説明

ロールの再生処理方法、およびそのロール

【課題】ロールの外側の層の剥離除去を効率的に行い、内側の層は残したまま、ロールの軸体を効率的に回収および再利用するのに優れたロールの再生処理方法、およびそのロールを提供する。
【解決手段】軸体1と、この軸体1の外周に形成される複数の構成層2とを備え、上記複数の構成層2において隣接する2層のうちの外側の層(表層22)のガラス転移温度が、上記2層のうちの内側の層のガラス転移温度よりも70℃以上高く設定されているロール3とする。そして、このように予め設計したロール3に対し、その再生処理段階で、その外側の層に、ドライアイス微粒子4を噴射し、その層の急冷およびその層への衝撃付与を行い、上記2層の界面で上記外側の層を剥離除去し、上記内側の層を含む軸体1を回収し再利用に供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロールの再生処理方法およびそのロールに関するものであり、詳しくは、主に、電子写真複写機、プリンター、ファクシミリ等のOA(オフィス・オートメイション:Office Automation )機器に用いられる、複数の構成層を備えたロールに対する、有用な再生処理方法、およびそのロールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真複写機やプリンター等のOA機器に用いられるロールには、帯電ロール、現像ロール等の各種ロールがあり、これらの多くは、軸体となる芯金の外周に、弾性ゴムによるベースゴム層や、樹脂による表層等を多数積層し、形成されたものである。このような積層構造を備えたロールは、その使用により、磨耗を生じたり、汚染等による外観不良を生じたりした結果、実使用に支障をきたす状態になると、通常、そのまま廃棄処分されるか、あるいは、そのロールから芯金のみを取り外し、この芯金のみが回収されて再利用に供されるかのいずれかである(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平9−44032号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のような廃棄処分の対象となったロールであっても、ベースゴム層等の内側の層は、特に傷み等がみられない場合が多いことから、このような部分を再利用せずに芯金のみを回収および再利用する方法は、あまり有効なリサイクル手段とはいえない。そのため、磨耗や汚染等が生じた外側の層のみを剥離除去することにより、ベースゴム層等の内側の層は残したまま芯金を回収し、これを再利用するといったことを可能にするための具体的手段が、以前から検討されている。
【0004】
一般的に、このように内側の層も回収する手段として考えられる方法には、例えば、表層等の外側の層を研磨除去する方法があげられる。しかしながら、表層等の外側の層の厚みは10〜200μmと非常に薄く、この層のみを研磨除去するのは、実際には非常に困難であり、しかも、研磨では、内側の層の表面性や外径を変化させるといった懸念もある。そのため、このような方法は実際には行われていないのが現状である。一方、上記のように積層構造を備えたロールは、電子写真複写機等の実機で使用する際に層間剥離が生じないよう、その層間密着性を高くしており、このことが、外側の層のみを剥離して効率的にロールの再生化を行う際の障壁にもなっている。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、ロールの外側の層の剥離除去を効率的に行い、内側の層は残したまま、ロールの軸体を効率的に回収および再利用するのに優れたロールの再生処理方法、およびそのロールの提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明は、軸体と、この軸体の外周に形成される複数の構成層とを備えたロールの再生処理方法であって、予め、上記複数の構成層において隣接する2層のうちの外側の層のガラス転移温度を、上記2層のうちの内側の層のガラス転移温度よりも70℃以上高く設計し、再生処理段階で、その外側の層に、ドライアイス微粒子を噴射し、その層の急冷およびその層への衝撃付与を行い、上記2層の界面で上記外側の層を剥離除去し、上記内側の層を含む軸体を回収し再利用に供するロールの再生処理方法を第1の要旨とする。また、上記再生処理方法に用いられるロールであり、軸体と、この軸体の外周に形成される複数の構成層とを備え、上記複数の構成層において隣接する2層のうちの外側の層のガラス転移温度が、上記2層のうちの内側の層のガラス転移温度よりも70℃以上高く設定されているロールを第2の要旨とする。
