説明

ロール状媒体搬送装置、ロール状媒体搬送方法、及び記録装置

【課題】ロール状媒体の搬送不良を確実に検出できる、ロール状媒体搬送装置、ロール状媒体搬送方法、及び記録装置を提供する。
【解決手段】支持軸R1にロール状媒体Mが巻き付けられてなるロール体Rを保持するとともにロール状媒体Mを巻き解いて供給する媒体供給部21と、ロール体Rから巻き解かれたロール状媒体Mを搬送する搬送手段23と、支持軸R1の回転を検出する回転検出手段と、支持軸R1を回転させる回転手段と、搬送手段23によりロール状媒体Mの搬送動作が実行された状態において回転検出手段が支持軸R1の回転を検出しない場合に、回転手段が支持軸R1を回転させた際の回転検出手段による検出結果に基づいてロール状媒体Mの搬送状態の異常を判定する判定部と、を備えたロール状媒体搬送装置2に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール状媒体搬送装置、ロール状媒体搬送方法、及び記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、媒体搬送装置として、軸部材にロール紙が巻き付けられてなるロール体(ロール状媒体)から巻き解いたロール紙を画像形成装置に供給するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。ロール体はロール紙が終端まで巻き出されると紙端が軸部材から外れるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許 第03527016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したロール体は例えば外部環境によって軸部材とロール紙の紙端が貼り付いてしまう場合がある。この場合、上記従来技術では、ロール紙が正常に搬送することができず、画像形成装置による画像形成が良好に行うことができなくなるといった問題があった。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、ロール状媒体の搬送不良を確実に検出できる、ロール状媒体搬送装置、ロール状媒体搬送方法、及び記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明のロール状媒体搬送装置は、支持軸にロール状媒体が巻き付けられてなるロール体を保持するとともに前記ロール状媒体を巻き解いて供給する媒体供給部と、前記ロール体から巻き解かれた前記ロール状媒体を搬送する搬送手段と、前記支持軸の回転を検出する回転検出手段と、前記支持軸を回転させる回転手段と、前記搬送手段により前記ロール状媒体の搬送動作が実行された状態において前記回転検出手段が前記支持軸の回転を検出しない場合に、前記回転手段が前記支持軸を回転させた際の前記回転検出手段による検出結果に基づいて前記ロール状媒体の搬送状態の異常を判定する判定部と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
例えば、ロール状媒体と支持軸との間に貼り付きが生じると、回転手段による支持軸の回転が回転検出手段により検出されないこととなる。上述のようにロール状媒体と支持軸との間に貼り付きが生じると、ロール状媒体を良好に搬送することができなくなる。すなわち、判定部は回転検出手段による検出結果に基づいてロール状媒体の搬送状態を判定することが可能である。
以上のように本発明のロール状媒体搬送装置によれば、上記判定部を備えることでロール状媒体の搬送状態の異常を検出することができる。
【0008】
また、上記ロール状媒体搬送装置においては、前記判定部は、前記回転検出手段により前記支持軸の回転が検出された場合、前記ロール状媒体の搬送状態が正常であると判定するのが好ましい。
ロール状媒体と支持軸との間に貼り付きが生じておらず支持軸からロール状媒体が離間すれば、回転手段による支持軸の回転が回転検出手段により検出されることとなる。この場合、ロール状媒体は良好に搬送されることとなる。
本発明によれば、判定部がロール状媒体と支持軸との間に貼り付きが生じておらず支持軸からロール状媒体が離間した状態、すなわちロール状媒体の搬送状態が正常であることを確実に判定することができる。
【0009】
また、上記ロール状媒体搬送装置においては、前記回転手段は前記支持軸を前記ロール状媒体の搬送方向と反対方向に回転させるのが好ましい。
