説明

ワイパ装置、特に自動車用のワイパ装置

本発明は、ワイパ装置(10)、特に自動車用のワイパ装置(10)であって、自動車のボディにワイパ装置(10)を固定する少なくとも1つの固定部分(26)が設けられている形式のものに関する。このような形式のワイパ装置(10)において本発明の構成では、固定部分(26)が、ボディに設けられたガイド(32)内において可動の少なくとも1つの手段(30)、特にレールを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念部に記載された形式のワイパ装置、特に自動車用のワイパ装置に関する。
【0002】
自動車のワイパ軸への歩行者の衝突時にワイパ軸が後退してボディ内部に沈み込むように構成されたワイパ装置は、例えばドイツ連邦共和国特許公開第19903140号明細書に基づいて、数多くのものが公知である。このように構成されていると、ボディから突出しているワイパ軸によって歩行者が怪我をするおそれを減じることができる。そのために公知の構成では、ワイパ装置の固定部分に目標破損箇所が設けられていて、歩行者の衝突時にワイパ装置全体がその固定部から破損により分離して、ボディ内部に沈み込むようになっている。
【0003】
さらに別の公知の構成では、衝突時に自動車のエンジンフードが持ち上がり、これによって衝突した歩行者とワイパ軸との接触が回避されるようになっている。しかしながらこのような装置は高価であり、ゆえに小型車には不向きである。
【0004】
発明の利点
請求項1の特徴部に記載のように構成された本発明によるワイパ装置には、公知のものに比べて次のような利点がある。すなわち本発明によるワイパ装置では、固定部分が、ボディに設けられたガイド内において可動の少なくとも1つの手段を有している。このように構成されていると、ワイパ装置は歩行者の衝突時に、つまりワイパ軸に対する軸方向の力作用時に、ボディの内部に所望の軌道に沿って沈み込むことができる。これによってワイパ装置の取付け空間の幾何学的な特殊性を考慮することができる。さらに軸の移動速度ひいては、衝突する人体に対して作用する力の経過に影響を与えることができる。
【0005】
請求項1に記載された本発明によるワイパの別の有利な構成は、請求項2以下に記載されている。
【0006】
ガイドがレールガイドとして形成されており、該レールガイド内において前記少なくとも1つの手段が滑動可能であると、固定部分を、簡単な形式で亜鉛ダイカスト又はアルミダイカスト、プラスチック射出成形法から、又は単純な打抜き曲げ部材として形成することができる。そして本発明によるワイパ装置を安価に構成することができ、有利である。
【0007】
ガイド及び/又は固定部分が、ワイパ装置をロックするための少なくとも1つの係止エレメントを有していると、ワイパ装置を自動車への取付け時に簡単かつ迅速に取り付けることが可能になる。
【0008】
このような構成において、特に有利には、係止エレメントが、衝撃負荷時にロックが解除されるように、形成されており、このようになっていると、ワイパ軸はほぼ軸方向の力作用時にボディの内部に沈み込むが、それにもかかわらず、通常運転時にはワイパ装置のしっかりとした保持が保証されている。
【0009】
本発明によるワイパ装置の特に有利な構成では、ガイド及び/又は前記少なくとも1つの手段が、固定部分とガイドとの連結解除もしくは分離のために働く少なくとも1つの連結解除手段(Entkopplungsmittel)を有しており、このように構成されていると、利用できる構造空間を衝突時におけるワイパ装置の後退のために完全に利用することができる。
【0010】
このような構成において有利には、少なくとも1つの解除エレメントが設けられていて、固定部分がガイドの連結解除時に該ガイドから解除、特に旋回させられるようになっている。
【0011】
ワイパ装置の簡単かつ迅速な取付けを達成するために本発明の別の有利な構成では、ガイド及又は前記少なくとも1つの手段が、該ガイドと手段とを容易に結合させる少なくとも1つの挿入手段を有している。
【0012】
