ローラコンベヤ
【課題】搬送過程で物品を適切な間隔で切離す。
【解決手段】
ローラコンベヤでは、ローラの回転速度差による速度の波を搬送方向下流側へ推移させる波動パターンを生成し、該波動パターンに基づき各モータが制御手段により駆動制御される。制御手段により生成される波動パターンは、各波の高さおよび周期を搬送方向下流側へ向かうにつれ夫々比例的に増加する変化域を設け、その変化域において、各波の頂部は波の高さの変化率に対応した比例直線に沿う直線傾斜部Rを形成し、その直線傾斜部Rが各波の高さおよび周期の増加につれて減少する波形を変化させるように設定される。
【解決手段】
ローラコンベヤでは、ローラの回転速度差による速度の波を搬送方向下流側へ推移させる波動パターンを生成し、該波動パターンに基づき各モータが制御手段により駆動制御される。制御手段により生成される波動パターンは、各波の高さおよび周期を搬送方向下流側へ向かうにつれ夫々比例的に増加する変化域を設け、その変化域において、各波の頂部は波の高さの変化率に対応した比例直線に沿う直線傾斜部Rを形成し、その直線傾斜部Rが各波の高さおよび周期の増加につれて減少する波形を変化させるように設定される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ランダムな間隔で到来する物品を、搬送する過程で搬送方向前後へ所定間隔で切離して搬出するローラコンベヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1または特許文献2には、複数のローラを物品の搬送方向へ平行配置したローラコンベヤであって、ランダムな間隔で到来した物品を搬送過程で並べて搬出するものが提案されている。特許文献1および2のローラコンベヤは、各ローラの回転速度を周期的に変化するように変速制御してローラ間で速度差を設けることで、波の原理を応用して物品を搬送方向前後へ切離して所定間隔で並べている。
【特許文献1】特表平5−505587号公報
【特許文献2】特公平7−90848号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記ローラコンベヤでは、物品の摩擦抵抗や物品の重量等の物品の性状によっては、物品とローラとがスリップしてしまうので、特定の物品以外では搬送過程で所望の切離し状態を得ることが困難である。すなわち、ローラコンベヤの搬送過程で物品とローラとのスリップが生じた場合、物品が波に乗り遅れてしまうことで、搬送方向に隣り合う物品が求められる間隔ではなく、この間隔の整数倍に広がった状態で離間する事態が生じていた。
【0004】
すなわち本発明は、波の原理を応用して回転駆動される従来のローラコンベヤに内在する前記問題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、物品の性状に起因する搬送不良の発生を抑制し、物品を良好に切離しできるローラコンベヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本願の請求項1に係る発明のローラコンベヤは、
物品を搬送する過程で搬送方向前後に所定間隔で切離すローラコンベヤにおいて、
物品の搬送方向へ並列に複数配置され、該物品を、その底面を少なくとも2以上で支持して搬送し得るローラと、
各ローラに夫々連繋され、対応のローラを変速回転するモータと、
ローラの回転速度差による速度の波を、搬送方向下流側へ推移させる波動パターンを生成し、該波動パターンに基づき各モータを駆動制御する制御手段とを備え、
前記制御手段により生成される波動パターンは、各波の高さおよび周期を搬送方向下流側へ向かうにつれ夫々比例的に増加する変化域を設け、その変化域において、各波の頂部は波の高さの変化率に対応した比例直線に沿う直線傾斜部を形成し、その直線傾斜部が各波の高さおよび周期の増加につれて減少する波形を変化させるように設定したことを特徴とする。
これによれば、物品の性状に左右されることなく、急な加速、減速による物品同士の干渉や、ローラと物品とのスリップ等により波に乗り遅れて1ピッチ分の空きができたり、1個ずつの分離に際して2個同時に波に乗ってしまうといった不具合を解決することができる。すなわち、ランダムな間隔で到来した物品であっても、搬送方向へ所定間隔で離間した状態に適切に切離すことができる。
【0006】
請求項2に係る発明では、前記制御手段が、前記変化域の搬送方向下流の所定位置から搬送終端までの区間において、前記波形における波の底を搬送方向下流側へ向かうにつれて第2の変化率で比例的に増加して、波を搬送終端速度と同一に収束させる波形により得られる波動パターンを生成し、該波動パターンに基づいて、各モータを駆動制御することを要旨とする。
これによれば、搬送終端においてローラの回転速度が変化しないので、下流側への物品の受渡しを円滑に行なうことができる。
【0007】
請求項3に係る発明では、前記制御手段が、複数の波を搬送方向下流側へ推移する過程で1つに併合する波動パターンを生成し、その波動パターンに基づいて、各モータを駆動制御することを要旨とする。
これによれば、複数個単位で前後に軽く接した物品群単位で所定の搬送間隔となるよう切離すことができる。
【0008】
請求項4に係る発明では、前記制御手段が、正弦曲線を基本とする波形により得られる波動パターンを生成し、その波動パターンに基づいて、各モータを駆動制御することを要旨とする。
これによれば、モータの負荷を軽減し得ると共に、物品をよりスムーズに搬送することができる。
【0009】
請求項5に係る発明では、搬送始端から下流側への所定区間までのローラを、一定速で回転することを要旨とする。
これによれば、安定した物品の切離しに貢献し得る。
【0010】
請求項6に係る発明では、前記制御手段が、前記波形における波の頂部の高さを搬送終端で最大とする波動パターンを生成し、その波動パターンに基づいて、各モータを駆動制御することを要旨とする。
これによれば、物品の搬出速度を下流側のコンベヤと同じ速度に設定して安定した切離し搬送ができる。
【0011】
請求項7に係る発明では、前記制御手段が、前記波形における波の頂部の高さを途中位置で最大とし、搬送終端に向けて低減して搬送終端速度と一致させる波動パターンを生成し、その波動パターンに基づいて、各モータを駆動制御することを要旨とする。
これによれば、物品の性状に合わせて、ローラの回転速度を適宜に変速制御することで、ローラとの間でスリップして搬送し難い物品を、より確実に所定間隔毎に切離すことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るローラコンベヤによれば、物品の性状に左右されることなく、物品同士の干渉や、ローラとのスリップ等により物品が所定間隔で切離されないといった不具合を解決することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明に係るローラコンベヤにつき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。
