサ6に設けた切欠6cを介して上方室R1へ連通されるとともに、第二ポート2e,2f、バルブ抑え12に設けた切欠12b、バルブディスク9とキャップ10によって仕切られた部屋11およびバルブディスク9に設けた伸側通路9aと圧側通路9bを介して上方室R1へ連通されている。
【0030】
したがって、この実施の形態では、バイパス路4は、ピストンロッド2の先端から開口して下方室R2に通じる中空孔2aと、ポート2g,2h、スペーサ6に設けた切欠6c、第二ポート2e,2f、バルブ抑え12に設けた切欠12b、部屋11、伸側通路9aと圧側通路9bとで構成されており、この場合、当該仕切部材7に形成される通路はバルブディスク9に設けた伸側通路9aおよび圧側通路9bによって形成され、副通路はスペーサ6に設けた切欠6cによって形成されている。
【0031】
なお、仕切部材7に設ける通路として機能する伸側通路9aと圧側通路9bは一方通行に設定されて、リーフバルブV3,V4で開閉するようになっているため、リーフバルブV3,V4の開弁圧に達するまでは対応する伸側通路9aおよび圧側通路9bは閉じられて、バイパス路4は中空孔2a、ポート2g,2h、およびスペーサ6に設けた切欠6cを介して上方室R1と下方室R2を連通するようになっている。
【0032】
つづいて、ピストンロッド2の中空孔2a内に収容されるロータリバルブ5における筒状の弁体8は、その外周面を中空孔2a内周面に摺接させており、周方向へ回転可能とされ、その上端は、ピストンロッド2のコントロールロッド挿通孔2b内に挿入されたコントロールロッド16に連結されている。
【0033】
このコントロールロッド16は、ピストンロッド2の上端に固定される図外のステッピングモータの出力軸に連結されており、ステッピングモータを駆動することによって、弁体8をピストンロッド2に対して周方向に所定の回転角度毎にステップ回転させることができるようになっている。
【0034】
また、ピストンロッド2の中空孔2a内であって弁体8より図1中下方には筒状のストッパ18が圧入されており、このストッパ18により弁体8のピストンロッド2からの脱落を阻止している。さらに、ストッパ18と弁体8との間には筒状であって樹脂製のベアリング17が介装されており、弁体8の滑らかな回転を保証している。
【0035】
そして、弁体8は、側部に内外を連通しピストンロッド2の小径部2cに形成した第二ポート2e,2fに対向可能な上下二対の第二オリフィス孔19,20と、ポート2g,2hに各々対向可能な一対のオリフィス孔21,22とを備えている。
【0036】
そして、各第二オリフィス孔19,20は、図1および図2に示すように、ともに、円形孔19a,20aと、周方向に沿いそれぞれ円形孔19a,20aに連通されるスリット19b,20bと備え、スリット19b,20b自体も弁体8の肉厚を貫通して弁体8の内外を連通するようになっており、また、対となる円形孔19a,20a同士が円周方向に180度の間隔を持って配置されて互いに対面して向き合うように配置されている。
【0037】
また、オリフィス孔21,22は、図1および図2に示すように、ともに、円形孔とされ、弁体8の同一周上に配置され、その中心同士が弁体8の円周方向に対して180度の間隔を持って配置されて、一方のオリフィス孔21が対応する一方のポート2gに正対して完全に対面した際に、他方のオリフィス孔22が対応する他方のポート2hに正対するようになっており、それぞれが同時に連通状態に維持されるようになっている。
【0038】
なお、各ポート2g,2hが円周方向に180度以外の間隔で配置するようにしたり、ピストンロッド2の軸方向に偏心するように配置される場合、一方のポート2gの中空孔2a側の開口位置に符合するように一方のオリフィス孔21を弁体8に配置し、他方のポート2hの中空孔2a側の開口位置に符合するように他方のオリフィス孔22を弁体8に配置するようにすればよい。
【0039】
このように構成された弁体8にあっては、上記オリフィス孔21,22をそれぞれ対応するポート2g,2hに対向させると、副通路である切欠6cを中空孔2a内へ連通せしめることができ、これによって、上方室R1と下方室R2とを連通状態とすることができる。また、オリフィス孔21,22をポート2g,2hに対向させずに弁体8の側面をポート2g,2hに対向させてポート2g,2hを閉塞すると、上方室R1と下方室R2との連通が遮断されるようになっており、さらに、ポート2g,2hとオリフィス孔21,22の重なり度合いを変化させることでポート2g,2hとオリフィス孔21,22とで作られる流路における流路面積を変化させることができるようになっている。
【0040】
同様に、上記第二オリフィス孔19,20をそれぞれ対応する第二ポート2e,2fに対向させることで、部屋11と弁体8内とが連通され、バルブディスク9に積層されるリーフバルブV3,V4の一方が開けば上方室R1と下方室R2とが連通状態とされ、第二オリフィス孔19,20を第二ポート2e,2fに対向させずに弁体8の側面を第二ポート2e,2fに対向させて第二ポート2e,2fを閉塞すると、空間11を介しての上方室R1と下方室R2との連通が遮断されるようになっており、また、第二ポート2e,2fと第二オリフィス孔19,20の重なり(ラップ)度合いを変化させることによって、第二ポート2e,2fと第二オリフィス孔19,20とで作られる流路における流路面積を変化させることができるようになっている。
