説明

ロータ分離装置

【課題】家電製品等から採りだして簡易的に分解することによって得られたモータのロータアッセンブリから、容易に希土類磁石を取り出してリサイクルすることが可能になるロータ分離装置を提供する。
【解決手段】希土類磁石を有するロータ5の中心に形成された孔部5aにシャフト2が挿入されて嵌め合いにより固定され、シャフト2の一端部にシェル4が一体的に設けられたロータアッセンブリ1からロータ5を分離する装置であり、架台10にロータ5のシェルとの対向部をシャフトの軸線方向に支持する支持部材18,19と、シェル4の対向部に当接する押出プレート20と、押出プレート20を支持部材による支持方向と反対方向に押圧する流体圧シリンダ16とを設け、かつロータ5と当接する支持部材18、19を非磁性体によって形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、希土類磁石素材を有するロータを備えたロータアッセンブリから、当該ロータを分離して上記希土類磁石素材を回収するためのロータ分離装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、レアアース(希土類元素)を用いた希土類磁石は、ハイブリッド車など次世代環境対応車のモータのロータだけでなく、先端技術を駆使するOA機器、家電製品にも使用されている。特に、上記家電製品においては、2000年以降に製造された比較的新しい形式のエアコンや冷蔵庫のコンプレッサ、または洗濯機のモータのロータに、希土類磁石が使用されている。
【0003】
このようなレアアースは、国際的に生産地あるいは生産国に偏りがあり、国際政治あるいは為替変動等の要因に対して安定供給を図るために、使用後のリサイクルによる有効活用が要請されている。
【0004】
ちなみに、上記家電製品の使用年数が概ね10年程度であることを踏まえると、既存の家電リサイクルルートにおいて、既に希土類磁石を使用した家電製品、特にエアコンや洗濯機が回収されていると推測される。そこで、当該家電リサイクルルートから希土類磁石を使用したエアコンや洗濯機などの家電製品を回収することにより、レアメタルやレアアースなどの再生資源を回収することが可能であると考えられる。
【0005】
しかしながら、現在使用済みの家電製品を回収してリサイクルを行う過程は、複数業者によって事業化されているものの、もっぱら簡易な分別設備によって鉄、銅、珪素鋼板などの素材に大別して、比較的容積比の大きな金属類を再資源化するものであり、例えばエアコンや冷蔵庫のコンプレッサ、または洗濯機から、その部品であるモータを取り外し、さらに当該モータを分解して得られたロータアッセンブリからロータのみを分離して、これに組み込まれている希土類磁石を取り出して回収することは、多大の手間を要してリサイクルコストが合致しないことから、殆ど実施されていないのが現状である。
【0006】
ところで、このような家電製品等から採りだしたモータを、さらに簡易的に分解することによって得られるロータアッセンブリは、一般に、図9(a)、(b)に示すような形状および構造を有している。
すなわち、このロータアッセンブリ1は、当該モータの出力軸となるシャフト2に一体化された回転体3を内包するシェル4と、上記シャフト2に焼き嵌めによって固定されている円筒状のロータ5とにより概略構成されている。
【0007】
ここで、このロータ5は、中心にシャフト2を挿入して嵌合する孔部5aが軸線方向に穿設されるとともに、外周部には、円周方向に等間隔をおいた複数箇所(例えば図示のように4箇所)に貫通孔5bが穿設されている。そして、これら貫通孔5b間には、平板状の希土類磁石6を挿入する磁石用貫通孔5cが軸線方向に貫通して穿設されている。
【0008】
そして、上記磁石用貫通孔5c内に挿入された希土類磁石6は、ロータ5の両端部に押さえ板7が配設され、これら押さえ板7と貫通孔5bとに挿通されたピン8の両端部が加締められることにより、ロータ5内に収納されている。なお、挿入された希土類磁石6は、ネオジム磁石、サマリウムコバルト磁石などである。
【0009】
したがって、上記ロータアッセンブリ1から希土類磁石6を回収してリサイクルするためには、先ずロータアッセンブリ1からロータ5を分離する必要がある。
ところが、ロータ5は、回転体3を内包したシェル4と一体化されたシャフト2に焼き嵌めにより固着されている。そこで、ロータ5を分離する方法としては、当該シャフト2を切断する方法、あるいはロータ5を固定して、シャフト2を押し込む方法、さらにシェル4を固定し、ロータ5をシェル5から離間する方向に圧力を加えて押し上げる方法などが考えられる。
【0010】
