説明

ロータリーカット用金型及びこれを用いたロータリーカッター

【課題】輪郭の一部に直線部を有するブランク材を安定して切り出すことができ、耐久性に優れたロータリーカット用金型及びこれを用いたロータリーカッターを提供する。
【解決手段】カッターロール1は、円柱状のロール部4と、ロール部4の外周面に形成されたカット刃5とを含む。カット刃5は、先端に刃が形成された先細りの凸条であり、ロール部4の外周面上においてブランク材の輪郭に対応する3次元形状を描くように形成されている。ブランク材の対向する一対の辺を切断するための部分刃6a及び6cの刃先は、ロール部の外周面上の異なる2点を最短経路で接続する曲線を描くように延び、ロール部の中心軸を含む平面上に位置していない。より詳細には、ロール部4の外周面及びカット刃5を平面上に展開した場合、部分刃6a及び6cは、回転方向に延びるロール部4の一辺と直交する直線に対して、所定角度をなす直線となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリーカット加工に用いられる円柱状の金型及びこれを用いたロータリーカッターに関する。
【背景技術】
【0002】
図4は、従来のロータリーカッターの概略構成を示す斜視図であり、図5は、図4に示すカッターロールの展開図である。
【0003】
図4に示されるロータリーカッターは、長尺のシート材93から所望形状のブランク材を切り出すために用いられるものであり、円柱状のカッターロール91及びアンビルロール92と、シート材93を搬送する搬送機構(図示せず)とを備える。
【0004】
カッターロール91は、円柱状のロール部94と、ロール部94の外周面に形成されたカット刃95とを含む。カット刃95は、先端部が鋭利な凸条であり、ロール部94の外周面上においてブランク材の輪郭に対応する3次元形状を描くように形成されている。一方、アンビルロール92は、金属よりなる円柱状の部材であり、平滑な外周面を有する。
【0005】
カッターロール91及びアンビルロール92は、それぞれの中心軸が平行となり、かつ、カッターロール91表面のカット刃95の先端がアンビルロール92の外周面に当接するよう配置されている。また、カッターロール91及びアンビルロール92は、図示しない回転機構を介して、それぞれの中心軸周りに回動自在である。
【0006】
カッターロール91及びアンビルロール92を、図4に示す矢印方向に回転させながら、シート材93を図4において左下から右上に向かって、矢印方向に搬送すると、カッターロール91の回転に伴ってシート材93が順に切断され、連続してブランク材が切り出される。このようなロータリーカッターを用いれば、抜き金型では加工が困難な紙やフィルム、布、不織布等のシート材から高速かつ精密にブランク材を切り出すことができる。
【0007】
ここで、カッターロール91の複数のカット刃95は、シート材から最も効率よくブランク材を切り出せるように、ロール部94の外周面上に最密に割り付けられる。具体的には、矩形状のブランク材を裁断するためのカッターロール91では、図5に示すように、ブランク材の一対の直線部をカットするための部分刃96a及び96cがカッターロール91の中心軸と平行な方向に整列し、残りの直線部をカットするための部分刃96b及び96dがカッターロール91の周方向に延びるように、各カット刃95がロール部94に割り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−248695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図4及び図5に示したカッターロール91では、各カット刃95の各部分刃96aが幅方向に同一線上に一列に整列して形成されているため、各カット刃95の部分刃96aによる裁断が同時に行われることになる。ところが、幅方向に整列する各部分刃96a全体が、アンビルロール92の外周面との接触により同一線上で同時に圧力を受けるため、部分刃96aの各々に加わる圧力がばらつきやすく、裁断が不安定になるという問題がある。また、圧力がばらつきやすい状態で加工を継続すると、カット刃95の摩耗度合に差が生じることとなり、切れ味が低下しやすく、カット刃95の寿命が短くなる傾向が見られる。したがって、カット不良等の品質低下を来したり、刃の交換や研磨等に要するコストの増大を招いてしまったりするという問題もある。
【0010】
それ故に、本発明は、輪郭の一部に直線部を有するブランク材を安定して切り出すことができ、耐久性に優れたロータリーカット用金型及びこれを用いたロータリーカッターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、輪郭の少なくとも一部に直線部を有するブランク材を、ロータリーカット加工によってシート材から切り出すために用いるロータリーカット用金型に関する。本発明に係るロータリーカット用金型は、円柱形状のロール部と、ロール部の外周面に形成され、ブランク材の輪郭に対応する立体形状を描くカット刃とを備える。