説明

ロールミル清浄用器具

【課題】回転しているロール表面に布を手で押し当てるという危険な作業を回避しながら、ロール表面の拭き取りを効率よく行なうことが可能な清浄用器具を提供すること。
【解決手段】芯本体部1と、取っ手部2とを有するロールミル清浄用器具を構成する。芯本体部1は、拭き取り用布帛Aを装着し得る曲面部3を有し、該曲面部3の曲面は円柱面状に湾曲しており、該曲面部の円周方向の両端縁部には、拭き取り用布帛の両端縁部を挟み込んで保持し得るように構成された把持部4、5が設けられている。これによって、ロールミルのロール表面に付着した材料を効率良く拭き取ることが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロールミルのロール表面に付着した材料を拭き取るための清浄用器具に関し、特にロールが回転中であっても、安全な拭き取り作業を可能とする器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インキ、塗料、電子部品材料(電極、レジスト)、食品など、種々のペースト状物の粉砕、分散、混練を行なうために、ロールミル(ローラーミルとも呼ばれる)が用いられている(例えば、特許文献1)。
ロールミルは、図8に3本ロールミルの一例を示すように、回転数、回転方向が互いに異なるロール(図の例では、低速ロール100、中速ロール101、高速102)を組み合わせて構成され、ロール間を通過する際の圧力と剪断力(回転速度差による)とによって、顔料をミディウム中に十分均等に分散させ、また、顔料粒子をより微細に粉砕するものである。図8の例では、ロール100とロール101との間を通過したインキの一部はロール101の表面に沿って搬送され、ロール101とロール102との間を通過し、ロール102の表面に沿って、同図の右方へと取り出される。
【0003】
ところで、本発明者が実際のロールミルを用いた生産現場において、その装置の使用状況を観察したところ、製品種を変えるための段取り変えや、ロット管理などのために、ロール表面のペーストを拭き取る作業が比較的頻繁に行なわれており、その拭き取りの際には、主として低速で回転させているロールの表面に、ワイプ材(拭き取り用の布の一種)を手で押し当てるという危険な作業が行なわれていることがわかった。
このような作業を行なう理由は、ロールを停止して拭き取り作業を行なうと、2つのロールに挟まれた谷間の部分の拭き取りのために、手でロールを回転させる必要があり、清浄作業の効率が悪いからである。
しかしながら、ロールを動力で回転させながら拭き取り作業を行なうと、拭き取り作業自体の効率はよいが、ワイプ材の巻き込みが生じる可能性があり、またそれに引っ張られて指も挟まれるといった重大な事故が発生する恐れがある。
【0004】
【特許文献1】特開2005−255989号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、回転しているロール表面に布を手で押し当てるという危険な作業を回避しながら、ロール表面の拭き取りを効率よく行なうことが可能な清浄用器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、円筒状の曲面と取っ手とを有する部材を創作し、その円筒状の曲面に拭き取り用の布帛を表層となるようにしっかりとかつ交換可能に固定し、回転するロールミルに対して、拭き取り用の布帛を介在させながら該部材を押し付ければ、安全にかつ効果的にロール表面のペーストを拭き取ることが可能であることを見出し、本発明を完成させた。即ち、本発明は、次の特徴を有するものである。
(1)ロールミルのロール表面に付着した材料を拭き取るためのロールミル清浄用器具であって、当該清浄用器具は、芯本体部と、取っ手部とを有し、
取っ手部は、芯本体部に固定されているかまたは着脱自在に固定され得るものであり、
