ロール金型の製造方法、ロール金型、及び光学シートの製造方法
【課題】格子状に凹凸形状を有する層を備える光学シートを形成するロール金型を製造するに際し、製造効率を向上させることが可能なロール金型の製造方法を提供する。
【解決手段】格子状の凹凸形状を有する光学シートの凹凸形状部分を成形するロール金型10を製造する方法であって、円筒状又は円柱状の金型本体11を回転させ、金型本体の表面に、該金型本体の正面視で回転軸及び金型本体の直径方向に対して傾斜した螺旋状の第一の溝14を、回転軸方向に切削工具30を送って形成する工程と、金型本体を回転させ、該金型本体の表面に、金型本体の正面視で回転軸及び金型本体の直径方向に対して前記第一の溝とは異なる角度で傾斜した螺旋状の第二の溝16を、回転軸方向に切削工具35を送って形成する工程と、を含む。
【解決手段】格子状の凹凸形状を有する光学シートの凹凸形状部分を成形するロール金型10を製造する方法であって、円筒状又は円柱状の金型本体11を回転させ、金型本体の表面に、該金型本体の正面視で回転軸及び金型本体の直径方向に対して傾斜した螺旋状の第一の溝14を、回転軸方向に切削工具30を送って形成する工程と、金型本体を回転させ、該金型本体の表面に、金型本体の正面視で回転軸及び金型本体の直径方向に対して前記第一の溝とは異なる角度で傾斜した螺旋状の第二の溝16を、回転軸方向に切削工具35を送って形成する工程と、を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に微細な凹凸形状を有する光学シートを製造する際に用いられるロール金型の製造方法、ロール金型、及び当該ロール金型の製造方法を含む光学シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマテレビや液晶表示装置のような、映像を観察者に出射する映像表示装置には、映像光源と、該映像光源からの映像光の質を高めて観察者側に透過する機能を有する光学シートと、が備えられている。
【0003】
このような光学シートは通常、各機能を有する層が複数積層されることにより構成されているが、当該層の1つには、その表面に微細な凹凸形状が設けられた層を備えることがある。例えば特許文献1に記載の光学シート(光拡散シート)では、断面形状が微細な台形である単位レンズが複数並べられ、単位レンズ間には単位レンズとは異なる物質を充填した構成が開示されている。これによれば、界面による全反射を利用して視野角制御がおこなわれる。
【0004】
また特許文献1では、該特許文献1の図1によく表れているように、台形断面を有する単位レンズが鉛直方向に延びる1つの光拡散シート(102)と、同様の単位レンズが水平方向に延びる光拡散シート(103)とが積層されている。
【0005】
さらに、特許文献1には、該特許文献1の図9に、半載円錐状の単位レンズが平面上に二次元状に配列されてた形態が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、該特許文献2の図9(c)に表れているように、1つの層に格子状に光吸収部を形成し、その間隔を光透過部とした光学シート(視認性向上シート)が開示されている。
【0007】
このような特許文献1、2に記載の層を有する光学シートによれば、水平方向及び鉛直方向のいずれにも視野角を制御できる。特に特許文献2に記載の光学シートのような格子状の要素を形成することにより、目的の視野角制御をするための層が1つの層ですむ。また、これによれば特許文献1に記載の半載円錐状の単位レンズよりも形状が簡易となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−66206号公報
【特許文献2】特開2004−62084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記説明した層を形成するに際しては、生産性を高めるために連続して該層を製造することが可能なロール金型を用いることが多い。ロール金型とは、例えば特許文献1の第12図に記載のような円柱状の金型であり、その外周面に所定の凹凸形状が形成されている。この凹凸形状を光学シートの層に転写することにより該層は所望の断面形状を得ることができる。
【0010】
ここで、従来において、特許文献2に記載のような格子状の要素を製造する際には、当該格子状に対応した図12に記載のような凹凸を有するロール金型200を用いていた。従来において、ロール金型200は、円柱状(又は有底円筒状)の金型本体201及び該金型本体201の円柱軸を軸とする回転軸202を備えている。そして金型本体201の外周面には、金型本体201の円周方向に延び、回転軸202の長手方向に配列される第一溝203と、回転軸202の長手方向に延び、金型本体201の円周方向に配列される第二溝204と、が刻設されていた。
【0011】
しかしながら、このようなロール金型200では、第一溝203、第二溝204を切削加工によりそれぞれ形成する必要があり、非常に時間がかかっていた。
【0012】
そこで本発明は、格子状に凹凸形状を有する層を備える光学シートを形成するロール金型を製造するに際し、製造効率を向上させることが可能なロール金型の製造方法を提供する。また、このような製造方法によるロール金型、及びロール金型の製造方法を含む光学シートの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0014】
請求項1に記載の発明は、格子状の凹凸形状を有する光学シート(110)の凹凸形状部分を成形するロール金型(10)を製造する方法であって、円筒状又は円柱状の金型本体(11)を回転させ、金型本体の表面に、該金型本体の正面視で回転軸及び金型本体の直径方向に対して傾斜した螺旋状の第一の溝(14)を、回転軸方向に切削工具(30)を送って形成する工程と、金型本体を回転させ、該金型本体の表面に、金型本体の正面視で回転軸及び金型本体の直径方向に対して前記第一の溝とは異なる角度で傾斜した螺旋状の第二の溝(16)を、回転軸方向に切削工具(35)を送って形成する工程と、を含む、ロール金型の製造方法である。
【0015】
請求項2に記載の発明は、格子状の凹凸形状を有する光学シート(110)の凹凸形状部分を成形するロール金型(10)であって、円筒状又は円柱状の金型本体(11)の外周面に、該金型本体の正面視で円筒又は円柱の軸及び直径方向に対して傾斜して軸方向に形成された螺旋状の第一の溝(14)と、金型本体の外周面に、該金型本体の正面視で軸及び直径方向に対して第一の溝とは異なる角度で傾斜して軸方向に形成された螺旋状の第二の溝(16)と、を有する、ロール金型である。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の製造方法によりロール金型(10)を製造し、ロール金型と、基材(111)と、の間に光硬化性材料(140)を充填する工程と、充填された状態で光硬化性材料に光を照射して光硬化性材料を硬化させる工程と、を含む光学シートの製造方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、格子状に凹凸形状を有する層を備える光学シートを形成するに際して、その製造効率を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】1つの実施形態にかかるロール金型の外観斜視図である。
【図2】ロール金型の正面図である。
【図3】ロール金型の外周表面に形成された凹凸を説明する図である。
【図4】ロール金型の製造方法を説明する図である。
【図5】切削の様子を拡大して示した図である。
【図6】切削工具の形状を概略的に示した図である。
【図7】光学シートを模式的に示した外観斜視図である。
【図8】光学シートの断面を拡大した図である。
【図9】1つの光吸収部の周囲に注目して示した図である。
【図10】光学シートの製造過程の1場面を説明する図である。
【図11】中間シートの形態を説明する図である。
【図12】従来のロール金型の形態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の上記した作用及び利得は、次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。以下、本発明を図面に示す実施形態に基づき説明する。ただし、本発明はこれら実施形態に限定されるものではない。
【0020】
図1は1つの実施形態にかかるロール金型10の外観を模式的に表した斜視図、図2は同正面図である。また図3には、図3(a)にロール金型10の外周面の一部を拡大して示すとともに、併せて図3(b)に、ここに形成された第一突起13及び第一溝14の断面、並びに図3(c)には第二突起15及び第二溝16の断面を説明する図を示した。当該断面はロール金型10の回転軸に沿った方向の断面である。図2、図3では見やすさのため、第一突起13及び第一溝14を表す線は実線で示し、第二突起15及び第二溝16を表す線は破線で示した。なお、ロール金型10の表面に形成される凹凸、光学シート10に形成される凹凸は非常に微細なものであるが、ここでは分かりやすさのため誇張して記載している。
【0021】
図1、図2からわかるように、ロール金型10は、円柱状の金型本体11、及び回転軸12を備えている。回転軸12は、金型本体11の円柱軸を軸とした回転軸部材である。
【0022】
金型本体11は、ベースとなる基体及び該基体の外表面に積層された被加工層を有している。
