説明

ワイパー用不織布

【課題】乾燥状態及び湿潤状態での拭き取り性、吸液性、実使用感、強度に優れたワイパー用不織布を提供する。
【解決手段】0.6〜3.3dtexの非分割型異型断面捲縮繊維とフィブリル化繊維とを含む湿式不織布が水流交絡処理された不織布であることを特徴とするワイパー用不織布であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィブリル化繊維と非分割型異型断面型捲縮繊維を含む湿式不織布が水流交絡処理されたワイパー用不織布に関するものであり、詳しくは、乾燥状態及び湿潤状態での拭き取り性、吸液性、実使用感、強度に優れたワイパー用不織布に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、生活環境の変化及び産業の発展や技術の高度化に伴い、汚れに対する除去要求は高まっている。汚れとは、固体表面に水性又は油性の液体付着及び固体粒子の付着などがあり、特に固体粒子には非常に細かいダスト、埃から髪の毛、綿ボコリやパン屑まで幅広いものがある。これらの汚れを除去すべく、従来から、雑巾、布巾、紙ウェスなどが用いられていたワイパー分野においても、多様化、高度化が進み、多種のワイパー用不織布が上市され、種々のタイプが提案され販売されている。
【0003】
これらの種々のタイプの中で、極細繊維からなるワイパー用不織布は、構成する繊維の比表面積が大きく、極細繊維が細かい微細塵埃や油膜を除去し、これを極細繊維相互間に捕捉する性能に優れているため、好ましく使用されており、例えば、分割型繊維を用いて不織ウェブを形成した後、この分割型繊維を分割させることによって、極細繊維を生成させたものが知られている。これらの極細繊維からなるワイパー用不織布には、物理的手段によって容易に割繊が可能である分割型繊維が中心となって用いられているが、ワイパー用不織布への要求機能である拭き取り性、吸液性、適度に柔軟な風合い、強度、コストの全てを満足させるものは未だないのが現状である。
【0004】
極細繊維からなる不織布として、海島型混合紡糸繊維又は海島型複合繊維からなる長繊維不織布を溶剤処理することにより該繊維の海成分を抽出除去して得る方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、この方法では、抽出設備及び抽出工程が必要なため、コスト面、生産性、環境等の面で様々な問題がある。また、質量平均分子量/数平均分子量の比が少なくとも5であるポリプロピレン系樹脂を含有するポリマーと、ポリエチレン系樹脂を含有するポリマーからなる中空タイプの分割型複合繊維を分割することにより得られた繊度0.5dtex以下の極細繊維を含有する極細繊維不織布ワイパーが開示されているが、オレフィン系の極細繊維であるために、吸液性に劣るという問題や、分割後の極細繊維の繊維径が十分に小さくないため、拭き取り性に劣るという問題がある(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
2成分以上の熱可塑性樹脂からなる多分割型複合繊維を含む不織布であり、多分割型複合繊維の一部が不織布内で分割されてフィブリル化していることを特徴とする不織布が開示されているが、これは、基本的にはエアレイド不織布に関するものであり、また、フィブリル化した部分が未分割の部分や完全分割された部分との熱接着に関与することで、より細かい3次元の網目構造が不織布内部に形成されることを特徴としているため、強度的には優れるが、不織布表面が多くのフィブリル化繊維によって被覆されていないため、拭き取り性に劣る問題がある(例えば、特許文献3参照)。また、ポリビニルアルコール系易分割繊維とパルプからなり、両者の質量比が一定の割合である湿式抄造不織布に高圧水流を付与して、繊維の分割を行った不織布が開示されているが、ポリビニルアルコール系分割繊維とパルプからなるので、吸液性に優れてはいるが、パルプを20〜70質量%含有しているため、ペーパーライクな風合いとなり、実際に拭き取った際の拭き取り感覚(実使用感)に劣るという問題点がある(例えば、特許文献4参照)。
【0006】
また、繊維断面に不特定な形状の開口を多数有し、また、各開口が繊維の長さ方向に沿って筋状の空隙を形成する特殊な繊維構造を有するアクリル系割繊繊維とその一部が分割された微細繊維、熱溶融性繊維からなるアクリル系繊維の不織布が開示されているが、このアクリル系割繊繊維は、原繊維が不織布に製造される工程で、高圧の柱状水流噴射により微細な繊維に分割されるため、柱状水流噴射の圧力が低いと、十分に割繊が行われず、拭き取り性が劣るという問題があり、一方、柱状水流噴射の圧力が高いと、割繊は進行するが、不織布ウェブに破壊が生じるという問題がある(例えば、特許文献5参照)。
【0007】
また、繊維断面がくびれを含む不定形であり、且つ捲縮を付与したビスコースレーヨン繊維からなるビスコースレーヨン系嵩高不織布が開示されているが、確かに嵩高性に富むことから実使用感には優れるが、構成する繊維が太すぎるため、汚れの拭き取り性は大きく劣るという問題がある(例えば、特許文献6参照)。