【0007】
すなわち、本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意研究を重ねた。その研究の過程で、軸体の外周に複数の構成層を備えたロールに関し、電子写真複写機等の実機で使用する際には層間剥離を生じず、逆に、再生処理の際には容易に層間剥離させることができ、再利用しやすいロールとなるよう、予め、ロールの側で設定することを想起した。同時に、上記層間剥離を行う際にロールに施す処理に関しても、鋭意研究を重ねた。その結果、予め、上記複数の構成層において隣接する2層のうちの外側の層のガラス転移温度を、上記2層のうちの内側の層のガラス転移温度よりも70℃以上高く設計し、再生処理段階で、その外側の層に、ドライアイス微粒子を噴射し、その層の急冷およびその層への衝撃付与を行うと、上記急冷により、外側の層のみが硬く脆くなり、しかも、ドライアイス微粒子を噴射することによる衝撃で、その硬く脆くなった外側の層のみが容易に砕けるようになることから、内側の層を、傷つけることなく回収することが可能になることを突き止めた。すなわち、このような処理方法により、上記2層の界面での層間剥離が容易になされ、表面性や外径の変化のない内側の層を含む軸体を容易に回収し再利用することができるようになることを見いだし、本発明に到達した。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、本発明のロールの再生処理方法は、その複数の構成層において隣接する2層のうちの外側の層のガラス転移温度を、上記2層のうちの内側の層のガラス転移温度よりも70℃以上高く設計し、再生処理段階で、その外側の層に、ドライアイス微粒子を噴射し、その層の急冷およびその層への衝撃付与を行うことにより、上記2層の界面で上記外側の層を剥離除去し、内側の層を傷つけずに、この内側の層を含む軸体を回収し再利用に供する方法である。そのため、磨耗や汚染等が生じた外側の層のみを容易に剥離除去することができ、その結果、従来、廃棄処分か、あるいは、芯金のみのリサイクル使用ぐらいしか再利用の途がなかった使用済みロールを、効率よくリサイクルすることができるようになる。また、これにより有効な資源活用を行うこともできる。しかも、回収されたものは、研磨除去のように表面性や外径の変化を生じていないことから、再利用しやすい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
つぎに、本発明の実施の形態を説明する。
【0010】
本発明のロールの再生処理方法では、例えば、図1に示すように、軸体1と、この軸体1の外周に形成される構成層2(上記構成層2は、複数の層からなる。図1では、上記構成層2は、ベースゴム層21と、表層22との、2層構造である)とを備えた、再生処理対象のロール3を、そのロール3製造時において、予め、上記構成層2において隣接する2層のうちの外側の層(通常、その表層)のガラス転移温度が、その2層のうちの内側の層のガラス転移温度よりも70℃以上高くなるよう設計し、製造しておく。そして、上記ロール3が、磨耗や汚染等によって使用することができなくなり、再生処理が必要になったら、図示のように、その外側の層にドライアイス微粒子4を噴射し、その層の急冷およびその層への衝撃付与を行う。上記ドライアイス微粒子4は、ドライアイス微粒子発生機5により製造され、図示のように、ノズル6を介し噴射される。また、上記ロール3に満遍なくドライアイス微粒子4を当てるため、この噴射処理は、図示のように、上記ロール3を回転および移動させながら行われる(なお、回転および移動の方向は、図1と逆であってもよい)。このようにして、上記外側の層の急冷およびその層への衝撃付与を行うことにより、上記2層の界面で、その外側の層のみが砕かれ、剥離除去される。したがって、この方法により、磨耗や汚染等が生じた外側の層のみを容易に剥離除去することができ、その結果、表面性や外径の変化がみられない内側の層を含む軸体1を、効率的に回収することができるようになる。