【実施例】
【0014】
本発明に係るローラコンベヤは、ビスケットやチョコレートの如く比較的軽量な物品や物品同士が接触した際に損傷し易い菓子その他の物品を搬送するのに好適に用いられるものであって、図1〜図3に示すように、実施例に係るローラコンベヤ10は、機台12に対し回転可能に支持された複数のローラ20と、機台12に設置され、各ローラ20を回転する複数のモータ22と、複数のモータ22に電気的に接続され、各モータ22を駆動制御する制御手段28とを備えている。これらのローラ20は、物品の搬送方向へ所定間隔で並列に配置され、該ローラ20に物品30を載置して搬送するよう構成される。ここで、隣り合うローラ20,20の配置間隔および各ローラ20の径は、搬送面に載置して搬送する物品30の底面を少なくとも2以上のローラ20,20で常時支持できるように設定される。
【0015】
前記ローラコンベヤ10は、搬送方向上流側から順に、上流側の搬入コンベヤ50に接続され、搬送始端から下流側への所定区間までの複数のローラ20からなる導入部14、物品30の切離しを行なう切離し部16および搬送終端から下流側に接続され、搬出コンベヤ52に物品30を移送する導出部18に区分けされる(図1参照)。切離し部16では、個々のローラ20がプーリ24やベルト26等の連繋手段を介して連繋された夫々のモータ22により独立して回転駆動される。また、切離し部16の各モータ22は、制御手段28の駆動制御により対応のローラ20の回転速度を変速可能なものが採用される。
【0016】
前記導入部14および導出部18では、複数のローラ20がベルト26で連繋されて1つのモータ22により同時に一定速で回転される。ローラコンベヤ10は、導入部14に搬入コンベヤ50から物品30を一旦受入れて、物品30の速度のばらつきを解消することで、下流側の切離し部16における物品30の整列を良好に行ない得るようになっている。なお、導出部18のローラ20の回転速度は、切離し部16の搬送終端に位置するローラ20の最大回転速度と同一に設定されると共に、下流側の搬出コンベヤ52の走行速度と同一速度に設定される。
【0017】
前記切離し部16では、各ローラ20の回転速度を周期的に増減速するように夫々のモータ22が制御手段28で駆動制御される(図5参照)。制御手段28は、切離し部16において上流から下流に並設された各ローラ20の回転速度差により得られる速度の波からなる波形を搬送方向下流側へ推移させる波動パターンを生成し(図4の実線から破線)、その波動パターンに基づいて、前記夫々のモータ22を周期的に変速制御するよう設定される。
【0018】
本実施例おける波形は、正弦曲線を基本とした態様に設定される。正弦曲線の波形による波動パターンとすることで、各モータ22の回転速度の変化が比較的緩やかになり、各モータ22への負荷を小さくし得ると共に、物品30をスムーズに搬送し得る。図4に示した第1実施例の波形は、切離し部16の後述する第1区域において各波の頂部に設定される直線傾斜部Rを除く部位が正弦曲線とされる。
【0019】
前記切離し部16では、前記複数のローラ20が波動パターンに基づき周期的に変速されるので、高速域と低速域とが搬送方向下流側に推移して、ローラ20に載置した物品30が夫々のローラ20の速度差によって得られる波により下流側に搬送される。そして、切離し部16では、低速域のローラ20に載って低速で搬送されている物品30に対し、高速域のローラ20に載って高速で搬送されている物品30が追いつくことで物品30が1点に集まり、隣り合う物品30が波の頂部間の間隔で切離されて搬送方向に離間される。
【0020】
前記切離し部16は、導入部14の搬送終端から下流側の第1の所定位置までの第1区域と、第1の所定位置から搬送方向下流側の第2の所定位置までの第2区域と、第2の所定位置から導出部18の搬送始端までの第3区域とに区分される。すなわち切離し部16では、各ローラ20の前述した変速制御に加えて、各区域毎に各モータ22を制御手段28で夫々駆動制御することで、各ローラ20が区域毎に適宜に変速制御される(図4参照)。
【0021】
(第1実施例)
第1実施例の波動パターンにおける波形は、第1区域において、各波の高さを搬送方向下流側へ向かうにつれて第1変化率で比例的に増加させる共にそれに対応して周期も比例的に増加するように設定され、この波形による波動パターンに基づいて第1区域に位置するローラ20は周期的に変速制御される(図4参照)。第1実施例では、第1変化率が物品30の搬送方向に沿う寸法と物品30の切離し間隔との比率(物品長/切離し間隔)から設定される。具体的には、第1区域に対応する各ローラ20の最高回転速度が、搬送方向下流側へ向かうにつれて第1変化率で増大するように設定される一方、各ローラ20の最低回転速度は同一となっている。第1区域に位置するローラ20の最低回転速度は、導入部14におけるローラ20の回転速度と同一に設定される。すなわち、切離し部16の第1区域では、波が搬送方向下流側へ移動するのに比例して徐々に高くなって物品30の搬送速度が増速されると共に、隣り合う波の間隔が徐々に離間して搬送方向前後に隣り合う物品30が次第に離間するようになっている。なお、この第1区域の波動パターンにおける波の高さと周期との比率は、比例的に増加する波の高さの変化率が大きい程、波の周期の変化率が小さくなり、波の高さの変化率が小さい程、周期の変化率が大きくなる関係に設定される。
【0022】
また、前記波形は、第1区域(各波の高さおよび周期が増加する区域)を推移する各波の頂部に第1変化率に対応した比例直線に沿う直線傾斜部Rを含み、該直線傾斜部Rが各波の高さおよび周期の増加につれて減少する波動パターンを生成するよう設定されている。この直線傾斜部Rの減少率は、前記第1変化率に反比例するように設定される。これにより、波の頂部における直線傾斜部Rは、搬送方向下流側へ推移するにつれて狭まり、第1区域の搬送終端において直線傾斜部Rが失われて頂部を含む波形が正弦曲線からなる正弦波となる。なおこの波形の頂部は、正弦曲線と前記直線傾斜部Rからなる傾斜直線とを曲線の連続性を得えられるように繋いだものとすればよい。例えば図6(a)に示すように、物品30がランダムな前後間隔一列で到来した場合には、搬送方向に沿う列を保ったまま搬送方向に所定間隔毎に離間させることができる。また、図6(b)に示すように、物品30が幅方向(搬送方向に交差する方向)にもランダムに配置された状態で到来した場合には、幅方向に複数個の物品30を整列させると共に、幅方向に並ぶ物品群単位で搬送方向に所定間隔毎に離間させることができる。