芯本体部は、拭き取り用布帛を装着し得る曲面部を有し、該曲面部の曲面は円柱面状に湾曲しており、その円柱面の中心軸に垂直に切断したときの該円柱面の中心角は360度未満であって、曲面部の円周方向の両端縁部には、拭き取り用布帛の両端縁部を挟み込んで保持し得るように構成された把持部が設けられていることを特徴とする、
前記ロールミル清浄用器具。
(2)曲面部は、湾曲した板材によって形成されており、
把持部は、該曲面部の周方向の両端縁部の内側に、それぞれ端縁に沿って設けられた溝と、該溝に出し入れ可能なように設けられた挿入用部材とを有して構成されており、曲面部の外部表面を覆った拭き取り用布帛の端部を該溝内に入れて、その上からさらに挿入用部材を該溝内に押し込むことによって、該布帛の端部を挟み込んで保持し得る構成となっている、上記(1)記載のロールミル清浄用器具。
(3)把持部の溝幅と、それに挿入される挿入用部材の溝幅方向厚さとの差異が、1mm〜10mmである、上記(1)または(2)記載のロールミル清浄用器具。
(4)挿入用部材のうち、溝内へ挿入される部分が、該溝に沿った板状部分を有しており、該板状部分の先端縁が波状となっている、上記(2)または(3)記載のロールミル清浄用器具。
(5)取っ手部が、芯本体部に着脱自在に固定され得るものであって、かつ、
芯本体部に対する、取っ手部の取り付け角度および/または取り付け位置を、変えることが可能な構成となっている、上記(1)〜(4)のいずれかに記載のロールミル清浄用器具。
(6)取っ手部が、棒状のグリップ部と、その両端部から角度をなして延びる取り付けアーム部とを有してなる、略「コ」の字形を呈する態様であって、前記2本の取り付けアーム部の先端にはそれぞれフックが設けられており、
芯本体部は、取っ手部を取り付けるための取付部を有し、該取付部は、曲面部の背面側に、該曲面部の中心軸に平行に延び略円筒状の構造を有し、該取付部の略円筒状の胴体には、前記取っ手部の2つのフックに対応する位置に、前記フックを挿入して引っ掛けるための貫通孔が設けられ、該貫通孔は、取付部の略円筒状の胴体の円周方向に長く延びる長穴として設けられており、
これによって、フックを長穴である貫通孔の任意の位置で引っ掛けて、取っ手部を芯本体部に固定し得る構成となっている、
上記(1)〜(5)のいずれかに記載のロールミル清浄用器具。
【発明の効果】
【0007】
本発明によるロールミル清浄用器具(当該清浄用器具ともいう)は、図1に示すように、円柱面状の曲面を呈する曲面部と、その背後に設けられた取っ手とを有しており、その曲面に沿って拭き取り用布帛を装着し、端部の把持部に該布帛を強固にかつ着脱自在に固定することが可能な構成となっている。
これによって、回転するロールから離れた位置から、安全に、かつ、取っ手と円柱面状の曲面とを介して強く、布帛をロール面に押し付けることができる。しかも、布帛を、テンションをかけながら曲面に沿わせ、両端を強固にかつ着脱自在に把持することが出来るので、回転するロールに巻き込まれ難く、また、ロールに接しても剥がれ難い構成となっている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明によるロールミル清浄用器具(当該清浄用器具ともいう)の最良の形態を例として挙げながら、本発明の構成を説明する。以下の説明では、円柱(円筒)の中心軸を、円柱(円筒)軸とも呼ぶ。また、円柱面なる文言は、その円柱軸に垂直な断面の形状が完全な円形となっている面(即ち、丸棒の胴体外周面)でなくともよく、円柱軸に垂直な断面の形状が扇形であるような、部分的な曲面であってもよい。
【0009】
図1は、当該清浄用器具の構成の一例を示す組立て図であって、芯本体部の構造を示すために側板の一部を切り欠いて内部を示している。