基体は、金型本体11の剛性を確保するための部位で、金型本体11の大部分を占めている。かかる観点から基体は、機械構造用の鉄系材料が用いられることが好ましい。また、必要な剛性を確保しつつも軽量化をする観点から、基体は両端に底を有する有底の円筒状であってもよい。また、ロール金型10の表面温度を調節ができるように基体の内部に冷水や温水、蒸気又は高温の油を循環できるように2重構造にするのが一般的である。
一方、被加工層は、基体の外表面を被覆するように積層された層である。基体は上記したように構造上の観点からその材料が選択されるので、加工が困難である場合が多い。そこで、実際に加工するのは金型本体11の表面付近のみでよいことから、加工される部分に比較的加工のしやすい被加工層を設ける。従って、被加工層は、銅メッキ層、ニッケルメッキ層等の加工が容易な材料によるメッキ層であることが好ましい。被加工層の厚さは、その性質上、加工されるべき形状により決められる。例えば銅メッキ層の厚さは、必要な形状の高さ以上あれば問題ないが、通常は0.3mmから1.0mmである。
ここで、金型本体11の直径は特に限定されることはないが、300mm以上500mm以下であることが好ましい。
【0023】
被加工層には、突出するように形成された第一突起13、及び第二突起15、並びに第一突起13間に形成される第一溝14、及び第二突起15間に形成される第二溝16を具備している。
第一突起13は図2、図3からわかるように、金型本体11の正面視において、円柱状である金型本体11の軸方向に対して角度α(図3(a)参照)で傾斜し、金型本体11の軸方向一端側から他端側に向けて螺旋状に形成された突起である。そして第一溝14は、このように螺旋状に形成された第一突起13間に形成される第一の溝である。従って第一溝14も同様に螺旋状に形成される。
第二突起15は図2、図3からわかるように、金型本体11の正面視において、円柱状である金型本体11の軸方向に対して角度β(図3(a)参照)で傾斜し、金型本体11の軸方向一端側から他端側に向けて螺旋状に形成された突起である。そして第二溝16は、このように螺旋状に形成された第一突起15間に形成される第二の溝である。従って第二溝16も同様に螺旋状に形成される。
ここでα、βは、金型本体11の軸方向となす角のうち、鋭角となる側の角である。また、第一突起13、第二突起15のそれぞれの螺旋状は、図2、図3からわかるように、交差するように形成され、同じ螺旋とならないものとされる。
【0024】
ここで、α及びβの大きさは、金型本体11の正面視において金型本体11の軸方向、及び金型本体の直径方向に対して傾斜していれば特に限定されることはなく、製造すべき光学シートの形態により決められる。
なお、実際に金型本体11の表面に形成される凹凸形状は、第一突起13、第一溝14、第二突起15、及び第二溝16が合成されることにより形成される。従って、図3(b)、図3(c)に表れる断面は実際に形成されている断面とは異なるものとなる。しかしながらここでは理解のしやすさの観点から、図3(b)、図3(c)のように断面を表して概念的に説明した。
【0025】
第一突起13、及び第二突起15は、後述する光学シート110(図7〜図9参照)の光学機能層112における光吸収部114のための凹部114’(図11参照)を形成させ得る形状を有している。また、第一溝14及び第二溝16は同様に光学機能層112における光透過部113を形成させ得る形状を有している。光学機能層112の形状については後で説明する。
【0026】
次にロール金型10の製造方法について説明する。
【0027】
初めに、基体上に被加工層が積層された金型本体11を準備し、これを回転軸12により回転させる。基準面を得るための前加工として、所定の切削工具(Rバイト)により、必要な切り込み深さ及び送りで鏡面加工をおこなう。Rバイトとは、先端の形状が円弧状のバイトであり、曲率半径が2mmから10mmのダイヤモンドバイトがよく用いられる。送りピッチは0.1mmから0.2mmが一般的である。
【0028】
その後、得られた基準面に基づいて金型本体11を回転させつつ切削工具により第一溝13、及び第二溝15の外周端面となる面を加工する。これは、所定の切削工具により、必要な切り込み深さ及び送りで切削加工をおこなう。
【0029】
次に第一溝14、第二溝16を形成する加工をおこなう。図4にその手順を示した。図4(a)は、第一溝14を形成する加工、図4(b)は第二溝16を形成する加工をそれぞれ表している。また図5には、図4(a)に破線で囲んだ部分を拡大した図を示した。
【0030】
第一溝14は、図4(a)、図5からわかるように、金型本体11を回転軸12を中心に回転させつつ(例えば矢印IVa)、その外周面を切削工具30で切り込んで切削することにより形成する。このとき、図4(a)にIVbで示したように切削工具30を回転軸に沿った方向に送りつつ切削することにより螺旋状に第一溝14が形成される。そしてこのような螺旋状の第一溝14の間に第一突起13が形成されることになる。ここで、切削工具30の送りは、第一溝14が、円柱状である金型本体11の軸方向に対して角度α(図3(a)参照)を有するように調整される。
【0031】
第二溝14は、図4(b)からわかるように、金型本体11を回転軸12を中心に回転させつつ(例えば矢印IVc)、その外周面を切削工具35で切り込んで切削することにより形成する。このとき、図4(b)にIVdで示したように切削工具35を回転軸に沿った方向に送りつつ切削することにより螺旋状に第二溝16が形成される。そしてこのような螺旋状の第二溝16の間に第二突起15が形成されることになる。ここで、切削工具35の送りは、第二溝16が、円柱状である金型本体11の軸方向に対して角度β(図3(a)参照)を有するように調整される。
【0032】
切削の際に用いられる切削工具は例えば次のような形状を具備している。切削工具30について、使用される切削工具の一例である切削チップ30の概略的な図を図6に示した。ここでは切削工具30について説明するが、切削工具35についても同様である。
【0033】
図6ではすくい面を符号31、前逃げ面を符号32、横逃げ面を符号33でそれぞれ表わしている。図6(a)は斜視図、図6(b)はすくい面31側から見た図、図6(c)は前逃げ面32側から見た図、及び図6(d)は横逃げ面33側から見た図である。
【0034】
切削チップ30の主要な寸法は、第一溝14の形状を形成できるように設定される。
【0035】
また、図6に表わしたバイト角度θa1、θa2、横逃げ角θb、及び前逃げ角θcは、次の通りである。ここでバイト角度θa1とθa2との和を頂角と呼ぶ。図6(b)のwはバイト先端幅である。頂角及びバイト先端幅は形成されべき第一溝14の形状により適宜変更する。
【0036】
横逃げ角θbは、2度以上5度以下が好ましい。当該横逃げ角θbを2度以上にすることにより、切削チップ30の切れ性が向上し、切削チップへの負担が減少するので、摩耗を減らすことができ、1つの切削チップで精度良く加工することができる。すなわち、第一溝14の深さを深くしたり、ピッチを小さくして切削本数を増やすことが可能となる。従って、切削チップを交換することなく、又はその交換回数を抑制して光学シートのロール金型を製造することができる。すなわち、ロール金型10の製造の効率及び精度を向上させ、最終製品である光学シートの凹凸形状も高精度に製造することが可能となる。また、横逃げ角θbを5度よりも大きくすると、前逃げ角も大きくする必要があり、切削チップ30の強度が低下する懸念が出てくる。
前逃げ角θcは、通常5度以上20度以下にすることが多い。5度より小さいと横逃げ角と同様に切れ性が悪くなる傾向にある。一方、20度よりも大きくすると切削チップ先端の剛性がなくなり、欠けやチッピングが生じやすい。
【0037】
切削チップ30の材質は被加工層の材質、加工形状等により適宜選択できる。これには例えば超硬合金、CBN(立方晶窒化ホウ素)、ダイヤモンド等を挙げることができる。このなかでも高い精度を得ることができる観点からダイヤモンドであることが好ましい。ダイヤモンドには天然及び合成のものがあるが特に限定されることはない。
【0038】
切削時における金型本体11の回転速度は特に限定されるものではないが、300rpm以上600rpm以下であることが好ましい。金型本体11の直径にもよるが、例えば直径が400mmの場合、300rpm未満だと切削速度が遅いため、切削チップへの負担が大きくなり精度良く加工することができなくなる虞がある。600rpmはおおよそ旋盤の最大回転速度である。金型基体11の回転速度を上げていくとロール基体の振れが生じやすくなり、かかる観点から400rpm以下が好ましい。
【0039】
また、上記切削により第一突起13、第一溝14、第二突起15、第二溝16が形成された後には、ロール金型の表面が腐食することを防止したり、後述する光透過部構成組成物の離型性向上などの観点から、ロール金型の表面をクロム等でメッキすることが好ましい。
【0040】
以上のようなロール金型の製造方法、及び当該製造方法によるロール金型によれば、格子状に凹凸形状を有する層を備える光学シートを形成し得るロール金型とすることができる。そしてこのように格子状を転写可能な溝及び突起をロール金型に形成するに際し、いずれの溝及び突起も金型本体を回転させつつ切削工具を軸方向に送るのみで連続的に形成することが可能なので、ロール金型の製造効率を向上させることができる。
【0041】
