説明

ワイパ制御装置

【課題】車両の状態に応じて、ワイパアームの動作を制限することができるワイパ制御装置を提供する。
【解決手段】車両に備えられるワイパ装置の動作を制御するワイパ制御装置であって、ボンネットが開いている状態において払拭動作を禁止する機能を実行させる設定がされているか否かを判定し、ボンネットが開いている状態において払拭動作を禁止する機能を実行させる設定がされている場合には、ボンネット開閉検出手段によって、ボンネットが開状態であることが検出された際に、ワイパ装置の払拭動作を禁止し、ボンネットが開いている状態において払拭動作を禁止する機能を実行させる設定がされていない場合には、ボンネット開閉検出手段によって、ボンネットが開状態であることが検出され、かつ車速検出手段によって、車両の車速が0と見なせる速度でないことが検出された際に、ワイパ装置の払拭動作を禁止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に備えられるワイパ装置の動作を制御するワイパ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、ウィンドシールドに付着した雨や前車の飛沫等を拭き取り、運転者の視界を確保するワイパ装置が設けられている。ワイパ装置は、ワイパ駆動装置によって揺動制御されるワイパアームを有し、ワイパアームの先端にウィンドシールドに当接させられるワイパブレードが装着されている。ワイパブレードが装着されたワイパアームが往復運動することにより、ウインドシールドの払拭が行われることになる。ワイパアームは、モータの回転運動をリンク機構によって往復運動に変えることにより、払拭動作が行われる。
【0003】
ところで、近年のワイパ装置は、機電一体のモータが用いられ、車両に対して容易に組み付け可能に構成されているため、車両から出力するワイパスイッチの信号線のみを接続するのみでワイパASSY(ワイパアームを含むリンク機構)と合わせて車両に対する組み付けを容易に行うことができるようになっている。
【0004】
なお、先行技術として、車両の動力源が停止状態であるか否かを判定し、車両が不使用状態であるか否かを判定し、動力源が停止状態であると判定され、且つ、車両が不使用状態であると判定されたときに、所定の電気部品への電源供給を遮断する車両の電源制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−320910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のワイパ装置は、ワイパスイッチの信号線を接続するのみで車両に対する組み付けを容易に行うことができる反面、車両のワイパスイッチがONの状態のまま組み付けを行った場合、ワイパアームが急に動作してしまう可能性があるという問題がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、車両の状態に応じて、ワイパアームの動作を制限することができるワイパ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、車両に備えられるワイパ装置の動作を制御するワイパ制御装置であって、前記車両のボンネットの開閉状態を検出するボンネット開閉検出手段と、前記ボンネット開閉検出手段によって、ボンネットが開状態であることが検出された際に、前記ワイパ装置の払拭動作を禁止する駆動制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明は、車両に備えられるワイパ装置の動作を制御するワイパ制御装置であって、前記車両のボンネットの開閉状態を検出するボンネット開閉検出手段と、前記車両の速度が0と見なせる速度であるか否かを検出する車速検出手段と、前記ボンネット開閉検出手段によって、ボンネットが開状態であることが検出され、かつ前記車速検出手段によって、前記車両の車速が0と見なせる速度でないことが検出された際に、前記ワイパ装置の払拭動作を禁止する駆動制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明は、車両に備えられるワイパ装置の動作を制御するワイパ制御装置であって、前記車両のボンネットの開閉状態を検出するボンネット開閉検出手段と、前記車両の速度が0と見なせる速度であるか否かを検出する車速検出手段と、前記ワイパ装置の払拭動作を禁止または許可することにより、前記払拭動作を制限する駆動制御手段とを備え、前記駆動制御手段は、前記ボンネットが開いている