この構成によれば、搬送方向と反対方向、すなわちロール状媒体の巻き取り方向に支持軸を回転させるので、瞬時に支持軸が回転したか否かを判定することができる。よって、支持軸の回転検出に基づいてロール状媒体の支持軸に対する貼り付きを良好に検出することができる。
【0010】
また、上記ロール状媒体搬送装置においては、前記媒体供給部と前記搬送手段との間に配置され、前記ロール状媒体の終端を検出する終端検出手段を有し、前記判定部は、前記回転検出手段により前記支持軸の回転が検出された場合において、前記終端検出手段が前記ロール状媒体の終端を検出したときに前記ロール体の該ロール状媒体が終了したと判定するのが好ましい。
この構成によれば、判定部が支持軸に巻きつけられていたロール状媒体が無くなった状態を良好に判定することができる。
【0011】
本発明のロール状媒体の搬送方法は、支持軸にロール状媒体が巻き付けられてなるロール体から巻き出した前記ロール状媒体を搬送するロール状媒体の搬送方法であって、前記ロール状媒体の搬送状態の判定する判定工程を有し、前記判定工程は、前記ロール状媒体の搬送動作が実行された状態において前記支持軸の回転が検出されない場合に、回転手段を用いて前記支持軸を回転させる回転ステップと、前記回転手段による前記支持軸の回転を検出する検出ステップと、前記検出ステップの検出結果に基づいて前記搬送状態の異常を判定する判定ステップと、を含むことを特徴とする。
【0012】
本発明のロール状媒体の搬送方法によれば、回転検出手段による検出結果に基づいてロール状媒体の搬送状態を判定することで貼り付きに起因したロール状媒体の搬送状態の異常を検出することができる。
【0013】
本発明の記録装置は、上記のロール状媒体搬送装置と、前記ロール状媒体搬送装置に供給される前記ロール状媒体に対して記録処理を行う記録部と、を備え、前記判定部が前記ロール状媒体の搬送状態が異常であると判定した場合に前記ロール状媒体の搬送を前記記録部による記録処理を停止することを特徴とする。
【0014】
本発明の記録装置によれば、ロール状媒体の搬送状態の異常が判定された場合に、ロール状媒体の搬送を停止させることができる。よって、記録部に対して良好に搬送されないロール状媒体に対して記録処理が行われてしまうといった不具合の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態に係るプリンターを示す構成図である。
【図2】本実施形態に係る搬送部の要部構成を示す図である
【図3】本実施形態に係るプリンターの電気構成を示すブロック図である。
【図4】本実施形態に係るプラテンヒーター部の構成を示す斜視図である。
【図5】本実施形態に係るヒーターの構成を示す平面図である。
【図6】本実施形態に係る判定工程を説明するための図である。
【図7】判定工程時におけるメディア及び支持軸の状態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る記録装置の各実施形態について、図を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。本実施形態では、本発明に係る記録装置として、インクジェット式プリンター(以下、単にプリンターと称する)を例示する。
【0017】
図1は、本発明の実施形態におけるプリンター1を示す構成図である。
プリンター1は、比較的大型のメディア(記録媒体)Mを扱うラージフォーマットプリンター(LFP)である。本実施形態のメディアMは、例えば64インチ(Inch)程度の幅を有する塩化ビニル系フィルムから形成されている。
【0018】
図1に示すように、プリンター1は、ロール・ツー・ロール方式でメディアMを搬送する搬送部(ロール状媒体搬送装置)2と、メディアMに対してインク(流体)を噴射して画像や文字等を記録する記録部3と、メディアMを加熱する加熱部4と、搬送部2、記録部3、及び加熱部4の各駆動の他、プリンター1の全体の制御を行う制御部40(図3参照)と、を有する。これら各構成部は、本体フレーム5に支持されている。
【0019】