次に、上記ロール金型10を用いた光学シート110の製造方法、及びこれにより製造される光学シート110の例について説明する。ここでは分かりやすさのための、先に製造されるべき光学シート110の構成について説明し、その後、ロール金型10を用いてこれを製造する方法について述べる。
【0042】
図7は光学シート110の外観を模式的に表した斜視図、図8は図7にVIII−VIIIで示した線に沿った光学シート110の厚さ方向断面図である。
【0043】
光学シート110は、基材層111と、該基材層111上に形成された光学機能層112とを有している。以下に基材層111及び光学機能層112について説明する。
【0044】
基材層111は、後で詳しく説明する光学機能層112を形成するための基材となる層である。基材層111は、ポリエチレンテレフタレート(PET)を主成分とした材料で構成されることが好ましい。基材層111がPETを主成分とする場合、基材層111には、他の樹脂が含まれてもよい。また、各種添加剤を適宜添加してもよい。一般的な添加剤としては、フェノール系等の酸化防止剤、ラクトン系等の安定剤等を挙げることができる。ここで「主成分」とは、基材層を形成する材料全体に対して上記PETが50質量%以上含有されていることを意味する(以下、同様とする。)。
【0045】
ただし、基材層111を構成する材料の主成分は、必ずしもPETであることは必要なく、その他の材料でもよい。これには例えば、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、テレフタル酸−イソフタル酸−エチレングリコール共重合体、テレフタル酸−シクロヘキサンジメタノール−エチレングリコール共重合体などのポリエステル系樹脂、ナイロン6などのポリアミド系樹脂、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体等のスチレン系樹脂、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂、イミド系樹脂、ポリカーボネート樹脂等を挙げることができる。また、これら樹脂中には、必要に応じて適宜、紫外線吸収剤、充填剤、可塑剤、帯電防止剤等の添加剤を加えても良い。
なお、性能に加え、量産性、価格、入手可能性等の観点からは、PETを主成分とする樹脂によって基材層111を構成することが好ましい。
【0046】
光学機能層112は、映像光源側からの映像光の光路を制御するとともに、迷光や外光を適切に吸収する機能を有する層である。光学機能層112は、図7、図8に表れているように、光透過部113及び光吸収部114を備えている。
【0047】
光吸収部114は、図7からわかるように第一光吸収部114a及び第二光吸収部114bを有して形成されている。
第一光吸収部114aは、後で説明する所定の断面形状を有して一方に延在する。そして、複数の第一光吸収部114aが、当該延在する方向とは異なる方向に配列される。
第二光吸収部114bは、後で説明する所定の断面形状を有して第一光吸収部114aとは異なる方向に延在する。そして、複数の第二光吸収部114bは、当該延在する方向とは異なる方向に配列されている。
【0048】
従って、複数の第一光吸収部114a及び複数の第二光吸収部114bにより、格子状の光吸収部114が形成される。第一光吸収部114aと第二光吸収部114bとが成す角は、上記したロール金型10で説明したα及びβによって決まる。
【0049】
一方、光透過部113は、格子状に形成された光吸収部114で囲まれた部位となる。
【0050】
図8、図9を参照しつつ、光学機能層112の厚さ方向における一断面(図7にVIII-VIIIで示した線に沿った断面)について説明する。図9は、当該断面のうち1つの光吸収部114及びその周辺の部位に注目した図を示した。
【0051】
図8、図9からわかるように、光透過部113と光吸収部114とは、光学機能層112の層面方向に沿って交互に配置される。光吸収部113及び光吸収部114の断面形状は、上記したロール金型10に形成された第一突起13、第一溝14、第二突起15、及び第二溝16により形成される凹凸形状に対応し、これが転写された形状である。すなわち、第一突起13は第一光吸収部114a、第二突起15は第二光吸収部114bの形状に対応し、第一溝14及び第二溝16は光透過部114を形成する形状に対応している。
【0052】
また、図8、図9からわかるように、光透過部113と光吸収部114とが形成する界面は図9に矢印IXで表したシート面法線に対して所定の角度で傾斜してもよい。この傾斜角により後述するように(例えば図9の光L2参照。)、出射される映像光の視野角制御の程度が決められる。従って、この場合には、ロール金型10に形成されるこれに対応する部位(第一突起13、第一溝14、第二突起15、第二溝16の境界を形成する面。)は当該界面の傾斜に応じて傾斜している。
【0053】
ここで、本実施形態では、光吸収部114は、光吸収粒子116を含有することにより光吸収性能を有するものとされている。すなわち、光吸収粒子116を分散させたバインダ115(光吸収部構成組成物)が後述する中間シート110’の凹部114’(図11参照)に充填されている。これにより、光吸収部114は、光を吸収させることが可能となる。
なお、光を吸収させるための手段は本実施形態のように光吸収粒子による方法に限定されるものではない。他には例えば、顔料や染料により光吸収部全体を着色することもできる。
光吸収部114を形成する材料や方法は後で詳しく説明する。
【0054】
一方、光透過部113は、光を透過させる物質により構成されている。光透過部113を形成する材料や方法は後で詳しく説明する。
【0055】
ここで、光吸収部114は、光透過部113の屈折率Npと同じ、又はこれより小さい屈折率Nbを有する所定の材料により構成される。本実施形態ではバインダーが屈折率Nbである物質となる。屈折率Np、Nbの値は特に限定されることはないが、適用する材料の入手性の観点等から1.49〜1.56であることが好ましい。
【0056】
このような光学機能層112を有する光学シート110によれば、次のような光学的な作用を備える。図9に光路例L1〜L4について示した。ただしこれら光路例は光路を説明するための概念的なものであり、屈折や反射の程度を精密に表したものではない。また、当該光路例は、光学シート110が液晶パネルやプラズマディスプレイパネル等の映像源が図9の紙面下方に備えられ、紙面上方に存する観察者に映像光が提供される場合を想定している。
【0057】
光L1は、映像源から出射された映像光が光透過部113を透過してそのまま観察者側に提供される。
光L2は、光透過部113の屈折率Npと光吸収部114の屈折率NbとをNp>Nbとしたときに、映像源から出射された映像光が光吸収部114と光透過部113との界面で反射されて観察者側に提供される。界面で反射するか否かはNpとNbとの屈折率差、及び界面への入光角によって決まる。このように光L2は、上記光L1に加えて観察者に提供される映像光であるから、これにより観察者により明るい映像を提供することができる。また、当該界面はシート面法線(図9にIXで示した線)に対して所定の傾斜角を有して構成されているので、この傾斜角を適切な角度にすることにより、映像光の視野角を制御することができる。
【0058】
光L3は、映像源から出射された映像光が光吸収部114と光透過部113との界面を透過して光吸収部114内の光吸収粒子116で吸収される。このような光は迷光と呼ばれ観察者に出射されるべき映像光ではないので、光吸収部114で吸収されることにより映像光の質を向上させることができる。
光L4は、観察者側から光学シート110に入光した外光であり、これが光吸収部114と光透過部113との界面で反射することなく光吸収部114に入射して吸収される。これによりコントラストが向上し、映像の質の向上が図られる。
【0059】
ここで、光学シート110では、映像光の視野角を制御することができる光吸収部114が格子状に形成されるので、一方向のみの視野角制御ではなく、複数の方向への視野角制御が可能である。そして、格子がなす角度により視野角を制御する方向も適宜設定することが可能である。
【0060】
次にこのような光学シート110を製造する方法について説明する。図10、図11には、製造過程の一部を説明する図を示した。
はじめに基材層111上に光透過部113を形成する。すなわち、図10からわかるようにロール金型10とこれに対向するように配置されたニップロール141との間に、基材層111となる基材111’を挿入する。このとき、基材111’とロール金型10との間に光透過部構成組成物140を供給しながら図10に矢印で示したようにロール金型10及びニップロール141を回転させる。これによりロール金型10の表面に形成された第一溝14、及び第二溝16内に光透過部構成組成物140が充填され、該光透過部構成組成物140がロール金型10の表面形状に沿ったものとなる。
【0061】
ここで、光透過部構成組成物140としては、例えば、光硬化型プレポリマー(P1)に、反応性希釈モノマー(M1)及び光重合開始剤(S1)を配合した光硬化型樹脂組成物が好ましく用いられる。
【0062】
上記光硬化型プレポリマー(P1)としては、例えば、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエーテルアクリレート系、ポリエステルアクリレート系、ポリチオール系等のプレポリマーを挙げることができる。
【0063】
