ワイパのブレードラバー
【課題】払拭運動時にブレードラバーに生じる虞があるびびりの発生を簡単な構造で防止する。
【解決手段】ワイパブレード6の払拭部9に、二等辺三角形の断面形状をなす基部9aと、基部から突出してウィンドガラスに当接させるリップ部9bと、基部の幅方向(払拭方向)両端部にてリップ部の突出方向に突出しかつリップ部に沿って延在する一対の側壁部9cとを設け、リップ部の両側面と両側壁部との間に形成される溝11に、ブレードラバーの長手方向に間隔をあけて複数の隔壁部12を設ける。例えば円弧運動するブレードラバーにおいて、遠心力でウォッシャ液が円弧運動外側に流れようとしても、そのウォッシャ液の外側への流れを隔壁により止めることができるため、少ない噴霧量でもブレードラバーの円弧運動内側にもウォッシャ液を残しておくことができ、少ない噴霧量でブレードラバーの円弧運動内側部分にびびりが発生することを抑制できる。
【解決手段】ワイパブレード6の払拭部9に、二等辺三角形の断面形状をなす基部9aと、基部から突出してウィンドガラスに当接させるリップ部9bと、基部の幅方向(払拭方向)両端部にてリップ部の突出方向に突出しかつリップ部に沿って延在する一対の側壁部9cとを設け、リップ部の両側面と両側壁部との間に形成される溝11に、ブレードラバーの長手方向に間隔をあけて複数の隔壁部12を設ける。例えば円弧運動するブレードラバーにおいて、遠心力でウォッシャ液が円弧運動外側に流れようとしても、そのウォッシャ液の外側への流れを隔壁により止めることができるため、少ない噴霧量でもブレードラバーの円弧運動内側にもウォッシャ液を残しておくことができ、少ない噴霧量でブレードラバーの円弧運動内側部分にびびりが発生することを抑制できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウィンドガラスに付着した水等を払拭するワイパのブレードラバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ワイパのブレードラバーの形状として、ワイパアームに支持される支持部と、支持部に小幅の連結部を介して一体化された逆三角形断面形状のリップ部とを有しているものが公知である(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平1−90657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ワイパ装置では、ブレードラバーの経年劣化に伴う硬化や反り返りのくせがつくといった形状変化が生じると、雨量が少ないとき等には往復払拭運動の片側行程でびびりが発生する場合がある。そのようなびびりが発生した場合にはウォッシャ液を噴霧して、ブレードラバーのウィンドガラスに対する滑りを円滑にすることができる。しかしながら、ブレードラバーにウォッシャ液が馴染むまではびびりが継続するため、馴染ませるまでにウォッシャ液を大量に消費してしまう虞がある。
【0005】
例えば、ブレードラバーが円弧状に往復運動するワイパ装置の場合には円弧運動の外側に遠心力が働くため、ウォッシャ液は往復払拭運動中にブレードラバーの円弧運動外側に流れていき、ブレードラバーの円弧運動内側ではウォッシャ液が足りなくなってびびり画発生する可能性がある。また、遠心力によりブレードラバーの円弧運動外側端からウォッシャ液が払拭範囲の外側に流れるため、びびりを抑制するためにウォッシャ液を大量に噴霧した場合には、扇形の払拭範囲の外周側円弧上に水が筋状に残ってしまい、視界において邪魔になるという問題がある。
【0006】
一方、上記特許文献1のものでは、リップ部のウィンドガラスに対する接触角度を適切な範囲に入るように、リップ部の両側面に突出部を設けると共にリップ部の両側に間隔をおいて突出部から垂下する制限部を設けて、荷重を大としても接触角度がある範囲に維持されるとしている。例えば、その制限部によりウォッシャ液の流れを留めることができるという可能性がある。しかしながら、ブレードラバーの長手方向へのウォッシャ液の流れをある程度せき止める効果は期待できるものの、リップ部にウォッシャ液を長く溜めておくという効果は期待できない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決して、払拭運動時にブレードラバーに生じる虞があるびびりの発生を簡単な構造で防止するために、本発明に於いては、ワイパブレード(5)に支持される支持部(7)と、前記支持部(7)と一体に形成された払拭部(9)とを備えたワイパのブレードラバーにおいて、前記払拭部(9)が、前記支持部(7)に連結状態に設けられた基部(9a)と、ウィンドガラス(1)に当接するように前記基部(9a)から前記支持部(7)とは相反する側に突出するリップ部(9b)と、前記リップ部(9b)の側面との間に溝(11)を形成するように前記基部(9a)から前記リップ部(9b)の突出方向に突出しかつ前記リップ部(9b)に沿って延在するように形成された側壁部(9c)と、前記溝(11)をブレードラバーの長手方向について分断するように前記溝(11)内に設けられた隔壁部(12)とを有するものとした。
【0008】
これによれば、リップ部と側壁部との間に溝が形成されており、ウィンドガラスに噴霧されたウォッシャ液がリップ部により払拭方向にかき集められると、そのかき集められたウォッシャ液が溝内に溜まると共に、例えば円弧運動するブレードラバーにおいてブレードラバーの円弧運動による遠心力によりウォッシャ液が円弧運動外側に流れようとしても、そのウォッシャ液の円弧運動外側への流れを隔壁により止めることができる。したがって、少ない噴霧量でもブレードラバーの円弧運動内側にもウォッシャ液を残しておくことができ、ブレードラバーの円弧運動内側部分にびびりが発生することを抑制できる。また、少ない噴霧量で済むため、ブレードラバーの円弧運動外側へウォッシャ液が流れる量を減らすことができ、また雨水も同様に流れる量を減らすことができ、良好な視界を確保することができる。さらに、隔壁を設けた部分でリップ部の倒れ過ぎを防止することができ、リップ部全体の剛性を上げることもできるので、経年劣化によるリップ部の倒れ角の増加を抑えて、ブレードラバーの寿命を延ばすことができる。なお、隔壁部がリップ部および側壁部に結合されている必要はなく、溝における底面から立設状態に設けられているだけであっても、上記効果は得られる。
