説明

ロードローラ用の安全装置

【課題】ロードローラの接触事故を確実に回避することのできる、ロードローラ用の安全装置を提供すること。
【解決手段】ロードローラの前面及び背面のうち少なくとも何れか一方に付設し、所定以上の押圧力でもってロードローラ側に揺動するように構成した可動柵と、前記可動柵の外表面に取り付けて、自己の変形を検知する第1のセンサと、前記可動柵のロードローラ側への揺動を検知する第2のセンサと、前記第1のセンサ又は第2のセンサのうち少なくとも何れか一方の検知信号によってロードローラの駆動を停止する制御装置と、を備えてなる。適宜ロードローラの駆動停止を解除するための解除装置は、運転席から離隔して配置しておくことが望ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロードローラに搭載する安全装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自走式ローラ、転圧ローラ、振動ローラ、トレンチローラなどのロードローラでは、運転者の死角で発生する作業員や障害物への接触事故を防止すべく、種々の技術が提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には、ロードローラの前方又は後方にガード枠を設け、該ガード枠に、警報ブザーに連動したリミットスイッチを設けることにより、運転席からの死角に対して安全を図る接触防止装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】登録実用新案公報第3004721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の接触防止装置では、以下のような問題が生じうる。
(1)ガード枠の接触を検知しても運転者に通報するのみであるため、運転者の認識が遅れた場合には接触事故を回避できないことがある。実際の作業では、走行ラインを整えるべくロードローラの側方に注意を払ったり、後進時には後方に注意を払ったりなど、進行中の作業に応じて運転者が意識を向けている箇所が様々であるため、運転者の認識に頼っていては、接触事故の危険性を完全に排除することが不可能である。
(2)経験の浅い運転者にあっては、注意喚起を受けても却ってパニック状態を引き起こして運転ミスを誘因するなど、警報ブザーによる注意喚起が必ずしも運転者に対して接触事故の回避行動を誘導できるとは限らない。
(3)実際の作業では、路盤の凹凸や作業時の振動などでガード枠がその都度動くと、無闇にリミットスイッチに接触し、無用な通報が頻繁に起こる可能性がある。
【0006】
従って、本願発明は、上記従来の技術と異なる方法でもって、ロードローラの接触事故を確実に回避することのできる、ロードローラ用の安全装置を提供することを目的の一つとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記従来の課題を解決すべくなされた本願の第1発明は、ロードローラに取り付ける安全装置であって、前記ロードローラの前面及び背面のうち少なくとも何れか一方に付設し、所定以上の押圧力でもってロードローラ側に揺動するように構成した可動柵と、前記可動柵の外表面に取り付けて、自己の変形を検知する第1のセンサと、前記可動柵のロードローラ側への揺動を検知する第2のセンサと、前記第1のセンサ又は第2のセンサのうち少なくとも何れか一方の検知信号によってロードローラの駆動を停止する制御装置と、前記ロードローラの駆動停止を解除するための解除装置と、を備えたことを特徴とする、ロードローラ用の安全装置を提供することを要旨とするものである。
【0008】
また、前記発明において、前記可動柵は、ロードローラ本体に枢支される内枠と、該内枠のフレームに摺動して上下に伸縮可能に取り付けられた外枠とで構成しても良い。
また、前記発明において、前記解除装置を運転席から離隔して配置するよう構成してもよい。
また、前記発明において、前記第1のセンサ又は第2のセンサのうち少なくとも何れか一方の検知信号を受信し続けている間、恒常的に作動する警報装置をさらに備えてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本願発明によれば、以下の効果のうち、少なくとも何れか一つを得ることが出来る。
(1)障害物や作業員の接近を検知して強制的にロードローラの駆動を停止するため、運転者の経験に左右されることなく、確実に接触事故を防止することができる。