同図に示すように、当該清浄用器具は、芯本体部1と、取っ手部2とを少なくとも有して構成される。取っ手部2は、芯本体部1に固定されているかまたは着脱自在に固定され得る。同図の例では、着脱自在に固定され得る構成となっている。両者を着脱自在に連結するための構成は後述する。
芯本体部1は、拭き取り用布帛(以下、単に「布帛」ともいう)Aを装着し得る曲面部3を有し、該曲面部3の曲面は円柱面状に湾曲している。図1は、その円柱軸を延長した外部の位置から該軸に沿って、当該清浄用器具を見た図である。この方向から見た図を、当該清浄用器具の側面図とする。
【0010】
図1に示すように、曲面部には、その曲面に沿って布帛Aが張った状態で装着されている。曲面部3の円周方向の両端縁部には、それぞれに把持部4、5が設けられている。把持部は、該布帛Aの両端縁部を挟み込んで該布帛を張った状態で保持するための機構部分である。図1では、把持部4、5の構造を判り易く示すために、布帛がどのように把持部に挟まれているかは、図示を省略している。把持部の好ましい構造は図4を用いて後述する。
【0011】
当該ロールミル清浄用器具は、以上の基本構成を有することによって、上記発明の効果の説明で述べたとおり、駆動しているロールミルに対しても、安全に、かつ、強い力で、拭き取り用布帛をロール面に押し付けることができる。しかも、回転するロールの力が布帛に作用しても、該布帛が脱落し難い構成となっている。
【0012】
曲面部3は、軽量化を行ないかつ簡単に製作する点から、板材(特に、金属板など)を円筒状に曲げることによって円柱面状の曲面を形成し、内部を中空とするのが好ましい。
図1の例では、芯本体部1は、金属板からなる曲面部3と、その円筒軸方向の両端に溶接によって接合される2つの側板7とを有して構成されている。また、2つの側板間には、取っ手部を取り付けるための取付部6が挿入されている。
図2は、図1に示した当該清浄用器具の全体的な構造を判り易く示した斜視図である。細部の付帯構造(把持部など)や、各部の切り欠きなどは、図示を省略している。図2(a)では、芯本体部1と、取っ手部2とを離した状態とするだけでなく、芯本体部1を、構成部品を溶接組立てする前の段階まで分解した分解組立図として示している。同図の例では、芯本体部は、基本的には、湾曲した金属板からなる曲面部3と、その円筒軸方向の両端に溶接される2つの側板(金属板)7a、7bと、取付部(金属管)6とを有してなる。これらの部品を組み立てて芯本体部1とし、取っ手部2を連結したときの斜視図が図2(b)である。
【0013】
図3に側面図を示すように、芯本体部1の曲面部3をその円柱軸に垂直に切断したときに現れる湾曲(部分円)の中心角θは、図3(a)のように180度より小さくても、図3(b)のように180度より大きくてもよい。図1の例では、中心角θは180度である。
この曲面部の湾曲の中心角θは、特に限定はされないが、湾曲の両端に布帛を保持する部分を設けることから、360度未満とし、30度〜330度程度とするのが適当な範囲である。この湾曲の中心角θの範囲は、ロールミルの大小様々な直径のロールに適当な角度で曲面部をあてることを考慮すれば、150度〜180度程度が好ましく、170度〜180度がより好ましい範囲である。
中でも、図1の例のような中心角180度は、取扱者が無理のない角度で曲面部(その表面には拭き取り用布帛が取り付けられている)を相手のロール表面にあてるのに適当であり、取扱者に負荷を与え難い設計となり、最も好ましい態様の1つである。
【0014】
図1の態様のように、曲面部を板材によって形成し内部を中空とする場合、該板材の材料は、金属、プラスチック、ゴムなど、一般的な構造用に利用可能な機械的強度と耐食性とを有するものであればよい。ステンレス、鋼などの金属板、特にステンレスは、機械的強度が高く、耐蝕性にも優れているので、好ましい材料である。
曲面部をステンレス板によって形成する場合、その板厚は、強度と軽量化の点からは、1mm〜1.5mm程度が好ましい範囲である。また、その場合、図2(a)に示した側版7a、7b、取付部(管状部材)の材料や板厚も同様であってよい。