【0009】
特に、前記隔壁部(12a)は、前記ブレードラバー(6)においてワイパの払拭動作時に大きく変位する側の端部に設けられていると良い。これによれば、ブレードラバーの円弧運動外側へウォッシャ液や雨水が流れる量をより効果的に抑制することができる。
【0010】
また、前記隔壁部(12b)は、前記側壁部(9c)側よりも前記リップ部(9b)側の方がワイパの払拭動作時に大きく変位する側に位置するように、前記ブレードラバーの長手方向に対して斜め方向に延在していると良い。これによれば、ブレードラバーの円弧運動外側へウォッシャ液や雨水が流れる時にリップ部側に向かって流れるようになり、少ないウォッシャ液または雨水でもリップ部のびびり発生を抑制できる。
【0011】
また、前記隔壁部(12c)における前記リップ部(9b)の突出方向への長さは、前記側壁部(9c)側よりも前記リップ部(9b)側の方が長くなっていると良い。これによれば、リップ部の突出方向長さに対して側壁部の同方向長さが、払拭運動により払拭部が傾いた際にウィンドガラスに側壁部が接触しない長さに制限されるため、その側壁部の長さと同一長さのまま隔壁部がリップ部に至る場合にはリップ部の長さに対して短いためリップ部の倒れの抑制効果はそれ程大きくならないが、隔壁部のリップ部側の長さを長くすることによりリップ部の倒れを抑制でき、リップ部全体の剛性を高めることができる。
【0012】
また、前記側壁部(9c)における前記リップ部(9b)の突出方向への長さは、前記ブレードラバーの長手方向においてワイパの払拭動作時に大きく変位する側に至るにつれて短くなると良い。これによれば、例えばワイパの円弧運動による払拭動作時には円弧運動外側の方が内側よりも払拭面積が広いため、ウィンドガラス上のウォッシャ液や雨水をより多く溝内に集め易くなり、溝内に水が溜まり過ぎると、ブレードラバーを乗り越えるようにして水が溢れてしまう虞があるのに対して、ブレードラバーの払拭動作時に大きく変位する側(円弧運動外側)に至るにつれて側壁部の長さが短くなることから、円弧運動外側の方の溝の深さが浅いため水が溜まり難くなり、ブレードラバーの長手方向での水の溜まり量が均等化され、溝内に溜まる水の量を最適に保つことができる。
【0013】
また、前記隔壁部(12)は、前記ブレードラバーの長手方向に間隔をあけて複数配設されていると良い。これによれば、隔壁部で仕切られた部分毎に水を溜めることができ、より長く水を保持しておくことができる。
【0014】
さらに、前記隔壁部(12)は、少なくとも前記基部(9b)と結合状態に形成され、前記基部(9b)は、前記隔壁部(12)との結合部側よりも隣り合う前記隔壁部(12)間の中央側の方が厚くなる部分(13)を有すると良い。これによれば、基部の隔壁部が結合された部分の剛性が局所的に高まるため、リップ部において隔壁部から最も遠くなる部分すなわち隣り合う隔壁部間の中央での厚みを厚くすることにより、リップ部全体での剛性を均一にすることができ、リップ部による払拭時に拭きむらが生じることを抑制できる。
【0015】
また、前記隔壁部(12)の間隔は、前記ブレードラバーの長手方向においてワイパの払拭動作時に大きく変位する側に至るにつれて広くなると良い。これによれば、ワイパの払拭動作時に大きく変位する側では払拭速度が速いことにより水が溜まり難くなるが、払拭動作時に大きく変位する側の隔壁部の間隔を広くすることから、溝内に溜まる水の量を最適に保つことができる。
【発明の効果】
【0016】
このように本発明によれば、例えば円弧運動するブレードラバーにおいてブレードラバーの円弧運動による遠心力によりウォッシャ液が円弧運動外側に流れようとしても、そのウォッシャ液の円弧運動外側への流れを隔壁により止めることができるため、少ない噴霧量でもブレードラバーの円弧運動内側にもウォッシャ液を残しておくことができ、少ない噴霧量でブレードラバーの円弧運動内側部分にびびりが発生することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明が適用されたワイパ装置が配設された自動車のフロントウィンドガラス部分を示す正面図である。
【図2】図1の矢印II−II線に沿って見たワイパブレードの断面図である。
【図3】ブレードラバーの要部斜視図である。
【図4】(a)は図3の矢印IVa−IVa線に沿って見た断面図であり、(b)は図3の矢印IVb−IVb線に沿って見た断面図である。
【図5】図3の矢印V線から見た要部斜視図である。
【図6】第2の例を示す図5と同様の図である。
【図7】第3の例を示すブレードラバーのリップ部突出側から見た底面図である。
【図8】第4の例を示す図4(b)と同様の図である。
【図9】(a)は第5の例を示す図7と同様の図であり、(b)は第5の例を示す図5と同様の要部破断斜視図である。
【図10】第6の例を示すブレードラバーの側面図である。
【図11】第7の例を示す図7と同様の図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。図1は本発明が適用されたワイパ装置が配設された自動車のフロントウィンドガラス部分を示す正面図である。
【0019】
図1において、ウィンドガラス1の前方のボディ部分にはスイッチ操作等により回転駆動するワイパモータ2が設けられており、ワイパモータ2には、回転運動を揺動運動に変換するリンク機構3を介して左右のワイパアーム4のボディ部分に位置する基端部が連結されている。ワイパアーム4は、ワイパシャフトを設けられた基端部を回動中心としてウィンドガラス1の前面に沿う向きに揺動運動し得るように設けられており、ワイパアーム4の円弧状に変位する先端部にはワイパブレード5の略中央部分が支持されている。ワイパモータ2の回転により、ウィンドガラス1上でワイパブレード5が揺動運動し、図1の二点鎖線で示される扇形状の払拭範囲Wが払拭されるようになっている。
【0020】
次に、ワイパブレード5について説明するが、図1に示される例では運転席側および助手席側のそれぞれにワイパブレード5が設けられており、それぞれ同一構造であって良いため、以下の説明では一方(例えば運転席側)を代表として説明する。
【0021】