(2)運転者が判断・処理すべき事項が増えないため、運転者の注意負担が軽減し、本来の作業に集中できる。
(3)障害物や作業員の接近を検知した際に、運転者がパニック状態となって不適当な運転指令を行っても、ロードローラが応答しないため、操作ミスによる事故(二次災害)の拡大を招くことがない。
(4)検知手法の異なるセンサを設けたことで、障害物や作業員の接近が如何なる態様であっても接近の検知率を高めることができ、安全性の確保に寄与する。
(5)作業場所の路盤の状況(不陸の大小、段差の有無)に応じて可動柵の作動高さを自在に調節することができ、路盤の凹凸や、ロードローラ自身の振動などで無闇に可動しない為、無用な通報が頻繁に起こる可能性を排除することができる。また、外枠に障害物や作業員が接触した場合においても、該外枠での検知を確実に内枠に伝達させることができる。
(6)ロードローラの駆動停止を解除するための解除装置を運転席から離隔して配置することにより、障害物や作業員の接近を検知した際に、運転者を確実に運転席から離席させることで、運転者周辺の確認を促したり、運転者自身を落ち着かせることで、安全性をより高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本願発明の安全装置の構成を示す概略図。
【図2】本願発明の可動柵の一例を示す概略図。
【図3】本願発明の安全装置の動作を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、各図面を参照しながら、本願発明に係る作業機械及び走行制御装置の実施例について説明する。
【実施例1】
【0012】
<1>全体構成
図1は、本願発明の安全装置の構成を示す概略図である。
本願発明の安全装置は、可動柵1と、可動柵1の外表面に取り付けた第1のセンサ2と、前記可動柵1の揺動を検知する第2のセンサ3と、前記各センサの検知に応じて、ロードローラの駆動を停止する制御装置4と、前記ロードローラの駆動停止を解除するための解除装置5と、を少なくとも含んで構成する。
以下、各部材の詳細について説明する。
【0013】
<2>可動柵
図2は、可動柵1の一例を示す図である。
可動柵1は、障害物や作業員の接触によってロードローラAに対して前後方向に揺動自在に構成した部材である。また、可動柵1全体としてロードローラAのローラA1部分を覆う程度の大きさであることが好ましい。可動柵1は、上側の横幅方向に揺動軸を設け、ロードローラAに対して前後方向に揺動自在に構成する。
より詳細に説明すると、可動柵1は、ロードローラA本体に枢支される略ロ字型の内枠11と、内枠11のフレームに摺動して上下に伸縮可能に取り付けられた略コ字型の外枠12と、からなる。
本構成によれば、作業場所の路盤の状況(不陸の大小、段差の有無)に応じて可動柵の作動高さを自在に調節することができる。
また、外枠12に障害物や作業員が接触した場合においても、該外枠12での検知を確実に内枠11に伝達させることができる。
【0014】
さらに、可動柵1は路盤への垂線に対してロードローラの外側方向に一定の角度(θ)を有するよう、ロードローラA側からダンパーなどの周知の部材(図示せず)で支持することにより、所定以上の押圧力を受けた場合に、ロードローラA側に揺動するように構成しておくことが望ましい。
また、外枠12は、内枠11に対して上下に摺動自在な機構としたり、内枠11及び外枠12の横幅を調節自在な機構(図示せず)を具備しておくことで、ロードローラのサイズに応じて高さ及び横幅を変更に対応できるように構成してもよい。
【0015】
<3>センサ群
本願発明の安全装置に用いる各種センサ群の詳細について以下説明する。
【0016】
<3.1>第1のセンサ
第1のセンサ2は、可動柵1の外表面に取り付けるセンサであり、例えば感圧式のクッションセンサを用いることができる。クッションセンサは自身の変形を検知するセンサであり、障害物や作業員が接触した際に検知信号を制御装置に送信するよう構成しておく。
第1のセンサ2は、図2に示すように可動柵1の外表面の一部に取り付けてもよいし、可動柵1の外表面全体を覆うように取り付けてもよい。
【0017】
<3.2>第2のセンサ
第2のセンサ3は、可動柵1のロードローラA側への揺動を検知するセンサであり、例えばリミットスイッチを用いることができる。揺動した可動柵1がリミットスイッチに接触した際に、検知信号を制御装置に送信するよう構成する。
リミットスイッチは前記したように可動柵1のロードローラA側への揺動を検知できればよく、取付け位置を特段限定するものではない。