また、上記反応性希釈モノマー(M1)としては、例えば、ビニルピロリドン、2−エチルヘキシルアクリレート、β−ヒドロキシアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート等を挙げることができる。
【0064】
また、上記光重合開始剤(S1)としては、例えば、ヒドロキシベンゾイル化合物(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインアルキルエーテル等)、ベンゾイルホルメート化合物(メチルベンゾイルホルメート等)、チオキサントン化合物(イソプロピルチオキサントン等)、ベンゾフェノン(ベンゾフェノン等)、リン酸エステル化合物(1,3,5−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等)、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。これらの中から、光硬化型樹脂組成物を硬化させるための照射装置及び光硬化型樹脂組成物の硬化性から任意に選択することができる。
【0065】
これらの光硬化型プレポリマー(P1)、反応性希釈モノマー(M1)及び光重合開始剤(S1)は、それぞれ、1種類で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0066】
ロール金型10と基材111’との間に挟まれ、ここに充填された光透過部構成組成物に対し、基材111’側から光照射装置142により光を照射する。これにより、光透過部構成組成物140を硬化させ、その形状を固定させることができる。そして、離型ロール143によりロール金型10から基材層111及び成形された光透過部113からなる中間シート110’を離型する。
【0067】
図11には中間シート110’の形態を表した。図11(a)は正面図、図11(b)は図11(a)にXI−XIで示した線に沿った厚さ方向断面図である。図11(a)、及び図11(b)からわかるように、中間シート110’には、基材層111上にロール金型10の第一突起13、第一溝14、第二突起15、及び第二溝16に対応して転写された形状が表れており、第一溝14、及び第二溝16の部位が光透過部113となる。一方、ロール金型10の第一突起13、及び第二突起15の部位が光吸収部114を形成するための凹部114’となる。
【0068】
次に、光吸収部114を形成する。光吸収部114を形成するには、まず、中間シート110’に形成された凹部114’に光吸収部構成組成物を過剰に塗布する。その後、余剰分の光吸収部構成組成物をドクターブレード等で掻き落とす。そして、凹部114’に残った光吸収部構成組成物に光透過部側から光を照射することによって、光吸収部構成組成物に含まれるバインダ115(図9参照)を硬化させ、光吸収部114を形成することができる。
【0069】
バインダとして用いられるものは特に限定されないが、これには例えば、光硬化型プレポリマー(P2)に、反応性希釈モノマー(M2)及び光重合開始剤(S2)を配合した光硬化型樹脂組成物が好ましく用いられる。
【0070】
光硬化型プレポリマー(P2)としては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、およびブタジエン(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0071】
また、反応性希釈モノマー(M2)としては、例えば、単官能モノマーとして、ビニルモノマー、(メタ)アクリル酸エステルモノマー、(メタ)アクリルアミド誘導体が挙げられる。また、多官能モノマーとして、(メタ)アクリレート系のものが挙げられる。
【0072】
また、光重合開始剤(S2)としては、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等が挙げられる。これらの中から、光硬化型樹脂組成物を硬化させるための照射装置及び光硬化型樹脂組成物の硬化性から任意に選択することができる。
【0073】
これらの光硬化型プレポリマー(P2)、反応性希釈モノマー(M2)及び光重合開始剤(S2)は、それぞれ、1種類で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また必要に応じて、添加剤として、シリコーン、消泡剤、レベリング剤及び溶剤等を光吸収部構成組成物に添加してもよい。
【0074】
光吸収粒子116としては、カーボンブラック等の光吸収性の着色粒子が好ましく用いられるが、これらに限定されるものではなく、映像光の特性に合わせて特定の波長を選択的に吸収する着色粒子を使用してもよい。具体的には、カーボンブラック、グラファイト、黒色酸化鉄等の金属塩、染料、顔料等で着色した有機微粒子や着色したガラスビーズ等を挙げることができる。特に、着色した有機微粒子が、コスト面、品質面、入手の容易さ等の観点から好ましく用いられる。より具体的には、カーボンブラックを含有したアクリル架橋微粒子や、カーボンブラックを含有したウレタン架橋微粒子等が好ましく用いられる。こうした着色粒子は、通常、上記の光吸収部構成組成物中に3質量%以上30質量%以下の範囲で含まれる。着色粒子の平均粒子径は1.0μm以上20μm以下であることが好ましい。上記説明したように、光吸収部114を形成する際には、着色粒子を含有する光吸収部構成組成物を光透過部113間の凹部114’に充填した後にドクターブレードを用いて余剰分の光吸収部構成組成物を掻き落とす工程が含まれる。このとき、平均粒子径が1.0μm以上の着色粒子を用いることによって、着色粒子がドクターブレードと光透過部113の上部との間の隙間を抜け難くなり、光透過部113の上部に着色粒子が残留することを防止できる。
【0075】
以上により、基材層111上に光透過部113及び光吸収部114を形成することによって光学シート110を得ることができる。その際に、上記した金型ロール10を用いることにより、格子状の光吸収部114を有する光学シート110とすることが可能となる。
【0076】
上記光学シート110には、さらに必要に応じて他の機能を有する層が積層されてもよい。具体的には、例えば電磁波遮蔽層、波長フィルタ層、防眩層、反射防止層、ハードコート層等を、粘着層を用いて貼合することで構成することができる。これらの層の積層順、及び積層数は、光学シートの用途に応じて適宜決定される。いずれの層も公知のものを適用することができが、以下に各層について説明する。
【0077】
電磁波遮蔽層は、電磁波を遮断する機能を有する層である。当該機能を有する層であれば、電磁波を遮断する手段は特に限定されるものではない。これには、例えばエッチング方式、印刷方式、蒸着方式、スパッタ方式等の方法で形成された金属メッシュを挙げることができる。
【0078】
波長フィルタ層は、所定の波長の光を減衰して透過する機能を有する層である。減衰されるべき波長の光は必要に応じて適宜選択することができるが、プラズマディスプレイパネル(PDP)から出射されるネオン線を減衰・遮断する層、赤外線、近赤外線や紫外線を減衰・遮断する層、及び色調を補正する層を挙げることができる。
【0079】
防眩層は、いわゆるぎらつきを抑制する機能を有する層であり、アンチグレア層、AG層と呼ばれることもある。
【0080】
反射防止層は最も観察者側に配置され、外光の反射を防止する機能を有する層である。これによれば、外光が光学シートの観察者側面で反射して観察者側へ戻って、いわゆる映り込みが生じて映像が見え難くなることを抑制することができる。
【0081】
ハードコート層は、保護層やHC層とも呼ばれることもある。これは、画像表示面に傷がつくことを抑えるために耐擦傷性を付与することができる機能を有するフィルムが配置された層である。
【0082】
粘着層は、粘着剤が配置される層である。該粘着剤としてアクリル系粘着剤を挙げることができる。ただし、必要な光透過性、粘着性、耐候性を得ることができれば粘着剤はこれに限定されるものではない。また、層構成によっては、色素の劣化を防止するために、紫外線を吸収する効果のあるUV吸収剤(ベンゾトリアゾール系など)を粘着剤に含めることが望ましい。また、粘着層にはUV吸収剤、近赤外吸収剤、ネオン線吸収剤、及び調色色素などを粘着剤に含める場合もある。
【符号の説明】
【0083】
10 ロール金型
11 金型本体
12 回転軸
13 第一突起
14 第一溝(第一の溝)
15 第二突起
16 第二溝(第二の溝)
30 切削工具
110 光学シート
111 基材層
112 光学機能層
113 光透過部
114 光吸収部
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に微細な凹凸形状を有する光学シートを製造する際に用いられるロール金型の製造方法、ロール金型、及び当該ロール金型の製造方法を含む光学シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマテレビや液晶表示装置のような、映像を観察者に出射する映像表示装置には、映像光源と、該映像光源からの映像光の質を高めて観察者側に透過する機能を有する光学シートと、が備えられている。
【0003】
このような光学シートは通常、各機能を有する層が複数積層されることにより構成されているが、当該層の1つには、その表面に微細な凹凸形状が設けられた層を備えることがある。例えば特許文献1に記載の光学シート(光拡散シート)では、断面形状が微細な台形である単位レンズが複数並べられ、単位レンズ間には単位レンズとは異なる物質を充填した構成が開示されている。これによれば、界面による全反射を利用して視野角制御がおこなわれる。