本発明によるワイパのさらに別の構成では、少なくとも1つの支持体が設けられていて、該支持体がワイパ装置の主要な構成部材を有しており、固定部分が緩衝エレメントを用いて前記少なくとも1つの支持体に固定されている。このように構成されていると、ワイパ装置用のスタンダード構成エレメントを使用することができる。それというのは、ガイドの領域においてワイパ装置とボディとの間における緩衝エレメントを省くことができるからである。
【0013】
本発明の別の有利な構成では、支持体が、曲げ強さを減じられた少なくとも1つの撓み領域を有している。このように構成されていると、支持体は支承軸への人体の衝突時に容易に変形することができる。このことは特に次のような場合に、すなわち歩行者の衝突時に通常見られるように、ワイパ軸への力作用が完全には軸方向でなく、かつすべてのワイパ軸に対して均一に行われないような場合に、特に有利である。
【0014】
図面
次に図面を参照しながら、本発明の1実施例を説明する。
【0015】
図1は、本発明によるワイパ装置を示す斜視図であり、
図2は、本発明によるワイパ装置を、ワイパ軸への軸方向の力作用の前後において示す図であり、
図3は、通常運転におけるワイパ装置の固定部分をガイドと共に示す図であり、
図4は、衝突後におけるワイパ装置の固定部分をガイドと共に示す図であり、
図5は、図4に示された固定部分及びガイドを後ろから見た図であり、
図6は、図4に示された固定部分及びガイドをストッパと共に下から見ず図であり、
図7は、ガイドからの連結遮断時における固定部分を示す図である。
【0016】
実施例の記載
図1には本発明によるワイパ装置10が斜視図で示されている。このワイパ装置10は主として支持体12を有しており、この支持体12は金属管から成っており、この金属管はその両端部にそれぞれワイパ軸受14,16を有している。ワイパ軸受14,16にはそれぞれワイパ軸18,20が支承されており、このワイパ軸18,20は取り付けられたポジションにおいて自動車のボディから突出しており、ワイパ軸18,20にはワイパブレードを備えたワイパアームが固定されている。さらに支持体12には駆動装置22が固定されていて、この駆動装置22はクランク伝動装置を介してワイパ軸18,20を運動させることができる。支持体12は撓み領域24を有しており、この撓み領域24において管の曲げ強さが減じられている。さらに管12の一方の端部にはワイパ軸受14に固定部分26が配置されており、この固定部分26は、緩衝エレメント28として働くゴムスリーブを備えたねじによって固定されている。択一的に固定部分26はワイパ軸受14にリベット結合又は接着によって結合されているか又はワイパ軸受14と一体的に形成されている。固定部分26は、自動車のボディに可動に結合するための手段30として2つのレールを有している。両レール30はガイド32内において滑動し、このガイド32は自動車のボディに配置されている。択一的にガイド32はもちろん、ボディと一体的に形成されていてもよい。
【0017】
図2には本発明によるワイパ装置が、ワイパ軸18への軸方向の力作用の前後において示されている。ワイパ軸18への軸方向の力作用Fによって、固定部分26はガイド32において下方に向かってシフトされ、部分的にガイド32から解離されている。この場合支持体12の撓み領域24は負荷されている。
【0018】
図3には固定部分26がワイパ軸受14及びワイパ軸18と共に示されている。固定部分26は緩衝エレメント28を備えたねじによって、ワイパ軸受14に固定されている。固定部分26は主として、ほぼU字形の平らなプレートから成っており、このプレートは緩衝エレメント28と共にワイパ軸受14に、ワイパ軸18に対してほぼ垂直にねじ結合されている。プレートの縁部にはカラー状に安定化壁34が、プレートに対して垂直に延びている。U字形のプレートの底部とは反対の側において、安定化壁34からはレール30が延びており、これらのレール30はその長手方向において、プレートに対して垂直に、ひいてはワイパ軸18に対してほぼ平行に延びている。レール30はそれぞれ2つの舌片状の延長部によって形成されており、これらの延長部は、自動車のボディの固定壁に対して平行に延びている。レール30はその長手方向の中央領域において切り欠かれている。
【0019】