【0018】
<3.3>各センサの組合せ
本実施例のように、検知手段の異なるセンサを複数設けた構成とすれば、障害物や作業員の接近が如何なる態様であっても接近の検知率を高めることができ、安全性の確保に寄与する。
また、本実施例では第1のセンサ2を可動柵1の外表面の一部に設けた感圧式のクッションセンサとし、前記第2のセンサ3をロードローラAの前面を覆う可動柵の揺動を検知するリミットスイッチとしたが、本構成によれば、障害物が作業員や第1のセンサに接触する場合には、第1のセンサ2による検知、及び可動柵1が障害物等に押されて揺動することによる第2のセンサ3による検知が段階的に行われるため、検知の冗長性に優れ、安全性が向上する。
また、安価なリミットスイッチによる第2のセンサ3でもってロードローラAの前面を覆うように構成することで、比較的高価な感圧式のクッションセンサからなる第1のセンサ2を、材料費が過大とならない程度の大きさで適当な箇所に設置することで、費用対効果のバランスを計ることができる。
【0019】
<4>制御装置
制御装置4は、前記第1のセンサ2又は第2のセンサ3のうち少なくとも何れか一方から送信された検知信号によってロードローラAの駆動を強制的に停止するための手段である。
ロードローラAの駆動を停止する具体的な方法としては、駆動源の制御回路の途上に新たに回路を介在させたり、制御プログラムを書き換えたり、ロードローラAが既に備えている安全回路の機能を流用する等、周知の方法を適宜採用することができる。
【0020】
<5>解除装置
解除装置5は、前記ロードローラAの駆動停止を解除するための手段である。
前記ロードローラAの駆動停止を解除する具体的な方法としては、前記制御装置の構成例と同様であるため、説明を省略する。
解除装置5は、図1に示すように運転者が運転席に搭乗している際に触れることのできる空間(行動空間B)の範囲外に設けておくことが望ましく、例えばロードローラAのボンネット前方に配置しておくことができる。当該配置とすることにより、障害物や作業員の接近を検知した際に、運転者を確実に運転席から離席させることで、ロードローラA周辺の安全確認を促したり、運転者自身を落ち着かせることで、安全性をより高めることができる。
【0021】
<6>その他
その他、ロードローラA本体に、本願発明の作動状況を示すためのパトライトや警報ブザーなどの警報装置6を別途設けておいても良い。
警報装置6は、前記第1のセンサ2又は第2のセンサ3のうち少なくとも何れかが障害物や作業員等の接触を検知し続けている間、恒常的に動作するよう構成しておくことができる。
【0022】
<7>動作例
図3は、本願発明の安全装置の動作を示す概略図である。
(1)通常時
通常時において、可動柵1は路盤への垂線に対してロードローラAの外側方向に一定の角度(θ)を設けた位置に配置するよう、ロードローラA側からダンパー13などで支持する。
また、可動柵1の下端と路盤との間には適宜間隔(H)を設け、路盤自体の不陸や縁石などの段差部分に干渉することによって可動柵が揺動しないようにクリアランスを確保しておく。
前記間隔(H)を調整する方法としては、可動柵1を構成する内枠11に対し、外枠12を上下に摺動させたり、可動柵1の支持角度(θ)を調整する方法などがある。
【0023】
(2)第1のセンサによる検知
障害物や作業員がロードローラAに接近すると、基本的には第1のセンサ2に接触することとなる。このとき、制御装置4は、可動柵1の揺動の有無は問わずにロードローラAの駆動を強制的に停止し、障害物や作業員の接触、並びにローラA1への巻き込みなどを防止する。
【0024】
(3)第2のセンサによる検知
第1のセンサ2の大きさによっては、障害物や作業員が第1のセンサ2に接触することなく、ロードローラAに接近する場合がある。
この時、障害物や作業員は、可動柵1に直接接触するため、可動柵1は障害物や作業員から受ける反力でもってロードローラA側に揺動する。当該揺動を第2のセンサ3で検知し、制御装置は、前記第1のセンサ2による検知の有無は問わずにロードローラAの駆動を強制的に停止する。
【0025】
(4)解除動作
ロードローラAの駆動を再開させるためには、解除装置から解除信号を送信すして制御装置によるロードローラの駆動停止を解除する必要がある。
このとき、解除装置を運転者が運転席に搭乗している状態から触れることのできる空間(行動空間B)外に配置しておけば、運転者の離席が義務づけられるため、ロードローラA周辺の安全確認を促したり、運転者自身を落ち着かせることで、より安全性を高めることができる。