【0023】
このように、切離し部16の第1区域での波動パターンにおける波形の変化について、搬送方向下流側へ向けて波の高さが大きくなるよう設定されているので、搬送方向に並ぶ夫々のローラ20の高速域と低速域との速度差を次第に大きくするから、初期段階では速度差が小さく、物品30を急激に加速または減速しない。すなわち、ローラ20と物品30との間の滑りを抑制して、物品30の搬送不良を回避できると共に、ローラ20の回転速度差に起因する物品30への摺接負荷を抑制できる。それに加えて、搬送方向下流側へ向け波の周期を徐々に大きくする波動パターンとしたから、初期段階において大きな挙動を強いることはなく、物品30が搬送方向上流側から下流側までに並ぶ夫々のローラ20の周期的速度変化によってもたらされる波に乗り遅れることを回避して、物品30の切離し不良を解消し得る。更に、波の頂部には直線傾斜部Rを設けた波形とすることで、波が下流側に向けて移動する際に物品30を直線傾斜部Rに乗せた状態で前進移動することができると共に、傾斜に応じたローラ20間の速度差によって物品30を更に前進力を与えて波の頂部から前方へ移動させることができるので、波に乗り損ねてしまい切離し不良を生じるといった問題を防止できる。また、波の高さが低い段階では、波の頂部に直線傾斜部Rを大きく設けた波形とされているから、低い波でローラ20の速度が低く物品30への前進力が比較的弱い段階においても、波の頂部に乗った物品30に複数のローラ20によって前進力を付与した状態で搬送することができる。そして、波が大きくなるに従って各ローラ20が高速回転となり物品30の搬送力が大きくなるから、直線傾斜部Rを搬送方向下流側へ向かうにつれて減少させるように設定されている。そのようにすることで、効率よく物品30を搬送することができる。
【0024】
図7に示すように、搬送方向前後を長手方向とした物品30を搬送する場合では、特に、この速度の波の頂部が円弧に形成されるのではなく、直線傾斜となるフラット部となるよう設定したので、その直線傾斜部Rの大きさに対応して回転制御される複数のローラ20の下流側ほど高速回転して物品30の前方を引張るように作用し、このような長手の物品30が波の頂部付近に達して搬送される際にも、その搬送姿勢に乱れを生じることはない。従って、長手の物品30の搬送に際して、物品ガイド等で左右から支持する等の整列手段を別途設けることなく、搬送途中で姿勢変化することなく良好に搬送することができる。
【0025】
前記第2区域に至った波形は、第1区域の搬送終端以降において、波の高さおよび周期が一定で推移する波動パターンに設定されている。なお第2区域に配置した夫々のローラ20は、最高回転速度および最低回転速度が第1区域の搬送終端のローラ20と同一に設定される。これにより、搬送方向に離間した物品30は、第2区域における波の頂部間隔に同じ一定間隔で揃えられる。
【0026】
前記第3区域に至った波形は、波の底が搬送方向下流側へ向かうにつれて第2変化率(第2の変化率)で比例的に増加して、波が搬送終端部となる導出部18におけるローラ20の回転速度と同一に収束する波動パターンに設定される。第3区域に配置した各ローラ20は、前記波形に基づいて、最高回転速度が第1区域の搬送終端のローラ20と同一とされる一方、搬送始端から搬送終端までの各ローラ20の最低回転速度値が次第に高い値となるように夫々のローラ20を異なる変速範囲で回転するよう各モータ22が駆動制御される。すなわち、切離し部16では、第1区域の搬送終端から第3区域の搬送終端に亘って波の頂部の高さは同一であって、第3区域の搬送終端で波の高さが最大となっている。これにより、切離し部16から導出部18への物品30の受渡しに際して、ローラ20の回転速度差がないから、回転速度差に起因して物品30をおどらせることなく安定して行なうことができる。なお第3区域では、波の周期は一定となる波動パターンに設定される。
【0027】
第1実施例のローラコンベヤ10によれば、物品30の形状、サイズ、その他の特性を含む性状に応じて前述した適切な波動パターンを与えて各ローラ20の回転を周期的に変速制御することにより、物品30の長短、物品30の重量、物品30の底面の形状、物品30の底面の摩擦抵抗等の物品30の性状の相違に左右されることなく、物品30を搬送方向に所定間隔毎で切離すことができる。また、波に乗り遅れることなく順次搬送されるようにした波形を得る波動パターンとしたから、物品30が滞って物品同士が接触することを回避でき、物品30の損傷を抑制し得る。そして、物品30,30同士が搬送方向に所定間隔以上離間してしまったり、1列で到来した物品30が幅方向に並んでしまう不具合を回避し得る。更に、搬送方向が長手方向を向く物品30の搬送過程で向きを乱すことなく移動することができるので、ローラコンベヤ10に物品の姿勢を維持するガイドを設ける必要はなく、装置を簡易にできる。
【0028】
(第2実施例)
図8は、第2実施例のローラコンベヤ10の波動パターンを示す図であって、波が推移する過程を図8(a)から図8(d)として示す。本例では、複数(図示では隣り合う2つ)の波が搬送方向下流側へ推移する過程で1つの波に併合する波動パターンに基づいて、制御手段28によって個々のローラ20を周期的に変速するよう夫々のモータ22を駆動制御する。具体的には、前記波動パターンに基づいて各ローラ20を変速制御することで、切離し部16の第2区域および第3区域に設定された波形における波の底に対応する各ローラ20の最低回転速度が適宜変化率で徐々に大きくなり(図8(a)〜(c))、最終的に最大回転速度に一致する(図8(d))。これにより、波の底を挟む波の頂部の間隔で搬送されている隣り合う物品30,30が、前記波の底の上昇につれて近接して、波の底が隣り合う波の頂部に収束した際に搬送方向に沿って並んで軽く接した状態となる(図9参照)。このように、本例の波動パターンでは、1つまたは複数間隔おきの波の底が波の頂部に収束するように設定されている。すなわち、図示の如く波の底を1つおきに波の頂部に収束させる波動パターンとすることで、搬送方向に沿って接した状態の2つの物品30,30を一群として、これらの物品群単位で搬送方向へ所定間隔毎に離間することができる(図9参照)。このように、夫々のローラ20の回転速度を周期的に変速制御する波動パターンを生成することによって、搬送方向前後に軽く接した複数の物品30単位毎で簡単に切離した状態で搬送することができる。
【0029】