搬送部2は、ロール体Rからロール状のメディア(ロール状媒体)Mを送り出す送り出し部(媒体供給部)21と、送り出されたメディアMを巻き取る巻取り部22とを有する。搬送部2は、送り出し部21及び巻取り部22間の搬送経路においてメディアMを搬送する搬送ローラー対(搬送手段)23,24を有する。また、搬送部2は、搬送ローラー対24及び巻取り部22間の搬送経路においてメディアMに張力を付与するテンションローラー25を有する。また、搬送部2は、メディアMの終わり(終端)を検出する端部検出センサー(終端検出手段)80を備えている。なお、端部検出センサー80は、制御部30に電気的に接続されており、その検出信号を送信するようになっている。
【0020】
送り出し部21は、支持軸R1に巻きつけられたメディアMからなるロール体Rを保持するとともにメディアMを巻き解くことで記録部3に供給するものである。一方、巻取り部22は、主動ローラーによる搬送力が付与されることで送り出し部21から巻き解かれ、記録部3で所定の記録処理が施されたメディアMを順次巻き取るためのものである。
【0021】
図2は搬送部2の要部構成を示す図である。図2に示すように、送り出し部21は、ロール体Rの支持軸R1の回転を検出する検出装置(回転検出手段)60を備えている。検出装置60は、メディアMが巻き取られた支持軸R1、すなわちロール体Rの回転量を検出するロール回転検出手段64と、ロール体Rに回転動力を与えるロール駆動手段61とを備えている。ロール駆動手段61は、上記制御部40に電気的に接続されており、その駆動が制御されるようになっている(図3参照)。
【0022】
ロール駆動手段61は、モータ62と、ロール体Rにモータ62の動力を伝達する動力伝達機構63とを備えて構成され、モータ62の回転により、ロール体Rを正転方向(メディアMを巻き解く方向)或いは逆転方向(メディアMを巻き取る方向)に回転させることが可能となっている。動力伝達機構63は、モータ62の回転軸に噛み合う第1のギア63aと、ロール体Rの支持軸R1に一体に取り付けられる第2のギア63bと、を含む。なお、動力伝達機構63に遊星歯車機構(図示省略)を設け、逆転方向のみロール体Rにモータ62に動力を伝達可能な構成としても構わない。
【0023】
ロール回転検出手段64は、外周部に多数の透光部(図示省略)を有した円盤状スケール64aと、前記透光部に対して発光する発光部および前記透光部を通過した光を受光する受光部を備えた検出部64bと、を備えて構成されている。円盤状スケール64aは、ロール体Rの支持軸R1に一体に設けられている。なお、ロール回転検出手段64は、制御部40に電気的に接続されており、検出部64bの検出信号が送信されるようになっている(図3参照)。
【0024】
支持軸R1の回転に伴い円盤状スケール64aが回転すると、これに伴って検出部64bが前記透光部を通過する光によって形成される立ち上がり信号と立ち下がり信号とを出力し、制御部40は、この様な検出部34bからの出力信号を受信することによって、ロール体R(支持軸R1)の単位時間当たりの回転量(回転角度)や回転速度等を算出可能となっている。
【0025】
搬送ローラー対24は、主動ローラー24aと該主動ローラー24aの回転に従動する従動ローラー24bとを含む。また、搬送ローラー対23は、メディアMを挟持する一対のローラーから構成されており、上記主動ローラー24aにより搬送されるメディアMにより各々が従動回転するようになっている。
【0026】
また、図2に示すように、搬送部2は、ロール体Rから巻き解かれたメディアMと接し且つ回転することによりメディアMを搬送する主動ローラー24aの回転量を検出するローラー回転検出手段68と、主動ローラー24aに回転動力を与える駆動手段65と、を含む。駆動手段65及びローラー回転検出手段68は、上記制御部40に電気的に接続されており、その駆動が制御されるようになっている(図3参照)。
【0027】
駆動手段65は、モータ66と、主動ローラー24aにモータ66の動力を伝達する動力伝達機構67とを備えて構成され、モータ66の回転により、主動ローラー24aを正転方向(ロール体Rから巻き解かれたメディアMを送る方向)或いは逆転方向(ロール体Rの巻き取り方向にメディアMを送る方向)に回転させることが可能となっている。動力伝達機構67は、主動ローラーの軸部の一端とモータ66の回転軸との間に掛け渡されるベルトBを含む。
【0028】
ローラー回転検出手段68は、外周部に多数の透光部(図示省略)を有し、主動ローラー24aの軸端に取り付けられる円盤状スケール68aと、前記透光部に対して発光する発光部および前記透光部を通過した光を受光する受光部を備えた検出部68bと、を備えて構成されている。
【0029】