ワイパブレード5には、その断面図を示す図2に示されるように、ブレードラバー6が組み付けられている。ブレードラバー6は、ワイパブレード5に支持される支持部7と、支持部7に細幅の首部8を介して連結された形態の払拭部9とを有する。ワイパブレード5は支持部7を受容する逆U字断面形状に形成されており、その逆U字断面形状における開口端には互いに対向する内向きに曲折された一対の内向爪5aが設けられている。支持部7には、ブレードラバー6の幅方向となる両側に係止溝7aが左右対称に設けられており、係止溝7aに内向爪5aが係合して、ワイパブレード5によりブレードラバー6が支持される。
【0022】
また、払拭部9は、支持部7側に底辺部分を有する二等辺三角形の断面形状をなす基部9aと、基部9aの先細り方向となる支持部7とは相反する側に突出してウィンドガラス1に当接させるリップ部9bと、基部9aの支持部7側にてブレードラバー6の長手方向に直交しかつ払拭方向となる幅方向(以下、払拭方向と呼ぶ)両端部にてリップ部9bの突出方向に突出しかつリップ部9bに沿って延在するように形成された一対の側壁部9cとを有する。側壁部9cは、ブレードラバー6の長手方向にリップ部9bと同一長さで延在し、払拭部9が払拭時に倒れた場合に想定される最大傾度に対してもウィンドガラス1と干渉しない突出方向長さにされている。なお、支持部7には、リップ部9bの払拭時におけるウィンドガラス1の曲面に対する追従性確保のために公知の板ばね10が装着されている。
【0023】
上記したように設けられたリップ部9bの両側面と両側壁部9cとの間には、図4(a)・(b)に併せて示されるように溝11が形成されている。溝11は、リップ部9bの長手方向全長に渡って同一長さに設けられており、リップ部9bの突出方向に開放されていると共にブレードラバー6の長手方向両端でもそれぞれ外側に向けて開放されている。溝11には、図3および図4(b)と、リップ部9bの突出方向側から見た要部斜視図である図5とに併せて示されるように、ブレードラバー6の長手方向に間隔をあけて複数の隔壁部12がリップ部9bを挟んで対称に配設されている。なお、図3では複数の隔壁部12が設けられているように示されているが、隔壁部12を1つだけ設けたものであっても良い。
【0024】
本図示例のワイパ装置では、図1の払拭範囲Wで示されるようにワイパブレード5は円弧状に払拭運動を行う。その場合には、ワイパブレード5(ブレードラバー6)におけるウィンドガラス1の屋根側(図1の上側)の方が大きく変位する。ここで、ブレードラバー6において、ワイパの払拭動作時に大きく変位する側の端部を先端部と呼び、先端部とは相反する側(小さく変位する側)の端部を後端部と呼ぶことにする。
【0025】
ワイパの払拭動作時には、ウィンドガラス1に付着した水(ウォッシャ液や雨水等)がリップ部9bにより払拭されるが、上記したようにリップ部9bと側壁部9cとの間に溝11が形成されており、リップ部9bによりかき集められた水は溝11内に溜まることになる。しかしながら、ブレードラバー6の先端部側が大きく変位することから、その先端部側に向かう遠心力が作用して、払拭された水は、リップ部9bの長手方向に沿って先端部側に流れるようになる。
【0026】
それに対して、上記したように溝11内には隔壁部12が設けられており、遠心力によりブレードラバー6の先端部側に向けて流れようとする水を隔壁部12により止めることができる。これにより、リップ部9bでかき集められた水は、溝11内の隔壁部12で区切られた部屋毎に溜められるため、雨量の少ない時や、ウォッシャ液を噴霧する時等において、それらの少ない水の量でも、リップ部9bに水を浸し続けて馴染ませることができる。したがって、リップ部9bにびびりが発生した場合にウォッシャ液の噴霧する量が少なくてもびびりの発生を抑制することができ、ウォッシャ液の無駄な消費を防止し得る。
【0027】
また、ワイパブレード5の払拭運動による遠心力で水がブレードラバー6の先端部側に流れていこうとしても、隔壁部12でその流れを止めることができるため、払拭範囲Wのブレードラバー6の大きく変位する側の外側に流れていった水による円弧状の筋がはっきりと残ることを抑制し得る。これにより、筋により視界が妨げられることを防止し得る。
【0028】
次に、図6を参照して第2の例について説明する。図6は図5と同様に見た図であり、上記と同様の部分については同一の符号を付してその詳しい説明を省略する。この第2の例では、ブレードラバー6の払拭時に大きく変位する端部である先端部に上記と同じ形状であって良い隔壁部12aが設けられている。これにより、溝11におけるブレードラバー6の先端側の開放面が遮断されるため、上記したように遠心力により先端部側に流れる水をせき止めることができる。したがって、先端側に流れた水による筋がより一層低減される。
【0029】
次に、図7を参照して第3の例について説明する。図7はブレードラバー6をリップ部9bの突出端側から見た下面図である。図に示されるように、この第3の例における隔壁部12bは、側壁部9c側よりもリップ部9b側の方がワイパブレード5の先端部側(払拭動作時に大きく変位する側)に位置するように、ブレードラバー6の長手方向に対して斜めに延在するように設けられている。これにより、払拭運動するブレードラバー6により生じる遠心力によって、ウォッシャ液または雨水がブレードラバー6の先端部側に移動する際に、リップ部9bに沿わせる向きに流すことができるため、少ないウォッシャ液または雨水の場合に水滴がウィンドガラス1にむらとなるように付着していても、リップ部9bの全体に行き渡らすことができ、リップ部9bのびびりを抑制できる。
【0030】
次に、図8を参照して第4の例について説明する。図8は図4(b)と同様に見た図であり、上記と同様の部分については同一の符号を付してその詳しい説明を省略する。図に示されるように、この第3の例における隔壁部12cは、リップ部9bの突出方向への長さが、側壁部9c側よりもリップ部9b側の方が長くなるように形成されている。これにより、側壁部9cの突出方向長さと同一長さとした場合よりも、リップ部9bの払拭時の倒れ方向に対する剛性を高めることができる。
【0031】