【0041】
また、第二オリフィス孔19,20は、オリフィス孔21,22より周方向に幅が長い円形孔19a,20aのみならず、長いスリット19b,20bを備えているため、オリフィス孔21,22をそれぞれポート2g,2hに正対させた状態から弁体8を第二オリフィス孔19,20のスリット19b,20bを第二ポート2e,2fへ対向させるように周方向に回転させていくと、第二オリフィス孔19,20が第二ポート2e,2fに対向し得なくなる以前にオリフィス孔21,22がポート2g,2hに対向できずにポート2g,2hが閉塞されるようになっている。そして、オリフィス孔21,22をポート2g,2hに正対させた状態では、つまり、オリフィス孔21,22をポート2g,2hに完全に対面させた状態では、第二オリフィス孔19,20の円形孔19a,20aも第二ポート2e,2fに正対して、バイパス路4の流路面積は最大となり、弁体8を第二オリフィス孔19,20のスリット19b,20bを第二ポート2e,2fへ対向させるように周方向に回転させていくと、徐々にバイパス路4における流路面積が減じられて、最終的には、ポート2g,2hのみならず第二ポート2e,2fも弁体8の側面で閉塞されて流路面積が0の状態となってバイパス路4が閉じられることになる。
【0042】
このように、ロータリバルブ5は、上記した弁体8と弁体8を収容する中空孔2aを備えてハウジングとして機能するピストンロッド2とで構成されており、上述のようにピストンロッド2に対して弁体8を回転させることで、バイパス路4における流路面積を変化させることができるようになっている。
【0043】
そして、緩衝器Dが伸縮する際に、オリフィス孔21,22とポート2g,2hとが、特に正対して、連通状態である場合には、作動流体は、各リーフバルブV1,V2で開閉する主減衰通路3a,3bに優先して、このオリフィス孔21,22とポート2g,2hを通過して上方室R1と下方室R2とを行き来する。このとき、第二オリフィス孔19,20は第二ポート2e,2fに対向しているが、緩衝器Dの伸縮速度が低速域にあると上方室R1あるいは下方室R2内の圧力がリーフバルブV3,V4の開弁圧に達せずに伸側通路9aおよび圧側通路9bが閉塞されたままとなり、緩衝器Dの伸縮速度が中高速域にあって上方室R1あるいは下方室R2内の圧力がリーフバルブV3,V4の開弁圧に達して伸側通路9aあるいは圧側通路9bが開放されても、リーフバルブV3,V4における抵抗が大きいため、作動流体は、優先的にオリフィス孔21,22とポート2g,2hを通過して上方室R1と下方室R2とを行き来する。
【0044】
そして、オリフィス孔21,22とポート2g,2hとが連通状態であるときに、バイパス路4の流路面積が大きく流路抵抗が小さくなるので、緩衝器Dにおける減衰係数(伸縮速度に対する減衰力の傾き)が最小となって、緩衝器Dはソフトな減衰力を発生することになる。
【0045】
このように、オリフィス孔21,22とポート2g,2hとが連通状態であるときに、オリフィス孔21,22とポート2g,2hとで形成される流路の面積が大きく、通過作動流体量が多くなる。そして、緩衝器Dが伸長作動して、上方室R1から下方室R2へ作動流体が移動する場合、ポート2g,2h側からオリフィス孔21,22、弁体8内へ向けて大流量の作動流体が流れるが、各オリフィス孔21,22を抜けて弁体8内へ侵入した作動流体の流れは、各ポート2g,2hがハウジングとして機能するピストンロッド2の軸方向に対して傾斜して設置されているので、弁体8内で真正面から衝突することがなく、各オリフィス孔21,22から弁体8内に導入される作動流体の流れは、下方室R2側へ向くように誘導されてスムーズに下方室R2へ導かれることになる。
【0046】
したがって、このロータリバルブ5にあっては、各ポート2g,2hがハウジングとして機能するピストンロッド2の軸方向に対して傾斜して設置されているので、作動流体の流れが弁体8内で真正面から衝突することが回避されるから、各オリフィス孔21,22を通過する作動流体の流量が多くなっても、弁体8内で渦が発生したりエアレーションが生じたりすることがなく、異音発生を抑制することができる。
【0047】
つづいて、弁体8を上記した状態から回転させて、オリフィス孔21,22とポート2g,2hとのラップ面積を小さくしていくと、作動流体がオリフィス孔21,22とポート2g,2hとを通過する際の抵抗が大きくなり、これを通過しづらくなり、リーフバルブV3,V4における撓み剛性がリーフバルブV1,V2における撓み剛性より小さく設定されているので、作動流体はリーフバルブV3,V4を押し開いて、第二オリフィス孔19,20を介して上方室R1と下方室R2を行き来するようになる。第二オリフィス孔19,20と第二ポート2e,2fのラップ面積を変化させることによって減衰力調節することができ、さらに、緩衝器の伸縮速度が速くなると、最終的には、ピストン2に積層されたリーフバルブV1,V2が開くようになる。この場合にも、第二オリフィス孔19,20を介しても上方室R1と下方室R2の作動流体が交流することから、第二オリフィス孔19,20と第二ポート2e,2fのラップ面積を変化させることによって減衰力調節することができることになり、第二オリフィス孔19,20と第二ポート2e,2fのラップ面積が小さくなればなるほど、流路面積が小さくなって、主減衰通路3a,3bを迂回するバイパス路4における流路抵抗が大きくなり、緩衝器Dにおける減衰係数が大きくなって、緩衝器Dはハードな減衰力を発生することになる。