主動ローラーの回転に伴い円盤状スケール68aが回転すると、これに伴って検出部68bが前記透光部を通過する光によって形成される立ち上がり信号と立ち下がり信号とを出力し、制御部40は、この様な検出部68bからの出力信号を受信することによって、主動ローラーの単位時間当たりの回転量(回転角度)や回転速度等を算出可能となっている。
【0030】
巻取り部22は、メディアMを巻き取るための巻取り軸22aと、該巻取り軸22aを巻取り方向(メディアMの搬送方向)に回転させるモータ22bと、を含む。モータ22bは、制御部40に電気的に接続されており、その駆動が制御されている。
【0031】
搬送部2は、制御部40が駆動手段65を駆動させることで主動ローラー24aを正転方向に回転させるとロール体Rが支持軸R1とともに回転する。これにより、送り出し部21の保持されたロール体RからメディアMが巻き解かれ、記録部3の下方に搬送することができる。搬送部2は、駆動手段65の駆動に合わせてモータ22bを駆動し、巻取り軸22aを正転方向に回転させることで記録部3による記録処置が行われたメディアMを巻き取ることが可能となる。
【0032】
制御部40は、主動ローラー24aの回転に伴って回転する円盤状スケール68aの出力信号を検出部68bから受信することで主動ローラー24aによるメディアMの送り量を算出している。これにより、制御部40はメディアMの送り量を良好に制御することが可能となる。
【0033】
本実施形態においては、制御部40がメディアMの送り量を検出するとともに、ロール体Rの回転に伴って正転方向に回転する支持軸R1に取り付けられた円盤状スケール64aの出力信号を検出部64bから受信することでロール体Rの回転を検出するようにしている。これにより、制御部40は、後述のようにメディアMの搬送状態の異常を判定する判定部として機能するようになっている。
【0034】
図1に示したように、テンションローラー25は、揺動フレーム26に支持されており、メディアMの裏面に幅方向(図1において紙面垂直方向)で接触する構成となっている。テンションローラー25は、メディアMの幅よりも幅方向において長く形成されている。テンションローラー25は、後述する加熱部4のアフターヒーター部43よりも搬送方向下流側に設けられている。
【0035】
記録部3は、搬送ローラー対23,24間の搬送経路においてメディアMに対してインク(流体)を噴射するインクジェットヘッド31と、インクジェットヘッド31を搭載して幅方向に往復移動自在なキャリッジ32とを有する。インクジェットヘッド31は、複数のノズルを備え、メディアMとの関係で選択されて浸透乾燥や蒸発乾燥を必要とするインクを噴射可能な構成となっている。記録部3は、制御部40に電気的に接続されており、その駆動が制御されている(図3参照)。制御部40は後述のようにメディアMの搬送状態の異常を判定(検出)した場合に記録部3による記録処理を停止するようになっている。
【0036】
加熱部4は、メディアMを加熱することによりインクをメディアMに速やかに乾燥定着させ、滲みやぼやけを防止して、画質を高める構成となっている。加熱部4は、メディアMの搬送経路の一部を構成する支持面を有して、メディアMを送り出し部21及び巻取り部22間で上方に凸となるように湾曲させて支持すると共に、支持面上のメディアMを加熱する構成となっている。加熱部4は、制御部40に電気的に接続されており、その駆動が制御されている(図3参照)。
【0037】
加熱部4は、記録部3が設けられた位置よりも搬送方向上流側でメディアMを予熱するプレヒーター部41と、記録部3と対向する位置でメディアMを加熱するプラテンヒーター部42と、記録部3が設けられた位置よりも搬送方向下流側でメディアMを加熱するアフターヒーター部43とを有する。
【0038】
本実施形態では、プレヒーター部41におけるヒーター41aの加熱温度が、40℃に設定されている。また、本実施形態では、プラテンヒーター部42におけるヒーター42aの加熱温度が、ヒーター41aと同じく40℃(目標温度)に設定されている。また、本実施形態では、アフターヒーター部43におけるヒーター43aの加熱温度が、ヒーター41a,42aよりも高い50℃に設定されている。
【0039】
プレヒーター部41は、メディアMを常温から目標温度(プラテンヒーター部42における温度)に向けて徐々に昇温させることによって、インクの着弾時からの乾燥を速やかに促す構成となっている。また、プラテンヒーター部42は、目標温度を維持した状態でインクの着弾をメディアMに受けさせて、インクの着弾時からの乾燥を速やかに促す構成となっている。