【0004】
また特許文献1では、該特許文献1の図1によく表れているように、台形断面を有する単位レンズが鉛直方向に延びる1つの光拡散シート(102)と、同様の単位レンズが水平方向に延びる光拡散シート(103)とが積層されている。
【0005】
さらに、特許文献1には、該特許文献1の図9に、半載円錐状の単位レンズが平面上に二次元状に配列されてた形態が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、該特許文献2の図9(c)に表れているように、1つの層に格子状に光吸収部を形成し、その間隔を光透過部とした光学シート(視認性向上シート)が開示されている。
【0007】
このような特許文献1、2に記載の層を有する光学シートによれば、水平方向及び鉛直方向のいずれにも視野角を制御できる。特に特許文献2に記載の光学シートのような格子状の要素を形成することにより、目的の視野角制御をするための層が1つの層ですむ。また、これによれば特許文献1に記載の半載円錐状の単位レンズよりも形状が簡易となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−66206号公報
【特許文献2】特開2004−62084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記説明した層を形成するに際しては、生産性を高めるために連続して該層を製造することが可能なロール金型を用いることが多い。ロール金型とは、例えば特許文献1の第12図に記載のような円柱状の金型であり、その外周面に所定の凹凸形状が形成されている。この凹凸形状を光学シートの層に転写することにより該層は所望の断面形状を得ることができる。
【0010】
ここで、従来において、特許文献2に記載のような格子状の要素を製造する際には、当該格子状に対応した図12に記載のような凹凸を有するロール金型200を用いていた。従来において、ロール金型200は、円柱状(又は有底円筒状)の金型本体201及び該金型本体201の円柱軸を軸とする回転軸202を備えている。そして金型本体201の外周面には、金型本体201の円周方向に延び、回転軸202の長手方向に配列される第一溝203と、回転軸202の長手方向に延び、金型本体201の円周方向に配列される第二溝204と、が刻設されていた。
【0011】
しかしながら、このようなロール金型200では、第一溝203、第二溝204を切削加工によりそれぞれ形成する必要があり、非常に時間がかかっていた。
【0012】
そこで本発明は、格子状に凹凸形状を有する層を備える光学シートを形成するロール金型を製造するに際し、製造効率を向上させることが可能なロール金型の製造方法を提供する。また、このような製造方法によるロール金型、及びロール金型の製造方法を含む光学シートの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0014】
請求項1に記載の発明は、格子状の凹凸形状を有する光学シート(110)の凹凸形状部分を成形するロール金型(10)を製造する方法であって、円筒状又は円柱状の金型本体(11)を回転させ、金型本体の表面に、該金型本体の正面視で回転軸及び金型本体の直径方向に対して傾斜した螺旋状の第一の溝(14)を、回転軸方向に切削工具(30)を送って形成する工程と、金型本体を回転させ、該金型本体の表面に、金型本体の正面視で回転軸及び金型本体の直径方向に対して前記第一の溝とは異なる角度で傾斜した螺旋状の第二の溝(16)を、回転軸方向に切削工具(35)を送って形成する工程と、を含む、ロール金型の製造方法である。
【0015】
請求項2に記載の発明は、格子状の凹凸形状を有する光学シート(110)の凹凸形状部分を成形するロール金型(10)であって、円筒状又は円柱状の金型本体(11)の外周面に、該金型本体の正面視で円筒又は円柱の軸及び直径方向に対して傾斜して軸方向に形成された螺旋状の第一の溝(14)と、金型本体の外周面に、該金型本体の正面視で軸及び直径方向に対して第一の溝とは異なる角度で傾斜して軸方向に形成された螺旋状の第二の溝(16)と、を有する、ロール金型である。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の製造方法によりロール金型(10)を製造し、ロール金型と、基材(111)と、の間に光硬化性材料(140)を充填する工程と、充填された状態で光硬化性材料に光を照射して光硬化性材料を硬化させる工程と、を含む光学シートの製造方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、格子状に凹凸形状を有する層を備える光学シートを形成するに際して、その製造効率を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】1つの実施形態にかかるロール金型の外観斜視図である。
【図2】ロール金型の正面図である。
【図3】ロール金型の外周表面に形成された凹凸を説明する図である。
【図4】ロール金型の製造方法を説明する図である。
【図5】切削の様子を拡大して示した図である。
【図6】切削工具の形状を概略的に示した図である。
【図7】光学シートを模式的に示した外観斜視図である。
【図8】光学シートの断面を拡大した図である。
【図9】1つの光吸収部の周囲に注目して示した図である。
【図10】光学シートの製造過程の1場面を説明する図である。
【図11】中間シートの形態を説明する図である。
【図12】従来のロール金型の形態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の上記した作用及び利得は、次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。以下、本発明を図面に示す実施形態に基づき説明する。ただし、本発明はこれら実施形態に限定されるものではない。
【0020】
図1は1つの実施形態にかかるロール金型10の外観を模式的に表した斜視図、図2は同正面図である。また図3には、図3(a)にロール金型10の外周面の一部を拡大して示すとともに、併せて図3(b)に、ここに形成された第一突起13及び第一溝14の断面、並びに図3(c)には第二突起15及び第二溝16の断面を説明する図を示した。当該断面はロール金型10の回転軸に沿った方向の断面である。図2、図3では見やすさのため、第一突起13及び第一溝14を表す線は実線で示し、第二突起15及び第二溝16を表す線は破線で示した。なお、ロール金型10の表面に形成される凹凸、光学シート10に形成される凹凸は非常に微細なものであるが、ここでは分かりやすさのため誇張して記載している。
【0021】
図1、図2からわかるように、ロール金型10は、円柱状の金型本体11、及び回転軸12を備えている。回転軸12は、金型本体11の円柱軸を軸とした回転軸部材である。
【0022】
金型本体11は、ベースとなる基体及び該基体の外表面に積層された被加工層を有している。
基体は、金型本体11の剛性を確保するための部位で、金型本体11の大部分を占めている。かかる観点から基体は、機械構造用の鉄系材料が用いられることが好ましい。また、必要な剛性を確保しつつも軽量化をする観点から、基体は両端に底を有する有底の円筒状であってもよい。また、ロール金型10の表面温度を調節ができるように基体の内部に冷水や温水、蒸気又は高温の油を循環できるように2重構造にするのが一般的である。
一方、被加工層は、基体の外表面を被覆するように積層された層である。基体は上記したように構造上の観点からその材料が選択されるので、加工が困難である場合が多い。そこで、実際に加工するのは金型本体11の表面付近のみでよいことから、加工される部分に比較的加工のしやすい被加工層を設ける。従って、被加工層は、銅メッキ層、ニッケルメッキ層等の加工が容易な材料によるメッキ層であることが好ましい。被加工層の厚さは、その性質上、加工されるべき形状により決められる。例えば銅メッキ層の厚さは、必要な形状の高さ以上あれば問題ないが、通常は0.3mmから1.0mmである。
ここで、金型本体11の直径は特に限定されることはないが、300mm以上500mm以下であることが好ましい。
【0023】
被加工層には、突出するように形成された第一突起13、及び第二突起15、並びに第一突起13間に形成される第一溝14、及び第二突起15間に形成される第二溝16を具備している。
第一突起13は図2、図3からわかるように、金型本体11の正面視において、円柱状である金型本体11の軸方向に対して角度α(図3(a)参照)で傾斜し、金型本体11の軸方向一端側から他端側に向けて螺旋状に形成された突起である。そして第一溝14は、このように螺旋状に形成された第一突起13間に形成される第一の溝である。従って第一溝14も同様に螺旋状に形成される。
第二突起15は図2、図3からわかるように、金型本体11の正面視において、円柱状である金型本体11の軸方向に対して角度β(図3(a)参照)で傾斜し、金型本体11の軸方向一端側から他端側に向けて螺旋状に形成された突起である。そして第二溝16は、このように螺旋状に形成された第一突起15間に形成される第二の溝である。従って第二溝16も同様に螺旋状に形成される。
ここでα、βは、金型本体11の軸方向となす角のうち、鋭角となる側の角である。また、第一突起13、第二突起15のそれぞれの螺旋状は、図2、図3からわかるように、交差するように形成され、同じ螺旋とならないものとされる。