次に、図9を参照して第5の例について説明する。図9(a)は図7と同様に見た図であり、図9(b)はリップ部9bの突出方向側から見た図9(a)に対応する要部斜視図であり、上記と同様の部分については同一の符号を付してその詳しい説明を省略する。この第5の例では、隔壁部12は第1の例と同じであって良いが、隣り合う隔壁部12間には肉厚変化部13が設けられている。この肉厚変化部13は、溝11の底面からリップ部9bの突出方向に突出するように形成されている。
【0032】
なお、リップ部9bは、長手方向から見て、突出端側では同一幅で突出している。この場合には、リップ部9bが突出方向に一定断面で形成されていることから、ウィンドガラス1に接触することによる撓みが一定となり得るため、拭きムラを無くすことができる。また、リップ部9bの支持部7側に設けられた三角断面形状の基部9aによりリップ部9bの剛性を均一にすることができる。
【0033】
そして、上記肉厚変化部13は、突出方向長さがリップ部9bに至らないようにされていると共に、隣り合う隔壁部12間の中央部分(間隔をbとした場合にb/2となる位置)で払拭方向の肉厚が最も大きく、その最大肉厚部分から隔壁部12に至るにつれて小さくなるように形成されている。これにより、リップ部9bの払拭方向に対する剛性が、隔壁部12との結合部分では高く、隔壁部12から最も遠い部分では低くなるのに対して、隔壁部12が無い部分での剛性を相対的に高くしかつリップ部9bの長手方向で均一化し得る。
【0034】
このように、隔壁部12および肉厚変化部13を三角形断面形状の基部9aに設けることにより、リップ部9bの払拭方向への倒れに対する基部9a側の剛性を長手方向全域に亘って均一にすることができる。これにより、払拭運動におけるリップ部9bの倒れをリップ部9bの全長に渡って均一化することができ、拭きムラを防止し得る。
【0035】
次に、図10を参照して第6の例について説明する。図10はブレードラバー6を側方から見た要部側面図であり、第1の例で示さした部分と同様の部分については同一の符号を付してその詳しい説明を省略する。この第6の例では、上記例の側壁部9cと同様の側壁部9cのリップ部9bの突出方向長さが、ブレードラバー6の先端部に至るにつれて短くなるようにされている。
【0036】
ワイパの払拭による払拭面積はブレードラバー6の後端部側に比べて先端部側の方が広いため、払拭運動において多くの水を溝11内に溜めることができる。しかしながら、水を溜め過ぎると、ワイパブレード5を乗り越えて水が払拭方向後方側(払拭されて視界が良好になった部分)に溢れ出てしまう虞がある。それに対して、第5の例によれば、上記したように側壁部9cがブレードラバー6の先端側の方が短くなっていることから、ブレードラバー6の先端側にいくほど水を溜められる量が少なくなるため、上記溜まり過ぎを防止し得る。これにより、ブレードラバー6の全長に渡って溝11に溜まる水の量を、リップ部9bのびびりを抑制しかつ溢れ出てしまわない最適な量に保つことができる。
【0037】
次に、図11を参照して第7の例について説明する。図11は図7と同様に見た図であり、上記と同様の部分については同一の符号を付してその詳しい説明を省略する。この第7の例では、ブレードラバー6の後端部側から先端部側(ワイパブレード5の払拭動作時に大きく変位する側)に至るにつれて隣り合う隔壁部12の間隔L1〜L4が広くなる(L1<L2<L3<L4)ようにされている。各隔壁部12の間隔の短い方が溜まった水が逃げていくのを抑制し易いため、ブレードラバー6の後端部側で水が溜まり易く、先端部側で溜まり難くなり、上記第6の例と同様の効果を奏し得る。
【0038】
なお、上記した例では隔壁部12をリップ部9bと側壁部9cとの両部分に結合した形態のものを示したが、隔壁部12はリップ部9bと側壁部9cとのいずれにも結合されていなくても良いし、いずれか一方と結合されていても良い。結合されていない場合には、隔壁部12との隙間は、溝11内に溜められた水が隙間から容易に逃げてしまうことが無い程度にすると良い。隔壁部12は、リップ部9bや側壁部9cと結合されていなくても、払拭運動によるリップ部9bの倒れを抑制することはできる。
【符号の説明】
【0039】
1 ウィンドガラス
5 ワイパブレード
6 ブレードラバー
7 支持部
9a 基部
9b リップ部
9c 側壁部
11 溝
12・12a・12b・12c 隔壁部
13 肉厚変化部(厚くなる部分)
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウィンドガラスに付着した水等を払拭するワイパのブレードラバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ワイパのブレードラバーの形状として、ワイパアームに支持される支持部と、支持部に小幅の連結部を介して一体化された逆三角形断面形状のリップ部とを有しているものが公知である(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平1−90657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ワイパ装置では、ブレードラバーの経年劣化に伴う硬化や反り返りのくせがつくといった形状変化が生じると、雨量が少ないとき等には往復払拭運動の片側行程でびびりが発生する場合がある。そのようなびびりが発生した場合にはウォッシャ液を噴霧して、ブレードラバーのウィンドガラスに対する滑りを円滑にすることができる。しかしながら、ブレードラバーにウォッシャ液が馴染むまではびびりが継続するため、馴染ませるまでにウォッシャ液を大量に消費してしまう虞がある。
【0005】
例えば、ブレードラバーが円弧状に往復運動するワイパ装置の場合には円弧運動の外側に遠心力が働くため、ウォッシャ液は往復払拭運動中にブレードラバーの円弧運動外側に流れていき、ブレードラバーの円弧運動内側ではウォッシャ液が足りなくなってびびり画発生する可能性がある。また、遠心力によりブレードラバーの円弧運動外側端からウォッシャ液が払拭範囲の外側に流れるため、びびりを抑制するためにウォッシャ液を大量に噴霧した場合には、扇形の払拭範囲の外周側円弧上に水が筋状に残ってしまい、視界において邪魔になるという問題がある。
【0006】