側版などには、軽量化や洗浄時の水抜きのための貫通孔を適宜設けてよい。
【0015】
曲面部の外面の湾曲の半径(図1で符号R1で示した円柱面の半径)は、特に限定されないが、操作性において取扱者が無理なく安全に拭き取り用布帛を相手のロールにあてて清掃する器具とする点からは)、該湾曲の半径は、90mm〜120mm程度が好ましく、100mm〜105mmがより好ましい範囲である。
曲面部の円柱軸方向の全長も、用途や用いる布帛の大きさに応じて適宜決定してよいが、220mm〜300mm程度が通常の作業には好ましい。
【0016】
図2の例では、板金部品同士を溶接して芯本体部1を組み立てているが、部品同士の接合には、ボルト締め、リベット接合、ろう付け等の公知の接合・接着方法を適所に採用してよい。また、各部品を、機械的強度の大きいプスチックで構成する場合には、材料に適した接着剤を適宜に用いてよい。
【0017】
把持部は、曲面部の周方向の両端縁部に設けられる。把持部の構造は、特に限定はされず、曲面部の表面に沿って張るように配置した布帛を、清浄作業時に外れないように該布帛の端部をクランプし得る構造であればよい。そのようなクランプ構造に限定はなく、ボルトによる締め付けを利用した万力型のクランプ構造や、トグル機構を利用しワンタッチレバー操作にて開閉可能なトグル型のクランプ構造などであってもよい。
図4の態様では、把持部は、溝8と、挿入用部材9とによって布帛を挟み込む構成となっている。図4は、曲面部の周方向の一方の端縁部を拡大し、把持部が布帛をどのようにクランプするかを示した図であり、図5は、図4の把持部の溝8と挿入用部材9との関係を、判り易いように斜視図で示した図である。
図4に示すように、この態様では、挿入用部材9によって布帛Aを該溝8内に押し込み、該布帛Aを溝8と挿入用部材9とで挟み込んで強固に保持する構成となっている。このとき、該布帛Aは、単に溝内に少し入るだけでなく、図4に示すように、溝8の内壁に全面的に沿い、布帛の最も端が溝から余ってはみ出す程度に、十分に溝内に入っているようにセットするのが好ましい。
【0018】
図1〜5に示す態様では、曲面部は、金属板を湾曲させて得たものであるため、その内側は空洞になっている。この態様では、把持部4、5は、曲面部の周方向の両端縁部に、内側の空間を利用して設けられている。図4、5に示すように、曲面部3の周方向の端縁部の内側空間には、該端縁に沿って(即ち、曲面部の円柱軸に平行に)溝8が設けられている。
図1の態様では、曲面部3の周方向の端縁部は、金属板のエッジとして終わるのではなく、図4に示すように、内側へ折り曲げられた折り曲げ部3aが確保されている。一方、溝8は、U字状に曲げ加工された金属板8aによって構成され、この金属板8aが、折り曲げ部3aに溶接されている。これによって、図5に示すように、溝部8は、曲面部の周方向の端縁部の内側空間に、端縁に沿って位置している。また、金属板を曲げて構成した溝は、溝幅が弾性的に変化して布帛をしっかりと保持するという作用も期待できる。
【0019】
図1〜5の態様における溝部は、図5に示すように端縁の長手方向に沿って間欠的に設けることで、各溝部が互いに独立した保持力を有することができ、よりこのましい強度が出るが、そのような態様だけでなく、端縁の長手方向全長にわたって途切れることなく連続した溝を設けてもよい。
一方の挿入用部材9は、溝8に出し入れ可能な部材であればよい。溝8に沿って布帛を溝内へ押し付ける点を鑑みれば、挿入用部材の溝内に挿入される部分は板状とするのが簡単で好ましい態様である。
挿入用部材は、芯本体部から独立した単純な板状部品であってもよいが、紛失を防止し簡単に着脱し得るようにするには、図4、5に示すように、挿入用部材をスライド可能なように芯本体部に取り付けておく態様が好ましい。