【0011】
上記軸体1としては、特に限定されるものではなく、例えば、中空円筒体からなる芯金であっても、中実体からなる芯金であってもよい。そして、その形成材料についても、特に限定されず、例えば、アルミニウム、ステンレス等の金属材料等があげられる。なお、必要に応じ、軸体1上に接着剤、プライマー等を塗布してもよい。また、接着剤、プライマー等には、必要に応じて導電化を行ってもよい。
【0012】
上記軸体1の外周面に形成される構成層2は、複数の層からなるものであり、2層以上であれば、その層構成は特に限定されるものではないが、例えば、上記軸体1から、ベースゴム層,表層の順に形成された2層構造のもの(図1参照)や、ベースゴム層,中間層,表層の順に形成された3層構造のものがあげられる。そして、上記2層構造の場合、外側の層が表層で、内側の層がベースゴム層である。また、上記3層構造か、それ以上の数の層を構成する場合、外側の層が表層または中間層で、内側の層が上記表層または中間層の内周側に接する層である。
【0013】
そして、本発明では、上記構成層2において、剥離除去してもよい層(外側の層。通常、表層)と残して回収したい層との界面を決め、先にも述べたように、その界面において隣接する2層のうちの外側の層のガラス転移温度を、上記2層のうちの内側の層のガラス転移温度よりも70℃以上高く設計し、ロール3を製造する必要がある。好ましくは、そのガラス転移温度の差を80℃以上に設計することである。なお、上記のように、隣接する2層のガラス転移温度の差を設けたとしても、電子写真複写機等の実機で使用する際の温度条件等では、上記ロール3は、層間剥離を生じることはない。そのため、上記ガラス転移温度の差が、直接的に、実使用時の層間密着性を損ねる要因となることはなく、上記ロール3は、本発明の再生処理を行うことにより、はじめて、層間剥離を生じるものとなる。
【0014】
ところで、上記2層のうちの外側の層のガラス転移温度(Tg)は、20〜150℃の範囲に設定されていることが好ましく、より好ましくは、ガラス転移温度(Tg)が50〜90℃の範囲内である。一方、上記2層のうちの内側の層のガラス転移温度(Tg)は、−50〜80℃の範囲に設定されていることが好ましく、より好ましくは、ガラス転移温度(Tg)が−30〜20℃の範囲内である。なお、上記ガラス転移温度(Tg)は、具体的には、DMA 2980 Dynamic Mechanical Analyzer(TA Instruments社製)を用いて測定することができ、周波数1Hz、昇温3℃/minにより、貯蔵弾性率および損失弾性率の比であるtanδを測定し、そのピーク値が、ガラス転移温度として求められる。
【0015】
なお、上記構成層2において、そのベースゴム層の形成材料としては、特に限定されるものではなく、例えば、ポリノルボルネンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、天然ゴム(NR)、シリコーンゴム等があげられ、単独でもしくは2種以上併せて用いられる。また、導電性付与のため、カーボンブラック、グラファイト、チタン酸カリウム、酸化鉄、c−TiO2 、c−ZnO、c−SnO2 、イオン導電剤(四級アンモニウム塩、ホウ酸塩、界面活性剤等)等の従来公知の導電剤が、上記材料中に適宜添加される。さらに、必要に応じて、発泡剤、架橋剤、架橋促進剤、オイル等を適宜添加してもよい。
【0016】
また、上記構成層2において、上記ベースゴム層の外周面に必要に応じ形成される中間層の形成材料としては、例えば、エピクロルヒドリンゴム(ECO)、NBR、EPDM、SBR、H−NBR、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル、N−メトキシメチル化ナイロン等が、単独であるいは2種以上併せて用いられる。そして、この材料中には、カーボンブラック、金属酸化物、四級アンモニウム塩、ホウ酸塩、過塩素酸リチウム等の導電剤が適宜に配合される。なお、上記中間層形成材料は、通常、有機溶剤に溶解等され、コーティング液として使用に供される。上記有機溶剤としては、メチルエチルケトン(MEK)、メタノール、トルエン、イソプロピルアルコール、メチルセロソルブ、ジメチルホルムアミド等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。特に、メチルエチルケトンを用いることが、上記中間層形成材料に対する溶解性の点で好ましい。