【0040】
また、アフターヒーター部43は、メディアMを目標温度よりも高い温度まで昇温させ、メディアMに着弾したインクのうち未だ乾燥していないものを速やかに乾燥させ、少なくとも巻取り部22で巻き取る前に、着弾したインクをメディアMに完全に乾燥定着させる構成となっている。
【0041】
図3はプリンター1の電気的な構成を示すブロック図である。図3に示すように、プリンター1は、各構成部材(記録部3、加熱部4、ロール駆動手段61、ロール回転検出手段64、駆動手段65、ローラー回転検出手段68)の駆動を制御する制御部40を有している。
【0042】
続いて、本実施形態のプラテンヒーター部42における特徴的な構成について図4、5を参照して説明する。図4は、本発明の実施形態におけるプラテンヒーター部42の構成を示す斜視図である。図5は、本発明の実施形態におけるヒーター42aの構成を示す平面図である。
【0043】
図4に示すように、プラテンヒーター部42は、メディアMを支持する支持面50を有するプラテン(支持部材)51を有する。プラテン51は、Al材やSUS材等の金属材から形成されている。本実施形態のプラテン51は、Al材から形成されている。プラテン51は、メディアMの幅よりも幅方向において長く、より詳しくは、64インチ程度の幅よりも長い平板形状を有する。
【0044】
プラテン51の支持面50と逆側の面には、図5に示すようなヒーター42aが配線されている。ヒーター42aは、チューブヒーターであり、アルミテープ53を介して、プラテン51の逆側の面に貼付されている。したがって、ヒーター42aは、逆側の面から熱伝導によりプラテン51を伝熱加熱すると共に、支持面50上に支持されたメディアMを裏側から間接的に加熱する構成となっている。
【0045】
プラテン51の支持面50と対向する位置には、図1に示すようなヒーター42b(輻射加熱部)が設けられている。ヒーター42bは、赤外線ヒーターであり、支持面50に対し所定距離をあけ、且つ、プラテン51の幅方向に亘って延在して設けられている。したがって、ヒーター42bは、支持面50に直接的に赤外線エネルギーを照射することにより、プラテン51を輻射加熱すると共に、支持面50上にメディアMが支持されている場合には、メディアMの記録面側を直接的に輻射加熱する構成となっている。
【0046】
ヒーター42bは、輻射スペクトルのピークの主要部が2μm〜4μmの領域を含む波長を有する電磁波を照射する構成となっている。これにより、ヒーター42bは、周囲の水分子を含まない構成部材などをあまり昇温させずに、インクに含まれる水分子を振動させて、その摩擦熱により乾燥を速やかに促すことができる。したがって、赤外線エネルギーの大部分をインクに吸収させ、メディアMよりもその記録面上に着弾したインクを集中的に加熱させることができる。
【0047】
支持面50と対向する位置には、図1に示したようにインクジェットヘッド31が設けられている。インクジェットヘッド31は、支持面50とヒーター42bとの間に位置する位置関係を有し、その間において、キャリッジ32に搭載されて幅方向に往復移動する構成となっている。したがって、インクジェットヘッド31のインク吐出部であるノズルプレートへの赤外線エネルギーの照射がされないため、ノズル部分におけるインクの固化・固着の発生を抑制することができる。なお、キャリッジ32は、赤外線エネルギーの照射を受けるため、熱対策として、例えば断熱材等を設けている。
【0048】
続いて、本実施形態に係るプリンター1の動作について説明する。
印字開始のジョブ指令が入力されると、プリンター1は、搬送ローラー対24の主動ローラー24aを駆動し、メディアMに搬送力を付与することで記録部3の下方へと移動させる。このとき、プラテンヒーター部42では、加熱源(ヒーター42a,42b)が駆動し、プラテン51が常温から所定温度(本実施形態では例えば40℃)まで昇温する。プラテン51では、支持面50がヒーター42bによって輻射加熱され、逆側の面がヒーター42aによって伝熱加熱される。
【0049】
プリンター1は、メディアMが、支持面50上の印字領域まで搬送されてくると、インクジェットヘッド31により印字を開始する。このとき、プラテン51は、支持面50がメディアMによって覆われるので、ヒーター42bによる熱を受熱し難くなるが、ヒーター42aによる熱を受熱することで、温度が一定に維持される。
