説明

ロープロファイル補綴具

補綴具は、管状グラフトと、裸バネとを含む。裸バネは、複数のストラップを通って管状グラフトと非重複関係を持って接続される。複数のストラップは、グラフトに接着され、裸バネの一部の周囲において延びる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト体腔(例えば、動脈)内への配置に適したグラフト(移植片)に関する。
【背景技術】
【0002】
人体内の通路における異常の治療のために、管状補綴具(例えば、ステント,グラフトおよびステントグラフト(例えば、グラフト材料を含む内側および/または外側カバーリングを有しかつ被覆型ステントと呼ばれこともあるステント))が用いられている。血管用としては、これらのデバイスは、閉塞血管、罹患血管または損傷血管(例えば、狭窄血管または動脈瘤血管)の交換またはバイパスを行うために、しばしば、用いられる。例えば、動脈瘤の治療または分離を行うために、骨格(例えば、1つ以上のステントまたはステント状構造)によって支持された生体適合性グラフト材料(例えば、Dacron(登録商標)織物、ポリテトラフルオロエチレンPTFE、または発泡ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)または他の何らかのポリマー)を含むステントグラフトを利用することが周知である。このようなフレームにより機械的に支持され、前記グラフト材料またはライナーにより、血液バリアが提供される。ステントグラフトを作製するアプローチにおいては、正弦構成を持ち得る1つ以上のステントまたは環状金属ばね要素を織物材料、ePTFE、PTFEまたはDacron(登録商標)織物へと縫い付けるステップが含まれる。他のアプローチにおいては、ステント構造をポリマーと共に電気スピンするステップまたはステント構造をポリマーで浸漬被覆するステップが含まれる。多くのステントグラフトにおいては、ステントグラフトと、当該ステントグラフトの展開先となる血管との間の固定の向上のために、裸バネまたはクラウンステントが一端または両端に取り付けられている。このような裸バネまたはクラウンステントは、アンカーリングデバイスと呼ばれる場合がある。
【0003】
ステントグラフトによる動脈瘤の治療においては、ステントグラフトの一端を血管の罹患部の近位すなわち上流に配置し、かつ、ステントグラフトの他端を前記血管罹患部の遠位すなわち下流に配置するように、ステントグラフト配置が行われることが多い。このようにすることで、ステントグラフトが動脈瘤嚢を覆って延び(またぎ)、前記動脈瘤嚢の近位端および遠位端を超えて、衰弱部の交換またはバイパスを行う。前記グラフト材料は典型的には、血液不浸透性ルーメンを形成することで、動脈瘤の血管内排除を促進する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
典型的には、自己拡張型ステントグラフトは、標的部へ送達される為に、径方向に圧縮され、シース内に保持されている。抑制されたステントグラフトを蛍光ガイドを介して所望の位置に配置した後、例えば、医師がシースを退避させて、ステントグラフトを展開させる。しかし、交差プロファイルが比較的大きなステントグラフトが径方向に圧縮された送達状態にある場合、細い血管系および/または蛇行した血管系へのアクセス能力が限定される場合がある。ステントまたはステントグラフトが径方向に圧縮された状態にあるとき、ステントグラフトと裸バネまたはクラウンステントとの接続部が圧縮されたステントグラフトの嵩を、これによって、付領域での送達システムの断面プロファイルを、望ましくなく増大させることがある。
【0005】
よって、グラフトまたは被覆型ステントと、裸バネまたはクラウンステントとの間の取り付け構造の展開および/または向上の必要が依然として存在する。
【0006】
本発明は、裸バネまたはクラウンステントを有する補綴具の向上に関連する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による一実施形態において、人体内の管腔内への配置に適した補綴具は、第1の端部および第2の端部を有する管状グラフトと、複数の頂部による波状構成を有する裸バネであって、前記裸バネは、前記管状グラフトに対して非重複関係で位置決めされる、裸バネと、前記裸バネを前記管状グラフトの前記第2の端部へと固定する複数のストラップであって、各ストラップは、第1の端部と、第2の端部と、前記第1の端部と前記第2の端部との間に延びる中間部とを有し、前記第1の端部は内面および外面を有し、前記内面は前記グラフトに接着され、前記第2の端部は内面および外面を有し、前記内面は前記グラフトに接着され、前記中間部は、前記裸バネの前記頂部のうちの1つの上に延び、前記裸バネを前記グラフトへと固定するストラップとを備えている。