図4、5に示す例では、挿入用部材9は、曲面部の円筒軸方向の両端に1対のスライド板10を有しており、該スライド板には可動範囲を決定する長穴11が設けられ、この長穴11に固定ピン12が挿入されている。これによって、該スライド板10は、固定ピン12によって横方向への移動を規制されながら、上下方向にのみスライドし得る構成となっている。固定ピン12は、土台部13から突起しており、その土台部13は、図2に示した曲面部の側版7a、7bに固定されている。
【0020】
図4、5の態様では、把持部の溝の深さ方向(開口から底部に向う方向)、即ち、布帛を押し込む方向は、曲面部の外面を円周方向に沿って端縁部まで延びてきた布帛が、溝内に入るために、端縁部で反対に折り返されるような方向となっている。
このように溝の深さ方向を選択することによって、曲面部の外面に沿って布帛に外力が作用しても、その力が溝内の布帛に伝わり難く、クランプ状態から抜け難い、即ち、ロールへの巻き込み事故が生じ難く安全であるという利点がある。
【0021】
把持部の溝幅は、用いられる布帛の厚さ、挿入される挿入用部材の板厚に応じて、布帛をしっかりとクランプできるように決定すればよい。例えば、布帛としてピローワイプワイパー(発泡ポリウレタンからなるシート状のフォームワイパーを、ポリエステル繊維で編んだ生地で挟み込んだ、ラミネートタイプの拭き取り用布帛。例えば、厚さ5mm程度のものが用いられている)を用いる場合には、溝幅は、弾性変形も考慮して3mm〜12mm程度、好ましくは3mm〜5mm程度、特に、3.5mm〜4mm程度が好ましい範囲である。
挿入用部材の板厚は、1mm〜2mm程度、特に1mm〜1.2mm程度が好ましく、その中から、溝幅と挿入用部材の板厚との差異が1mm〜10mm程度、好ましくは2.5mm〜3mm程度となるように該板厚を選択するのが好ましい。溝幅と挿入用部材の板厚とによって形成される隙間が布帛の厚さよりも小さくとも、布帛は圧縮され、溝幅は弾性的に広がるので、布帛の装着は可能である。
溝幅と挿入用部材の板厚との差異は、溝の弾性や布帛の厚さ・圧縮性に応じて、適宜変更してよい。
【0022】
図5に示すように、挿入用部材の先端縁9aを、サイン波状やノコギリ波状などの波状とすることによって、該先端縁を局所的に深く布帛に食い込ませ、溝内に布帛を強く保持することができる。
【0023】
取っ手部は、芯本体部に着脱自在に固定し得る態様とすれば、作業に応じて種々の取っ手を交換可能に用意でき、また、取っ手部を取り外すことによって収納もコンパクトとなり好ましい。
取っ手部を、芯本体部に着脱自在に固定するための構成は、特に限定はされず、取っ手部自体を芯本体部にねじ込む構成、ボルトを用いてねじ止めする構成、引っ掛けなど、作業中に外れるような事故が起きないような強固な連結構造を適宜採用してよい。
また、芯本体部に対する、取っ手部の取り付け角度、および/または、取り付け位置を変えることが可能な構成とすることで、取扱者が所望する位置や、ロールミルのロールサイズに応じて、適宜調整ができるという利点が得られる。そのための具体的な構造例については後述する。
【0024】
取っ手部は、芯本体部の背部から突起する一本の柄の態様としてもよいが、図2や図7に示すように、棒状のグリップ部21と、その両端部から角度をなして延びる取り付けアーム部22、23とを有してなる、略「コ」の字形を呈する態様とすれば、取扱者にとって持ち方の選択肢も広がるので好ましい。
【0025】
図7に示すように、取っ手部の形状が、略「コ」の字形である場合、グリップ21の全長は、曲面部の円柱軸方向の全長に応じて決定すればよい。好ましい態様では、グリップ21の全長は、170mm〜190mm程度である。
2つの取り付けアーム部22、23の長さは、特に限定はされないが、稼動中のロールミルのロールからの距離を確保するために一定以上長くとることが好ましい。一方、該アーム部を過度に長くすると、曲面部にかかる力をグリップ21で支えることが難くなる。このような点からは、取り付けアーム部の長さは、150mm〜250mm程度が好ましい範囲である。