一方、上記特許文献1のものでは、リップ部のウィンドガラスに対する接触角度を適切な範囲に入るように、リップ部の両側面に突出部を設けると共にリップ部の両側に間隔をおいて突出部から垂下する制限部を設けて、荷重を大としても接触角度がある範囲に維持されるとしている。例えば、その制限部によりウォッシャ液の流れを留めることができるという可能性がある。しかしながら、ブレードラバーの長手方向へのウォッシャ液の流れをある程度せき止める効果は期待できるものの、リップ部にウォッシャ液を長く溜めておくという効果は期待できない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決して、払拭運動時にブレードラバーに生じる虞があるびびりの発生を簡単な構造で防止するために、本発明に於いては、ワイパブレード(5)に支持される支持部(7)と、前記支持部(7)と一体に形成された払拭部(9)とを備えたワイパのブレードラバーにおいて、前記払拭部(9)が、前記支持部(7)に連結状態に設けられた基部(9a)と、ウィンドガラス(1)に当接するように前記基部(9a)から前記支持部(7)とは相反する側に突出するリップ部(9b)と、前記リップ部(9b)の側面との間に溝(11)を形成するように前記基部(9a)から前記リップ部(9b)の突出方向に突出しかつ前記リップ部(9b)に沿って延在するように形成された側壁部(9c)と、前記溝(11)をブレードラバーの長手方向について分断するように前記溝(11)内に設けられた隔壁部(12)とを有するものとした。
【0008】
これによれば、リップ部と側壁部との間に溝が形成されており、ウィンドガラスに噴霧されたウォッシャ液がリップ部により払拭方向にかき集められると、そのかき集められたウォッシャ液が溝内に溜まると共に、例えば円弧運動するブレードラバーにおいてブレードラバーの円弧運動による遠心力によりウォッシャ液が円弧運動外側に流れようとしても、そのウォッシャ液の円弧運動外側への流れを隔壁により止めることができる。したがって、少ない噴霧量でもブレードラバーの円弧運動内側にもウォッシャ液を残しておくことができ、ブレードラバーの円弧運動内側部分にびびりが発生することを抑制できる。また、少ない噴霧量で済むため、ブレードラバーの円弧運動外側へウォッシャ液が流れる量を減らすことができ、また雨水も同様に流れる量を減らすことができ、良好な視界を確保することができる。さらに、隔壁を設けた部分でリップ部の倒れ過ぎを防止することができ、リップ部全体の剛性を上げることもできるので、経年劣化によるリップ部の倒れ角の増加を抑えて、ブレードラバーの寿命を延ばすことができる。なお、隔壁部がリップ部および側壁部に結合されている必要はなく、溝における底面から立設状態に設けられているだけであっても、上記効果は得られる。
【0009】
特に、前記隔壁部(12a)は、前記ブレードラバー(6)においてワイパの払拭動作時に大きく変位する側の端部に設けられていると良い。これによれば、ブレードラバーの円弧運動外側へウォッシャ液や雨水が流れる量をより効果的に抑制することができる。
【0010】
また、前記隔壁部(12b)は、前記側壁部(9c)側よりも前記リップ部(9b)側の方がワイパの払拭動作時に大きく変位する側に位置するように、前記ブレードラバーの長手方向に対して斜め方向に延在していると良い。これによれば、ブレードラバーの円弧運動外側へウォッシャ液や雨水が流れる時にリップ部側に向かって流れるようになり、少ないウォッシャ液または雨水でもリップ部のびびり発生を抑制できる。
【0011】
また、前記隔壁部(12c)における前記リップ部(9b)の突出方向への長さは、前記側壁部(9c)側よりも前記リップ部(9b)側の方が長くなっていると良い。これによれば、リップ部の突出方向長さに対して側壁部の同方向長さが、払拭運動により払拭部が傾いた際にウィンドガラスに側壁部が接触しない長さに制限されるため、その側壁部の長さと同一長さのまま隔壁部がリップ部に至る場合にはリップ部の長さに対して短いためリップ部の倒れの抑制効果はそれ程大きくならないが、隔壁部のリップ部側の長さを長くすることによりリップ部の倒れを抑制でき、リップ部全体の剛性を高めることができる。
【0012】
また、前記側壁部(9c)における前記リップ部(9b)の突出方向への長さは、前記ブレードラバーの長手方向においてワイパの払拭動作時に大きく変位する側に至るにつれて短くなると良い。これによれば、例えばワイパの円弧運動による払拭動作時には円弧運動外側の方が内側よりも払拭面積が広いため、ウィンドガラス上のウォッシャ液や雨水をより多く溝内に集め易くなり、溝内に水が溜まり過ぎると、ブレードラバーを乗り越えるようにして水が溢れてしまう虞があるのに対して、ブレードラバーの払拭動作時に大きく変位する側(円弧運動外側)に至るにつれて側壁部の長さが短くなることから、円弧運動外側の方の溝の深さが浅いため水が溜まり難くなり、ブレードラバーの長手方向での水の溜まり量が均等化され、溝内に溜まる水の量を最適に保つことができる。
【0013】
また、前記隔壁部(12)は、前記ブレードラバーの長手方向に間隔をあけて複数配設されていると良い。これによれば、隔壁部で仕切られた部分毎に水を溜めることができ、より長く水を保持しておくことができる。
【0014】
さらに、前記隔壁部(12)は、少なくとも前記基部(9b)と結合状態に形成され、前記基部(9b)は、前記隔壁部(12)との結合部側よりも隣り合う前記隔壁部(12)間の中央側の方が厚くなる部分(13)を有すると良い。これによれば、基部の隔壁部が結合された部分の剛性が局所的に高まるため、リップ部において隔壁部から最も遠くなる部分すなわち隣り合う隔壁部間の中央での厚みを厚くすることにより、リップ部全体での剛性を均一にすることができ、リップ部による払拭時に拭きむらが生じることを抑制できる。
【0015】
また、前記隔壁部(12)の間隔は、前記ブレードラバーの長手方向においてワイパの払拭動作時に大きく変位する側に至るにつれて広くなると良い。これによれば、ワイパの払拭動作時に大きく変位する側では払拭速度が速いことにより水が溜まり難くなるが、払拭動作時に大きく変位する側の隔壁部の間隔を広くすることから、溝内に溜まる水の量を最適に保つことができる。
【発明の効果】
【0016】
