説明

ロータリースプレー塗装方法

【課題】建築用ボード材等の被塗装物の表面全体を均一に塗布し、塗料消費量を低減させるとともに、優れた塗膜を得ることが可能なロータリースプレー塗装方法を提供する。
【解決手段】回転軌道面がコンベア4面に平行に配置されたスプレーノズル3からの塗料吹き付けによりコンベア4上に載置された被塗装物5を塗装する方法であって、回転軌道面に配置されたスプレーノズル3が、被塗装物5の上部に近接する位置イ、ロおよび被塗装物5の上部から離間する位置ハ、ニにおいて、上記コンベア4上の被塗装物5の両側で該被塗装物5に近接して塗料飛散防止板1を設け塗装するロータリースプレー塗装方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明はスプレー塗装方法に関し、さらに詳しくは、コンベアに載置されて移動する建材等の物品を、ロータリースプレーを用いて連続的に塗装する塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンベア上に載置した建築役物等の物品を連続的に塗装するための手段の一つとして、複数のスプレーノズルを配置したローター(回転体)を回転させ、回転軌道面を回るスプレーノズルから塗料を吹付けて塗装するロータリースプレー塗装方法が知られている。
【0003】
本願図3は、上記公知のロータリースプレー塗装装置の主要部を構成するロータリー塗装機2の概略構成を示す斜視図である。本願図4(a)は、上記ロータリースプレー塗装装置を模式的に示す平面図である。
【0004】
本願図3、本願図4(a)に示すように、上記ロータリースプレー塗装装置においては、ロータリー塗装機2は、コンベア4に被塗装物5を載置した状態において、通常、被塗装物5の幅よりも大きな径を有するローター21を同一の回転軌道面に有するとともに、等間隔、たとえば60°ピッチで複数のスプレーノズル3を配置して塗装を行っている。なお、本願図4(a)においては、上記ローター21の図示は省略している。
【0005】
特開2000−061364号公報においては、所定の塗布量を、塗布むらを抑えて、しかも塗料の飛散損失を低減させてスプレー塗装することができるロータリースプレー塗装装置が開示されている。
【0006】
すなわち、上記公報には、ローターの回転中心に対して複数の円周軌道の各々に複数のスプレーノズルが配置され、回転軌道面がコンベア面に平行なスプレーノズルからの塗料吹付けによりコンベア上に載置された物品を塗装するロータリースプレー塗装装置であって、各々の円周軌道上のスプレーノズルへの塗料供給系統は別系統とされ、かつ別々に液圧制御されていることを特徴とするロータリースプレー塗装装置が開示されている。
【0007】
そして、コンベア幅外、つまり物品の被塗装面幅より外へ飛散する塗料ロスを低減し、スプレーノズルの最大円周径をコンベアの幅内に納めることができると、その効果が述べられている。また、ローターによるスプレーノズルの円周軌道径を小さくでき、周速度を抑えることができるので、ミスト状になって飛散する塗料ロスの低減も図られ、このことは、飛散しやすい水系エマルジョン塗料等の利用時には極めて有効とも述べられている。
【0008】
しかしながら、上記公報に記載の技術は、スプレーノズルにおける塗料のスプレー圧を別系統で制御する必要があるため、システムが複雑となり、高価な制御機構を導入しなければならないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−061364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、コンベア上に載置された物品、とくに、建築用ボード材等の長方形の被塗装物を上記ロータリースプレー塗装機を用いて塗装すると、被塗装物の幅方向の左右端部にスプレーされる塗料の塗布量が少なくなり、所定の膜厚が得られないという問題が経験的に知られている。
【0011】
すなわち、本願図4(b)に示すように、円周軌道を回るスプレーノズル3の、被塗装物5の上部において、→で示すように近接する位置(本願図4(b)左側)および被塗装物5の上部から、→で示すように、離間する位置(本願図4(b)右側)において、塗料6の塗布量が少なくなるという問題がある。
【0012】
本願図4(c)は、このときの被塗装物5の左右両端部における膜厚を模式的に示す説明図である。すなわち、本願図4(c)に示されているように、被塗装物5の両端部においては、所定量の塗料が塗布されないため、本願図4(c)に点線で示す必要な膜厚が得られずに、所定の膜厚よりΔdだけ薄く塗布される。したがって、長さ方向に沿って両端部に塗布むらが生じるため、優れた塗装品質を得ることができないという問題がある。
