説明

ロープ清掃装置

【課題】懸垂したロープに付着する不要なグリースを、ロープを走行させて除去するとともに回収も自動化した小型、低コストの清掃装置を提供する。
【解決手段】ベース3上に設けられロープ1の周方向を覆うように配置されロープ1の走行に伴ってロープ軸のまわりに自転するとともにロープ1に付着したグリースを除去するグリース除去手段20と、ベース3に固定されグリース除去手段20の上方に近接して設置されたヘラ部材4を備えたグリース回収手段30とが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、懸垂したロープ表面を清掃する装置に関するものであり、特にロープ表面のグリースを除去するロープ清掃装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ロープ表面のグリースを除去するために、熱風によって加熱されたスクレーパによってグリースをこそぎ落とし、さらに熱風を噴射して融解あるいは軟化したグリースを吹き飛ばす索条の廃潤滑油除去装置が開示されている(例えば、特許文献1)。
また、ロープ撚り線の溝形状に合わせて花びら形に穴の開いた除去具(弾性体)をロープに取り付け、ロープを走行させることで除去具の花びら部がロープ撚り線の溝にガイドされて自転しながらロープ溝部のグリースを掻き取るワイヤロープの清掃治具が開示されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平06−051963号公報
【特許文献2】特開2003−190888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に示されたグリース清掃具では、熱風を噴射するためのコンプレッサの消費電力と、加熱するためのヒータの消費電力が大きくなり、また、コンプレッサを必要とすることから、装置としても大型、コスト高となり、持ち運びしにくくなるという問題点がある。
また、特許文献2に示された技術では除去後のグリースが除去具の上に溜まり、適宜ロープの走行を止めてグリースを手作業で除去しなければならない問題点があった。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、グリース除去手段上のグリースを自動で回収するロープ清掃装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るロープ清掃装置は、懸垂したロープに装着され、ベース上に設けられロープの周方向を覆うように配置され、ロープの走行に伴ってロープ軸のまわりに自転するとともに、ロープに付着したグリースを除去するグリース除去手段と、ベースに固定されグリース除去手段に近接して設置されたヘラ部材を備えたグリース回収手段とが設けられているものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、グリース除去手段が自転することによりロープ表面のグリースを除去するとともに、この除去したグリースをグリース回収手段によって自動的に回収することが出来るので、小型で、低コストのかつ省人化したロープ清掃具を提供することが可能となり、その結果、ロープの長期使用が可能、耐久性が向上するという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施の形態1によるロープ清掃装置を示す側面図である。
【図2】実施の形態1によるグリース除去手段を示す斜視図である。
【図3】実施の形態1によるグリース除去手段をロープに取り付けた状態を示す図である。
【図4】実施の形態1によるベースを示す図である。
【図5】実施の形態1によるロープ清掃装置を示す俯瞰図である。
【図6】実施の形態1によるグリース回収手段を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1を図に基づいて説明する。
図1は、実施の形態1によるロープ清掃装置100を示す側面図である。例えば、エレベータ等に装着されて懸垂するロープ1の全周を覆うように取付台8上に設置され、ロープ1の軸に対して前後、左右に移動可能なように直行する2つのリニアガイド9上に設けられたベース3の上部には、ボール型のローラ15が備えられている。このローラ15の上にグリース除去手段20が取り付けられている。グリース除去手段20に近接してその上部にはヒータ5付のヘラ部材4がベース3に設けられており、ヘラ部材4からはホース6が伸び、このホース6の中を流れる後述の除去グリースがバケツ7に注ぐように設置されている。これらヘラ部材4他で構成するグリース回収手段30は後述する。
【0010】
次に、グリース除去手段20を図2に示す斜視図に基づいて説明する。
グリース除去手段20は、例えばウレタンゴム等の径方向に2分割された弾性体2と、金属性のヒンジブロック10と締付ボルト11とで構成される。
なお、ヒンジブロック10はそれぞれに径方向に2分割された上ヒンジブロック10aと下ヒンジブロック10bとよりなる。弾性体2はロープ1のストランド間の溝形状に合わせて螺旋形状部2aが設けられている。この2分割の弾性体2は前記上、下ヒンジブロック10a、10b間に配置され、軸方向に挟まれ、締付ネジ11が締付材となって2分割の弾性体2はロープ1の周方向を覆うように固定されている。
図3は、グリース除去手段20をロープ1に取り付けた状態を示す斜視図である。ロープ1のストランド間の溝1aと、前述した弾性体2の螺旋形状部2aが相対的に一致するように取り付けてある。
【0011】