しかしながら、シャフト2を切断する方法においては、安全性や切断刃の摩耗などの問題が生じる。また、ロータ5を固定してシャフト2を押し込む方法においては、シャフト2がロータ5から突出していないものについては適用することができない。さらに、シェル4を固定して、ロータ5に圧力を加える方法においては、ロータ5が変形してしまい、ロータ5に内包された磁石が取り出せないという問題が生じる。加えて、ロータ5が磁気を帯びているために、使用する工具類と磁気的吸着して円滑な作業の妨げになるという問題点もある。
【0011】
そこで、下記特許文献1において、鉄心、銅線および希土類を用いた永久磁石からなるモータのロータコアの窒素含有量を500ppm以上とした後に、破砕して材料選別を行う方法が提案されている。
【0012】
上記従来の方法は、上記モータコアをガス軟窒化雰囲気にて焼鈍することにより、鉄心部分が脆化して、容易に破砕が可能であるとともに、破砕片の各々に複数成分が混在する割合を抑えて、鉄、銅、希土類を用いた磁石素材に分離することが可能である。また、ロータがシャフトに焼き嵌めされていた場合でも、容易に破壊することができる。
【0013】
しかしながら、この従来の方法では、ガス軟窒化雰囲気にて焼鈍した後に、上記ロータコアを破砕し、鉄、銅、希土類を用いた磁石素材を分離させるため、容易に破砕できたとしても、その後素材ごとに分離して回収する際に、例えば、鉄に銅が混入、または鉄に磁石素材が混入してしまい、特に希土類磁石を含むロータコアは、他の素材が混入すると希土類磁石素材を再資源化することが難しいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2007−124841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、家電製品等から採りだして簡易的に分解することによって得られたモータのロータアッセンブリから、容易に希土類磁石を取り出してリサイクルすることが可能になるロータ分離装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、希土類磁石を有するロータの中心に形成された孔部に出力軸となるシャフトが挿入されて嵌め合いにより固定され、当該シャフトの一端部に、上記ロータと間隔をおいてシェルが一体的に設けられたロータアッセンブリから上記ロータを分離する装置であって、架台に、上記ロータおよび上記シェルの対向部の一方を上記シャフトの軸線方向に支持する支持部材と、上記対向部の他方に当接する押出プレートと、この押出プレートを上記支持部材による支持方向と反対方向に押圧する流体圧シリンダとを設けるとともに、少なくとも上記ロータの上記対向部と当接する上記支持部材または押出プレートの表面を、非磁性体によって形成したことを特徴とするものである。
【0017】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、上記架台に複数本の支柱を立設し、これら支柱によって支持された天板の下部に上記支持部材を垂設するとともに、上記支柱に、中央部に上記支持部材が挿通可能な開口部が形成された昇降板を上記天板に配設した上記流体圧シリンダによって上下方向に移動自在に設け、当該昇降板に上記支持部材を間に挟んで対向する一対の上記押出プレートを設け、かつ上記支柱および上記昇降板の少なくとも上記ロータアッセンブリ側に露出する表面を、非磁性体によって形成したことを特徴とするものである。
【0018】
さらに、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、上記支持部材が、上記ロータの上記対向部を支持し、かつ上記押出プレートは、上記シェルの上記対向部に当接するとともに、当該押出プレートの表面も非磁性体によって形成したことを特徴とするものである。
【0019】
また、請求項4に記載の発明は、請求項2または3に記載の発明において、上記ロータの孔部に挿入可能な外径を有する円柱状のプッシャーピンが立設されるとともに、当該プッシャーピンの先端を鉛直方向の下方に向けて上記昇降板に着脱自在に装着可能なプッシャーベースと、上記プッシャーピンの下方に配置され、上記シャフトの軸線方向を上記プッシャーピンの軸線と一致させて上記ロータを位置決め可能なロータ受け部とを備えてなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0020】
請求項1〜4のいずれかに記載の発明においては、架台に設けた支持部材によってロータまたはシェルの一方をシャフトの軸線方向に支持した状態で、他方の対向部に当接させた押出プレートを流体圧シリンダによって上記支持方向と反対方向に押圧することにより、ロータの孔部に嵌め合いによって固定されているシャフトを、容易に当該ロータから抜き出すことができる。この際に、シェルまたはロータに押圧力を加えて、シェルと一体化されているシャフトをロータから抜き出しているために、小径のシャフトが変形して、抜き出しが困難にことを防止することができる。