【0008】
本発明による別の実施形態において、人体内の管腔内への配置に適した補綴具は、第1の端部および第2の端部を有する管状グラフトと、前記グラフトの前記第1の端部に隣接する前記グラフトに固定されたシーリングバネと、複数の頂部による波状構成を有する裸バネであって、前記裸バネは、前記シーリングバネに対して非重複関係で位置決めされる、裸バネと、前記グラフトから延びる複数のストラップであって、前記複数のストラップは、前記裸バネを前記管状グラフトの前記第1の端部へと固定し、各ストラップは、ループ状部と、前記ループ状部から延びる接着部とを有し、前記接着部は内面および外面を有し、前記内面は、前記グラフトの前記第1の端部の領域内の前記グラフトに接着され、前記ループ状部は、前記裸バネの前記頂部のうちの1つの上を延び、前記裸バネを前記グラフトへと固定する、ストラップとを備えている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1A】本発明による1つの補綴具実施形態の側方からの斜視図である。
【図1B】図1Aの実施形態の一部の分解図である。
【図1C】図1Aの一部の拡大図であり、曲線1Cで指定および包囲された部分を示す。
【図1D】図1Cに示すストラップを1D−1D線に沿った断面図である。
【図1E】例えば図1Eに示すような補綴具の一部を1E−1E線に沿った模式図であり、前記ストラップの端部がグラフト材料の外面に沿って位置決めされている。
【図1F】例えば図1Eに示すような補綴具の別の構成の模式図であり、一端がグラフト外面に沿って位置決めされ、他方のストラップ端部が前記グラフトの内壁面に沿って位置決めされる。
【図1G】例えば図1Eに示すような補綴具の別の構成を示し、前記グラフトは2つの材料層を含み、前記ストラップは前記2つの層間に設けられている。
【図1G2】図1G1に示す構成の改変例であり、前記シーリングバネは、前記2つのグラフト材料層間に位置決めされている。
【図1H】例えば図1Eに示すような補綴具の別の構成を示し、前記グラフトは3つの材料層を含み、ストラップ端部は、異なる対の層に沿って位置決めされている。
【図2A】本発明による別の実施形態を示し、複数のストラップが各波状裸バネトラフの周りループ状に設けられる。
【図2B】本発明による別の実施形態を示し、シーリングバネピークが裸バネトラフと整列される。
【図3】本発明による別の実施形態を示し、3つのストラップが各波状裸バネトラフの周りにループ状にされる。
【図4】本発明による別の実施形態を示し、前記ストラップは、前記補綴具の前記長手方向軸と整列される。
【図5A】本発明による別の実施形態を示し、前記グラフト材料の上縁部の一部が前記ストラップを形成する。
【図5B】図5Aの補綴具の断面を5B−5B線に沿った模式図である。
【図6】本発明による別の実施形態を示し、前記グラフト材料の上縁部の一部が、フラップ(または幅広ストラップ)および複数の重複ストラップを形成する。前記複数の重複ストラップは、前記波状裸バネトラフの上にループ状にされる。
【図7】本発明による別の実施形態を示し、複数のストラップは、波状裸バネトラフから延びるタブ内の孔を通ってループ状にされる。
【図8】本発明による別の実施形態を示し、前記グラフトのフラップは、前記波状裸バネトラフのトラフ上に延び、ストラップは、波状裸バネトラフから延びるタブ内の孔を通って延び、複数のストラップが前記タブ内の孔を通ってループ状にされる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら説明する。多様な図面を参照する際、類似の参照符号は類似の要素を指す点が理解されるべきである。
【0011】
本発明による一実施形態は、複数のストラップまたはリボン(例えば、平坦なリボン)を含む。複数のストラップまたはリボンは、裸バネを管状補綴具に固定する。管状補綴具は、グラフトまたはステントグラフト(被覆型ステント)であり、裸バネおよびグラフトは相互に非重複とされ、これにより、管状補綴具および裸バネを重複させることなく補綴具を径方向に圧縮することが可能になる。裸バネは、補綴具の血管内でのアンカーリングを支援し、クラウンステントとも呼ばれる。補綴具が二股ステントグラフトである場合、裸バネは副腎ステントと呼ばれ得る。この構造の多くの利点のうちの1つとして、補綴具送達のために補綴具が径方向に圧縮された際(例えば、送達のために、補綴具と血管壁部との間の固定を向上させるために裸バネが設けられる標的部へとシース内の補綴具が径方向に圧縮された際)、ストラップおよび非重複構成により、取り付けゾーン(すなわち、グラフトの円周領域であり、裸バネをグラフトに固定するようにストラップが位置決めされる場所)の交差プロファイルまたは断面が最小化される点がある。