図7の例では、2つの取り付けアーム部22、23は、同じ長さであるが、一方を他方よりも長くしてもよい。そのような態様によって、取扱者が側面から清掃を行なう場合であっても、ロールに対してグリップが斜めのアングルになる為、取扱者は上体を前かがみにする程度を抑えることができる。よって、作業面での取扱者の負荷を低減することが期待できる。
【0026】
取っ手部が、図7に示すような略「コ」の字形の場合、それぞれの取り付けアーム部自体を回転させて芯本体部にねじ込むことは困難となる。
図2、図6は、そのような場合の好ましい取り付け構造の態様を示している。この態様では、図7に示すように、2つの取り付けアーム部22、23の先端にそれぞれフック2fが設けられている。芯本体部の曲面部の背面側には、図1、図2に示すように、取っ手部2の先端を受け入れて固定するための取付部6が設けられている。この例では、該取付部6は、略円筒状の中空構造となっており、両端が側板に接合されている。
図2(a)に示すように、取付部6の略円筒状の胴体には、取っ手部2の2つのフック2fに対応する位置に、前記フックを挿入して引っ掛けるための貫通孔6aが設けられている。該貫通孔は、図6(b)に示すように、取付部の胴体の円周方向に長く延びる長穴として設けられており、その長穴の端には、前記フックを挿入し得るように開口寸法を大きくした部分6bが設けられている。これによって、フックの先端を、開口寸法の大きい部分6bを利用して取付部の胴体内部に挿入し、長穴に沿って貫通孔の任意の位置まで移動して引っ掛け、取っ手部を芯本体部に固定することが可能となる。
フックは、図6に示すようなL字状だけでなく、ボルトの頭部のようなキノコ状に膨らんだ態様であってもよい。そのような場合には、図6(b)に示すように、開口寸法を大きくした部分6bは、単純な円形であってよい。
【0027】
取っ手部をフックで引っ掛けるだけの構造では、取っ手がぐらつき、芯本体部に固定されているとは言い難い。この点を解決するため、図6(a)に示す態様では、フック2fのシャフトの胴体表面にネジ山を形成し、即ち、フックの胴体をオネジとし、この部分にに、ナット2gを組み込んでいる。同図の例では、フック先端の折れ曲がった部分は、オネジに対して溶接されている。ネジの呼びは、M3〜M8など、適宜選択すればよい。
このような態様によって、ナット2gを回転させて取付部表面まで移動させた後は、ナット2gの回転に従ってフック2fが上方へ引き上げられ、フック先端がしっかりと貫通孔6aに引っ掛った状態で固定される。
このような態様は、取っ手部を長穴に沿って移動させ、任意の位置で固定し得るので、好ましい態様でもある。
図6(a)に示す態様では、ナット2gを手で回しやすいように管状部分2hを設け、全体として、取り付けアーム部の先端部を覆う袋状の形態としている。ナットの管状部分2hの外面には、手で回しやすいように、ローレットを加工するのが好ましい。
【0028】
当該清浄用器具に装着される布帛は、拭き取るべき対象物(インクやペーストなど)に応じて、適宜選択してよく、例えば、スポンジ状フォームワイパーを極細ポリエステル繊維でラミネートしたクリーンルーム用布帛などの特殊な布帛を用いてよい。
【産業上の利用可能性】
【0029】
以上のとおり、当該清浄用器具では、布帛が芯本体部の表面を覆ってしっかりとかつ着脱自在に固定されているので、布帛を交換することができ、しかも、作業中にロールの力を受けても布帛が外れることもない。よって、回転しているロール表面に布を手で押し当てるという危険な作業が回避でき、ロール表面の拭き取りを効率よく行なうことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明によるロールミル清浄用器具の構成の一例を示す組立て図である。同図では、芯本体部の構造を示すために側板の一部を切り欠いて内部を示している。