状態において払拭動作を禁止する機能を実行させる設定がされているか否かを判定し、前記ボンネットが開いている状態において払拭動作を禁止する機能を実行させる設定がされている場合には、前記ボンネット開閉検出手段によって、ボンネットが開状態であることが検出された際に、前記ワイパ装置の払拭動作を禁止し、前記ボンネットが開いている状態において払拭動作を禁止する機能を実行させる設定がされていない場合には、前記ボンネット開閉検出手段によって、ボンネットが開状態であることが検出され、かつ前記車速検出手段によって、前記車両の車速が0と見なせる速度でないことが検出された際に、前記ワイパ装置の払拭動作を禁止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、車両の状態に応じて、ワイパアームが動作する払拭動作を制限するように制御したため、動作するべきでない状態においてワイパアームが動作してしまうことを防止することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す制御部4の動作を示すフローチャートである。
【図3】図1に示す制御部4の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態によるワイパ制御装置を説明する。図1は同実施形態の構成を示すブロック図である。この図において、符号1は、ウインドシールドを払拭するワイパアームである。符号2は、ワイパアーム1に払拭動作を行わせるためのモータである。ワイパアーム1は、モータ2の回転軸とリンク機構によって接続されており、回転軸の回転運動を往復運動に変えることにより払拭動作を行う。符号3は、駆動指令に応じて、供給する電力を制御してモータ2を駆動するモータ駆動部である。
【0014】
符号4は、モータ2の回転を制御するために、モータ駆動部3に対して駆動指令を出力する制御部である。符号41は、車両内に備えられた車内LAN、例えば、CAN(Controller Area Network)やLIN(Local Interconnect Network)を介して、車両内で送受信される信号を入力する信号入力部である。符号42は、信号入力部41によって入力した信号から、ワイパ装置に対して払拭動作開始/停止を指示するワイパスイッチの状態を検出するワイパスイッチ検出部である。ワイパ装置は、ワイパスイッチを切り換えることにより、払拭動作の速さ(低速、高速、間欠等)を切り換えることが可能であるが、ここでは説明を簡単にするために、ワイパスイッチ検出部42は、払拭動作開始または停止を指示する信号のみを検出するものとして説明する。
【0015】
符号43は、信号入力部41によって入力した信号から、車両のボンネット(エンジンフード)が開いている状態か閉まっている状態を示すボンネット開閉信号を検出するボンネット開閉検出部である。符号44は、信号入力部41によって入力した信号から、車両の速度(車速)を検出する車速検出部である。符号45は、信号入力部41によって入力した信号から、車両のイグニッションキースイッチ(電気自動車においては、メインスイッチに相当する)の状態を検出するイグニッションスイッチ検出部である。符号46は、ワイパスイッチ検出部42、ボンネット開閉検出部43、車速検出部44及びイグニッションスイッチ検出部45から出力する信号に基づき、車両の状態を特定し、車両の状態に応じてモータ2の動作を制御することにより、ワイパアーム1の払拭動作を制限するように制御する駆動制御部である。
【0016】
次に、図2を参照して、図1に示す制御部4が、ワイパアーム1の払拭動作を制御する動作を説明する。図2は、図1に示す制御部4の処理動作を示すフローチャートである。まず、駆動制御部46は、ワイパースイッチ検出部42が出力する信号を読み取ることにより、ワイパスイッチの状態を読み取る(ステップS1)。駆動制御部46は、読み取ったワイパスイッチの状態がON状態であるか否かを判定する(ステップS2)。この判定の結果、ON状態でなければステップS1に戻り、ワイパスイッチがON状態となるまで待機する。
【0017】
次に、ワイパスイッチがON状態となると、駆動制御部46は、許可フラグを読む(ステップS3)。許可フラグは、後述する許可フラグ設定処理によってセット/リセットされるフラグであり、許可フラグがセットされた状態(フラグの値が1)であれば払拭動作を許可し、許可フラグがリセットされた状態(フラグの値が0)であれば払拭動作を許可しないことを意味する。
【0018】