【特許文献1】特開昭62−97957号公報
【特許文献2】特開2002−220740号公報
【特許文献3】特開2002−61060号公報
【特許文献4】特開平10−53994号公報
【特許文献5】特開平5−321106号公報
【特許文献6】特開2007−39841号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、乾燥状態及び湿潤状態での乾燥状態及び湿潤状態での拭き取り性、吸液性、嵩高性すなわち実使用感、強度に優れたワイパー用不織布を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、以下の本発明を見出した。
【0010】
すなわち、本願の第1の発明は、0.6〜3.3dtexの非分割型異型断面捲縮繊維とフィブリル化繊維とを含む湿式不織布が水流交絡処理された不織布であることを特徴とするワイパー用不織布に関するものである。
【0011】
本願の第2の発明は、第1の発明において、異型断面捲縮繊維が三角断面機械捲縮繊維であるワイパー用不織布に関するものである。
【0012】
本願の第3の発明は、第1又は第2の発明において、湿式不織布がさらに0.06〜3.3dtexの非捲縮繊維を1種以上含有するワイパー用不織布に関するものである。
【0013】
本願の第4の発明は、第3の発明において、非捲縮繊維の少なくとも1種が熱融着性バインダー繊維であるワイパー用不織布に関するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明のワイパー用不織布は、フィブリル化繊維と非分割型異型断面型捲縮繊維を含む湿式不織布が水流交絡処理された不織布であり、乾燥状態及び湿潤状態での拭き取り性、吸液性、嵩高性、強度に優れたワイパー用不織布である。また、異型断面捲縮繊維が三角断面機械捲縮繊維であると、拭き取り性が向上し、嵩高性すなわち実使用感を良くすることができる。さらに湿式不織布が0.06〜3.3dtexの非捲縮繊維を1種以上含有することで、強度とコシが発現し、拭き取り性をより向上させることができる。この非捲縮繊維の少なくとも1種が熱融着性バインダー繊維であると、ワイパー用不織布の強度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明のワイパー用不織布について、詳細に説明する。本発明に使用する異型断面繊維とは異型断面を有するものであれば良い。異型断面とは繊維の長さ方向に垂直に切断した場合に、断面形状が円形形状以外のものであり、三角形状、Y型形状、扁平形状、ドックボーン形状、三つ葉形状等を有するものを言う。例えば、これらは、異型金型を用いて直接紡糸する方法、複合繊維を熔解又は分割する方法などによって得られるが、異型金型を用いて直接紡糸することにより得られる異形断面繊維が本発明においては好適に用いられる。また、断面形状に特に限定はないが、拭き取り性と嵩高性すなわち実使用感付与の観点から、三角形状の断面構造を持つ繊維がより好ましい。三角形状の角部分がワイパー用不織布の拭き取り効果に寄与するだけではなく、各繊維の角部分が干渉することにより、不織布内部に十分な空間を形成し、ワイパー用不織布の嵩高性に寄与することができる。
【0016】
本発明に係る捲縮繊維とは繊維に縮みやヨレを有するものであれば良く、その製造方法に特に制限はない。一般的に繊維に捲縮を付与する方法としては、潜在捲縮や機械捲縮が挙げられる。潜在捲縮とは、熱収縮の異なる2成分からなる繊維を紡糸し、不織布や織編物にしてから、熱を加えることにより、2成分の熱収縮率の違いにより、繊維に捲縮を発現させるものである。機械捲縮とは、押し込み式クリンパーやスタフィングボックス等の捲縮付与装置により捲縮を付与されたものをいい、通常、これらの捲縮付与装置によると山部と谷部が連続して存在するジグザグ状の捲縮が付与される。捲縮付与装置により付与する捲縮数や捲縮率を変更することができる。本発明においては機械捲縮によって繊維に捲縮を付与した機械捲縮繊維がより好ましい。潜在捲縮繊維の場合、加熱により2成分の熱収縮率の違いにより捲縮性が発現するため、機械権縮繊維の方がワイパー用不織布の寸法安定性や強度が向上することがある。
【0017】
本発明に係る非分割型繊維とは分割型ではない繊維を言う。ここで言う分割型繊維とは1本の繊維の中に異なる樹脂2成分(例えば、ナイロン樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂)が相互に重なっている状態で存在し、これに物理的な力(機械処理)を加えることにより、繊維1本から10〜20分割されたミクロン単位の異型断面状のファイバーを作り出す繊維のことである。これら分割型繊維を用いた場合、水流交絡などの機械処理工程において分割が生じ、その結果、極細繊維が生成され、ワイパー不織布の拭き取り性は向上するが、嵩高性に乏しかったり、強度が弱くなったりするなどの欠点が生じるため、好ましくない。