【図2】図1に示したロールミル清浄用器具の全体的な構造を概略的に示した斜視図である。
【図3】本発明によるロールミル清浄用器具の芯本体部の側面図である。
【図4】本発明によるロールミル清浄用器具の、曲面部の周方向の一方の端縁部を部分的に拡大し、把持部の構造を判り易く示した図である。
【図5】図4の把持部の溝と挿入用部材との関係を、判り易いように示した斜視図である。
【図6】取っ手部が、略「コ」の字形の場合の、好ましい取り付け構造の態様を示す図である。
【図7】取っ手部の形態の一例を示す図である。
【図8】公知の3本ロールミルの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0031】
1 芯本体部
2 取っ手部
3 曲面部
4、5 把持部
6 取付部
7 側板
A 拭き取り用布帛

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロールミルのロール表面に付着した材料を拭き取るためのロールミル清浄用器具であって、当該清浄用器具は、芯本体部と、取っ手部とを有し、
取っ手部は、芯本体部に固定されているかまたは着脱自在に固定され得るものであり、
芯本体部は、拭き取り用布帛を装着し得る曲面部を有し、該曲面部の曲面は円柱面状に湾曲しており、その円柱面の中心軸に垂直に切断したときの該円柱面の中心角は360度未満であって、曲面部の円周方向の両端縁部には、拭き取り用布帛の両端縁部を挟み込んで保持し得るように構成された把持部が設けられていることを特徴とする、
前記ロールミル清浄用器具。
【請求項2】
曲面部は、湾曲した板材によって形成されており、
把持部は、該曲面部の周方向の両端縁部の内側に、それぞれ端縁に沿って設けられた溝と、該溝に出し入れ可能なように設けられた挿入用部材とを有して構成されており、曲面部の外部表面を覆った拭き取り用布帛の端部を該溝内に入れて、その上からさらに挿入用部材を該溝内に押し込むことによって、該布帛の端部を挟み込んで保持し得る構成となっている、請求項1記載のロールミル清浄用器具。
【請求項3】
把持部の溝幅と、それに挿入される挿入用部材の溝幅方向厚さとの差異が、1mm〜10mmである、請求項1または2記載のロールミル清浄用器具。
【請求項4】
挿入用部材のうち、溝内へ挿入される部分が、該溝に沿った板状部分を有しており、該板状部分の先端縁が波状となっている、請求項2または3記載のロールミル清浄用器具。
【請求項5】
取っ手部が、芯本体部に着脱自在に固定され得るものであって、かつ、
芯本体部に対する、取っ手部の取り付け角度および/または取り付け位置を、変えることが可能な構成となっている、請求項1〜4のいずれかに記載のロールミル清浄用器具。
【請求項6】
取っ手部が、棒状のグリップ部と、その両端部から角度をなして延びる取り付けアーム部とを有してなる、略「コ」の字形を呈する態様であって、前記2本の取り付けアーム部の先端にはそれぞれフックが設けられており、
芯本体部は、取っ手部を取り付けるための取付部を有し、該取付部は、曲面部の背面側に、該曲面部の中心軸に平行に延び略円筒状の構造を有し、該取付部の略円筒状の胴体には、前記取っ手部の2つのフックに対応する位置に、前記フックを挿入して引っ掛けるための貫通孔が設けられ、該貫通孔は、取付部の略円筒状の胴体の円周方向に長く延びる長穴として設けられており、
これによって、フックを長穴である貫通孔の任意の位置で引っ掛けて、取っ手部を芯本体部に固定し得る構成となっている、
請求項1〜5のいずれかに記載のロールミル清浄用器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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