なお本例では、第2区域におけるローラ20の最大回転速度を導出部18より高速に設定すると共に、第1区域において波の底を導入部14より低くした後、搬送方向下流側へ向かうにつれて波の底を持上げて第1区域の搬送終端において導入部14と一致するように設定され、また波の頂部の高さは、第1区域の搬送終端で最大となり、第2区域を同一高さで推移させた後、第3区域において搬送方向下流側へ向かうにつれて低減して、搬送終端速度と同一とされる波動パターンが設定される。このように、第2区域において搬送終端速度より高速になるよう波の頂部の高さを設定する波動パターンに基づいて、夫々のローラ20を周期的に変速制御することで、ローラ20に対して滑り易い物品30を確実に搬送するのに有効である。なお、本例の波動パターンにおける第1区域から第3区域に至る波形における波の頂部は第1実施例と同様にその高さが変化するようになっていてもよい。また、波の底部の高さについても第1実施例と同様に第1区域において搬送始端から一定の高さになっているように設定されたものであってもよい。
【0030】
(変更例)
本願は前述した実施例の構成および制御に限定されるものではなく、その他の構成および制御を適宜に採用することができる。
(1)図10に示すように、第1区域の搬送終端(搬送の途中位置)から第3区域の搬送終端へ向かうにつれて波の頂部の高さを低減する波動パターンに基づいて、各ローラ20を周期的に変速制御してもよい。すなわち、第1区域の搬送方向下流側に配置した各ローラ20の最高回転速度が、第1区域の搬送終端から下流側に向かうにつれて減少し、第1区域の搬送終端に位置するローラ20の最高回転速度が、ローラコンベヤ10の搬送始端から終端までの間における最高値となる。第1実施例では、ローラコンベヤ10の搬送始端部の速度と搬送終端部の速度との関係で第1区域の変化率を物品長/切離し間隔として設定して搬送終端の速度を最高値とした。これに対し本例では、前記第2実施例と同様に物品30がローラ20とスリップして所望の切離し間隔に達しない場合等において変化率を第1変化率より大きく設定すると共に、予め規定された搬送終端速度まで減速するようにした波動パターンを設定している。このように、物品30の性状に合わせて、各ローラ20の回転速度を適宜に変速制御することで、ローラとの間でスリップして搬送し難い物品30を、より確実に所定間隔で切離すことができる。
(2)実施例では、ローラコンベヤ10を導入部14、切離し部16および導出部18から構成したが、少なくとも切離し部16を有していれば導入部14および導出部18の何れか一方または両方を省略することができる。
(3)実施例では、切離し部を3つに区分したが、第1区域を少なくとも有していれば、第2区域および第3区域の一方または両方を省略することができる。
(4)波動パターンにおける波形は、実施例の正弦曲線を基本としたものに限られるものではなく、ローラ20の回転速度の高速域と低速域との繰返しが搬送方向下流側へ周期的に推移する態様であれば、図11に示す如く台形波と三角波とが合成されたものであってもよい。すなわち、第1区域において波の頂部に設けられる第1変化率に沿わせた直線傾斜部Rにより波が台形状となると共に、第2区域において最高回転速度を頂点とする三角形状とした波動パターンに基づいて、各モータ22を周期的に変速するよう駆動制御して各ローラ20を変速する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の好適な実施例に係るローラコンベヤを示す平面図である。
【図2】実施例のローラコンベヤを示す側面図である。
【図3】図2のA矢視図である。
【図4】第1実施例のローラコンベヤの波動パターンおよびその波形を示す説明図である。
【図5】第1実施例において、代表的なローラの回転速度の変化を示す説明図である。
【図6】第1実施例のローラコンベヤにおいて、物品の搬送状況を示す概略図であって、(a)は一列の物品を切離す場合を示し、(b)はランダムに並んだ物品を切離す場合を示す。
【図7】第1実施例のローラコンベヤにおいて、長尺な物品の搬送状況を示す概略図である。
【図8】第2実施例のローラコンベヤの波動パターンおよびその波形を示す説明図である。
【図9】第2実施例のローラコンベヤにおいて、物品の搬送状況を示す概略図である。
【図10】変更例のローラコンベヤの波動パターンおよびその波形を示す説明図である。
【図11】別の変更例のローラコンベヤの波動パターンおよびその波形を示す説明図である。
【符号の説明】
【0032】
20 ローラ,22 モータ,28 制御手段,30 物品,R 直線傾斜部
【技術分野】
【0001】
この発明は、ランダムな間隔で到来する物品を、搬送する過程で搬送方向前後へ所定間隔で切離して搬出するローラコンベヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1または特許文献2には、複数のローラを物品の搬送方向へ平行配置したローラコンベヤであって、ランダムな間隔で到来した物品を搬送過程で並べて搬出するものが提案されている。特許文献1および2のローラコンベヤは、各ローラの回転速度を周期的に変化するように変速制御してローラ間で速度差を設けることで、波の原理を応用して物品を搬送方向前後へ切離して所定間隔で並べている。
【特許文献1】特表平5−505587号公報
【特許文献2】特公平7−90848号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記ローラコンベヤでは、物品の摩擦抵抗や物品の重量等の物品の性状によっては、物品とローラとがスリップしてしまうので、特定の物品以外では搬送過程で所望の切離し状態を得ることが困難である。すなわち、ローラコンベヤの搬送過程で物品とローラとのスリップが生じた場合、物品が波に乗り遅れてしまうことで、搬送方向に隣り合う物品が求められる間隔ではなく、この間隔の整数倍に広がった状態で離間する事態が生じていた。
【0004】
すなわち本発明は、波の原理を応用して回転駆動される従来のローラコンベヤに内在する前記問題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、物品の性状に起因する搬送不良の発生を抑制し、物品を良好に切離しできるローラコンベヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本願の請求項1に係る発明のローラコンベヤは、
物品を搬送する過程で搬送方向前後に所定間隔で切離すローラコンベヤにおいて、
物品の搬送方向へ並列に複数配置され、該物品を、その底面を少なくとも2以上で支持して搬送し得るローラと、
各ローラに夫々連繋され、対応のローラを変速回転するモータと、
ローラの回転速度差による速度の波を、搬送方向下流側へ推移させる波動パターンを生成し、該波動パターンに基づき各モータを駆動制御する制御手段とを備え、