カット刃のうち、ブランク材の直線部を切断するための部分刃が、ロール部の外周面上の異なる2点を最短経路で接続する曲線を描くように延び、ロール部の中心軸を含む平面上にないことを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係るロータリーカッターは、上記のロータリーカット用金型と、平滑な外周面を有し、ロータリーカット用金型と平行に配置される円柱形状のアンビルロールと、ロータリーカット用金型及びアンビルロールの各々を中心軸周りに回転させる回転機構と、ロータリーカット用金型とアンビルロールとの間を通過するようにシート材を搬送する搬送機構とを備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、輪郭の一部に直線部を有するブランク材を安定して切り出すことができ、耐久性に優れたロータリーカット用金型及びこれを用いたロータリーカッターを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るロータリーカッターの概略構成を示す斜視図
【図2】図1に示すカッターロールの展開図
【図3】図1に示すIII−IIIラインに沿う断面図
【図4】従来のロータリーカッターの概略構成を示す斜視図
【図5】図4に示すカッターロールの展開図
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1〜3を参照しながら、本発明に係るロータリーカット用金型及びこれを用いたロータリーカッターを説明する。以下の説明において、紙、樹脂、紙及び樹脂の複合材料のいずれかよりなるシートまたやフィルム、布、不織布等の材料を総称して「シート材」という。また、シート材から切り出される所望形状の部材を「ブランク材」という。
【0016】
図1は、本発明に係るロータリーカッターの概略構成を示す斜視図であり、図2は、図1に示すカッターロールの展開図であり、図3は、図1に示すIII−IIIラインに沿う断面図である。尚、図1においては、図示の都合上、ロール部4の外周面上の点A〜Dを黒丸で模式的に表し、カット刃5と重ねて示している。
【0017】
ロータリーカッター10は、カッターロール1と、アンビルロール2と、カッターロール1及びアンビルロール2を回転させる回転機構(図示せず)と、シート材3を搬送する搬送機構(図示せず)とを備える。
【0018】
カッターロール1は、円柱状のロール部4と、ロール部4の外周面に形成されたカット刃5とを含む。カット刃5は、図3の断面図に示すように、先端に刃が形成された先細りの凸条であり、ロール部4の外周面上においてブランク材の輪郭に対応する3次元形状を描くように形成されている。本実施形態のカット刃5は、四隅が丸められた矩形状のブランク材を切り出すためのものであり、ブランク材の4辺に対応する部分刃6a〜6dを有する。
【0019】
ブランク材の直線状の一辺を切断するための部分刃6aは、ロール部4の外周面上の異なる2点A及びBを最短経路で接続する曲線を描くように延び、ロール部4の中心軸を含む平面上に位置しないように形成されている。部分刃6aに対向する位置に設けられた部分刃6cもまた、ロール部4の外周面上の異なる2点C及びDを最短経路で接続する曲線を描くように延び、ロール部4の中心軸を含む平面上に位置しないように形成されている。言い換えれば、部分刃6a及び6cは、ロール部4の中心軸と平行な直線状ではなく、ロール部4の外周面を周方向に旋回する螺旋状に形成されている。尚、図1においては、2点A及びBがロール部4の中心軸を含む平面上にないこと、及び、2点C及びDがロール部4の中心軸を含む平面上にないことを、二点鎖線の補助線で表現している。
【0020】
より詳細には、図2に示すように、ロール部4の外周面及びカット刃5を平面上に展開した場合、部分刃6a及び6cは、回転方向に延びるロール部4の一辺と直交する直線Lに対して、所定角度θをなす直線となる。尚、ここでいう「展開」とは、ロール部4の外周面の展開図が長方形となるように、ロール部4及びカット刃5を平面に展開することをいう。所定角度θは、0.5°以上45°以下であれば良く、4°以上10°以下であることがより好ましい。ブランク材の残りの一対の辺を切断するための部分刃6b及び6dも、図2に示す展開図上において、回転方向に延びるロール部4の一辺に対して所定角度θ(図示せず)をなす直線となる。
【0021】
アンビルロール2は、金属よりなる円柱状の部材であり、平滑な外周面を有する。アンビルロール2の材質としては、ダイス鋼などの鉄系材料が多く用いられるが、特に限定されるものではない。
【0022】
カッターロール1及びアンビルロール2は、それぞれの中心軸が平行となり、かつ、カッターロール1のカット刃5の刃先がアンビルロール2の外周面に当接するよう配置されている。また、カッターロール1及びアンビルロール2は、図示しない回転機構によって、同じ回転速度でそれぞれ逆方向に回転する。
【0023】