【0017】
さらに、上記構成層2において、最外層として形成される表層の形成材料としては、例えば、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、ブチラール樹脂(PVB)等があげられ、これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。なかでも、塗工性の点で、ポリアミド樹脂が好適に用いられる。なお、上記成分以外に、必要により、導電剤、帯電制御剤等を適宜に添加してもよい。また、上記表層の形成材料も、上記中間層の形成材料と同様に、通常、有機溶剤に溶解等され、コーティング液として使用に供される。
【0018】
そして、上記ロール3は、例えば、つぎのようにして製造することができる。
【0019】
すなわち、まず、上記ベースゴム層形成材料用の各成分をニーダー等の混練機で混練し、ベースゴム層形成材料を調製する。ついで、円筒状金型の中空部に、金属製の軸体1をセットし、上記円筒状金型と軸体1との空隙部に、上記ベースゴム層形成材料を注型した後、金型を蓋し、加熱して、ベースゴム層形成材料を架橋させる。その後、上記円筒状金型から脱型することにより、軸体1の外周面にベースゴム層が形成されたものを取り出す。ついで、上記ベースゴム層の外周面に、中間層形成用溶液や表層形成用溶液を塗工(中間層形成用溶液の塗工は任意)し、層形成を行う。なお、この塗工法は、特に制限するものではなく、ディッピング法、スプレー法、ロールコート法等の従来の方法が適用できる。また、上記塗工後の層形成は、その塗工部分の乾燥および加熱処理(加硫処理、条件:120〜200℃×20〜90分)によりなされる。このようにして、軸体1の外周に複数の層が形成されたロール3を作製することができる。なお、上記ロール3は、先述のように、剥離除去してもよい層と、残して回収したい層との界面を予め決めておき、その界面において隣接する2層のうちの外側の層のガラス転移温度を、内側の層のガラス転移温度よりも70℃以上高くなるよう、各層の材料を選択する必要がある。また、上記各層の形成方法は、この製法に特に限定されるものではなく、例えば、押出形成等により形成してもよい。そして、このロール3において、ベースゴム層の厚みは1〜10mmの範囲に設定することが好ましく、特に好ましくは2〜6mmである。また、中間層(任意)の厚みは3〜30μmの範囲に設定することが好ましく、特に好ましくは5〜20μmである。そして、表層の厚みは3〜30μmの範囲に設定することが好ましく、特に好ましくは5〜20μmである。
【0020】
そして、このようにして作製したロール3が、実機使用により磨耗や汚染等が生じ、そのままでは継続して使用することができない状態になったら、図1に示すように、このロール3にドライアイス微粒子4を噴射し、剥離除去してもよい外側の層の急冷およびその層への衝撃付与を行う。このようにして、磨耗や汚染等が生じた外側の層のみを砕き、上記2層の界面で、上記外側の層のみを剥離除去する。
【0021】
なお、上記のようにして噴射されるドライアイス微粒子4の平均粒径は、0.1〜5mmの範囲に設定することが好ましく、より好ましくは0.5〜2mmの範囲である。すなわち、上記平均粒径が0.1mm未満であると、層の破壊が良好になされなくなるからであり、逆に、上記平均粒径が5mmを超えると、内側の層を損傷するおそれがあるからである。
【0022】
また、上記ドライアイス微粒子4の噴射による剥離除去は、ドライアイス微粒子4の噴射圧を高圧にすることにより、良好になされるようになるが、必要に応じ、別途、高圧ガスによる衝撃付与や、サンドブラスト等の従来公知の衝撃付与を併用してもよい。なかでも、内側の層に損傷を与えることが殆どないことから、ガス圧による衝撃付与を行うことが好ましい。