【0050】
インクジェットヘッド31は、キャリッジ32に搭載されて、幅方向に往復移動しながら印字を行う。ヒーター42bは、キャリッジ32の上方に幅方向に亘って設けられているので、インク着弾領域からキャリッジ32が退避すると、当該インク着弾領域は、輻射スペクトルのピークの主要部が2μm〜4μmの領域を含む波長で直接に輻射加熱される。そうすると、着弾したインクに含まれる水分子が振動し、その摩擦熱により蒸発・乾燥が促され、メディアMに対して滲み等を生じさせることなくインクが定着することとなる。
【0051】
印字終了のジョブ指令が入力されると、プラテンヒーター部42では、加熱源(ヒーター42a,42b)が駆動を停止し、プラテン51が所定温度から常温まで降温する。
【0052】
ところで、本実施形態のようにメディアMが支持軸R1に巻き付けられたロール体Rでは、稀にメディアMの終端部が支持軸R1に貼り付く場合がある。このようなメディアMの貼り付きが生じると、メディアMが記録部3の下方に良好に搬送されない状態となる。
【0053】
この場合、メディアMの端部は端部検出センサー80で検出することができない。すると、記録部3のインクジェットヘッド31から搬送されない(移動しない)メディアMに対してインクの吐出が連続的に行われてしまい、メディアMに保持できないインクによって、プリンター1の内部が汚れるといった問題を引き起こすおそれがある。
【0054】
これに対し、本実施形態に係るプリンター1では、搬送部2によるメディアMの搬送時において、制御部40が上述したメディアMの貼り付きに起因する搬送異常を判定(検出)する判定工程を行うようになっている。
【0055】
以下、メディアMの搬送時の判定工程について説明する。図6は判定工程を説明するための図である。また、図7は、メディアM及び支持軸R1の状態を説明するための図である。メディアMが正常に搬送されているとき、制御部40は主動ローラー24aの回転、及び該メディアMの搬送に伴って回転する支持軸R1の回転を検出している。判定工程は、図6に示すように、回転ステップS1と、検出ステップS2と、判定ステップS3と、を含んでいる。
【0056】
回転ステップS1においては、メディアMの搬送動作が実行された状態において支持軸R1の回転が検出されない場合に、制御部40がロール駆動手段61を用いて支持軸R1を回転させる。なお、制御部40はメディアMの搬送動作が実行された状態において支持軸R1の回転が検出されている限り、下記の判定ステップを行うことは無い。
【0057】
ここで、メディアMの搬送動作が実行された状態において支持軸R1の回転が検出されない場合とは、以下の2つが考えられる。第一としては、図7(a)に示すようにロール体RのメディアMが終了した状態である。メディアMが無くなることで支持軸R1からメディアMが外れると支持軸R1に回転力が付与されなくなり、支持軸R1が回転しない。そのため、ロール回転検出手段64の検出部64bは、支持軸R1と一体に設けられた円盤状スケール64aを介した光を受光できず、制御部40はロール回転検出手段64から支持軸R1が回転している旨の信号を受信できない。
【0058】
また、第二としては、図7(b)に示すようにメディアMの端部が支持軸R1に貼り付いた状態である。メディアMが支持軸R1に張り付くと主動ローラー24a及び従動ローラー24bとメディアMとの間に滑りが生じ、メディアMが移動しないので、ロール体Rの支持軸R1は回転しない。そのため、制御部40はロール回転検出手段64から支持軸R1が回転している旨の信号を受信できない。
【0059】
制御部40は、上述のように支持軸R1の回転が検出されない場合、支持軸R1を回転させる。具体的に本実施形態では、制御部40がロール駆動手段61のモータ62を駆動し、モータ62の回転により、支持軸R1を回転させる。なお、支持軸R1の回転方向は、メディアMの搬送方向と逆に設定するのが望ましい。これは、後述のようにメディアMが支持軸R1に貼り付いていた場合、メディアMを巻き解く方向に回転させた場合よりもメディアMを巻き取る方向(メディアMの搬送方向と反対方向)に回転させた場合の方がメディアMの動きが規制されるため、瞬時に支持軸R1が回転したか否かを検出しやすいからである。
【0060】
続いて、制御部40は支持軸R1の回転を検出する上記検出ステップS2を行う。