このように本発明によれば、例えば円弧運動するブレードラバーにおいてブレードラバーの円弧運動による遠心力によりウォッシャ液が円弧運動外側に流れようとしても、そのウォッシャ液の円弧運動外側への流れを隔壁により止めることができるため、少ない噴霧量でもブレードラバーの円弧運動内側にもウォッシャ液を残しておくことができ、少ない噴霧量でブレードラバーの円弧運動内側部分にびびりが発生することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明が適用されたワイパ装置が配設された自動車のフロントウィンドガラス部分を示す正面図である。
【図2】図1の矢印II−II線に沿って見たワイパブレードの断面図である。
【図3】ブレードラバーの要部斜視図である。
【図4】(a)は図3の矢印IVa−IVa線に沿って見た断面図であり、(b)は図3の矢印IVb−IVb線に沿って見た断面図である。
【図5】図3の矢印V線から見た要部斜視図である。
【図6】第2の例を示す図5と同様の図である。
【図7】第3の例を示すブレードラバーのリップ部突出側から見た底面図である。
【図8】第4の例を示す図4(b)と同様の図である。
【図9】(a)は第5の例を示す図7と同様の図であり、(b)は第5の例を示す図5と同様の要部破断斜視図である。
【図10】第6の例を示すブレードラバーの側面図である。
【図11】第7の例を示す図7と同様の図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。図1は本発明が適用されたワイパ装置が配設された自動車のフロントウィンドガラス部分を示す正面図である。
【0019】
図1において、ウィンドガラス1の前方のボディ部分にはスイッチ操作等により回転駆動するワイパモータ2が設けられており、ワイパモータ2には、回転運動を揺動運動に変換するリンク機構3を介して左右のワイパアーム4のボディ部分に位置する基端部が連結されている。ワイパアーム4は、ワイパシャフトを設けられた基端部を回動中心としてウィンドガラス1の前面に沿う向きに揺動運動し得るように設けられており、ワイパアーム4の円弧状に変位する先端部にはワイパブレード5の略中央部分が支持されている。ワイパモータ2の回転により、ウィンドガラス1上でワイパブレード5が揺動運動し、図1の二点鎖線で示される扇形状の払拭範囲Wが払拭されるようになっている。
【0020】
次に、ワイパブレード5について説明するが、図1に示される例では運転席側および助手席側のそれぞれにワイパブレード5が設けられており、それぞれ同一構造であって良いため、以下の説明では一方(例えば運転席側)を代表として説明する。
【0021】
ワイパブレード5には、その断面図を示す図2に示されるように、ブレードラバー6が組み付けられている。ブレードラバー6は、ワイパブレード5に支持される支持部7と、支持部7に細幅の首部8を介して連結された形態の払拭部9とを有する。ワイパブレード5は支持部7を受容する逆U字断面形状に形成されており、その逆U字断面形状における開口端には互いに対向する内向きに曲折された一対の内向爪5aが設けられている。支持部7には、ブレードラバー6の幅方向となる両側に係止溝7aが左右対称に設けられており、係止溝7aに内向爪5aが係合して、ワイパブレード5によりブレードラバー6が支持される。
【0022】
また、払拭部9は、支持部7側に底辺部分を有する二等辺三角形の断面形状をなす基部9aと、基部9aの先細り方向となる支持部7とは相反する側に突出してウィンドガラス1に当接させるリップ部9bと、基部9aの支持部7側にてブレードラバー6の長手方向に直交しかつ払拭方向となる幅方向(以下、払拭方向と呼ぶ)両端部にてリップ部9bの突出方向に突出しかつリップ部9bに沿って延在するように形成された一対の側壁部9cとを有する。側壁部9cは、ブレードラバー6の長手方向にリップ部9bと同一長さで延在し、払拭部9が払拭時に倒れた場合に想定される最大傾度に対してもウィンドガラス1と干渉しない突出方向長さにされている。なお、支持部7には、リップ部9bの払拭時におけるウィンドガラス1の曲面に対する追従性確保のために公知の板ばね10が装着されている。
【0023】
上記したように設けられたリップ部9bの両側面と両側壁部9cとの間には、図4(a)・(b)に併せて示されるように溝11が形成されている。溝11は、リップ部9bの長手方向全長に渡って同一長さに設けられており、リップ部9bの突出方向に開放されていると共にブレードラバー6の長手方向両端でもそれぞれ外側に向けて開放されている。溝11には、図3および図4(b)と、リップ部9bの突出方向側から見た要部斜視図である図5とに併せて示されるように、ブレードラバー6の長手方向に間隔をあけて複数の隔壁部12がリップ部9bを挟んで対称に配設されている。なお、図3では複数の隔壁部12が設けられているように示されているが、隔壁部12を1つだけ設けたものであっても良い。
【0024】
本図示例のワイパ装置では、図1の払拭範囲Wで示されるようにワイパブレード5は円弧状に払拭運動を行う。その場合には、ワイパブレード5(ブレードラバー6)におけるウィンドガラス1の屋根側(図1の上側)の方が大きく変位する。ここで、ブレードラバー6において、ワイパの払拭動作時に大きく変位する側の端部を先端部と呼び、先端部とは相反する側(小さく変位する側)の端部を後端部と呼ぶことにする。
【0025】
ワイパの払拭動作時には、ウィンドガラス1に付着した水(ウォッシャ液や雨水等)がリップ部9bにより払拭されるが、上記したようにリップ部9bと側壁部9cとの間に溝11が形成されており、リップ部9bによりかき集められた水は溝11内に溜まることになる。しかしながら、ブレードラバー6の先端部側が大きく変位することから、その先端部側に向かう遠心力が作用して、払拭された水は、リップ部9bの長手方向に沿って先端部側に流れるようになる。
【0026】
それに対して、上記したように溝11内には隔壁部12が設けられており、遠心力によりブレードラバー6の先端部側に向けて流れようとする水を隔壁部12により止めることができる。これにより、リップ部9bでかき集められた水は、溝11内の隔壁部12で区切られた部屋毎に溜められるため、雨量の少ない時や、ウォッシャ液を噴霧する時等において、それらの少ない水の量でも、リップ部9bに水を浸し続けて馴染ませることができる。したがって、リップ部9bにびびりが発生した場合にウォッシャ液の噴霧する量が少なくてもびびりの発生を抑制することができ、ウォッシャ液の無駄な消費を防止し得る。