【0023】
ここで、上記ドライアイス微粒子4の具体的な噴射条件を、下記に示す。
<ドライアイス微粒子噴射条件>
機器:Alpheus社製、MODEL T−2
ドライアイス形態:ブロックドライアイスを機器内にセット
噴射エアー圧:0.5MPa
噴射エアー流量:1.0m3 /min
噴射時ローラー回転数:30rpm
噴射時ローラー軸方向送り速度:10mm/sec
【0024】
このようにして、本発明では、2層の界面で上記外側の層を砕き、この層を剥離除去する。これにより、磨耗や汚染等が生じた外側の層のみを容易に剥離除去することができ、その結果、表面性や外径の変化がみられない内側の層を含む軸体1を、効率的に回収することができるようになる。そして、このようにして回収されたものは、上記のように表面性や外径の変化を生じておらず、そのため、新たに外側の層のみを形成することにより、新品同様のものとして再度、使用および販売することができる。したがって、本発明の再生処理方法は、有効な資源活用を行うことができるとともに、リサイクル率がよいことから、全体的に製造コストをダウンさせることもできる。
【0025】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。
【実施例1】
【0026】
〔ベースロールの作製〕
まず、芯金としてアルミニウム製芯金を準備し、上記芯金の外周面に接着剤を塗布した。ついで、円筒状金型の中空部に、上記芯金をセットし、円筒状金型と芯金との空隙部に、SBR(旭化成社製、タフデン1000)100重量部(以下、「部」と略す)と、アセチレンブラック(電気化学工業社製、デンカブラックHS−100)20部と、加硫促進剤であるノクセラーCZ(大内新興科学社製)0.5部と、加硫促進剤であるノクセラーBZ(大内新興科学社製)0.5部とからなるゴムコンパウンドを注型した後、金型に蓋をし、これを加熱(190℃×50分)して、SBRゴムコンパウンドを加硫し、その後脱型して、ベースゴム層付き芯金(ベースロール)を作製した。
【0027】
〔中間層形成用溶液の調製〕
ECO(ダイソー社製、エピクロマーCG102)100部と、ステアリン酸亜鉛0.5部と、亜鉛華5部と、アセチレンブラック(電気化学工業社製、デンカブラックHS−100)20部と、ハイドロタルサイト(協和化学工業社製、DHT−4A)5部と、加硫促進剤であるサンセラーCZ−G(三新化学社製)1.07部と、加硫促進剤であるノクセラーBZ−P(大内新興科学社製)0.49部と、硫黄1部とを、溶剤(MEK)に溶解した後、混合・攪拌することにより、中間層形成用溶液を調製した。
【0028】
〔表層形成用溶液の調製〕
ポリアミド樹脂(帝国化学社製、トレジンEF30T)100部と、カーボンブラック(ケッチェン・ブラック・インターナショナル社製、ケッチェンブラックEC)8部と、クエン酸1部とを、溶剤(MEK)に溶解した後、混合・攪拌することにより、表層形成用溶液を調製した。
【0029】
〔ロールの作製〕
上記ベースロールの外周面に、上記中間層形成用溶液をロールコート法により塗工した後、乾燥および加熱処理を行ない、ベースゴム層の外周面に中間層を形成した。さらに、上記中間層の外周面に、上記表層形成用溶液をロールコート法により塗工した後、乾燥および加熱処理を行ない、中間層の外周面に表層を形成した。このようにして、3層構造のロールを作製した。このロールに関し、ベースゴム層の厚みは3.5mmであり、中間層の厚みは200μmであり、表層の厚みは10μmである。
【実施例2】
【0030】
〔ベースゴム層形成材料の調製〕
EPDM(デュポンダウエラストマー社製、NordellP5565)100部と、ステアリン酸1部と、酸化亜鉛5部と、アセチレンブラック(電気化学工業社製、デンカブラックHS−100)40部と、発泡剤であるジニトロペンタメチレンテトラミン15部と、プロセスオイル30部と、硫黄1部と、加硫促進剤であるジベンゾチアゾールスルフィド2部と、加硫促進剤であるテトラメチルチウラムモノサルファイド1部とを混合・攪拌することにより、ベースゴム層用形成用のゴムコンパウンドを調製した。
【0031】
〔中間層形成材料の調製〕