換言すれば、この構造により、補綴具の充填密度が低下し、その結果、よりロープロファイルの送達システムが可能となる。よりロープロファイルの補綴具または送達システムにより、より蛇行した血管系および/またはより細い血管系への血管内アクセスが可能となり、患者の外傷も低減する。ステントグラフトの送達されると、例えば血流を含む種々の力学的要因によって、クラウンステントとクラウンステントが取り付けられたグラフトとの間の接続部に張力が発生することが典型的である。グラフトを貫通する縫合箇所に応力が集中する単一縫合グラフトとは対照的に、グラフト領域にわたって有利に固定されるストラップ構成は、グラフトに沿って力を分散させる。ストラップ構成は、グラフト材料の一領域上に張力が分散されるため、例えば単一の縫合接続と比較して、裸バネがグラフトに取り付けられたグラフト端部におけるカバーリング(グラフト)材料の破断の発生または伝播の可能性を最小化または排除することが可能である。このような力分散型ストラップ構成により、より肉薄のグラフト材料の利用の可能となる。
【0012】
図1Aを参照すると、本発明による1つの補綴具が図示されている。補綴具は、全体が、参照符号100で示されている。補綴具100は、ステントグラフトまたは被覆型ステントである。本実施形態によれば、補綴具100は、グラフトと、複数のステントと、シーリングバネと、裸バネと、裸バネをグラフトへと固定する複数のストラップとを含む。図示の例において、被覆型ステント100は、グラフト102と共に図示されている。グラフト102には、ステント104a、104b、104c、104d、104eおよび104fが固定されている。ステント104a、104b、104c、104d、104eおよび104fは、縫合などの任意の公知の技術を用いてグラフトに固定される。これらのステントは典型的には、当該分野において公知のような波状環状構成であり、これらの波状起伏により、頂部、または交互の頂上部「C」およびトラフ「T」が形成される。しかし、より多数またはより少数のステントも利用可能であり、異なるステント構成またはグラフト支持構造も利用可能であることがが解る。グラフト102は、第1の端部102aおよび第2の端部102bを有する。補綴具100はまた、シーリングバネ106(図1B)を含む。シーリングバネ106も当該分野において公知のような波状環状構成を有しており、これらの波状起伏により、頂部または交互の頂上部106Cおよびトラフ106Tが形成される。同様に、裸バネ108も波状環状構成を有しており、これらの波状起伏により、頂部または交互の頂上部108Cおよびトラフ108Tが形成される。各取り付けストラップ112a、112b、112c、112dおよび112eは、端部と、中間部またはループ状部とを有する。中間部またはループ状部は、端部間に延びる。中間部は、裸バネトラフ上に延びるか、またはループ状になる(例えば、グラフトと重複しないように裸バネをグラフトへと固定するように、裸バネトラフ108Tおよび端部がグラフト102へと固定される)。すなわち、裸バネは、グラフト102の第1の端部102aと重複しない。
【0013】
図1Bは、図1Aの実施形態の一部分の分解図である。これらのステントは、シーリングバネ106について示すようなものと同様の環状構成を持ち得るが、より少数かつより大型の波状起伏を持つことが多い。
【0014】
図1Cを参照して、曲線1Cによって記載および包囲された図1Aの一部の拡大図が示されており、取り付けストラップ112bを示している。図1Aおよび図1Bに示す例示的実施形態において、その他のストラップ(例えば、112a、c、d、e)も、ストラップ112bについて本明細書中以下に記載するような同一の構成、サイズおよび取り付けを有するため、同様の様態でグラフトに接着される。しかし、ストラップは異なる構成および寸法を持ち得ることが理解されるべきである。
【0015】