【0027】
また、ワイパブレード5の払拭運動による遠心力で水がブレードラバー6の先端部側に流れていこうとしても、隔壁部12でその流れを止めることができるため、払拭範囲Wのブレードラバー6の大きく変位する側の外側に流れていった水による円弧状の筋がはっきりと残ることを抑制し得る。これにより、筋により視界が妨げられることを防止し得る。
【0028】
次に、図6を参照して第2の例について説明する。図6は図5と同様に見た図であり、上記と同様の部分については同一の符号を付してその詳しい説明を省略する。この第2の例では、ブレードラバー6の払拭時に大きく変位する端部である先端部に上記と同じ形状であって良い隔壁部12aが設けられている。これにより、溝11におけるブレードラバー6の先端側の開放面が遮断されるため、上記したように遠心力により先端部側に流れる水をせき止めることができる。したがって、先端側に流れた水による筋がより一層低減される。
【0029】
次に、図7を参照して第3の例について説明する。図7はブレードラバー6をリップ部9bの突出端側から見た下面図である。図に示されるように、この第3の例における隔壁部12bは、側壁部9c側よりもリップ部9b側の方がワイパブレード5の先端部側(払拭動作時に大きく変位する側)に位置するように、ブレードラバー6の長手方向に対して斜めに延在するように設けられている。これにより、払拭運動するブレードラバー6により生じる遠心力によって、ウォッシャ液または雨水がブレードラバー6の先端部側に移動する際に、リップ部9bに沿わせる向きに流すことができるため、少ないウォッシャ液または雨水の場合に水滴がウィンドガラス1にむらとなるように付着していても、リップ部9bの全体に行き渡らすことができ、リップ部9bのびびりを抑制できる。
【0030】
次に、図8を参照して第4の例について説明する。図8は図4(b)と同様に見た図であり、上記と同様の部分については同一の符号を付してその詳しい説明を省略する。図に示されるように、この第3の例における隔壁部12cは、リップ部9bの突出方向への長さが、側壁部9c側よりもリップ部9b側の方が長くなるように形成されている。これにより、側壁部9cの突出方向長さと同一長さとした場合よりも、リップ部9bの払拭時の倒れ方向に対する剛性を高めることができる。
【0031】
次に、図9を参照して第5の例について説明する。図9(a)は図7と同様に見た図であり、図9(b)はリップ部9bの突出方向側から見た図9(a)に対応する要部斜視図であり、上記と同様の部分については同一の符号を付してその詳しい説明を省略する。この第5の例では、隔壁部12は第1の例と同じであって良いが、隣り合う隔壁部12間には肉厚変化部13が設けられている。この肉厚変化部13は、溝11の底面からリップ部9bの突出方向に突出するように形成されている。
【0032】
なお、リップ部9bは、長手方向から見て、突出端側では同一幅で突出している。この場合には、リップ部9bが突出方向に一定断面で形成されていることから、ウィンドガラス1に接触することによる撓みが一定となり得るため、拭きムラを無くすことができる。また、リップ部9bの支持部7側に設けられた三角断面形状の基部9aによりリップ部9bの剛性を均一にすることができる。
【0033】
そして、上記肉厚変化部13は、突出方向長さがリップ部9bに至らないようにされていると共に、隣り合う隔壁部12間の中央部分(間隔をbとした場合にb/2となる位置)で払拭方向の肉厚が最も大きく、その最大肉厚部分から隔壁部12に至るにつれて小さくなるように形成されている。これにより、リップ部9bの払拭方向に対する剛性が、隔壁部12との結合部分では高く、隔壁部12から最も遠い部分では低くなるのに対して、隔壁部12が無い部分での剛性を相対的に高くしかつリップ部9bの長手方向で均一化し得る。
【0034】
このように、隔壁部12および肉厚変化部13を三角形断面形状の基部9aに設けることにより、リップ部9bの払拭方向への倒れに対する基部9a側の剛性を長手方向全域に亘って均一にすることができる。これにより、払拭運動におけるリップ部9bの倒れをリップ部9bの全長に渡って均一化することができ、拭きムラを防止し得る。
【0035】
次に、図10を参照して第6の例について説明する。図10はブレードラバー6を側方から見た要部側面図であり、第1の例で示さした部分と同様の部分については同一の符号を付してその詳しい説明を省略する。この第6の例では、上記例の側壁部9cと同様の側壁部9cのリップ部9bの突出方向長さが、ブレードラバー6の先端部に至るにつれて短くなるようにされている。
【0036】
ワイパの払拭による払拭面積はブレードラバー6の後端部側に比べて先端部側の方が広いため、払拭運動において多くの水を溝11内に溜めることができる。しかしながら、水を溜め過ぎると、ワイパブレード5を乗り越えて水が払拭方向後方側(払拭されて視界が良好になった部分)に溢れ出てしまう虞がある。それに対して、第5の例によれば、上記したように側壁部9cがブレードラバー6の先端側の方が短くなっていることから、ブレードラバー6の先端側にいくほど水を溜められる量が少なくなるため、上記溜まり過ぎを防止し得る。これにより、ブレードラバー6の全長に渡って溝11に溜まる水の量を、リップ部9bのびびりを抑制しかつ溢れ出てしまわない最適な量に保つことができる。
【0037】
次に、図11を参照して第7の例について説明する。図11は図7と同様に見た図であり、上記と同様の部分については同一の符号を付してその詳しい説明を省略する。この第7の例では、ブレードラバー6の後端部側から先端部側(ワイパブレード5の払拭動作時に大きく変位する側)に至るにつれて隣り合う隔壁部12の間隔L1〜L4が広くなる(L1<L2<L3<L4)ようにされている。各隔壁部12の間隔の短い方が溜まった水が逃げていくのを抑制し易いため、ブレードラバー6の後端部側で水が溜まり易く、先端部側で溜まり難くなり、上記第6の例と同様の効果を奏し得る。
【0038】
なお、上記した例では隔壁部12をリップ部9bと側壁部9cとの両部分に結合した形態のものを示したが、隔壁部12はリップ部9bと側壁部9cとのいずれにも結合されていなくても良いし、いずれか一方と結合されていても良い。結合されていない場合には、隔壁部12との隙間は、溝11内に溜められた水が隙間から容易に逃げてしまうことが無い程度にすると良い。隔壁部12は、リップ部9bや側壁部9cと結合されていなくても、払拭運動によるリップ部9bの倒れを抑制することはできる。