【0013】
本願発明は、上記背景技術に鑑みてなしたものであり、その目的は、ロータリースプレー塗装装置を用いて、コンベアに載置されて移動する建築用ボード等の被塗装物を塗装する際、その幅方向の左右端部をも所定の膜厚に塗布することが可能で、表面全体が均一に塗布された塗装品を得ることができる優れた塗装方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本願請求項1に記載の発明に係るロータリースプレー塗装方法は、回転軌道面がコンベア面に平行に配置されたスプレーノズルからの塗料吹き付けによりコンベア上に載置された被塗装物を塗装する方法であって、回転軌道面に配置されたスプレーノズルが、被塗装物の上部に近接する位置および被塗装物の上部から離間する位置において、上記コンベア上の被塗装物の両側で該被塗装物に近接して塗料飛散防止板を設けてなるロータリースプレー塗装方法である。
【0015】
また、本願請求項2に記載の発明においては、上記請求項1記載のロータリースプレー塗装方法において、コンベア上の被塗装物の両側に近接して設けられた塗料飛散防止板の外側端部を高くして該塗料飛散防止板を傾斜してなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本願請求項1に記載の発明に係るロータリースプレー塗装方法においては、回転軌道面に配置されたスプレーノズルが、被塗装物の上部に近接する位置および被塗装物の上部から離間する位置において、上記コンベア上の被塗装物の両側で該被塗装物に近接して塗料飛散防止板が設けられているため、被塗装物の左右端部は、塗料飛散防止板の存在により被塗装物の表面の他の部分と、ほぼ同じ塗装条件となる。
【0017】
そして、スプレーノズルからの塗料は、被塗装物の左右端部と塗料飛散防止板とに同一条件で噴射され、均一に塗布されるため、塗布むらのない優れた塗膜を得ることができる。
【0018】
また、本願請求項2に記載の発明においては、上記請求項1記載のロータリースプレー塗装方法において、コンベア上の被塗装物の両側に近接して設けられた塗料飛散防止板の外側端部を高くして該塗料飛散防止板を傾斜せしめることにより、スプレーした塗料の飛散防止をより効率的に行うことができるため、塗料の消費量を低減させて製造コストを改善できるとともに、塗布むらのない、優れた塗膜を有する建築用ボード材等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】(a)は本願発明の方法に係るロータリースプレー塗装装置を模式的に示す平面図、(b)は本願発明の方法に係るロータリースプレー塗装装置を模式的に示す正面図、(c)は本願発明の方法に係るロータリースプレー塗装装置によって塗布された被塗装物の左右両端部における膜厚を模式的に示す説明図。
【図2】本願発明の方法に係るロータリースプレー塗装装置の実施形態の変形例を模式的に示す正面図。
【図3】公知のロータリースプレー塗装装置の主要部を構成するロータリー塗装機の概略構成を示す斜視図。
【図4】(a)は公知のロータリースプレー塗装装置を模式的に示す平面図、(b)は公知のロータリースプレー塗装装置を模式的に示す正面図、(c)は公知のロータリースプレー塗装装置によって塗布された被塗装物の左右両端部における膜厚を模式的に示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本願発明に係るロータリースプレー塗装方法の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。本実施形態においては、被塗装物5としての建築用ボードの表面にロータリー塗装機2の同一円周上に等間隔、すなわち、ローター回転中心から60°ピッチで6個のスプレーノズル3を配置した場合を例にとって説明する。
【0021】
図1(a)は、本願発明の方法に係るロータリースプレー塗装装置Aを模式的に示す平面図である。図1(b)は、本願発明の方法に係るロータリースプレー塗装装置Aを模式的に示す正面図である。図1(a)において、ロータリー塗装機2は、ローター21(図3参照)の端部に設けられたスプレーノズル3の回転軌道面がコンベア4と一定の距離をとって略平行に配置され、各スプレーノズル3から霧状に噴射された塗料は、コンベア4上に載置された被塗装物5に噴射される。このとき、被塗装物5は、図1(a)に白抜き矢印で示す方向に移動するとともに、表面塗装が行われる。