【0024】
ここで、α及びβの大きさは、金型本体11の正面視において金型本体11の軸方向、及び金型本体の直径方向に対して傾斜していれば特に限定されることはなく、製造すべき光学シートの形態により決められる。
なお、実際に金型本体11の表面に形成される凹凸形状は、第一突起13、第一溝14、第二突起15、及び第二溝16が合成されることにより形成される。従って、図3(b)、図3(c)に表れる断面は実際に形成されている断面とは異なるものとなる。しかしながらここでは理解のしやすさの観点から、図3(b)、図3(c)のように断面を表して概念的に説明した。
【0025】
第一突起13、及び第二突起15は、後述する光学シート110(図7〜図9参照)の光学機能層112における光吸収部114のための凹部114’(図11参照)を形成させ得る形状を有している。また、第一溝14及び第二溝16は同様に光学機能層112における光透過部113を形成させ得る形状を有している。光学機能層112の形状については後で説明する。
【0026】
次にロール金型10の製造方法について説明する。
【0027】
初めに、基体上に被加工層が積層された金型本体11を準備し、これを回転軸12により回転させる。基準面を得るための前加工として、所定の切削工具(Rバイト)により、必要な切り込み深さ及び送りで鏡面加工をおこなう。Rバイトとは、先端の形状が円弧状のバイトであり、曲率半径が2mmから10mmのダイヤモンドバイトがよく用いられる。送りピッチは0.1mmから0.2mmが一般的である。
【0028】
その後、得られた基準面に基づいて金型本体11を回転させつつ切削工具により第一溝13、及び第二溝15の外周端面となる面を加工する。これは、所定の切削工具により、必要な切り込み深さ及び送りで切削加工をおこなう。
【0029】
次に第一溝14、第二溝16を形成する加工をおこなう。図4にその手順を示した。図4(a)は、第一溝14を形成する加工、図4(b)は第二溝16を形成する加工をそれぞれ表している。また図5には、図4(a)に破線で囲んだ部分を拡大した図を示した。
【0030】
第一溝14は、図4(a)、図5からわかるように、金型本体11を回転軸12を中心に回転させつつ(例えば矢印IVa)、その外周面を切削工具30で切り込んで切削することにより形成する。このとき、図4(a)にIVbで示したように切削工具30を回転軸に沿った方向に送りつつ切削することにより螺旋状に第一溝14が形成される。そしてこのような螺旋状の第一溝14の間に第一突起13が形成されることになる。ここで、切削工具30の送りは、第一溝14が、円柱状である金型本体11の軸方向に対して角度α(図3(a)参照)を有するように調整される。
【0031】
第二溝14は、図4(b)からわかるように、金型本体11を回転軸12を中心に回転させつつ(例えば矢印IVc)、その外周面を切削工具35で切り込んで切削することにより形成する。このとき、図4(b)にIVdで示したように切削工具35を回転軸に沿った方向に送りつつ切削することにより螺旋状に第二溝16が形成される。そしてこのような螺旋状の第二溝16の間に第二突起15が形成されることになる。ここで、切削工具35の送りは、第二溝16が、円柱状である金型本体11の軸方向に対して角度β(図3(a)参照)を有するように調整される。
【0032】
切削の際に用いられる切削工具は例えば次のような形状を具備している。切削工具30について、使用される切削工具の一例である切削チップ30の概略的な図を図6に示した。ここでは切削工具30について説明するが、切削工具35についても同様である。
【0033】
図6ではすくい面を符号31、前逃げ面を符号32、横逃げ面を符号33でそれぞれ表わしている。図6(a)は斜視図、図6(b)はすくい面31側から見た図、図6(c)は前逃げ面32側から見た図、及び図6(d)は横逃げ面33側から見た図である。
【0034】
切削チップ30の主要な寸法は、第一溝14の形状を形成できるように設定される。
【0035】
また、図6に表わしたバイト角度θa1、θa2、横逃げ角θb、及び前逃げ角θcは、次の通りである。ここでバイト角度θa1とθa2との和を頂角と呼ぶ。図6(b)のwはバイト先端幅である。頂角及びバイト先端幅は形成されべき第一溝14の形状により適宜変更する。
【0036】
横逃げ角θbは、2度以上5度以下が好ましい。当該横逃げ角θbを2度以上にすることにより、切削チップ30の切れ性が向上し、切削チップへの負担が減少するので、摩耗を減らすことができ、1つの切削チップで精度良く加工することができる。すなわち、第一溝14の深さを深くしたり、ピッチを小さくして切削本数を増やすことが可能となる。従って、切削チップを交換することなく、又はその交換回数を抑制して光学シートのロール金型を製造することができる。すなわち、ロール金型10の製造の効率及び精度を向上させ、最終製品である光学シートの凹凸形状も高精度に製造することが可能となる。また、横逃げ角θbを5度よりも大きくすると、前逃げ角も大きくする必要があり、切削チップ30の強度が低下する懸念が出てくる。
前逃げ角θcは、通常5度以上20度以下にすることが多い。5度より小さいと横逃げ角と同様に切れ性が悪くなる傾向にある。一方、20度よりも大きくすると切削チップ先端の剛性がなくなり、欠けやチッピングが生じやすい。
【0037】
切削チップ30の材質は被加工層の材質、加工形状等により適宜選択できる。これには例えば超硬合金、CBN(立方晶窒化ホウ素)、ダイヤモンド等を挙げることができる。このなかでも高い精度を得ることができる観点からダイヤモンドであることが好ましい。ダイヤモンドには天然及び合成のものがあるが特に限定されることはない。
【0038】
切削時における金型本体11の回転速度は特に限定されるものではないが、300rpm以上600rpm以下であることが好ましい。金型本体11の直径にもよるが、例えば直径が400mmの場合、300rpm未満だと切削速度が遅いため、切削チップへの負担が大きくなり精度良く加工することができなくなる虞がある。600rpmはおおよそ旋盤の最大回転速度である。金型基体11の回転速度を上げていくとロール基体の振れが生じやすくなり、かかる観点から400rpm以下が好ましい。
【0039】
また、上記切削により第一突起13、第一溝14、第二突起15、第二溝16が形成された後には、ロール金型の表面が腐食することを防止したり、後述する光透過部構成組成物の離型性向上などの観点から、ロール金型の表面をクロム等でメッキすることが好ましい。
【0040】
以上のようなロール金型の製造方法、及び当該製造方法によるロール金型によれば、格子状に凹凸形状を有する層を備える光学シートを形成し得るロール金型とすることができる。そしてこのように格子状を転写可能な溝及び突起をロール金型に形成するに際し、いずれの溝及び突起も金型本体を回転させつつ切削工具を軸方向に送るのみで連続的に形成することが可能なので、ロール金型の製造効率を向上させることができる。
【0041】
次に、上記ロール金型10を用いた光学シート110の製造方法、及びこれにより製造される光学シート110の例について説明する。ここでは分かりやすさのための、先に製造されるべき光学シート110の構成について説明し、その後、ロール金型10を用いてこれを製造する方法について述べる。
【0042】
図7は光学シート110の外観を模式的に表した斜視図、図8は図7にVIII−VIIIで示した線に沿った光学シート110の厚さ方向断面図である。
【0043】
光学シート110は、基材層111と、該基材層111上に形成された光学機能層112とを有している。以下に基材層111及び光学機能層112について説明する。
【0044】
基材層111は、後で詳しく説明する光学機能層112を形成するための基材となる層である。基材層111は、ポリエチレンテレフタレート(PET)を主成分とした材料で構成されることが好ましい。基材層111がPETを主成分とする場合、基材層111には、他の樹脂が含まれてもよい。また、各種添加剤を適宜添加してもよい。一般的な添加剤としては、フェノール系等の酸化防止剤、ラクトン系等の安定剤等を挙げることができる。ここで「主成分」とは、基材層を形成する材料全体に対して上記PETが50質量%以上含有されていることを意味する(以下、同様とする。)。
【0045】
ただし、基材層111を構成する材料の主成分は、必ずしもPETであることは必要なく、その他の材料でもよい。これには例えば、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、テレフタル酸−イソフタル酸−エチレングリコール共重合体、テレフタル酸−シクロヘキサンジメタノール−エチレングリコール共重合体などのポリエステル系樹脂、ナイロン6などのポリアミド系樹脂、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体等のスチレン系樹脂、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂、イミド系樹脂、ポリカーボネート樹脂等を挙げることができる。また、これら樹脂中には、必要に応じて適宜、紫外線吸収剤、充填剤、可塑剤、帯電防止剤等の添加剤を加えても良い。
なお、性能に加え、量産性、価格、入手可能性等の観点からは、PETを主成分とする樹脂によって基材層111を構成することが好ましい。
【0046】
光学機能層112は、映像光源側からの映像光の光路を制御するとともに、迷光や外光を適切に吸収する機能を有する層である。光学機能層112は、図7、図8に表れているように、光透過部113及び光吸収部114を備えている。