【0018】
本発明に係る非分割型異型断面捲縮繊維の異型断面捲縮繊維とは、前述した異型断面で且つ捲縮を有する繊維である。その繊維径は0.6〜3.3dtexであり、より好ましくは1.1〜2.2dtexである。0.6dtexよりも細い繊維を用いた場合、十分な嵩高性が得られず、好ましくない。一方、3.3dtexを超えた太い繊維を用いた場合、拭き取り性を低下させるので、好ましくない。
【0019】
また、非分割型異型断面捲縮繊維の繊維長は、繊維同士が絡み合う長さであれば良く、特に制限はない。絡み合いの度合いは、アスペクト比(繊維長/繊維径)に影響を受ける。アスペクト比は混合する対象によってもその最適なる大きさは異なる。本発明のように、フィブリル化繊維と混合する場合は、700〜2000の範囲が好ましい。700未満の場合、繊維が屈曲しにくいために繊維間の絡み合いが弱くなり、不織布に十分な強度が発現しないことがある。一方、2000を超えて大きい場合、例えば、湿式抄造法により湿式不織布を製造した際に、均一な地合いのウェブが得られにくく、拭き取り性にムラが生じることがある。また、非分割型異型断面捲縮繊維のワイパー用不織布に対する含有量は2〜98質量%が好ましく、さらに好ましくは20〜60質量%である。2質量%未満では、十分な嵩高性が得られないことがある。一方、98質量%を超えると拭き取り性が大きく低下することがある。
【0020】
本発明のワイパー用不織布に用いるフィブリル化繊維とは、繊維内部のフィブリル(小繊維)が、摩擦作用で表面に現れて毛羽立ちささくれた繊維を言う。本発明のワイパー用不織布の性能に適したフィブリル化の程度に特に制限はないが、拭き取り性の観点から、幹部から離脱した繊維径1μm以下にフィブリル化した繊維と、繊維径2μm以上の幹部から繊維径1μm以下の枝部が発生したフィブリル化繊維の少なくとも一方が存在することが好ましい。
【0021】
本発明に用いるフィブリル化繊維はフィブリル化できる繊維であれば、特に制限はないが、容易にフィブリル化可能なことから、割繊性アクリル繊維もしくはリヨセル繊維を用いることが好ましい。割繊性アクリル繊維を用いて、例えば、他に使用する繊維が合成繊維のみから構成される場合では、ウェットワイパーと使用した場合に、極少量の防腐剤の添加で長期間保存することが可能なワイパー用不織布を製造できるといった利点を有する。また、リヨセル繊維を用いて、他に使用する繊維がセルロース系繊維や生分解性繊維等で構成される場合、地球環境に優しいワイパー用不織布を製造できるといった利点を有する。用途や目的によって、割繊性アクリル繊維もしくはリヨセル繊維の使い分けを行えば良いし、状況によっては、両者を併用して用いても構わない。フィブリル化繊維の含有量は特に限定しないが、フィブリル化繊維の不織布に対する総含有量は2〜98質量%が好ましく、さらに好ましくは40〜80質量%である。フィブリル化繊維の含有量が2質量%未満では、フィブリル化繊維が不織布表面に均一に分布できないことから、拭き取り性能を高めることができない場合がある。一方、98質量%を超えると拭き取り性能は十二分に得られるものの、嵩高性や強度が大きく低下することがある。
【0022】
フィブリル化繊維のみで不織布を形成した場合、拭き取り性に関しては比較的良好なワイパー用不織布が得られるが、その一方で、緻密でペーパーライクな触感になり、実使用感に乏しくなって使いにくくなるため、好ましくない。そこで、拭き取り性を維持したまま、ペーパーライクな触感を改善させるには、ワイパー用不織布に嵩高性を発現させる必要があり、これを達成するには、フィブリル化繊維と非分割型異型断面繊維とを配合する。
【0023】
本発明のワイパー用不織布のように、0.6〜3.3dtexの非分割型異型断面捲縮繊維とフィブリル化繊維とを含むワイパー用不織布は、フィブリル化繊維が非分割型異型断面繊維表面に程良く絡み合い、不織布表面に良好なネットワーク構造を形成すると共に、非分割型異型断面捲縮繊維により不織布内部に空間構造を形成することにより、表面の緻密さによる拭き取り性を保持しつつ、適当な空間によって、大きめのダストの捕集や、吸液性を確保し、嵩高性による実使用感の向上を達成することができる。
【0024】
本発明のワイパー用不織布に用いる湿式不織布の坪量は、特に制限はないが、10〜150g/mの範囲が好ましい。10g/mより軽いと、良好な拭き取り性と強度が得られないことがあり、一方、150g/mを超えると、風合いが硬くなることがある。
【0025】