NBR(日本ゼオン社製、ニポールDN401)100部と、アセチレンブラック(電気化学工業社製、デンカブラックHS−100)30部と、絶縁性充填剤であるシリカ50部と、酸化亜鉛5部とを混合・攪拌することにより、中間層用形成用のゴムコンパウンドを調製した。
【0032】
〔表層形成用溶液の調製〕
アクリル樹脂(住友化学社製、スミベックスLG6A)100部と、カーボンブラック(昭和キャボット社製、ショウブラックN234)30部とを、溶剤(MEK)に溶解した後、混合・攪拌することにより、表層形成用溶液を調製した。
【0033】
〔ロールの作製〕
上記ベースゴム層および中間層形成用のゴムコンパウンドを用い、2層押出装置により押出成形を行って、内層がベースゴム層形成材料からなり、外層が中間層形成材料からなる2層構造の積層チューブを作製した。つぎに、このチューブ内にアルミニウム製芯金を挿入し、その後、芯金ごと上記チューブを円筒状金型の中空部にセットし、これを加熱(170℃×30分)して、上記チューブを加硫および発泡(中間層は非発泡)させた。このようにして、芯金の外周に、ベースゴム層および中間層を形成した。そして、これを脱型した後、その中間層の外周面に、上記調製の表層形成用溶液をロールコート法により塗工し、乾燥処理を行ない、中間層の外周面に表層を形成した。このようにして、3層構造のロールを作製した。このロールに関し、ベースゴム層の厚みは3mmであり、中間層の厚みは500μmであり、表層の厚みは10μmである。
【実施例3】
【0034】
まず、芯金としてアルミニウム製芯金を準備し、上記芯金の外周面に接着剤を塗布した。ついで、円筒状金型の中空部に、上記芯金をセットし、円筒状金型と芯金との空隙部に、シリコーンゴム(信越化学社製、X−34−387 A/B)を注型した後、金型に蓋をし、これを加熱(180℃×20分)して、シリコーンゴムを加硫し、その後脱型して、ベースゴム層付き芯金(ベースロール)を作製した。一方、H−NBR(日本ゼオン社製、ゼットポール2020)100部と、ステアリン酸0.5部と、亜鉛華5部と、アセチレンブラック(電気化学工業社製、デンカブラックHS−100)30部と、加硫促進剤であるノクセラーCZ(大内新興科学社製)0.5部と、加硫促進剤であるノクセラーBZ(大内新興科学社製)0.5部とを、溶剤(MEK)に溶解した後、混合・攪拌することにより、中間層形成用溶液を調製した。また、アクリル樹脂(住友化学社製、スミベックスLG6A)100部と、カーボンブラック(昭和キャボット社製、ショウブラックN234)30部とを、溶剤(MEK)に溶解した後、混合・攪拌することにより、表層形成用溶液を調製した。これらを用い、実施例1の製法に準じ、実施例1と同寸法の、3層構造のロールを作製した。
【実施例4】
【0035】
まず、芯金としてアルミニウム製芯金を準備し、上記芯金の外周面に接着剤を塗布した。ついで、円筒状金型の中空部に、上記芯金をセットし、円筒状金型と芯金との空隙部に、SBR(旭化成社製、タフデン1000)100部と、アセチレンブラック(電気化学工業社製、デンカブラックHS−100)20部と、加硫促進剤であるノクセラーCZ(大内新興科学社製)0.5部と、加硫促進剤であるノクセラーBZ(大内新興科学社製)0.5部とからなるゴムコンパウンドを注型した後、金型に蓋をし、これを加熱(190℃×50分)して、SBRゴムコンパウンドを加硫し、その後脱型して、ベースゴム層付き芯金(ベースロール)を作製した。一方、ポリアミド樹脂(帝国化学社製、トレジンEF30T)100部と、カーボンブラック(ケッチェン・ブラック・インターナショナル社製、ケッチェンブラックEC)8部と、クエン酸1部とを、溶剤(MEK)に溶解した後、混合・攪拌することにより、中間層形成用溶液を調製した。また、アクリル樹脂(住友化学社製、スミベックスLG6A)100部と、カーボンブラック(昭和キャボット社製、ショウブラックN234)30部とを、溶剤(MEK)に溶解した後、混合・攪拌することにより、表層形成用溶液を調製した。これらを用い、実施例1の製法に準じ、実施例1と同寸法の、3層構造のロールを作製した。
【実施例5】
【0036】