前記制御手段により生成される波動パターンは、各波の高さおよび周期を搬送方向下流側へ向かうにつれ夫々比例的に増加する変化域を設け、その変化域において、各波の頂部は波の高さの変化率に対応した比例直線に沿う直線傾斜部を形成し、その直線傾斜部が各波の高さおよび周期の増加につれて減少する波形を変化させるように設定したことを特徴とする。
これによれば、物品の性状に左右されることなく、急な加速、減速による物品同士の干渉や、ローラと物品とのスリップ等により波に乗り遅れて1ピッチ分の空きができたり、1個ずつの分離に際して2個同時に波に乗ってしまうといった不具合を解決することができる。すなわち、ランダムな間隔で到来した物品であっても、搬送方向へ所定間隔で離間した状態に適切に切離すことができる。
【0006】
請求項2に係る発明では、前記制御手段が、前記変化域の搬送方向下流の所定位置から搬送終端までの区間において、前記波形における波の底を搬送方向下流側へ向かうにつれて第2の変化率で比例的に増加して、波を搬送終端速度と同一に収束させる波形により得られる波動パターンを生成し、該波動パターンに基づいて、各モータを駆動制御することを要旨とする。
これによれば、搬送終端においてローラの回転速度が変化しないので、下流側への物品の受渡しを円滑に行なうことができる。
【0007】
請求項3に係る発明では、前記制御手段が、複数の波を搬送方向下流側へ推移する過程で1つに併合する波動パターンを生成し、その波動パターンに基づいて、各モータを駆動制御することを要旨とする。
これによれば、複数個単位で前後に軽く接した物品群単位で所定の搬送間隔となるよう切離すことができる。
【0008】
請求項4に係る発明では、前記制御手段が、正弦曲線を基本とする波形により得られる波動パターンを生成し、その波動パターンに基づいて、各モータを駆動制御することを要旨とする。
これによれば、モータの負荷を軽減し得ると共に、物品をよりスムーズに搬送することができる。
【0009】
請求項5に係る発明では、搬送始端から下流側への所定区間までのローラを、一定速で回転することを要旨とする。
これによれば、安定した物品の切離しに貢献し得る。
【0010】
請求項6に係る発明では、前記制御手段が、前記波形における波の頂部の高さを搬送終端で最大とする波動パターンを生成し、その波動パターンに基づいて、各モータを駆動制御することを要旨とする。
これによれば、物品の搬出速度を下流側のコンベヤと同じ速度に設定して安定した切離し搬送ができる。
【0011】
請求項7に係る発明では、前記制御手段が、前記波形における波の頂部の高さを途中位置で最大とし、搬送終端に向けて低減して搬送終端速度と一致させる波動パターンを生成し、その波動パターンに基づいて、各モータを駆動制御することを要旨とする。
これによれば、物品の性状に合わせて、ローラの回転速度を適宜に変速制御することで、ローラとの間でスリップして搬送し難い物品を、より確実に所定間隔毎に切離すことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るローラコンベヤによれば、物品の性状に左右されることなく、物品同士の干渉や、ローラとのスリップ等により物品が所定間隔で切離されないといった不具合を解決することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明に係るローラコンベヤにつき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。
【実施例】
【0014】
本発明に係るローラコンベヤは、ビスケットやチョコレートの如く比較的軽量な物品や物品同士が接触した際に損傷し易い菓子その他の物品を搬送するのに好適に用いられるものであって、図1〜図3に示すように、実施例に係るローラコンベヤ10は、機台12に対し回転可能に支持された複数のローラ20と、機台12に設置され、各ローラ20を回転する複数のモータ22と、複数のモータ22に電気的に接続され、各モータ22を駆動制御する制御手段28とを備えている。これらのローラ20は、物品の搬送方向へ所定間隔で並列に配置され、該ローラ20に物品30を載置して搬送するよう構成される。ここで、隣り合うローラ20,20の配置間隔および各ローラ20の径は、搬送面に載置して搬送する物品30の底面を少なくとも2以上のローラ20,20で常時支持できるように設定される。
【0015】
前記ローラコンベヤ10は、搬送方向上流側から順に、上流側の搬入コンベヤ50に接続され、搬送始端から下流側への所定区間までの複数のローラ20からなる導入部14、物品30の切離しを行なう切離し部16および搬送終端から下流側に接続され、搬出コンベヤ52に物品30を移送する導出部18に区分けされる(図1参照)。切離し部16では、個々のローラ20がプーリ24やベルト26等の連繋手段を介して連繋された夫々のモータ22により独立して回転駆動される。また、切離し部16の各モータ22は、制御手段28の駆動制御により対応のローラ20の回転速度を変速可能なものが採用される。
【0016】
前記導入部14および導出部18では、複数のローラ20がベルト26で連繋されて1つのモータ22により同時に一定速で回転される。ローラコンベヤ10は、導入部14に搬入コンベヤ50から物品30を一旦受入れて、物品30の速度のばらつきを解消することで、下流側の切離し部16における物品30の整列を良好に行ない得るようになっている。なお、導出部18のローラ20の回転速度は、切離し部16の搬送終端に位置するローラ20の最大回転速度と同一に設定されると共に、下流側の搬出コンベヤ52の走行速度と同一速度に設定される。
【0017】
前記切離し部16では、各ローラ20の回転速度を周期的に増減速するように夫々のモータ22が制御手段28で駆動制御される(図5参照)。制御手段28は、切離し部16において上流から下流に並設された各ローラ20の回転速度差により得られる速度の波からなる波形を搬送方向下流側へ推移させる波動パターンを生成し(図4の実線から破線)、その波動パターンに基づいて、前記夫々のモータ22を周期的に変速制御するよう設定される。
【0018】
本実施例おける波形は、正弦曲線を基本とした態様に設定される。正弦曲線の波形による波動パターンとすることで、各モータ22の回転速度の変化が比較的緩やかになり、各モータ22への負荷を小さくし得ると共に、物品30をスムーズに搬送し得る。図4に示した第1実施例の波形は、切離し部16の後述する第1区域において各波の頂部に設定される直線傾斜部Rを除く部位が正弦曲線とされる。
【0019】
前記切離し部16では、前記複数のローラ20が波動パターンに基づき周期的に変速されるので、高速域と低速域とが搬送方向下流側に推移して、ローラ20に載置した物品30が夫々のローラ20の速度差によって得られる波により下流側に搬送される。そして、切離し部16では、低速域のローラ20に載って低速で搬送されている物品30に対し、高速域のローラ20に載って高速で搬送されている物品30が追いつくことで物品30が1点に集まり、隣り合う物品30が波の頂部間の間隔で切離されて搬送方向に離間される。