非分割型異型断面捲縮繊維とフィブリル化繊維のみを含むワイパー用不織布を形成した場合、拭き取り性及び嵩高性すなわち実使用感に関しては良好なワイパー用不織布が得られるが、その一方で、強度を向上させたり、風合いを堅めにしてコシを向上させ、実使用感を高める必要性があることがある。そこで、強度とコシを発現させるために、非捲縮繊維を配合しても良い。本発明のワイパー用不織布に用いる非捲縮繊維は0.06〜3.3dtexが好ましく、さらに好ましくは0.1〜1.7dtexである。0.06dtexより細い繊維を用いた場合、強度を向上させることができないことがある。一方、3.3dtexを超えて太い繊維を用いた場合、拭き取り性を向上させることができないことがある。
【0026】
また、非捲縮繊維の繊維長は、繊維同士が絡み合う長さであれば良く、特に制限はない。絡み合いの度合いは、アスペクト比(繊維長/繊維径)に影響を受ける。アスペクト比は混合する対象によってもその最適なる大きさは異なる。本発明のように、フィブリル化繊維と混合する場合は、700〜2000の範囲が好ましい。700未満の場合、繊維が屈曲しにくいために繊維間の絡み合いが弱くなり、不織布の強度を向上させることができない場合がある。一方、2000を超えて大きい場合、例えば、湿式抄造法により不織布を製造した際に、均一な地合いの不織布が得られにくく、拭き取り性を向上させることができないことがある。
【0027】
0.06〜3.3dtexの非捲縮繊維の不織布に対する含有量は2〜96質量%が好ましく、さらに好ましくは20〜90質量%である。2質量%未満では、十分な強度、コシが得られない場合があり、一方、96質量%を超えると拭き取り性が低下する場合がある。
【0028】
非捲縮繊維には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、及びこれらのコポリマー等のポリエステル系繊維、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等のポリオレフィン系繊維、ポリアクリロニトリル、モダクリル等のアクリル系繊維、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12等のポリアミド系繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ウレタン繊維等の合成繊維、トリアセテート繊維、ジアセテート繊維等の半合成繊維、ビスコースレーヨン、銅アンモニアレーヨン、ポリノジックレーヨン、リヨセル等の再生セルロース系繊維、コラーゲン、アルギン酸、キチン質などを溶液にしたものを紡糸した再生繊維が好ましい。これらの繊維を構成するポリマーは、ホモポリマー、変性ポリマー、ブレンド、共重合体などの形でも利用できる。上記の繊維の他に、植物繊維として、針葉樹パルプ、広葉樹パルプなどの木材パルプや藁パルプ、竹パルプ、ケナフパルプなどの木本類、草本類を含むものも利用できる。さらに、古紙、損紙などから得られるパルプ繊維等も含まれる。当然ではあるが、これら複数の材質からなる複合繊維を用いても良い。
【0029】
本発明のワイパー用不織布において、0.06〜3.3dtexの非捲縮繊維は、熱融着性バインダー繊維であると好ましい。熱融着性バインダー繊維を含有させて、該バインダー繊維の溶融温度以上に不織布の温度を上げる工程を製造工程に組み入れることで、ワイパー用不織布の強度が向上する。また、熱融着性バインダー繊維としては、単繊維のほか、芯鞘繊維(コアシェルタイプ)、並列繊維(サイドバイサイドタイプ)などの複合繊維が挙げられる。複合繊維は、不織布表面に皮膜を形成しにくいので、不織布表面のフィブリル化繊維が露出した状態を保持したまま、強度を向上させることができる。熱融着性バインダー繊維としては、例えば、ポリプロピレン(芯)とポリエチレン(鞘)の組み合わせ、ポリプロピレン(芯)とエチレンビニルアルコール(鞘)の組み合わせ、高融点ポリエステル(芯)と低融点ポリエステル(鞘)の組み合わせが挙げられる。また、ポリエチレン等の低溶融温度の樹脂のみで構成される単繊維(全融タイプ)や、ポリビニルアルコール系のような熱水可溶性バインダーは、ワイパー用不織布の乾燥工程で皮膜を形成し易いが、特性を阻害しない範囲であれば使用することができる。
【0030】
本発明のワイパー用不織布の目付けは、10〜150g/mの範囲が好ましい。10g/mより軽いと、強度、吸液性が十分でなく好ましくない。一方、150g/mを超えると、風合いが硬くなり、適度な柔軟性に劣るため、好ましくない。
【0031】
本発明のワイパー用不織布は、本発明の範囲を阻害しない範囲であれば、その層構成に特に限定はない。すなわち、単層構造からなる不織布であっても良いし、2層、3層といった多層構造からなる不織布であっても良い。2層構造とした場合、各層の繊維配合を変えることにより、拭き取り性、吸液性に優れた拭き取り層と強度、コシに優れた支持体層とに機能を分けることが可能となり、より効果的なワイパー用不織布を得ることができる。この場合、拭き取り層には、フィブリル化繊維を2〜100質量%含むことが好ましく、さらに好ましくは10〜90質量%である。フィブリル化繊維の含有量が2質量%未満では、フィブリル化繊維が不織布表面に均一に分布できないことから拭き取り性を高めることができない場合がある。また、支持体層には、0.6〜3.3dtexの非分割型異型断面捲縮繊維を5〜100質量%含むことが好ましく、さらに好ましくは、50〜80質量%である。0.6〜3.3dtexの非分割型異型断面捲縮繊維の含有量が5質量%未満では、十分な嵩高性、コシが得られない場合があり、95質量%以上の場合、十分なコシが得られない場合がある。