図1Cに戻ると、取り付けストラップ112bは、第1の端部112b1と、第2の端部112b2と、第1の端部112b1と第2の端部112b2との間に延びる中間部112b3とを有する。第1の端部は、内面と、外面と、長手方向軸「A1」とを有する。第1の端部112b1の内面は、グラフトに対向する第1の端部112b1の全面に沿って、グラフト102(またはグラフト102を形成するグラフト材料)に接着される。グラフト102bに接着された第1の端部112b1の長さは、長手方向軸「A1」に沿って測定された長さ「L1」に対応して一般に図示される。第2の端部112b2は、内面と、外面と、長手方向軸「A2」とを有する。第2の端部112b2の内面は、グラフトに対向する第2の端部112b2の内面全体に沿って、グラフト102(またはグラフト102を形成するグラフト材料)に接着される。グラフト102bに接着された第2の端部112b2の長さは、第1の端部112b1について記載した例と同様でよい。そのため、ストラップ端部112b1および112b2は、接着部と呼ばれる場合がある。L1は典型的には、補綴具のサイズならびにストラップの幅または構成あるいは用いられるストラップの数に応じて、約1cm〜約15cmである。例えば、ストラップは、各裸バネトラフと関連付ける必要は無い。この場合、これらは典型的には、等距離に空間を空けて配置されるように、他の各トラフと関連付けられる。あるいは、例えば図2A、図2Bおよび図3に示すように、複数のストラップを単一の裸バネトラフと関連付けてもよい。
【0016】
図1Dは、線1Dに沿って測られたストラップ112bの幅および厚さを示す。ストラップの幅および厚さは、ストラップの長さ全体にわたって一定であってもよいし、あるいは、ストラップの長さに沿って変化してもよい。幅がストラップの長さ全体にわたって一定でありかつ厚さがストラップの長さ全体にわたって一定である例において、幅は典型的には2mm〜12mmであり、厚さは典型的には0.0254mm〜2.54mmである。よって、ストラップを、長さ全体にわたって一定の厚さを有する平坦なリボンの形態とすることができる。さらに、本明細書中以下に記載するストラップのうちいずれのものも、上述した寸法を持ち得る。また、本明細書中記載の実施形態のうち任意の1つにおけるストラップは全て、同一寸法であってもよいしあるいは異なる寸法であってもよく、上述した様態でグラフトへ取り付けることが可能である点が理解されるべきである。
【0017】
各ストラップの中間部は、裸バネの頂部のうちの1つの上に延び、裸バネをグラフトへと固定する。図1Cに示す例において、中間部112b3は、裸バネ頂上部トラフ108T上に延び、裸バネをグラフトへと固定する。
【0018】
本明細書中に記載のストラップのうちいずれも、任意の公知の技術(例えば、接着、熱成形処理、または圧力または真空処理)を用いてグラフトへと接着または接合することが可能である。例えば、接着剤(例えば、シアノアクリレート)を用いて、ストラップをグラフトに接着するように、ストラップをグラフトに接着することが可能である。あるいは、ストラップおよびグラフトがポリマー材料を含む場合、熱溶解型ポリマーの加熱を用いた熱成形処理を用いてもよい。この場合、熱付加によりストラップおよびグラフトを共に熱溶解させて、ストラップをグラフトに接着する。あるいは、圧力(例えば、真空圧力)を付加することにより、ストラップをグラフトに接着または機械的に連結することも可能である。また、上記アプローチの任意の組み合わせを用いてストラップのグラフトへの接着を行うことが可能であることが理解されるべきである。例えば、圧力および熱を同時に用いて、ストラップのグラフトへの接着を行うことが可能である。当業者にとって明かな他のアプローチも利用可能である。
【0019】
以下の例は、図1Aに示すステントグラフトの組み立てを行う際の1つのアプローチの例示のためのみに記載するものである。上記を鑑みたアプローチおよび当業者にとって明かなアプローチが利用可能であることが理解されるべきである。一例によれば、選択された頂部の周りにループ状に設けられた取り付けストラップを備えた裸バネを管状グラフトの一端に隣接して位置決めする。管状グラフトは、グラフト織物シートをロール状にして管形状にした後、長手方向に隣接する縁部に沿って縫製することにより、得ることができる。その後、シアノアクリレートまたは他の適切な接着剤を用いて、ストラップ端部をグラフトの外側壁部に接着する。その後、シーリングバネを縫合により取り付ける。グラフトへのステントの縫合は、上記組み立ての前に行ってもよいし、上記組み立ての後に行ってもよい。
【0020】
本明細書中に記載のストラップは、任意の適切な材料(例えば、ポリエステル繊維、PTFE(例えば、PTFEテープ)、ePTFE、またはUHMWPE材料)から作製可能である。グラフトは、任意の適切な材料(例えば、ポリエステル、PTFE、ePTFE、UHMWPE、PET、Kevlar(登録商標)繊維、Dacron(登録商標)織物、またはPEEK材料)から作製可能であり、また、単一層ま構造たは2つ以上の層を有する多層構造(例えば、複数層の構造)として形成することが可能である。
【0021】