まず、芯金としてアルミニウム製芯金を準備し、上記芯金の外周面に接着剤を塗布した。ついで、円筒状金型の中空部に、上記芯金をセットし、円筒状金型と芯金との空隙部に、SBR(旭化成社製、タフデン1000)100部と、アセチレンブラック(電気化学工業社製、デンカブラックHS−100)20部と、加硫促進剤であるノクセラーCZ(大内新興科学社製)0.5部と、加硫促進剤であるノクセラーBZ(大内新興科学社製)0.5部とからなるゴムコンパウンドを注型した後、金型に蓋をし、これを加熱(190℃×50分)して、SBRゴムコンパウンドを加硫し、その後脱型して、ベースゴム層付き芯金(ベースロール)を作製した。一方、ポリアミド樹脂(帝国化学社製、トレジンEF30T)100部と、カーボンブラック(ケッチェン・ブラック・インターナショナル社製、ケッチェンブラックEC)8部と、クエン酸1部とを、溶剤(MEK)に溶解した後、混合・攪拌することにより、表層形成用溶液を調製した。そして、上記ベースロールの外周面に、上記調製の表層形成用溶液をロールコート法により塗工し、乾燥処理を行ない、2層構造のロール(ベースゴム層の厚み3.5mm。表層の厚み10μm。)を作製した。
【0037】
〔比較例1〕
まず、芯金としてアルミニウム製芯金を準備し、上記芯金の外周面に接着剤を塗布した。ついで、円筒状金型の中空部に、上記芯金をセットし、円筒状金型と芯金との空隙部に、シリコーンゴム(信越化学社製、X−34−387 A/B)を注型した後、金型に蓋をし、これを加熱(180℃×20分)して、シリコーンゴムを加硫し、その後脱型して、ベースゴム層付き芯金(ベースロール)を作製した。一方、ウレタン樹脂(坂井化学社製、UN278)100部と、アセチレンブラック(電気化学工業社製、デンカブラックHS−100)30部と、硬化剤(日本ポリウレタン工業社製、コロネートHX)10部とを、溶剤(MEK)に溶解した後、混合・攪拌することにより、中間層形成用溶液を調製した。また、ウレタン樹脂(日本ポリウレタン工業社製、ニッポラン5199)100部と、硬化剤(大日本インキ社製、バーノックD750)25部と、カーボンブラック(昭和キャボット社製、ショウブラックN234)30部と、シリカ(富士シリシア化学社製、サイリシア430)5部とを、溶剤(MEK)に溶解した後、混合・攪拌することにより、表層形成用溶液を調製した。そして、これらを用い、実施例1の製法に準じ、実施例1と同寸法の、3層構造のロールを作製した。
【0038】
〔比較例2〕
まず、芯金としてアルミニウム製芯金を準備し、上記芯金の外周面に接着剤を塗布した。ついで、円筒状金型の中空部に、上記芯金をセットし、円筒状金型と芯金との空隙部に、シリコーンゴム(信越化学社製、X−34−387 A/B)を注型した後、金型に蓋をし、これを加熱(180℃×20分)して、シリコーンゴムを加硫し、その後脱型して、ベースゴム層付き芯金(ベースロール)を作製した。一方、ウレタン樹脂(日本ポリウレタン工業社製、ニッポラン5199)100部と、硬化剤(大日本インキ社製、バーノックD750)25部と、カーボンブラック(昭和キャボット社製、ショウブラックN234)30部と、シリカ(富士シリシア化学社製、サイリシア430)5部とを、溶剤(MEK)に溶解した後、混合・攪拌することにより、表層形成用溶液を調製した。そして、これらを用い、実施例1の製法に準じ、2層構造のロール(ベースゴム層の厚み4mm。表層の厚み10μm。)を作製した。
【0039】
このようにして得られた各ロールに関し、その各層のガラス転移温度(Tg)、および、隣接する2層間の層のガラス転移温度の差を測定し、後記の表1〜表2に併せて示した。なお、上記ガラス転移温度(Tg)は、DMA 2980 Dynamic Mechanical Analyzer(TA Instruments社製)を用いて測定され、周波数1Hz、昇温3℃/minにより、貯蔵弾性率および損失弾性率の比であるtanδを測定し、そのピーク値を、ガラス転移温度として求めた。
【0040】
つぎに、上記各ロールに対し、下記の層間剥離試験を行った。
【0041】
〔層間剥離試験〕
まず、上記各ロールに対し、下記の条件でドライアイス微粒子を噴射し、層間剥離処理を行った。
<ドライアイス微粒子噴射条件>
機器:Alpheus社製、MODEL T−2
ドライアイス形態:ブロックドライアイスを機器内にセット
噴射エアー圧:0.5MPa
噴射エアー流量:1.0m3 /min