【0047】
光吸収部114は、図7からわかるように第一光吸収部114a及び第二光吸収部114bを有して形成されている。
第一光吸収部114aは、後で説明する所定の断面形状を有して一方に延在する。そして、複数の第一光吸収部114aが、当該延在する方向とは異なる方向に配列される。
第二光吸収部114bは、後で説明する所定の断面形状を有して第一光吸収部114aとは異なる方向に延在する。そして、複数の第二光吸収部114bは、当該延在する方向とは異なる方向に配列されている。
【0048】
従って、複数の第一光吸収部114a及び複数の第二光吸収部114bにより、格子状の光吸収部114が形成される。第一光吸収部114aと第二光吸収部114bとが成す角は、上記したロール金型10で説明したα及びβによって決まる。
【0049】
一方、光透過部113は、格子状に形成された光吸収部114で囲まれた部位となる。
【0050】
図8、図9を参照しつつ、光学機能層112の厚さ方向における一断面(図7にVIII-VIIIで示した線に沿った断面)について説明する。図9は、当該断面のうち1つの光吸収部114及びその周辺の部位に注目した図を示した。
【0051】
図8、図9からわかるように、光透過部113と光吸収部114とは、光学機能層112の層面方向に沿って交互に配置される。光吸収部113及び光吸収部114の断面形状は、上記したロール金型10に形成された第一突起13、第一溝14、第二突起15、及び第二溝16により形成される凹凸形状に対応し、これが転写された形状である。すなわち、第一突起13は第一光吸収部114a、第二突起15は第二光吸収部114bの形状に対応し、第一溝14及び第二溝16は光透過部114を形成する形状に対応している。
【0052】
また、図8、図9からわかるように、光透過部113と光吸収部114とが形成する界面は図9に矢印IXで表したシート面法線に対して所定の角度で傾斜してもよい。この傾斜角により後述するように(例えば図9の光L2参照。)、出射される映像光の視野角制御の程度が決められる。従って、この場合には、ロール金型10に形成されるこれに対応する部位(第一突起13、第一溝14、第二突起15、第二溝16の境界を形成する面。)は当該界面の傾斜に応じて傾斜している。
【0053】
ここで、本実施形態では、光吸収部114は、光吸収粒子116を含有することにより光吸収性能を有するものとされている。すなわち、光吸収粒子116を分散させたバインダ115(光吸収部構成組成物)が後述する中間シート110’の凹部114’(図11参照)に充填されている。これにより、光吸収部114は、光を吸収させることが可能となる。
なお、光を吸収させるための手段は本実施形態のように光吸収粒子による方法に限定されるものではない。他には例えば、顔料や染料により光吸収部全体を着色することもできる。
光吸収部114を形成する材料や方法は後で詳しく説明する。
【0054】
一方、光透過部113は、光を透過させる物質により構成されている。光透過部113を形成する材料や方法は後で詳しく説明する。
【0055】
ここで、光吸収部114は、光透過部113の屈折率Npと同じ、又はこれより小さい屈折率Nbを有する所定の材料により構成される。本実施形態ではバインダーが屈折率Nbである物質となる。屈折率Np、Nbの値は特に限定されることはないが、適用する材料の入手性の観点等から1.49〜1.56であることが好ましい。
【0056】
このような光学機能層112を有する光学シート110によれば、次のような光学的な作用を備える。図9に光路例L1〜L4について示した。ただしこれら光路例は光路を説明するための概念的なものであり、屈折や反射の程度を精密に表したものではない。また、当該光路例は、光学シート110が液晶パネルやプラズマディスプレイパネル等の映像源が図9の紙面下方に備えられ、紙面上方に存する観察者に映像光が提供される場合を想定している。
【0057】
光L1は、映像源から出射された映像光が光透過部113を透過してそのまま観察者側に提供される。
光L2は、光透過部113の屈折率Npと光吸収部114の屈折率NbとをNp>Nbとしたときに、映像源から出射された映像光が光吸収部114と光透過部113との界面で反射されて観察者側に提供される。界面で反射するか否かはNpとNbとの屈折率差、及び界面への入光角によって決まる。このように光L2は、上記光L1に加えて観察者に提供される映像光であるから、これにより観察者により明るい映像を提供することができる。また、当該界面はシート面法線(図9にIXで示した線)に対して所定の傾斜角を有して構成されているので、この傾斜角を適切な角度にすることにより、映像光の視野角を制御することができる。
【0058】
光L3は、映像源から出射された映像光が光吸収部114と光透過部113との界面を透過して光吸収部114内の光吸収粒子116で吸収される。このような光は迷光と呼ばれ観察者に出射されるべき映像光ではないので、光吸収部114で吸収されることにより映像光の質を向上させることができる。
光L4は、観察者側から光学シート110に入光した外光であり、これが光吸収部114と光透過部113との界面で反射することなく光吸収部114に入射して吸収される。これによりコントラストが向上し、映像の質の向上が図られる。
【0059】
ここで、光学シート110では、映像光の視野角を制御することができる光吸収部114が格子状に形成されるので、一方向のみの視野角制御ではなく、複数の方向への視野角制御が可能である。そして、格子がなす角度により視野角を制御する方向も適宜設定することが可能である。
【0060】
次にこのような光学シート110を製造する方法について説明する。図10、図11には、製造過程の一部を説明する図を示した。
はじめに基材層111上に光透過部113を形成する。すなわち、図10からわかるようにロール金型10とこれに対向するように配置されたニップロール141との間に、基材層111となる基材111’を挿入する。このとき、基材111’とロール金型10との間に光透過部構成組成物140を供給しながら図10に矢印で示したようにロール金型10及びニップロール141を回転させる。これによりロール金型10の表面に形成された第一溝14、及び第二溝16内に光透過部構成組成物140が充填され、該光透過部構成組成物140がロール金型10の表面形状に沿ったものとなる。
【0061】
ここで、光透過部構成組成物140としては、例えば、光硬化型プレポリマー(P1)に、反応性希釈モノマー(M1)及び光重合開始剤(S1)を配合した光硬化型樹脂組成物が好ましく用いられる。
【0062】
上記光硬化型プレポリマー(P1)としては、例えば、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエーテルアクリレート系、ポリエステルアクリレート系、ポリチオール系等のプレポリマーを挙げることができる。
【0063】
また、上記反応性希釈モノマー(M1)としては、例えば、ビニルピロリドン、2−エチルヘキシルアクリレート、β−ヒドロキシアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート等を挙げることができる。
【0064】
また、上記光重合開始剤(S1)としては、例えば、ヒドロキシベンゾイル化合物(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインアルキルエーテル等)、ベンゾイルホルメート化合物(メチルベンゾイルホルメート等)、チオキサントン化合物(イソプロピルチオキサントン等)、ベンゾフェノン(ベンゾフェノン等)、リン酸エステル化合物(1,3,5−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等)、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。これらの中から、光硬化型樹脂組成物を硬化させるための照射装置及び光硬化型樹脂組成物の硬化性から任意に選択することができる。
【0065】
これらの光硬化型プレポリマー(P1)、反応性希釈モノマー(M1)及び光重合開始剤(S1)は、それぞれ、1種類で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0066】
ロール金型10と基材111’との間に挟まれ、ここに充填された光透過部構成組成物に対し、基材111’側から光照射装置142により光を照射する。これにより、光透過部構成組成物140を硬化させ、その形状を固定させることができる。そして、離型ロール143によりロール金型10から基材層111及び成形された光透過部113からなる中間シート110’を離型する。
【0067】
図11には中間シート110’の形態を表した。図11(a)は正面図、図11(b)は図11(a)にXI−XIで示した線に沿った厚さ方向断面図である。図11(a)、及び図11(b)からわかるように、中間シート110’には、基材層111上にロール金型10の第一突起13、第一溝14、第二突起15、及び第二溝16に対応して転写された形状が表れており、第一溝14、及び第二溝16の部位が光透過部113となる。一方、ロール金型10の第一突起13、及び第二突起15の部位が光吸収部114を形成するための凹部114’となる。
【0068】