次に、駆動制御部46は、許可フラグが「許可」(=1)であるか否かを判定する(ステップS4)。この判定の結果、許可状態であれば、駆動制御部46は、モータ制御部3に対して、払拭動作の指令を出力する(ステップS5)。これを受けて、モータ駆動部3は、モータ2に流す電流を制御して、ワイパアーム1に払拭動作を行わせる。そして、駆動制御部46は、ワイパースイッチ検出部42が出力する信号を読み取ることにより、ワイパスイッチの状態を読み取り(ステップS6)、ワイパスイッチがOFF状態になったか否かを判定する(ステップS7)。この判定の結果、OFF状態でなければ、ステップS3に戻り、許可フラグを参照しながら払拭動作を継続する。
【0019】
一方、許可フラグが「許可」でない(=0)である場合、駆動制御部46は、払拭動作中であるか否かを判定し(ステップS8)、動作中でなければ、ステップS6に移行し、処理を繰り返す。また、払拭動作中であれば、駆動制御部46は、モータ駆動部3に対して、払拭動作の停止指令を出力することにより払拭動作を停止させ(ステップS9)、処理を繰り返す。
【0020】
次に、駆動制御部46は、ワイパスイッチがOFF状態となると、払拭動作中であるか否かを判定し(ステップS10)、動作中でなければ、ステップS1に戻り、処理を繰り返す。また、払拭動作中であれば、駆動制御部46は、モータ駆動部3に対して、払拭動作の停止指令を出力することにより払拭動作を停止させ(ステップS11)、ステップS1に戻って処理を繰り返す。
【0021】
このような処理動作によって、ワイパアーム2が往復運動して、ウインドシールドの払拭動作が行われることになる。
【0022】
次に、図3を参照して、駆動制御部46が許可フラグのセット/リセットを行う動作を説明する。図3は、駆動制御部46が許可フラグのセット/リセットを行う動作を示すフローチャートである。図3に示す処理動作は、駆動制御部46において、図2に示す処理動作と独立して、かつ並行して処理を行うものである。
【0023】
まず、駆動制御部46は、ボンネット開閉検出部43、車速検出部44及びイグニッションスイッチ検出部45から出力する各信号を読み取る(ステップS21)。そして、駆動制御部46は、イグニッション検出部35から出力する信号に基づき、イグニッションキーがON状態であるか否かを判定する(ステップS22)。この判定の結果、イグニッションキーがONでなければ、駆動制御部46は、払拭動作を禁止するため許可フラグをリセット(許可フラグ=0)する(ステップS23)。
【0024】
次に、イグニッションキーがONであれば、駆動制御部46は、動作禁止設定フラグを参照して、ボンネットが開いている状態において払拭動作を禁止する機能を実行させる設定がされているか否かを判定する(ステップS24)。動作禁止設定フラグは、予めワイパ装置の仕様に基づき設定されている。この判定の結果、ボンネットが開いている状態において払拭動作を禁止する機能を実行させる設定がされていなければ、駆動制御部46は、ボンネット開閉検出部43から出力する信号に基づき、ボンネットは開いている状態であるか否かを判定する(ステップS25)。この判定の結果、ボンネットが開いていなければ、駆動制御部46は、払拭動作を許可するため許可フラグをセット(許可フラグ=1)する(ステップS26)。
【0025】
次に、ステップS25における判定の結果、ボンネットが開いていれば、駆動制御部46は、車速検出部44から出力する信号に基づき、車速が0より大きい値であるか否かを判定する。この判定は、車速が0であると見なすことができるか否かによって判定する。この判定の結果、車速が0であると見なせる値である場合に、駆動制御部46は、払拭動作を許可するため許可フラグをセット(許可フラグ=1)する(ステップS28)。一方、車速が0より大きい値(車速が0であると見なせない)である場合、駆動制御部46は、払拭動作を禁止するため許可フラグをリセット(許可フラグ=0)する(ステップS29)。
【0026】
次に、ステップS24における判定の結果、ボンネットが開いている状態において払拭動作を禁止する機能を実行させる設定がされていれば、駆動制御部46は、ボンネット開閉検出部43から出力する信号に基づき、ボンネットが開いている状態であるか否かを判定する(ステップS30)。この判定の結果、ボンネットが開いていなければ、駆動制御部46は、払拭動作を許可するため許可フラグをセット(許可フラグ=1)する(ステップS31)。一方、ボンネットが開いていれば、駆動制御部46は、払拭動作を禁止するため許可フラグをリセット(許可フラグ=0)する(ステップS32)。
【0027】