図1Eを参照して、図1Cに示す補綴具の一部を1E−1E線に沿った様子が図示されている。ストラップの端部112aおよび112bは、図1Cに示すようにグラフト102の外側壁部または表面に沿って位置決めされ、図1Eにおいてストラップ112b1は記載されていない。ストラップは、上述したようにグラフトに接着され、当該分野において公知のような縫合を用いてシーリングバネ106をグラフトに取り付けることができる。図1Fは、図1Eの改変例を示す。図1Fにおいて、グラフト202、シーリングバネ206、裸バネ208、ストラップ端部212b1および212b2、ならびにストラップ中間部212b3は、グラフト102、シーリングバネ106、裸バネ108、ストラップ端部112b1および112b2ならびにストラップ中間部112b3と同一であるが、この改変例において、ストラップ端部212b1は、グラフト102の内側壁部または表面に沿って位置決めされ、ストラップ端部212b2は、グラフト102の外側壁部または表面に沿って位置決めされる。ストラップは、上述したようにグラフトに接着され、当該分野において公知のような縫合を用いて、シーリングバネ106をグラフトに取り付けることが可能である。
【0022】
図1G1に示す別の構成は、以下の点を除いて、図1Eに示す構成と同じである。すなわち、グラフトが多層または積層構造を有し、多層または積層構造は第1の層302aおよび第2の層302bを含み、シーリングバネ106を参照符号306によって示し、裸バネ108を参照符号308によって示し、ストラップ端部112b1および112b2をグラフト層302aとグラフト層302bとの間に位置決めする(ストラップ端部112b1を参照符号312b1によって示し、その他のストラップ端部の図示を省略している)。ストラップ中間部112b3を参照符号312b3によって示す。これらのグラフト層は、グラフト層間のストラップに接着可能であり、例えば熱付加によりストラップをおよびグラフト共に熱溶解してストラップをグラフトに接着することにより、グラフト層を相互に接着することができる。熱付加時において、圧力(例えば、真空圧力)の付加により積層の促進を行いかつ/または熱溶解型および機械的融着型構造を得ることも可能である。図1G2に示す別の構成は、以下の点を除いて、図1G1に示す構造と同じである。すなわち、シーリングバネ306がグラフト層と参照符号306’との間の設けられ、グラフト層302aおよび302bが参照符号302a’および302b’によって示され、裸バネ308が参照符号308’によって示され、ストラップ端部312b1が参照符号312b1’によって示され、その他のストラップ端部が参照符号312b2’によって示され、ストラップ中間部312b3が参照符号312b3’によって示される。このような構造により、図示の部分において、ストラップの位置決め領域としてのさらなる低減が望まれる取り付けゾーンの厚さおよび断面プロファイルの低減が可能となる。グラフト層およびストラップは、図1G1に関連して説明した様態で相互に接着可能であり、その結果、シーリングバネがグラフト層間に埋設される。熱溶解プロセスおよび/または機械的融着プロセスの前に、シーリングバネ波状起伏の間にまたはシーリングバネ波状起伏間に設けられたシーリングバネまたはポリマー分散の周り、またはシーリングバネの周りにポリマー材料を配置することができ、これにより、空間が最小化または排除され、金属シーリングバネ要素のグラフト積層構造内への一体化が促進される。シーリングバネを図1G2に示すようにグラフト層間に融着した場合、シーリングバネをグラフトに固定するための縫合が不要となり、これにより、ステントグラフトの交差プロファイルがさらに低減する。グラフト層は、肉薄の膜層またはメッシュ材料であり得る。
【0023】
図1Hに示す別の積層構成は、以下の点を除いて、図1G1に示す構成と同一である。すなわち、グラフトは、第1の層402aと、第2の層402bと、第3の層402cとを含み、シーリングバネ306は参照符号406によって示され、裸バネ308は参照符号408によって示され、ストラップ端部312b1および312b2は参照符号412b1および412b2によって示され、ストラップ端部412b1はグラフト層302aとグラフト層302bとの間に位置決めされ、ストラップ端部412b2はグラフト層402bとグラフト層402cとの間に位置決めされ、ストラップ中間部312b3は参照符号412b3によって示される。これらのグラフト層およびストラップは、図1G1に関連して説明したような様態で相互に接着可能である。さらなる別の例において、グラフト層およびストラップの接着、接合または融着プロセスの前に、シーリングバネ406をグラフト層402aとグラフト層402bとの間あるいはグラフト層402bとグラフト層402cとの間に位置決めすることができ、これにより、図1G2について説明したのと同様の様態で、シーリングバネを積層構造に一体化させ、補綴具の交差プロファイルを低減させることが可能になる。