【0021】
しかも、少なくとも上記ロータと当接する支持部材または押出プレートの表面を、非磁性体によって形成しているために、分離作業中に、磁気を帯びたロータが、これと当接する支持部材または押出プレートに磁気的吸着して位置ズレを生じる等の弊害を未然に防止することができる。
【0022】
また、請求項2に記載の発明によれば、架台に立設した支柱に昇降板を流体圧シリンダによって上下方向に移動自在に設け、当該昇降板に上記支持部材を間に挟むようにして一対の上記押出プレートを設けているために、これら一対の押出プレートを水平に保持しつつ当該押出プレートが当接するロータまたはシェルを確実にシャフトの軸線に沿って移動させることができる。これにより、少ない押圧力によって円滑にロータの孔部からシャフトを抜き出すことが可能になる。
【0023】
加えて、上記支柱および昇降板の少なくともロータアッセンブリ側に露出する表面についても、同様に非磁性体によって形成しているために、ロータとこれらの部材とが磁気的吸着を生じることがない。
【0024】
ここで、ロータおよびシェル(シャフト)を軸線方向に相対移動させてロータからシャフトを抜き出すに際しては、一方を支持部材によって固定し、他方を押出プレートを介して流体圧シリンダによって押圧すればよいが、特に請求項3に記載の発明のように、上記支持部材によってロータを支持し、押出プレートによってシェルの対向部を押圧するようにすれば、希土類磁石が組み込まれたロータに変形を生じる虞がなく好適である。
【0025】
ところで、請求項1〜3のいずれかに記載の発明においては、ロータおよびシェルを軸線方向に相対移動させて、シェルと一体化されているシャフトをロータから抜き出しているために、当該シェルを有していないロータアッセンブリや、シャフトの腐食によって万一流体圧シリンダの押圧力によって当該シャフトが切断されてしまった場合には、ロータ内シャフトを分離することができない。
【0026】
この点、請求項4に記載の発明においては、上記構成に加えて、さらにプッシャーピンが立設されたプッシャーベースおよびロータ受け部を備えているために、プッシャーピンの先端を鉛直方向の下方に向けてプッシャーベースを昇降板に装着するとともに、当該プッシャーピンの下方に配置されたロータ受け部に、シャフトの軸線方向をプッシャーピンの軸線と一致させてロータを位置決めし、次いで上記流体圧シリンダによって昇降板を降下させることにより、プッシャーピンによって直接シャフトを軸線方向に押圧して、ロータから分離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係るロータ分離装置の一実施形態を示す正面図である。
【図2】図1の側面図である。
【図3】図1の平面図である。
【図4】図1のA部拡大断面図である
【図5】図4の支持部材を示す平面図である。
【図6】図1のB−B線視した平面図である。
【図7】図1のC−C線視した平面図である。
【図8】図4の昇降板にプッシャーベースを取り付けるとともに下方のロータ受け部にロータを取り付けた状態を模式的に示す縦断面図である。
【図9】使用済みのモータから分離された一般的なロータアッセンブリを示すもので、(a)は斜視図、(b)はロータの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1〜図8は、本発明に係るロータ分離装置を、図9に示したロータアッセンブリからロータを分離するための装置に提要した一実施形態を示すものである。なお、図1および図2においては、目視の便宜から周囲の壁部材の一部または全部を省略してある。
このロータ分離装置の架台10は、下部10aが回収箱10bを収納する箱状に形成されており、その上部に基板11が設けられている。また、この基板11の4隅には、それぞれ天板13を支持する複数本(本実施形態においては4本)の支柱12が、各々仮想長方形の角部に位置するように立設されている。
【0029】
そして、これら支柱12に、昇降板14が当該支柱12に沿って上下方向に移動自在に設けられている。この昇降板14は、図6に示すように、底板14aと壁板14bとによって全体として浅底の箱状に形成されたもので、中央部には、装置前方に開口する開口部15が形成されている。
【0030】
また、この昇降板14の底板14aには、開口部15を間に挟んだ両側方において、各々天板13に固定された油圧シリンダ(流体圧シリンダ)16の可動ロッド16aの先端部が、芯ズレおよび平行度の誤差を吸収するためのフローティングジョイント17を介して連結されている。