ここで、支持軸R1の回転が検出されない理由がロール体RにおけるメディアMの終了(図7(a)参照)に起因したものである場合、図7(a)に示すように支持軸R1は回転する。支持軸R1が回転すると円盤状スケール64aも回転するため、制御部40はロール回転検出手段64から支持軸R1が回転している旨の信号を受信する。これにより、制御部40は支持軸R1の回転を検出することができる。このとき、制御部70はメディアMの搬送状態が正常であると判定する。
【0061】
一方、支持軸R1の回転が検出されない理由がメディアMの貼り付き(図7(b)参照)に起因したものである場合、図7(b)に示すように支持軸R1はメディアMに引っ張られた状態となるために回転することができない。支持軸R1が回転しないと円盤状スケール64aも回転しないため、制御部40はロール回転検出手段64から支持軸R1が回転している旨の信号を受信しない。これにより、制御部40は支持軸R1が回転していないことを検出することができる。
【0062】
続いて、制御部40は検出ステップS2における検出結果に基づいて、メディアMの搬送状態の異常を判定する上記判定ステップS3を行う。制御部40は、主動ローラー24aが回転した状態(メディア搬送状態)であるものの、上述のように支持軸R1が回転しなかった場合、メディアMが支持軸R1に貼り付いたと判定することができる。一方、制御部40は、主動ローラー24aが回転した状態(メディア搬送状態)であるものの、上述のように支持軸R1が回転した場合、ロール体RのメディアMが終了したと判定することができる。
【0063】
制御部40は、メディアMの後端が支持軸R1に貼り付きを検出した時点で、メディアMの搬送状態が異常であると判定し、この時点で記録部3による記録処理を中止する。これにより、記録部3のインクジェットヘッド31から搬送異常のメディアMに対してインクの吐出が連続的に行われる事でプリンター1の内部を汚してしまうといった不具合の発生を防止できる。
【0064】
一方、制御部40は、ロール体RのメディアMが終了したと判定した場合、メディアMの搬送状態が正常であるものとし、端部検出センサー80によりメディアMの端部を検出した後、メディアMの残量を考慮した上で記録部3による記録処理を行うことができる。これにより、メディアMの後端余白をできるだけ小さくして印刷処理を行うことができるので、メディアMを無駄なく使い切ることができる。
【0065】
以上述べたように、本実施形態によれば、搬送部2がロール体Rから巻き出すことで記録部3にメディアMを搬送するメディアMの搬送工程において、該メディアMの搬送状態の異常を判定できるので、端部検出センサー80でメディアMの後端が検出できない場合でもメディアMの搬送動作を終了させることができる。よって、例えば夜間無人運転でプリンター1を駆動した場合等において、メディアMの搬送異常が生じたとしても、搬送異常状態のメディアMへのインクの連続吐出を防止すること及びこれに起因して生じるプリンター1内の汚れを防止することができる。また、端部検出センサー80によりメディアMの後端を検出することで、ロール体RのメディアMを無駄なく使い切ることができる。
【0066】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0067】
例えば、上記実施形態においては、ロール体RにおいてメディアMの終端が支持軸R1に貼りついた場合に起因した搬送状態の異常を制御部40が判定する場合を例に説明したが、本発明はこれに限定されることはない。例えば、制御部40は、ロール体Rの途中でメディアM同士の貼り付きが生じ、メディアMが記録部3に良好に搬送できないといった搬送状態の異常を判定することができる。このような場合、主動ローラー24aは回転することでメディアMに搬送力を付与するものの、貼り付いたメディアMは搬送されないので、ロール体RからメディアMが巻き解かれることがない。よって、ロール体R(支持軸R1)が回転することが無い。したがって、制御部40は主動ローラー24aの回転を検出しているにも関わらず、支持軸R1の回転が検出できない状態においては上述のようなメディアMの貼り付きが生じたものとして搬送状態の異常を判定することができる。
【0068】
また、上記実施形態においては、記録装置がプリンター1である場合を例にして説明したが、プリンターに限られず、複写機及びファクシミリ等の装置であってもよい。
【0069】