【0032】
また、0.06〜3.3dtexの非捲縮繊維を拭き取り層に含有させる場合、98質量%未満の量で含むことが好ましく、さらに好ましくは10〜90質量%である。0.06〜3.3dtexの非捲縮繊維が98質量%以上では、拭き取り性に劣る場合がある。また、0.06〜3.3dtexの非捲縮繊維を支持体層に含有させる場合、90質量%未満の量で含むことが好ましく、さらに好ましくは20〜50質量%である。0.06〜3.3dtexの非捲縮繊維が90質量%以上では、十分な嵩高性が得られない場合がある。
【0033】
同様に、3層構造とした場合、2層の拭き取り層の中間に支持体層を設けることで、不織布両面が拭き取り性、吸液性に優れ、且つ、中間の支持体層によって十分な強度、コシを有する、より効果的なワイパー用不織布を得ることができる。この場合、拭き取り層には、フィブリル化繊維を2〜100質量%含むことが好ましく、さらに好ましくは10〜90質量%である。フィブリル化繊維の含有量が2質量%未満では、フィブリル化繊維が不織布表面に均一に分布できないことから拭き取り性を高めることができない場合がある。また、支持体層には、0.6〜3.3dtexの非分割型異型断面捲縮繊維を5〜100質量%含むことが好ましく、さらに好ましくは、50〜80質量%である。0.6〜3.3dtexの非分割型異型断面捲縮繊維の含有量が5質量%未満では、十分な嵩高性、コシが得られない場合がある。
【0034】
また、0.06〜3.3dtexの非捲縮繊維を拭き取り層に含有させる場合、0.06〜3.3dtexの非捲縮繊維を98質量%未満の量で含むことが好ましく、さらに好ましくは10〜90質量%である。0.06〜3.3dtexの非捲縮繊維が98質量%以上では、拭き取り性に劣る場合がある。また、0.06〜3.3dtexの非捲縮繊維を支持体層に含有させる場合、0.06〜3.3dtexの非捲縮繊維を90質量%未満の量で含むことが好ましく、さらに好ましくは20〜50質量%である。0.06〜3.3dtexの非捲縮繊維が90質量%以上では、十分な嵩高性が得られない場合がある。
【0035】
本発明のワイパー用不織布は、本発明の範囲を阻害しない範囲であれば、その表面性に特に限定はない。すなわち、実質的な開孔を有さない非開孔不織布であっても良いし、開孔不織布であっても良いし、エンボス模様やクレープ状の凹凸を有した不織布であっても良い。
【0036】
次に、本発明のワイパー用不織布の製造法について説明を行う。本発明の不織布は、フィブリル化できる繊維を フィブリル化する工程、湿式不織布を製造する工程、湿式不織布を水流交絡する工程、水分を除去(乾燥)する工程により製造される。湿式不織布を製造した後、高圧柱状水流により繊維を3次元的に絡合させることで、繊維同士の絡み合いによって、不織布に強度を発現させることができる。そのため、熱融着性バインダー繊維を使用しなくとも、あるいは、少量使用するだけで、不織布に十分な強度を与えることができるので、適度に柔軟な風合いのワイパー用不織布を得ることができる。
【0037】
フィブリル化できる繊維をフィブリル化する工程は、フィブリル化できる繊維を水中に懸濁し、ビーター、PFIミル、シングルディスクリファイナー(SDR)、ダブルディスクリファイナー(DDR)、また、ボールミル、ダイノミル等の叩解、分散設備で適当な叩解条件の下、割繊及びフィブリル化を行う。
【0038】
本発明のワイパー用不織布は、湿式抄造法により湿式抄造不織布を形成する。フィブリル化できる繊維を割繊したり、フィブリル化したりするためには、繊維を水中に懸濁した状態で、ビーター、PFIミルなどの設備で叩解、分散処理を行うが、湿式抄造法の場合、水中に懸濁、分散したフィブリル化繊維をそのままの状態で使用できるからである。フィブリル化繊維と非分割型異型断面捲縮繊維とを水中に投入し、必要に応じて、分散剤、粘剤を加えて、パルパー等の回転式の装置で混合し、離解、均一分散を行い、濃度0.1〜3%程度の繊維懸濁液(水性スラリー)を調製する。次いで、懸濁液を用い、長網、短網、円網等のワイヤーを少なくとも一つ有する抄紙機で抄造し、湿式不織布を得る。
【0039】
次に、このようにして得られた湿式不織布を、多孔質支持体上に載せ、高圧柱状水流を噴射し、繊維を絡合させ水流交絡処理を行う。多孔質支持体にはワイヤーあるいはパンチングプレート等が好ましく用いられる。ワイヤーを例にとると10〜150メッシュ相当、空間率5〜40%、フラジール通気度100〜600cc/cm/secのものが好ましい。高圧水流を噴射するノズルの径は10〜500μmの範囲が好ましく、ノズルの間隔は10〜1500μmが好ましい。これらのノズルは搬送されるウェブの、幅方向に亘り、少なくとも1回以上くまなく水流で加工できる範囲が必要である。加工速度は3〜100m/分の範囲が好ましい。