【0024】
図2Aは、本発明による別の実施形態を示す。この実施形態において、複数のストラップは、各波状の裸バネトラフの周りでループ状にされる。この実施形態は、以下の点を除いて、5つの裸バネトラフを含む図1A〜図1Cに示す実施形態と同じである。すなわち、各裸バネ頂上部トラフは、一対の取り付けストラップ512bおよび512b’を有し、一対の取り付けストラップ512bおよび512b’はグラフトの内側壁部または表面上に配置され、グラフトは参照符号502によって示され、シーリングバネは参照符号506によって示され、裸バネは参照符号508によって示される。図示の例において、各ストラップからの1つのストラップ端部を点線で示す。これらのストラップ端部を参照符号512b1および512b’2によって示し、その他の2つのストラップ端部は、これらの端部の下側にあり、図示していない。これらのストラップは、中間部またはループ状部512b3および512b’3も含む。中間部またはループ状部512b3および512b’3は、図1Aの実施形態について上述したように、裸バネ頂上部の周りに延びる。ストラップ512bのストラップ端部は、一般に矢印「C」によって示すように、ストラップ512b’のストラップ端部から遠位方向において角度付けされる。本実施形態に示す一対のストラップ構成は、図1E、図1G1、図1G2、図1Fおよび図1Hに示す構成のうち任意のものにおいて採用可能である。
【0025】
図2Bは、本発明による別の実施形態を示す。この実施形態は、下記の点を除いて、図2Aに示す実施形態と同じである。すなわち、裸バネトラフがシーリングバネトラフと整列されている図2A中の配置構成とは対照的に、裸バネトラフ608Tがシーリングバネ頂部608Cと整列されている。その他の点においては、グラフト、取り付けストラップ、裸バネおよびシーリングバネは同じである。よって、本実施形態に示す一対のストラップ構成は、図1E、図1G1、図1G2、図1Fおよび図1Hに示す構成のうち任意のものにおいて採用可能である。
【0026】
図3を参照して、本発明による別の実施形態が図示されている。この実施形態は、下記の点を除いて、図2Aの実施形態と同じである。すなわち、各波状裸バネトラフの周りにループ状に設けられた3つの取り付けストラップ(例えば、取り付けストラップ712b、712b’、および712’’)があり、グラフトは参照符号702によって示され、裸バネは参照符号708によって示され、シーリングバネは存在せず、ステントも存在しない。しかし、本実施形態においてシーリングバネおよび/またはステントを設けてもよい点が理解されるべきである。さらに、本明細書中に記載のその他の実施形態は、管状グラフト、裸バネ、および取り付けストラップのみから構成可能であり、グラフト支持部材(例えば、ステント)は不要であり、シーリング部材も不要であり、あるいは、グラフト支持部材(例えば、ステント)無しでシーリングバネを含んでもよく、あるいは、グラフト支持部材(例えば、ステント)を含みかつシーリングバネを含まなくてもよい。また、3つのストラップによる構成が図1E、図1G1、図1G2、図1Fおよび図1Hに示す構成のうちいずれかに採用可能であることが理解されるべきである。
【0027】
図4を参照すると、本発明による別の実施形態が図示されている。この実施形態において、取り付けストラップは、補綴具の長手方向軸と整列される。ストラップ812a、b、…nは、グラフトに接着され、裸バネ808のトラフの上で延びる。裸バネ808は、裸バネ108と異なる形状で図示されているが、裸バネ108と同一形状にしてもよい。シーリングバネ806もシーリングバネ106と異なる形状で図示されているが、シーリングバネ106と同一形状にしてもよい。この例示的実施形態において、これらの取り付けストラップは、グラフト802の内側壁部または表面上に設けられ、そのうち第1の取り付けストラップはグラフトに接着され、第2取り付けストラップは、第1の取り付けストラップに重複した状態で第1の取り付けストラップ接着される。しかし、取り付け端部対は、例えば図1Fに示すような様態でグラフトの外側壁部および内側壁部に接着してもよい。ストラップ端部L2の長さは、各ストラップ端部とグラフトとの間の接着長さに対応し、L1と同じであり得る。また、長手方向に延びるストラップは、図1E、図1G1、図1G2、図1Fおよび図1Hに示す構成のうちのいずれかにおいて採用可能である点も理解されるべきである。
【0028】