噴射時ローラー回転数:30rpm
噴射時ローラー軸方向送り速度:10mm/sec
【0042】
そして、上記噴射後、ロール表面の目視評価により、ロールの各層の界面でその外側の層が良好に剥離されたもの(外側の層の剥離率がロール表面積の90%を超えるもの)を○、外側の層の剥離率がロール表面積の50〜90%のものを△、外側の層の剥離率がロール表面積の50%未満のものを×と評価した。そして、この評価結果も、下記の表1〜表2に併せて示した。なお、本発明では、△までを許容範囲とし、×の評価のものは、剥離が全くできてないか、あるいは剥離が充分でないものであり、所望の再生利用がなされなかったものである。また、中間層の剥離は、表層を完全に剥離させた後、上記噴射と同様の作業を再度行うことにより、なされた。
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】

【0045】
上記の結果から、実施例1〜3品は、本発明の再生処理方法により、表層の層間剥離が良好になされたことがわかる。なかでも、実施例3品は、本発明の再生処理方法により、中間層の層間剥離もなされた。なお、実施例4品は、表層の層間剥離は良好になされなかったものの、ベースゴム層と中間層との界面において、中間層の層間剥離は良好になされた。
【0046】
これに対し、比較例品は、その隣接する2層間の層のガラス転移温度差が、いずれも70℃未満であったことから、本発明の再生処理方法の適用による層間剥離はなされなかった。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明のロールの再生処理方法は、主に、電子写真複写機等のOA機器用のロール(帯電ロール、現像ロール等)の再生処理に有用であるが、これ以外にも、あらゆる分野において使用される、積層構造を備えたロールの再生処理に適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明のロールの再生処理方法の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0049】
1 軸体
2 構成層
3 ロール
4 ドライアイス微粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体と、この軸体の外周に形成される複数の構成層とを備えたロールの再生処理方法であって、予め、上記複数の構成層において隣接する2層のうちの外側の層のガラス転移温度を、上記2層のうちの内側の層のガラス転移温度よりも70℃以上高く設計し、再生処理段階で、その外側の層に、ドライアイス微粒子を噴射し、その層の急冷およびその層への衝撃付与を行い、上記2層の界面で上記外側の層を剥離除去し、上記内側の層を含む軸体を回収し再利用に供することを特徴とするロールの再生処理方法。
【請求項2】
上記複数の構成層が、ベースゴム層と表層とからなり、外側の層が表層で、内側の層がベースゴム層である請求項1記載のロールの再生処理方法。
【請求項3】
上記複数の構成層が、ベースゴム層と中間層と表層とからなり、外側の層が表層または中間層で、内側の層が上記表層または中間層の内周側に接する層である請求項1記載のロールの再生処理方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の再生処理方法に用いられるロールであり、軸体と、この軸体の外周に形成される複数の構成層とを備え、上記複数の構成層において隣接する2層のうちの外側の層のガラス転移温度が、上記2層のうちの内側の層のガラス転移温度よりも70℃以上高く設定されていることを特徴とするロール。

【図1】
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【公開番号】特開2006−139204(P2006−139204A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−330824(P2004−330824)
【出願日】平成16年11月15日(2004.11.15)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】