【0040】
本発明の水流交絡処理は水圧0.5×10〜20×10Pa、好ましくは4×10〜17×10Paの柱状水流を不織布の表裏にそれぞれ1回以上噴射すると良い。水圧が0.5×10Paよりも小さいと、繊維の交絡が甘くなり、十分な強度が得られないことがある。一方、20×10Paを超えると、フィブリル化繊維が飛散したり、絡合が余りに強くなりすぎたりして、適度に柔軟な風合いが損なわれることがある。
【0041】
このようにして得られた水流交絡不織布は、余分な水分を吸引あるいはウェットプレスなどの方法で取り除いた後、乾燥させる。乾燥させる装置としては、シリンダードライヤー、エアドライヤー、エアスルードライヤー、サクションドライヤー等が好ましく、水が実質上完全に除去される温度で使用することができる。
【0042】
本発明におけるワイパー用不織布は、商品として乾燥状態で使用するドライタイプワイパーであっても良いし、湿潤状態で使用するウェットタイプワイパーであっても良い。
【0043】
ウェットタイプワイパーで用いる場合、界面活性剤、殺菌剤や乾燥速度の向上剤としてのエタノールやイソプロピルアルコール、保湿剤としてのグリセリン、プロピレングリコールやポリエチレングリコール、また香料やその他の防腐効果のある抗菌剤、除菌剤、色素、酸化防止剤等の添加剤が適量添加されていても良い。ウェットタイプワイパーの形態は内部が密封可能に形成された容器に収納されて、この容器からウェットタイプワイパー用の不織布を1枚ずつ引き出し可能な包装体の形態であれば、特に限定されない。例えば、ロール状に巻かれたウェットタイプワイパー用の不織布を収納した筒状のプラスチック容器や1枚ずつ折り重ねた状態で収納したピロー包装体や紙容器でも良く、これらが複合された形態でも良い。
【実施例】
【0044】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、実施例に限定されるものでない。なお、実施例中の「%」及び「部」は特に断りのない限り、それぞれ「質量%」及び「質量部」を示す。
【0045】
<評価試験>
(1)拭き取り性(液体):ガラス板上にグリースを5mg塗布し、100mm×100mm角のワイパー用不織布の試験片で3回拭き取った後に、ガラス板上のグリースの残存程度を目視観察し、評価した。拭き取り性の評価基準としては、以下の通りである。
◎:グリースが全く残らず良好。
○:グリースが殆ど残らず良好。
△:グリースが僅かに残るものの、効果は認められる。
×:グリースが殆ど残り、実用上問題がある。
【0046】
(2)拭き取り性(固体):ガラス板状にJIS8種粉体を10mg滴下し、100mm×100mm角のワイパー用不織布の試験片で3回拭き取った後に、ガラス板上の粉体の残存程度を目視観察し、評価した。拭き取り性の評価基準としては、以下の通りである。
◎:粉体が全く残らず良好。
○:粉体が殆ど残らず良好。
△:粉体が僅かに残るものの、効果は認められる。
×:粉体が殆ど残り、実用上問題がある。
【0047】
(3)保水量(単位:g/m):ワイパー用不織布の吸液性の指標として保水量を求めた。保水量は、純水をワイパー用不織布に浸漬し、1m当たりの水の保持量(g/m)として測定した。まず、100mm×100mmの大きさのワイパー用不織布の試験片について、乾燥質量W1(g)を測定する。次に、純水中に試験片を広げて浸漬し、10分間放置したのち液体中から取り出し、その後引き上げ、10分間吊し置きした後、湿潤質量W2(g)を測定し、(W2−W1)×100から保水量を算出した。
【0048】
(4)実使用感:乾燥状態及び湿潤状態のワイパー用不織布でガラス板上を拭き取り、その時の触感を判断した。評価はモニター7名によって行い、各人がそれぞれ判断した評価の最多数を評価結果とした。風合いの評価基準としては、以下の通りである。
○:柔軟であるが、程良くコシがあり、拭き易くて良好。
△:普通
×:硬い、もしくは柔らかすぎて拭きにくく、実使用上問題がある。
【0049】
(5)破断強度(DRY)(単位:N/50mm):JIS L 1096記載の方法に準拠して、縦方向の破断強度を測定した。ただし、試料は幅50mm、長さ200mmとして、つかみ間隔100mmでそれぞれ5本測定し、平均値であらわした。単位は、N/50mmである。
【0050】
(6)破断強度(WET)(単位:N/50mm):試料を1枚採取し、純水中に5分間浸し、その後引き上げて、表面の水滴を濾紙で軽く拭き取った後、JIS L 1096記載の方法に準拠して、縦方向の破断強度を測定した。ただし、試料は幅50mm、長さ200mmとして、つかみ間隔100mmでそれぞれ5本測定し、平均値であらわした。単位は、N/50mmである。
【0051】
<フィブリル化繊維の調製>