カッターロール1及びアンビルロール2を、図1に示す矢印方向に回転させながら、シート材3を図1の右上方向に搬送すると、カッターロール1の回転に伴ってシート材3が順に切断され、連続してブランク材が切り出される。本実施形態では、部分刃6a及び6cがカッターロール1の幅方向に整列していないため、部分刃6aまたは6cによる裁断時には、部分刃6aまたは6cとロール部4の外周面との接触部分は少なくなり、各カット刃5の部分刃6aまたは6cの全体が同時にカッターロール4の外周面に接触することはない。したがって、カッターロール1に加える押圧力を小さくした場合でも、部分刃6または6cとロール部4との接触部分に圧力が集中することとなり、安定した裁断を継続して行うことができる。また、カッターロール1に加える押圧力を小さくできることによって、カット刃5の損耗を抑制することができるため、カット不良の発生を防止し、カット刃5のメンテナンスに要するコストの低減を図ることが可能となる。
【0024】
尚、本実施の形態では、ほぼ矩形状の輪郭を有するブランク材を切り出すためのカット刃形状を例示したが、3角形や5角形等の多角形のブランク材や、直線と曲線の組み合わせよりなる輪郭形状を有するブランク材の切り出しにも同様に本発明を適用できる。
【0025】
また、本実施の形態では、シート材を完全に裁断する場合を例示したが、ハーフカットやミシン目を形成するためのカット刃にも同様に本発明を適用できる。
【0026】
更に、本発明では、ブランク材の輪郭を裁断するためのカット刃のみを示したが、輪郭を裁断するためのカット刃に加えて、ハーフカットやミシン目を形成するためのカット刃をカッターロールに設けても良い。
【実施例】
【0027】
本発明の効果を検証するために、以下の実施例及び比較例に係るカッターロールを作製し、ロータリーカット加工を行った。使用したシート材は、紙(104.7g/m2)/ポリエチレン(20μm)/ポリエチレンテレフタレート(12μm)/アルミニウム箔(9μm)/押し出しシーラント(20μm)からなる複合材料である。また、切り出したブランク材の形状は、四隅を丸めた正方形である。
【0028】
(実施例)
実施例に係るカッターロールは、図2に示す展開図に基づいて作製した。ここで、カッターロールの円周長さCを555mmとし、カット刃の寸法d1及びd2をいずれも178mmとし、カット刃の割り付け角度θを5.5°とした。
【0029】
(比較例)
比較例に係るカッターロールは、図5に示す展開図に基づいて作製した。ここで、ここで、カッターロールの円周長さCを555mmとし、カット刃の寸法d1及びd2をいずれも178mmとした。
【0030】
実施例及び比較例に係るカッターロールを用いて上記のシート材をロータリーカットした結果を表1にまとめて示す。
【表1】

【0031】
表1に示されるように、実施例に係るカッターロールを用いた場合、約500000m以上のシート材を裁断してもカット不良は発生し難く、切れ味も良好であった。これに対して、比較例に係るカッターロールを用いた場合には、約300000mのシート材を裁断すると、ブランク材の輪郭の一部が完全に裁断されないカット不良が発生し、カット刃の研磨が必要となった。この結果から、ブランク材の輪郭を構成する直線部を裁断するための部分刃を螺旋状に形成することが、カットの安定性及びカット刃の耐久性向上に効果的であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、紙、樹脂、紙及び樹脂の複合材料、布、不織布といったシート材料を裁断するためのロータリーカット加工に利用できる。
【符号の説明】
【0033】
1 カッターロール
2 アンビルロール
3 シート材
4 ロール部
5 カット刃
6a〜6c 部分刃
10 ロータリーカッター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
輪郭の少なくとも一部に直線部を有するブランク材を、ロータリーカット加工によってシート材から切り出すために用いるロータリーカット用金型であって、
円柱形状のロール部と、
前記ロール部の外周面に形成され、前記ブランク材の輪郭に対応する立体形状を描くカット刃とを備え、
前記カット刃のうち、前記ブランク材の前記直線部を切断するための部分刃が、前記ロール部の外周面上の異なる2点を最短経路で接続する曲線を描くように延び、前記ロール部の中心軸を含む平面上にないことを特徴とする、ロータリーカット用金型。
【請求項2】
前記ロール部の外周面及び前記カット刃を平面上に展開した展開図上において、前記直線部を切断するための部分は、回転方向に延びる辺と直交する直線に対して、0.5〜45°の角度をなす直線となる、請求項1に記載のロータリーカット用金型。
【請求項3】
前記ロール部の外周面及び前記カット刃を平面上に展開した展開図上において、前記直線部を切断するための部分は、回転方向に延びる辺と直交する直線に対して、4〜10°の角度をなす直線となる、請求項1に記載のロータリーカット用金型。
【請求項4】
ロータリーカッターであって、
請求項1に記載のロータリーカット用金型と、
平滑な外周面を有し、前記ロータリーカット用金型と平行に配置される円柱形状のアンビルロールと、
前記ロータリーカット用金型及び前記アンビルロールの各々を中心軸周りに回転させる回転機構と、
前記ロータリーカット用金型と前記アンビルロールとの間を通過するようにシート材を搬送する搬送機構とを備える、ロータリーカッター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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