図5Aおよび図5Bを参照すると、本発明による別の実施形態が図示されている。この実施形態において、管状グラフト材料は、ストラップを形成する。グラフト902は、延長部またはフラップ902a、b…nを有する。これらの延長部またはフラップ902a、b…nは、裸バネ頂部トラフの周りでループ状に設けられた後、グラフトに接着される。グラフト材料を管状形態に巻いた後に長手方向シームに沿って縫製した際に延長部がグラフトの一端から延びるように、グラフト材料を切断する。図5Bに示す例において、管状グラフト902は、延長部またはフラップ902bを有する。延長部またはフラップ902bは、ループ状部902b1を有する。ループ状部902b1は、裸バネ頂部の上で周りでループ状となり、接着取り付け部902b2へと移行する。接着取り付け部902b2は、上述したアプローチのうちいずれかを用いてグラフトに固定される。シーリングバネ906も、縫製などの任意の公知の技術を用いてグラフトに固定される。裸バネ908は、シーリングバネ906と重複しないように位置決めされる。1つの改変例において、ステントは、グラフト902に固定可能である。グラフト902は、任意の公知の技術を用いた単一の層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。裸バネ908は裸バネ108と異なる形状で図示されているが、裸バネ108と同一形状にしてもよい。シーリングバネ906もシーリングバネ106と異なる形状で図示されているが、シーリングバネ106と同一形状にしてもよい。
【0029】
図6に示す別の実施形態においては、グラフト材料1002と裸バネ1008との間の組み合わせ接続が提供されている。この場合、図1〜図4について上述したように補強ストラップ1012aおよび1012bを先ず経路設定する。これらの補強ストラップを上述したように位置決めした後、グラフト材料フラップ1002aをストラップの上方においてループ状に設け、図5について上述したようにグラフト本体に固定する。
【0030】
図7および図8は、別の実施形態の別の配置構成を示す。図7において、ステントグラフト1102の波状要素1108のトラフは、その最遠位位置において、内部に孔部を含むタブ1108aを含む。図1〜図4について上述したような補強ストラップ1112aおよび1112bは、これらを通ってループ状にされて、確実な裸バネ保持構造を提供する。図8は、ステントグラフトフラップ1202aを図7に示す補強ストラップ1212aおよび1212bの上方において用いた様子を示す。この場合、図6と同様に、グラフト本体フラップ(単数または複数)は補強ストラップと重複して、補強組み合わせを裸バネ1208からグラフト材料へと提供する。上記実施形態について上述したような固定技術が、当業者にとって理解される。
【0031】
図示していないが、本明細書中に記載の被覆型ステントのうちいずれも、腹部大動脈動脈瘤の治療に適した二股構成を持ち得る。さらに、米国特許出願シリアル番号第11/218,917号(出願日:2005年9月2日、名称:「Endoluminal Prosthesis」、米国特許出願公開第2007/0055347として公開)または米国特許出願番号第11/219,321号(出願日:2005年9月2日、名称:「Endoluminal Prosthesis」、補綴具、米国特許出願公開第2007/0055345として公開)中に記載のシーリングバネまたはステント構成のうちいずれかが利用可能である。
【0032】
本明細書中に記載の任意の一実施形態中に記載の任意の特徴は、本明細書中に記載の他の任意の実施形態または特徴の他の特徴(単数または複数)と組み合わせることが可能である。さらに、本明細書中に開示のデバイスおよび方法の変更および改変が、当業者にとって容易に明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体内の管腔内への配置に適した補綴具であって、
第1の端部および第2の端部を有する管状グラフトと、
複数の頂部による波状構成を有する裸バネであって、前記管状グラフトの円筒本体部に対し非重複関係で位置決めされる裸バネと、
前記裸バネを前記管状グラフトの前記第1の端部へと固定する複数のストラップであって、各ストラップが、第1の端部と、第2の端部と、前記第1の端部と前記第2の端部との間に延びる中間部とを有し、前記第1の端部は内面および外面を有し、前記内面および前記外面のうち少なくとも1つは前記グラフトに接着され、前記第2の端部は内面および外面を有し、前記内面および前記外面のうち少なくとも1つは前記グラフトに接着され、前記中間部は、前記裸バネの遠位部の上方に延び、前記裸バネを前記グラフトに固定する複数のストラップと、備えていることを特徴とする、
補綴具。
【請求項2】
前記ストラップはリボン構成を有し、各第1の端部の幅は2〜12mmである、
請求項1に記載の補綴具。
【請求項3】