フィブリル化していない三菱レイヨン社製割繊性アクリル繊維(商品名「C651」:アクリロニトリルポリマーとセルロースアセテートポリマーの2成分ブレンド繊維、3dtex×6mm)を、PFIミルを用いて1万回転処理し、幹部から離脱した繊維径1μm以下のフィブリル化アクリル繊維(A)と、平均繊維径3μmの幹部から平均繊維径1μm以下の枝部が発生したフィブリル化アクリル繊維(B)の混合繊維(A+B)を調製した。
【0052】
フィブリル化していないコートルズ社製リヨセル単繊維(1.7dtex×4mm)を、PFIミルを用いて4万回転処理し、幹部から離脱した繊維径1μm以下のフィブリル化リヨセル繊維(C)と、平均繊維径4μmの幹部から平均繊維径1μm以下の枝部が発生したフィブリル化リヨセル繊維(D)の混合繊維(C+D)を調製した。
【0053】
(実施例1)
フィブリル化アクリル繊維(A+B)、非分割型異型断面捲縮繊維I(2.2dtex×10mm、三角断面、機械捲縮、ポリエチレンテレフタレート)をそれぞれ60/40とする配合で水中に順次添加混合し、1%濃度の水性スラリーを調製した。この水性スラリーを用いて乾燥質量70g/mの湿式不織布を傾斜短網抄紙機で抄造した。次に、この湿式不織布を76メッシュの平織りのプラスチックワイヤー上に積載し、以下に示す3列のノズル列にて、圧力8MPa、加工速度20m/分で水流交絡処理を行った。さらに湿式不織布を反転し、同様の条件で水流噴射して、水流交絡処理を行った。ノズル径とノズル間隔、ノズルの配列を以下に示す。第1列目はノズル径120μm、ノズル間隔1.2mmが千鳥状に2列配列、第2列目はノズル径100μm、ノズル間隔0.6mmがストレートに1列、第3列目はノズル径100μm、ノズル間隔0.6mmがストレートに1列である。続いて、パッダーにて水を絞った後、エアドライヤーを用い、130℃で乾燥を行い、実施例1のワイパー用不織布を作製した。
【0054】
(実施例2)
フィブリル化リヨセル繊維(C+D)、非分割型異型断面捲縮繊維Iをそれぞれ60/40とする配合とした以外は、実施例1と同じ方法で加工を行い、実施例2のワイパー用不織布を得た。
【0055】
(実施例3)
フィブリル化アクリル繊維(A+B)と、非分割型異型断面捲縮繊維II(0.6dtex×5mm、三角断面、機械捲縮、ポリエチレンテレフタレート)をそれぞれ60/40とする配合とした以外は、実施例1と同じ方法で加工を行い、実施例3のワイパー用不織布を得た。
【0056】
(実施例4)
フィブリル化アクリル繊維(A+B)と、非分割型異型断面捲縮繊維III(3.3dtex×5mm、三角断面、機械捲縮、ポリエチレンテレフタレート)をそれぞれ60/40とする配合とした以外は、実施例1と同じ方法で加工を行い、実施例4のワイパー用不織布を得た。
【0057】
(実施例5)
フィブリル化アクリル繊維(A+B)と非分割型異型断面捲縮繊維IV(2.2dtex×10mm、扁平断面、機械捲縮、ポリエチレンテレフタレート)をそれぞれ60/40とする配合とした以外は、実施例1と同じ方法で加工を行い、実施例5のワイパー用不織布を得た。
【0058】
(実施例6)
フィブリル化アクリル繊維(A+B)と非分割型異型断面捲縮繊維V(2.2dtex×10mm、三角断面、潜在捲縮、ポリエチレンテレフタレート)をそれぞれ60/40とする配合とした以外は、実施例1と同じ方法で加工を行い、実施例6のワイパー用不織布を得た。
【0059】
(実施例7)
フィブリル化アクリル繊維(A+B)と非分割型異型断面捲縮繊維Iと非捲縮繊維I(0.06dtex×3mm、ポリエチレンテレフタレート)をそれぞれ50/30/20とする配合とした以外は、実施例1と同じ方法で加工を行い、実施例7のワイパー用不織布を得た。
【0060】
(実施例8)
フィブリル化アクリル繊維(A+B)と非分割型異型断面捲縮繊維Iと非捲縮繊維II(1.1dtex×10mm、ポリエチレンテレフタレート)をそれぞれ50/30/20とする配合とした以外は、実施例1と同じ方法で加工を行い、実施例8のワイパー用不織布を得た。
【0061】
(実施例9)
フィブリル化アクリル繊維(A+B)と非分割型異型断面捲縮繊維Iと非捲縮繊維III(3.3dtex×10mm、ポリエチレンテレフタレート)をそれぞれ50/30/20とする配合とした以外は、実施例1と同じ方法で加工を行い、実施例11のワイパー用不織布を得た。
【0062】
(実施例10)
フィブリル化アクリル繊維(A+B)と非分割型異型断面捲縮繊維Iと非捲縮繊維IV(1.1dtex×10mm、芯:ポリエチレンテレフタレート/鞘:ポリエチレンテレフタレート共重合体の芯鞘構造バインダー繊維、鞘部の融点は110℃)をそれぞれ50/30/20とする配合とした以外は、実施例1と同じ方法で加工を行い、実施例12のワイパー用不織布を得た。
【0063】
(実施例11)
フィブリル化アクリル繊維(A+B)と非分割型異型断面捲縮繊維Iと非捲縮繊維V(0.04dtex×10mm、ポリエチレンテレフタレート)をそれぞれ50/30/20とする配合とした以外は、実施例1と同じ方法で加工を行い、実施例9のワイパー用不織布を得た。