【0022】
このとき、本願発明の方法においては、図1(a)、図1(b)に示すように4個の塗料飛散防止板1が被塗装物5に近接して設けられる。この場合、4個の塗料飛散防止板1が被塗装物5と略面一に設けられるとさらに適切なものとなる。そして、円周軌道を回るスプレーノズル3が被塗装物5の上部に近接する位置(図1(a)にイ、ロで示す位置)および被塗装物5の上部から離間する位置(図1(a)にハ、ニで示す位置)に上記塗料飛散防止板1が設けられる。
【0023】
上記塗料飛散防止板1は、図1(b)に示されるように、塗料飛散防止板1と被塗装物5が近接し、かつ、その表面が略面一となるように、図示しない支持装置によって支持される。このようにすることによって、被塗装物5の両端部は、塗料飛散防止板1を設けることによって被塗装物5の表面の他の部分とは略同じ条件で噴射され、塗料6は端部に至るまで均一に塗布されて塗布むらのない優れた塗膜を得ることができる。
【0024】
図1(c)は、上記のようにして塗布された被塗装物5の左右両端部における膜厚を模式的に示す説明図である。図1(c)においてには、本願発明の方法で得られた塗膜の膜厚を○で示すとともに、従来法で塗布したときに得られた図4(c)に示す膜厚も同時に示す。図1(c)に示されているように、被塗装物5の左右両端部における膜厚は改善されて塗布むらの少ない、良好な塗膜が得られている。
【0025】
本発明において、塗料飛散防止板1と被塗装物5が近接して設けられるとの意味は、高さ方向においては必ずしも面一を意味するものではなく塗料飛散防止板1が被塗装物5より低い位置にある場合も含むものである。また、水平方向においては塗料飛散防止板1と被塗装物5が文字通り接近して設けられていることで、塗料飛散防止板1と被塗装物5の間に間隙が存在しても良いことは当然である。
【0026】
図2は、本願発明の方法に係るロータリースプレー塗装装置Aの実施形態の変形例を模式的に示す正面図である。図2に示すように、本変形例においては、コンベア4上の被塗装物5の両側に近接して設けられた塗料飛散防止板1の外側端部11を高くし、塗料飛散防止板1自体が被塗装物5側に傾斜して設けられている。このようにすることにより、スプレーした塗料の飛散防止をより効率的に行うことができる。
【0027】
さらに、複数列のスプレー塗装ラインを並列に設けるとともに、隣り合う被塗装物5の端部と端部とをひとつの塗料飛散防止板1で受け、塗料の飛散防止を行ってもよい。また、ロータリー塗装機2のみならず、レシプロケーター塗装機を用いた場合においても、塗料飛散防止板1を用いることにより、同様の効果を期待することができる。
【0028】
このように本願発明に係るロータリースプレー塗装方法は設計変更自在であり、特許請求の範囲を逸脱しない限り、いずれの場合も本願発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0029】
A 本願発明の方法に係るロータリースプレー塗装装置
イ、ロ スプレーノズルが被塗装物の上部に近接する位置
ハ、ニ スプレーノズルが被塗装物の上部から離間する位置
Δd 被塗装物の端部で所定の膜厚より薄く塗布された膜厚
1 塗料飛散防止板
11 外側端部
2 ロータリー塗装機
21 ローター
3 スプレーノズル
4 コンベア
5 被塗装物
6 塗料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軌道面がコンベア面に平行に配置されたスプレーノズルからの塗料吹き付けによりコンベア上に載置された被塗装物を塗装する方法であって、回転軌道面に配置されたスプレーノズルが、被塗装物の上部に近接する位置および被塗装物の上部から離間する位置において、上記コンベア上の被塗装物の両側で該被塗装物に近接して塗料飛散防止板を設け塗装するロータリースプレー塗装方法。
【請求項2】
上記コンベア上の被塗装物の両側に近接して設けられた塗料飛散防止板の外側端部を高くして該塗料飛散防止板を傾斜してなる請求項1に記載のロータリースプレー塗装方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−264410(P2010−264410A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−119460(P2009−119460)
【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】