【0031】
他方、天板13の下面中央部には、昇降板14の最上部位置において、下端部が開口部15の下方に位置するフックベース18が固定されている。このフックベース18は、装置の前面に開口する平断面視コ字状の部材で、当該開口はロータ5が緩く挿入可能となるように、当該ロータ5の直径より僅かに大きな幅寸法に形成されている。そして、このフックベース18の下面に、ロータフック19が設けられている。
【0032】
このロータフック19は、図4および図5に示すように、前面(操作面)側の端部が開口する溝部19aが形成されており、当該溝部19aの他端部は円弧状の壁面19bによって閉じられている。ここで、壁面19bの円弧中心は、一対の油圧シリンダ16における可動ロッド16aの軸線の中間位置であり、その直径は、ロータアッセンブリ1におけるシェル4とロータ5との間のシャフト部分2aの外径寸法より僅かに大きく、かつロータ5の外径よりも小さく設定されている。さらに、溝部19aの開口部分には、先端開口側に向けて漸次幅広となる案内部19cが形成されている。そして、上記フックベース18およびロータフック19により、ロータ5のシェル4側の端面(対向部)を支持する支持部材が構成されている。
【0033】
一方、開口部15を間に挟む昇降板14の底板14aの下面には、各々開口部15側に突出する帯板状の押出プレート20が、その長手方向を図4の紙面の表裏方向に向けて固定されている。ここで、押出プレート20は、ロータアッセンブリ1のロータ5と対向するシェル4の図中上縁部(対向部)を押圧するためのもので、これら押出プレート20の間隔は、上記シェル4の水平方向の外法寸法よりも小さく設定されている。
【0034】
さらに、図6に示すように、ロータフック19の溝部19aの延長線上後方には、プッシャー40がエアシリンダ41によって当該溝部19aに向けて進退自在に設けられている。また、この装置前面側には、エアシリンダ42によって受け板43が昇降板14およびロータフック19の下面側に沿って開口部15側に向け、進退自在に設けられている。
【0035】
なお、図中符号44は、天板13の中央に立設されて窓開閉用のホイール45を昇降自在に支承する支柱であり、当該ホイール45に巻回されたチェーンによって、装置の前面の壁部に形成された開口部48を覆う窓46が当該開口部の両側に設けられた昇降レール47に沿って昇降することにより、上記開口部を開閉するようになっている。また、符号49は、油圧シリンダ16等に作動油を供給するための油圧ユニットであり、符号50は、この装置を自動あるいは手動で運転するための操作盤である。
【0036】
さらに、本実施形態においては、底板14aの下面であって、押出プレート20に対して開口部15からさらに離間した位置に、各々プレートガイド21が固定されている。これらプレートガイド21は、底板14aの下面から垂下する脚部21aの下端部に、各々開口部15側に水平に突出する支承部21bが形成された断面L字状の部材で、押出プレート20と平行に、その長手方向を図4の紙面の表裏方向に向けてボルト22により底板14aに固定されている。そして、これらプレートガイド21間に、プッシャーベース23が着脱自在に取り付け可能になっている。
【0037】
このプッシャーベース23は、図8に示すように、外観略平板状の部材で、その両側部には、上面側が外方に突出する鍔部23aが形成されている。そして、両側の鍔部23aを、各々プレートガイド21の支承部21bに載せた状態で、当該プレートガイド21間に挿入可能になっている。また、このプッシャーベース23の中央部には孔部が形成されており、当該孔部に円柱状のピンホルダ24が固定されている。
【0038】
このピンホルダ24は、ロータフック19の溝部19a内に挿入可能な外径寸法に形成されたもので、その中心部には、プレートガイド21間に装着状態において鉛直方向に延出するプッシャーピン25が一体的に固定されている。このプッシャーピン25は、ロータ5の孔部5aよりも僅かに小径の棒状部材で、その先端は断面形状と同形の平坦面25aに形成されている。
【0039】
他方、図7および図8に示すように、ロータフック19および押出プレート20の下方の基板11には、分離されたシェル4等を下方の収納箱10bに導くための開口部26が形成されるとともに、この開口部26を間に挟んで一対のレール27が装置の前後方向に敷設されている。そして、これらレール27に跨って、可動板28が開口部26を外した退避位置Xと、開口部26の中央位置Yとの間を移動自在に設けられている。さらに、基板11上には、上記退避位置Xと中央位置Yとにおいて、各々可動板28を位置決めするための係止ピン29a、29bが立設されている。