本明細書中各第2の端部の幅は2〜12mmである、
請求項2に記載の補綴具。
【請求項4】
各端部は長手方向軸を有し、前記長手方向軸に沿って測定された前記各端部の長さは1〜15cmであり、前記グラフトに接着される、
請求項2に記載の補綴具。
【請求項5】
前記端部は前記グラフトに融着される、
請求項1に記載の補綴具。
【請求項6】
前記端部は前記グラフトに接着される、
請求項1に記載の補綴具。
【請求項7】
シーリングバネをさらに含み、前記シーリングバネは、前記グラフトの第1の端部に隣接する前記グラフトに固定された波状ワイヤを含む、
請求項1に記載の補綴具。
【請求項8】
前記管状グラフトは、少なくとも2つの層を有する積層構造を含み、前記ストラップ端部およびシーリングバネは、前記少なくとも2つの層の間に位置決めされる、
請求項7に記載の補綴具。
【請求項9】
前記第1のグラフト端部と前記第2のグラフト端部との間の前記グラフトに固定された少なくとも1つのステントをさらに含む、
請求項1に記載の補綴具。
【請求項10】
前記グラフトの前記第1の端部に隣接する前記グラフトに固定された波状ワイヤを含むシーリングバネをさらに含む、
請求項9に記載の補綴具。
【請求項11】
前記管状グラフトは少なくとも2つの層を有する積層構造を含み、前記ストラップ端部およびシーリングバネは、前記少なくとも2つの層の間に位置決めされる、
請求項10に記載の補綴具。
【請求項12】
前記ストラップの前記中間部は、前記裸バネを前記グラフトに固定する前記裸バネの前記複数の頂部のうちの1つの上方に延びる、
請求項1に記載の補綴具。
【請求項13】
前記ストラップの前記中間部は、前記裸バネを前記グラフトに固定する前記裸バネから延びるタブを通って延びる、
請求項1に記載の補綴具。
【請求項14】
前記ストラップの前記中間部は、前記裸バネから延びるタブ中の孔を通って延び、前記管状グラフトのフラップも前記裸バネの上方に延び、前記裸バネを前記グラフトに固定する前記グラフト本体に固定される、
請求項13に記載の補綴具。
【請求項15】
人体内の管腔内への配置に適した補綴具であって、
第1の端部および第2の端部を有する管状グラフトであって、複数の延長部フラップを有する管状グラフトと、
複数の頂部による波状構成を有する裸バネであって、前記裸バネは、前記管状グラフトの円筒本体部と非重複関係で位置決めされる裸バネと、を備え、
前記複数の延長部フラップはそれぞれループ状部を有し、前記ループ状部は、裸バネ尖部の上方において前記裸バネ尖部の周りでループ状に配置され、前記グラフトに接着されて、前記裸バネを前記グラフトに固定させる、
ことを特徴とする補綴具。
【請求項16】
前記裸バネを前記管状グラフトの前記第1の端部へとさらに固定する複数のストラップをさらに含み、各ストラップは、第1の端部と、第2の端部と、前記第1の端部と前記第2の端部との間に延びる中間部とを有し、前記第1の端部は内面および外面を有し、前記内面および前記外面のうち少なくとも1つは前記グラフトに接着され、前記第2の端部は内面および外面を有し、前記内面および前記外面のうち少なくとも1つは前記グラフトに接着され、前記中間部は、前記裸バネの遠位部の上、および前記ループ状部の上で延び、前記ループ状部は、前記裸バネ尖部の周りでループ状に設けられ、これにより前記グラフトへの前記裸バネの固定を支援する、
請求項15に記載の補綴具。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図1F】
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【図1G1】
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【図1G2】
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【図1H】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2013−501576(P2013−501576A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−524753(P2012−524753)
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際出願番号】PCT/US2010/044611
【国際公開番号】WO2011/019582
【国際公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(511126109)メドトロニック ヴァスキュラー インコーポレイテッド (12)
【Fターム(参考)】