【0048】
なお、上述のように緩衝器Dのバイパス路4における副通路を、仕切部材7とピストン3との間に介装されるスペーサ6に形成しているので、ロータリバルブ5における弁体8を従来のロータリバルブに比較して少なくともリーフバルブV2とバルブストッパの厚み分は軸方向に短縮することができ、製造コストが低減され経済的に有利となる。
【0049】
なお、第二オリフィス孔19,20、第二ポート2e,2fの有無および形状は任意であり、また、オリフィス孔21,22およびポート2g,2hの形状も任意で、緩衝器Dにて達成しようとする減衰特性に応じて適する形状に設定することができる。
【0050】
また、ポート2g,2hの傾斜方向は、緩衝器Dの上方室R1と下方室R2との接続に当たり、流れがスムーズとなる方向に向けて傾斜させているが、各ポート2g,2hを通過した二つの作動流体の真正面からの衝突を回避して異音抑制するという観点からは、各ポート2g,2hの傾斜方向を逆にしてもよく、また、一方のポート2gと他方のポート2hの傾斜方向が一致しなくともよい。
【0051】
以上で、ロータリバルブの一実施の形態についての説明を終えるが、本発明のロータリバルブは、ピストンロッドをハウジングとせずに緩衝器の他の部位に適用することが可能であることはもちろんである。また、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施の形態におけるロータリバルブが適用された緩衝器の一部拡大縦断面図である。
【図2】本発明の一実施の形態におけるロータリバルブの弁体の側面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 シリンダ
2 ピストンロッド
2a ピストンロッドにおける中空孔
2b ピストンロッドにおけるコントロールロッド挿通孔
2c ピストンロッドにおける小径部
2d ピストンロッドおける段部
2e,2f ピストンロッドにおける第二ポート
2g,2h ピストンロッドにおけるポート
3 ピストン
3a,3b 主減衰通路
4 バイパス路
5 ロータリバルブ
6 スペーサ
6a スペーサにおける孔
6b スペーサにおける筒部
6c 副通路としての切欠
7 仕切部材
8 ロータリバルブにおける弁体
9 バルブディスク
9a 伸側通路
9b 圧側通路
10 キャップ
10a キャップにおける孔
11 部屋
12 バルブ抑え
12a バルブ抑えにおける筒部
12b バルブ抑えにおける切欠
13,14 バルブストッパ
15 ピストンナット
16 コントロールロッド
17 ベアリング
18 ストッパ
19,20 第二オリフィス孔
19a,20a 円形孔
19b,20b スリット
21,22 オリフィス孔
D 緩衝器
R1 上方室
R2 下方室
V1,V2,V3,V4 リーフバルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状であって側部に内外を連通するとともに一対のポートを有するハウジングと、ハウジング内に周方向に回動可能に収納される弁体とを備え、弁体が筒状であって側部に内外を連通するとともに各々対応するハウジングのポートに対向可能な一対のオリフィス孔を有し、弁体を回動させて各ポートに対応するオリフィス孔を連通して流路面積を変化させるロータリバルブにおいて、各ポートは、ハウジングの軸方向に対して傾斜して設けられることを特徴とするロータリバルブ。
【請求項2】
シリンダと、シリンダ内に移動自在に挿入されるピストンロッドと、シリンダ内に摺動自在に挿入されてピストンロッドの外周に装着されシリンダ内を上方室と下方室とに区画するとともに上方室と下方室とを連通する主減衰通路を備えたピストンと、主減衰通路を迂回して上方室と下方室とを連通するバイパス路とを備えた緩衝器におけるバイパス路をピストンロッドの先端から開口して下方室に通じる中空孔と、ピストンロッドの外周であってピストンより上方室側に装着される仕切部材によって形成されるとともに当該仕切部材に形成される通路によって上方室に連通される部屋と、仕切部材とピストンとの間に介装されるスペーサに設けた副通路と、ピストンロッドに設けられて中空孔と副通路とを連通するポートと、ピストンロッドに設けられて中空孔と部屋とを連通する第二ポートとで形成し、ハウジングを上記ピストンロッドとして、中空孔内に周方向に回動可能に弁体を収容し、弁体には、ポートに対向するオリフィス孔の他に第二ポートに対向可能な第二オリフィス孔を設けたことを特徴とする請求項1に記載のロータリバルブ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−287763(P2009−287763A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−144356(P2008−144356)
【出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】