【0040】
また、可動板28の中央には、上下面に貫通する貫通孔28aが穿設されており、この貫通孔28aに有底円筒状のロータ受け30が着脱自在に設けられている。このロータ受け30は、シャフト2を分離するロータ5の外径寸法に応じて、内径寸法が異なる複数の種類のものが用意されており、適宜の寸法のものが貫通孔28aを利用して設置されるようになっている。そして、これらレール27、可動板28およびロータ受け30によって、ロータ受け部が構成されている。また、係止ピン29bは、上方の昇降板14下面のプレートガイド21間にプッシャーベース23を装着した際に、プッシャーピン25の軸線とロータ受け30の中心が一致する位置(上記中央位置Y)において可動板28を係止するように配置されている。
【0041】
そしてさらに、このロータ分離装置においては、ロータ5の支持部材を構成するフックベース18およびロータフック19が非磁性体(以下、本実施形態においては非磁性体として全てSUS304が用いられている。)によって形成されている。また、昇降板14を構成する底板14aおよび壁板14b並びに底板14aに固定されている押出プレート20およびプレートガイド21も、同様に非磁性体によって形成されている。
また、プッシャーベース23、プッシャーピン25、可動板28およびロータ受け30も、非磁性体によって形成されている。
【0042】
これに対して、支柱12においては、表面に露出する外周面に、非磁性体からなるシャフトカバー31、32が設けられている。すなわち、支柱12の下側の所定長さ部分は、当該支柱12の外形寸法とほぼ等しい内径寸法を有する円筒状のシャフトカバー31によって覆われている。そして、支柱12のシャフトカバー31によって覆われている部分よりも上側の部分は、シャフトカバー32によって囲繞されている。
【0043】
このシャフトカバー32は、上端部が昇降板14の下面に固定された円筒状の部材で、その内径寸法がシャフトカバー31の外形寸法よりも幾分大きく設定されている。また、その鉛直方向の長さは、昇降板14が最上部に位置している際に、下端部32aがシャフトカバー31の上端部分を覆う寸法に設定されている。
【0044】
次に、以上の構成からなるロータ分離装置の作用について説明する。
先ず、図4等に示すように、ロータアッセンブリ1のシェル4とロータ5との間のシャフト部分2aを、ロータフック19の溝部19aに挿入し、当該シャフト部分2aを円弧状の壁面19cに当接させた状態で、ロータ5のシェル4側端面(対向部)をロータフック19上に載置する。
【0045】
この際に、当該端面が軸線に対して傾斜している場合や、当該端面にバランサー等の周方向の一部が突出する部材が固定されている結果、段部が形成されている場合には、予め上記傾斜や段部と凹凸係合してこれを吸収するスペーサを上記端面とロータフック19との間に介装する。これにより、ロータアッセンブリ1は、ロータ5の軸線を鉛直方向に向けて、その端面がロータフック19に水平に支持された状態でセットされる。
【0046】
次いで、油圧ユニット49によって油圧シリンダ16に作動油を供給し、昇降板14を降下させる。すると、昇降板14の下面に固定された押出プレート20が、シェル4の上縁部に当接し、さらにこれを鉛直方向、すなわちシャフト2の軸線方向に沿って押圧する。これにより、シャフト2がロータ5の孔部5aから引き抜かれ、ロータ5から一体化したシェル4とともに分離されて回収箱10b内へと落下する。この際に、昇降板14の降下に伴って、支柱12の上部側を覆うシャフトカバー32は、下方のシャフトカバー31を覆いつつ降下する。
【0047】
他方、ロータフック19上に残ったロータ5については、図6に示すように、エアシリンダ42によって受け板43を開口部15側に前進させた後に、エアシリンダ41によってプッシャー40を前方に突出させることにより、上記ロータ5を受け板43上に移動させて回収する。
【0048】
これに対して、上記操作中に、万一シャフト2が切断されることによりシェル4とは分離されたものの、依然としてロータ5の孔部5aにシャフト2の一部が残ってしまった場合や、もともとシェルを有していないロータアッセンブリについて、ロータ5からシャフト2等を分離したい場合には、先ず図8に示すように、プレートガイド21間にプッシャーベース23を、プッシャーピン25の先端25aを鉛直方向の下方に向けて装着する。
【0049】