【0020】
前記切離し部16は、導入部14の搬送終端から下流側の第1の所定位置までの第1区域と、第1の所定位置から搬送方向下流側の第2の所定位置までの第2区域と、第2の所定位置から導出部18の搬送始端までの第3区域とに区分される。すなわち切離し部16では、各ローラ20の前述した変速制御に加えて、各区域毎に各モータ22を制御手段28で夫々駆動制御することで、各ローラ20が区域毎に適宜に変速制御される(図4参照)。
【0021】
(第1実施例)
第1実施例の波動パターンにおける波形は、第1区域において、各波の高さを搬送方向下流側へ向かうにつれて第1変化率で比例的に増加させる共にそれに対応して周期も比例的に増加するように設定され、この波形による波動パターンに基づいて第1区域に位置するローラ20は周期的に変速制御される(図4参照)。第1実施例では、第1変化率が物品30の搬送方向に沿う寸法と物品30の切離し間隔との比率(物品長/切離し間隔)から設定される。具体的には、第1区域に対応する各ローラ20の最高回転速度が、搬送方向下流側へ向かうにつれて第1変化率で増大するように設定される一方、各ローラ20の最低回転速度は同一となっている。第1区域に位置するローラ20の最低回転速度は、導入部14におけるローラ20の回転速度と同一に設定される。すなわち、切離し部16の第1区域では、波が搬送方向下流側へ移動するのに比例して徐々に高くなって物品30の搬送速度が増速されると共に、隣り合う波の間隔が徐々に離間して搬送方向前後に隣り合う物品30が次第に離間するようになっている。なお、この第1区域の波動パターンにおける波の高さと周期との比率は、比例的に増加する波の高さの変化率が大きい程、波の周期の変化率が小さくなり、波の高さの変化率が小さい程、周期の変化率が大きくなる関係に設定される。
【0022】
また、前記波形は、第1区域(各波の高さおよび周期が増加する区域)を推移する各波の頂部に第1変化率に対応した比例直線に沿う直線傾斜部Rを含み、該直線傾斜部Rが各波の高さおよび周期の増加につれて減少する波動パターンを生成するよう設定されている。この直線傾斜部Rの減少率は、前記第1変化率に反比例するように設定される。これにより、波の頂部における直線傾斜部Rは、搬送方向下流側へ推移するにつれて狭まり、第1区域の搬送終端において直線傾斜部Rが失われて頂部を含む波形が正弦曲線からなる正弦波となる。なおこの波形の頂部は、正弦曲線と前記直線傾斜部Rからなる傾斜直線とを曲線の連続性を得えられるように繋いだものとすればよい。例えば図6(a)に示すように、物品30がランダムな前後間隔一列で到来した場合には、搬送方向に沿う列を保ったまま搬送方向に所定間隔毎に離間させることができる。また、図6(b)に示すように、物品30が幅方向(搬送方向に交差する方向)にもランダムに配置された状態で到来した場合には、幅方向に複数個の物品30を整列させると共に、幅方向に並ぶ物品群単位で搬送方向に所定間隔毎に離間させることができる。
【0023】
このように、切離し部16の第1区域での波動パターンにおける波形の変化について、搬送方向下流側へ向けて波の高さが大きくなるよう設定されているので、搬送方向に並ぶ夫々のローラ20の高速域と低速域との速度差を次第に大きくするから、初期段階では速度差が小さく、物品30を急激に加速または減速しない。すなわち、ローラ20と物品30との間の滑りを抑制して、物品30の搬送不良を回避できると共に、ローラ20の回転速度差に起因する物品30への摺接負荷を抑制できる。それに加えて、搬送方向下流側へ向け波の周期を徐々に大きくする波動パターンとしたから、初期段階において大きな挙動を強いることはなく、物品30が搬送方向上流側から下流側までに並ぶ夫々のローラ20の周期的速度変化によってもたらされる波に乗り遅れることを回避して、物品30の切離し不良を解消し得る。更に、波の頂部には直線傾斜部Rを設けた波形とすることで、波が下流側に向けて移動する際に物品30を直線傾斜部Rに乗せた状態で前進移動することができると共に、傾斜に応じたローラ20間の速度差によって物品30を更に前進力を与えて波の頂部から前方へ移動させることができるので、波に乗り損ねてしまい切離し不良を生じるといった問題を防止できる。また、波の高さが低い段階では、波の頂部に直線傾斜部Rを大きく設けた波形とされているから、低い波でローラ20の速度が低く物品30への前進力が比較的弱い段階においても、波の頂部に乗った物品30に複数のローラ20によって前進力を付与した状態で搬送することができる。そして、波が大きくなるに従って各ローラ20が高速回転となり物品30の搬送力が大きくなるから、直線傾斜部Rを搬送方向下流側へ向かうにつれて減少させるように設定されている。そのようにすることで、効率よく物品30を搬送することができる。
【0024】
図7に示すように、搬送方向前後を長手方向とした物品30を搬送する場合では、特に、この速度の波の頂部が円弧に形成されるのではなく、直線傾斜となるフラット部となるよう設定したので、その直線傾斜部Rの大きさに対応して回転制御される複数のローラ20の下流側ほど高速回転して物品30の前方を引張るように作用し、このような長手の物品30が波の頂部付近に達して搬送される際にも、その搬送姿勢に乱れを生じることはない。従って、長手の物品30の搬送に際して、物品ガイド等で左右から支持する等の整列手段を別途設けることなく、搬送途中で姿勢変化することなく良好に搬送することができる。
【0025】
前記第2区域に至った波形は、第1区域の搬送終端以降において、波の高さおよび周期が一定で推移する波動パターンに設定されている。なお第2区域に配置した夫々のローラ20は、最高回転速度および最低回転速度が第1区域の搬送終端のローラ20と同一に設定される。これにより、搬送方向に離間した物品30は、第2区域における波の頂部間隔に同じ一定間隔で揃えられる。
【0026】
前記第3区域に至った波形は、波の底が搬送方向下流側へ向かうにつれて第2変化率(第2の変化率)で比例的に増加して、波が搬送終端部となる導出部18におけるローラ20の回転速度と同一に収束する波動パターンに設定される。第3区域に配置した各ローラ20は、前記波形に基づいて、最高回転速度が第1区域の搬送終端のローラ20と同一とされる一方、搬送始端から搬送終端までの各ローラ20の最低回転速度値が次第に高い値となるように夫々のローラ20を異なる変速範囲で回転するよう各モータ22が駆動制御される。すなわち、切離し部16では、第1区域の搬送終端から第3区域の搬送終端に亘って波の頂部の高さは同一であって、第3区域の搬送終端で波の高さが最大となっている。これにより、切離し部16から導出部18への物品30の受渡しに際して、ローラ20の回転速度差がないから、回転速度差に起因して物品30をおどらせることなく安定して行なうことができる。なお第3区域では、波の周期は一定となる波動パターンに設定される。