以上説明したように、ボンネットが開いている状態において払拭動作を禁止する機能を実行させる設定がされていない場合には、ボンネットが開いている場合、ボンネットが開いていても車速が0と見なせる場合には払拭動作を許可し、ボンネットが開いていて、車速が0でない場合は、払拭動作を禁止するようにした。また、ボンネットが開いている状態において払拭動作を禁止する機能を実行させる設定がされている場合には、ボンネットが開いていなければ、払拭動作を許可し、ボンネットが開いていれば払拭動作を禁止するようにした。ワイパ装置の組み付けは、ボンネットを開けた状態で作業を行うが、前述した制御動作により、車両の状態に応じて、ワイパアームが動作する払拭動作を制限することが可能となり、動作するべきでない状態においてワイパアームが動作してしまうことを防止することができるため、安全に作業を行うことが可能になる。
【0028】
なお、前述した説明においては、ボンネットの開閉状態と、フロントのウインドシールドの払拭を行うワイパ装置について説明したが、車両後方に備えられたトランクリッド(トランクのふた)の開閉状態と、バックのウインドシールドの払拭を行うワイパ装置についても同様に適用可能である。
【0029】
また、図1における制御部4の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによりワイパの制御処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとするまた、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0030】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0031】
機電一体型のモータを備えるワイパ装置において、組み付け時の安全を確保することが不可欠な用途に適用できる。
【符号の説明】
【0032】
1・・・ワイパアーム、2・・・モータ、3・・・モータ駆動部、4・・・制御部、41・・・信号入力部、42・・・ワイパスイッチ検出部、43・・・ボンネット開閉検出部、44・・・車速検出部、45・・・イグニッションスイッチ検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に備えられるワイパ装置の動作を制御するワイパ制御装置であって、
前記車両のボンネットの開閉状態を検出するボンネット開閉検出手段と、
前記ボンネット開閉検出手段によって、ボンネットが開状態であることが検出された際に、前記ワイパ装置の払拭動作を禁止する駆動制御手段と
を備えたことを特徴とするワイパ制御装置。
【請求項2】
車両に備えられるワイパ装置の動作を制御するワイパ制御装置であって、
前記車両のボンネットの開閉状態を検出するボンネット開閉検出手段と、
前記車両の速度が0と見なせる速度であるか否かを検出する車速検出手段と、
前記ボンネット開閉検出手段によって、ボンネットが開状態であることが検出され、かつ前記車速検出手段によって、前記車両の車速が0と見なせる速度でないことが検出された際に、前記ワイパ装置の払拭動作を禁止する駆動制御手段と
を備えたことを特徴とするワイパ制御装置。
【請求項3】
車両に備えられるワイパ装置の動作を制御するワイパ制御装置であって、
前記車両のボンネットの開閉状態を検出するボンネット開閉検出手段と、
前記車両の速度が0と見なせる速度であるか否かを検出する車速検出手段と、
前記ワイパ装置の払拭動作を禁止または許可することにより、前記払拭動作を制限する駆動制御手段とを備え、
前記駆動制御手段は、前記ボンネットが開いている状態において払拭動作を禁止する機能を実行させる設定がされているか否かを判定し、
前記ボンネットが開いている状態において払拭動作を禁止する機能を実行させる設定がされている場合には、前記ボンネット開閉検出手段によって、ボンネットが開状態であることが検出された際に、前記ワイパ装置の払拭動作を禁止し、
前記ボンネットが開いている状態において払拭動作を禁止する機能を実行させる設定がされていない場合には、前記ボンネット開閉検出手段によって、ボンネットが開状態であることが検出され、かつ前記車速検出手段によって、前記車両の車速が0と見なせる速度でないことが検出された際に、前記ワイパ装置の払拭動作を禁止することを特徴とするワイパ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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