他方、基板11の開口部26から外れた退避位置Xにある可動板28を、レール27に沿って開口部26側に移動させ、係止ピン29bによって中央位置Yに位置決めする。また、可動板28の孔部28aには、ロータ5の外径に対応した内径を有するロータ受け30を選択して取り付けるとともに、孔部5a内にシャフト2が残存しているロータ5を当該ロータ受け30に設置する。これにより、ロータ5は、そのシャフト2の軸線と、上方のプッシャーピン25の軸線とを一致させた状態で、ロータ受け30にセットされる。
【0050】
そこで次に、油圧シリンダ16に作動油を供給して昇降板14を降下させと、昇降板14の下面に装着したプッシャーベース23も一体に降下し、そのプッシャーピン25がシャフト2に当接して、これをさらに下方に押圧する。これにより、ロータ5の孔部5aからシャフト2が押し出されて分離される。
【0051】
以上のようにして、ロータアッセンブリ1から分離されたロータ5については、別途両端部の押さえ板7を取り外し、磁石用貫通孔5c内の希土類磁石6を取り出して脱磁処理等を行うことにより、貴重な希土類磁石素材としてリサイクルされる。
また、シェル4やシャフト2については、既存のリサイクル工程において、鉄等の金属類としてリサイクルされる。
【0052】
このように、上記構成からなるロータ分離装置によれば、架台10の天板13に固定したロータフック19によってロータ5をシャフト2の軸線方向に支持した状態で、油圧シリンダ16によって昇降板14を降下させて、押出プレート20によりシェル4の上端縁を上記支持方向と反対の鉛直方向に押圧することにより、ロータ5の孔部5aに焼き嵌めによって固定されているシャフト2を、容易にロータから抜き出して分離することができる。
【0053】
この際に、一対の油圧シリンダ16にそれぞれ介装したフローティングジョイント17により、昇降板14の水平を保持しつつ、かつロータフック19を間に挟む一対の押出プレート20によってシェル4の両側を均等に押圧しているために、当該シェル4を確実にシャフト2の軸線に沿って移動させることができる。これにより、少ない押圧力によって円滑にロータ5の孔部5aからシャフト2を抜き出すことが可能になる。
【0054】
しかも、ロータフック19によってロータ5の端面を支持し、押出プレート20によってシェル4の上端縁(対向部)に押圧力を作用させてロータ5から引き抜き、下方の回収箱10bに落下させるとともに、ロータフック19上に残ったロータ5を、プッシャー40によって前方に突出して受け板43上に移動させて回収しているために、希土類磁石が組み込まれたロータ5に変形を生じさせることなく、回収することができる。
【0055】
さらに、上記ロータ分離装置においては、昇降板14の下面に設けたプレートガイド21に着脱自在なプッシャーピン25が立設されたプッシャーベース23を備え、かつ下方の基板11上に、レール27上を移動自在な可動板28および当該可動板28に装着可能なロータ受け30からなるロータ受け部を設けている。
【0056】
このため、シェル4を有していないロータアッセンブリや、シャフト2の腐食等によって万一油圧シリンダ16の押圧力によって当該シャフト2が切断されてその一部が依然としてロータ5内に残ってしまった場合には、プッシャーピン25の先端を鉛直方向の下方に向けてプッシャーベース23をプレートガイド21間に装着するとともに、可動板28を図7のX位置からY位置まで移動させてロータ受け30にロータ5を位置決めした後に、油圧シリンダ16によって昇降板14を降下させることにより、プッシャーピン25によって直接シャフト2を軸線方向に押圧して、ロータ5から分離することができる。
【0057】
この際に、プッシャーピン25の先端を、断面形状と同形の平坦面25aに形成しているために、仮にシャフト2の対向面が平坦面でない場合においても、プッシャーピン25が上記対向面に当接した際に横芯ズレを生じることがなく、均一にシャフト2を軸線方向に押圧して安定的にロータ5から抜き出すことができる。
【0058】
また、上記プッシャーベース23を装着するためのプレートガイド21を、底板14aの下面であって、押出プレート20に対して開口部15からさらに離間した位置に設けているために、図4に見られるように、ロータアッセンブリ1のロータ5を、ロータフック19および押出プレート20によって分離させる際に、当該プレートガイド21が干渉して作業に支障を来す虞もない。
【0059】
加えて、上記分離作業を行うに際して、磁気を帯びたロータ5に近接するフックベース18、ロータフック19、昇降板14の底板14aおよび壁板14b、押出プレート20、プレートガイド21、プッシャーベース23、プッシャーピン25、可動板28およびロータ受け30を、全て非磁性体であるSUS304によって構成するとともに、周囲の支柱12についても、表面に露出する外周面を非磁性体からなるシャフトカバー31、32によって囲繞している。
【0060】