【0064】
(実施例12)
フィブリル化アクリル繊維(A+B)と非分割型異型断面捲縮繊維Iと非捲縮繊維VI(3.9dtex×10mm、芯:ポリエチレンテレフタレート/鞘:ポリエチレンテレフタレート共重合体の芯鞘構造バインダー繊維、鞘部の融点は110℃)をそれぞれ50/30/20とする配合とした以外は、実施例1と同じ方法で加工を行い、実施例10のワイパー用不織布を得た。
【0065】
(比較例1)
フィブリル化アクリル繊維(A+B)のみを配合した以外は、実施例1と同じ方法で加工を行い、比較例1のワイパー用不織布を得た。
【0066】
(比較例2)
フィブリル化リヨセル繊維(C+D)のみを配合した以外は、実施例1と同じ方法で加工を行い、比較例2のワイパー用不織布を得た。
【0067】
(比較例3)
非分割型異型断面捲縮繊維IIのみを配合した以外は、実施例1と同じ方法で加工を行い、比較例3のワイパー用不織布を得た。
【0068】
(比較例4)
非捲縮繊維IIのみを配合した以外は、実施例1と同じ方法で加工を行い、比較例4のワイパー用不織布を得た。
【0069】
(比較例5)
フィブリル化アクリル繊維(A+B)と非分割型異型断面繊維(2.2dtex×10mm、三角断面、捲縮なし、ポリエチレンテレフタレート)をそれぞれ60/40とする配合とした以外は、実施例1と同じ方法で加工を行い、比較例5のワイパー用不織布を得た。
【0070】
(比較例6)
フィブリル化アクリル繊維(A+B)と非分割型捲縮繊維(2.2dtex×10mm、円形断面、機械捲縮、ポリエチレンテレフタレート)をそれぞれ60/40とする配合とした以外は、実施例1と同じ方法で加工を行い、比較例6のワイパー用不織布を得た。
【0071】
(比較例7)
フィブリル化アクリル繊維(A+B)と分割型捲縮繊維(1.7dtex×5mm、16分割、分割後断面形状はくさび形、潜在捲縮、ポリエチレンテレフタレート)をそれぞれ60/40とする配合とした以外は、実施例1と同じ方法で加工を行い、比較例7のワイパー用不織布を得た。
【0072】
(比較例8)
フィブリル化アクリル繊維(A+B)と非分割型異型断面捲縮繊維VI(0.3dtex×5mm、三角断面、機械捲縮、ポリエチレンテレフタレート)をそれぞれ60/40とする配合とした以外は、実施例1と同じ方法で加工を行い、比較例8のワイパー用不織布を得た。
【0073】
(比較例9)
フィブリル化アクリル繊維(A+B)と非分割型異型断面捲縮繊維VII(4.4dtex×15mm、三角断面、機械捲縮、ポリエチレンテレフタレート)をそれぞれ60/40とする配合とした以外は、実施例1と同じ方法で加工を行い、比較例9のワイパー用不織布を得た。
【0074】
上記の実施例1〜12、比較例1〜9で得られたワイパー用不織布について、上述した評価試験により評価し、その結果を表1に示す。
【0075】
【表1】

【0076】
上記表1より、実施例1〜12に示す通り、本発明のワイパー用不織布は、油汚れや微粒子の拭き取り性、吸液性に優れるだけではなく、拭き取り時の実使用感に優れており、十分な強度を用い合わせていることが判る。一方、比較例1〜9に示したように、不織布を構成する繊維の種類や配合が本発明の範囲外の場合、本発明のワイパー用不織布に比べて、拭き取り性、吸液性、実使用感、強度の何れかが大きく劣ることが判る。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明のワイパー用不織布は、拭き取り性、吸液性、適度に柔軟な風合い、強度、コストに優れており、一般工場用ワイパー、クリーンルーム用ワイパー、印刷用ブランケットワイパーと言った産業用分野、おしぼり、ハンドタオルと言った業務用分野、対人ワイパー、対物用ワイパー、眼鏡拭き、自動車洗車用ワイパー、ダストワイパーと言った家庭用分野といった各種の用途に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.6〜3.3dtexの非分割型異型断面捲縮繊維とフィブリル化繊維とを含む湿式不織布が水流交絡処理された不織布であることを特徴とするワイパー用不織布。
【請求項2】
異型断面捲縮繊維が三角断面機械捲縮繊維である請求項1記載のワイパー用不織布。
【請求項3】
湿式不織布が、さらに0.06〜3.3dtexの非捲縮繊維を1種以上含有する請求項1又は2記載のワイパー用不織布。
【請求項4】
非捲縮繊維の少なくとも1種が熱融着性バインダー繊維である請求項3記載のワイパー用不織布。

【公開番号】特開2010−81987(P2010−81987A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−251444(P2008−251444)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】