ガイド32は、横断面で見て部分的にほぼZ字状の縦長の金属薄板部品として形成されている。Z字状の金属薄板部品の1つの端部側は、長手方向に沿ってボディ金属薄板に固定されており、その結果Z字形の金属薄板部品の第2の端部はほぼ1〜3mm、レールの厚さに応じて、ボディ金属薄板から間隔をおいて位置しており、つまりレール30がその中で滑動できるようになっている。係止もしくはロックのためにレール30は、係止エレメント36として働くピンを有しており、このピンは、ガイドによって形成されたガイド平面から垂直に延びていて、ガイド32の1つの端部側における開口38を貫通している。
【0020】
図4にはガイド32における固定部分26が連結解除もしくは分離時において示されている。レール30に対応してガイド32は2つの切欠き40を有しており、その結果固定部分26はガイド32の内部における所定のポジションにおいて、該ガイド32から連結を解除して分離することができる。衝突時においてこの連結解除ポジションから滑り出すことがないようにするために、ガイド32にはストッパ42が設けられており、これらのストッパ42を介して固定部分26は、押し出されることが阻止される。ストッパを形成するために、金属薄板から間隔をおいて位置するガイド32の端部側はボディに向かって曲げられている。しかしながらまた択一的に溶接ポイント又はその他のブロック手段を設けることも可能である。
【0021】
図5には固定部分26が自動車の側から見た図が示されている。固定部分26の安定化壁はボディ金属薄板に向かって突子44を有しており、この突子44はボディ金属薄板における曲がりと共に傾斜を成しているので、固定部分26がストッパ42における連結解除ポジションに達した時に、固定部分26は外方に向かって押圧され、ひいてはボディ壁から離反旋回させられる。エンボス加工、壁の厚さ、打抜きによる弱化のようなボディ金属薄板の所望の補強処置によって、衝突時における力経過と時間との関係に影響を与えることができる。より確実な保持を保証するために、例えばさらにボディ金属薄板又は固定部分26における単数又は複数の突起部(Federzungen)及び/又はノッチ(Rasten)を設けることもでき、このような構成によって固定部分26の不都合なずれを回避することができる。
【0022】
図6には固定部分26がさらに詳しく示されている。ほぼU字形のプレートは緩衝エレメント28及びねじを用いてワイパ軸受16と結合されている。カラー状にプレートの縁部からは、ワイパ軸18の長手方向に対して平行に、安定化壁34が下方に向かって延びている。安定化壁34は底部とは反対の側において、外方に向かって延長されており、その結果2つのレール30が形成されており、両レール30はそれぞれその長手方向の真ん中において切り欠かれている。レール30は、横断面で見て部分的にほぼZ字形の縦長のガイド32において滑動し、これらのガイド32は一端においてボディ金属薄板に向かって曲げられていて、これによりストッパ42が生ぜしめられている。ガイド32はその長手方向に沿って切欠き40を有していて、これらの切欠き40はレール30の切欠きと対応している。ガイド32はボディの一部から一体的に形成されているか、又は打抜き曲げ部品として金属薄板から打ち抜かれており、後者の場合には自動車のボディに溶接されている。
【0023】
図7には固定部分26が連結解除後のボディ金属薄板から離反旋回させられた状態で示されている。レール30はガイド32に対して相応に、つまり切欠き40が固定エレメント26を下側のストッパポジションにおいて解放するように、配置されている。ガイド32はワイパアームに向けられた上側領域において幾分拡大されており、その結果レール30は挿入手段46であるこの拡大部に容易に導入されることができる。これによって自動車におけるワイパ装置10の取付けが容易になる。開口38に係合するピン36によって、固定部分26は係止される。特に、ワイパ軸18に衝突した歩行者による衝撃負荷のような負荷が加えられた場合には、ピン36は剪断され、これによって固定部分26は、ストッパ42によって形成された下側のストッパポジションにまで滑ることができる。突子44によって固定部分26はこの箇所においてボディから離反旋回させられる。
【0024】