次に、光吸収部114を形成する。光吸収部114を形成するには、まず、中間シート110’に形成された凹部114’に光吸収部構成組成物を過剰に塗布する。その後、余剰分の光吸収部構成組成物をドクターブレード等で掻き落とす。そして、凹部114’に残った光吸収部構成組成物に光透過部側から光を照射することによって、光吸収部構成組成物に含まれるバインダ115(図9参照)を硬化させ、光吸収部114を形成することができる。
【0069】
バインダとして用いられるものは特に限定されないが、これには例えば、光硬化型プレポリマー(P2)に、反応性希釈モノマー(M2)及び光重合開始剤(S2)を配合した光硬化型樹脂組成物が好ましく用いられる。
【0070】
光硬化型プレポリマー(P2)としては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、およびブタジエン(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0071】
また、反応性希釈モノマー(M2)としては、例えば、単官能モノマーとして、ビニルモノマー、(メタ)アクリル酸エステルモノマー、(メタ)アクリルアミド誘導体が挙げられる。また、多官能モノマーとして、(メタ)アクリレート系のものが挙げられる。
【0072】
また、光重合開始剤(S2)としては、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等が挙げられる。これらの中から、光硬化型樹脂組成物を硬化させるための照射装置及び光硬化型樹脂組成物の硬化性から任意に選択することができる。
【0073】
これらの光硬化型プレポリマー(P2)、反応性希釈モノマー(M2)及び光重合開始剤(S2)は、それぞれ、1種類で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また必要に応じて、添加剤として、シリコーン、消泡剤、レベリング剤及び溶剤等を光吸収部構成組成物に添加してもよい。
【0074】
光吸収粒子116としては、カーボンブラック等の光吸収性の着色粒子が好ましく用いられるが、これらに限定されるものではなく、映像光の特性に合わせて特定の波長を選択的に吸収する着色粒子を使用してもよい。具体的には、カーボンブラック、グラファイト、黒色酸化鉄等の金属塩、染料、顔料等で着色した有機微粒子や着色したガラスビーズ等を挙げることができる。特に、着色した有機微粒子が、コスト面、品質面、入手の容易さ等の観点から好ましく用いられる。より具体的には、カーボンブラックを含有したアクリル架橋微粒子や、カーボンブラックを含有したウレタン架橋微粒子等が好ましく用いられる。こうした着色粒子は、通常、上記の光吸収部構成組成物中に3質量%以上30質量%以下の範囲で含まれる。着色粒子の平均粒子径は1.0μm以上20μm以下であることが好ましい。上記説明したように、光吸収部114を形成する際には、着色粒子を含有する光吸収部構成組成物を光透過部113間の凹部114’に充填した後にドクターブレードを用いて余剰分の光吸収部構成組成物を掻き落とす工程が含まれる。このとき、平均粒子径が1.0μm以上の着色粒子を用いることによって、着色粒子がドクターブレードと光透過部113の上部との間の隙間を抜け難くなり、光透過部113の上部に着色粒子が残留することを防止できる。
【0075】
以上により、基材層111上に光透過部113及び光吸収部114を形成することによって光学シート110を得ることができる。その際に、上記した金型ロール10を用いることにより、格子状の光吸収部114を有する光学シート110とすることが可能となる。
【0076】
上記光学シート110には、さらに必要に応じて他の機能を有する層が積層されてもよい。具体的には、例えば電磁波遮蔽層、波長フィルタ層、防眩層、反射防止層、ハードコート層等を、粘着層を用いて貼合することで構成することができる。これらの層の積層順、及び積層数は、光学シートの用途に応じて適宜決定される。いずれの層も公知のものを適用することができが、以下に各層について説明する。
【0077】
電磁波遮蔽層は、電磁波を遮断する機能を有する層である。当該機能を有する層であれば、電磁波を遮断する手段は特に限定されるものではない。これには、例えばエッチング方式、印刷方式、蒸着方式、スパッタ方式等の方法で形成された金属メッシュを挙げることができる。
【0078】
波長フィルタ層は、所定の波長の光を減衰して透過する機能を有する層である。減衰されるべき波長の光は必要に応じて適宜選択することができるが、プラズマディスプレイパネル(PDP)から出射されるネオン線を減衰・遮断する層、赤外線、近赤外線や紫外線を減衰・遮断する層、及び色調を補正する層を挙げることができる。
【0079】
防眩層は、いわゆるぎらつきを抑制する機能を有する層であり、アンチグレア層、AG層と呼ばれることもある。
【0080】
反射防止層は最も観察者側に配置され、外光の反射を防止する機能を有する層である。これによれば、外光が光学シートの観察者側面で反射して観察者側へ戻って、いわゆる映り込みが生じて映像が見え難くなることを抑制することができる。
【0081】
ハードコート層は、保護層やHC層とも呼ばれることもある。これは、画像表示面に傷がつくことを抑えるために耐擦傷性を付与することができる機能を有するフィルムが配置された層である。
【0082】
粘着層は、粘着剤が配置される層である。該粘着剤としてアクリル系粘着剤を挙げることができる。ただし、必要な光透過性、粘着性、耐候性を得ることができれば粘着剤はこれに限定されるものではない。また、層構成によっては、色素の劣化を防止するために、紫外線を吸収する効果のあるUV吸収剤(ベンゾトリアゾール系など)を粘着剤に含めることが望ましい。また、粘着層にはUV吸収剤、近赤外吸収剤、ネオン線吸収剤、及び調色色素などを粘着剤に含める場合もある。
【符号の説明】
【0083】
10 ロール金型
11 金型本体
12 回転軸
13 第一突起
14 第一溝(第一の溝)
15 第二突起
16 第二溝(第二の溝)
30 切削工具
110 光学シート
111 基材層
112 光学機能層
113 光透過部
114 光吸収部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
格子状の凹凸形状を有する光学シートの前記凹凸形状部分を成形するロール金型を製造する方法であって、
円筒状又は円柱状の金型本体を回転させ、前記金型本体の表面に、該金型本体の正面視で回転軸及び前記金型本体の直径方向に対して傾斜した螺旋状の第一の溝を、前記回転軸方向に切削工具を送って形成する工程と、
前記金型本体を回転させ、該金型本体の表面に、前記金型本体の正面視で回転軸及び前記金型本体の直径方向に対して前記第一の溝とは異なる角度で傾斜した螺旋状の第二の溝を、前記回転軸方向に切削工具を送って形成する工程と、を含む、ロール金型の製造方法。
【請求項2】
格子状の凹凸形状を有する光学シートの前記凹凸形状部分を成形するロール金型であって、
円筒状又は円柱状の金型本体の外周面に、該金型本体の正面視で前記円筒又は円柱の軸及び直径方向に対して傾斜して前記軸方向に形成された螺旋状の第一の溝と、
前記金型本体の外周面に、該金型本体の正面視で前記軸及び直径方向に対して前記第一の溝とは異なる角度で傾斜して前記軸方向に形成された螺旋状の第二の溝と、を有する、ロール金型。
【請求項3】
請求項1に記載の製造方法によりロール金型を製造し、
前記ロール金型と、基材と、の間に光硬化性材料を充填する工程と、
前記充填された状態で前記光硬化性材料に光を照射して前記光硬化性材料を硬化させる工程と、を含む光学シートの製造方法。
【請求項1】
格子状の凹凸形状を有する光学シートの前記凹凸形状部分を成形するロール金型を製造する方法であって、
円筒状又は円柱状の金型本体を回転させ、前記金型本体の表面に、該金型本体の正面視で回転軸及び前記金型本体の直径方向に対して傾斜した螺旋状の第一の溝を、前記回転軸方向に切削工具を送って形成する工程と、
前記金型本体を回転させ、該金型本体の表面に、前記金型本体の正面視で回転軸及び前記金型本体の直径方向に対して前記第一の溝とは異なる角度で傾斜した螺旋状の第二の溝を、前記回転軸方向に切削工具を送って形成する工程と、を含む、ロール金型の製造方法。
【請求項2】
格子状の凹凸形状を有する光学シートの前記凹凸形状部分を成形するロール金型であって、
円筒状又は円柱状の金型本体の外周面に、該金型本体の正面視で前記円筒又は円柱の軸及び直径方向に対して傾斜して前記軸方向に形成された螺旋状の第一の溝と、
前記金型本体の外周面に、該金型本体の正面視で前記軸及び直径方向に対して前記第一の溝とは異なる角度で傾斜して前記軸方向に形成された螺旋状の第二の溝と、を有する、ロール金型。
【請求項3】
請求項1に記載の製造方法によりロール金型を製造し、
前記ロール金型と、基材と、の間に光硬化性材料を充填する工程と、
前記充填された状態で前記光硬化性材料に光を照射して前記光硬化性材料を硬化させる工程と、を含む光学シートの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−75461(P2013−75461A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217517(P2011−217517)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
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