【符号の説明】
【0039】
1 ウィンドガラス
5 ワイパブレード
6 ブレードラバー
7 支持部
9a 基部
9b リップ部
9c 側壁部
11 溝
12・12a・12b・12c 隔壁部
13 肉厚変化部(厚くなる部分)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイパブレードに支持される支持部と、前記支持部と一体に形成された払拭部とを備えたワイパのブレードラバーにおいて、
前記払拭部が、前記支持部に連結状態に設けられた基部と、ウィンドガラスに当接するように前記基部から前記支持部とは相反する側に突出するリップ部と、前記リップ部の側面との間に溝を形成するように前記基部から前記リップ部の突出方向に突出しかつ前記リップ部に沿って延在するように形成された側壁部と、前記溝をブレードラバーの長手方向について分断するように前記溝内に設けられた隔壁部とを有することを特徴とするワイパのブレードラバー。
【請求項2】
前記隔壁部は、前記ブレードラバーにおいてワイパの払拭動作時に大きく変位する側の端部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のワイパのブレードラバー。
【請求項3】
前記隔壁部は、前記側壁部側よりも前記リップ部側の方がワイパの払拭動作時に大きく変位する側に位置するように、前記ブレードラバーの長手方向に対して斜め方向に延在していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のワイパのブレードラバー。
【請求項4】
前記隔壁部における前記リップ部の突出方向への長さは、前記側壁部側よりも前記リップ部側の方が長くなっていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のワイパのブレードラバー。
【請求項5】
前記側壁部における前記リップ部の突出方向への長さは、前記ブレードラバーの長手方向においてワイパの払拭動作時に大きく変位する側に至るにつれて短くなることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のワイパのブレードラバー。
【請求項6】
前記隔壁部は、前記ブレードラバーの長手方向に間隔をあけて複数配設されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のワイパのブレードラバー。
【請求項7】
前記隔壁部は、少なくとも前記基部と結合状態に形成され、
前記基部は、前記隔壁部との結合部側よりも隣り合う前記隔壁部間の中央側の方が厚くなる部分を有することを特徴とする請求項6に記載のワイパのブレードラバー。
【請求項8】
前記隔壁部の間隔は、前記ブレードラバーの長手方向においてワイパの払拭動作時に大きく変位する側に至るにつれて広くなることを特徴とする請求項6または請求項7のに記載のワイパのブレードラバー。
【請求項1】
ワイパブレードに支持される支持部と、前記支持部と一体に形成された払拭部とを備えたワイパのブレードラバーにおいて、
前記払拭部が、前記支持部に連結状態に設けられた基部と、ウィンドガラスに当接するように前記基部から前記支持部とは相反する側に突出するリップ部と、前記リップ部の側面との間に溝を形成するように前記基部から前記リップ部の突出方向に突出しかつ前記リップ部に沿って延在するように形成された側壁部と、前記溝をブレードラバーの長手方向について分断するように前記溝内に設けられた隔壁部とを有することを特徴とするワイパのブレードラバー。
【請求項2】
前記隔壁部は、前記ブレードラバーにおいてワイパの払拭動作時に大きく変位する側の端部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のワイパのブレードラバー。
【請求項3】
前記隔壁部は、前記側壁部側よりも前記リップ部側の方がワイパの払拭動作時に大きく変位する側に位置するように、前記ブレードラバーの長手方向に対して斜め方向に延在していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のワイパのブレードラバー。
【請求項4】
前記隔壁部における前記リップ部の突出方向への長さは、前記側壁部側よりも前記リップ部側の方が長くなっていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のワイパのブレードラバー。
【請求項5】
前記側壁部における前記リップ部の突出方向への長さは、前記ブレードラバーの長手方向においてワイパの払拭動作時に大きく変位する側に至るにつれて短くなることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のワイパのブレードラバー。
【請求項6】
前記隔壁部は、前記ブレードラバーの長手方向に間隔をあけて複数配設されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のワイパのブレードラバー。
【請求項7】
前記隔壁部は、少なくとも前記基部と結合状態に形成され、
前記基部は、前記隔壁部との結合部側よりも隣り合う前記隔壁部間の中央側の方が厚くなる部分を有することを特徴とする請求項6に記載のワイパのブレードラバー。
【請求項8】
前記隔壁部の間隔は、前記ブレードラバーの長手方向においてワイパの払拭動作時に大きく変位する側に至るにつれて広くなることを特徴とする請求項6または請求項7のに記載のワイパのブレードラバー。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−274676(P2010−274676A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−126172(P2009−126172)
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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