2つのワイパ軸16,18を備えたワイパ装置10では、図示の固定部分26はただ片側、例えば自動車のドライバ側にだけ設けられているか、又はワイパ装置10の両側に、つまり管12の両端部に設けられていることができる。もちろん、1つの又は別の固定ポイントを駆動装置22の領域に又は支持体12における他の箇所に配置することも可能である。この場合、固定がワイパ軸16,18の長手方向の平面における回転運動を可能にし、これによって衝突時においてワイパ軸16,18が容易に沈み込めるようになっていると、有利である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明によるワイパ装置を示す斜視図である。
【図2】本発明によるワイパ装置を、ワイパ軸への軸方向の力作用の前後において示す図である。
【図3】通常運転におけるワイパ装置の固定部分をガイドと共に示す図である。
【図4】衝突後におけるワイパ装置の固定部分をガイドと共に示す図である。
【図5】図4に示された固定部分及びガイドを後ろから見た図である。
【図6】図4に示された固定部分及びガイドをストッパと共に下から見ず図である。
【図7】ガイドからの連結遮断時における固定部分を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイパ装置(10)、特に自動車用のワイパ装置(10)であって、自動車のボディにワイパ装置(10)を固定する少なくとも1つの固定部分(26)が設けられている形式のものにおいて、固定部分(26)が、ボディに設けられたガイド(32)内において可動の少なくとも1つの手段(30)を有していることを特徴とするワイパ装置(10)。
【請求項2】
ガイド(32)がレールガイドとして形成されており、該レールガイド内において前記少なくとも1つの手段(30)が滑動可能である、請求項1記載のワイパ装置(10)。
【請求項3】
ガイド(32)及び/又は固定部分(26)が、ワイパ装置(10)をロックするための少なくとも1つの係止エレメント(36)を有している、請求項1又は2記載のワイパ装置(10)。
【請求項4】
少なくとも1つの係止エレメント(36)が、衝撃負荷時にロックが解除されるように、形成されている、請求項3記載のワイパ装置(10)。
【請求項5】
ガイド(32)及び/又は少なくとも1つの手段(30)が、固定部分(26)とガイド(32)との連結解除もしくは分離のために働く少なくとも1つの連結解除手段(44)を有している、請求項1から4までのいずれか1項記載のワイパ装置(10)。
【請求項6】
少なくとも1つの解除エレメントが設けられていて、該解除エレメントが、ガイド(32)からの連結解除時に固定部分(26)を解除、特に旋回させる、請求項5記載のワイパ装置(10)。
【請求項7】
ガイド(32)及び/又は前記少なくとも1つの手段(30)が、該ガイド(32)と手段(30)とを容易に結合させる少なくとも1つの挿入手段(46)を有している、請求項1から6までのいずれか1項記載のワイパ装置(10)。
【請求項8】
少なくとも1つの支持体(12)が設けられていて、該支持体(12)がワイパ装置(10)の主要な構成部材を有しており、固定部分(26)が緩衝エレメント(28)を用いて前記少なくとも1つの支持体(12)に固定されている、請求項1から7までのいずれか1項記載のワイパ装置(10)。
【請求項9】
少なくとも1つの支持体(12)が設けられていて、該支持体(12)がワイパ装置(10)の主要な構成部材を有しており、かつ曲げ強さを減じられた少なくとも1つの撓み領域を有している、請求項1から8までのいずれか1項記載のワイパ装置(10)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−506588(P2007−506588A)
【公表日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−503180(P2005−503180)
【出願日】平成15年12月3日(2003.12.3)
【国際出願番号】PCT/DE2003/003979
【国際公開番号】WO2005/000641
【国際公開日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】