【0026】
[解除動作例]
なお、解除信号の受信時に、前記第1のセンサ2又は第2のセンサ3のうち少なくとも何れか一方が、未だ障害物や作業員の接触を検知している場合の処理は、以下の複数の処理のうち、何れかを適宜選択可能に構成しておいてもよい。
【0027】
[解除動作例1]
例えば、第1のセンサ2又は第2のセンサ3による検知信号を、解除装置5による解除信号よりも優先する設定にすれば、第1のセンサ2及び第2のセンサ3が通常時の状態に復帰しない限り、ロードローラAの駆動停止の解除ができない状況を得ることができる。
上記設定は、運転者の誤操作から生じる二次災害を確実に防止したい場合や、第1のセンサ2又は第2のセンサ3に接近した検知要因を容易に除去することができる場合などに有効である。
【0028】
[解除動作例2]
前記解除動作例1とは反対に、解除装置5による解除信号を、第1のセンサ2又は第2のセンサ3による検知信号よりも優先する設定にすれば、第1のセンサ2及び第2のセンサ3が検知状態であっても、ロードローラAの駆動停止の解除が可能な状況を得ることができる。
上記設定は、第1のセンサ2又は第2のセンサ3に接近した検知要因が建物や構造物等であることにより、ロードローラ自体を駆動させない限り各センサの通常時への復帰が困難な場合などに有効である。
【0029】
本願発明に係る制御装置4又は解除装置5は、前記解除動作例1又は解除動作例2をその都度選択できるように構成しておいてもよい。
【0030】
(5)警報装置の作動例
警報装置6は、前記解除装置5の解除信号によるロードローラAの駆動停止の解除動作と独立又は連動して作動するよう構成することもできる。
例えば、前記解除動作例1又は2の何れの場合であっても、第1のセンサ2及び第2のセンサ3が通常時に復帰しない限り、警報装置6は絶えず警報を発生するよう構成しておくことができる。
また、警報装置6の作動とロードローラAの駆動停止・解除の作動とを連動させるよう構成した場合には、第1のセンサ及び第2のセンサが通常時に復帰していない状態であっても、ロードローラの駆動停止の解除動作が行われた時点で警報装置による警報を停止させることもできる。
上記の各構成は、使用現場での要求に応じて適宜設計・変更すればよい。
【符号の説明】
【0031】
1 可動柵
11 内枠
12 外枠
2 第1のセンサ
3 第2のセンサ
4 制御装置
5 解除装置
6 警報装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロードローラに取り付ける安全装置であって、
前記ロードローラの前面及び背面のうち少なくとも何れか一方に付設し、所定以上の押圧力でもってロードローラ側に揺動するように構成した可動柵と、
前記可動柵の外表面に取り付けて、自己の変形を検知する第1のセンサと、
前記可動柵のロードローラ側への揺動を検知する第2のセンサと、
前記第1のセンサ又は第2のセンサのうち少なくとも何れか一方の検知信号によってロードローラの駆動を停止する制御装置と、
前記ロードローラの駆動停止を解除するための解除装置と、
を備えたことを特徴とする、ロードローラ用の安全装置。
【請求項2】
前記可動柵は、ロードローラ本体に枢支される内枠と、該内枠のフレームに摺動して上下に伸縮可能に取り付けられた外枠とで構成したことを特徴とする、請求項1に記載のロードローラ用の安全装置。
【請求項3】
前記解除装置を運転席から離隔して配置したことを特徴とする、請求項1又は2に記載のロードローラ用の安全装置。
【請求項4】
前記第1のセンサ又は第2のセンサのうち少なくとも何れか一方の検知信号を受信し続けている間、恒常的に作動する警報装置をさらに備えたことを特徴とする、請求項1乃至3の何れか1項に記載のロードローラ用の安全装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−149484(P2012−149484A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−10918(P2011−10918)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.パトライト
【出願人】(591075630)株式会社アクティオ (33)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【出願人】(000181354)鹿島道路株式会社 (46)
【Fターム(参考)】