図4(a)は、ベース3のロープ1側端部を拡大した上面図を示し、図4(b)にその側面図を示す。ベース3はロープ1に一方向から取り付けられるようにロープ1側の端面にU字形状3aが設けられている。また、ベース3にはローラ15が取り付けられており、グリース除去手段20がこのローラ15上で回転可能な構造となっている。
【0012】
図5に前述した図1のロープ清掃装置100の俯瞰図を示す。
この図5に基づいて、グリース回収手段30を説明する。なおこの説明はロープ1の走行が、下方向の場合について行う。ベース3に設置されたヘラ部材4には、ロープ1の不要なグリースを除去するためのヘラ4aを備え、グリース除去手段20の上部に設けられている。ヘラ部材4には、除去されたグリースを排出するホース6につながるグリース溜め4bが設けられている。
さらにこのヘラ部材4にはヒータ5が設けられており、ヘラ部材4を所定の温度に加熱するとともに、ホース6も加熱するように装着されている。このグリース回収手段30は上記ヘラ部材4、ヒータ5、ホース6、バケツ7で構成される。
なお、図5では図示省略したが回収グリースの飛散防止用のカバーがヘラ部材4全体を覆って設けられている。
【0013】
図6は、ヘラ部材4の要部を拡大した断面図である。ヘラ部材4にヒータ5を差し込むための穴を設けており、その中にニクロム線等で作られたヒータ5を差し込み、ヘラ部材4を加熱する。
【0014】
このような構成によれば、懸垂するロープ1を軸方向下向きに走行させたときロープ1のストランド間の溝1aに合わせて加工された螺旋形状部2aが設けられた弾性体2が、ロープ1とのはめあいにより一体となって下向きに移動しようとするが、ベース3のローラ15に当たりローラ15より下には進むことができない。このとき、弾性体2の螺旋形状部2aがロープ1のストランド間の溝1aにガイドされて軸方向の力が回転方向の力に変わり、弾性体2を挟んで固定するヒンジブロック10を含むグリース除去手段20がロープ1を中心軸として自転する。ロープ1が走行すると、グリース除去手段20が回転運動をしながら螺旋形状部2aによりロープ1のストランドの溝1aにあるグリースを掻き出し除去する。なお、ロープ1は走行すると前後左右に揺れるため、その挙動に合わせてベース3が直行した滑動手段であるリニアガイド9上を前後左右に追従移動することができる。
【0015】
ロープ1から除去されたグリースはグリース除去手段20上に溜まり、グリース除去手段20と共に回転運動する。グリース除去手段20の上部にヒータ5付のヘラ部材4が固定されているため、除去されたグリースがヒータ5により加熱されたヘラ部材4のヘラ4aに接触することで、接触した面を加熱軟化させて削り取ることができる。削り取られたグリースはヘラ部材4のグリース溜め4bに収集される。グリース溜め4b内でヒータ5により更に加熱され、流動可能なまでに軟化したグリースは、ヒータ5付のホース6を通って外部に設けたバケツ7などに排出される。なお、グリース溜め4bとバケツ7との距離が短い等の理由で削り取られた除去グリースが固化する可能性のない場合にはホース6は必ずしもヒータ5を設ける必要はない。
なお、外部に排出するためにヒータ付のホース6を用いたが、ヒータ付の樋であってもよい。樋上をグリースが滑り落ちることによりバケツ7に排出される。
【0016】
なお、図5の動作例では、ロープ1の走行方向を下方向の例を示したが、走行方向が上方向の場合にも適宜適用可能である。この場合ロープ1の上方向走行に対してグリース除去手段20が上昇しないようにする機構が必要である。このような構成を採用することで、懸垂ロープ1の上、下昇時にロープの清掃を行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0017】
1 ロープ、2 弾性体、3 ベース、4 ヘラ部材、5 ヒータ、6 ホース、
20 グリース除去手段、30 グリース回収手段、100 ロープ清掃装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
懸垂したロープに装着されたロープ清掃装置であって、前記ロープ清掃装置には、ベース上に設けられ前記ロープの周方向を覆うように配置され、前記ロープの走行に伴ってロープ軸のまわりに自転するとともに、前記ロープに付着したグリースを除去するグリース除去手段と、前記ベースに固定され前記グリース除去手段に近接して設置されたヘラ部材を備えたグリース回収手段とが設けられていることを特徴とするロープ清掃装置。
【請求項2】
前記グリース除去手段に、前記ロープのストランド間の溝形状に合わせた螺旋形状部を有する弾性体が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のロープ清掃装置。
【請求項3】
前記グリース回収手段は、ヒータが付設された前記ヘラ部材と、該ヘラ部材に設けられたホースとを備えたことを特徴とする請求項1に記載のロープ清掃装置。
【請求項4】
前記ベースには、前記グリース除去手段がロープ軸に対して水平面内で滑動可能とする滑動手段が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のロープ清掃装置。
【請求項5】
前記ホースにはヒータが付設されていることを特徴とする請求項3に記載のロープ清掃装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−194386(P2011−194386A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−67413(P2010−67413)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】