このため、上記分離作業中に、磁気を帯びたロータ5が、周囲の上記フックベース19等に磁気的吸着して、位置ズレ(芯ズレ)を生じる等の弊害を未然に防止することができる。
【0061】
ここで、支柱12については、露出する外周面を非磁性体からなるシャフトカバー31、32によって覆っているために、全体を非磁性体によって構成する場合と比較して、支柱12として汎用の部材を用いることができ、装置コストの低減化を図ることができる。
しかも、昇降板14が昇降する際にも、シャフトカバー32がシャフトカバー31の外周面に沿って昇降することにより、簡易な構造で、常時支柱12の外周面を覆っておくことができる。
【0062】
なお、上記実施形態においては、ロータ5の外径よりもシェル4の外法寸法が大きい一般的なロータアッセンブリ1を対象としていること、および極力ロータ5側を安定的に回収することを目的としていること等から、ロータフック19によってロータ5を支持した状態で、押出プレート20によってシェル4側をシャフト2の軸線方向に押圧する構成についてのみ説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、例えばロータ5の外径よりもシェル4の外法寸法が小さい場合等においては、シェル4側を支持部材によって支持した状態で、ロータ5側を押圧プレートによって押圧する構成を採用することも可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 ロータアッセンブリ
2 シャフト
4 シェル
5 ロータ
5c 孔部
10 架台
12 支柱
13 天板
14 昇降板
16 油圧シリンダ(流体圧シリンダ)
18 フックベース(支持部材)
19 ロータフック(支持部材)
20 押出プレート
23 プッシャーベース
25 プッシャーピン
27 レール
28 可動板
20 ロータ受け
31、32 シャフトカバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
希土類磁石を有するロータの中心に形成された孔部に出力軸となるシャフトが挿入されて嵌め合いにより固定され、当該シャフトの一端部に、上記ロータと間隔をおいてシェルが一体的に設けられたロータアッセンブリから上記ロータを分離する装置であって、
架台に、上記ロータおよび上記シェルの対向部の一方を上記シャフトの軸線方向に支持する支持部材と、上記対向部の他方に当接する押出プレートと、この押出プレートを上記支持部材による支持方向と反対方向に押圧する流体圧シリンダとを設けるとともに、
少なくとも上記ロータの上記対向部と当接する上記支持部材または押出プレートの表面を、非磁性体によって形成したことを特徴とするロータ分離装置。
【請求項2】
上記架台に複数本の支柱を立設し、これら支柱によって支持された天板の下部に上記支持部材を垂設するとともに、上記支柱に、中央部に上記支持部材が挿通可能な開口部が形成された昇降板を上記天板に配設した上記流体圧シリンダによって上下方向に移動自在に設け、当該昇降板に上記支持部材を間に挟んで対向する一対の上記押出プレートを設け、
かつ上記支柱および上記昇降板の少なくとも上記ロータアッセンブリ側に露出する表面を、非磁性体によって形成したことを特徴とする請求項1に記載のロータ分離装置。
【請求項3】
上記支持部材は、上記ロータの上記対向部を支持し、かつ上記押出プレートは、上記シェルの上記対向部に当接するとともに、当該押出プレートの表面も非磁性体によって形成したことを特徴とする請求項1または2に記載のロータ分離装置。
【請求項4】
上記ロータの孔部に挿入可能な外径を有する円柱状のプッシャーピンが立設されるとともに、当該プッシャーピンの先端を鉛直方向の下方に向けて上記昇降板に着脱自在に装着可能なプッシャーベースと、上記プッシャーピンの下方に配置され、上記シャフトの軸線方向を上記プッシャーピンの軸線と一致させて上記ロータを位置決め可能なロータ受け部とを備えてなることを特徴とする請求項2または3に記載のロータ分離装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2013−99019(P2013−99019A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236973(P2011−236973)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【特許番号】特許第5146583号(P5146583)
【特許公報発行日】平成25年2月20日(2013.2.20)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】