【0027】
第1実施例のローラコンベヤ10によれば、物品30の形状、サイズ、その他の特性を含む性状に応じて前述した適切な波動パターンを与えて各ローラ20の回転を周期的に変速制御することにより、物品30の長短、物品30の重量、物品30の底面の形状、物品30の底面の摩擦抵抗等の物品30の性状の相違に左右されることなく、物品30を搬送方向に所定間隔毎で切離すことができる。また、波に乗り遅れることなく順次搬送されるようにした波形を得る波動パターンとしたから、物品30が滞って物品同士が接触することを回避でき、物品30の損傷を抑制し得る。そして、物品30,30同士が搬送方向に所定間隔以上離間してしまったり、1列で到来した物品30が幅方向に並んでしまう不具合を回避し得る。更に、搬送方向が長手方向を向く物品30の搬送過程で向きを乱すことなく移動することができるので、ローラコンベヤ10に物品の姿勢を維持するガイドを設ける必要はなく、装置を簡易にできる。
【0028】
(第2実施例)
図8は、第2実施例のローラコンベヤ10の波動パターンを示す図であって、波が推移する過程を図8(a)から図8(d)として示す。本例では、複数(図示では隣り合う2つ)の波が搬送方向下流側へ推移する過程で1つの波に併合する波動パターンに基づいて、制御手段28によって個々のローラ20を周期的に変速するよう夫々のモータ22を駆動制御する。具体的には、前記波動パターンに基づいて各ローラ20を変速制御することで、切離し部16の第2区域および第3区域に設定された波形における波の底に対応する各ローラ20の最低回転速度が適宜変化率で徐々に大きくなり(図8(a)〜(c))、最終的に最大回転速度に一致する(図8(d))。これにより、波の底を挟む波の頂部の間隔で搬送されている隣り合う物品30,30が、前記波の底の上昇につれて近接して、波の底が隣り合う波の頂部に収束した際に搬送方向に沿って並んで軽く接した状態となる(図9参照)。このように、本例の波動パターンでは、1つまたは複数間隔おきの波の底が波の頂部に収束するように設定されている。すなわち、図示の如く波の底を1つおきに波の頂部に収束させる波動パターンとすることで、搬送方向に沿って接した状態の2つの物品30,30を一群として、これらの物品群単位で搬送方向へ所定間隔毎に離間することができる(図9参照)。このように、夫々のローラ20の回転速度を周期的に変速制御する波動パターンを生成することによって、搬送方向前後に軽く接した複数の物品30単位毎で簡単に切離した状態で搬送することができる。
【0029】
なお本例では、第2区域におけるローラ20の最大回転速度を導出部18より高速に設定すると共に、第1区域において波の底を導入部14より低くした後、搬送方向下流側へ向かうにつれて波の底を持上げて第1区域の搬送終端において導入部14と一致するように設定され、また波の頂部の高さは、第1区域の搬送終端で最大となり、第2区域を同一高さで推移させた後、第3区域において搬送方向下流側へ向かうにつれて低減して、搬送終端速度と同一とされる波動パターンが設定される。このように、第2区域において搬送終端速度より高速になるよう波の頂部の高さを設定する波動パターンに基づいて、夫々のローラ20を周期的に変速制御することで、ローラ20に対して滑り易い物品30を確実に搬送するのに有効である。なお、本例の波動パターンにおける第1区域から第3区域に至る波形における波の頂部は第1実施例と同様にその高さが変化するようになっていてもよい。また、波の底部の高さについても第1実施例と同様に第1区域において搬送始端から一定の高さになっているように設定されたものであってもよい。
【0030】
(変更例)
本願は前述した実施例の構成および制御に限定されるものではなく、その他の構成および制御を適宜に採用することができる。
(1)図10に示すように、第1区域の搬送終端(搬送の途中位置)から第3区域の搬送終端へ向かうにつれて波の頂部の高さを低減する波動パターンに基づいて、各ローラ20を周期的に変速制御してもよい。すなわち、第1区域の搬送方向下流側に配置した各ローラ20の最高回転速度が、第1区域の搬送終端から下流側に向かうにつれて減少し、第1区域の搬送終端に位置するローラ20の最高回転速度が、ローラコンベヤ10の搬送始端から終端までの間における最高値となる。第1実施例では、ローラコンベヤ10の搬送始端部の速度と搬送終端部の速度との関係で第1区域の変化率を物品長/切離し間隔として設定して搬送終端の速度を最高値とした。これに対し本例では、前記第2実施例と同様に物品30がローラ20とスリップして所望の切離し間隔に達しない場合等において変化率を第1変化率より大きく設定すると共に、予め規定された搬送終端速度まで減速するようにした波動パターンを設定している。このように、物品30の性状に合わせて、各ローラ20の回転速度を適宜に変速制御することで、ローラとの間でスリップして搬送し難い物品30を、より確実に所定間隔で切離すことができる。
(2)実施例では、ローラコンベヤ10を導入部14、切離し部16および導出部18から構成したが、少なくとも切離し部16を有していれば導入部14および導出部18の何れか一方または両方を省略することができる。
(3)実施例では、切離し部を3つに区分したが、第1区域を少なくとも有していれば、第2区域および第3区域の一方または両方を省略することができる。
(4)波動パターンにおける波形は、実施例の正弦曲線を基本としたものに限られるものではなく、ローラ20の回転速度の高速域と低速域との繰返しが搬送方向下流側へ周期的に推移する態様であれば、図11に示す如く台形波と三角波とが合成されたものであってもよい。すなわち、第1区域において波の頂部に設けられる第1変化率に沿わせた直線傾斜部Rにより波が台形状となると共に、第2区域において最高回転速度を頂点とする三角形状とした波動パターンに基づいて、各モータ22を周期的に変速するよう駆動制御して各ローラ20を変速する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の好適な実施例に係るローラコンベヤを示す平面図である。
【図2】実施例のローラコンベヤを示す側面図である。
【図3】図2のA矢視図である。
【図4】第1実施例のローラコンベヤの波動パターンおよびその波形を示す説明図である。
【図5】第1実施例において、代表的なローラの回転速度の変化を示す説明図である。