また、記録装置としては、インク以外の他の流体を噴射したり吐出したりする記録装置を採用してもよい。本発明は、例えば微小量の液滴を吐出させる記録ヘッド等を備える各種の記録装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記記録装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、記録装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクが挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。また、記録媒体としては、塩化ビニル系フィルム等のプラスチックフィルム以外に、用紙、機能紙、基板や金属板などを包含するものとする。
【符号の説明】
【0070】
1…プリンター(記録装置)、2…搬送部(ロール状媒体搬送装置)、3…記録部、21…送り出し部(媒体供給部)、23…搬送ローラー対(搬送手段)、40…制御部(判定部)、60…検出装置(回転検出手段)、80…端部検出センサー、M…メディア(ロール状媒体)、R…ロール体、R1…支持軸、S1…回転ステップ、S2…検出ステップ、S3…判定ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持軸にロール状媒体が巻き付けられてなるロール体を保持するとともに前記ロール状媒体を巻き解いて供給する媒体供給部と、
前記ロール体から巻き解かれた前記ロール状媒体を搬送する搬送手段と、
前記支持軸の回転を検出する回転検出手段と、
前記支持軸を回転させる回転手段と、
前記搬送手段により前記ロール状媒体の搬送動作が実行された状態において前記回転検出手段が前記支持軸の回転を検出しない場合に、前記回転手段が前記支持軸を回転させた際の前記回転検出手段による検出結果に基づいて前記ロール状媒体の搬送状態の異常を判定する判定部と、
を備えたことを特徴とするロール状媒体搬送装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記回転検出手段により前記支持軸の回転が検出された場合、前記ロール状媒体の搬送状態が正常であると判定することを特徴とする請求項1に記載のロール状媒体搬送装置。
【請求項3】
前記回転手段は前記支持軸を前記ロール状媒体の搬送方向と反対方向に回転させることを特徴とする請求項1又は2に記載のロール状媒体搬送装置。
【請求項4】
前記媒体供給部と前記搬送手段との間に配置され、前記ロール状媒体の終端を検出する終端検出手段を有し、
前記判定部は、前記回転検出手段により前記支持軸の回転が検出された場合において、前記終端検出手段が前記ロール状媒体の終端を検出したときに前記ロール体の該ロール状媒体が終了したと判定することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のロール状媒体搬送装置。
【請求項5】
支持軸にロール状媒体が巻き付けられてなるロール体から巻き出した前記ロール状媒体を搬送するロール状媒体の搬送方法であって、
前記ロール状媒体の搬送状態の判定する判定工程を有し、
前記判定工程は、前記ロール状媒体の搬送動作が実行された状態において前記支持軸の回転が検出されない場合に、回転手段を用いて前記支持軸を回転させる回転ステップと、
前記回転手段による前記支持軸の回転を検出する検出ステップと、
前記検出ステップの検出結果に基づいて前記搬送状態の異常を判定する判定ステップと、を含むことを特徴とするロール状媒体の搬送方法。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のロール状媒体搬送装置と、
前記ロール状媒体搬送装置に供給される前記ロール状媒体に対して記録処理を行う記録部と、を備え、
前記判定部が前記ロール状媒体の搬送状態が異常であると判定した場合に前記ロール状媒体の搬送を前記記録部による記録処理を停止することを特徴とする記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−18628(P2013−18628A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154509(P2011−154509)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】