【図6】第1実施例のローラコンベヤにおいて、物品の搬送状況を示す概略図であって、(a)は一列の物品を切離す場合を示し、(b)はランダムに並んだ物品を切離す場合を示す。
【図7】第1実施例のローラコンベヤにおいて、長尺な物品の搬送状況を示す概略図である。
【図8】第2実施例のローラコンベヤの波動パターンおよびその波形を示す説明図である。
【図9】第2実施例のローラコンベヤにおいて、物品の搬送状況を示す概略図である。
【図10】変更例のローラコンベヤの波動パターンおよびその波形を示す説明図である。
【図11】別の変更例のローラコンベヤの波動パターンおよびその波形を示す説明図である。
【符号の説明】
【0032】
20 ローラ,22 モータ,28 制御手段,30 物品,R 直線傾斜部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品(30)を搬送する過程で搬送方向前後に所定間隔で切離すローラコンベヤにおいて、
物品(30)の搬送方向へ並列に複数配置され、該物品(30)を、その底面を少なくとも2以上で支持して搬送し得るローラ(20)と、
各ローラ(20)に夫々連繋され、対応のローラ(20)を変速回転するモータ(22)と、
ローラ(20)の回転速度差による速度の波を、搬送方向下流側へ推移させる波動パターンを生成し、該波動パターンに基づき各モータ(22)を駆動制御する制御手段(28)とを備え、
前記制御手段(28)により生成される波動パターンは、各波の高さおよび周期を搬送方向下流側へ向かうにつれ夫々比例的に増加する変化域を設け、その変化域において、各波の頂部は波の高さの変化率に対応した比例直線に沿う直線傾斜部(R)を形成し、その直線傾斜部(R)が各波の高さおよび周期の増加につれて減少する波形を変化させるように設定した
ことを特徴とするローラコンベヤ。
【請求項2】
前記制御手段(28)は、前記変化域の搬送方向下流の所定位置から搬送終端までの区間において、前記波形における波の底を搬送方向下流側へ向かうにつれて第2の変化率で比例的に増加して、波を搬送終端速度と同一に収束させる波形により得られる波動パターンを生成し、該波動パターンに基づいて、各モータ(22)を駆動制御する請求項1記載のローラコンベヤ。
【請求項3】
前記制御手段(28)は、複数の波を搬送方向下流側へ推移する過程で1つに併合する波動パターンを生成し、その波動パターンに基づいて、各モータ(22)を駆動制御する請求項1または2記載のローラコンベヤ。
【請求項4】
前記制御手段(28)は、正弦曲線を基本とする波形により得られる波動パターンを生成し、その波動パターンに基づいて、各モータ(22)を駆動制御する請求項1〜3の何れか一項に記載のローラコンベヤ。
【請求項5】
搬送始端から下流側への所定区間までのローラ(20)は、一定速で回転する請求項1〜4の何れか一項に記載のローラコンベヤ。
【請求項6】
前記制御手段(28)は、前記波形における波の頂部の高さを搬送終端で最大とする波動パターンを生成し、その波動パターンに基づいて、各モータ(22)を駆動制御する請求項1〜5の何れか一項に記載のローラコンベヤ。
【請求項7】
前記制御手段(28)は、前記波形における波の頂部の高さを途中位置で最大とし、搬送終端に向けて低減して搬送終端速度と一致させる波動パターンを生成し、その波動パターンに基づいて、各モータ(22)を駆動制御する請求項1〜5の何れか一項に記載のローラコンベヤ。
【請求項1】
物品(30)を搬送する過程で搬送方向前後に所定間隔で切離すローラコンベヤにおいて、
物品(30)の搬送方向へ並列に複数配置され、該物品(30)を、その底面を少なくとも2以上で支持して搬送し得るローラ(20)と、
各ローラ(20)に夫々連繋され、対応のローラ(20)を変速回転するモータ(22)と、
ローラ(20)の回転速度差による速度の波を、搬送方向下流側へ推移させる波動パターンを生成し、該波動パターンに基づき各モータ(22)を駆動制御する制御手段(28)とを備え、
前記制御手段(28)により生成される波動パターンは、各波の高さおよび周期を搬送方向下流側へ向かうにつれ夫々比例的に増加する変化域を設け、その変化域において、各波の頂部は波の高さの変化率に対応した比例直線に沿う直線傾斜部(R)を形成し、その直線傾斜部(R)が各波の高さおよび周期の増加につれて減少する波形を変化させるように設定した
ことを特徴とするローラコンベヤ。
【請求項2】
前記制御手段(28)は、前記変化域の搬送方向下流の所定位置から搬送終端までの区間において、前記波形における波の底を搬送方向下流側へ向かうにつれて第2の変化率で比例的に増加して、波を搬送終端速度と同一に収束させる波形により得られる波動パターンを生成し、該波動パターンに基づいて、各モータ(22)を駆動制御する請求項1記載のローラコンベヤ。
【請求項3】
前記制御手段(28)は、複数の波を搬送方向下流側へ推移する過程で1つに併合する波動パターンを生成し、その波動パターンに基づいて、各モータ(22)を駆動制御する請求項1または2記載のローラコンベヤ。
【請求項4】
前記制御手段(28)は、正弦曲線を基本とする波形により得られる波動パターンを生成し、その波動パターンに基づいて、各モータ(22)を駆動制御する請求項1〜3の何れか一項に記載のローラコンベヤ。
【請求項5】
搬送始端から下流側への所定区間までのローラ(20)は、一定速で回転する請求項1〜4の何れか一項に記載のローラコンベヤ。
【請求項6】
前記制御手段(28)は、前記波形における波の頂部の高さを搬送終端で最大とする波動パターンを生成し、その波動パターンに基づいて、各モータ(22)を駆動制御する請求項1〜5の何れか一項に記載のローラコンベヤ。
【請求項7】
前記制御手段(28)は、前記波形における波の頂部の高さを途中位置で最大とし、搬送終端に向けて低減して搬送終端速度と一致させる波動パターンを生成し、その波動パターンに基づいて、各モータ(22)を駆動制御する請求項1〜5の何れか一項に記載のローラコンベヤ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−214080(P2008−214080A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−57557(P2007−57557)
【出願日】平成19年3月7日(2007.3.7)
【出願人】(000136387)株式会社フジキカイ (129)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月7日(2007.3.7)
【出願人】(000136387)株式会社フジキカイ (129)
【Fターム(参考)】
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